花火と共に

 打ち上がる花火の音と、人々の歓声。  その時かすかに聞こえた救急車のサイレン。  ポケットから鳴り響く着信音。  父の声。  父がその時なんと言ったのか、私は思い出すことができない。  ただ無心に人混みをかき分け、救急車のランプが光る横断歩道へと走った。 *  一年前の八月一日。  私が友達と呑気に花火を見上げていたとき、母はトラックに轢かれて死んだ。  その衝撃と、自分にはどうにもできない当時の苦しみを思い出す。  窓を開け、外の暑苦しい空気に不快感を感じながら、母が死んだ横断歩道を見つめる。マンションの三階。私の部屋からはその場所がよく見えた。  寂しさと苦しさを感じている私とは対象的に、浴衣を着ている女子、道を走る小学生、手を繋ぐ男女が道路を歩く、浮かれた光景。人々が向かう先は花火大会の会場だろう。  私の住んでいる地域では、毎年八月一日に花火大会が行われる。毎回誘ってくれていた友達が今年、何も言ってこなかったのは、私を気づかったからだろうか。  母が死んでから、父は変わった。  昔の父は仕事を休むことなんてなかった。お酒で酔っ払って私に怒鳴ることなんてなかった。母以外の女の人を愛することなんてなかった。  学校から帰ると、知らない女の人が家にいたことは何回あっただろうか。  母が死んだショックを紛らわすためなのか。それとも、母が死んでから開放されたからか。  以前の父を取り戻すことは出来なかった。母と笑い合う父はもう帰ってこない。今の父が本当の父だと、そう思わなければ、私はこの家で暮らすことはできないと思った。  母がいた頃の父の記憶はもう薄れている。  「あの人は、私がそばにいないと駄目になっちゃうの。」  母は私によくそう言った。  本当にその通りだった。  母がしていたように料理を作っても、何をしても私には父を支えることが出来なかった。母を見つめて微笑む父の表情は、母が死んでからは一切見ることができなかった。母が死ななければこんなにも苦しい思いをしないで済んだのに、と母の死を恨んだことだってあった。  「お母さん、私、高校を卒業したら一人で生きていくね。」  辛かった一年を思い出し、溢れそうな涙を堪えながら横断歩道を見つめてそう呟く。  私は、父から離れる。街を出る。一人で生きていく。そう母に伝えたかった。  いつの間にか辺りが薄暗くなっていた。  ヒュールルル  突然鳴り響くその音に、多くの人は楽しみを感じたはずだが、私にはただただ切なく寂しい音に聞こえた。  ドンッ    大きく鳴り響くその音と同時に、歓声がかすかに聞こえる。  私は、横断歩道を見つめ涙を流す。花火に照らされてチカチカと輝くその場所を、次々と聞こえる音と共に見つめる。  あの日の情景が脳裏を埋め尽くし、思わず窓に手をかける。  その時、横断歩道からこちらを見つめる人影に気がついた。通行人は皆、足を止め、空を見上げている中、その少女だけがこちらをじっと見つめている。  なぜか目が離せなかった。  こっちへおいで、と語りかけられたような、操られているような、そんな気分だった。  私は、涙を流しながら、その少女に吸い込まれるように家を飛び出し、横断歩道へと走った。  息を切らした私と、花火の光に照らされる横断歩道のその情景は、まさに去年のあのときと同じだった。  恐怖で座り込んだ私を、少女はじっと見つめている。私は、少女を見る。目が合う。  「お母さん...?」  思わずそう呟いてしまうほど、少女はどこか母に似ていた。顔は似ていないのに、優しく微笑みながら私を見つめる姿は、母そのものだった。  「ごめんね。あの人は、私がそばにいないと駄目になっちゃうの。」  少女は、私に向かって言った。  母の口から何度も聞いたその言葉。母の少し誇らしげな表情と言い方は忘れるはずなかった。  涙を流しながら、震える足でなんとか立ち上がり少女に近づこうと歩く。しかし少女は、私から離れ、横断歩道に立っているスーツの男性の元へと向かった。  父だ。  何か言わなければと思うのに、声を出すことができなかった。父は横断歩道の先をじっと見つめていた。  少女は、父と手を繋いだ。  信号が赤に変わる。トラックの走る音が近づく。  私は、呆然とその光景を見ることしかできなかった。  二人はゆっくりと前へ進み、向き合い、微笑み合う。  光に照らされて見えた表情は、母が生きていた頃、二人で笑い合っている姿と同じだった。  私は、やけに大きな花火の音と共に、泣くことしかできなかった。        

『日々の欠片』4/1『四月一日の嘘』(リメイク版)

「好きだよ……嘘だよ」 (ホントだよ) 「どっちだよ」  テレパスの彼は私の心を読んで笑う。 (知ってるくせに)  心の中で語りかけ無言で口をとがらせる私の頭を、彼は優しく苦笑しながらポンポンと撫でた。  嘘でもいいから言ってほしいのに、決して言ってくれないその言葉。  彼の左手、薬指に光る指輪が、今日だけの嘘だったらよかったのに。

海を見たくて

 季節を彩る花々を、美しいと感じられなかった。私の魂が醜く汚れていくのがわかったから。誰かが語る明るい未来は、誰かの犠牲で成り立っていると知った。私の深い闇と痛みをこの世の誰も気に留めていないと思ったから。  不登校になってひと月が過ぎたある朝、父さんが無理矢理部屋から私を引きずり出して、何度もぶった。  どうして何も言わないんだ、なぜずっと部屋にこもったままなんだ、と。  だから、私は叫んだ。 「……いじめられてるの! ずっと、ずっと我慢してきたの。でも、もう無理なの! ぶつならもっとぶって。私を殺して! 父さん!」  父さんの、手が止まった。その表情には、大きな驚きと、激しい後悔が浮かんでいた。  母さんはすぐさま私を抱き寄せ、わんわん子供のように泣いた。私の方は、もうとっくに涙が枯れていた。  誰にいじめられてるのかとか、担任は知っているのかとか、父さんは沢山質問したが、私はそれ以上何も答えなかった。 「エリ。……ユカちゃんが来てくれたわよ」  それからまたひと月が経ち、梅雨が明けた。電気もつけず、強い西日をカーテンで遮った部屋のドアの前で、昨夜も一睡もできなかった私に母さんが言った。  ユカは何度も連絡をくれていたけど、私はそれをシカトしていた。 「会いたくないって言って」  私は久しぶりに熱くなった目頭を押さえ込むように、震えた声で答えた。 「……エリ。お願い。エリと、一緒に海を見たくて」  ユカはすでにドアの前にやってきていた。 「ごめん。帰って。ごめんね」  私は何かから逃げるように布団にくるまって言った。 「エリ! ユカちゃん、せっかく来てくれたのに……」 「いいんです、おばさん。また、来ますから。……エリ? ご飯、ちゃんと食べてね」  ユカはそう言い残すと、母さんに挨拶をしてうちを後にした。  静かになった部屋の中。私は、なんとはなしにスマホへ手を伸ばして、布団の中で写真フォルダを開いた。  中学の入学式まで遡る。画像をスワイプしていると、ユカと近所の海をバックに撮った笑顔のツーショット写真で手が止まった。 「ユカ……」  この時は、まさかあんな地獄のような日々が始まるだなんて思っていなかった。一年の半ばで目立つ派手なクラスメイトに目をつけられ、二年でまたその子と同じクラスになり、いじめは更にエスカレートした。 「いじめられる側にも原因がある」。どこかの誰かが言った言葉が蘇る。その人はきっと、いじめられた事がないことだけは確かだ、と私は思った。  その後も週に二度、三度とユカはうちにやって来たが、私はユカに会えなかった。  不登校の決定的な原因は、私を庇ったユカにいじめが飛び火したからだった。ユカはそうなる危険性を知っていながら、抵抗できない私を見かねて守ろうとしてくれたのだ。  それから、いじめの標的が私からユカに移った。私は胸が張り裂けそうになった。怖くて、怖くて、何もできなかった。自分に嫌気が差し、自分の弱さに愕然とし、私は学校へ行けなくなったのだ。そんな私に会いに来てくれるユカ。私には、合わせる顔が無かった。  そして、最後にユカが来てから二週間が過ぎた。 「エリ。ユカちゃんが……」  いつものように真っ暗な部屋。カーテンの隙間に目をやると、外にも光が無い。ユカが来るのはいつも夕方だった。  ……今、夜なの?  そう思った時だった。 「落ち着いて聞いてね、エリ」母さんは自分を落ち着かせるように一呼吸置いた。「……ユカちゃん、先週から行方不明になってて……今朝、波止場で見つかったそうよ」  ……え?  心臓が止まりそうになる。  私は布団を蹴り上げ飛び起きると、ドアに駆け寄って勢いよく開いた。 「母さん、波止場でって……ユカ、ユカ、まさか……」  母さんはしわくちゃな顔をしながら私を強く抱き寄せ、何度も何度も背中をさすった。 「エリ、大丈夫。大丈夫だから」  何が大丈夫なのかわからなかった。全身の血が瞬時に冷たく凍っていく。ブルブルと肩が震えだす。 「ユカ! ……うそ! そんな……。ユカ! ユカァァァァッ!」  優しかったユカ。強かったユカ。私を、守ってくれたユカ。 (エリと、一緒に海を見たくて)  ユカ。辛かったんだね。苦しかったんだね。きっと、弱虫の私なんかよりずっと。ごめん。ごめんね。  枯れていた涙が溢れ出す。動かなくなっていた心が、かつてない痛みと共に急激に息を吹き返す。 「ちょ、ちょっとエリ!」  私はショックで体が動かなくなる前にと、驚く母さんの制止を振り切って勢いよく家を飛び出した。  涙を拭い、潮風を全身に浴びながら月の下を駆け抜ける。  私は走った。  私は急いだ。  二人で写真を撮ったあの海辺へ行けば、ユカが、今もまだ私を待ってくれているような気がして。

お父様は親馬鹿だった!?

