理想の夫婦

私は社長令嬢。 昔から人々は私を羨ましがってきた。 私もまた、優越感を得ていた。 今度、私はこの人と結婚する。 私と釣り合う、唯一の人。 だから私は、この人と理想の夫婦になる。 そう決めた日から私は、色々なことをした。 まず、夫が大黒柱となること。 「あなた、ちゃんと稼いで家にお金を入れてね。そうしないと、理想の夫婦じゃなくなっちゃう」 次に、お互いが自立すること。 「自立をしましょうね。理想の夫婦になるために。」 そんなことを続けていたある日。 あなたは言った。 「理想の夫婦じゃなくてもいいんじゃないか?」 と。 「そんなのだめよ!私達は庶民とは違う理想の家庭を築き上げるんだから!」 するとあなたは言った。 「君ってそんな人だったんだ。なんかごめん。さようなら。」 そうしてあなたは出ていってしまった。 理想の夫婦を築き上げるどころか、私のもとに残っているのは、やけにだだっ広い家とお金だけ。 愛も心も、全部全部どこかに消えてしまったみたい。 だから新しい人を見つけないとよね...! 理想の、 夫婦に、 なるために...。 あれ、私って何だっけ。

I do crowded but headed to proud cut to be in truck

Edge real go by D’Iberville he did absolutely hate the tablet big head and blow good to be pulled to blue buoy to be timetable to be tomorrow but it be bad to Liberty Bell Breaux Bridge PD educated could you be part of it to be dead for veggie dip her body to the would-be but Ruby did it at Regatta Bay bird Roberta very busy dead broke it be bad to operated tempura bed with 80 property by and take a cheeseburger body with it at broker to be burnt rubber to be bad brother to be in plucker to be better by the way did Rocco to bed bud ready did and record the rubber better prepare to be to review data provided a trooper the day to meditate a burger with a big group did it really bad Bubba Gigi bro but we did program to be burger ready did a package of a bitch everybody be dead at your big butt big page for a good bird ready to record of a boat ready we did Robert did it and wrote a big bird royalty digit code Ridgewood Road I do rag anybody we possibly get a baby dead flatbed better buddy be dead river did that vacation paper by the dead reckoning to big Bird we take the Ridgeberry be dead Edgebrook going to be Previti WB detail revertible very bad temper ABC for a Gucci bird provided a Brody did add to Roca to buy bird refrigerated Roberta be cheaper to buy GTA to go to Riveredge with both would be GB Ruby Ridge probably did it at a good bird bird Richie broke a big batch of gravity better ability to provide a big bird repeat it repeat it into a bed provided by Deborah ready to be the dad to happy Burger the ditch because of a bird river the bid it and everybody be paired with a battery dead for a good burger blueberry Detro Coochie board review the ditch and broke it but repeat it real quick to go but which would visit real good to be bad to be due to prove it did it and record your paper busy day to go to bed go to bed but it would be detailed records

消せない通知

昼休み、友達と集まってたわいもない会話で盛り上がっていると、ポケットに入れていたスマホの通知音が鳴った。 画面を確認すると、たった今受信されたメッセージの通知が表示されていた。 ―――――――――――― 一件の未読メッセージがあります 次の日曜、一緒にどっか遊び行こ! 行きたい場所あったら教えてね ―――――――――――― 懐かしい差出人の名前を見て、ため息を零した。 そしてしばらくその画面を見つめた後、通知欄の右上の小さなバツを押して通知を消した。 ****** 放課後、スマホの画面を確認した。 よく使っているSNSアプリの右上には赤い1の文字が浮かんだまま。 メッセージを読めば、通知は消える。 そんなことくらい分かってる。でも、既読をつけたら返信しないといけない。 それが、どうしても嫌で。 別に仲が悪いわけじゃない。 言い訳のように、そんな事を考えた。 小学生の頃から仲良しで、お互いの家に遊びに行ったこともある。中学からは別々になったけど、それでもよく会っていた。 でも、中学を卒業して、高校生になって、会うのがだんだん嫌になってしまった。 だって、新しい人間関係の方がずっと刺激的で、楽しかったから。 それに比べて、君との関係は少し古かった。昔のままの君に、言いたいことなんて何も言えなくて。君の前では楽しいとさえ思えなくて。 興醒めだったんだ。 そんな事を知らない君は、こうやってたまに連絡を入れてくる。 私たちが友達のままなんだと信じている。 眩しいよ。あなたのその変わらない優しさ、無邪気さが。 ごめんね、分かってるよ。君がなんでそんな事を言うのか。 だって約束したもんね、小さい頃、小指を結んで。 一生友達でいようね、って。 あの日の私たちは、それがどれだけ難しい事かも知らないで。 通知を消す事なく、スマホの画面を閉じた。 ごめんね、本当にごめん。 もう思い出さないでいてよ。私の事なんて。 こんな薄情な人間のことなんて。 君との友情を捨ててしまったことは、代わりに私がずっと覚えてるから。 もう、嫌なんだ。これ以上、君とのつまらない記憶を増やしてしまうのは。 せめて君との思い出だけは、ずっと美しいままでいてほしいんだ。

