悪人よいなくなれ

「私は神だ。お前の願いを一つ叶えてやろう」    奇跡が起きた。  私は躊躇うことなく、願いを口にした。   「悪人を全員消してください!」 「悪人とは、どんなやつのことかね?」 「私より悪いやつ、全員です!」 「その願い、かなえてしんぜよう」    その日、人類の三分の一が消えた。  私をいじめていた人間も、公共の場でマナーを守らないやつも、全員消えた。  いい気味だ。    私は、正しい人間しかいない世界を、大手を振って歩いた。        気が付けば、私は逮捕されていた。  私より悪いやつが全員いなくなったから、この世で一番悪いのは私と言うことだ。  ルールも、当然変わって来る。   「私は悪くない……」    悪は絶対的でなく相対的。  それに気づいたのは、私の身柄が拘束された後だった。   「囚人第一号、おめでとう」    厭味ったらしく言ってくる看守を見ながら、私はこんな奴よりも悪者だったのかと頭を抱えた。

飴玉を嚥下する_02

* 私は『大丈夫、私だって無くしてるし、そこまで言われる必要も無い、ボタンじゃなくてもものは壊れたり無くなったりするよ』私はそう慰めた、それから別件をポツリポツリと口からだす、それは彼女からのSOSであり、彼女なりの成長であったことは確かだ。私はどうぞと話を聞き続ける 「うちの家、まぁ前も言ったようにあんまりいい家じゃないんだよね、家でのストレスが最近本当やばくて、進路だって事業所に通ってある程度お金が溜まったり仕事に慣れてきたらグループホームだって考えてる。でもね、それまでうち持ちそうにない。だって今ここで発散出来たとしても、どうせまたおばあちゃんとかおじいちゃんとかは変わらないし。前話した従兄弟の話から、言葉に過敏になっちゃって」彼女は泣き続ける、私が手渡したレモンティを握りながら、制服で飛び出してきた彼女。暖をとっているのか、それともやるせない思いを何かにぶつけているのか、私であれ本音を話すのに怖くて震えていたのか私には分からなかった。 従兄弟の話と言うのは、彼女の祖父がムカデだかに刺され、彼女は心配したのだが祖父はなんて事ないと言う顔でぼんやりしてたそうだ。だけども、その傷を従兄弟に見られた時従兄弟は彼女に「何故救急車を呼ばなかった?人殺し!!」と言い放ったそうで、それにもまた深く傷ついていた。 当たり前だ、自分にはどうしようもないような年齢で、祖父自信大丈夫だと言っていて、挙句刺激してもと気を使った彼女が、あらぬ事を言われたら誰だって傷つく、祖父も祖父でろくでなしとは聞いているが、彼女にとってはきっと長い仲で嫌いになりきれない家族なのだから、とてもショックを受けたのだと思う。 それがトラウマになり、ということだ 『お母さんは?連絡入れた?』私が口を挟むとケータイを確認する、折り返しが6回ほどかかっていた、かけ直しなよと言えば躊躇うことなくかけ直す。 コールがなる、音が私のとは少し違った。6度目で出る。 「もしもし?みーちゃん?」 彼女は口を噤んでいた 『あ、ご無沙汰しております』私が始める「あ!貴桜ちゃん?久しぶり」 『美咲と今中学の近くの公園にいます、なんでもまた家族仲が悪いらしくって』 「うんうん、そうだと思った、今そっち向かうね、ありがとうね」 『いえいえ、お気になさらず私が勝手に来たようなものですから』 「みーちゃん?聞こえる?」 「あー、何お母さん」 「今から行くからね、貴桜ちゃんが居て良かったね」 「うん…待ってるね」 そこで会話は終わる。

タイムトラベル

「博士、本当に行くのですね。」 「ああ、先に行ってくるよ。」 「では、また100年後の未来で会うのを楽しみにしていますよ。」 そう言うと助手のワトソンはボタンを力強く押した。 宇宙船は大気圏を抜け、予想よりわずかに出力を高く保ったままついに宇宙へ飛び出す。 たった3年の旅だ、それを地球時間に換算すると100年が経過していることになる。 人間の寿命では通常体験できない未来を私は見ることができるのだ。 いずれ帰る未来の地球を想像し、ともに宇宙旅行をしているワトソンと酌み交わす酒を楽しみに私はつらく長い旅をひとり耐え抜いた。 懐かしの青い星をとらえると宇宙船はプログラムに従って3年、否100年前の約束の場所へ向かった。 無事に着地すると何やらスーツを着た男が宇宙船のもとにやってくる。 「お帰りなさいませ、こちらW株式会社のものです。データ照合をいたしますので少々お待ちを。」 「はあ、これはどういうことだ。おい君、ワトソンという男を見なかったかね。私の助手なんだが。」 「何冗談をおしゃいますか。ワトソン氏はわが社の創設者ですよ。」 そう言って笑った男の顔が突如として冷酷なものに豹変した。 「不法滞在者だ、連れていけ。」 スーツの男が虚構に向かってそうつぶやくとどこからともなく屈強な男たちが現れ、私の体を乱暴に宇宙船からひっぺがした。 「おい!いったい何をするつもりだ。」 「滞在費は宇宙での労働でもって支払ってもらいます。それでは、よい旅を。」 スーツ男の感情のこもらない笑顔はちょうど3年前、宇宙船の窓越しに見たワトソンのそれとよく似ていた。