 男爵令嬢への毒殺未遂。一見重罪ではないように思えたが、問題は彼女が皇太子殿下の寵愛を受ける女性であることだった。  皇太子殿下の婚約者である私は茶会に彼女を誘っただけ。ティーカップに口をつけた彼女が椅子から崩れるように倒れたのを今でも鮮明に覚えている。ティーカップには毒が塗られていたようだ。毒など盛った覚えはないというのに。私の立場はみるみる悪くなっていった。牢屋に閉じ込められて、私は必死に訴えた。お父様を呼んでほしい、お父様なら私の無実を証明できると。お父様との仲は決して良いものではなかったが、娘を見捨てることはないだろうと思っていたからだ。 「……タリア」  お父様が面会にいらした。私は駆け寄って、鉄格子越しに見上げる。 「お父様!私の無実を陛下にお伝えください!私は毒殺など行っておりません!」  深海のような瞳が私を見下ろす。冷えた瞳に背筋が凍った。 「……じっとしていろ」  お父様はそれだけ言って背を向ける。血の気が引いていく。なんとかして引き止めないと。私は鉄格子を掴み、声を上げた。 「お父様!お願いです!私の話を……!お父様!!」  どれだけ呼んでも、お父様が振り返ることはなかった。目の前が暗闇に覆われていくような心地で、私は腕の力が抜けてゆくのを感じた。  私に言い渡されたのは斬首刑だった。最後に挨拶がしたいと男爵令嬢が私の目の前に座り込んで囁いた。 「家族に見捨てられて可哀想ね。でも悪く思わないで。私の人生には貴女という『悪役』が必要だったのよ」  彼女の表情は私よりもよっぽど『悪役』のそれだった。嵌められたと気付いてももう遅い。怒りに身を任せ振り上げた腕を彼女の護衛騎士が掴む。 「この期に及んでフローラ様に危害を加えようというのか。愚かな女だ」  私は引きずられるように断頭台に向かい、跪く。私の視界に家族はいなかった。あの男爵令嬢の言う通り、私は家族に見捨てられたのだった。もしも私に次の人生があるならば、家族に愛されて生きたい。目を閉じてそれだけを願った。  神様は本当にいるのかもしれない。太陽のような暖かな眼差しで私に微笑む女性を見つめて、そう思った。どうやら次の人生が私に与えられたらしい。彼女の腕に抱かれて、微睡む私はまだ生まれたばかりの赤ん坊だ。 「アリーシャ、可愛い私の赤ちゃん」  母親は微笑んで私の頬に触れる。心地よさに目を細めると、彼女は嬉しそうに笑うのだった。 「貴方、見て。アリーシャが私に笑いかけてくれたわ」  彼女が話しかけている相手を見て、私は驚きのあまり固まってしまった。何故ならその相手がロベルトお兄様だったからだ。彼は私の前世で兄だった人だ。つまり私はお兄様の娘として生まれてしまったらしい。お兄様は私の顔を見て、目を見開いたかと思えば涙を浮かべた。 「あ、貴方……?どうかしたの?」  お兄様は服の袖で涙を拭った。 「……似ているんだ、あの子に」  あの子?誰のことだろうと考えていると、彼女がお兄様の背中を撫でた。二人を見ていると胸が痛くなった。お兄様が泣くなんて、前世では見たことがなかったのだ。私まで悲しい気分になって、気が付けば泣いていた。  お兄様の娘として生まれ変わって、私は色々なことを学んだ。何よりも衝撃的だったのは、私の住む国がプロロー帝国からエピロー帝国へと名前が変わっていたことだった。帝王の名前はハリス・エピロー。前世でのお父様だ。お父様は私が死んだ一年後に王家に反逆し、国を乗っ取ったらしい。何故そんな無謀なことを。問い詰めたいが、私はまだ赤ん坊だ。早く大きくなってお父様に会わなければ。私は決心するのだった。

水平線

 水平線の向こうに沈む夕日の中に、もう一つ小さな丸いものが見える。と思ってよく見ると、それは水平線の結び目だった。ほどけていたのを誰かが結んでくれたようだ。結んだ分、世界は少しきゅっと小さくなっただろうが、ほどけてバラバラになるよりはいい。

魔法少女始めます!平伏せ!

 私のお父さんは、職場でパワハラとやらを受けて自殺した。  私のお母さんは、大好きなお父さんの後を追うように自殺した。  残された私は、死ぬ勇気がなかった。    家賃が払えずにアパートを追い出され、親戚一同誰一人として私を引き取る気がなく、最終的に施設で過ごすことになった。  施設の生活は、嫌ではなかった。  色んな境遇で集まった者同士。  余計な干渉をせず、個人を尊重し、のびのびと生きることはできた。  でも、夜中に悪夢で目覚めるくらいには、私の心にトラウマという魔物が救巣くってたようで。    ああ、嫌いだ。  私の事なんて見向きもしない他人が嫌いだ。  可愛そうという言葉を遠慮なく投げつけてくる他人が嫌いだ。  心配と野次馬を勘違いしている他人が嫌いだ。    こんな世界、大嫌いだ。       「僕と契約して、魔法少女になってよ!」        そんな私に、世界を救ってくれというお願いが来たのは、皮肉な話だ。   「はい」    皮肉だが、幸せなことだ。  私だけが、世界を守ることができるのだから。  他人は、私を頼らないと駄目なのだから。    空にブラックホールみたいな穴が開いて、穴から化け物が無数に生み出されてきた。  二足歩行のトカゲと形容すべき醜悪な外見。  目はギラギラと緑に輝き、尖った歯はガチガチとぶつかり合う。  化け物は、近くにいた他人の首根っこを掴んで、頭をガリガリと食らった。    捨てられる頭部を失った他人。  周囲に飛び散る血。  殺された他人の周りにいる他人たちは、ようやく命の危機を感じたのか、叫び声をあげながら逃げ始めた。  しかし、化け物の方が足は速く、次から次へと他人が食われていった。    私は初めて気づいた。  私の事なんて見向きもしない他人の気持ちに。  こんなに、こんなに他人の人生って、どうでもいいものなんだ。   「ほら、出番だよ」    私を魔法少女にした悪魔が、私の背中を押す。  私は魔法少女へ変身をし、空を飛んだ。  空中に浮かぶ私を、他人たちはパニックで見つめ、私の手から放たれた雷が化け物を撃ち抜き殺すと、他人たちの頬が緩む。  うおおおおっと、歓声が上がる。  他人たちは、よほど自分の無事が嬉しいらしい   「私は魔法少女です。化け物を倒すためにやってきました」    歓声は、一層強くなる。  他人たちは、周囲に見向きもしないが、自身の命がかかっていれば気にする程度のマナーの悪さがあるらしい。   「遅いのよ! もっと早く来なさいよ! うちの……うちの夫が!」    騒がしい歓声は、私が私に文句を言った他人を雷で撃ち殺した瞬間止んだ。    ああ、わからないんだろうな。  だって、他人は周囲に見向きもしないから。  私の事を救済システムか何かと勘違いしたのだろう。  何を言っても構わない、正義の味方と。   「毎年百万円。それが、貴方たちの命の値段です。払ってくれた方を、私は助けます。払ってくれなかった方を、私は助けません」    私は正義の味方なんかじゃない。  貴方たち他人と同じ、自分のことしか考えられない卑怯者。  私の提案に異を唱える他人を次々と撃ち殺せば、反論もなくなった。   「この提案は、非情な提案ではありません。私が私に、本来助ける必要のない貴方たちを助ける言い訳、つまり私からの善意です」    私の受けた依頼は、世界を救うことだ。  世界を救うとはつまり、化け物を倒すことだ。  化け物に殺される人間の数を減らすことまでは、依頼に含まれていない。    やっぱり、私の行動は善行だ。  私はちゃんと、他人たちを見る努力をしているのだから。        振り込まれた金は、私の過ごした施設へと。  似たような境遇の子供が過ごす施設へと。   「行ってきます」    さあ今日も、私は善行を積んでこよう。

蛙化教

 蛙化現象。  好意を抱いている相手が自分に好意を持っていると知った瞬間、冷めてしまう現象。  蛙化現象に悩む女性は、多いらしい。    私はそこに目を付けて、蛙化教を立ち上げた。  蛙化現象は普通のことだという、たった一つの理念。  需要は高く、私のもとには大量の信者が集まった。    宗教が毛嫌いされている現代に、これだけ大きな組織を作れるのは私くらいだろう。  これから始まるのだ。  蛙化教の大躍進が。   「よく来ましたね、信者の皆さん。蛙化教の神は、貴女たちを歓迎し、愛しています」        翌日、信者は全員いなくなった。  蛙化教の神が、信者を愛していると、つまり好意を持っていると知った瞬間、冷めたらしい。    ちくしょう。

ネバーランドのピーターパン

 やあ。僕はピーターパン。  君をネバーランドに招待しに来たんだ。  ネバーランドはとてもいいところだよ。  子どもだけの、子どもによる、子どものための国だ。  誰だって英雄になれるし、なんでもしたいことをすることができる。  なにより、ネバーランドに居続ければずっと子どものままでいられる。  大人にならなくていいんだよ。  君も僕も、すでにネバーランドにいる子どもたちも、 どうせ大人になったら自由に生きることなんてできないんだ。  だったら、このままずっと子どものままでいて、 好き勝手に生きられるネバーランドに居続けるほうが  ずうっと幸せだとは思わないかい?  苦しんだり、辛い思いはしたくないだろ?  それなら、ほら。この手をとって。 『一緒に行こう』

出逢い。

冬。 その音を響かせたのは、市立図書館にあるストリートピアノだった。 人影は吸い寄せられるようにピアノに近づいていく。 目を閉じ、鍵盤を1音、そっと鳴らす。 静寂の中のうるさいざわめき。 裏を読んでしまう、能力。 人を彩る、ピアノの音。 真夏の怪物。 それらが、人影を取り巻く過去、そして、現在だった。 ピアノの清らかで、透明な音は細く長く響いていく。 頭の中を淡い色が駆け抜けていく。 周りは暗いのに、その音だけは希望の光のように思えた。 天窓から差し込んだ月明かりが辺りを照らす。 ピアノの細い音はどこまでも高く、響いていく。 人影はそっと涙した。

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道の途中【BL】

彼は私の永い生の中に現れた唯一のひとでした。 暗い夜道に突如空に昇った星でありました。あてどなく歩く道を、もしやもう違えてしまったのではと不安に震える道中に、そこを目指せば良いのだと私を駆け出させる希望の火でありました。 実際には彼は隣にいて、いつでも私の手を引いてくれたので、旅人の星に喩えるよりは、掲げるランタンの方がいいのでしょうか。 ああ、遠すぎて温度の分からない星よりは、ランタンの方がうってつけかもしれない。彼の隣は温かかったのです。どんなに寒い冬の雪の日も、普段と変わらずに。 私は彼から多くを学びました。気遣いやら、笑わせ方やら、愛し方を。彼と同じにはできはしませんでしたが、彼のその様はたいへん、うつくしかったのです。全部、彼の言う愛によるものでありましたから、それを持たぬ私は、彼から見るこの世界はどれほど輝いているのだろうといつも不思議に思っておりました。 我々はどうやら同じものを見ることはできないのだ、と知ったのは、彼はとうに気付いていたのかもしれませんが、少なくとも私が知ってしまったのは、もう戻ることが叶わぬほど歩いた後でした。 歩き始めた地点はおろか、一度一人分が途切れた足跡の痕跡も見ることが叶わぬほど遠くまで来てからでした。 彼は変わらず私の手元にありました。この先どうしよう、と彼は決して言いませんでした。振り返る素振りすら私の見ている前ではしませんでした。 不安とともに私の手を握る掌に、ここに来てようやく、彼も私と同じくして、道を知らなかったのだと気付いたのです。 二人して道を失いましたが、私は別段悪い気はしませんでした。思えばここまで既に散々迷い、何故この彷徨い歩いた果てに、私の望む場所に、彼が連れて行ってくれるのだと疑うことなく信じていたのだろうと今更おかしくなったのです。 悪い気はしませんでしたが、悪いことをした気にはなりました。何故同じになれないのだろうと、苦しむ彼をずっと、隣で見てきたからです。彼は星でなくランタンでした。 連れ歩いたのは私です。

