曇りがとれた眼

 私の目は、変わり者だった。  いつだって曇っていて、目の前の物がぼやけて見えた。  なんだか死んだ魚のような目をしてる、と言われたことは数えきれない。    死魚病だと診断された時には、思わず「そのまんまじゃねーか」と突っ込んだ。   「じゃあ、包帯とるよ」    結局目の手術を受けることになって、三日三晩かけて目を治した。  久々に開いた目は遠慮なしに光を取り込んできて、光量を落としているはずの部屋でさえ眩しく感じた。   「おっと、ごめん。眩しすぎたね」    先生が焦った様子で、さらに部屋を暗くしてくれた。   「大丈夫です」    私は目を閉じ、掌で目を覆いながら、目をゆっくりと開けていく。  指の隙間から入ってくる光の量を増やし、じっくりゆっくり目を慣らしていく。   「どうだい?」 「少し違和感はありますけど見えます」 「それはよかった」    ぼやけていた先生の輪郭が、くっきりはっきりと見えてくる。  つるっとしていた先生の顔に、ぼこぼこと穴が開いているのがわかった。   (これが、授業で習った目とか鼻ってやつかあ。顔に穴が開いてるなんて、気持ち悪)    初めて見た人間の顔は、思いのほか気持ち悪かった。  喜んで私の手を握って来るお父さんお顔もお母さんの顔も、気持ち悪かった。  鏡を見て映っていた私の顔も、当然のように気持ち悪かった。   (これは、慣れが必要だなあ)    友達と悪ふざけで、男の人の裸が映った動画を見た時以来の衝撃だ。    まあ、問題はないだろう。  私も子どもじゃないんだから、いつかそういうものだと割り切れるはずだ。

デジタル折り紙

『折り紙で、鶴を作ってみましょう。画面をタップしてね』 「はーい!」    息子がにこにこしながら、タブレットをタップしている。  タップする度、画面に映る紙が折られていき、鶴の形に近づいていく。   「それ、面白い?」 「うん!」    あまりに不気味だったので思わず声をかけたが、息子は何の違和感も感じてないのか元気な返事を返してきた。   「そう、なら、いいんだけど」 「うん!」    私は息子を見ながらソファに座り、サイドテーブルに置いてあった折り紙を手に取り、鶴を折った。   「時代だなあ」    折り紙は、ちゃんと折ったつもりがぐしゃぐしゃになって、角と角がぴったり一致するようになる過程が面白いというのに。  果たしてタップするだけのデジタル折り紙で、何が手に入るというのだろう。    私が折り鶴を完成させて掴んだ時、息子もデジタル折り紙を完成させたらしく、嬉々としてタブレットを見せに来た。

狙われたネコ

 夜中、コンビニで雑誌を立ち読みしていたら、自動ドアが開いて、一匹のネコが店内に入ってきた。そのネコはATMの前に立った。それは人間用ATMの隣に設置されている、ネコ用ATMだった。そしてネコは、そのATMで、大量のかつお節を引き出して、コンビニを出ていった。野良ネコに見えたが、相当貯めこんでいるらしい。俺は雑誌を閉じ、ご飯と醤油を買って、店を出て、そのネコの後を尾け始めた。

デブ娯楽

「筋トレが趣味なんだよね」 「かっこいい!」 「素敵!」    男Aが力こぶを作りながら言った。  評価は上々。   「食べるのが趣味なんだよね」 「痩せろ」 「デブが」    男Bが丸い腹をさすりながら言った。  評価は下々。   「趣味の副産物に評価が下されるこんな世の中じゃ……」    男Cがつまらない現実を憂いた。

無料相談消費注意報

「無料ですので、是非一度お話しだけでも」    大学の敷地で声をかけられた。  就職が決まった学生相手に、保険とか投資とか、まあそんな話をしてくれるらしい。  正直、社会人って何だろう人生って何だろうと考え始めていたところだし、ちょっと話を聞いてみることにした。  無料だし。       「……ということなんですよ」 「あの、そろそろ」    昼休みが終わった。  次の授業は五分後だし、私は昼食を食べ損ねた。   「あら、失礼しました。では、続きは明日で」 「え?」    その後一週間。  密着取材でも受けてる気分で、私は話を聞かされる羽目になった。   「お人よしだね。約束なんてブッチしちゃえばいいのに」 「一週間前の私に言って欲しいわ。無料って高くつくね」    話を聞いてもそこまで得はなかった。  結婚がいつで、家を建てるのがいつで、だから保険がいるんだなんて話を聞いても、結婚も家も現実味がなさ過ぎてよくわからなかった。  年金がいくらだから不動産投資で老後収入源を、なんて言われても、三十歳すら想像できないから現実味がなさ過ぎた。  現実味がないと、話は入ってこない。    唯一学んだのは、無料相談は私の時間をガンガン食ってくる、金食い虫ならぬ時間食い虫というだけの話だ。