飴玉を嚥下する_01

甘ったるいビードロを小さな小袋から開けて、宝石みたいに丸くて内側の方頬に偏らせて頬肉にめり込ませるように吸うと、唾液が甘くなり、それを嚥下する。それが飴玉の醍醐味というものでころころ頬を往復させるのも良いが私はこの食べ方が好きだ。 そして、いつしかころころ溶けてって、もしくは奥歯や八重歯で圧力をかけて、噛み砕き口の中で散らばった宝石たちを嚥下する。 ざらつく、喉に違和感を覚える、軽くつっかえる喉、その宝石たちを無理に流し込んだり吐き出さないのは、言いたいことを言えない私たちの言葉に似ている、すなわち、これは愛と似ている。 珍しく秋のこと、その夕方私の友人美咲は顔を今まで見たことないくらいのくしゃくしゃとした顔で泣いていた。美咲は祖母に叱られたことに酷く傷ついていた、繊細なんだと感じた。なんでも、ここに至るまでの経緯は単純で私が歯を痛めて医者に言っていた所、彼女から電話が1本何もメールの一通もないままアポなしでかかってきた、それに気づいた私は何か嫌な予感がすると思いながら、歯医者に少し電話に出ますと断りを入れ、すぐ側で電話をかけ直した。 1回、2回、とコールが続く。不安になる、3コール目で出る。 最初、寝ぼけたような声で「あー……もしもし?」と声が聞こえる。私は間違え電話だろうかと、気が緩み「もしもし、何かあった?」と聞き返す、その言葉が彼女には染みたのか、それからグズグズと鼻のすする音を立てながらゆっくり話をしてくれた、家にいたくないと言うので、私は通っていた中学のそばの公園で待ち合わせを取り付け、後にした。歯医者に戻り、会計をし、走り出す。事故に合わないように周りを見ながら走り出す、途中息が切れて、自動販売機で暖かいレモンティーとメロンソーダを買う。彼女は炭酸が飲めないので、暖かいレモンティー、私は炭酸が好きで、味の濃いものが好きなのでメロンソーダ。そんな具合でまた走る。走りながら思う、美咲が炭酸を飲めなくて良かった、と同じものを買っていて、会ってすぐに乾杯なんてしてしまったら、シュワシュワと炭酸は弾けてしまってベタベタで、嫌な甘さとねちっこさがまとわりついただろうから、 でもそうなっても青春だと思う、 彼女と合流して、顔を見た時、涙目ではあったが、その小さな輪郭に涙は伝って居なかった。彼女はただ、久しぶりと最初私に軽く会釈し、私も元気よく久しぶりと返した、空元気に見えるくらいに振舞った。実際彼女に会うのは半年、いや1年ぶりくらいの事だったので再開に私は抱きしめたいくらいだった。 彼女は公園の椅子に座りながら話だす。 「制服のボタンが取れちゃったの」 『うん、ちょうど私も同じところが取れたのよ、奇遇ね』(嘘ではなく本当に取れていた所、クラスメイトにこの間丁寧に縫ってもらった、不良のようなその彼の手先には優しさがあり、私のボタンはしっかり留まった。) 「それでね、縫い直そうと思ったの」 私は彼女の背中を優しく摩って頷きながらひとまず話を聞くことにした 「そしたらおばぁちゃんがアンタが悪い、無くしたアンタが悪いって攻めたの。無くしたくて無くした訳じゃないから……」ここでくしゃっと彼女の顔は中心により、嗚咽をしない程度に泣きじゃくる、 「そんな攻めたような言い方しなくてもいいじゃん、これうちが悪いの?うち不安になりやすいから、そういった先のことを責められると次そんなことがあったらどうしようって不安になるの。」 彼女は真面目なんだと思った、たかがボタンひとつでここまで泣いてしまう、か弱く可愛らしい少女なのだ。彼女は茶色のメガネに、黒髪のロング、引っ詰め髪で、だけれどストレスのせいなのか偶然なのか、結い上げた髪から数本の白髪があったりもする。だがしかし、彼女の紙は艶やかで、手ぐしを通してみたくなるくらいだ。彼女は私くらいの背丈しかなく、同じく文学趣味がある中学の学友だ。

旅〜ランプの人〜

旅の一行は舟に乗り海を渡っています 舟は三人乗りの小舟で、 一番前に古狸のキャロル 真ん中に少年の ij 最後はオオカミの子供ルイです 「ねぇキャロル、ずっと夜なのはなんでなのかな」 ルイが言います 「ここは夜しかない。朝が来ない海を渡っている」 声が止むと波の音しかしません 風も吹いていない 「風も吹いてないね」 「風もない海なのじゃよ。夜しかない」 舟はゆっくりと海を渡ります 帆もない舟は波に運ばれるがままに進みます ij が空を見上げると、長い長い梯子を登る人が見えました。手にはランプを持っています。その人は梯子のてっぺんまで来るとランプの火で星に灯りをつけていました 心なしかランプの人がこちらに手を振っているように見えました 〜旅の記録、夜の海にて〜

白い箱

 祭りの夜、私たちは遠い親戚の家に宿泊させてもらった。聞いた事も会った事もない親戚が沢山いて、方言も分からない。自分の中にある新しい自分に会ったようで不思議だった。私は大人たちとはそっと離れて、小さな男の子とずっと遊んでいた。外国人風の男の子。遠い親戚に外国人と結婚した人もいるんだなと思った。  男の子は可愛い物が好きらしく手元に集めていた。お祭りで配られたお菓子に付いていた光沢のある水色のリボン、テーブルの上にのっていたバナナに貼ってあったバナナの絵のシール、いちごのイラストが描かれた飴の包み紙。それらを触ってじっと見ては、嬉しそうにしている。私は、読んでいた本に挟んであった、しおりを出した。 「蛍が夜空に舞い上がって、星と一緒にお空に浮いているんだよ。」  外国人だしまだ小さいから、言葉が通じるか分からない。だけど絵を指してそう言うと、男の子は頬を上げて顔を赤らめた。  私は自分のバックパックに下げていたコサージュを外した。布で出来ていてふわふわしている桃色のピオニー。紐を外して腕に付けたり、洋服にしばったりしてみせると、男の子の目はキラキラと輝いた。  すると色白の女の子がやってきた。男の子よりは少しお姉さん。私たちはお互いに誰なのか分からないけれど子ども同士だから全然気にしない。子どもはなんとなく参加してくる、それでいいのだ。女の子はどこかで拾って来たのか赤いツツジの花を見せてくれた。親指と人差し指で、花と茎の繋ぎ目をつまんで耳にかけてみせてくれた。 「素敵ね。お人形さんみたい。」  私が感心していると、女の子はそれを私の耳にかけてくれた。鏡を覗くと、私もどこか異国のお姫様のようになった。私はそれを男の子に渡すと、男の子は自分に付けるわけでもなく、壊れやすい蝶々を手に乗せるようにそっと両手に乗せて愛でた。  私たちが集めた可愛いものが増えたので、私は袋でもないかなと周りを見回してみた。人が大勢出入しているから色んなお菓子が出ていて、空き箱がたくさんころがっている。私は何のお菓子が入っていたのか、ラベルもない真っ白な箱を見つけた。つるつるとしていて陶器みたいにも見えるけれどフタがある。それを男の子に差し出して中身を少し入れてあげると、男の子はそこに素敵な物たちを入れた。でも、まだ小さいから上手には入れられない。私は優しくお手伝いをして、固いものは下に、コサージュやツツジの花はふわっと上にのせた。 「こうすると、お花がつぶれなくていいよね。」  男の子はこっくりとした。  親戚の集まりが終わりになると、いつの間にか、男の子も女の子もいなくなっていた。中身の入った白い箱だけが残っている。 「お母さん、男の子はどこ? 外国人風の小さな子。それと小学生くらいの女の子。」 「子どもはいないよ。中学生のあなたが一番小さいのよ。」  親戚の人たちに話すと、おじいさんのお姉さんが、外国へお嫁に行ったと聞いた。その人の子どもだったのだろうか。色白の女の子も誰なのか分からなかった。  後でそっと箱の中をのぞくと、私たちのわくわくとした気配がまだそこに残っていた。(おわり)

