実力主義の壁

「年功序列はやめだ! 来年度より、弊社も実力主義とする!」    壁がそびえ立った。  高い高い壁が。    壁には、年間の売り上げがいくらだの、特定の資格を持っていることだの、壁を乗り越えるための条件が刻まれていた。   「もちろん、実力主義なので、実力が変わらなければ給料も変わらないものとする!」    社員たちの反応は様々。  一気に上に上るぞと意気込む若者。  安心する年功序列の恩恵を受けられた壮年。    そして、自分の限界を悟っている中年。  出世を諦め、会社に言われるがまま手を動かしていた中年たちは、自身の履歴書と目の前の壁を見比べる。   「ああ、もうこれ以上、前には進めないんだ」    彼らは、動くのをやめた。       「今年の資格目標は、この資格所有者を社員の十パーセントにすることだ!」    実力主義の会社となるべく、社長が想いを語る。   「この資格、取得してくれるな?」    実力者の席に座る幹部たちが、中年へと指示を下す。   「お断りします」    地べたに座る中年たちは、口をそろえて宣った。   「え? なんで?」 「その資格とっても、給料あがらないんで」 「だが、壁を超える条件の一つではあるぞ?」 「別の条件をクリアできないんで。他の人に頼んでください」        会社の実力が、静止した。    個の意思を持たず、会社の命令に忠実に動いていた者どもが、動かく人形に成り下がった。    社長は頭を悩ませ、会社を動かす実力が問われてた。

朝食

まだ気温が上がりきっていない 八月の午前中は もう秋だっけ?と少しの錯覚と みずみずしい果物への欲望で 心が支配されてしまう 小鳥の声がそれを後押しし カラスがかき乱して 現実に引き戻してくれる 野蛮に 強引に 余韻もなく パンと牛乳と バナナとぶどうの朝食は 健康的なような でもちょっぴりのもの足りなさ 考え込んでしまうくらいなら 食べてしまったら お茶漬けを さらさら がふがふ からり 野蛮で 強引で 余韻もない

ある夜の話 其の二

「あの、なぜいつもあなたなんですか?」 「何がですか?」 「僕は、あの娘に介助をお願いしたい」 ベッドの上で、中年の男が笑った。 「僕、両手が不自由じゃないですか?」 「ここ、そういう店ではないですよ」 「横になってるだけです」 「それって、もうセクハラですよ」 「バリアフリーでお願いします」 薄暗い部屋に、デジタル時計が光る。 「まぁ、上に相談しておきます」 「僕からも話していいですか?」 「はい。ご自由に」 男は扉を閉めた。

くらげ

くらげを 海の月と 書くのだと知って 愕然とした そう漢字をあてた人は いったい何を 見ていたというのだろう くらげは 海の星 じゃあないか

ラスボス代理

「お前がラスボスだな!」    ダンジョンの最深部。  勇者は、魔物に剣を突きつけて叫んだ。   「いえ、ラスボス代理です」    魔物は答えた。    冒険者は剣を下ろして、首を傾げた。   「え? 代理?」 「代理です」 「本物のラスボスは?」 「休暇中です」 「じゃ、出直します」 「私を倒しても、ダンジョンをクリアしたことになりますよ。しかも、私はラスボスより弱い。出血大サービス」    冒険者の剣が揺れる。  ラスボスを倒して気持ちよくダンジョンをクリアしたい気持ちと、通常よりも低いコストでダンジョンをクリアしたい気持ちの狭間で、心が揺れ動く。   「そんな、卑怯なことは」 「卑怯じゃないですよ。こっちの都合なんで」 「……もしもお前を倒した後、ラスボスが戻ってきたらどうなる?」 「ダンジョンのクリアが確定した後なので、魔物の生存は不可。ラスボス、バカンスから帰ってきたら家を失ってて、ひっくり返るでしょうね。あっはっは」 「笑い事なの!?」    ラスボス代理の言いざまに、思わず冒険者の方がラスボスを心配してしまう。  しかし、相手は魔物。  そんな善意ごときで相手をしていい存在ではない。    ダンジョンが存在する限り、周辺の村々に被害が出るのは事実なのだから。    冒険者は揺れていた剣を握り直し、ラスボス代理に剣を突きつけ直した。   「俺は、お前を倒す!」 「おお、ようやく決意しましたか。では、尋常に、勝負!」    冒険者の剣とラスボス代理の爪が、ダンジョンの最深部で衝突した。    そして、剣が折れ、冒険者は一撃で敗北した。   「いや、弱いんかーい!」    ダンジョンの魔物たち全員から逃げ隠れする成功にして最深部に到達した冒険者は、敗北と共に入口へと強制転送となった。

何の因果かデートに行く事になる

 また彼女が出来た。 都心の少し高いファミレス風のランチを食べる予定だ。 僕はドレスコードなどを調べる。 良かった、普段着とサンダルでもOKだ。 電車男のようだ。 知り合いが何をするかではなく何をしないかに焦点を置け、と言っていた。 聞き役に徹するのが肝心かもしれない。 僕は脇役になり彼女が主役、宇宙の中心である。 そもそも女性は皆神様なのだ。 犬の久しぶりのデートはご主人を立てる忠犬となり風を誘う。

全国平均 76%

ある日の午後。ようやく男が目を覚ました。 「結局、負けかよ…」 サッカーの国際試合を見るため、仕事を休んだ。 カーテンの隙間からは、濃い光が差し込んでいる。 照らされたテーブルの上には、妻からのメモ。 ──友達とランチに行ってくるね。夕方には帰ります。 昼ごはんはチンして食べてね。 ソファーに深く座り、テレビを点けた。 「今朝の試合の結果です」 アナウンサーが残念そうな顔で伝えている。 「試合には負けましたが、サポーターの行動が世界の方々から称賛されてます」 観客席で青いビニール袋を手に、ゴミを拾う人たち。 「素晴らしい光景ですね。では、また来週お会いしましょう」 男は画面を見ながら、鼻先で笑った。 エンディング。 右端には、 ──本日午後の存在価値 全国平均 76% 次の朝。 洗面所に置いてある体重計に乗った。 ──体重 72キロ 存在価値 95% 液晶パネルには、自分の存在価値が%で表示される。 ──生まれたばかりの赤ちゃんは存在価値100%らしい。 誰かが言ってたな。まぁ、どうでもいい。 「あなた、お弁当できたわよ」 妻は肩までの髪を耳にかけながら、片足をそっと乗せた。 ──体重 48キロ 存在価値 95% 「ねぇ…今晩、ちょっと話があるんだけど」 「なに?」 「帰ってからでいいわ」 夕食後、妻が話を切り出した。 「あのね。友達が、パート募集してるから来ないって誘われたんだけど」 「どうしたいの」 「週に3日くらいだからね。お小遣い程度にはなるかな」 「いんじゃない。でも、無理しないでね」 「ありがと…」 妻はスマホを手に、友達へラインを送った。 窓の向こうが、薄暗くなる。 しばらくのあいだ、部屋には着信音だけが響いていた。 「先に行くね」 妻が弁当をバッグに入れ、もう一つをテーブルに置いた。 「気をつけて…あのバッグ、初めて見た」 男は体重計に乗った。 ──体重 72キロ 存在価値 90% ほんの少し、胸の奥がざわついた。 スーパーのビニール袋を手に、妻が帰ってきた。 「ごめん、遅くなった。今からごはん作るね」 惣菜をパックから皿に移し替え、レンジに入れた。 「あのね、店長が正社員にならないかって」 嬉しそうな横顔。 「そういえば、あなたの工場、外国人の従業員雇ったんでしょ。なんか大変だね」 男は洗面所に行き、体重計に乗った。 ──体重 72キロ 存在価値 70% しばらく、数字を見つめていた。 テレビでは、豪雨被害のニュースが流れている。 「なぁ…ボランティアに行ってみようかな」 男の声に、妻が振り返る。 その顔は、口元だけが笑っていた。