 蛍の命は水のよう  サラサラと美しく光りを返し流れては  やがて漫々たる青い海原に出るだろう  その間、蛍は何を思う  ある時は大きく勇ましい鷹に、  ある時は小さく綺麗な海牛に  蛍はたくさんの夢を見た  夢を見てはさめて、夢を見てはさめて、  そして自分の命の限界に気づく  楽しい夢をたくさん見れた蛍は後悔しない  消えゆく燐火をお尻に灯しながら思う  でも蛍は満足しない  まだ、死にたくない  いつか、いつの日か  いつの日か、大きな鷹のように  いつの日か、綺麗な海牛のように  こうして蛍は叶わぬ願いを空に描いて  清らかで冷たい水の上で死にましたとさ

高級彼女

「私と付き合うなら、高くつくわよ?」    彼女は、言葉を選ばず言うなら最高級だった。  優秀な頭脳に、抜群のスタイル。    自分自身は一点もの。  そんな座右の銘を掲げて、自分磨きに勤しんでいた。  一日一回以上美容へ投資し、美容院、エステ、脱毛、レーザー治療、エトセトラ。  彼女が美容に勤しんでいない日はなかった。    そんな彼女と付き合えるのだ。  ぼくは、それなりの代償を覚悟した。   「どこへ行くかより誰と行くかって言うじゃない? 私、あれ嫌いなのよ。どんなに素敵な人と一緒でも、中高生がうじゃうじゃしてるファーストフード店になんて行く気が起きないわ」   「ファーストフードにはファーストフードの良さがある気がするけど」   「馬鹿。積み木遊びには積み木遊びの良さがあるけど、大人になったらしないでしょう? 気品って言うのは、自分の年齢に相応しい振る舞いをし続けないと維持できないの」    ホテル最上階のレストラン。  東京都が一望できる窓際の席で、ぼくの彼女は夜景を見ながらフルコースを食している。  彼女は手に持ったナイフとフォークで、器用にステーキを切り、口に運んでいく。  すべてが優雅で、隣のテーブルの人がちらちら彼女の方を見るほどだ。    ぼくは、動画サイトで勉強したやり方を、必死に真似する。  彼女はぼくの方をちらりと見て、ふいっと目を逸らした。     「美味しかったね」   「合格点」    帰り道のタクシーの中、彼女は言った。  彼女は、褒めないし喜ばない。  良い悪いではなく、合格か不合格かで物事を判断する。  もちろん、食べている最中に言うことはないが。    彼女にとって、世界は合格と不合格の二つに分かれている。  自分を合格であり続けさせるために身についた癖だとか。  前日行ったバーで珍しく感情を出して、「子供の頃に可愛がっていたペットの雑種犬を今では不合格だと感じて愛せなくなってしまった」と嘆いていた。   「その生き方、苦しくない?」    一度だけ聞いた、最低な質問。   「苦しいわよ。でも、人生ってそう言うものよ」   「そう言うものって?」   「いい大学に入ろうとすれば、苦しみながら勉強をしないといけない。いい給料をもらおうとすれば、苦しみながら仕事をしないといけない。私は、イイ女でありたいの。そのためなら、苦しみの千や万、引き受けるわよ」   「でも、苦しみ続ける人生なんて楽しくないよ」   「苦しみ続けてなんかないわ。苦しんだ果てには、ひと時の幸福感があるわ。そうね、フルマラソンのゴールした瞬間、みたいな感じかしら」   「ぼく、フルマラソン走ったことないよ」   「奇遇ね。私もよ?」        彼女は今日も、ブランド物の服と鞄で自分を聞かざる。  ファストファッションのアイテムは、嘗められるらしい。  誰がと聞いたら、世界と返って来た。  よくわからない。   「私と付き合い始めて、何年経ったっけ?」   「そろそろ三年かな」   「そう。もうそんなに経ったのね」   「早いね」    わかってしまった。  彼女はきっと、ぼくに別れを切り出すのだろう。  三年も見たからこそ、彼女の次が見えるようになってしまった。    そしてそれは、彼女にとって、最高級ではなかった。  最高級とは、『最』の字がつく通り、一番上でなければならない。  一番上であるためには、誰からも理解されてはならない。  彼女は自分に、不合格を出してしまったのだ。   「止まることはできない?」   「無理ね」   「もう、充分頑張ったと思うよ」   「過程の評価は素晴らしいことよ。でも私は、結果も欲しいの」   「もうぼくは、隣にいられない?」   「ええ。貴方が隣にいてくれて、私は楽しかった。これは事実よ、ありがとう。その代わり、私は最高級じゃなくなってしまったの」    なぜ月が美しいのか。  なぜ太陽が美しいのか。  それは、誰のものでもないからに他ならない。  例えば月の土地がどこかの金持ちに全て買われ、「夜空に浮かぶあのお月様は、ロスチャイルド家のお庭なんだよ」なんて教わるようになれば、月は確実に美しいとは呼ばれなくなるだろう。   「さよなら」    彼女は、去っていった。  その後ろ姿も、凛々しくて美しくて、まるで月のようだった。    誰のものでもないからこそ、彼女は最高級となるのだろう。  ぼくは、彼女がこの先も最高級でいられることを祈ることしかできなかった。