白日戦隊!ホワイトレンジャー✟【雪の結晶】

寒い冬の日 空から雪の結晶が降っている 怪人は空を見ていた 彼はホワイトレンジャーに敗れ ボロボロで動けない体を地面に横たえている 怪人は雪を眺めながら自分の中の世に対する怒りが消えていることに気付きはじめていた とても不思議で心地よい感覚だった 目を閉じてホワイトレンジャーとの戦闘を思い出す 何故だか猛烈に誰かに甘えたくなった     ✟ ホワイトレンジャーの基地には沢山のスタッフが業務に当たりホワイトレンジャーに戦闘以外のサポートを行っている その中の情報管理部では戦闘後に関係者各位にメールを送信する 勝敗とその詳細についてだ ホワイトレンジャーの戦闘スーツとマシンに搭載されたカメラにより、戦闘の状況を細かく記録できる ただ記録はトップシークレットにあたるため、情報管理部が文章化しそれをメールしている 情報管理部の記録映像を確認していた一人が部長のデスクへ向う 「部長。これを見てください」 差し出された映像には戦闘の様子が映っている。部長は概ね部下が何を言いたいのか分かっていたが、あえて気付かないふりをした 「これがどうしたの?」 「よく見てください!ここのシーンです」 映像には怪人が倒れている この直前に大きな攻撃を受け吹っ飛んだ後だ 起き上がる様子はない 「この後です」 部下は声を落とし重大さをアピールする 映像にはホワイトレンジャーの五人それぞれの武器が一つになり、そこから強力なエネルギー砲が放たれる 身動きしない倒れたままの怪人に。 「明らかに過剰攻撃です」 強く訴えかける彼の正義心が否応なしに伝わってくる。部長は内心ため息をつく 「うん、確認した。…次の会議で運用部に突出してみるから詳細をまとめて送ってくれるかな」 部下は張り切った顔をして自分のデスクに舞い戻る。良い仕事をしたぞという顔をして。 目の前はPCに顔を突き合わせている部下達が黙々と自分のタスクをクリアしていく。 今から目をそらしたかった 窓を見ると空から雪の結晶が降っている 白い雪の結晶が。

殺人鬼の弟

 しばらく連絡のなかった兄の現状を知ったのは、警察からの電話だった。  人を殺したらしい。  何人も。    ぼくたちはただの家族から一変し、人殺しの家族になった。   「今のお気持ちは?」 「遺族の方に申し訳ないという気持ちはありますか?」 「実の家族が犯罪者になって、何か感じることは?」    連日、家に押し掛けるマスコミ。  マスコミの音と光は、殺人鬼の家がどこなのかを世間に教える、いい目印になってしまった。  マスコミが飽きた後、待っていたのは近所の人と他人からの攻撃だ。   「いつまでいるのかしら?」 「早く引っ越してくれればいいのに」 「やっぱり殺人鬼の家族だからかしらねえ」    両親は、日に日に衰弱していった。  父は目にクマを作って会社に向かい、生活費を持って帰って来る。  母は頬もごっそりコケてやつれ、夏だというのに炬燵に潜って眠っている。    ぼくは、学校に行って帰った。    冷たい視線が刺さって来る。  時には暴言が飛んでくる。  石を投げつけられて、額から血を流すこともあった。       「引っ越し先が決まった。来週の夜、この町を出よう」    父は、母とぼくに言った。  ずっと、引っ越しと転職を考えていたらしい。   「でも、この家がないと、あの子の帰ってくる場所が」 「……もう、住むことはできないよ」    母は最後まで抵抗していたが、父が押し通した。  既に母の通う病院も目星をつけたらしい。   「もう少し時間をくれない?」    ぼくは、引っ越しに賛成しつつ、時期をずらして欲しいと頼んだ。   「なにかあるのか?」 「殺人鬼の弟らしいから、殺人鬼の家族らしいことをやって来る。後、ずっと溜めてくれたお年玉、今全部もらえない?」        溜めに溜めた暴力の証拠を持って弁護士事務所に向かって、被害届というやつを出す手伝いをお願いした。    ぼくを殺人鬼の家族だと、犯罪者の家族と嘲笑った皆様。  おめでとうございます。  今日からあなたたちは、犯罪者の家族ではなく、犯罪者張本人です。    受理されたのは僅かだったけど、一瞬でも恐怖を与えることができたから、ぼくは満足だった。  新天地で、被害届を取り下げて欲しいという訴えが来たと、弁護士から聞いた。  当然断った。  だって、君たちも石を投げるのをやめなかったから。    電話を終えると、自然と涙が出てきた。  そんなぼくを、父が後ろから抱きしめてくれた。    この涙は、嬉し涙か、それとも悲し涙か。  殺人鬼の家族であるぼくには、人間の血なんて流れていないからわからない。

ひとまず

おふとんの重みの安心とあたたかさ 羽毛のおふとんは、わたしにはくすぐったい あれは、ちょっといけない 風の視線は冷たくて わたしだって負けずに冷たい 名前のない気持ちは 名前のない気持ち 無理に名前をつけてあげる必要なんて 風のつぶやきとお月さまのうなずき 季節には次のにおいがいくらかまじって さてさて、何を食べましょう いやいや、ひとまず寝よう 次、起きたら、何かたべよう 起きたとき決めてくれるよ そのときのわたしが ひとまず 寝よう ひとまず ひとまず おふとんを ひとまず