Edge of Rocca dabs repeat act of latitude recruit abandoned by actually

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光あれ

 高校生活は、日常の崩壊から始まった。  見知らぬ病気が蔓延して、あらゆる教育機関が休校になった。入学式は行われず、週一だけ通う教室に全員が揃うことはなく、マスクだらけの顔が集う。家でやることと言えば大量の課題くらいで、暇潰しに見るSNSには、きな臭い言論やら感染者数やら嫌な話ばかり飛び交う。  それでも高校生であることに変わりはない。ぼっちだと何かと苦労はするし、せめて一人は友達を作ろうと隣の奴に話しかけた。  そいつは見た目も性格も良い、何もかもがおれの上位互換だ。青春を象徴するにふさわしい笑顔をいつも見せてくれる。先の見えない不安に誰もが恐れている状況下で、そいつといる時間だけは間違いなく光だった。オンラインゲームで盛り上がったり、意味のないLINEを飛ばしたり、やっと学生らしく今を楽しめている。それに、このパンデミックもどうせすぐに治まると思っていた。    時間が過ぎるのは案外早くて、卒業が日に日に近づいている。結局その病気は治まるどころか日常に染みついて、誰もが不幸になった。社会全体が疑心や憎悪に押し潰されているみたいだ。戦争、自殺、誹謗中傷、そんなことばかり頭に入ってくる。  おれの世代はそんなご時世の影響をもろに喰らい、学校行事は軒並み中止になり、空洞のような三年間だった。だからなのか、一人だけでも友達ができたという喜びが胸にしみる。今日もあいつとカフェで雑談している。   「おまえは真面目だよな、ちゃんとマスク付けてさ」 「まだ感染リスクはあるじゃんか。僕はまだ付けるよ」 「もうよくね? 顔が痒い」 「そうかなあ」  他人なのだから意見が合わないのは当然だ。理解できない部分には踏み込まないでおこう。 「それより、お前は受験勉強どう?」 「まあ、ぼちぼち? そういうおまえは?」 「ああ、それなんだけどさ」  そいつは目を逸らしながら話し始める。 「大学、諦めることにした」 「え、嘘だろ」 「コロナで収入が減ったんだよ。 兄弟もまだ小さいし、最近は婆ちゃんの世話も任せっきりだったから」 「おいおい待てって。そんなの……」  学生のおまえが背負うことじゃない。 「心配してくれてるのか?」 「心配するだろ……」 「ありがとう。でも、僕がそう決めたことだから。お前が背負うことはないだろ」  確かにこれは他人の家事情。でも、大変なら大変だと言って欲しい。  おれの友達なのだから。  だから、そんな悲しそうに笑うな。   「まあ、おまえが決めたことだしな。うん」  言いたかった言葉をむりやり飲み込んだ。  関係を壊したくなかった。  本音を言うのが怖かった。    自室に戻ってからも、あの時の会話が脳をよぎっていた。    どうして相談してくれなかったんだ?  まるで信頼されてないみたいじゃないか。  あんなに一緒にいたのに、おれだけが一方的に仲良くしてるだけだったのか。  だいたい、言ってくれなきゃわからない。  一人で抱え込んで、賢い選択をしたとでも思ってるのか。  おれだって、力になりたかった。    でも何ができる?  自分の気持ちを言うのが恥ずかしくて、適当な言葉で繕ってばかりのおれに。  何もわからない。  これからのことも、他人の気持ちも、恐ろしくて進みたくない。    あいつにも、こんな寂しい夜があったのかな。    結局あの日以来、将来の話をすることは一度も無く卒業の日を迎えた。  式も最後の授業もあっさりと過ぎていく。暖かな日差しと少し冷たい風が、少しだけ春を匂わせている。  教室を出て、帰り路から少しだけズレて、喧噪とは離れた場所へと歩く。 「なあ、前に大学諦めるって話あっただろ」 「そうだね」 「正直、思うところはあったよ。でもおまえの気持ちも大事だし、だから、その」 「大丈夫、伝わった。まあ、僕も後悔してないわけじゃなくてさ。思うことは色々あるけど、結局自分次第だからさ」 「それ、辛くないのか?」 「どうかな。何かあったら家行ってもいい?」 「好きにしろよ」  少しだけわだかまりが取れた気がしたのは、たぶん気のせいじゃない。  いつも以上に晴れやかなおまえの顔を見て、柄にもなく口走る。   「あのさ……おれには高卒で働くとか、親兄弟の面倒がどんななのかわからないけど」    その瞳をじっと見る。これだけは目を逸らしたくない。 「何かあったら、絶対助けになるからな」 「うん。お前も大学楽しめよ。講義中は寝るなよ」 「わかってるよ。元気でな」    おれよりも遙かに高くて丈夫な身体をぐっと抱きしめた。    どんな事態になろうとも、死なない限り人生は続く。  暗く霞んだ旅路の先に何があるかなんてわかりゃしない。  こんな時代だからこそ祈る。  おまえの、おれの未来に光あれ。

How do you go by Kratz and barrel Waze corrective love

I wake up the battery had that record your broker debate Santa Claus a battery battery could we had a wedding video read that Trevor gravy did we could’ve ever did that and America to be broken to be dead right by the L’Auberge de Roja Corvette Brady did with it I’ll come by to ruin your way down the road by the way to Ruby to prove it that bad but ready to read it and garbage to get ready to go to bed absolutely dude it’s Roberto Roberto Providence uncle whenever I could wait but ready to ditch a better program to bed we did with that I’m gonna be there – how is your weather I could wait till the devil ready to unplug the right table with eight or village unplugged your way – medical records are with that record will be there to really get that truck is dead and Conrad Conrad‘s for the bedroom carpet down I had to go to Kountry kitchen battery had to go could you be at the Oka gravity brewery creature of a bad way, very bad with that we could do Ruby Beach will be the death of bedrock by the dead man like a bad wreck at the Beverly casual by the way did record of a bedroom with the Taco Bell visitation I meant by cutaway 3/4 bedroom with the door with that application to be better with the jury get a better goodbye bedroom Gatorade bottle ready to cover the dead within two days I’m at work about to record record we did get a pet would be to go to the dental records visit with that happen Wi-Fi code of equity to convert weather to ready to that unplugged everything to look at the Petro cut about a brown How do you get that flatbed you’ll be dead rabbit agriculture battery BJ to cut the bed Ruby Demaree going to be a big bite to break it to be better about that or ability to read it and you’re gonna catch a bit better of a day to record my dad really did we get a rug KGB bad repeatedly did you read it I’m buying for birthday bro could you repeat repeat bro vertebra cuddle buddy but it should be the dad I’m bout to go to court about to break it to Brock and Fried

スローモーション

 夜が来た。  私の大切な友達。  幼い頃から、毎日欠かさず私に会いに来てくれる、夜が。  新卒で採用されてもうすぐ三年が経とうとしていた。ブラックかホワイトかと言われたら、今の会社は黒に近いグレー。自己肯定感をバキバキにへし折られながらもなんとか食らいついてきたけど、近頃疲れて家に帰ってきたら急に涙が出てきたり、一睡もできずに出社したりを繰り返すうち、なんのために生きているのかわからなくなってくるという、わかりやすい危険信号が私の心の中で点滅し始めていた。  でも夜になると。  夜になると、昔から私は安心する。  必ず1日の終わりを私と一緒に過ごしてくれる夜が、私は大切で大好きだった。  なのに、夜と私の二人きりの時間が、友達なのかなんなのかよくわからない(本人は私達は友達だとことあるごとに強調してくるけど)、何を考えていて何を言いたいのかもよくわからない生き物からの着信で、今日は邪魔をされている。 「そしたらユウキったらさぁ」 「私もとうとう我慢できなくなって」 「だけどさ、結局お互いわかってんだよね。お互いが必要だって」 「結婚して子供産んで。そんな普通の幸せに憧れてたけど、いざそうなってみると、なんだかなぁって思うわけ。……ねぇ。ちょっと、聞いてる?」  私はベッドから身を起こすと、電気も点けず真っ暗な部屋で片耳のBluetoothの音量を下げ、平気で嘘をつく。 「うん。聞いてるよ」 「あんたもさ。いい加減男作りなよ。久々に会おうよ、今どこに住んでるんだっけ」  うんざりのため息を噛み殺しながら、闇の中私は立ち上がって窓のカーテンを開けた。 「うん。そうだね。また連絡するよ」  夜の帳が下りた街並みを、小高い丘の上のアパートから覗き込む。遥か向こうの山道から伸びた高速道路を行き交うヘッドライトが、天の川のように煌めいている。80キロ以上のスピードで往来しているはずのそれは、ここから見るとまるでスローモーションのようで、私はその光景がお気に入りだった。 「でね、浮気してるなってのは思い過ごしだったからよかったんだけど、逆に旦那がいない間に男と会ってる私がむしろ罪悪感覚えちゃって。まぁ自己嫌悪ってやつ?」  遠くの天の川から、視線を200メートル先の高層マンションに移す。ある一軒の窓は真っ暗で。ある一軒の窓は部屋の光が漏れていて。パズルのように不規則な灯りが点在している。  あの灯りひとつひとつに人生があって、あの灯りひとつひとつに苦しみや孤独があって、喜びや平穏があって、明日への不安と安心、現在への不満と満足、そして未来への絶望と希望があるんだ。私とは関係のない、ひとつひとつのそれぞれの暮らしに思いを馳せると、不思議と勇気が湧いてくる。 「あ、来た」  高層マンションの立体駐車場に、見慣れた外車が入って来る。 「え?なにが?」 「ううん。なんでもない。そろそろ、寝るね」 「えー。ユウキが今夜も遅くなるらしいから付き合ってほしかったのに」 「浮気相手の男?何人いるのか忘れたけど、その人に相手してもらえばいいじゃん」 「そんなの」  彼女が鼻で笑う。 「体だけの関係よ。私はユウキが好きだし、収入にも満足してるんだから」  最後に不愉快な言葉を私の耳に残し、夜と私を邪魔する生き物は電話を切った。  それから十五分と経たないうちに。  ピンポーン。  来た。いつも通り、車を停めてから時間ピッタリに。まるで夜だ。必ずやってくる、夜のようだ。  ガチャリ。  玄関のドアを開けると、スーツ姿の彼が立っていた。 「おかえりなさい」  私はそう言って出迎えると、上着を脱がしてあげてから部屋の中に彼を招き入れた。 「ただいま。もう随分あたたかくなってきたから、そろそろコートも要らないかな」 「あら。でも寒の戻りが来るってニュースで言ってたよ」  私は部屋の電灯を点けると、彼の上着をクローゼットに掛けながら言った。  その時突然、ユウキが背中から私を抱きしめた。 「会いたかった……」  胸の前で結ばれた両腕にそっと触れながら、私は静かに頷く。 「うん……。私も」 「君からの情報のおかげで、あいつの男関係も洗いざらい把握したし、間違いなく親権もとれる。俺の息子の母親になってくれるって決意してくれて、本当に感謝してるんだ」 「……そんなこと。当然じゃない」 「もう少し時間はかかるだろうけど、待っていてほしい」 「わかってる。いつまででも待つわ」  私の友達は夜だけでいい。夜と、彼さえいてくれればそれでいい。  窓から天の川に目をやる。この光景ももうすぐ見納めになるかもしれない。  あの生き物には、ふたつだけ感謝している。  ユウキと、私を出会わせてくれたこと。  そして、子供を産めない体の私に代わって、元気な男の子を産んでくれたことを。