ネズミの干支騙り

「騙される方が悪いんでちゅよ!」 ネズミは壁を背にしてそう言った。 「ふ、大声を出したって負け犬の遠吠えにゃ。貴様はもう袋のネズミ、逃げ場はないにゃ。」 ネコはじりじりとネズミを追い詰めていく。 ニヤリと笑いながら、捕食動物としての姿を見せつける。 「た、確かに嘘の干支に選ばれる日を伝えてお前たちを騙したっちゅ。でも世の中は弱肉強食!勝った方が正義で、干支に選ばれたボクたちネズミこそが動物界を牛耳るっちゅ。」 ネズミは獲物として恐怖を感じながらも、必死に自分の上位性を主張する。 「は、はっはっは、貴様は実に面白いにゃ。」 「な、なにがおかしいっちゅ。」 「私たちは別に干支になれなかったことに怒っているのではないし、そんなことで何千年も逆恨みするほど愚かではないにゃ。神の基準なぞ知るものか。そもそも己の価値ぐらい己で決められなくてどうするにゃ。私たちは、ただ貴様たちが嘘をつきながら反省をしないことこそに怒っているのにゃ。」 ネコは獣としてありながらも、気品高く、厳かにそうネズミに告げた。 「う、嘘をついたことっちゅか。それならさっきも言った通り騙される方が悪いっちゅよ!自分たちの無能さを人に押し付けないで欲しいちゅね。」 「なるほど、ここまで来ても反省しないのにゃ。そうか、騙される方が悪いのか。それならネズミ、貴様は気づいていないようだから教えてやろう。ひとつ、騙されていることをにゃ。」 「だ、騙されていることなんてないっちゅ。」  ネズミはもう、最初の頃ほどの威勢はない。ネコに怯えて、ただ自分がどう弄ばれるのか慄くしかない。 「だっておかしいにゃ。神はなんと言ったにゃ?干支に入れば動物界の大将にしてくれるといったにゃ。ところがどうにゃ、貴様はたちは私たちに今でも捕食され続けている。動物界全体で強弱関係は何ら変わりない。結局神の言うことなんて信じたお前が馬鹿だったんだにゃ。」 「そんな、神が騙しというっちゅか。そんな、そんなことなら必死に頑張ったボクたちは何のために・・」 「所詮、神の興じる賭け事にでも使われたんじゃないのかにゃ?」 ネズミはもう何も信じられない。生きる希望もない。ただ、目の前の終わりを受け入れることしか出来ない。 「最初に貴様が言ったのにゃ、騙される方が悪いって。ネコを呪わば穴二つ、行いには報いがあるのにゃ。」 ガブリ、ガブリ。鮮血が飛び散り、肉が砕け、血の湖がどんどん溜まっていく。そうしてネコは赤く染まった口を舌で拭き、ご機嫌そうに去っていった。 嘘を騙りネズミが得た虚構の干支の意味なんて、何にもなかったのだ。

白磁の夢

 私が彼女と初めて会ったのは、丁度三年前のことです。  朝、凪いだ海に白い光が反射し、砂浜には塵一つ落ちていませんでした。浅瀬に佇む彼女は、下半身が魚でした。 所謂人魚というものでしょう。  恥ずかしながら、私は彼女に一目惚れしてしまいました。碧に輝く髪に群青の瞳は、 美術品のようでした。そして、私は彼女の白磁器の様な肌に最も心を惹かれました。  私は彼女に会うために、 何度も何度も眠りに就きました。  ええ、私が彼女と会えるのは、 私の夢の中だけです。 彼女は私が生み出した幻。そう考える方が自然です。  ……そもそも私は、この病室のベッドから出られない身です。もう何年も。動くこともできないのです。はじめはずっと遠くにいた彼女は、ここ数ヶ月でかなり私に近付きました。私が弱ってゆくのと比例して、彼女がより鮮明に、より近くで見えるようになりました。きっと、今日眠れば、 触れ合える距離になるでしょう。  彼女は死神なのかもしれませんね。  今、私はとても恐れているのです。……自身の死の恐怖よりも、彼女と共に居れる心地良さが勝る自分がいることに。彼女のことが全く怖くないことに。  ——眠くなって来ました。そろそろ時間のようです。  では、さようなら。