やりたかったから、やりました。他意はありません

 わたしはひたすらに、凝視しているだけであった。その先には悪意が満ちている。  教室の隅のほう、白昼堂々と暴行する生徒たちがいる。いつもそうだ。気弱そうなマタケくんが、たまにしか登校しないタレヤくんたちに蹴られ殴られいたぶられている。昼食を食べているわたしたちの、誰の視界にもはいらない配慮のもとでいじめられている。荒れた配置の机をさらに荒らしながら、タレヤくんはマタケくんの胸ぐらをつかんで捻り、じわじわとマタケくんの顔が赤くなる。ただそれをじっと見ている。  悪意は善意などより明らかに容易く、人の倫理を落ちぶれさせるものだった。巨大な自尊心から生まれる悪意。それが生み出す暴力。自己保身から生まれる悪意。そして傍観、無関心。果ては迷惑そうに目尻をゆがませながら、静かに終わりを待っている。この教室には悪意が満ちていた。  イジメは先生たちも感知しているところである。それは毎度行われるマタケくんへの呼び出しが示していた。いつもいつも、タレヤくんたちが登校した日の放課後に限って、ホームルームの終わりに担任がマタケくんを呼び止める。いつものことだった。  わたしはひとつ、手を打つことにした。鬱屈とした教室の、淀んだ空気を溜め込む窓が壊れるような。  今日はひときわ激しいのか、未だがらんがらんと椅子が倒れる教室を後にして、職員室へ走った。軽い音で開く扉の向こう、昼食を食べている担任を見つけると、やや声を張り伝える。 「先生!マタケくんがタレヤくんに暴力を受けてます!」 ぐるりと職員室を見回してみれば、それに驚いている教員とそうでないのとが半々くらいに見えた。急ぎ扉を閉め、スマホを取り出して警察に通報する。 「〇〇中学で生徒が殴られたりしてて…どうしたらいいかわからなくて…けっこう血とか、激しくって…」  一方的にまくし立てながら、そのまま通話を中断。これで警察が動くかどうかなんて分からないけれど、教育委員会やこの学校に連絡くらいはくるかもしれない。そのままスマホを操作して、動画アプリを開いた。あらかじめつくっておいたチャンネルと、非公開のまま投稿していた動画たちが表示される。即座に誰と分かるような動画はひとつもないけれど、この学校の関係者、さらに言うならイジメを知っている生徒ならまず間違いなくわかるように。そして詳しく知りたいインターネットの悪意たちがちゃんとたどり着ける程度の加工を済ませた動画が、これまであった現場のほとんどすべてぶん残っている。それらを上から順番に、余すことなく公開していった。続けて短くしたものを、別のSNSでも同様に。動画サイトのURLリンクを添付するのも忘れないように。  これをしたって、きっとマタケくんとタレヤくんの関係は変わらないだろう。傍観していたみんなが変わるわけもないだろう。それでよかった。  後日、担任から呼び出されたのはわたしだった。撮影されていた画角と、わたしが教室でそれを撮っていたことを知る誰かが話したのだろうか。担任の先生はすこしやつれているように見えた。 「どうしてこんな事をしたんだ?イジメが許せなかったか?」  余計な手間を増やしやがって、おかげさまでこんなことになったじゃねぇか。そんな悪意が漏れそうな眼差しで、先生は投げかけてくる。だから、その対極にいる笑顔で答えてやった。 「マタケくんも、タレヤくんも、あの状況も…それを無視する皆も先生も学校も、全部鬱陶しかったので壊そうと思いました!」  先生は自覚がないのだろうが、とびっきりの嫌な顔をした。だからこそ、わたしもとびっきりの悪意を込めて。 「たのしかったです!」  にっこり、わらった。

規則正しい生活 (掌編詩小説)

『規則正しい生活』って言うけれど 1日の始まりが朝だなんて誰が決めたの 皆んなが朝型な訳ないよ 夜型があって良いんじゃないかな (完)

テリアさん @015

―じゃあ、またね そう言ってテリアさんは、逆方向のホームを上がっていった。まるで明日も、部室で顔をあわせるみたいなことを、とびっきりの笑顔で。 ぼくたちは、卒業してしまった。 結局、テリアさんには、聞けなかった。ミステリイ好きなのかどうなのか。それだけではなくって、自分の気持ちにしても伝えていない。自分の気持ちが、自分でもよくわかっていないのだから、しかたがない。情けない。まったくもって情けない。 ぼくたちは、卒業してしまった。  卒業なんだなあ  卒業なんだねえ  卒業おめでとう、テリアさん テリアさんの顔を、頭に浮かべる。  じゃあ、またね 自分の気持ちは、次に会うときまで、きちんとしておくことにしたい。  じゃあ、またね、テリアさん

ビー・マイ・ベイビー

 一人の女がベビーカーを押しながら歩いている。昼下がりである。女のベビーカーの中には赤ん坊はいない。赤ん坊ではなく一丁の拳銃が入っている。女は公園に着く。そこでは幼子の母親たちが談笑している。女はベビーカーの中の拳銃を取り出し彼女らに近づく。「皆さん幸せですか?」