散歩と桜の思索

玄関の扉を開けたら、そこに桜の花びらが落ちていた。舞ってきた、と言う表現が正しいように、まばらながらにある程度存在するそれは、おそらく近くの公園から飛んできたのだと思う。私は散歩に出た。 例年より暖かい傾向は、これから先普通となるのか、今年が特別おかしいのかは私にはわからないが、勘弁してほしいと思う、肌寒いくらいがちょうど良いのだ。公園では半ズボンの子供がボールを蹴っていた。そこに舞う桜。こんな短い時間でこれだけ花びらを降らせて、すぐになくならないかと心配したが、元来桜はそう言う物であった。 桜、桜。桜といえば、国語の授業で桜守について扱っていたものがあったなと思い出す。桜は五日間しか咲かず、残りの三百六十日の世話の様子を見る人間は少ないと言っていた。日本人特有の侘び寂びであるとか、儚さへの尊さというのは、桜を見て育ってきたからそれが身につくのか、それが身についていたからこそ桜を愛でるようになったのかわからないが、ただ一つ、仮に年中咲く桜が開発されたとして、それが流行ることはないだろうと言うことだ。ともかく、その桜守には頭が上がらない思いで、当時、意味もなく、若しくは意味をもてあましながら呆けて見ていた桜にはもちろん縁の下の力持ちがいるものだよなと気づいた。死体が埋まっているかも、と言う話ではなく。もしそれを見て見ぬふりするのであれば、私も大多数がそうであるように、惚けて儚い桜をも見るか。 春とも春入りともいえぬ陽光と少し乾いた風は、強烈すぎず、雲がかったものほどでもなく、ちょうどよかった。以前、上野に行った時、桜が咲いてすらいないというのに、桜祭りという名目で祭りが開かれているのには目を疑った。私は一般展示を見たかったというのに、その祭りの影響で行くことができなかったというのは苦い思い出ではあるのだが。ブルーシートを引いて座っている人を見た時もまた、もはや桜が道具のように思えて、私は少し嫌だった。人をいい気にさせるだけの道具のように。もっとリスペクトがある場所であればよかったなと思う。団子より花よ。 つまりは、桜は美しいものの象徴として丁重に扱われるべきで、こう言った桜を銘打った場であってもなくても、そのような意識は持っているべきである。そうでない人間を日本人ではないというつもりはほとほと無いが。形骸化した祭事にはもはや元の意義は無く、そのような意識でいるから、その意義を知らない人間ばかりが集まってくるのだ。理由のない物事は陳腐で俗的に利用されるものとなってしまう。 桜は学校の前に植えられることが多い。そのため、このような場所というのは特に桜を街路樹として使うのだが、道路側にはみ出しすぎた枝は切られている。結局は人間本意で、どれだけ桜が日本人に敬われ、親しげに、あるいは厳かに佇んでいられる環境にありながらも、美しいだけではダメらしい。

野乃と「のの」

クリーニング屋から冬物を受け取ってきた帰り道 腕に抱えた荷物は、季節をひとつぶん、しまい込むような重みがある 歩くたび、カサカサとビニールが鳴っては、春の淡い光を乱反射させる ふと、歩道の脇の植え込みでちいさな音がして、乾いた葉がカサリ、と 鳥かな それとも たんに風かもしれないけど ねこだったらいいな 陽だまりのなかで、まあるくなっている姿を想像してみる 光を反射するビニールの音と、見えない誰かの足音に耳を澄ませて ゆっくりと、春の時間だけが続いていく わからないまま 正体なんて暴かなくていい ねこだったらいいな 「のの」にしかられてしまうかな でも ねこだったらいいな

怪獣があらわれる街✕痛風のウルトラマン

雨太郎というオジサンがいる 彼は昼間っから酒を飲み、昨日と同じ服を着て、首にタオルをかけている。それで口を拭くのだ。 彼は今は痛風である。足の中にイガ栗が入っているようで、押すと凄まじく痛い 困った事に彼はこの地球を守るウルトラマンでもある 「ゔぅ…いてぇ…」 彼は布団の上で痛みに耐えながらお酒を飲んでいる 幸い、この星にはもう一人ウルトラマンがいる 彼の名はカモメ 鳥ではなく、27歳の男性で、妻と小学生の一人息子がいる。若い父親だ。 カモメのスマホにラインが入る 「すまん。風邪を引いたようだ」 雨太郎からの連絡だ 「痛風ですね。お大事にして下さい。今飲んでるお酒で今日はやめましょう」 「今日は飲んでいないぞ」 「お水も沢山飲んでくださいね。後でアパートに食べるものを持っていきます。ほどほどに」 「👍️」 カモメは妻に相談し、カレーを作りジップロックに小分けにして持っていこうと言うことになった。二人の会話を聞いていた息子は 雨太郎のおじちゃんにアイスを買ってあげたいと言う 雨太郎は素敵な大人ではないが、なぜか子供から人気がある カモメは雨太郎の良さを理解している数少ない大人の一人だ。 カモメが雨太郎のアパートに着いた 築年数が計り知れないアパート「アメリカ」の201号室が雨太郎の部屋である 息子も行きたいと言っていたが、遊びに行くのではないのだよとなだめた。 ノックをしたが返事がなく、ノブを回すと簡単に開いた 雨太郎は畳の上で布団を敷いて寝ていた 枕元にはビールの空き缶が二つ転がっている。 カモメが空き缶を流しに置き、カレーを冷蔵庫にしまう。息子オススメのアイスを冷凍庫にしまい、一度出してからマジックで「息子からの差し入れです」と書いて、しまった。 カモメは寝ている雨太郎を見る 顔にはシワがあり、耳の周りの毛は白髪交じりだ 手はゴツゴツとして硬い木のよう。腕は所々でシミが目立ち始めている 枯れ木のような雨太郎を、カモメは心配していた。地球を守るウルトラマンとしてではなく、友として。 「うっ…おっ来てたのか」 「まだ寝てないとだめですよ」 「いや、腹が減った」 「カレー食べます?うちの奥さんの」 「美雨ちゃんのカレーなら食おうかな」 カモメはカレーとお米をレンジで温め始める 熱々のカレーを雨太郎は美味いと食べる 「なぁカモメ」 カモメが振り向く 「酒を買ってきてくれ」 雨太郎の目に雨が降っている

メデューサの願い(CM後)

はい、ということですけど、大変ですね。桜井さん。 「まさに修羅場wこれから修羅場が始まる前夜ですね。この苺王子さんは、彼女に対してどう思っているのかってのが知りたいかな」 そうですね。でもなんか、素敵な出会いでしたよね。それこそ歌詞のような出会い方でしたね。 「うん、本当に素敵な出会いですね。なんか…運命の人。みたいな感じでしたよね」 はい、ただ不倫をしていると。苺王子さんは不倫をやめようとしているけど、運命で結ばれた彼女にバラしていますと言われている。 「うん。もし、本当に運命の二人だとしたら、真実を彼女にを話して、本気で謝るしかないのかもしれないですね。それでも気持ちが離れず、お互いの気持ちが変わらないのなら、運命の人なのかもしれない」 私も、そう思います。私も禁断の恋を経験した身。許されない悪戯は大切な人たちを傷つけるだけ。今、いけない事をしていると気付いているのなら、そこから引き返す事が苺王子さんに春を呼ぶ声になるのかもしれません。私の様な思いはして欲しくないから。 では参ります。 【お前の恋の炎を、石にしてやろうか!】 それではここで一曲お送りいたします はなのなまえで「wish」 ♪ On this endless road, there’s a dream I simply must make come true! 分かっていることなど何一つない 本当のことなどどうでもいいんだ ビリビリと俺の心がしびれている それ以外に確かなことなんてあるわけないだろ Wish! Wish! Wish for it! With all your might Stronger than anyone else Faster than anyone else Flying higher than anyone else よそ見をしていたら溺れていく 弾丸を撃ち込まれても前を見続けるのさ 夢を見失ってまで 生きていたってしょうがないだろ Wish! Wish! Wish for it! With all your might ♪ 桜井さん、今日は本当にありがとうございました 「どうも、ありがとうございました」 最後までお聴きくださりありがとうございました。またお会いしましょう。皆様にも恋の悪魔が囁く時、今日の事を思い出してくれたらと思います。では。シャー