ゲロを吐かれた天才

 思想とか表現とかが一般人とは逸脱していて常人には理解できないものを天才というなら。俺は天才にゲロを吐いてやる。 -まさに天才- 〇〇賞を受賞した19歳の少年! SNSと現代日本をテーマに作られた映像作品! テーブルの上に置かれた皿は現代日本を表現しており、その上に置かれた........        は?なにそれ?  嫌悪、嫌悪、嫌悪。吐き気がするほどの嫌悪感。タバコの吸いすぎでヤニクラを起こし吐きそうになると似た感覚。俺以外の作品を見た人らの反応を見る方がまだ面白い。表現や思想などに賞賛を贈る老害。知ったかぶった評論家気取りのガキ。全く興味を示さないパンピー。どいつもクソだ。  俺は先人の残したモノを利用するだけして、気持ち良くなってる人間が嫌いだ。何でもかんでも自由勝手にやりやがって。昔の人らがどんな気持ちで創り上げたかも知らず。  これを読んでいる君。自由とは何か知ってるか?自由というのは、自分が自由だと思えた奴の事を言うんだ。自由になりたいなんて思ってる表現者気取りのナルシストじゃ一生自由にはなれないんだよ。不自由で表現に限りのある箱の中でできる限り羽を広げようとするから知恵が生まれ、ジャンルが生まれる。それを蔑ろにして好き勝手やってたら何が何だかわからないじゃない。そんなの美術でもなんでもない。ゴミだ。気持ち悪い。そんな物を美術と呼ぶ現代社会など、大っ嫌いだ。         だからやった。 2022年5月14日。都内某所。  現代アートが産んだ天才と謳われる男。noma。32歳。彼の個展に俺は足を運んだ。いつもの如く吐き気と嫌悪感。いっそ吐くならnoma本人にかけてやろうと思った。会場の左奥、オレンジ色の照明の下。nomaは座りながら自分の思想を発表していた。その姿、政治家の演説の如く。後ろに回った俺は、nomaの脳天目掛けておもいっっっっっっきりゲロを吐いた。  きっっっっもちぃいいいいいいいいィィ!!  吐き終えた俺はダッシュで逃げた。吐き終えた口の中の気持ち悪さも、鼻を抜ける悪臭も、今はただただ快感。そう思えた。  君たちにもいるだろ?嫌いな上司、嫌いなクラスメイト、芸能人、アーティスト....そんな奴の脳天からゲロを吐いたら、どんな気分さ。想像するだけで気分が良くならないか。なるよな?そうだよな?         ようこそ  別にゲロじゃなくてもいい。しょうべんでも何でも。ただ俺はゲロだっただけで。君たち読者がどういった方法で人を見返すのか、なんてものには興味がない。ただ俺は繰り返すよ。またやる。 2023/1/14/23:12:23 A「コレが最後の投稿。」 カチッ... B「へ〜。なんでこんな投稿が流行ってんのさ?」 タバコを喫みながら聞く。 A「そりゃ!あの天才nomaが自殺したからさ!」 Bは近代アートを見つめるかのように首を傾げた B「ゲロ...吐かれたから...じゃないよな...」 ここでAから真相が明かされる。 A「実はこの投稿者。noma本人らしい。」 Bは現代アー..... B「どうゆーこと....?」 A「自作自演ってことだよ!!!」  つまりnomaはゲロを吐かれたのではなくゲロを吐かせたのだ。nomaは嫌だったのだろう。天才として確立してしまった自分が。自分の表現が。  だからゲロを吐かせ、自殺した。コレがせめてもの抵抗だったのだろう。  ゲロを吐かれた天才も。ゲロを天才にぶっかけてやりたかったのだ。    