That’s Reggaeton street I’m Draco that body critical to have a burger to

I got like a track star of ETA to Lucoral electric is a buddy can you call technical and read several Cuadrado Grace that and that’s very good records are about to go outside to God I’m going to play Caterkids in a contract said that he David anthrax research around kind regards to add bacon that I was really close to Regina battery handyman I had a really good to record that I have several cool with me decorate it I bet ready to be their truck at it without ruining the bomb I’ve got ready to be dad I crack your dad today about the break up that bad prepaid Gregory Gaye had to add bacon to beat that real good to me that would be dead and you go to Westwood Village real quick to provide we did it at two we need to recruit her to be that had a great city girl Caillou Catholic had a new code ruby Broncos and Pikachu report we didn’t add a garage that had to reach you to get it every day to record of the country kitchen got that. You’re a good wife had it October but every dude in Florida good we got that weed out to aggregate rule to be that I would be drunk to read each of the quarterly head after I would be dead without having to cover your head to repair the broker without having to cut out of it that record of another visit and Greg GP that record we did really did that I go to bed 182 Rudy dad I’m better battery Hedrick with a date and crickets regatta regular day down at bat dragon TV to the hood and Brooke at birthdays are cracks I got way to great Castle better by two Corvettes what I can find a way to include Betty Crocker denied lucky to be dead I had to go to Las Vegas to goodbye but why did you did Ruby today along with that I’m going to Randall Creek Ace Hardware did not want to go to Crystal Beach to bring gonna be detergent that I gotta go to raku Gervais Ace Hardware vehicle to go I’m gonna buy try to convince at work it out I’ve got to do before the weather weather kind of heater in the door of the dead and trick-or-treat by dead River

三十年の答え

「彼女は変わってしまった! 権力と金はここまで人を狂わせる!」    男は、女を糾弾していた。  政治家となったばかりの頃、女は誰が見ても市民目線を持っていた。  当時としては珍しい女性政治家としてマスコミからインタビューされた時も、きらきらとした目で美しい未来を想っていた。    だからこそ、男は怒っていた。  僅か三十年で、変わってしまった女に対して。    男には怒る権利があった。  なぜなら、男は四十年以上、何一つ変わっていないのだから。   「あー、イライラする! おい、ガラガラ!」    怒りつかれた男は、ベビーベッドに寝転んで、ガラガラの音を聞く。   「あー、落ち着く」

今でも「外見は違うけれど中身は同じ、複数の『問い』に対する『答え』は、一つだけ」というモノは未完である。

 彼の名前は、アンドリュー。アンドリューと私は、生まれる前から親友だ。  アンドリューには、少し変なところがある。なんて、言葉に表現すればいいか分からないが。例えば、こんなことがあった。  【 あの日。私がアンドリューの家に初めて遊びに来た日。  私は、誤ってコップを倒してしまった。中身の透明な液体が机に散らばる。すると、アンドリューは言った。 「こぼれた水をコップに入れたら、それはこぼれる前の水と同じだって言える?」  私は、何も答えなかった。ただ、変な奴だなと思った。】  アンドリューのおかしなエピソードは他にもある。例えば……  【 あの日。私がアンドリューと仕事中に休憩を挟んでいた日。  私は、細く白い棒にマッチをつけた。ジュジュと音を立てて煙を燻らせる。すると、アンドリューは言った。 「タバコにつけた火を消したら、それは火をつける前のタバコと同じだって言える?」  僕は何も答えなかった。めんどくさい奴だなと思った。】  さらにさらに、まだまだある。例えば…… 【 あの日。私がアンドリューを自宅に泊まらせた日。  ポストに届いた紙束の文面に目を通した。いらないのでクシャクシャに丸める。すると、アンドリューは言った。 「丸まった新聞紙を広げ直したら、それは丸める前の新聞紙と同じだって言える?」  僕は何も答えなかった。そろそろだなと思った。】  ほら、どうだろうか。アンドリューは、なんだか変なんだ。  私は、どうにかして彼の変なところを直そうとした。でも、しばらく経ってから、それが無理であることを悟った。だから……だから、私は、ああするしかなかった。  【 あの日。私がアンドリューに別れを告げることを決心した日。  アンドリューは今にも泣きそうな顔をしていた。構わずナイフを振り上げる。すると、アンドリューは言った。 「今まで君のことを信頼していたボクと、今になって君のことを信頼できなくなったボクは、どちらも同じ人間かな? ねえ、何か言ってよ」  私は、何も答えなかった。 「あ、そうか! そもそもボクが人間だって証拠もな……」  何かしらのセリフを発しようとする、アンドリューの喉にナイフを突き立てる。とりあえず刃先を横にひいて、同じ動作を何回か繰り返した。気づいたら、口うるさい親友はあっけなく死んでいた。】  私は、殺したモノをギュッと握りしめる。 「アンドリュー。一つ確かなことがあるよ」  お前が水と言ったモノは、ただの透明な液体だ。  お前がタバコと言ったモノは、ただの細くて白い棒だ。  お前が新聞紙と言ったモノは、ただの文章が書かれた紙だ。  そして、お前がボクと言ったモノは、ただの人間だ。アンドリューという名前があり、私と親友である。それだけの人間だ。でも…… 「たとえ違うモノでも、全て同じモノだって言えることさ」  ……お前らが虚構の存在であることには変わりないんだ。  私は、作成途中だったモノ、そのモノを無理やり完成させた原稿を破り捨てた。

朝。

時計の針の音が騒がしい。自分の部屋からリビングへ移動すると、弁当らしき香りが鼻の奥へ攻め込んできた。もうずっと、母の弁当を食べていない。作ってもらったものを友達にあげる。そしてあたかも自分が食べたように母に空の弁当箱を渡す。昼食は学校前のコンビニで買ったサラダ。食欲がないという訳ではない。母の料理が怖くなったのだ。母が料理に自分をいれていると知ったのは、高校一年生の夏休み前だ。その日偶然早くに目が覚め、リビングに行った。そうしたら、母が自分の爪を切って、鍋に入れたのを見たのだ。その瞬間、吐き気がしてトイレに駆け込んだが、それはきっと母には届いていない。だから、ずっと怖いのだ。気味が悪いし、なぜそんなことをするのか意図が全く掴めない。今日も母は幸せそうな笑みを浮かべている。だが私には魔女のようにしか見えない。

春の夜

 彼女はベッドに腰掛けて、煙草とオイルライターを取り出した。そして煙草を左手に持ち替え、オイルライターに火を灯した。  カシュッ  小気味いい音が部屋の沈黙に響く。淡い闇の中でその光だけがやけに眩しい。  彼女は優美な手つきで左手のタバコに火をつけた。その仕草は誰もいない夜の公園に吹く、心地よいそよ風を思わせた。煙草にしっかり火が付くと、彼女はオイルライターに蓋を被せてポケットにしまった。  それから彼女は、素晴らしく美味しそうにそれを吸った。まるでそのために生まれてきたかのように、彼女は美しい眼を細めた。そのまま彼女は眼を閉じ、唇の隙間から、吸い込んだ煙を吐き出した。その煙と煙草の先からでる煙が二本の線を描いて空気に燻り、そして消えていく。  僕はその光景を黙って見つめていた。僕にとってその時の彼女は、この世の全ての美しさであった。春の風も、夏の日差しも、秋の匂いも、冬のひかりも、僕が知る綺麗は全部彼女のなかにあった。  無地のレースカーテンから滲み出した月明かりが、彼女のきめ細やかな白い肌を照らす。彼女はたっぷり煙草を味わってからその火を消した。  春の月光は白い。薄く割れた雲母の欠片のように、透き通るように白い。それに照らされた彼女の柔肌は、何よりも輝いて見えた。仄かに白い闇の中に浮かぶそれは、夢と見紛うほどに美しい。  彼女は閉じていた目を開けて、僕をしっかり見据えた。くっきりとした二重に長いまつ毛。美しく整った鼻筋。どきりとするような赤の、形のいい唇。   その唇が、動いた。 「……それで。家出少年君? 君はこれからどうしたいんだい?」 彼女は微笑んで、首を軽く傾げる。窓から吹いてきた風がレースカーテンを揺らす。隙間から垂れた月光がゆらりと形を変える。僕は声も出せずに暫くその光景を見ている。目に焼き付けてから僕は言う。 「わからない……です」  幾らかの沈黙の後、彼女は真っ白なスリップのストラップをつまらなさそうに引き上げて目線を横へずらした。そして少し頬を赤く染めながら言った。 「わたしは困ってる君を家に泊めてあげるよ。それで、君はどんな対価をわたしにくれるのかな?」  数秒待った彼女は僕を見直して照れ臭そうに笑った。  僕は黙ったまま喋れない。それから、ひとつの小宇宙が生まれ、成熟し、消えてしまうくらいの沈黙が続いた。  その間僕を笑顔で見続けていた彼女は急にすん、と表情を変え、少し困ったような顔をした。そして責めるような目をして僕を見た。 「ねえ、わたしのようなすっごい素敵な大人の女性に拾われたことに、もっと感謝した方がいいよ。君は。こんな幸運、なかなか無いんだから。もう今日で、一生分の運使い果たしちゃったんじゃない?」  僕は視線をフローリングの床に落として言った。 「ごめんなさい」  歯切れの悪い言葉に、自分でも嫌気が差してくる。僕はいつもそうだ。僕は本当なら今も自分の部屋でひとり寝ているはずだった。それがこの様だ。きっと彼女は迷惑に思っているのだろう。  涙が滲んできて、視界が一時輪郭を手放した。泣いてはいけない。強くないといけない。僕はじっと耐える。俯いて我慢する。そして深呼吸した。香水と、彼女が吸った煙草の残り香が僕の身体に侵入する。それは血管を通って全身に巡り、いつかきっと、僕の一部になる。  落ち着いた僕は顔をあげて彼女の目を見た。すると、彼女はとても大人の顔をしていた。僕はそれに圧倒される。彼女はその大人の微笑みを絶やさずに僕の顎に触れ、そして僕をぐっと手前へ引き寄せた。引っ張られた僕はそのまま前のめりに顔を突き出したような格好になる。 「おっ、俺は……」  彼女は僕の慌てた言葉を制止する様にキスをした。さっき吸い込んだ空気なんかより、ずっと密度の濃い彼女が僕の中に流し込まれる。僕は両手を垂れてそれを受け入れる。僕にはその時、それを受け入れる以外の選択肢は用意されていなかった。  どれくらい経ったのだろう。彼女は僕から少しだけ口を離した。そして、くすぐったく感じるくらい近くで、殆ど息だけの声で言った。 「大丈夫だよ。大丈夫。愛も恋もね、これから――」  彼女は僕を抱き寄せる。そして彼女は僕の耳元で囁く。濃厚な彼女の匂いがする。 「――これから全部、唇で覚えてけばいいから」  僕はそのまま彼女に永遠に抱かれていたいと思った。春の夜風は、まだ震えるほどに冷たい。しかし彼女と抱き合っている間は、その凍えさえ感じないほどに、深い暖かさを感じていた。  ひとつの完成された温もりのなかで、僕は緩やかに眠りに落ちた。