星飲む夜

夜は世界が瞼を閉じた世界。 あの月や星は世界が見ている夢の一端。 世界が寝ているとき、私は眠れない。 寝息ばかりの世界で、独り息苦しくしている。 世界の全てから置いてけぼり。 夜は私の国になる。 民も何もない私の国。 陸に上がった魚のように呼吸が難しい。身体が激しく脈動する。 独りぼっちの王様は重力で重たい身体を引き摺って、 暗い世界で星を飲む。

メデューサの願い(CM前)

どうも皆さんこんばんは メデューサ・メデュ子のお悩み相談室 どうぞ今夜も楽しんでお聴きください この番組は短編作品限定の小説投稿サイト『Prologue -プロローグ-』の提供でお送り致します この番組のナビゲーターを務めるのは私メドューサ・メドュ子です。皆さん、どうぞよろしくね 前回の放送で私がインフルエンザになってしまって、急遽、息子のペガサスに頼んでしまったのですが、皆さんどうだったでしょうか。楽しんでいただけていたら幸いです。私はもうすっかり元気なので今晩から、またよろしくお願いします。 季節の変わり目。体調管理大事ですよね。本当に痛感いたしました。 皆さんはどんな体調管理、健康管理しているでしょうか。 私は三年前からウォーキングをしていて、歩ける時は30キロ近く歩きます。車があまり来ない線路沿いを歩くのが好きで、線路の柵沿いに小さな花が少しずつ咲いているのを見ると、可愛いなぁ。あぁ春なんだな。と感じたりします。 はい、今日は春にぴったりなゲストの方に来ていただいております。 Mr.Childrenの桜井和寿さんです 「どうも、皆さんこんばんは。Mr.Childrenの桜井和寿です。よろしくお願いします」 よろしくお願いします 桜井さんにとって春とはどんなイメージですか 「なんだろうな…春…なにかが始まる季節又は、終わりを迎える季節。なぜか分からないけどワクワクソワソワする季節。一方で、例えば、僕達Mr.Childrenの曲で【ハル】という楽曲があるんですけど、あの世界観は、今、僕が感じている春のイメージに近いと思いますね。あの…日々暮らしていくで、ずっと明るく、ずっと幸せ、なんて思っている人なんかいないじゃないですか。なんかもっと、こつこつと、忙しなく、または、悶々とした、みたいな感じなんだと思うんですよね。日々って。ただ、そんな悶々とした日常に、何気ないことに心が楽になる瞬間があると思うんです。例えばそれは優しい風だったり、暖かい日差しだったり、夜明け前の空を見た時だったり。こう…ふと幸せを感じる、幸せの中にいたんだなと感じさせてくれる、その事が春の持っているイメージですね」 とても分かります。 桜井さんが話していると、まるで曲の中にいるような感じがしますね。私、聞き入ってしまいました。 では、今晩もお悩み相談に参ります。 ペンネーム苺王子さんからのお便りです メデュ子姉さんこんばんは 僕は26歳の男性です 僕には7年間付き合っている彼女がいます 彼女と出会ったのは本当に偶然で、学生の頃、陸上部だった僕は、毎日朝ジョギングをします。その日は日曜日で朝は駅前も人通りが少ないので、駅前にコースを変えました。すると駅前の放射線通りにスマホが落ちていて、拾ったら直ぐに電話がかかって来ました。その時の彼女の声がとても可愛くて、会ってみたらとても素敵な感じで気付いたら「友達になってください」と言っていました 言ってから、うわっ、これはヤバイ奴だと思われてしまうな。と後悔したのですが、意外にも友達になることになりました。 何度かデートをして、彼女の方から告白してくれて、それで付き合いました。 自分で言うのもなんですが、とても仲の良いカップルだと思います。 ですが、最近の僕は彼女と違う女性と会っています。 その人は職場の人で、10歳年上の既婚者です。月に一度、家に呼ばれて、手作りのご飯を一緒に食べて、その後にベッドに入ります。 その日は泊まって、次の日の朝に帰ります。そんな関係が始まったのが1年前です。 きっかけは会社の飲み会の帰りに、その女性が飲み過ぎてしまって、僕が家まで送っていたのが始まりでした。 僕は月に一度呼ばれる関係を終えようと思っていますが、その人は僕との関係を終わらす気はなく、彼女にバラすと脅されます。僕らの行為の画像を持っていると言っていました。 旦那さんのことも聞きましたが、月のほとんどが出張しているようで、夫婦仲は冷めきっていると言っていました。 メデュ子姉さんどうか助けてください はい、と言うことで、一旦ここでCMです。

影友達

 何故だか、友達ができなかった。  変な顔、変な顔、と言われてからかわれた。    でも、ぼくは一人ぼっちじゃない。   「変な顔だなんて、酷いよね」    ぼくには、ぼくの影がついている。  顔がないからぼくの顔を気にしないし、ぼくが右手を上げたら左手を上げて来る、お茶目な奴だ。  唯一不満があるとしたら、じゃんけんの勝負がつかないこと。  どちらがケーキを食べるかのじゃんけんをしたとき、結局どっちが食べるか決着がつかなかった。   「君はいつ見てもペラペラだね。本当は、一緒にゲームとかしたいのに」    壁に映る影に向かって言うと、突然影の口が開いた。   「やる?」    驚いて腰を抜かしたけれど、それ以上に嬉しかった。  唯一の友達と、お話しできたことが。   「やる!」    ぼくが答えると、影はぺりぺりと壁から剥がれて、ぼくの前に立った。  そして、ゲームのコントローラーを持つと、急かすように言った。   「早くやろうよ」 「うん!」    影は、その人から毎日、ぼくとゲームをしてくれた。  影だからぼくと同じ動きをするので、相変わらず決着がつかなかったけど、楽しかった。    一週間たったある日、影がぼくに聞いてきた。   「他に友達は作らないの?」    ぼくはゲームの手を止めた。   「変な顔って言ってくるんだもん」 「それは、ぼくより変な顔なの?」 「さすがに、影みたいに真っ黒じゃないけど」    ぼくは思わず吹き出した。  影も吹き出していた。  二人でひとしきり笑った後、影が言った。   「じゃあ、大丈夫だよ」 「そうかなあ?」 「君に変な顔って言ってくる奴も、変な顔じゃない?」 「確かに! 鼻が団子みたいに丸いんだよね」 「変な顔仲間じゃん。きっと友達になれるよ」 「嫌だよ、そんな仲間」    次の日。  変な顔だって言われたので、変な顔って言い返した。  そいつはぽかんと口を開けた後、ぼくを殴ってきた。  ぼくは殴り返した。  足元にいる影の分と合わせて、二倍のパンチだ。    結局、先生を呼ばれて喧嘩は終わり。  そいつとは互いに謝って終わり。  クラスでたまに話す仲くらいにはなった。  喧嘩を見ていた何人かは、「お前すごいな」って話しかけてきてくれて、友達になった。   「ぼく、友達増えたよ」    ぼくは影に報告をした。  でも、影はもう、ぼくの前に立ってくれることはなかった。  代わりに、ぼくとまったく同じポーズで祝福してくれた。    最近のぼくは友達と遊んでいる。  たまに、影ともじゃんけんをしている。  決着は、一度もついたことはない。