スーパークラッシャー

スーパーボールはどうして止まってしまうのだろうか?  スーパーボールとは跳ねるのを楽しむことに意味があり、それを止めてしまうのは勿体無い。ポーン、ポーンとずっと跳ね続ければ超楽しいんじゃね?とふとあるとき俺は気がついた。かの有名なニュートンはリンゴの落ちる姿から万有引力を思いついたという。同じように、スーパーボールの落ちる姿から新しい遊び方を思いついた俺は超天才じゃないかと確信した。 というわけで、早速作ってみた。今の時代、自宅に3Dプリンターあれば大概のものは気軽に作れる。俺は現代の科学技術に感謝しつつ、はやる気持ちのままに投げてみることにした。 「いけ、これか新時代の遊び方だ!」 するとどうだろう、俺の手を離れたスーパーボールは勢いよく壁にぶつかり、勢いを落とさず跳ね続けている。何だろう、子どものときにテレビやプロジェクターの画面に丸が表示されて、壁にぶつかる度に色を変えて延々と規則的に動き回り続けるやつがあって、ずっと見ていられたんだよなぁ。そう、あれは規則的な動きで・・。ん?規則的?待てよ、このスーパーボール、もしかしてすると? 「バゴーン!」 しまった。やっぱりそうだった。こいつ、動きが不規則な上に動き続けるから、簡単に家の物にぶつかるんだ。なんて罰当たりな、神棚にぶつかってしまった。早く動きを止めなくては。 「バシャァ!」 やばい、次はコップがこぼれてしまった。動きを止めようにも動きが不規則すぎて跳ね先が予測できない。よく子どもの頃を思い出せばスーパーボールの動きって不規則だったし、よく考えれば俺はプロ野球選手ほどキャッチ力もない。俺は超バカだと確信した。 そんなことを考えている場合じゃない、早く動きを止めなくては。俺は身体をボールの方に向けて動きを見ようとする。 「ポーン」 が、しかしながらボールは家の破壊をやめて窓から家の外に出てしまった。やばい、かなりやばい。自宅の破壊ならまだ自分だけの被害でいいが、外に出ると人様に迷惑をかけてしまう。俺は全速力で扉を開けて、ボールへ向かって走っていった。  ボールは歩道を真っ直ぐ、ポーン、ポーンと跳ねていく。そんなボールを裸足で追いかける俺。これじゃあまるでどこかのドラ猫を裸足で追いかける某お姉さんじゃないか・・。 「危ない!」 突然の大声の方目を向けると、道路には野球ボールが転がって来ていた。更に、そのボールを取ろうとしているのだろうか。子どもが車道に向かって来ており、車が子供に迫っている。まずい、この距離から俺が走っても間に合わないし、先ほどの人の大声に車も子どもも気づいていない。このままでは子どもが轢かれてしまう。 「ポーン、ポーン」 そのとき、スーパーボールは急に跳ねる向きを変え、野球ボールに激突した。野球ボールは少年の方に跳ねる向きを変え、少年は車道に入り込まずに済んだ。よかった、本当によかった。危ないところだったが、人の命が失われずに本当によかった。 俺は少年の元へゆき、先ほど危なかったこと、これからは車道に気をつけることを注意した。少年は良い子だったんだろう、反省して、「これからは気をつけます」と素直に言ってくれた。  日本では毎年、子供の飛び出し事故が多く起こっている。子どもの飛び出しは予測できない不規則なものであり、その事故を防ぐことは運転手側には難しいかもしれない。しかしながら、その不規則性を事前に理解して、大丈夫だろうと安易な考えをせずに、予測できない行動をするかもしれないと気をつけて運転することで事故は防げるだろう。 よし、今日は子どもの事故も防げて良い日だった。何かを忘れている気がしたが、満足した俺は家に帰ることにした。今日はいい気分だし、酒とつまみで夜を明かそうかな。やっぱり俺は超天才かもしれない。 1週間後 「本日のニュースです。とある宝石店に謎の球体が突入し、店内の物にぶつかり続けて甚大な被害をもたらしました。こちらがそのときの防犯カメラの映像になります・・」 素直に警察署へ行くのか、知らないふりを通すのか、俺の中で天使と悪魔が戦いの火蓋を切ろうとしていた・・!

「一歩踏み出す勇気」

「一歩踏み出す勇気」

デブとブデ

 ブデ。  猫である吾輩に付けられた名前だ。  ぽっちゃりと可愛かったから、というのが由来だそうだ。   「ブデー、こっちおいでー!」    人間は、なんと残酷なのだろう。   「にゃー!」    吾輩はせめてもの対抗として、人間をノモケバと呼んでいる。