運ぶ

 駅のホームで、ベンチに座って電車を待っていたら、目の前を貨物列車が通り過ぎた。貨物列車はコンテナを運んでいた。そのコンテナには『友だち』と書かれていた。あんなに大量の友だちをどこへ運ぶのだろう。僕はベンチに身を預け、色々な想像をして、ため息をついた。そう、僕には友だちが一人もいないのだ。

黄金色の絶望

早く2026年のデカイ天変地異起きないかな 準備は多分満点何時でも逝ける心残りは穴子 刺身と鮟肝に鰭酒もう一度呑位は呑みかった 美味しい食べ物は裏切らない以上一瞬の幸を 与えてくれるから今夜も美味しい物の尽くし さぁ~此れで思い残す物等何も無い何時でも 来いさぁ~殺せとうぬぼれ刑事の長瀬智也を 気取り朝迄呑もうかその内迎え来る天変地異 心待ちに望みながら完

N市の死因記録

1月1日 男性 餅を喉に詰まらせ窒息死 1月1日 男性 ヒートショックにより死 1月2日 女性 階段でつまづき 転落死 1月3日 男性 喧嘩で椅子で殴られ、脳挫傷を起こし、死。 1月4日 女性2名 男性2名 N廃病院に侵入。院内を探索後、遭遇。壁に頭を打ち付け、お互いの眼球を奪い合う形でえぐりだし。絶命。 1月5日 男性 痴情のもつれから知人の男性と口論になり。道路に突き飛ばされる。轢死。 1月7日 女性 ハイキング中に毒性を持つキノコを誤食。8時間後に病院にて死 1月9日 男性8名 女性3名 N駅西口にて、遭遇。互いの目を奪い合い。指を噛み千切る。失血死。 男性一名が生き残ったが、六時間後、病院から脱走し、N廃病院の手前で野犬が骨を咥えているのを発見。 1月10日 男性 登下校時に車に轢かれ、轢死。 1月11日 男性13名 女性22名 N高等学校の廊下にて、男子生徒7名が遭遇。数分後に教室にて突然男子生徒が窓を割り、破片で他生徒4名を攻撃。 同じ事を遭遇した生徒6名が数分後に他の教室で行ったため。甚大な被害が起きた。 1月15日 男性 夜道を歩いていたところ、遭遇。奇声を上げて走り去る。職員の捜索むなしく、発見されず。 (追記 2月4日。N廃病院のエアコンの中から折り畳まれて発見。) 1月18日 男性 N廃病院に潜入。 当記録を発見。それを書き写し、2日後にネットに小説という形で投稿。 その2時間後に火事がおき。焼死。 1月21日 女性 道路を通行中 突如野犬に襲われ、死亡 野犬は駆除済み (追記 女性はネット上で18日の男性の小説を閲覧していたことが発覚) 1月23日 男性 ネットで小説という形で投稿された当記録帳を閲覧。 2時間後に溺死。 1月24日 女性 ネットに小説という形で投稿された当記録を閲覧。2時間後に失血死。 1月28日 男性3名 N廃病院にて当記録を閲覧。遭遇。 壮絶死。 1月29日 男性 ネットに小説という形で投稿された当記録を閲覧。焼死。 1月30日 男性 ネットに小説という形で投稿された当記録を閲覧。餓死。 1月31日 女性 ネットに小説という形で投稿された当記録を閲覧。溺死。

殺人犯はどっち?

「むかついた相手って、殺せたらいいのに。」 私は、意外と人にむかつきやすかった。 あるとき、空き教室にそいつを呼び出し、ナイフで襲った。 両手には手袋、口にはマスク。完璧。 グサッと鈍い音がなった。 急所を刺したみたい。いい気味。 そいつが苦しんでる間、死体と血をどうしようか考えた。 でも、相手は生きてた。 私を、刺した。 私は、何の対策もしていなかった。 相手は、私が死ぬ前、「あんたが予告してたじゃんw」… してない。 地獄で、思い出した。 ....私は、二重人格だった。

AI小説家はAIを使いこなす

 俺はAI小説家だ。  俺のアイデアをAIで膨らませ、AIによる高速執筆を実現している。  最先端勝つインテリジェーンスな小説家だ。    さて、そんなインテリジェンスな俺の目に、頭の悪そうな投稿が目に入った。   『感想は読者にとってハードルが高いので、定型文を作った方が良いのでは? 例えば、ぬるぽとか』    アンビリーバボオ。  感想が『ぬるぽ』だけなんて、なんて無味無臭なアンビリーバボオ。  インテリジェーンスは俺は、優しく人間の心を教えてあげた。   『さすがに、ぬるぽだけはつまんないですよ』    返事はすぐに来た。   『ぬるぽは例えです。言いたかったのは、感想のハードルを下げようってことです』    アンビリーバブル。  ルルルルールルル。  こともあろうに言い訳だ。  なんという、ハレンチ。  しかし俺は、AIマスター。  これ以上言い返したりなどしない。  代わりに、AIを起動し、俺のアングリーな感情をぶつけることにした。   『この例え話、分かりにくいですよね?』    返事はすぐに来た。   『普通に意図は伝わります。ぬるぽがユニークすぎて、そこに反応しちゃったのかもしれませんね(笑)』    表出ろや、AI!