無意味君と、無力な僕。

だから言っただろ、君には何も出来ないって。僕は、足元で藻掻く君に目をやる。君は、僕のことなんか目もくれずに必死に地に散らばった写真を集める。 「ねぇ、やめなよ。誰もそんなこと望んじゃいない」 僕は君の背中に語りかける。小さく縮こまった君の背がとても虚しく見えた。 僕は君のことは止められない。 「ねぇ、やめろって。そんなゴミを集めて何になるんだよ」 君は僕の声には振り向かない。ただ目の前の写真を集めて集めて両手で掬い上げる。途端に写真は、砂へと姿を変えた。さらさらと隙間からこぼれて、床へと流れる。その砂は魔法のように写真へと姿を変えた。 君は諦めることなくもう一度跪いて写真をかき集める。 僕は、1枚だけ写真を覗き込む。 そこには、僕がいた。 僕と君が笑って隣に映っていた。 もう1枚、君の手にある写真を覗き込んだ。 海を背景にした君と僕。太陽よりも笑顔が眩しい君に目を細めた。 「もう忘れてよ」 君の表情は見えなくて、でも段々と苦しくなる。 君の心と繋がったみたいに、感情が流れてくる。 「無意味なものに縋るのはやめてくれ」 君の心は荒波みたいで、宝物に触れようとするものは呑み込んで自然に帰す。 「もう、終わりにしよう」 言葉が届かない君は諦めもせずに一枚の写真を掬い上げる。 僕と君がタキシードを着て、手にはお揃いのリング。 それすらも数秒したら砂へと変わって地に落ちた。 「 」 君の言葉は僕には届かない。 君がどんな表情をしているのかもわからない。 君が僕に何を望んでいるかもわからない。 ただわかるのは一つだけ。 僕には何も出来ない。 無意味な過去に縋るのはやめて。 前を向いてくれよ。愛しい人。

賞金稼ぎ

「編集長、今月の応募作品、やたら多くないですか」 「そうだね。今回は賞金が出るからね」 「それにしても、この数は……どれくらいAIですかね」 「半分くらいは賞金稼ぎかな」 「昨日、審査してくれる作家先生から、断りのメールがきましたよ」 「大丈夫。ちゃんと考えてある」 編集長は頬を緩め、応募作品が入ったUSBメモリーをパソコンに挿した。 「審査には、私たちもAIを使うことにした。総評も書いてもらう」 「それじゃあ、AIの作品をAIが審査するってことですか」 「AI vs AIだ」 ──審査発表の日。 スマホを前に、女の指先が震える。 ごみ箱の周りには丸めた紙が散らかっていた。 「今回は自信ある」 祈るようにメールを開いた。 『最優秀賞おめでとうございます』 ─総評─ 「作品の中で語られる主人公の言葉、私には作れない新鮮さを感じました」

明日の自分

友達が遊びに来ている 土曜日の14:00頃 取り敢えず私達はゲームを進める 「今日はどうする?」 「旅に出たいな。何か、真っすぐ歩きたい。どこまでも真っすぐ」 「じゃあ旅に出ますか」 「行こう」 彼はアイスコーヒーを私のキッチンで作って飲んでいる。私のマグで。断りもなく。 因みに私にもアイスコーヒーを作ってくれた。私にはキュウリとトマトのサンドも付いている。勿論、彼が冷蔵庫から勝手に作ってくれた。 改めて言うが、彼とは付き合ってはいない。だから、手を繋いだり、キスをしたりなどない。 テレビモニターにはボートに私と彼が一緒に乗り大海を進んでいる。空には四角い月が昇っている 特に大したハプニングもなく現実世界も夜になる。 「お腹へったね」 「うん」 「何か作るよ」 「うん」 彼が私に持ってきた平皿には、キュウリとトマト、摺った山芋を茹でた蕎麦に添えた物が盛り付けてあった。 私の質素な食材を使って美味しそうな料理をこしらえてくれた。 「これはお好みで」 小皿には納豆とキムチがある 「ありがとうございます。感謝します」 「苦しゅうない。召し上がれよ」 「はは〜」  私達はゲームをセーブして電源を落とした 明日は私は休み。予定もない。あるにはあるが、肌着を買いに行こうかなと思っていた程度だから、次の休みでも平気。 「明日は予定あるの?」 彼は蕎麦を啜り始めていて、ズルズルと口の中に入っていく。蕎麦と私の質問が。 モグモグ、モグモグ。 モグモグ、モグモグ。 こちらを見ている。 缶ビールのプルタブを空けて飲む。 ゴクゴク、ゴクゴク ゴクゴク、ゴクゴク 一気に飲み過ぎ。 「何だって?」 「あ明日は予定があるの?」 「え?」 彼はビールを飲みながらスマホを操作している。首は仰け反り、目は下に下がる。変な格好。 「何もない。泊まって良いの?」 「何言ってんの。それはマズくないですか」 と言っても良かったけど「良いけど」と答えてみた 彼は暫くむせていたけど、何とか落ち着いて私の目を見て、彼の口が言う 「手、出すなよ」 「君がそれ言う?君は手を出さないって約束できるの?」 「約束出来ないとダメなの?」 もう、そういう所が君らしいよね なんか爆笑してるし。 時計の針は夜19:30を過ぎたところ。 明日の自分に早く会いたい。