『日々の欠片』2/1『寒空に消える誘い文句』

「ねぇキミ、魔法少女にならない?」  夜風を入れるために開けていた窓、虫が入らないように閉めていた網戸の外から声が聞こえた。なんかのアニメに出てきそうな高い声。 「……いや、私もう、40超えてるんで……」  驚くより先に出てきた冷静な返答に、そのアニメ声が不思議そうに言う。 「あれ? そうなの? 見えないね」 「はぁ……」  キャッチの人から幾度となく聞いたその言葉を、私は信用していない。 「ねぇこれ、この網、開けてそっち入っていい?」 「いや、知らない人入れるのはちょっと」 「人じゃないけど」  ほら、とアニメ声の主が発光した。 「まぶっ」  手で遮って光量を調節。手の先に見えたのは、ぬいぐるみのような可愛い生き物だった。いま流行りの宇宙渡航者のようだが……。 「怪しすぎでしょ」 「えっ、可愛いでしょ!」 「だからこそ、ツリ目的の見た目って判断されますよ。そういう“鬱展開”のアニメみたいの、望んでないんで結構です」 「なんだぁ。この見た目なら喜ばれるって聞いたから頑張ったのに」 「本当の少女だったらあるいは。でもいまどきそういう、訪問販売? みたいの流行りませんよ。防犯意識高い子多そうだし」 「世知辛いなぁー」  悲しそうに眉根を寄せるぬいぐるみっぽいもの。 「魔法少女勧誘しなきゃならないほど治安悪くないですよ、この街」 「ミクロだねー。視点がミクロ! もっと宇宙に目を向けないと!」 「よくわかんない生き物に言われたくないです」 「まぁいいよ、ほかの家行くわ。ちなみに貴女、お子さんは?」 「いないっす。生粋の独身なんで」  謎の生き物は口を開けて息を吸って「…………」なにも言わずに閉じた。 (嫌味な生き物だな)  思ったけど言わなかったのに表情でバレたらしく、「言いたいことあるなら言えばいいのに」なんてブツクサ言いながらその生き物はぴこぴこと右手を振り「じゃぁねぇ〜」全長30センチくらい身体を翻し、夜空へ消えた。 「なんだったんだ……」  結局本当の意図はわからないまま、その日は終わった。  数日後、テレビを見ていたらニュースが流れた。 『……その生物は【魔法少女にならないか】などと言い、女児から食べ物を巻き上げるなど…………詐欺行為の疑いがあるとして、警視庁では注意を呼びかけ……』  画面には、こないだ見た生き物の写真が映った。画面下には【視聴者投稿】の文字。  こないだより少しやつれたようなその顔は、演出なのかそれとも……。なんにせよ、やっぱりいまどき流行らない方法なのだなと痛感した。 「世知辛いねぇ〜……」

サファイア色の涙

 三月十三日。私たちの四十四度目の結婚記念日の前日に、夫は息を引き取りました。  ええ、そうなの。今日が結婚記念日。あの人が生きてたら今日で四十五年目だった。  七十にも届かない、六十八歳でした。一昔前ならまだしも、私たち世代の感覚ではまだまだこれからという時でしたので、一年経った今でもあの人が居なくなったのが信じられない気持ちです。実際、肝臓の癌が判明するまでは体力の衰えもなく、癌がなければきっと長生きしただろうにと無念に思います。  お人好しが服着て歩いていたみたいな人だった。毎日楽しげに暮らしていて、まさかその内側で癌が進行してるだなんて、私も、それに本人も気付きませんでした。  だから、入院が決まった時には、もう手が付けられないところまで進行していたそうです。  まあ、独り暮らしにはなりましたけど、元々家の事は私がやっていました。だからこうやってヘルパーさんに来ていただいても、今は日常生活で困ってる事はございません。  ただ娘が心配するのも分かります。娘にあなたを手配してもらった手前、よろしければ介助という名目でこうやって話し相手になっていただいても良いかしら。  寂しくて胸がしくしくするのは、あの人が入院したくらいの頃が一番強くて、今はお陰様で穏やかな日々を淡々と過ごしております。  でも、あの人が居なくなって一年も経ったのに体がふと二人の暮らしに戻ってしまう事があるわ。  ぼんやり食事の用意をしていて、茶碗を二膳出していたり。今日もね、朝起きた瞬間「結婚記念日だからあの人の好きなもの作らなきゃ」って思っちゃったのよ。駄目ね、まだ慣れないの。  人生で結婚してからの生活の方が長かったからかしらね。四十四年。考えてみると長いけど、あっという間だった。  プロポーズされた日のこと、今でもありありと思い出せるわ。あの人の住んでたアパートだった。雨漏りするようなボロボロのところでね、いつ崩れるかと私が不安になってる時にあの人が真剣な顔して言うの。「僕と結婚してくれ。一生君を泣かせるような事はしない」なんてね。  でも、彼は私を置いてとても遠くに行ってしまった。もう会えないほど遠くに。  泣かせないって言ったのに。  ごめんなさいね、昔話ばっかり長々と喋っちゃって。歳をとると駄目ね。お茶でもいかが? いえいえ、大丈夫よ、実はキッチンにもう用意してあるから持ってくるだけなの。  ……あら、誰か来たのかしら。きっと宅配便だと思うからちょっと出てきますね。 *  やあ。お元気ですか? 今年も庭の梅は花をつけましたか?  今日は君がこの手紙を読むであろう二〇二二年の一年前、二〇二一年の三月十三日です。僕は病院のベッドでこれを書いています。  君からもお医者さんからも、ひどい腸炎と説明を受けているけど、きっとそれは僕のための優しい嘘なんだろうと思っている。そうじゃなきゃ、見舞いに来た君がいつも必死に眉に力を入れて、泣くのを堪えるみたいな顔をするはずがない。  四十四年前のあの日、四畳半のオンボロアパートで「一生君を泣かせるような事はしない」なんて言ったばっかりに、君に無理をさせてしまったね。「いくらでも泣いていい。君の涙を拭ってあげられる男になる」と言えば良かったのかもしれない。  これからリベンジが出来たら良いんだけど、僕のこの体ではあまり悠長にもしていられない。  それでね、君にサプライズプレゼントを用意したんだ。  来年、僕たちの結婚四十五年の節目に名前があるのを知っているかい? サファイア婚って言うんだってさ。  実は友人に頼んで、君に似合うサファイアのネックレスを選んだんだ。上品な雫型のサファイアは君によく似合うと思う。今からまだ一年あるけど、記念日当日に配達してくれるんだって。手紙も同封できるって言うから、こうして柄にもなく一年後に読まれる手紙を拵えてる。  一年後の明日、僕の身体が上手いこと寛解してるか、それが無理でもせめて一時帰宅の許可が下りると良いんだけど。  ちょっと、どうだろうな。自信はない。……書き足りない事はまだまだあるけど、少し疲れてしまった。横になる事にするよ。  結婚四十五周年、今日までありがとう。  こんな僕だけどこれからもよろしく。  愛する妻へ サファイアの涙に添えて