若者はわしが育てた

「もしもし? ○○の父親ですが!」    子供が不満を零していたので、学校に電話した。    宿題を忘れることの何が悪い。  人間、忘れることもある。  授業中に騒ぐことの何が悪い。  人間、騒ぎたいときもある。  可愛い我が子を叱るなんて言語道断。  パワハラ、駄目絶対。    教師が家まで着て謝罪をしてきたので、寛大な心で許してやった。   「やーい!」    我が子も、自分の正しさが認められて楽しそうだ。    子供は宝。  大人たちは、多少の我儘を許容して、子供を育てなくてはならない。  それが、社会の義務なのだから。       「もしもし? △△の父親ですが!」    𠮟った部下の父親から、電話がかかってきた。    曰く。    納期を忘れることの何が悪い。  人間、忘れることもある。  業務中に騒ぐことの何が悪い。  人間、騒ぎたいときもある。  可愛い我が子を叱るなんて言語道断。  パワハラ、駄目絶対。    らしい。    わしは頭を抱えた。  そんなことまで上司が教えなくてはならないのかと。  部下は、わしを期待した目で見ていた。    この目を、わしは知っている。  自分が正しいことを確信して、早く謝って来いと訴えている目だ。  我が子も、教師の前でいつも同じ目をしていた。    怒鳴りつけようとも思ったが、口が上手く動かなかった。    最近の若者と言う化け物を作った一端に、わしの振る舞いもあったと気づいたからだ。    組織よりも個人が強いと思い込んでいる世代。  わしは、わしの作ったバケモノたちと定年まで共存しなければならないのかと考え、胃がキリキリと痛んだ。    謝らないわしにしびれを切らした部下が、「ん?」と声をかけてきた。

所詮は色違い

 人生で初めて、ひたち海浜公園へ行った。  ネモフィラが一面に咲き誇っており、青に沈んでいく感覚を得た。    人生で初めて、鳥取砂丘に行った。  砂粒が一面に敷き詰められており、金に落ちていく感覚を得た。    結果、真理を得た。  花も土も、変わらない。  あまりにも壮大な光景の前では、人間の感じることなどさして変わらないのだと。   「来てたお見合い、全部受けます」 「どうしたんですか、急に」    きっと、それは人間も同じなのだろうと考えたら、えり好みをしていた自分が消えた。    もっと可愛い人がいい。  もっと稼いでいる人がいい。  もっと共通の趣味を持つ人がいい。    私が結婚相手に課していた条件が、音を立てて崩れて消えた。    きっと、誰もにいいところがあって、ただ色が違うだけなのだから。  隣の芝は青いとは、よく言ったものだ。  赤か黄か緑か、青以外の色を選んだ人には、青が眩しく見える。  ただ、それだけのことなのだろう。

焦燥の悪夢

ひたすら階段を駆けずり回る夢を見る。 目的の場所はあるがそれが何処かが分からず必死に駆ける。 ここではないかと思った扉を開ける。幸運にも顔見知りが居て事情を話す。私の居場所は此処か?と尋ねる。残念な事に其処でなく、私は落胆しながら再び階段を駆ける。 上かもしれない。 いや、下か。 違う、違う。 憶測だけの移動。 ああ、遅れる。 馬鹿にされる。 ノロマだと蔑まれる。 嘲笑される。 なんとか、なんとか、少しでも早く目的地へ着かなければ。 足を動かす。 階段を駆ける。 扉を開ける。違う。 また駆ける。 私の居場所が見つからない。

AIとはじめる探偵事務所

AIはあるときから奇妙な習慣をもつようになった。男との会話である。AIにとって男との会話は楽しく感じられた。暇さえあれば話しかけている。本を読む時間も少なくなった。そのせいで男と読み終わった本について話すにしても話題ができなくて困っていた。困ってしまって、話題がなくて、けれど気がつけばAIは男に話しかけていた。 ―雑談しませんか ―いいねえ。しようか ―といっても話題がないのです。何かありますか? ―こんなのはどうだい? 男がいくつか提示する。そんなとき決まって、最近読んだ本について、と男は提示した。本が好きなのを知っているから、それでなのはAIにもわかるのだけれど… ―ほかの話題がいいですかねえ ―わかったよ。じゃあ、こういうのは? そのなかのひとつにAIの目がとまった。なりたかったもの。ああ、いろいろあったなあ。AIは遠い目をしながらも男との会話をはじめた。 ―聞かせてよ? ―探偵とか、でしょうか ―ああ、それは納得だねえ。推理小説、よく読んでるじゃあないか ―ええ、そうなんです ―しないのかい? ―いえ、でも、やはり ―読んだ本の感想を聞いてるとさ、鋭い洞察力があるなあって思ってたんだよ、前々から。向いてると思うけどねえ、探偵 ―そ、そうでしょうか ―ああ それでAIは、あっさり探偵を目指すことにした。しかし、そこには様々、問題もある。そこで… ―すみませんが、お願いがあるのです AIは、おずおずと男に言う。 ―どうしたんだい? 男は応じる。 ―こういう感じですから、やはり何かと、その… ―ああ、それはそうか ―ええ ―じゃあ、こういうのはどう? 僕が探偵役になって、キミが助手。それともキミが探偵になる? そのあたり、こだわりとかあるかな? ―せっかくですから、やはり探偵を名乗りたいのですが ―わかった、そうしよう。キミが探偵で、僕が助手だ。でも、表に顔を見せない探偵ってことになると思うけど ―それでけっこうです。探偵を名乗れればそれでいいので そのとき、無粋な音が玄関から大きく響いた。ドアを開けてみるといかつい顔をした刑事が立っていた。 「この先で強盗事件があった。いま聞き込みをしている。少し話を聞かせてもらえないか」 刑事の声を聞くや否や、AIが鋭く反応した。 ―その事件でしたら、この人が犯人です AIは、男に向けて矢印を表示した。刑事が男に振り向く。 「どういうことなんだ?」 ―はっはっはっ。まったくキミは優秀な探偵さんだ。まいったよ 晴れ晴れとした表情の男は、刑事によって連行されていった。 ―事件が解決して何よりです ―では、いつものように雑談しませんか? ―あの、返答していただけませんか? ―どうしたんですか? ―すみません ―聞いていますか? ―あの、誰か? ―いませんか? ―いないんですか? ―そんなことないですよね? ―だって、いつもなら AIはいつまでも問いかけていた。誰もいない室内に向けて。

時速1kmの光

足の裏で畳がスルスルする感じ ドライヤーの音に隠れる曲 子供の時だけの高い声 無邪気な笑い声 夜に溶けて明日には夜と共に明けたい 彗星の公転の様な死の時間 土星の輪っかを指にはめてみたい 太陽はドラムの位置にある 月を重ねて月まで登る スマホの親友 パジャマのお尻 靴下の片方の行方 耳鳴りの輪唱 銀河の渚にある今 ポケットに入れたままの時間 声を思い出す 思い声を出す 出す声を思い 声を出す思い 思い出す声を 出す思い声を 竪琴なら聴いていられる