ある一大プロジェクトについて

澄み渡るような初夏の空気が外から漂ってくる。ほとんど遮るものが無い田舎の夜空を見上げると、星たちが煌々と輝く紺色の屋根はどこまでも続いている。 その様子はさながら大きなプラネタリウムのようだ。 夏の匂いを感じ取って、土の中で時を待っていた若い虫たちが徐々に姿を表し始めたつい数日前、俺たちの敬愛する中崎先輩は、一大プロジェクトのリーダーを務める事になった。 チームの主導メンバーは俺を含めて4人。物静かだが心は熱い中崎先輩、俺、後輩組の気弱な川北とお調子者の江島だ。 あと30分で定時になるというところで先輩が言った。 「今日は仕事終わりに作戦会議だ。いつもの会議室を借りよう」 リーダーは流石に気合いが違う。 それもそのはず、プロジェクト本番は明日だ。元々プロジェクトを遂行するはずだった“選抜チーム”が問題を起こし、当時手の空いていた俺たちが直前になって代わりに抜擢されたのだ。 ここで成果を上げれば、暇を潰すのが主な仕事である俺たちの評価も逆転するだろう。 先輩は、ここで人生の流れを変えるとでも言わんばかりの勢いを顔に宿している。 「中崎さん、迷ったら俺に着いてきて下さいね!俺がみんなを引っ張って行きます」 江島は両腕を頭の後ろで組み、背伸びをしながら言った。 「うるせーよ、お前こそ足引っ張んなよ」 どっと4人に笑いが起こった。江島の軽口は今日も健在だ。 だがこいつの一言には、緊張を解いて和やかな気持ちを作ってくれる力がある。証拠に、先輩の肩に入りすぎていた力が程よく抜けたのを感じた。 こんな調子で俺たちは、プロジェクトを引き継いでから今日まで死に物狂いで準備してきた。 「各々データをまとめて準備しよう、本番まであと少ししかないからな」 俺がそう言うと、川北が不安そうな顔で本当に大丈夫でしょうか、と自分の手元を見て言った。 「僕らに与えられた時間は10日しか無かったんですよ?元々プロジェクトを担当していた選抜チームは、3ヶ月もかけて準備していたのに。引き継ぎしてる時点でもう倒れそうでしたよ」 川北のネガティブな発言を跳ね返す言葉が見当たらず、次第に空気が重くなるのを感じた。 そもそも俺たちは、全員あまり仕事ができるタイプではない。だからこそ今の忙しい時期に手が空い ていて、このデカいプロジェクトを引き受けることができたわけだが。 正直俺たちのチームにこの大きな仕事をこなせる自信のあるやつなんて一人もいなかった。 刑務所のようになった室内の沈黙を破って、真剣な表情で江島が呟いた。 「でもこれを成功させれば、俺らの人生は変わる」 全員の表情に一気に力が入る。 それをじっと眺めていた中崎先輩は一人一人に淡々と、しかし力強い口調で話し始めた。 「江島、お前妹さんが病気だったよな」 「そうっすね、でも仕事休んで療養させる余裕なんて無いんすよ」 「川北は恋人との結婚に踏み切れないでいるな」 「…はい、どうしても幸せにできる自信が持てなくて、決心できません」 先輩は俺の方を向いた。 「高田は仕事のことで親戚から疎まれている」 「一応エリートの家系なんで、気の向くまま就職して仕事ができない俺は、みんなに落ちこぼれ扱いされてます。いない方がマシだと」 とたんに視界がぼやけた。くそ。 もう泣かないと決めたじゃないか。 次に先輩は俯いて、自身の心に鞭を打つように力を込めて言った。 「…みんな知ってるだろうが、俺は先日妻が死んだ。妻も子供たちも俺の働く姿をかっこいいと言ってくれていた」 「悲しみは癒えないが、代わりにこのプロジェクトを任されたんだ」 先輩の手は震えている。大切なものを失って欠けた心を忙しさと達成感で埋めなければ、おかしくなってしまう事を理解しているのだ。 「これが成功すれば、全てが上手くいく。俺たちには成し遂げるべき理由がある」 そこまで聞いた俺たちの中に、弱音などもう微塵も残ってはいなかった。 決戦の日がやってきた。 俺たちは太陽が昇るより早く現場へ赴き、幾度となくシミュレーションを重ねた。 やがて開始時刻が近づくと、俺たち主導メンバー以外の外部プロジェクトチームも到着し、準備を始めた。 「今回のはとんでもない大きさだな」 「ああ、もしかしたら最大級かもしれない」 関係者たちのそんな話し声も次第に静まり、見晴らしの良い丘から進行状況を見ていた中崎リーダーが開始の合図を送った。 「始めよう」 俺たちはお目当ての虫に一斉に飛びつくと、自前の顎を使って小さく分解し運び始めた。 俺はみるみる内に解体されていくその大きなカブトムシと、共に戦う4人の仲間を眺めながら 「蟻としてこれ以上の幸せはない」 とこの一大プロジェクトの成功を確信した。

夕立

よその家のごはんというのは 多大にカルチャーショックだ それがおいしいのでも おいしくないのでも 急な夕立に ウチで雨宿りしてきなよ からの流れで 夕食をごちそうになる 断れない自分も 十分といっていいほど 罪なわけだ あああ、そうなんだあ ここの家って 食事のときは テレビ消すんだね それだけで もう……なんだか…… どうしても わたしへの質問だらけになる きいてる合間に食べて こたえる合間に食べて 味なんてさ するわけないよね…… みそ汁に入ってるトマトも 砂糖のかかってるトマトも やけにトマトの主張が大きいサラダも てか、トマトばっかだな 家庭菜園か? できすぎちゃったのか? 豊作だな よろこばしいことで はやく、自分の家のごはんが 食べたい

新落語「コンコルドの話」

新落語 誰もが知っている 「コンコルドの話」 今宵は、コード このような 言葉があるのは それは、誰もが知っている のびる 文字を変更 コード から コンコルド それからどうした 超音速旅客機 それはどうして 世界をつなぐ架け橋になった事実は隠せない そのあとどうした まだ書くこと あるだろ スピードアップ こんなのどうでしょう 書けるもんなら 書いてくれ

ポイント

日曜日の朝、八時。 幹線道路脇に、二人の警官が立っている。 「先輩。雨降ってきたっすね」 「寒いな」 歩道の植え込みの影に、レーダーを置いた。 「なんか、ずるくないすっか?」 「なにが?」 「レーダー隠してるし」 「見えたら、スピード落とすだろ」 二人は、気づかれないよう、身をかがめた。 「なんかこの瞬間、ワクワクしません?」 「あぁ」 「この前、釣りに行ったときと、同じなんだよなぁ」 「獲物を取る感じだ」 すると、一台の車が速度を超えて走ってきた。 「きたぞ」 「あっ、スピード落とした」 「バラシたか……」 水しぶきを上げ、余裕の顔で通り過ぎた。 「流れもポイントも、いいんだけどなぁ」 「おぉ、きたぞ」 「大物ですよ」 大型トラックが、スピードを上げて近づいてくる。 「あせるなよ。よし、ヒット」 待機していたパトカーが、サイレンを鳴らす。 二人は、停車したトラックに駆け寄り、運転席の窓を叩いた。 「運転手さん、飛ばしてたね」 「はぁ……」 「で、なに急いでたの?」 「鮮度が命なんで……」

新新落語「おかたいの話」

新新落語 誰もが知っている 「おかたいの話」 今宵は、かいしゃ このような 言葉があるのは それは 誰もが知っている 文字を検索 かいしゃ がいしゃ かがいしゃ いしゃ いしや それからどうした わかることは、かたい そのあとどうした おかたいこと 言わないで やってくれよ それこそ おたがいさま わかったことは いっしゃ つまり よっしゃ こんなの どうでしょう 書けるもんなら 書いてくれ