ハーレムで結婚したいなら

俺には6人のハーレム要員の女の子がいる。まず、深紅の髪色をしたロングヘアの女の子、|紅亜《くれあ》。次に|白縹《しろはなだ》の髪色でショートヘアのボクっ娘、|藍《あい》。山葵色の髪色で紅亜より更に長いロングヘアの|翠《みどり》。金髪セミロングのイギリス人留学生カナリア。実際は透明だが見える色は白の髪色を持ちお団子ヘアのウツギ。最後に菫色のロングヘアに眼鏡を掛けた女の子すみれ。  俺はコイツら6人と結婚したいと本気で思ってる。俺の年齢は18歳の高3で全員同い年。だが、日本の法律では1人としか結婚出来ない。一夫多妻制を取ってる国にみんなで行くのが一番なのだが、何としても日本に居たまま6人と結婚したい。ここは譲れない。  俺たちは一つ屋根の下で暮らしている。いわゆる同棲だ。いつから?と聞かれれば正確には忘れたが三ヶ月ほど前だろうか。カナリアが留学生寮から通うより俺の家から通うほうが近いから住みたいと言ってきたのでそれを許可したところ「カナリアずるい」となり、残り5人も住むことになった。両親は出張でいないが許可は出ている。  最初はみんな俺を取り合っていた。誰が隣に座るかや誰が一緒に寝るかなど様々なことにおいて6人は揉めていた。紅亜、藍、カナリアがこの時強い圧をかけ、他3人が耐えられなくなるのがいつものことだ。その分、すみれは家事全般を母親のようにやってくれるし、翠とウツギも周りと仲良くやっているように見える。  俺はこの生活が大好きだしこのまま続けばいいと思ってる。思ってるからこそ彼女たちを俺は手離したくない。そう思って結婚を決意した。だが、先ほども言ったようにこの国では一夫多妻が認められていない。くそっ!もうこの国を出るしかないのか。でも、カナリアは留学生だ。一度母国に帰ってから出ないといろいろと問題がある。そうなると、次いつ会えるかはわからない。カナリアの父親は頑固で自分の決めた相手と結婚するように昔から言われてきた。それで日本に留学という名目で逃げてきた。逃げた先で俺に会ったんだ。海外に出るという作戦は使えない。  カナリアだけじゃない。他のみんなもそれぞれ事情がある。紅亜は父親と二人暮しで出来るだけ近いところに居たいだろうし。藍の両親は男の子が欲しかったらしくいつも男の子の振る舞いでいるように言われている。学校もそれを知って制服は男子用を支給した。本当は女の子のように扱ってほしいと本人は思ってる。それをしてあげられるのは俺だけだ。翠は父親が母親と翠と妹を捨てどこかへ行ったことで母親が仕事と育児を両立させ今まで育ててくれたそうで母親の負担が少しでも減らせることが出来ればといつも言っている。ウツギは生まれたときから色素が少なく両親から捨てられ施設で育ったらしい。施設を出た今頼れるのは俺たちだけだと思う。すみれは中学生の頃に両親を事故で亡くしそれ以来一人暮らしをしてきた。そのおかげで全ての家事スキルを身につけた。いつもみんなの分の家事が出来て嬉しいと言ってるがまだ傷は癒えていないと思う。  何か何かないか。彼女たちと誰になんと言われようと過ごし続けられる方法は。 「あ、そうだ!事実婚ならいけるのでは!?」  事実婚ならこの国の法律に縛られることがない。だから、いくら一夫多妻でも問題ないはず。ただ、デメリットもちゃんとある。税金だ。所得税など通常の結婚なら同一として処理される範囲があるのに事実婚だと法律に則ってないから一人ひとりの個人として処理されるからその分多く税金が取られる。7人家族ともなるとその金額は多分……。   「おーい!そこのお前!授業中だぞ!座れー」  はっ!俺はこの先生の声で我に返った。 「お前一人で何言ってんだよ。お前に彼女いないだろ」 「いや、いるから6人も。俺はあの子たちと事実婚するんだから」 「いや、それお前の妄想だろ?第一ここ男子校なんだから俺もお前も全く女っ気ないじゃないか」 「……」 「っていうかいいから早く座れよ。なんでずっと立ってブツブツ言ってんだよ。こえーよ」