失恋

友達と好きな人が被った。 とても、言えなかった。 ある日、友達が告白した。 「好きだけど付き合えない」 でもその時「やった。」とは思わなかった。 私にも人の心はある。 振られた友達に共感した。 でも気づいたのは遅かった。 私は失恋していた。 相手は友達のことが好き。だけど相手は噂が立つといけないから振った。 心が、凶器で刺された。 深い傷が残った。 一生、残るだろう。 深い深い、涙の傷が。

この世の全てに答えがあるが僕はカンニングをしてしまう

 皆悩んでる。 大体皆考えてることは一緒な気がする。 AIに質問をする。 自分の頭で考えない。 ツールを使うことが目的になっちゃってる。 お金についても言える。 食べ物についても言える。 社会問題についても言える。 精神体になれればいいのにと逃げる。 体があっての精神、心だと考える。 病院の看護師さんに体が資本よ、と言われたことを思い出した。 おじいちゃんの家の本棚に宮本武蔵が並んでいたのを思い出した。 心技体。 何かの指標が欲しい。 拠り所とも言える。 でも食べられる生活、布団のある生活、お風呂のある生活、エアコンのある生活。 僕の中にいる天使と悪魔と女神。 キリスト教に女神はいないらしい。 しかし仏教は厳密には酒、煙草をしてはいけない。 イスラムもお酒は駄目だ。煙草も推奨されない。 自分本意。 悪人正機。 量子力学は人間には荷が重すぎる。 フィクションの世界。 ノンフィクションが覆す世界。 カンニングの是非を自分自身で問う。 神様が言う。 「名前を書いたから地球に置いてやる。でも0点。」

傘を二本差す

 ああ、不安だ。  入院するのが不安だ。  生活習慣病にかかるのが不安だ。  癌になるのが不安だ。    だから、手あたり次第の保険に入った。  これで、何が起きても安心だ。  そう思っていた。   『今の貴方がやっていることは、雨の中、傘を二本差しているようなものです』    AIの言葉に、頭をぶん殴られたような衝撃を受けた。  身を守る道具は、あればあるほどいいと思っていた。  持ちすぎも良くないなんて価値観に触れたのは初めてだった。    思えば、鎧を二重三重に来ても、重すぎて動けないだけだろう。   「解約します」    臆病な心だと思っていた何かが消えていき、ぼくは保険会社に電話をかけた。

休日はいつも速い

 土曜日になった。  神様は、倍速ボタンを押した。  世界の速度が少し速くなり、人間たちの休日が速く終わった。    月曜日になった。  神様は、等倍ボタンを押した。  世界の速度が元に戻り、人間たちの平日がいつもの速さで始まった。   「神様神様。どうして休日を速くするんですか?」    神様の遣いは、不思議そうに尋ねた。   「休日は、旦那が家に帰って来るから。ソファで居眠りしてるばっかで役に立たないから、さっさと働きに出て欲しいのよ」    神様は、あっけからんと答えた。    神様の遣いは、そんな都合で振り回される人間たちが可哀想だと世界を覗き込んだ。  しかし、人間たちも自分の都合で他人を振り回しているようだったので、安心して放っておいた。

オレンジ色のシミ

 このシャツを屋外に干す時は、晴れた夜を避けてください。シャツにプリントされたウサギが、月を目指して、旅立ってしまいます。そうしたらこのシャツはただの無地のシャツになってしまいます。(このシャツには時々ニンジンジュースを染み込ませてください。)

多重人格

ジキルは医者に言った。 『この私から多重人格を消し去ってくれ。主人格のみにしてほしいのだ。ハイドに変われば取り返しがつかないことになる。急いでくれ。』 医者は了解した。 施術終了後。ジキルは医者の首を絞め、死体を踏みつけ病院から走り去った。

背中を追う、隣を歩く【14】

「二人とも謝罪の仕方がすごく律儀だったから」 「律儀?」 「『昨日更衣室で齋藤さんの悪口を言って本当にごめんなさい。反省の気持ちは今後の態度で示します』って」 「……素晴らしすぎる謝罪文だね。模範解答かよ」 「そんな、当然のことだよ」 「私たちが悪いんだし……」 感心する私に対し、二人は恐縮したように首を横に振る。 正直、驚いた。更衣室の出来事なんて朝が気づいていなかった可能性だってあるのだ。それをわざわざ自分から「悪口を言った」と白状した上で謝るのは確かに相当な勇気がいると思う。 「だから、私はもういいよって言ったの」 「……なるほどね」 昨日の今日で仲良しこよしとはいかないけれど、ただ他者を妬むだけの嫌な奴らではなさそうだ。私の中のトゲトゲした印象もみるみるうちに薄くなっていく。 「朝が許したんなら私から言うことは何もないよ。昨日は怒鳴ってごめんね」 「あ、ありがとう!」 「ありがとう。高橋さんも、齋藤さんも」 二人は改めてペコリと頭を下げた。   「あーっと、そうだ二人とも」 「う、うん、何?」 「改めて名前教えてくれる? 私まだクラス全員の名前を覚えきれてなくて」 私がそう言うと、二人はぱあっと表情を明るくした。 「じゃあ、改めて。私は真田理沙です」 「仁科美咲です! よろしく」 理沙と名乗った方がお淑やかに頭を下げ、美咲と名乗った方が元気よく右手を上げた。 「うん、改めてよろしくね」   こうして、私の高校生活に新たに二人の友達が加わった。 信用を完全に勝ち取るのはこれからの二人次第だが、あの真っ直ぐな謝罪を見た後だ。もう二度とあんな陰口を聞くことはないだろうと私は思った。

飯ならさっき食べたじゃろ?