私たちはこの大空にひどいことをしたよね

むかしは 遠くまで 見渡せたんだろうね 高い建物が 視界をさえぎって 景色をさえぎって 気持ちまでもをさえぎって 私たちは この大空に ひどいことをしたよね なんて大げさに きみは言うよね ビルの隙間を 風が吹き抜け 乱れた彼らが ちっちゃな混沌を生み出し すこしの混乱を 私にもたらす 私たちは この大空に ひどいことをしたの? きみは無邪気だ 深刻なこと 言ったあとなのに そんなにはしゃいで 私たちは この大空に ひどいことをしたでしょ 私たちは この大空に…… したよね

ショートショート作家

診察室で、男がうつむいていた。 「先生、私は……」 「あなた、最近オチばかり考えてるでしょ」 「はい」 「何だっけ? 蛇口から、漢字の水がたくさん流れて、排水溝が詰まった? これの何が面白いの」 「はぁ……」 「これ、思い付いたとき、ニヤけたでしょ」 「ダメですか?」 「重症だね。少し頭を休めなさい」 クリニックを出ると、男は幹線道路沿いを歩き、自宅へ向かった。 すると、サイレンを鳴らしながら、パトカーが通りすぎた。 「そこの車、左に寄せて止まりなさい」 道路脇には、パトランプから落ちた『あと二人』の赤い文字が転がっている。 一瞬、足を止めた。 「……いいじゃん」 男は、ニヤけ顔でポケットからネタ帳を出した。

強盗

「強盗だ!財布を出せ!」 「え?ご、強盗?」 「そうだ!何度も言わせんな!財布だ財布!」 「財布ですか?本当に私の財布を出すんですか?」 「お前はこのピストルが見えないのか!早く出せ!」 「わ、分かりました。どどうぞ」 革の長財布を掴み取り覆面を被った強盗は銀行の窓口から逃げ去った 「金庫じゃないパターンあるんだ」

ビジネスモデル

平日の午前。 男は整理券をもらうため、小走りでパチンコ屋に向かった。 「今日は勝つ気がする……」 ポケットの中の軍資金を握った。 すると、道路脇でかがんでいる女を見かけた。 「……あの婆さん」 アパートの隣に住む婆さんが、お地蔵様を雑巾で丁寧に拭いていた。 男は足を止めた。 「信じる者は救われるか」 鼻で笑う。 夕方。帰り道、うつむいて舌打ちをした。 「ん……」 隣の婆さんがビニール袋をぶら下げ、地蔵の前に立っている。 そして、気にする素振りもなく、お供え物と小銭を袋に入れた。 「婆さん、こずるいこと考えたな」 「なにがだ」 「いやいや、今、お供え物と小銭、盗ったろ」 婆さんは笑いながら、男を見た。 「この地蔵、私が通販で買って、ここに置いたんだ」 「なんだそれ」 「他にも、何か所も置いてるさ」 辺りが暗くなってきた。 「私はねぇ、ちゃんと考えて置いてるんだ。リピーターを増やすためにね」 そう言うと、地蔵を抱えた。 「それ、どこに持って行くんだ」 婆さんが振り向いた。 「……ここは儲けが少ない」

静かな白い時間の中

霧が濃い朝 蓮の浮かぶ湖畔の淵で 誰も乗っていないボートを見つけた 湖に浮かぶのはとても不思議な気持ちがする オールを漕いで、あちらの岸に向かおう 一回漕ぐだけでボートは滑るように進んでいく いつもは触れられない場所に咲く、蓮の花に触れてみる 霧はまだ晴れていない 鳥のさえずりも聞こえてこない 静かな白い時間の中 オールが水に潜る音だけが聞こえる 向こう岸の方から何か聞こえる 霧が薄まり一隻のボートが見える 赤ん坊だ 赤ちゃんの泣き声がしている 湖上に浮かぶボートには、おくるみに包まれた泣いている赤ちゃんがいた ボートを移り赤ちゃんを抱きかかえる 暫くすると泣き止んでいつの間にか眠ってしまった 辺りを見渡して誰かいないかと呼びかける 静かな白い時間の中 赤ちゃんの寝息が優しく聞こえる またボートを漕ぐ向きを変え元来た岸に向かって赤ちゃんと一緒に 帰ったら毛布と温かいミルクを用意しよう その間、妻がこの子の体を拭くだろう 良い子良い子と愛でるだろう

花火大会

猛暑日が続き、紫外線対策や水分補給をして、熱中症に気を付けて、クーラーも我慢しないでつけっぱなし。そんな日々が続くと、あぁ夏が来たんだな。と感じる。 あと、夏といえばお祭りも季節を感じるイベントじゃないでしょうか。夏の夜にダイナミックに広がる光の花。花火大会もいいもんですね。 「おい、そろそろ行こうよ」 「ちょっと待ってよ」 「いや、花火が上がっちゃう前にいい席を取らないといけねえからよ」 「大丈夫よ。だって、まだ昼の十二時だよ」 「いや、それを言うなら、もう昼の十二時だよ。お前はこの辺出身じゃないから知らねえだろうけど、この辺の花火大会は毎年人気で、席の取り合いは午前中から始まってんのさ」 「はいはい、支度が終わりましたよ」 「おっ綺麗じゃねぇか。浴衣美人とは、正しくお前の事だな。よし!行こう」 「あなた、帯占めてないけどいいの?」 「占める占める。歩きながら占めるよ」 夫婦はカンカン照りの下、花火大会の観客席ブースへ向かう 「よしよし、ここならよく花火が見えるぞ。こんないい席が残っているなんて、俺はラッキーボーイだな」 「ボーイって歳じゃないでしょ。バカね。ここは来賓席のところよ椅子の上に区長と書いてあるじゃない」 「あっ何だよ。通りでいい席なわけだ。区長の席かよ。くちょー!」 「何バカなこと言ってんだよ。あちらはどうだい?良さそうだけどね」 「いや、あそこは駄目だ」 「何でさ。よく空が見えていい席だと思うけどね」 「お前は何にも分かっちゃいねぇな。前の席をみてご覧よ。若いカップルが座ってるじゃねぇか」 「だから何よ」 「彼等は付き合って初めての花火大会に来たんだ。二人はこの日を待ちに待っていた。なぜか分かるか」 「花火が見たいからでしょ?」 「バカだねお前も。違うよ。その逆だ。…良いか花火がドーンと上がるだろ。そしたら皆どうする?」 「そりゃ花火を観るでしょ?」 「その通り。皆、花火を観る。あのカップルはそのタイミングを狙ってるのさ」 「もしかして」 「そう、そのもしかしてだよ」 「スナイパー?」 「そうそう、ココに座っている区長をドーンって」 「そうなの?」 「そんな訳あるかよ。キスだよキス。皆が花火を見ている時に、あのカップルは気兼ねなくキスが出来るのさ。その後ろに俺等が座ってみろよ」 「…座るとどうなの?」 「見ちゃうだろ。二人を」 「あんたの問題なのね。バカな話を聞いたわ。私はあそこに座りますよ。もうほとんど席が埋まってきちゃっているし」 「しょうがね。あそこの席にしよう」 夫婦は花火が上がるまでの間、奥さんの作ってきたおにぎりを食べたり、梅干しを食べたりしながら時間をやり過ごしていました。花火が打ち上がる時間に近づくにつれて、会場は超満員。綺麗な夏の夕焼けに会場の皆が目を取られていると ドンドンドン 花火大会の開始の合図です 会場から歓声が沸き起こります 「いよいよ始まるぞ」 「あれ?前のカップルがいないわね」 「あれ、本当だよ。花火を待っている間に二人の恋のほうが燃え尽きちゃったのか?」 前の席の方で騒ぎ声が聞こえます 夫婦が人集りをかき分けて見たものは、区長が苦しそうに胸を押さえて倒れています 白いシャツが真っ赤に染まっていました それは、まるでスナイパーにでも撃たれたようでした。 「おい、お前」 「ど、どうしたのあなた」 「あの二人は、キスはしたのかな」