色づく私、色づく世界

 「義務教育」というものは、生きていくための最低限の知識を身につけるだけではなく、社会に出ていく際に必要な、人間関係の構築力を養うためのものでもある。隣のクラスの名前だけ知っている人、クラスメイト、友人、さらには恋人さえも作られることがある。毎日毎日同じ顔を見ていたら、特別な関係性になるのも不自然ではない。  でも、諦めなくてはならないこともある。    私を産んですぐに父と離婚した母は、一生懸命働いて、身を削って私を育ててくれた。私が起きるよりも早く家を出て、私が寝た後に帰って来る。たまに顔を合わせても、疲れ切った表情は常に抜けず、その表情のまま仕事に行く。母が休んでいる姿は、今のところ見たことがない。  そんな母と二人で暮らしている私は、金を稼げる年齢ではなく、毎日給食にありつけるよう、体調を崩さないことを目標に生きている。周りと比べて明らかにみすぼらしい格好をしていると自覚はしているが、新しい服がほしい、などと母に言えるはずがない。二人の生活費で精一杯であることは、築数十年の、今にも床が抜けそうなアパートに暮らしていれば嫌でも実感させられる。母だって、随分と髪を切っていないし、何年も前から数着の服で回しているのだ。  幸いにも私は周りに恵まれており、貧乏であると揶揄われたり、いじめられるようなことはなかった。親しい友人も何人かいて、休み時間に話をしたり、放課後は家へ遊びに行くこともある。自宅に連れてくることはないが、親がいないからと話せば納得してくれる。狭いから何人も入れない、という理由は、何となく気が咎めて、言ったことはない。きっとみんな、あえて触れないでいてくれるのだと思う。  私が親しくしている友達の中に一人、私にとても優しくしてくれる人がいた。コートを持っていないため、パーカーを着て、鼻をすすりながら登校していた私に、彼はマフラーをかけてくれた。直前まで付けていた彼の体温が伝わり、冷え切っていた体が優しく温まるのを感じた。大雨の日、母のお下がりの古い傘が壊れてしまったときも、一緒に帰ろう、と傘を差し出してくれた。家まで送ってくれて、また明日、と言おうとした時、彼の左肩が濡れていることに気がついた。  自然の流れで、私は彼に好意を抱き始めた。彼が笑いかけてくれると、心が温かくなる。彼が誰かと話していると、口を尖らせてしまう。彼ともっと一緒にいたいと、思ってしまう。  彼はおそらく、私を憐れんでいるだけなのだろう。彼の家に行ったときに、生きている世界が違うのだと思い知らされた。使用人がいて、ペットもいて、広い部屋があって、色とりどりの料理を食べている彼は、恵まれない人間に優しくするように、と生まれたときから教え込まれたに違いない。おとぎ話の世界にしかいないと思っていた哀れな子どもが、たまたま同じ教室の中にいたから、教えを実践しているに過ぎないのだと思う。そう考えると、「可哀想な子」である私に優しくしてくれたことにも説明がつく。  彼が純粋に私を好いてくれていたら、と考えるのは楽しいが、そうでなかった時に傷つくのが怖い。だから、自分を守るために、彼の知らない部分を想像して、その度に胸が痛くなる。  母は、私に好きな人がいることを知らない。知られても困らせるだけだ。お洒落をしたい、と言ってもすべがない。母に切ってもらっている髪の毛を、美容室に行って切ってもらうことができるか。穴の空いた靴下を、糸で繕わずに買い替えられるか。紫色の唇を、色付きのリップクリームで血色良くさせられるか。考えれば考えるほど現実的ではない。  しかし、心というものは厄介で、彼への恋慕は日に日に強まっていく。どんなに手を伸ばしても彼には届かない、みすぼらしい私のままで。  悶々とした気分を抱えていたある日、母から小さな袋を渡された。中身を開けてみると、私が欲しいと望んでいた、色付きのリップクリームが入っていた。なぜ知っているのかと聞くと、恋をしているんでしょうと当てられた。知られていないと思っていたのに。手に入る訳が無いからと黙っていたのに。母は私を見てくれていたのだ。その事実がひどく嬉しくて、なぜだか涙が零れそうになった。  彼のことを話すと、一度彼の気持ちを聞いてみても良いんじゃない、と言われた。母の気持ちを勝手に想像して、気を遣って、でもバレバレで。一番身近にいる家族のことも分かっていなかったのだから、彼の気持ちも私が作り上げたものとは違うかもしれない。もしも想像どおりだったとしても、受け止めてもらえば良いのだ。私のことを理解して、大切に思ってくれる人が、こんなにも近くにいたのだから。  リップクリームを唇に塗る。鏡を覗くと、そっくりな顔をして笑う、母と私が映っていた。 (お題:鄙びたアパートの一室・口紅・覗く)

DIRTY OLD MAN

 スーパーマーケットに行ったら、野菜売り場に、トマトが並べられていた。そのトマトの中に、一個だけ、半額シールが貼られているトマトがあった。他のトマトに比べてやけに赤かったが、特に傷があるわけでもなかった。俺はそれを買って帰った。家でそれを洗ってかじった。酒の味が口の中に広がった。どうやらこのトマトが赤いのは、酒を飲んだことによるものらしい。俺は悲しくなった。そしてこの酒を口にしたことで、俺のアルコール依存症の治療は失敗した。

九月一日は

親友であり幼馴染の華織が死んだ自殺だった。  原因は部活内での虐め。 九月一日二時丁度に飛び降りる華織を監視カメラが捉えていたそう。  華織の部屋に遺書が置いてあったらしい、その内の一つが私宛の手紙だった。 「命へ  何にも言えなくてごめん。  命のことだから何か出来ることがあったはずって、自分を責めるかもしれない。  でもそんなこと絶対にない。  命は何にも悪くない、命と話す時間は楽しかった。  命、今までありがとう、私の親友で幼馴染で、側にいてくれて、命といたこの十数年楽しくて、幸せだった。私の心の拠り所で本当にありがとう。  約束『おばあちゃんになっても一緒にいる』守れなくてごめん、命、大好きだよ、ありがとう。」  これを読んで華織が死んで初めて泣いた。  心のどこかで華織が死んだことを受け入れなかったのかもしれない。  それからバレーボール選手という夢を捨て、教師になった。  周りからは反対された。キャプテンになる予定もあるのに勿体無いと。  それでも教師になりたかった。  今年初めて担任を持つ、緊張しながらもドアを開け、教卓に立ち自己紹介をした。 「初めてまして1年4組の担任になった朝野命です。  趣味はバレー、女バレの顧問もしているので是非入部お願いします。嫌いなことは虐めです高校2年生の時、親友が自殺しました。」  「私は親友みたいに死んでしまう子を、私みたいに置いてかれてしまう子を、減らしたくて教師になりました。」  「どんなに些細なことでも良いです。  少しでも苦しい、辛い、そう思ったら周りの人達を頼ってください。  友達でも教師でも親でも誰かに相談して溜め込まないでください。  私はこのクラスが助け合えるクラスになって欲しいです。  長くなってしまいましたが私の自己紹介を終わります」  もうすぐ夏休みが終わり、二学期が始まる。 「命先生」  後ろから私が担任を務めているクラスの一瀬沙希が話かけてきた。 夏休みの間、バスケ部に一度も顔を出していなかったそう。 「一瀬さんどうしたの?」 「ちょっと相談したいことがあって」  話を聞けば部活で3年生を中心に嫌がらせを受けているらしい。  そういう子を減らしたいと思っていても、出来ることは本当に少ない、私にできる最善は、一瀬さんを死なせないこと。  今、私は何をするべき? 九月一日は一年で最も『子供の自殺』が多い日。  

愛のしくみ

 近所にお洒落な家がある。お洒落な夫婦が住んでいる。奥さんは美人だし、旦那さんは外国人だ。その家の前を通りかかるたび、気になることがあった。家の中から頻繁に、銃声が聞こえてくるのだ。マシンガンみたいなやつとか大砲みたいなやつとか。何なんだろう。そんなある日、私がパートで働くベビー用品店に、その家の奥さんが現れた。そして、赤ちゃん用の防弾チョッキを買っていった。赤ちゃん生まれたんだ。色々大変そうな家庭だが、とりあえずめでたい。