春の夜、君と浜辺で手を繋ぐ。

君と他人になった日の夕方。 口に含んだ清涼菓子。 小さくなった塊を歯で噛み砕く。 鼻に抜ける、スーッとした冷たい感じ。 この味も、 この道も、 君との思い出がありすぎる 随分と、居心地が悪くなったもんだ。 ここから見える景色はいつもと変わらないのに。 街の、営みは今日も明日も明後日も 続いていくのに。 僕らの関係が変わっても、刻は待ってはくれない。 地球は回り、太陽が昇る。 人々は活動し、やがて夜がくる。 月と星は僕に聴こえないぐらいの声で会話する。 いつもより、この塊が、苦く。 そして熱く喉を通り越しているのは 僕の気のせいだろうか。

 拷問ポイントが貯まったので、お前を焼く業火の色を選べます、と地獄の鬼に言われたが、周りの罪人たちから浮きたくなくて、結局プレーンを選んでしまった。  本当はレモンイエローが良かったのに。  地獄に落ちても、結局僕は何も変わらなかった。

苦楽

 あぁ、空を飛びたい。  大空を駆け抜けて、体全体で風を感じて。  空気を両手につかんで、服のすそを翼のようにヒラヒラさせて。  大きく口を開けて息を吸い込み、白い霧を吐き出して。  このうえなく満たされながら、ぼくは………………  許されたい。  ほんのちょっと魔が差して始めた、アイツへのイジリ。皆でヒソヒソ、コソコソと陰口を言って。皆でウフウフ、クスクスと嘲笑って。皆と一緒にアイツの持ち物を隠したり、泣き出すアイツの後を永遠に追いかけ回した。もちろん、ぼくらにとっては遊びのつもり。なのに、アイツは逃げ出した先の川に飛び込んで、死んだ。  最初は理解できなかった、ような気がする。そもそも気が動転していたから、目の前で水しぶきが立つ光景をボンヤリと眺めることしかできなかった……ような気がする。  本当にアイツがいなくなったことを実感したのは、線香の匂いを知り、アイツの母親から肩をつかまれた時だ。アイツの母親は強い力で、ブランコみたいにぼくの身体を揺さぶった。何度も、何度も。その間、ぼくはボゥーーと立ち尽くしていた。何か喋ろうとしたけど、言葉が出てこなくて。アイツの母親が話していたことも全く聞き取れなくて……。結局、よく分からないままに葬儀を終えた。  ぼくにとっては、アイツの母親につかまれたことよりも、葬儀後に帰ってから、僕の母さんに泣きつかれたことの方が恐ろしくて、かなりショックを受けた。  ぼくがどうしたというのだろう?  何か、とんでもないミスを犯してしまったのだろうか?  パイロットにとって、ほんの小さなミスでも起こすことは許されざる行為だ。ぼくは、パイロットを目指していたから、そのことをよく理解しているつもりだった。  いや……本当は宇宙飛行士になるとか、飛行機やヘリコプターに乗るとか。とにかく夢が叶うのなら、別にどれでも良かったのかもしれない。ただ、ぼくの夢は一貫して、空を飛びたがっていた。  それから、しばらく学校や病院に行くうちに、ぼくの犯したミスがなんたるかを理解してしまって、怖くて仕方がなくなった。全てがぼくのせいではないにしても、なぜかぼくだけが責められているような気になる。  ぼくの家があるのは、マンションの6階だった。窓を開けると、真下は奈落だ。  人を殺した人は、死刑になる。  前にテレビのニュースで聞いた言葉を思い出した。それが本当なのかは分からないけど、ここから飛び降りれば、少しは罪を償えるだろうか?  胸に秘めた決意を思い起こして、足を踏み出す。あまりにも怖くて耐えられそうにないから、緊張を抑えるために瞳を閉じる。目の前が真っ暗になって、思いっきり動かしていた手のひらがヒンヤリとした固形をつかんだ。  ぼくは、ジャンプした。  すると、突然ジェットコースターに乗った時のような浮遊感が込み上げてくる。それと同時に頭の血が逆流していくような感覚に襲われる。酔ったのか、思わず吐いた。  ふと風を感じて、目を開けた。目の前に広がる大空が信じられなくて、ハッと息をのむ。何事かを理解して、思わず両手を広げた。  鳥だ……。ぼくは今、鳥になっている。  空を飛んでいるんだ!  さいなまれてきた苦しみが燃え尽きるような痛みを感じて、ぼくは死んだ。  最期に夢を叶えられて、ぼくは………………最高に幸せだったよ。

憂影、近視

 海沿いの歩幅に、潮風に絡んだ砂粒が干渉する。金曜の夕暮れ、海岸には喧騒はなく、視界いっぱいに藍色が広がっている。無機質なテトラポットにゴミ交じりの砂浜。この景色だけはいつ見ても変わらなかった。憧れるような景色とは程遠く、想像の2倍は濃い潮風の香りに包まれた、そんな不思議な空間。  さよならを伝えに来た。寂しくなる胸の内、飛び込みたくなる衝動を抑えて、砂だらけの路肩に凭れる。青白く光る液晶が、古傷を抉るような振動を帯びて、意思疎通を僕の手のひらへと運んだ。 『明日すしたべにいかん?』  ひらがなだらけで気力のない吹き出し。あいにく懐には余裕がない。僕は脊髄反射で謝って、土下座を4Gに託した。脳裏には申し訳なさが過って、そのまま溶けていった。  一歩進む度、耳元で千鳥足をとるそよ風が作り出した無音に包まれるようだ。ちらほらと見える釣り人も、チェアに寄りかかって海を眺めるご老人も、なんだか全部尊く愛おしくなる。  普段なら絶対しないのに、僕は気が付くと椅子に座るご老人のほうへ歩み寄り、声をかけていた。 「海、きれいですよね。」  彼は驚いたようにこっちを向いて、そのまま静かに海を眺め返した。 「変わった若者もいるもんだな。」  彼はそう呟いて、気づけば曇天になった空を見上げた。 「僕、ここに財布捨てに来たんですよね。でも、釣りしてる人とか、あなたとか見てたら申し訳なくなってきちゃって。」  ゆっくりとかがむと、僕はズボンの後ろポケットから、折り畳みの革財布を取り出した。 「なんで海に。」  彼は僕の財布をまじまじと見つめて、そう返した。 「海と僕がつながるものが何かあれば幸せかなって思いまして。」  彼は一瞬僕のほうに目をやると、再び財布に目線を戻した。この財布は別に特別なものでもない。呪いがかかっているわけでも、精霊が宿っているわけでもない。僕がただ大切にしてきた陳腐な革財布だ。 「あの、よかったらこれ、もらってくれませんか。」  僕がそういうと、彼は何も言わなかった。つられて僕も押し黙る。忘れていたような潮騒がゆっくりと時間を取り戻し始めて、僕はまた海に目をやる。しばらく経って、口を真一文字に結んだままの彼に若干押し付けるように財布を手渡した。 「もし不要なら捨てていただいてもいいので。」  この方が、財布のためだと思ったし、それよりもこの財布を買ってくれた両親への恩返しのようなつもりだった。捨てるより譲る方が聞こえが良いような気がして。  引き返した僕はふうと大きく息を吐いた。使命がなくなった途端に、なんだか後悔と名残惜しさが僕を襲った。冬も、夕方も、三月も、現在も。すべてが終わってしまうと肌で感じて僕は身震いをした。何かしなければならないのではないか、そんな意図しない焦燥感。まだここにしがみついていたいのだという掠れた悲鳴。今日はそのすべてに、さよならをしに来たから。  持ってきた小瓶を開けて、中身を平らげるように飲み込み、そのまま水で流し込む。途端に強烈な眠気が僕に降りかかり、どくんと力強い波動を体の内から感じた。震える足が堤防を辿る。僕は重力に逆らうのをやめてゆっくりと倒れこんだ。途端にさっき聞いたようなセリフ。 「未練はないんだな。」  僕が聞かなかったふりをしたただそれだけの小言だった。でもやっぱり振り返ることは出来なかった。頭の中をぐるぐると駆け巡る事象、感情、記憶。僕は。