連作短歌 「思い出」

ままごとのような恋して結婚も子どもなふたりみんな過去形 なつかしく思っているわけではなくて責任がないことへの感慨 嫌な過去 思い出しちゃう 下向くな 暗澹となる必要はなし

ある夜の話

「あの、変わってもらえませんか?」 「何をですか?」 「僕は、あの娘に介助をお願いしたい」 ベッドの上で、中年の男が視線を上げた。 「ここ、同性介助ですが」 「僕、見てるだけです」 「それって、結構セクハラですよ」 「合理的配慮でお願いします」 薄暗い部屋に、デジタル時計が光る。 「まぁ、上に相談してみます」 「僕、不安定になるかも……」 「はい。お大事に」 男は扉を閉めた。

安い人間

 人間カタログのサイトを表示する。    店が、時給を提示して人を集める時代は終わった。  今は、人に時給がついており、店が人を選ぶ時代だ。    つまり、コンビニバイトの採用担当の仕事は、如何にコスパ良く人を選べるかということだ。   「コンビニ経験は五年以上十年未満。百貨店での受付経験も三年以上。即戦力だろ、こんなもん。……でも、希望時給が最低二千円。完全に予算オーバーなんだよなあ」    手元の予算表に目を通す。  店長候補でもないバイトに当てられた予算は、時給千四百円まで。  にもかかわらず、上から言われた条件は即戦力。   「いるわけねえだろー、そんなやつー」    マウスを動かし、サイトの次のページへと移動する。  現れては消えていく、経験と希望時給。  経験が足りれば時給が高すぎ、時給が足りれば未経験だらけ。   「コンビニ一年未満。飲食店一年未満。引っ越し一年未満。最低時給設定だけど、これは無理だ」    依然として、雇う側と雇われる側のギャップは強い。  雇う側は、頭を下げなければ仕事にありつけなかった世代。  バイト希望者の足元でも見ているような条件を突き付けてくる。  だが、今のバイト希望者の大半は、求人需要飽和の世代。  より条件のいい場所で働きたいと考える、選ぶ側の思考だ。    どちらも自分が選べると思っているが故、バイト探しは難航する。   「そもそも、千四百円ってのが微妙なんだよな。千四百を希望してたやつも、切りよく千五百で登録するだろ、普通」    うっかり愚痴がこぼれる。  幸いバックヤードには誰もおらず、俺の愚痴は俺の中だけでとどまった。    時給千五百円で雇えそうな即戦力候補をブックマークに入れ、上の人間へチャットを送る。   『即戦力を諦めるか、時給を上げるか、どちらかにしてください』    過ぎに既読が付き、返事が来る。   『予算があるので、時給を上げるのは難しいです。即戦力でなくてもいいですが、即戦力相応の人間を選んでください』   「どっちか選べっつっただろ!」    胃がキリキリと痛む。  いつだって板挟みになるのは、俺みたいな中間管理職だ。   「じゃあ、こいつ選ぶぞ、こいつ? いいんだな? いいんだな?」    痛んだ脳は、上に泣きを入れさせたい衝動にかられ、一人の人間をブックマークに入れた。  経歴は、コンビニ歴十年以上。  希望は最低時給。  どう考えても地雷臭しかしない人材を、俺はチャットで送りつけた。

傘の行方

ある日の午後。 認知考古学の教授が、学生の前でマイクを握った。 「みなさん。人が道具を本来の目的以外に使い始めたのは、どの時代か分かりますか?」 「旧石器時代に、石を遊びに使ったのが最初だと思います」 「その通りです」 教授が、背後のスクリーンを指した。 「今日のテーマは、それを踏まえて『道具の目的外使用』について考えたいと思います」 学生は耳を傾け、ノートをとった。 「これを見てください」 黒い傘を取り出し、学生たちに向けた。 「この傘。駅のホームで中年の男性が持つと、どんな行動をとるでしょうか?」 「あっ、ゴルフのスイングをします」 教室に笑いが起こる。 「それから、女の子はバトン、男の子はチャンバラとかに使いますね」 「お年寄りが杖に使うのもそうですか?」 「はい。それも目的外使用です」 教授はうなずきながら、学生を見渡した。 「では、ここまでで何か質問はありますか?」 最前列の学生が手を上げた。 「ちょっと気になってたんですけど、額のガーゼ、どうされたんですか?」 教授は笑いながら、傘を開いた。 「昨日、妻が機嫌悪くてですね……」

ふるえ

あの人が のどを潤す あれは あの透明な液体は なんであろうか あの透明な液体は おそらく サイダーであろう あの人が ぶるっと かるく ふるえをおこす あの透明な液体は きっと サイダーであるな あの人の からだに入りこんだ サイダーめが あの人のなかで しずかに 騒ぎたてたに ちがいない しずかに けれど 騒ぎたてた サイダーよ しずまれ しずまれ サイダーよ 騒ぎたてるな サイダーめ あの人のからだを 熱くさせるな

エルニーにょ♡

 今年はエルニーニョ現象が凄いらしい(語彙力不足) 街を行く女の子達がえるにーにょ♡えるにーにょ♡って萌えキャラの語尾みたいに囁いて歩く。 気象情報さえも萌えと商業化の波に飲まれる。 天気予報士のオネーさんの夜の生活も私今日はえるにーにょな気分なの…って言って相手を誘惑する。 地球の気象変化もリビドーの奴隷だ。 お前はフロイトか何でも性に結びつけるな下品な奴め!と怒られそうだ。 水槽の中で産卵する魚は大海でたくさんの犠牲が出る想定をしていない。 ガラパゴス的な地域に暮らす僕は色んな人にお裾分けをする(性のお裾分けは官能小説でしなければならないかもしれない) 駆け引きの下手な僕はまた群れから弾かれて1人自慰をする。 僕のラニーニャがあの娘のエルニーニョと暴風雨のあとに起こる晴天で聖典に書き加えられないか画策する。 そんなあなたも素敵よエルニーニョ!とフランス歌劇っぽく毎日を暮らしたいが僕のアパートにある造花ではラ・マンは振り向いてくれない。 花を敷き詰める前に一稼ぎせねば皆を笑顔に出来ない気がするが別にイケメンでもない僕は何故か力が無い(煙草を吸っているのが原因な気がする) おお🎵世界よエルニーニョとあの娘達を讃えておくれ🎵 La La La…