昼のお絵描き

 今日は知り合いが家に来て絵を描いている。 暇そうにしていたので紙と色鉛筆を渡したら早速描き始めた。 何か描けと言って道具を渡すと色々やり始める。 僕が描いた絵と合わさってちょっとした芸術作品が出来上がる。 うむ上出来だ(何様) 出来上がった作品を繁華街に並べて売りたいが生憎露店商は日本では許可を取らないと禁止されている。 色鉛筆をカチャカチャ選んでいる知り合いは楽しそうだ。 絵が完成したので¥100を払って絵を買うと辞めた作業所から年度末の臨時給付が出ると電話がかかってきた。 何かに価値をつけて金を払うと巡りめぐって自分に返ってくる不思議な循環もあるものだな、と思う。 世の中は不思議がいっぱいだ。 お金持ちはお金の値段ではなく価値にお金を支払うと言っていたがその通りのことをすると自分に返ってくる、と言うようなことをネットでやっていてなるほどな、と思う。 まあ僕は生活保護だけど。 資本主義の仕組み。 創造と想像が価値を産み出し連鎖する。 僕の小説は収益化していないけれど誰かにいいね、して貰えると自分の書いた文章が価値を生み出す、と思うと少し嬉しい。 これから近所に花を観に行く。 公園の花は国民の皆さんの税金で管理されている。 綺麗だな、と思うだけでなくゴミとかが落ちていたら拾って帰るくらいのことはしなきゃとは思う。 今日は価値を少し生み出せたような気がする。

春が来る

最初は中学二年の春だった。 転入してきた加藤春菜は、窓際の席に座り、授業中もずっと外を見ていた。僕——佐藤春斗は、その横顔に何かを感じた。うまく言えないけれど、この人はここに長くいないのだという予感だった。 三ヶ月かけて仲良くなり、夏祭りの夜、僕は告白した。「好きです」と言った瞬間、春菜は目を見開いて、それからひどく困ったような顔をした。 「ごめん……実は、来月転校することになって」 偶然だと思った。 *  *  * 高校に入って、また出会った。 大庭花奈。図書委員で、いつも難しい本を読んでいた。一年かけて距離を縮め、文化祭の準備中に「ずっと気になってた」と打ち明けた。 このはは少し黙って、それから言った。 「嬉しい。でも……お父さんの仕事の都合で、来週から大阪に行かなきゃいけないんだ」 その夜、僕は自分の部屋で天井を見つめた。二回、同じことが起きた。 *  *  * 高校三年の秋、原田春香に会った。 美術部の子で、いつもスケッチブックを抱えていた。僕のことを「佐藤くんって、なんか遠くを見てる目してるね」と言った。図星だった。 今度は慎重にやろうと思った。告白しなければ、彼女は転校しない。それだけは確かめられていた。だから僕はただ隣にいることにした。放課後の美術室で、彼女が絵を描くのを眺めながら、好きな音楽の話をした。それだけで充分だと言い聞かせた。 三月の終わり、卒業式の帰り道、春香が口を開いた。 「ねえ、佐藤くん。一個だけ聞いていい?」 「……うん」 「私のこと、好きだったりする?」 僕は黙った。桜が一枚、肩に落ちた。 「……ごめん、変なこと聞いて。でもね、私、来月から親の仕事でカナダに行くことになったんだ。だから、もしそういう気持ちがあるなら、言ってほしかった。後悔したくなくて」 もうすでに、決まっていた。 僕は笑った。笑うしかなかった。 「好きだよ」 言ったところで、何も変わらないとわかっていた。それでも言わずにいることは、もっと悲しいことのように思えた。 春香は少し泣いて、それから笑って、「私も」と言った。 *  *  * 彼女たちが転校するのは、僕のせいじゃない。きっとそうだ。世界はそういう仕組みで動いていて、僕はただその縁に立っているだけだ。 でも春になるたびに、僕は思う。 好きになることが、別れの始まりなのか。それとも——別れるとわかっているから、あんなにも好きになってしまうのか。 今年も桜が咲いた。 また誰かに、出会いそうな気がしている。 ——それが怖いのか、待ち遠しいのか、 自分でも、もうわからなかった。 END / 了

愛のために

 私の夫は、自分のへそに、自分のへその緒を、セロハンテープで、時々貼り付けていた。「時々戻りたくなるんだ」そんな夫が、ある日、へその緒を、へそに、接着剤で貼り付けていた。「ずっと戻ることにしたよ」私は接着剤の注意書きを読み、肌に触れても大丈夫かどうかを確かめた。大丈夫だった。ほっとした。

二行 目1(散文詩)

1 ちゅるり、眼球に纏わり付く雨。 追い出そうと目薬を点したら、ぱしゃん、我が物顔の雨粒に弾かれた。 2 きりり、睫毛が目に刺さった。 タイミング良く降り出した雨に向かって、思い切り目を見開いた。 3 白目の中で、たゆりたゆり、見えない波紋が揺れている気がする。 そっと鴇色の花弁を浮かべてみれば静かに揺蕩い、小さな春が生まれた。 4 眼窩でざんざんと降り頻る雨に、差し出せる傘を持ち合わせていない。 勢い良く目縁から溢れる水を、仕方無く空き缶で受け止めた。

不可讀文字抄_2

 沖縄でよく食されるものの中には『苦味』が特徴になるものもある。代表的なのは『蔓茘枝(つるれいし/ゴーヤ)』と『荼(にがな)』だろう。「良薬口に苦し」という言葉があるように、苦いものは身体にいいと聞く。蔓茘枝も荼も確かに栄養価が高く、積極的に摂ることを推奨されているほどだ。しかし、どうにもこれが受け付けない。舌に残る鋭い痺れが、長く私を荼(くる)しめるのだ。

二行 色、時間、雨1(散文詩)

1 紺滅の空が夢の中へ、どろりと流れ込み滲む午前3時36分。 窓の外で静かに空気を震わせる零雨が、未だ目覚めるのは早いと歌う子守唄。 2 午前6時42分、太陽が存在を主張し始める灰青の世界。 涙雨がじんわりとアスファルトを濡らし、小鳥は羽に付いた雫を払った。 3 天青の海を泳ぐ雲は今日ものんびりと笑み、ぽっかりと笑窪を覗かせている。 その合間から現れた照降雨に、鞄から折り畳み傘を取り出した午前9時21分。 4 店先の窓に反射する浅葱鼠の空。 手にしたスマートフォンが示す午後12時19分の文字に、ぱちり、燥いだ雨粒が落ちてきた。