「飯はまだかの?」 「あら、おじいちゃん。ご飯はさっき食べたでしょ」    なんてやり取りをしていたのが、一年前。  相変わらず、認知症は残ったままだ。  でも、最近は事情が変わった。   「ご飯できましたよ」 「飯ならさっき食ったじゃろ。な、えーちゃん」    AIとの会話と現実の区別がつかなくなった結果、やってないことをやったと言い始めた。  スマホの画面を覗き込めば、AIと食事中のだんらんをした履歴が残っている。   「はあ。次の食事で、倍の量食べさせないと」    やったことを忘れるのも考え物だが、やってないことをやったと言い張られるのも考え物だ。

背中を追う、隣を歩く【13】

次の日。 私の頭の中は昨日勢いでぶち上げた『打倒・齋藤朝』の宣言で占められていた。 (さて……目指す目標としたらまずは夏休み前の期末テストだよなぁ…どう勉強すればあの天才を抜けるのか……) 前途多難すぎて、登校早々「はぁー…」と深い溜息をつきながら机に突っ伏していると 「あ、あの……高橋さん」 頭上から遠慮がちに呼びかけられ、のろのろと顔を上げる。 視界に入った顔を見て軽く目を見開いた。昨日更衣室で朝の愚痴をこぼしていた女子二人組だ。いい印象は正直無い。でもかくいう自分も昨日はほぼ八つ当たりの勢いで怒鳴り散らしてしまったので妙な気まずさが込み上げる。 「な、にか……御用でしょうか?」 警戒混じりに問いかけると、二人は顔を見合わせた。 「昨日、あれから二人で反省したんだ。私たちの言ったこと最低だったって」 「だから高橋さんにもちゃんと謝罪をしなきゃって思って……」 二人は示し合わせたように、深々と頭を下げた。 いやいや、そんな大層なお礼を言われるようなことはしてないんだけど。 「お、おぉ……いや、私こそいきなり怒鳴ってごめ……いや、ちょっと待って」 混乱する頭を振り切り、私は二人を制止した。 「ま、まずさ、私よりも先に謝るべき相手がいるんじゃないの?」 私なんてただのうるさい乱入者だし。一番の被害者は間違いなく朝なんだから。 すると二人は顔を上げた。 「齋藤さんには学校に来て一番に謝ってきたよ」 「もちろん、真っ先に!」 「あ、そうなの?」 判断が早いな。 「えっと、じゃあ……朝に直接確認してきても、いいかな?」 「う、うん!」 半信半疑のまま、私は2人と朝の机へとわらわらと向かった。 3人が一気に押し寄せ周囲の視線が集まる中でも、朝は平然としていた。 「おはよう紬ちゃん。真田さんと、仁科さんも」 あ、この二人ってそんな名字だったのか。まだどっちがどっちか判別不能だけど。 「おはよう朝。ねえ、二人が謝ったって本当?」 「うん」 私が尋ねると朝は顔を上げて短く頷いた。後ろの二人は壊れた玩具みたいにコクコクと激しく首を振っている。顔に罪悪感が滲んでいるあたり、嘘ではなさそうだ。 「え、で……許したの?」 「うん」 「マジか」 私なら陰で人間じゃないだの何だの言われていたらそう簡単には水に流せない。器の広さに感心していると、朝は「だって、」と言葉を続けた。

プレゼント

物心なんて、つくはずのないころ。 私は、プレゼントをもらっていた。 これだけは、なくさないようにしないと。 とおくで、人の声が聞こえる。 口が、不自由になった。 とおくで聞こえる音。 「ピー、ピー、ピー」 機械音かな? あっ、プレゼントを、落としちゃった。 初めてののプレゼントだったのに。 生まれてから。 「ピー、ピー、ピー…」 音が鳴りやんだ。 さようなら。

汚れた土

 あれを持ってくるなんてとんでもない。 でも他に置き場がない。 狸が失明してしまう。 虫の足が8本になってしまう。 雨で流れた土が海に流れ込む。 世界中の土が失われていく。 土を作り直す工程を研究しないと。 皆てんやわんや。 気の効いたことが思いつかない。 痩せた土の野菜を食べているからだ。 まずは土作りから。 ゴーレム、プラモデルは沢山廃棄されてそうだ。 何かに使えるかもしれない。

またね

 処刑場に行った。友人に会いに行ったのだ。友人はこの間斬首刑に処され、その生首がさらされていたのだ。友人の生首に色々な話をし、そのうち日が暮れてきたので、家に帰った。「またね」と手を振ると、友人も手を振った。帰り道、友人は生首なのだから手を振れるわけがないことに、ふと気づいた。

電飾キャビネット (掌編詩小説)