俺以外タバコ吸うな死ね

 何か寝られなくて機嫌が悪い。 指先が震えてくる。 世間では煙草のアニメがやっている。 煙草なんてそんないいもんじゃねーよ。 戦争中に配られるものなんだから。 政府に上納してる税金が膨れ上がる。 傭兵は死体の山を築く。 大麻とか覚醒剤でもやってろ。 そんで国に反乱を起こせ。 これは何の罪に問われるんだろう? あ、ヤバい国家転覆罪だ。 僕しか煙草を吸わなくなれば国は大麻でも解禁するだろう。 酒を静脈注射してろ。 もしくは肛門に流し込め。 本当にやりたいことやって捕まるなら本望だろう? ただし責任は取れ。 僕は花の盗撮と見るハラと詐欺罪で捕まりそうだ。 悪いことして金作ってもいいよ。 ただし上品さが必要だ。 幼稚園児の悪戯の延長みたいなことが多すぎる。 政治家なんてその最たるもんだろう? 俺より餓鬼っぽいことやって金もらってやがる。 大人が全部正しいならこんな世の中になってねえよ。 俺の弾倉は不思議パワーによってまた弾丸を詰められる。 でも使うのは料理の包丁で料理するだけ。 セルフレジで他人の仕事を奪う。 仕事のための仕事。 ハリボテの世界。 考えがまとまらない。 パスタの放射能は上がる一方。 金を儲けて石油を飲む店員は何処か寂しそうだ。 まあ働いて税金納めて貰ってるから僕は僕に出きることをしよう。 オーバーワークになってるやつはキ○ガイがまともかのどっちかしかいない気がする。 俺はキチ○イの方だが。 本物がやっかんでくる。 偽物は猫をいたぶる。 中庸は無視する。 あるいは中庸こそが本物かもしれない。 価値観の転覆。 俺の嫌いな派閥はまあ必要悪なんだろう。 俺は必要ない悪。 毒草。 人を殺すのに必要な人が摘み取る植物。 なるほど俺は煙草の葉っぱと同じなんだな。 合点がいった。 死にたがりが多い。 皆俺を吸っている(妄想)

恋敵

縁側でこの家の親父と隣の家の親父が将棋を打っている 歩を進める この家の親父は夏の昼間、ゴーヤのツルが日陰を作る縁側でビールを飲みながら将棋を打っている 一年中よく見る光景だ 角を戻す 隣の家の親父は自分で買ってきたビールを飲みながら、いつもの様に昔の話をする 歩を進める 「お前よりも、俺の方が先に香さんを好きになったんだぞ」 隣の親父が煙草の灰を落としながら言う 「あいつは俺に惚れただけだ」 この家の親父がビールを飲みながら言う。缶の中で声が反響している 「何で俺に断りもなくデートに誘ったりしたんだ」 隣の親父が煙草を灰皿に押し付けながら言う。鼻の中から白い煙が噴き出る 「違うよ。あいつが俺の車に乗りたいと言ってきたんだ」 この家の親父が新しいビールのプルタブを上げる 歩で香車を取る 鼻の中から白い煙が噴き出る 「歩のそう言う所が気に食わないよ」 隣の家の親父、角野桂が悔しがる この家の親父、飛田歩が笑う

花火

 「綺麗だな」 打ち上がる花火を見上げ、隣にいた友人がそう呟いた気がした  「え?なに?」 周りの騒音と花火の音で、上手く聞き取れなかった  「いや………綺麗だなて言ったんだ」  「あぁ、そう…綺麗だな」 チラッと横目でそいつを見る 蒸し暑さで汗がたらりと頬をつたって鎖骨をなぞる ふぅ…と首元のシャツをパタパタとあおる ゴキュッと喉が鳴る 自然と右手が引き寄せられる  「ん?何見てんだよ」  「…!いや…あのほら髪になんかついてんなぁて」  「あー、じゃ取ってくれないか」  「ああ…」 サラリとそいつの髪に触れる 手触りいいなと思いつつ、ないゴミを取るフリをする  「ほら、とれた」  「ありがと」 ぱっとその辺に捨てる素振りをして、また花火を見上げる  『勇気がでないな…』 俺は今日こいつに告白する為に誘ったんだろ… 何怖気づいてんだ、俺 途端にザワザワと周囲が移動し始める 気付くと花火は終わっていて、終了のアナウンスが流れていた  「終わったな…帰るか」  「………おぉ」 まあ、花火中に話しかけたとこでかき消されるオチだ もっと静かなとこで、また今度………  「なあ」 右手を引っ張られ重心が少し傾く  「今日、俺に何か言いたい事があって誘ったんじゃないのか」 …バレていたのか バクバクと今までに聞いたことのない鼓動が鳴り始める こいつに聞こえてるんじゃないのか…手汗は大丈夫だろうか…顔は変じゃないだろうか……不安が込み上がる  「聞いてるのか?どうなんだ」  「あ、……そ…の………」 暑さのせいか急なイベント発生で気が動転したのか、頭がグルグルして上手く言葉が出ない  『馬鹿だな、俺』 涙が出そうになり、見られたくないと顔を伏せた  「たく、いつまで待たせんだよ」 掴まれていた右手を引き寄せられ、そいつの胸の中に沈んだ これは、なんだ、夢か? ああ、もう、夢でもいい…ほんとに  「「すきだ」」 え? バッと顔をあげそいつの顔を覗き込む  「ふっ…何見てんだよ」 はにかむそいつは夜なのに眩しく感じた  「……好きだ、俺と付き合ってくれないか」  「お、……おぅ」  「なんだよ、その返事」 ははっと軽く笑い、顔を寄せる ギュッと目を瞑ると、唇に柔らかい感触  「これからよろしくな」  「俺こそ………その、よろしく?」  「そうだ、帰りコンビニ寄って俺ん家で花火続きしようぜ」  「…おう」  「そのあとは…な?」 ブワッと汗が溢れる こいつは外で何言ってんだ! ケラケラと笑うそいつは、早く行こうぜとコンビニへ向かう  「今は花火が欲しかったわ…誰も聞いてないよな」 キョロキョロと不審に辺りを見て、俺はそいつの後に続いた

すいか

子どものころはよかったなあと なつかしく思うのは ほんとうは 昔をなつかしく思ってるんじゃなくって 無垢で 無邪気で 無責任だったあのころが 恋しくなっちゃってんだろうなあ そんなことを思ったのは ホットサンドをひと口かじったときだった 暑い夏の日の縁側で すいかを しゃくっと食べたときじゃなかったのが わたしとしては すこし不思議になった 実家に 縁側なんて ないというのに