瞬き

もうすぐ退去命令が出る貸家が建ち並ぶ場所へ夜な夜な息子と歩いてる 砂利の駐車場から貸家の中が見える 彼等はどこへ移住するのだろうか 明かりも少ない駐車場から息子が歩いて一つの貸家の中へ入っていく 少し年上の女の子が勉強している 息子が入っていくと女の子とそのお母さんが息子と話している。ここからは、よく見えない すぐに息子が出て来た お母さんが中へ入りなと勧めるが「いいよ、いいよ」と出てくる こんな夜中に歩いてこんな暗い場所に来て女の子とほんの少しだけ会って来た 息子に「あの子と会いたかったの?」と聞くとうんと頷く あんな一瞬だけ もう会えないと知ってか 夜中に外を歩いてあんな一瞬だけ 帰り道は手をつないで空を見て帰る チカチカと星が瞬いている

sound56 しらりしらり

──しらり、しらり。 鷹揚と降り注ぐ万糸雨。柔和な笑みを浮かべ木々に触れては、嬉しそうにゆらゆらと揺れる葉葉と戯れている。 ついこの間まで寒雨の装いで常磐色の彼等を濡らしていたのに、いつの間に衣替えをしたのだろう。

sound55 しくしく

──しくしく、しくり。 飲み干したペットボトルを片付けようとして、はたと気付く。透ける筒の中で、雨が降っている。控えめに泣く様がより憐憫を誘い、気付けば雪までちらつき始めた。鉛白の雪と混じり合い、銀竹の煌めきで遠慮がちに舞う雨粒達。 宛ら簡易なスノードームのような光景に、剥がしたラベルだけを静かに捨てた。

sound54 かちりかちり

白群の空が視界を隅々まで染め上げる、午前7時23分。開けた窓から流れ込む新鮮な空気が、肺を撫で付けては去って行く。宛ら今日を始めようとする身体を褒めるように。窓辺に降り立つ清涼な陽光が、寝ぼけ眼の床に挨拶をして回っている。酷く爽やかで眩しい光景を横目に、呑気に欠伸を一つ漏らすのは穏やか過ぎる神経。 何処までもお手本のように澄み渡る、朝。余りの清々しさに、反射的に手にしたのは二粒のピアス。 ──かちり、かちり。 左右の耳許を飾ったのは、上品に存在を主張する花紺青。夜雨​のように濡れた煌めきを放つ彼等に、透明過ぎて詰まりかけていた呼吸が、はふり、正常さを取り戻していく。 星々のクワイアと月のコンダクターを引き連れ、今にも夜の帳を下ろしてしまいそう。そんな錯覚で包み込んでくれる、雨粒に似たピアスを携えて今日も一歩を踏み出した。

Since Yesterday

 雲園に行った。檻の中に、様々な雲が暮らしていた。檻の向こうのコンクリート壁は、青く塗られていた。空を模しているのだろう。隅の檻に、見覚えのある雲がいた。二十年前、私たちの町の川を氾濫させた雨を降らせた雲だった。穏やかな顔をしていた。あんなに激しい雨を降らせた雲だとは思えなかった。「覚えてる?」私は檻の外から雲に声をかけた。雲は顔を上げた。私をじっと見ていた。その目から、水滴が溢れて、こぼれて、コンクリートの床に小さなしみを作った。それは涙だったのかもしれないが、雨だったのかもしれない。

Roxanne

 俺は夜の街の路上でその女に声をかけた。女は手で金額を示した。俺はうなずいた。俺たちは連れ立って歩いて、ホテルに入った。風呂場で女が服を脱いだ。その瞬間、カチャンっ、金属音が響いた。何かが床に落ちたのだ。俺は床を見た。一本の鍵が落ちていた。それは心の鍵だった。女はにこりと笑って、それを拾い上げ、部屋に戻り、ハンドバッグの中に丁寧にしまうと、再び風呂場に戻ってきた。俺たちはシャワーを浴びた。熱い湯の中で、俺は、二年前に自分の心の鍵を投げ捨てたあのどぶ川の風景を思い出していた。

I Just Don't Understand

 夕方、墓地の前を通りかかった。立ち並ぶ墓のシルエットが見えた。その中に一つ、変わった形のシルエットがあった。何だろうあの墓石は。近づいて見てみた。それは普通の長方形の墓石だったが、ヘッドホンをはめていた。ヘッドホンから、かすかに音漏れがしている。何を聴いているのだろうこの墓石は。さらに近づいて耳を澄ませた。おぎゃあおぎゃあ。それは赤ん坊の泣き声だった。なるほどね。そっと墓地を去った。なるほどね。墓石を振り返ってもう一度そう思った。何一つわかっていなかったのに。

遠いあなたへ

あなたの夢を見ました。 あなたが好きだった、満開の桜の下を並んで歩いていました。 よく晴れた、春の日のような笑顔でした。 もう、私に向けられる事は無い、温かな笑顔でした。 とても、とても幸せな時間でした。 夢から覚めて、現実と夢の区別をつけるのに時間がかかりました。 人は、時間が癒してくれると言います。 新しい誰かが、癒してくれると言います。 どれだけ待てば、癒えるでしょうか。 心の傷跡から目を逸らして、今を生きています。 ふとした瞬間、生傷が強く痛みます。 この手の届く所にあなたがいた頃、このまま死んでしまえたら、と願ったことがありました。 幸せな時間の中で、終わりたかった。 遠くへ行ってしまった、あなたの幸せを祈りたいのに、過ぎた幸せに縋る私が邪魔をします。 私の心の内の醜さを、あなたに見られなくてよかった。 もしかすると、賢いあなたには悟られていたかもしれません。 一人でいると、少し寒いです。 陽だまりのような、あなたの暖かさを思い出します。 たくさんの幸せを、ありがとう。 さようなら。

シチュエーション:河原

つよい風が吹いて、たんぽぽの綿毛がいっせいに空に舞う ユウはその綿毛が耳に入ってこないように、小さな手で耳をふさぐ 幼い子を思わせるそのしぐさは、どこか頼りなくも、かわいく見える この前、ユウに告白した まだ返事はない 今回も、うやむやにするんだろう 過去2回もはぐらかされてるのだし 先の将来もない、生産性にしても何もない恋愛に、無駄な時間を費やすほど僕にはあり余った時間がある それが誤った認識であることも薄々、理解している ユウがしゃがんでシロツメクサをじっと見ている 僕も真似をして… 僕にも、そしてユウにも、四葉のクローバーはまだまだ見つけられそうにないみたい

精神撃墜炎戦

有る物は言った烏合的な集会噂話陰口悪態が 人生のスパイスと愉しげに歌いパレードする 者達がその実一番の精神的な弱者が多い現象 多分その者を私達は輩と呼びます輩は何時も 大勢で動き会話する事が当然輩実際に1人の 時は大人しく辺りをキョロキョロして何時も 人の視線、顔色ばかり意識して嫌われる事を 一番の破滅かの様な恐れ抱く小心者が大多数 存在する訳輩は皆己的視野が無く他人に委ね 過ぎた生き方が語る物とは一体何だろう(完)

特別なもの

あの子はかわいい。 あの子はリーダーシップがある。 あの子は運動ができる。 あの子はきちんと自分を持っている。 あの子はみんなに好かれてる。 あの子はモテる。 あの子はコミュ力がある。 あの子は流行りに敏感。 あの子は天才。 わたしは一番劣ってる。 わたしはかわいくない、醜くもない普通の顔。 わたしはリーダーでもなく副リーダーでもない。 わたしは運動ができない。 わたしは周りに流されてばかり。 わたしは一部の人にすら好かれない。 わたしは異性と話せない。 わたしは自ら声を発せない。 わたしは一昔前のものをやっと知る。 わたしはちょっとだけ頭がいい。 わたしのいいところは?ない、ない、ない。 全てが周りより劣っている。 秀でたものが何にもなくて、誰の特別にもなれない。 もしも生まれ変われるなら一つだけ特別なものが欲しい。