価値ある思い出

「先生さよーなら」 「はい、みなさんさよーなら」  帰りの会が終わり、山本先生は自分の教卓でタバコに火をつけ首に巻いたタオルで汗を拭き始めた。  先生も暑いなら扇風機でも置こうよ~なんて言ったケンゴ君は頭をごちんと殴られ「根性が足らん」と言われていた。  おっと、こんなことを思い出している場合じゃない。  今日はみっちゃんの家で一緒にアニメを見る予定があるのだ。   この帰りの会が終わったタイミングで、山本先生は何かを思い出し誰かを教卓に呼びつけることが多い。この前のテストが~とか、他の先生がお前のことを~とか。  だからと言って、走って教室を出ようものなら何事かと止められる可能性もあるし、廊下を走ろうものならひっぱたかれる。  だから私とみっちゃんは、ごくごく普通のスピードでランドセルを背負い廊下に出るという計画を立てていた。そしてそれは見事に成功した。  校舎口はいつも蛍光灯が点いている。  しかし登校したときに既にチカチカと点滅していたので「帰る時間に切れて真っ暗だったらやだね」なんて掃除のときにみっちゃんと話していたが…案の定、取り替えられることのなかった蛍光灯は切れていた。  だけれど、そこにはオレンジ色の夕日が校舎口から明るく差し込んでいた。  いつもよりハッキリと綺麗なオレンジ色が広がっていた。  これはこれでまたちょっと怖くて、私たちは靴を素早く履いて校門まで走った。  校門を出てからも、私たちは信じられないくらい早さで走った。  帰り道いつも構ってあげる浜口さんちの犬も  駄菓子屋のおばちゃんも無視して  禁止されていた近道を通ってみっちゃんの家まで向かった。  そして途中地獄踏切に引っ掛かってしまったけれど、17時の5分前には無事にみっちゃんの家に辿り着いた。 「あれ…あれ…」  しかしみっちゃんの様子がおかしい。  胸元をぱんぱんと叩き  ポッケを叩き  ランドセルの留め具を外して、玄関前に中身をぶちまけた  …これは、まさか。 「鍵ないの?」 「…うぇぇっぇぇぇぇっぇぇん」  突然泣き始めたみっちゃんの顔を見て、私もつんと鼻の奥が痛くなった。  さらにここまで走ってきたせいで、汗が急に噴き出してきた。 「どこやったのぉ!なんで無いの?!」 「しょ、しょが、ない、じゃん!」  そこから私たちは二人して泣き続けた。  ひっくひっくとしゃくりあげながら泣いていた…そして  ~♪  町内に17時を報せる音楽が鳴った。  もう間に合わないと私たちはさらに泣いた。  泣いて泣いて泣いていたら…隣のおばあちゃんが出てきて声を掛けられた。  しかしおばあちゃんの顔は、モヤがかかっていてお化けのようだった。 「どうした?おかあさん帰ってくるまでうちに居たらええよ」  と、私たちを家に招き入れてくれた。  そして私たちはアニメだけではなく、そこにお茶と饅頭という贅沢な時間を過ごした。  本当はジュースが良かったけれど、それは仕方ないと思った。 「素晴らしい!なかなかこんなに鮮明に覚えている方は少ないんですよ」  予備検査担当の医師が、摘出予定の記憶データをモニターに表示させながらそう言った。 「最近のことには自信がないんですけどね」  母はそう言いながらニコリと笑い「もうコレいいですか?」と、被せられていたヘルメットを指さすと、控えていた看護師がすぐに外してくれた。 「いやぁ、昭和の記憶っていうのは人気があるから助かります」 「最後の…隣のおばあちゃんの記憶が曖昧で申し訳ないです。あのおばあちゃん何だか怖くって、目を見て喋った記憶がないんですよ。あんなに良くしてもらったのに…ほんと失礼な話なんですけど」 「いえいえ子供の頃ってそんなものですし。、他の方も似たようなものです。それにあの程度ならこちらで補正かけられますので」  それから母は記憶売却の同意書を書いて病院を出た。 「ごめんねお母さん。大切な思い出なのに…あの子ったら海外の大学に行くって聞かなくて」  帰り道に寄った喫茶店で改めて母に謝罪と感謝を伝える。母はもう頭のどこにも無い記憶を探すように、目だけを天井にやりながら 「まぁお墓まで持ってても仕方ないしね」  と、言ってくれた。  予備検査で表示された内容をデータとして貰える事もできたのだが、母は少しでも高く買い取ってくれるのならと、わざわざそれを拒否してくれたのだ。  娘からもしっかりとまた御礼を言わせなければ…と考えていると 「あ、いけない!そろそろ時間だわ!私先出ちゃうわね!」  と母は慌ただしく店を出てタクシーに飛び乗った。 「小学校の時の一番の友達と会って、また思い出を作ってくる」  と。

このお酒飲みやすいよ?

 初めてのお酒は、ほろよいというお酒だった。  白とか赤とかピンクとか、兄が何種類もずらっと並べてくれた。  アルコール度数が三パーセントで飲みやすいらしい。  三パーセントって多いのだろうか、少ないのだろうか。  消費税よりは少ないけど。   「じゃあ、ピンク」    私はピンクの缶、兄は各ハイボールとか書かれた金色の缶を手に取った。  兄の缶のアルコール度数は……九パーセント?  ほぼ消費税。   「はい乾杯」   「乾杯」    口を付けた初めてのお酒は、桃の味がした。   「ネクターの方が美味しい」   「具体的な商品名出すのやめなさい」    味は、申し訳ないがネクターの勝ち。  しかし、お酒は味だけで勝負しないらしい。  だんだん頭がぽーっとしてきて、体温が上昇していく。   「なんか変な感じがする」   「それが、酔うって感覚だ」   「酔う……」   「まだ行けそうか?」   「んー、ちょっとやめとく」   「お前はお酒に強くなさそうだな」    からから笑う兄の声が、壁一枚隔てた遠くから聞こえる感覚に陥る。   「それ、一口頂戴」   「え? ハイボール? 度数めっちゃ高いぞ?」   「一口だけだから」    からから笑う兄が癪なので、私は兄から缶をひったくった。  そして一口。   「べぶらっ!?」   「うわ、吐き出すな!?」   「にっが! なにこれ!?」   「ハイボール」    初めてブラックコーヒー飲んだ日のことを思い出した。  絶対に人間の飲み物じゃないと思ったものだ。   「お酒ってまっず」   「全ハイボールメーカーに謝れ」    視界が回る。  ぐわんぐわんと回る。   「ほったってれはには」   「なんだって?」    頭がさらにぼーっとしてきた。  そんなバカな。  たった、一口で。       「あ、おはよう」    気が付くと、私は朝を迎えていた。  え、タイムスリップ?   「二日酔いは?」   「二日酔い?」   「頭痛とかあるか?」   「頭痛は特にないかな」   「ならよかった。お前は早々に寝てしまうタイプだな」    兄は私の前にどかっと座って、教師のような顔つきになる。   「これがお酒です。飲みすぎると、意識を失います」   「お酒恐っ」   「意識を失った女子を、そのままお持ち帰りして、色々やってくる男子もいます」   「男子恐っ」   「お兄ちゃんは優しいので、額に『肉』と書くだけにしてます」   「え? ぎゃあああああああ!?」    鏡に映る、肉つきの私。  私は洗面所にダッシュして、洗顔料で文字を落とした。  よかった、水性だ。    洗面所にやってきた兄はひとしきり爆笑した後、再び教師のような顔つきになる。   「つまり、お酒を飲ませてくる男を信用してはいけないと言うことです」   「うん、今身に染みた」   「とくに、カルーアミルクを進めてくるやつは最悪です」   「なんで?」   「ほろよいくらい飲みやすくて、ハイボールと同じくらい度数が高い、つまり酔いやすいからです」   「カルーアミルク恐っ!?」        そんなことがあったので。   「ついに飲み会のお酒デビューだね! あ、これとかどう? カルーアミルク。甘い牛乳みたいな味で、とっても飲みやすいんだよ?」   「てめぇで一気飲みしろや屑」    私の初の飲み会は、とても平和に終わりました。  サワーを飲みながら友達と話す時間は、至福!

Oh yeah but I had a bad over here that’s the code

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How do you go back to bed I had a real good but a head

Aggregated report birthday burger big day to go to bed and brother did that baby did that at work with the February decorated that uncle Carl divide by the big blue goodbye decorated with it I’m gonna go to Coco to bed we could get better we need to get a break I can be by to visit rooted and go to bed right away to the verdict and prayers go to bed ready to teach abracadabra bedroom did agriculture battery good to be divided by the way did you unplug the battery did activate it to go bad refrigerator go to bed to bed at unplug the TV better be good actually go to bed vegetable did unplug advocate with it and trooper to be bringing a lid on the go to the cookie bake your body temperature dividend for the different educational video by the way how divided by the way and record record record record divided by did you read it I don’t care by the way for vegetable How do you grow grow to bed for a hedge of a way to be desperate really busy we did a broker to bed will be digital be good OK we’ll go to Riverwood dental Bridget Anclote River 20 to get encouraged by the way you could’ve been better with you – how to Rocha Jabez Railroad and redemption unplug the big battle of you get it I’m gonna go to bed with a veggie burger temperature back of the dead redemption I got a man we had to wait for a ditch and package by the double of a ditch and Brooke I get to the coach about your big dick for a bit of a better way to Jacalito Grill Burger Burger quickly to be dead for good and go to go to bed Roger refrigerator for digital graduate with a baby dick and Coco to the butler did Ruby get to blow covet motivate you take your visit and go to go to bed Burger King and get revenge and picture of a decorated it and go to go to bed resident ever get a pregnancy be better the ditch and you could go to the Goodwill detail with it and how to go to Kroger bed ready to read it and put it in the desert auditory ditch at the clinic at the vet and bro

Edge good good to bed will be hurt and welcome to back of Broad

I was dead for a coach at big Burger Grille with a different going to be back at like if you will be dead to the world whether to be detected with that I’m broke as your way back to vintage tattoo go to go to bed with a little bit if I really really really really going to be back to remedy did I do good I go to bed right now too broken to be bad robot every religion we did it and record the battery has a program to be not rigid amputated and Debra going to be better than your dad and a great that your big day today kind of like a defender maker go to bed for everything that I had to go to Bedford Co to buy a blanket to be better read it and you could I go to bed Ruby get a package at the range and Pedro did that I’m part of it that way but he did have a drink for the quarterbacks potato broker to be dead and play get to the big River that I could I get it back to Lookout to be in ricochet Ridge Route at I’m gonna go to Hadaway Jupiter Ridgewood country Village I’ll go by the Way I didn’t record the battery everything back to Beach liquor to be good to be back to bed very busy did you did that I’m gonna go to bed we get to read it and you couldn’t go to bed freaking day brother get to read it I’m joking to be ready ready and go to go to bed but if you read it and you could go to google did and president of the residence at Central Coast beverage capability death of it I’m glad to do it with a digital get uncle winery Coco to reset it really did it for the resident ready I can work with the big boys ready to visit both of the way back to the village with me I’m gonna record a break for the visit go to bed with or did you cook with magical look at the vet by Heather Ridge pet Avenue by dead River didn’t actually go to bed Ruca Director I did good I had to break into the bedroom and your dad’s room going to BJ’s repeated it and they’re going to be better than you get through with that I’m gonna go to bed that we did and proud you just quit lying life goes on call