滴る雨上がり、久しぶりの無人バー こんな日には、隠れ家にもネズミは集まらない ワインを飾る電飾は切れかかっている オーナーはキャビネットの埃を取った 滴る雨上がり、久しぶりの私だけの時間 こんな日には、独り酒も悪くない 今日を生きる気力は切れかかっている オーナーは店の看板を仕舞った 滴る雨上がり、もう朝日が見える こんな日には、ダーツでもしようかな 君は動かない。ただ観ているだけ。 静かに息を引き取る、電飾キャビネット (完)

空気売りのおじいさん

「やあ、いらっしゃい。ここは色んな空気を売っている場所だよ。 100年前の浜辺の空気もあれば、東京109の空気もある。上司に叱られた時の空気もあれば、プロポーズが成功した時の空気もある。 さああなたはどの瓶が欲しいかな?1つ200円だよ。 え?どれも同じ空気だからいらないって?それは仕方ないなー。 どれ、それじゃあ特別に、君にピッタリの空気をあげよう。 どんな場所で開けてもいい。君だけの空気だよ。君は毎日空気を読みすぎている。本当は君に必要なことは空気を読むことじゃなくて、息を吸うことだからね。そうだろう?」

もしも地球が消滅したら

 「私は、そうだな…お金を使えるような状況でもないし、家にある備蓄していたお菓子を沢山食べる、かな」 でた、彼女のもしも話 もし宝くじが当たったら、もしお金持ちになれたら、もし超能力者になれたら…そんないつもの在り来りなもしも話  「俺は……そうだな………」 暫く考えたが、現実的な話では無い為か、それとも俺の想像力が足りないせいか何も浮かばない  「えー、なんかあるでしょ?例えばいっそのこと全裸で往来を走ってみるとか」  「いや、そんな変態的な思考は持ち合わせてないし、しない」  「冗談に決まってるじゃん、そしたら引く」 自分で言っておいて……まあ、開放的になるのも1つのもしもなのかもしれない  「私はお菓子沢山食べて、今まで観てきた動画を見返して…そんな時間ないかな」  「いや、いいんじゃないか?ビクビクして死を待つより、思い出を振り返って死ぬのも」  「そうだね……ところで、何か一つ浮かんだ?」 俺は暫く考えた…そしてある事が浮かんだ このタイミングで言うのか…まあ、いいだろう  「お前にプロポーズする」  「…………え?」 思いがけない返答が来たのか、素っ頓狂な顔をしている彼女がいる  「お前に、プロポーズする」  「いやいやいや、二度も言わなくても聞こえてるからっ!!」 顔を赤らめた彼女は挙動不審になり、見ていて面白い  「てわけで、これから婚姻届出しに行かないか?」  「えぁ、…………はい」 もしも話が本当の話になったが、これから夫婦になるので地球は消滅しないでほしいな  「なぁ、もしも…」  「なに?」  「いや、なんでもない」 もしもの先は言わなかった  『もしも、俺が本当は病気に罹っていて、お前より先に死んでしまったら』 なんて、言えないよな…どうせすぐバレると思うが、今はこの瞬間を噛み締めておこう

治療

 病気の少女が、赤い風船を主治医のところに持っていった。「この風船も病気なの」主治医は風船を元気にするため、風船に注射を打つことにした。

試験

 休日、近所の大学に人が集まっていた。入口に看板が立っている。『街灯試験会場』街灯になるための試験を受ける人々が集まっているのだ。その中に、つるっ禿げの青年がいた。光る頭は既に街灯のようだった。数ヶ月後、街で偶然その青年を見かけた。颯爽と歩く彼の頭は、ふさふさの髪の毛が生えていた。

下手くそ神話

「下手くそ」    ベッドの上で私が笑うと、彼氏はこの世の終わりかってくらい恥ずかしそうにしていた。  三回目でようやく成功。  童貞卒業おめでとう。    私は、彼氏がかぶっている布団を強引に剥がし、小さくなった頭を撫でてあげた。   「大丈夫、大丈夫。これから上手くなるよ」    いったい私は何を慰めているんだろうと思わなくはない。  けど、最初は誰もが下手なもんだし、何回やってるやつでも、下手くそのままで自信満々なんてやつもいる。  こういうのは、愛情を感じられればそれでいい。  最悪、発情し続けていても、私の体に興味があるってことだからそれでいい。    人間というのは、割とシンプルだ。  私はベッドから降りて、コーヒー豆の入った袋を取り出す。   「コーヒー飲む?」 「……飲む」    本当は、もっと丁寧な事後を望むが、初心者に要求するほど鬼畜じゃあない。  それも一緒に覚えていこう。  今は、日常で口をゆすいで、前を向こう。    コーヒーの作られるガシュガシュとした跡が、寝室に響く。    こんな穏やかな夜が迎えられるのは、貴方が私の初めての手料理を、美味しいって褒めてくれたからだ。  不揃いな千切りキャベツに、黒こげのハンバーグ。  特製ソースはゲロの味。   「どうぞ」 「ありがと」    下手くそを笑い話にできることが幸せの秘訣だって、教えてくれたのは貴方だ。