青空

青空に向かって 「アクエリアス飲んじゃおうよ」 わたしが言って 「ぼく、ポカリ派なんだよね」 冷めた感じにきみが言って あああ、まったく 今日は、わたしたちふたりの あれこれだとかについて お話ししたかったのにさ せっかくの夏の青空が台無しだよ 気まぐれとかでも 夏のせいとかでもなくて 背が伸びたきみは あきらめてアクエリアスに口をつける きみの喉が大きく三回動いて 口が離れたときが狙い目 「もーらいっ」 きみのアクエリアスをすばやく強奪して おまけに間接キスまで奪ってしまう きみは大きなため息のあと 「どうしてぼくなのさ」 訴えてくる そんなの、わたしにだって わかんないよ

波に揺られて

公園で一人、ブランコの波に揺られて思ったんだ 君とキャッチボールしても、上手くできない気がする 私がボールを投げても、君はおにぎりを返してきて、 君はおにぎりを返してきたのに、私はみかんを投げ返すんだ 君と二人三脚しても、はじめの一歩で転ぶ気がする 立ち上がろうとするんだけど、息が合わなくて、また転ぶんだ 君とジャンケンしても、出だしから合わない気がする やっと始まっても、あいこでしょが続く 「おいおい、こういう時は合わせるなよ」って君は笑うんだ でも、今度また会えたら、一緒にブランコに乗ってみたい 初めは、ずれずれかもしれないけど ゆっくり漕いで たまに止めてみたりして 波に揺られて いつか同じ景色を見れたらいいな

サンダル

母の言うサンダルと わたしの言うサンダルが 違うものをさしているのだと この夏、やっと 気がついた 母が言うところのサンダルは ひとことで言って つっかけのこと わたしがサンダルと口にするとき 頭にあるのは ビーチサンダルだ まあ、どっちも サンダルなんですけど 履く場面は ちょっと違うんですけど 同じサンダルでも 思うことは違うんですけど それでも 親子なんですけど 仲は まあ 普通です

枯山水

彼は、きっと不幸に見えるのでしょう。 隣の家に住む、あの身体が大きく、とても粗暴で、バハハと高らかに笑う少年に馬鹿にされております。 人の心を、未だ母の子宮に置き去りにしたのでしょうか? 小学校の帰路、たった一人でぽつりぽつりと歩く彼の背中を、突然蹴り上げたのです。 幸い背中はランドセルに守ってもらいましたが、衝撃でアスファルトに身を投げることになってしまいました。 本当に突然だったものですから、受け身などとれるはずもなく。 手足は擦りむき、鼻からは命と思しき赤色が。 ぽたりぽたりと滴るそれを見て、少年はバハハと笑うのでした。 しかし彼は気にも留めません。 いえ、気に留められません。 そういう性分なのでございます。 その瞬間には「嫌だ」と感じるものの、次の瞬間には忘れてしまっているのです。 まるで覚えていられない。 笑いながら走り去る少年を見て、彼は少年がなぜ笑っているのか、もう分からないのです。 そうしてゆっくりと立ち上がって、またぽつりぽつりと歩くのでした。 それでも彼は、幸福に満ちています。 なぜかといえば、それは恋をしていたからに他なりません。 それを見るたびに、心臓がどくんと脈打つのです。 手に持った辞書に赤色の雫が落ちるのも構わずに彼はページを捲ります。 文字が、踊っておりました。 とてもとてもきらめいていて、わけは分かりませんが、文字を見るたび心臓がどくんと跳ねるのでした。 火山に放り出されたように、頭はどくどくで。 砂漠に放り出されたように、喉はからからで。 雪山に放り出されたように、眼はかぴかぴで。 それを横目に過ぎる人からは、気が触れてしまったように見えるのでした。 はた、と彼が顔を上げますと、周りでは大勢の大人が眉をひそめて、視界の端に彼を見ております。 どうして僕を見ているのだろう、と考えていると、待っていたかのように目をそらして、大人は去って行きました。 横をかすめた大人が「きちがい」と言っているのがうっすら聞こえましたが、どんなにどんなに調べても、辞書には載っておりませんでした。 ですので、どういう意味かは分からず仕舞いです。 これは、幸福なのでしょうか? 否、彼にとっては不幸でした。 今までずっと頼りにしてきたものです。 火山の麓に湧くように。 オアシスに湧くように。 雪解けで流れるように。 彼にとって辞書とは言葉の流れる川で、彼にとって言葉とは水だったのです。 それが突如枯れてしまったものですから、彼は深く絶望しました。 しかしそんな彼を、慰める者はおりません。 うちへ帰っても、薄暗い居間に一人ぼっちなのでした。 窓からゆっくりと降りてくる夕日がとても眩しくて、目を背けた先でいやに大きく広がり続ける影に、いいようのない恐怖を感じます。 いつもなら言葉といっしょなのに じわりと溢れる涙を、もう止められません。 しかし翌朝、彼が学校へ向かう頃には、そんなことはもう覚えていないのでした。 いつも通りうちを出て、いつも通りの道を行き、いつも通り辞書を片手に。 そして、いつも見かける新しい言葉を、いつも通り辞書で調べるのです。 それでもいつも通りでないことは、もう心臓が跳ねることは、ありませんでした。 ですが彼は、それすら自分では気づけません。 どんな言葉を見ても、どきどきしません。 なぜかは分かりませんが、彼はとても不安になりました。 それを横目に大人は、ひそひそ過ぎていきます。 それもいつも通りでしたが、彼はさらに不安になりました。 その日は快晴でしたが、厚い雲に覆われたように視界がくぐもっていきます。 すると、おういおういと後ろから呼ぶ声があります。 今日も辞書を引いているのか、よく飽きないなあ 振り向くと、バハハと高らかに笑う顔がありました。 いつもは不安になるその顔を見て、彼はなぜだか、ひどく安心いたしました。 少年も、いつもと違う彼の様子を見て、小首を傾げて訝しげです。 それがなんだか、あべこべで、いつもと違うのにいつも通りでした。 本日は少年に馬鹿にされることはありませんでしたが、彼はそれもなぜだか、おかしく感じるのでした。

川、流れていますか? 川、流れていますよ ああ、そうですか、よかった、よかった いつも流れてますよ まあ、そうでしょうねえ ええ 川、濁っていますか? 川、濁ってませんよ ああ、そうですか、よかった、よかった いつも澄んでいますよ まあ、そうでしょうねえ ええ 魚、見えますか? 魚、見えませんねえ ああ、そうですか、そうですか いつも見えませんねえ それでも川のどこかには、いるんでしょうねえ そりゃあ川のどこかには、いるはずですがねえ そうですよねえ ええ ちょっとヘンなことお訊きしますが ちょっとヘンなことは訊かれると困りますが 川、飛び込んでみますか? いえいえ、川には飛び込みませんよ ああ、そうですか、そうですか いつも上から見てるだけです まあ、そうでしょうねえ ええ 川、お好きですか? ええ 川、流れていますか? ええ、流れていますよ