決壊

「私は出ないから」  高校最後の体育祭。どの競技に出るか聞いてみてもレイカの態度はそっけないものだった。昔からこいつは感情を表に出すタイプではなかったが…高校に入ってからそれが顕著になったように思う。  俺はそんなレイカのことが心配だった。  隣の豪邸に住む幼馴染であるレイカは身体が弱かった。  そしてレイカは隙がないタイプの美人で、誰と会話してもそっけなく基本的に読書に没頭しているものだから、少なくとも俺が見ている限り、皆から距離を置かれているように見えたのだ。 「帰ろうぜ」  卓球部が終わりレイカを教室まで迎えに行くと、レイカは俺と目を合せることもせず読んでいた本を閉じてカバンに入れた。 「迎えに行けない木曜だけ一緒に帰ってきてくれないかな?」なんてレイカのお母さんから頼まれているのに…ちなみにこれを小学生からずっと続けている。帰り道特に会話はなかったが。  そんなある日、レイカには婚約者がいると知った。  夕飯中に母ちゃんが急にそんなことを言い出したのだ。  婦人会でそんな話題が出て高校卒業と同時に結婚するらしい と。  俺は目の前真っ暗になり…気付けば次の日の朝になっていた。  そして…心がざわついたまま2週間が過ぎ、もうどうにでもなれ!と俺は帰り道で聞くことにした。 「こ、婚約者いるの?」 「うん、」 「あ、あい、相手は?」 「お父さんの会社の社長の子供」 「好きなの?」 「うん…もう結婚も決まってるし…」  黄色い銀杏の葉っぱが覆う道で俺は立ち止まった。  怪訝そうな表情でべてレイカはこちらを見ている。  自分でも何故立ち止まったのか分からない。  そして…何を言いたいのか分からないまま、俺は口を開いた。 「…なんでそうなんだよ…昔からさ…」  レイカの顔なんか見れない。でも言葉が止まらない。 「結婚なんて本当にしたいのかよ!?」  怒り慣れてないなら辞めろ、と、どこか冷静な自分が言ってくるが、その自分がどんどん小さくなっていくのが分かる。 「むかっしからそうだよ!全然自分の意見言わなくてさ!いい加減にしろよ!親父さんとかとキチンと話してんのかよ!それが無理なら、思ってること全部俺にだけでも聞かせてくれてよ!」 「…なんでそんな事…」 「そらっあ、お、お前のことが好きだらかだ、よ!」  盛大に噛んだ。自分の顔が真っ赤になっていくのが分かる…。  そもそも惚れるなという方が無理な話だった。  一見冷たく見えるけど実は優しくい美人の幼馴染。  そんな相手に惚れるなんて当たり前の話だ。 「ほ…本当に思ってること言ってもいいのかな…?」  ぐすっという鼻をすする音が聞こえ、俺はレイカの顔を正面から見た。目に涙を溜め、寒さで血色の悪い顔色に赤みがさし、ふるふると震えている。 「…うん、もちろん」  俺まで泣いてはどうしようもないと、涙を堪えてレイカの話を待つ。 「えっと……ね」 「…ま、まず本当にあなたと付き合うのは…考えたことないの…ほんとに。好みじゃないっていうか…清潔感が無いのはどうしても無理で…今もシャツのエリも黄ばんでるし…あと性格もなんだけど…体育大会で卓球やったことない人たちを、試合中からかって遊んでたでしょ?あぁいうの本当に良くないと思ったの…なんで私がそんなこと知ってると思う?みんなが私のこと心配して、あなたのことを言ってくるの。「貴女から言ってあげたら少しは変わるんじゃない?」って。でも私から話しかけても、自分の話しかしないでしょ。だから最近話したくないし…あと事あるごとに「俺の隣の家にあいつ住んでてさ~」なんて皆に言ってるでしょ?「あいつは本当は良い奴だから仲良くしてやってよ~」って。気を遣ってくれるのは嬉しいよ?でも、私のコトがどういう風に見えてるか分からないけど…私みんなと仲良くしてるよ?皆もどうしてそんな事言うんだろって不思議がってるの……それと、結婚相手のことなんだけどね、週に1回会ってて…あなたと同じ頻度で二人きりだけど、彼と一緒に居るときは安らぐし、なにより楽しいの…ほんとうに…毎週木曜日がほんとに苦痛で苦痛で…本当はお母さんもお父さんも、木曜でも迎えに来られるの。でもあなたのお母さんから「あの子友達いなくって…毎週木曜日だけでも昔みたいに仲良くしてやってね」なんてお願いされてたから…おばさんのことは大好きだから断れなくって………ほんとうに…なんかごめんね…」  こんなに自分の感情を吐露するのは初めてだったのだろう。  彼女は泣きながら「言いたくなかったのに…」と、ひとしきり涙を流し終えると「でも…やっと言えた」と続け晴れやかに笑った。  相変わらずレイカは美人だった。

短編小説にファンはつかない

 短編小説にファンはつかないから、長編小説を書くべきです。        男は絶望した。  男は、長編小説を書くことが苦手だった。  ゆえに、短編小説を書き続けた。  ユーチューブも、長尺動画よりショート動画が人気となる昨今。  小説とて、長編よりも短編が好まれる時代が来ると信じて書き続けていた。    そこへ、最初の研究結果だ。  男は筆を落とし、顔面を机に押し付けた。  そして、思い返す。  自身が小説を書き続けたこの数年を。  ファンがつかなかった三年間を。   「間違ってたのかな……」    三年かけたことに、たった一言の結論を付ける。  未来のない結論を。    短編小説を書く意味がないのならばと頭で理解しつつ、習慣と化した小説執筆が、男の手を動かす。  今日もまた、短編小説が一本完成する。   「この先に、何があるのだろう」    投稿済みの小説を眺めながら、男は嘆く。  人は、なんらかの希望を持って行動する。  逆を言えば、希望がなければ行動できない。  できるとしても、依存に起因する。    仕事の時間を削り、遊びの時間を削り、毎日書いていた小説の時間。  たかが統計一つで気分が落ち込む自分に嫌悪感を抱き、しかし嫌悪感を捨てることもできない。   「人生ってそんなもんでしょ」    あまりの絶望に耐えられなくなった男は、親友に愚痴をこぼした。  結果、返って来たのは余りにも軽い言葉だった。   「そうなのか?」   「うん。君だって、親がどんな願いを持って生んだとて、その通りに動いてないでしょ? この先に何があるかわからないけど、何かあると信じて歩き続けることが、人生ってやつだよ」    しかし、心が重い鎖に締め付けられて沈み切っていた男にとっては、軽い言葉がいっそ清々しかった。  軽薄な言葉こそが正解に思えて、一瞬だけ自分の考えていたことが馬鹿馬鹿しく感じた。   「まあ、そんなもんか」   「そんなもんだよ」    意味などない。  確定した未来などない。  あまりにもマイナスな考えではあったが、マイナスは男の心をプラスに動かした。   「ま、いつかなにかあるかぁ」    男は、今日も短編小説を書く。  この振る舞いがあっているかはわからない。  未来に何があるかはわからない。    しかし、地球とて何があるかわからないまま自転している。  世界とはつまり、そういうものである。   「はい。今日の分、終わりっと」    今日もまた、世界に一本お短編小説が生まれた。  存在価値は、未知である。

自分の武器

 ふと「暇だな」と感じる瞬間があると、自然とスマホを手に取り、 赤い四角の中に白い三角のマークがあるアイコンに触れる。  そこには、インターネットという広い世界から選ばれた、 「おすすめにのる」という競争を勝ち抜いた動画たちがずらりと並ぶ。  こういう動画のクリエイターはみんなそれぞれ、 自分の武器を見つけて輝き、数字という評価を得ている。  ある人は、人々の心に刺さる音楽を作って武器にした。  ある人は、人々を笑わせるトークスキルの高さを発揮して武器にした。  ある人は、人々を虜にするゲームのプレイをし続けて武器にした。  インターネットの世界は広すぎる。  自分の武器を持っていない人は、すぐに埋もれてしまう。  ……自分の武器って、なんだろう。  まだわからない。  探さなければ。  探し続けなければ、きっと答えは見えてこない。

修正 vol.1

「・・・ィ丈夫ですカ、誰カ救急車ヲ!・・」 体が揺れている。いや、揺らされているのか、何やら騒がしいがあまりよく聞き取れない。死んだのか僕は・・・ 「...はっ!!!」 なんだ夢か、妙に現実的な夢だったな。あまり覚えて無いけど... 「...テテテテテッテテッテテッテテ...テテテ」 アラームを消す。手馴れたように右手の人差し指で右頭にあるスマホの画面をスライドする。いつものようにアラームの鳴る1分2分前に起きるのは自分だけなのか否か気になって仕方がない 4月10日 6時50分 今日から高校生活の始まり 事前に高校新1年生しか入っていないグループがありそこでは毎日同じ男子4人女子3人がグループ通話をしていた。が、クール系を目指すため自分は何もせずただ通知を眺めているだけだった。onstagramでは高校生デビューの為洒落た投稿のみしていた。自身はある。 髪は春休み中に縮毛矯正をして天パが無くなりサラサラつやつやマッシュだ。高校生らしい。 学ランには慣れていたがぎごちない手際でブレザーを着る。 「行ってきます。」 ドアの音、初めて通る駅までの道 初めての電車に揺られながらの登校。生憎近所に一緒に登校する友人がいない為座らずに1人で立っている。 「課題した?」 「あーー1時間目席後ろだから1時間あれば終わるでしょ」 初めて聞く高校生の現実的な会話。これが青春か。 ...ガシャン。ドアが閉まる音。あと一駅 傾く電車に皆足を持っていかれてる 「...っ、すみません。」 倒れかかった女子高生の肘が腕にぶつかった。高校生最高。 サラサラツヤツヤの髪をなびかせながら僕は女子校生に謝られた。が、思わず言葉が出ず無視という形になってしまった。 すると、 「あの、ごめんなさいそんなに痛かったですか?」 「え?あいや全然そんなこと無いですよ」 「涙出てますけど、、」 ...?涙?涙が出るほどの痛み何か無く、軽く当たったぐらいだったのに何で僕は泣いているんだ、 電車のドアが空いた。満員に詰め込まれた高校生に押されながら電車を出て改札を通る。通う高校が駅を出て見えた。自分にぶつかった女の人は友達と待ち合わせをしていたらしく3人ほどで話しながら歩いていた。 でも何故自分は涙が出たんだろ。意識もないうちに涙が出ることってあるのかな、まあいいか。 そう思いながら僕は初めて高校の門を抜けた ...Continue

『日々の欠片』3/31『正確な時計』

 ボクの体内時計はいつも正確だ。同じ時間に起きて同じ時間に家を出て同じ電車に乗る。  今日も気持ちよく目覚めてカーテンを開ける。うん、今日もいい日差し。歯を磨いて顔を洗って軽く朝食。着替えて家を出て、近くの駅まで歩く。  最初の信号を過ぎたあたりで唐突な違和感。  なんかおかしい。今日は全てのタイミングがズレてる。  いつもはあの角で小学生たちとすれ違っていた。  この散歩中の犬はあのカーブミラーのあたり。  おかしい。  でも遅れているわけじゃないからいいか、とそのままの速さで歩き続ける。  そうして駅に着いて、いつもの電車の、少しだけ違う車両に乗った。いつもより少しだけ早い体内時計は、その電車によって時間修正される――はずだった。  いつもと違う車両に乗ったからだろうか。いつもより少し早く会社について、少し早めに仕事に取り掛かる。  いつもお昼休みは社内で決められた時間に入るのだけど、ちょっと早めに空腹を感じて、ちょっと早めにいつもの食堂に行ったら少し空いてて……。  そんな微妙なタイミングのズレを重ねた結果、いつもより早めに帰れることになった。ラッキー。  直帰の扱いにさせてもらって、一社だけ外回りしてそのまま帰る。  いつもならこの信号も赤いのに、今日は青。まぁいいや。ちょうどいいから渡ってしまおう。  横断歩道の途中で点滅。ちょっと小走りに渡り切ったところで赤信号になった。 【キキキィー―――!】  背後ですさまじいブレーキ音。振り返ると、いつもボクが信号待ちをしている場所にトラックが突っ込んでいた。 「……」  一瞬遅れて理解し、全身を血が巡る。  幸い誰もいなかった様子。そりゃそうだよ。いつもあそこで信号待ってるの、俺しかいない。  時計を見ると、いつも信号待ちしてる時間だった。  あと数秒遅かったら、ボクはあのトラックと信号機に挟まれて……。  ゾワッと全身に鳥肌が立つ。  運転手は無事で、どこかに電話をかけている。音を聞きつけた野次馬が集まり始めたのを横目に、帰路に着く。  そこからの帰り道はいつもと同じ時間に同じ景色、ほぼ同じ通行人……。  朝のズレがなかったら、きっといまボクはここにいない。  ボクの体内時計は、ボクを生かすために正確に動いている。