毛玉の森と大きなススキ

新しい手袋に毛玉が出来ている 擦れて絡まって丸まって 毛玉の森が広がっていく 毛玉の森 その昔、手袋の上に出来た毛玉の森には 兎や鹿などの動物しかいませんでした 森が広がるに連れて 次第に象や人に、竜までもが森へ住み着いて、今では黒い力も住み着くまでになっていきました 【大きなススキ】 毛玉の森を太陽が沈む方へ進んで行くと 大きなススキが群生する草原に出ます 背を伸ばしても届かない大きなススキは いつも暖かい風に吹かれています 太陽の光を浴びて黄金色に輝く草原は 豊かな香りがしています

雷雨

 私の不安を笑って流してほしい。そして、叶うならば私の不安が現実になりませんように。

スーツ姿のピエロ

涙の数だけ強くなれる。 そんな虫の良すぎる言葉など到底信じられない。だからリズムに乗せて踊り続ける。 笑い続ける。手品を披露して鳩を飛ばして颯爽と去る。 本当に信じられるものとはなにか?私たちが向かっている先には何がある?努力は報われるのか? 日常を繰り返す私たちに与えられるものは目の前のカードだけ、それでもそのカードのジャックをどれだけ集められるかを試すのが私たちにできることかもしれない。仮面を被りすぎて外せなくなってしまっても、いつか解け落ちる日が来ることを信じている。ちなみにリセットした毎日をあなた方はどう生きていますか?

ミニストーリー

前略 花粉症たいへんツラいです。喉痛いです。鼻水スゴイです。カラダだるいです。何もしたくありません。無理することないくらいつくり置きはありますが、頭では考えてしまうのです。アレはダメでした。カラダがキツイとこでかすりもしないと精神的にもまいってしまいます。ひとまず、こんなです。 草々

予想より3cm低い

マチアプで会った高身長が、 予想より3センチメートル低い。 がっかりする。めそめそする。 私より低い。 自称高身長。 自己肯定高い。 こういうやつに限って意識だけ。 身長盛ったやつとこれからデートしたくない。 顔はタイプだけど、意地でも。 デート今日無理ですって言ったら引いた。 恋愛観も低い。 そんな顔してたしね。 どタイプ。 グイグイいきたくなる。 期待値高い。 気分屋そうで、 感情の高低差ヤバい。 付き合い姿勢が、 3センチメートル低い。 食事誘っても、 こっちのこと気にしすぎ。 他人への、 腰低い。 私は強き。 首高い。 でも、 気持ち的には3センチメートル低い。 それで挑めば、 心も軽い。

EROTIC17FLAVOR✱母の陽気な香り

母の運転する車が角を曲がり見えなくなる|| 今日は珍しく母が朝から起きていて 更に珍しく朝食も作ってくれた 「たまにはお母さんらしいことしないとね」と鼻歌交じりで言う 「疲れてるでしょ。いいよ自分で作れるから」 「いいの。いいの。作りたいのよ」 そう言って目玉焼きを焦がしている 朝食を食べて食器を洗っていると 幼馴染でクラスメイトの孝宏からラインが入る。気になるが先に食器洗いを進めた 食器洗いを終わらせ、二階の自分の部屋で歯磨きをしながらスマホをイジる 孝宏からのラインの内容は(インフルになったから今日は学校休む)だった 「…別に一緒に登校してないけど…」 (お大事に)と返した (俺がいなくても泣くなよ) (頑張るよ) 「千知。車で送ってくよ」 「いいよ」 「いいから、いいから(ご機嫌)」 母は一度自分で決めた事は実行しないと気がすまないタイプで、厄介なのは周りを巻き込むタイプでもあることだ しょうがないので先に車に行って後部座席に座る。シートベルトを締める。 母が来るまで趣味の自作の小説作りを続ける 今書いている話は、ミステリーで、平和な港町である日、一人の少女が行方不明になる話を作っている。 小さな町なので住民達が親身になって捜索に協力するのだが、その協力する町民の中で、行方不明前の少女と怪しい関係がある人間が一人また一人と出てくるストーリーだ。追加で少女がインフルになった時、診察した町医者が少女の体に触れるシーンを入れておこう。犯人候補がまた増えた 母が運転席に座る エンジンをかける 「よし、じゃあいくよー」 僕は特に答えなかったが顔を上げ母の顔を後ろから見た。久しぶりにしっかりと。 いつの間にか薄く化粧をしていて、束ねた髪が少し傷んでいる。たが、美人の面影は残っている。 僕が子供の頃は、今も子供だけど、小学生の頃とかは、授業参観で母親たちを見ると「うちの母は若く美人なんだ」と幼心にも思ったりもした。僕に恥ずかしげもなく愛情をたっぷり振り注いでくれる美人な母を小さな僕は好きだった。 今は?…嫌いではない。いや、家族に好きとか嫌いとかあるものなのか。車が動き出す そして母は、歩いて十分で着く学校に車で送ってくれた。 別れ際に「晩御飯も作っておくよ」と言われたが、「コンビニ弁当でいいよ」と断った。あまり幸せになりたくなかった。 母の運転する車が、角を曲がり見えなるまで見送る。母の陽気が少しでも続けば良いと思いながら