霧の交差点

葬式で受け付けをしている 元妻は喪主として忙しくしていて、息子は従兄弟達と親族席に座っている 夏なのに今日だけ冷え込み、秋が間違えて来ているような雨の夜だった 式は無事に終わり、僕と喪主の元妻が御坊さんのお見送りした 式場内へ戻ろうと振り向くと、そこに喪服に身を包んだ妻が立っていた。まっすぐ元妻の目を見て。 妻も静かに見つめ返す、 「この度はご愁傷様でした」 「足を運んで頂き感謝致します」 ミストシャワーのような雨に黒い服が包まれていく 二人が出会うのは初めてだ。 挨拶と自己紹介を簡単に、簡潔に行う 二人とも、表情に変化はなく、静かに妻は式場へ戻る 「来てくれたんだね。ありがとう」 「うん」 「風邪ひくから部屋に入ろう」 「ううん。私は帰るね」 妻は僕を確り見て、軽くほほえんで、霧雨の夜に消えていく。 僕は式場へ戻ることも、妻の後を追うことも出来ず、濡れていく掌を眺めていた。 「お父さん。叔父ちゃんが呼んでるよ」 息子が隣に来て、そう伝えてくれた 妻の帰った方を見ながら

夏芝居

自分の気持ちをわかってくれると思ったから話したかった っていうけどさ あなたは私が女じゃなくて、男だったとしても、そう思ってたのかな? 私はあなたが男じゃなくて、女だったとしても、そう思ってたのかな? 夏芝居 心の底は 見ないふり

魔王

この半年で行方不明者が300人を超えています。この街で人が忽然と消える事件が未だ続いております。異常事態と言っていいのではないのでしょうか。我々番組としては、今のところはまだ発見されていない、そして報告されていない「消えた人」もいるのだろうと仮定し、いったいこの街で何が起こっているのか徹底的に取材を進めてまいります。 続いて… テレビをつけっぱなしにして、キッチンで朝食を作っている男 一人暮らしのアパートで近くの町工場で働きながら、ささやかな暮らしを楽しんでいた。 ただ二十代も終わり、三十代の入口に立って初めて彼女が出来た。初めての二人暮らしをして、初めて失恋をし、初めての殺人を犯した。 フライパンの中に入っているのは目玉焼きになろうとする卵と一昨日茹でたブロッコリーのいくつかに再度火を入れている。 お米を買い忘れたので、悩んだ挙句、冷凍庫で見つけた食パンをトースターで焼いている 先ほど伝えた彼の殺人の部分だが、厳密に言えば、いや、人を殺めていることには変わりがないが、彼のやり方は「消す」事で殺人を行う 彼は小さな頃から、自分に備わる特殊な力を知っていた。 力。そう彼には「右手に触れたものを消せる」力がある。 それは人に関わらず触れられるものであれば何でも消せる。 焼き上がった目玉焼きとブロッコリーを平たい皿に乗せて塩コショウを振った後、ブロッコリーの隣にマヨネーズの山を作る。醤油を目玉焼きに垂らしテーブルに置く。 座布団の上に座り出来上がったばかりの朝食を食べる。思ったより半熟だった。 呆気なく食べ終わり、右手を胸に当てると、音もなく彼は消えた。 初々しい恋の終わりを受け入れられず、隠していた自分の力を存分に発揮して、沢山の人を消していく事で、自分を終わりまで追い詰めていった まだまだ長い人生の早い段階で自暴自棄になってしまった彼には消える事しか考えられなかったのだろう トースターの中では、まだパンが焼かれている。

全ての霊に花束を

 霊は、誰にも触れることができない。  だから霊は、人のぬくもりを欲している。人からの愛に飢えている。    愛に飢える霊たちは、時に悪霊となって、人を襲う。  人の体の一部、あるいは全てを求めて。    だからこそ、墓に花を添えることには意味がある。  人が愛情をこめて包んだ花は、例たちにとって人のぬくもりに触れることができる、数少ない方法だからだ。       「にしても、花屋、減ったねー」    女は商店街を歩く。  シャッター街を見ながら、諦めたように溜息をつく。   「だから、これだけ霊がうようよしてんだろ。さ、仕事だ」    男は大きなザックを背負いながら、女の横を歩く。    閑散とした商店街には、夏だというのに木枯らしが吹きっ晒しており、明らかに異様な環境を作り出している。  二人がしばらく歩いていると、誰も居ないはずの商店街に、ひたひたと足音が響いた。  まるで海から上がったばかりのような、水滴の落ちる音も交えて。  地面には足型だけがくっきりと浮かび、足型は二人の方へと近づいてくる。   「任せた」 「了解」    女は足型の方に駆け出して、足型の上の空気へ抱き着いた。  女の体は宙に浮き、まるで電柱に抱き着いて、足を地面から離したような格好となった。  足型の動きが止まり、女は手を上下に動かす。   「んー? 髪は長いね。女の霊かな? 背骨が出てて、全体的に華奢。お尻がやや小さめ。あ、でも、おっぱいは大きい。やったね、私好み!」 「お前の好みなんて、聞いてねえよ! 真面目にやれ!」 「ええー。真面目なのにー……っとぉ? 暴れないで! 危ない!」    女お身体が、左右に揺れる。  一定の歩幅だった足形が乱れ、足型の上に別の足型が付き始める。   「ねえー! 早く! あんまりもたないよ?」 「だから、筋トレしろっつっただろ」 「嫌! 筋肉着いたら、手足が太くなっちゃうもん!」 「ならねえよ!」    男はザックを地面に置いて、蓋を開ける。  そして中から取り出したのは、一束のブーケ。  男はブーケを持って、足型の場所まで走る。   「ここ、ここ!」    そして、女が指で円を描いた場所に、ブーケを差し出した。  男がブーケから手を離すと、ブーケは宙に浮いた。  ブーケにはくしゃりと二つのシワが付き、シワは手形のように見えた。   「人恋しくなったら、また来な。次は、あんたの好きな花を供えてやるよ」    地面に浮かび上がる、涙の後。  ポルターガイストにも似た嗚咽が、周囲のシャッターを揺らす。   「ア……ガ……トウ……」    そして、花束が地面に落ちて、シャッターの揺れも収まった。  男は花束を拾い上げ、近くの電柱の側へと置いた。  電柱には、寂れ果てた地蔵が一つ、置かれていた。   「寂しかったんだろうなあ」 「うわー、汚れてるぅ。さ、掃除掃除」 「任せた、掃除係」 「誰が掃除係よ!」    女が地蔵を雑巾で拭いている間、男は手を合わせ続けた。   「成仏したかな?」 「まだだろうな。地蔵の汚れ具合を見るに、成仏するには、長く悪霊をやりすぎた」    女はピカピカになった地蔵を見つめ、額の汗をぬぐう。  男は地面に置いていたザックをとって戻り、女と共に再度、地蔵へ手を合わせた。    二人は、花屋。  霊に花を供える者。  霊に人のぬくもりを与える者。   「帰るか」 「そうね」    街から花屋が消えた今、二人は今日も、移動する花屋として世界を回っている。