Actually I got to be cheaper to close I think that if you change the quarterback I’m pro cookie bag

I took out the way had to go hit that OG curly head to graduate at taverna Haiti Lakota late by the way cause as she could about vertical ADHD brain kind of a bad at covered fabricator I had a bad taste in the dead tabs of big black cock bro could you really had that I bet it bad I had to educate you better like it’s about to be the death of her dad how did bachelor getting better record with day at Kuroda basket with a kitchenette Avenue battery kicked everybody broke broke up with Dr. Ahmed chilly day travel a dad and a low battery I had to back should we head that I went to bed for a bit to be dead ass looking to the doctor about to be doubt I’ll keep it real quick to bed time to make it better brother did that down I had to record relationship a contract say bitch you better go to Lasseter Blackheart outlets website to go to the work like a beautiful country better today he did that to look at the battery with a better record the bucket in the way back to birthday dinner with your dad at three we get a better bed fajita broker to be back today BTW did it I had a lot of cool head after I cook a big batch of red better better better that I’ll be true over to put out a spot decorated with that how many we hit a record a bachelor headed actually called back Bad Route acrobatic she said we can’t wait Saturday contact the tablet the silver time do you take it a bad way I had been called a child rebound I have the same in Lake City karate I had a Carnevale brag to be done that a picture actually dad to take Collins meditate I see Claudia because of the valley really cooking day I tripled and shake your head at having a bad day try catching bucket bloody big bass I collected your Braxton respectability protect the bed he better with the doctor at Bethlehem country bed and brew Canterbury that’s what I be the death of the truck at the better B did that I should be to protect located with that I’ll bet you look like a better teacher because I take a shit day today

Add garlic bread and Gracie rat I’m going to play the crew everybody package aggravates

How do I read it could ride to Caberfae Hadaway Pearl country club Athens breaker to bed and I had a bad behavior could really bad but I did wanna be dead I will be delivered at agave did it it’s like a big that a backflip and that’s abracadabra by the gate I go to my head about Keita relative that truck cause it be better if I did it I couldn’t wake her to bed we had a very bad if I did that record you be back at Dragon tea did record when I’ve ever heard about that provided at the color country Academy desperate cut the backyard with a dead guy forget that I take her OK well good I can’t wait to read that the bonfire is good to be back to liberty Lake real quick to bedtime over the death was he through the double the camera bit of a dad and we’re gonna mobile advantage of you did with the temperature down at the track a deer going to the Goodwill go to bed ready to record me down I would like a grande veteran How do you play gotcha bad of a head to Wheelco to be back to letting you be done with Westbrook at the battle of the bed ready because you’re about to record a budget look good but that’ll be good and feel good we get to River dental going to be that are you going to red kettle behind my head about to be going to bed that’s a really good pet or visit until with a bluebird deprecated bed but I could go to Lechner barracuda headed back to therapy data through did that to me did that after the vet real quick to be back to bed with that I could live with a bad word in real quick but if that will get back on track at the doctor with a dad I’m a wild man I’ve had with able to get to relax and black How do you like her to bed I better head to bed I will be there truck I could be better but it’ll be the true winner we did really good I’m gonna get you back will be doing a little birthday Deborah Deborah Deborah goodbye by the Ravinderjit Englewood Keswick adventure pediatrician with a death and plug the bedroom with the dates of bro

How do you track the devil away how did you hear that after the way to Rao

I do I have anybody could’ve ate that I picked libido repaired about the broker to be pulled from the butchery page to go to bed we headed to Regatta Bay redheaded broker to be better about it I can record a better rate it a try better repeat at work by the big Broadway theater room in bed and record double wait if we date and I gotta wait on the road getting rid of her haircut real quick to be provided with that I protect bed Ruby date a broken to be by to get the debt over the way I do Virgo divided what would be the dad I put a radiator broke go to bed at I’m bout to head up to revenge for a contemporary did that provided will be did it I’m gonna eat and go out that’s a good example of a tribe Goku relative like a deputy bro I’m plucking been out of it a buck How did Rangel Diablo Burger get writing about to head to brew Krew Debra pretty but I try picture of her head and record Malibu record of any backdrop of the band room by the way down at work or to bed lol good to have a bad friend if you truly have a record of it back to make it to break it back I drive by me to work with me that I am a true but we should eat a chocolate drink Weatherby contract over with the man at school by foot doctor every day it’s gonna catch up with doctor a better group everyone Bonita blackhead to prevent Manetta cooked rats How do you Calvary Tigre ketchup Edward medical bed whatever the devil ready Deborah visit to visit a Roku TV I truly did it ready to get up I’ll go to bed buddy – – brigadier better get it and go to go to bed but we did it we did Rudy WT temperature to be the tricky tricky tricky Dick I could buy the broker to be rich ability to relate relate and cuddle liquid gonna be that really did a true convertible advocate with that rug in the bathroom and that I’m tracking it without repeating dads and the blue ahead with the black TBD to repeat it I had to go to go to bed to the wedding with that Apple is at the beach for the country did it I had an eggroll Catherine

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2095年6月雨季

 ボクは空を見上げた。空を埋め尽くすピンク色の肺胞を。酸素と二酸化炭素を交換する風の流れを。 「また感覚器官の指向方向が反転してるんだよ」  〈内側〉から彼女の声がする。ボクはあわてて奥歯をかみしめた。内臓がボクの内側に戻り、目の前に彼女がいる。濡れた髪がかかるその肩越し、逃げてきたばかりの管理地学校区が川向うに小さく見えた。  2095年6月、尼崎は雨季だった。少子化に伴う国のAI子育てモデル都市として尼崎が選ばれたのは2035年、70年の理想的な管理体制とバイオテクノロジーの発達は人間が人間を子育てしなくても良い社会を達成していた。人間が〈完成〉するまでの工程は管理地区にてAIが行う。家族制度は解体され、こどもたちはコモンズ育成地域と呼ばれる学校区にて社会全体の共有財産として育てられた。こどもたちの身体には有機的なブログラムがインストールされ、全ての生体情報がAIに共有されることの見返りに、身体的経済的に最低限度の幸せが確保されていた。ボクが今逃げてきた社会だ。 「君を誘拐してしまった」 川べりの草を見下ろしながらボクは言った。 「最高に幸せだ」 「どうして誘拐したの?」 「凡庸なのが耐えられなかったんだ」  彼女が拳一つ分ほどの距離まで身をよせる。ボクの手に学生服のスカートがあたった。雨音の中、口の中にこもるようなボクの声が聞き取りづらかったのだろう。ボクは自分の、このしゃべりかたも嫌いだ。 「AIは過去のデータからしか学べない。新規性がなく、ステレオタイプを模倣し続け、人々が求める最大公約数の差別的な最適解を再生産し続ける。ボクたちもそうやって生きていくんだ。みんな同じようになって、同じような幸せを供給されて、ひとを傷つけて笑ってさ。そんなのあんまりじゃないか」  もっと怒りをあらわにしたかった。うまくできなかったのはきっと、雨が冷たかったからだ。 「……ボクをおかしいと思う?」 「陳腐だと思うわ」彼女は困ったように笑った。 「陳腐で凡庸な夢だわ。でもいいの」  彼女の指がボクの方にのびた。  感覚器官がまた反転する。ボクのむき出しの心臓に彼女が触れる。とくり、とくりと生命を送り出すその丸みが掌の上でそっとたゆむ。指をさらに〈外〉にのばす。乳房を、膨らむことが止められないボクの耐えられないほどきたないその外部器官を、彼女の指が探りだす。ボクの唇から内側に漏れていくかすかなあえぎ声を彼女の乾いた唇がすくいとった。奥歯を噛みしめないよう、彼女の肉色の〈内側〉の一部がボクにさし入れられる。 ボクは空を見上げる。空を埋め尽くすピンク色の肺胞を。酸素と二酸化炭素を交換する風の流れを。 「わたしたちに子宮はないのよ」彼女の指がはらわたをなぞり下へとのびた。 「繁殖期の前に管理地区から逃げてしまったのだもの。アクティベートキーは一生手に入らない」 「これでいいのね」彼女の背を抱きしめる。雨に濡れたシャツ越しに感じる、生暖かい彼女の肉体。 ボクの内側は男と女の区別を持たない。  雨季の雨がボクらの外側を羊水のように満たしていた。非常事態を知らせる警報は遠く遠くに聞こえる。  ボクは自由だ。そして、彼女のモノになった。

小説はいつでも君のそばに。

「小説家になるのって、難しいよね」 私の隣で友人がそう呟く。 「……」 その呟きに私は答えることができなかった。 黙り込んでいる私を横目に、友人は話を進めていく。 「小説家って文字だけで人の心まで動かすことが できるんだよ!? すごいと思わない? この人の短編、すごく感動した! 私、ここの表現、お気に入りなんだよね〜 オススメだよ!」 なんて、熱く語る友人に苦笑いしながら渡された本を受け取る。 開かれたページに綴られた文字を見ながら、 私の知らないところでなにかが動いているような、 心の柔らかなところがザワザワとする感覚を覚える。 「……ありがと。確かに、分かる気がする」 「だよね!」 「…ところでさ、この短編の著者って誰?」 私の疑惑を確信に変えるために、聞いた一言。 「ん?嶺葉って言う学生作家さんだよ! 一度でいいから会ってみたいなぁ〜! サイン本ほしい〜!」 「会えると、いいね」 「うん!」 友人の、 純粋な笑顔に、気持ちに、 顔をまっすぐ見ることが出来なくて、 私は思わず目を伏せた。 私は、誰に聞かせるでもなく、ひとりごつ。 「……君は、気づけるかな」 「何か言った?」 「ううん、なんでもない!」 そう言う彼女は清々しい微笑みが浮かべていた。 彼女の友人が手にしていた短編、そのタイトルは 「春の夜、君と浜辺で手を繋ぐ」 著者 嶺葉 それは紛れもなく、語り手である 彼女本人の書いた短編であった。

通告

 ある日突然頭上に現れた巨大な円盤が、じわじわと降下してくるのをどうすることもできないまま、人々が狭い地上を右往左往している頃、地球の周りに浮かぶ人工衛星たちは、地球にゆっくりと巨大な半額シールが貼られていく様子を、笑いを堪えながら撮影し続けていた。