死に損ない

見上げた空は綺麗だった。 風も吹いていない静謐な時が流れる。 雲ひとつない青空の下で広がるのは鮮血で染まった土。 壁に寄り掛かりながら口の端から血を垂れ流す。 目が霞み、右腕と左足の感覚を感じられない。 故郷だったはずの村に住み着いた化け物とその取り巻きを葬り終えた。 「これで……終わりか」 3年前。近場の城塞都市から帰って来てくる途中だった。村が燃え盛っていたのだ。 忘れもしない。 俺が到着した頃には幼馴染みが喰いちぎられていた。原型が分からないほどに。 左薬指に嵌められた指輪により、死亡を確認。婚約し結婚を控えていたが、そいつは幼馴染みを身代わりに我先とばかりに逃げ出した、と後に聞いた。 無念で堪らなかった。 許せるわけがない。 幼馴染みを襲い、故郷の村を滅ぼした魔物を。 逃げ出した先で出会った貴族の令嬢と結ばれ、一児の父となっているあの男を。 何よりもすぐに駆けつけることが出来ず、助けられなかった俺自身を。 俺は冒険者になり、迷宮と呼ばれる所をひたすらに入り浸るようになった。 村を襲った魔物達に対抗するには手っ取り早い。そうしか方法がなかった。 大陸ではそれなりに名を馳せるようになったが、欲しいのは名声などではない。 「ファルサリナ、どうか安らかに」 目を閉じると、思い出す。 物心ついた時からファルサリナは隣にいた。 背中まで伸びた長い金髪。 煌びやかな翡翠の瞳。 口癖は「私がいないと何も出来ないんだから」だったかな。もう何年も聞いていない。 母親同士が仲が良く、家族ぐるみの付き合いだった。自然と仲良くなるのもそう時間は掛からなかった。 スカートの裾を広げ、花畑を舞い踊る姿。 同じ水筒に口を付けても平気そうな顔をし、頬を紅くした俺に「ドキドキしたの?」とイタズラな笑顔を向けるのは反則だよな。 勉強がからっきしの俺に徹夜で付き合って、同じ屋根の下で眠ったことも多々あった。 可憐で女の子らしいお前が好きで堪らなくて。 お前も俺のことが好きだと。 思っていたのに。 逃げ出したあいつの方を選んだ。 俺ではなくあいつを選んだことを認めたくなかったが、飲み込むしかない。 ファルサリナを困らせたくなかったから。 その頃からだろうか。 俺に冷たくなったのは。 ''私に近寄らないで'' ''もう付き合っている人がいるんだもの。誤解されるから、もう話しかけないでよ'' ''昔から鬱陶しいのよ。ママ同士が仲がいいから仕方なく付き合っていたけど、もう我慢の限界よ。あんたなんか、昔から嫌いなんだから'' 辛い言葉を掛けられても。 嫌いになることができない。 できるはずがなかった。 頭の隅から足の先まで刻まれていた。 心はとっくの昔に奪われていたのだから。 ファルサリナを遠目から見ているだけで幸せだった。 今にして思えば、あの態度は……考えても仕方がないか。 「ああ、じきに行くよ」 遠くから誰かが呼ぶ声が聞こえる。 「おーい、デルボルトさーん!! 助けに来たぜ!!」 ああ、功績が枷になってしまうとは。 自分勝手な復讐を終えた今。 俺の生に意味なんかないのにさ。 「運命ってのは気が利かないもんだな」 まだ生きるように仕向けるのかと。 すると、そよ風が全身を優しく包む。 妙に暖かく、懐かしい気持ちが蘇る。 忘れもしない。この匂い。 唇に柔らかな感触が重なった気がした。 風が触れただけかもしれない。 気のせいか。 いんや気のせいじゃないと、いいな。 「愛してるよ」 なんだよ。 お前もそうだったのか。 俺なりに足掻いてやるからさ。 「ファルサリナ」 だから、早く行けよ。 俺の事なんか見守らずにいろよ。 壊滅した村はデルボルト・アドマークにより、僅か2ヶ月で再建を果たす。大陸第4の都市であり、貿易の要にまで発展させた。一代で築き上げたデルボルトは享年61歳の大往生を迎えた。 頑なに伴侶を取らず、後継者争いが問題になると心配されたが、養子が跡を継いだ。彼は、父親と義母は不運にも事故死してしまったのだ。デルボルトが見かねて保護したらしい。 それが事実か否かは分からないが。 血の繋がりのない養子に対する眼差しは父そのもので、慈愛に満ち溢れていたという。 彼の遺言通り、遺骨は村近くの木の下に埋められた。その横には誰のものかは分からない質素な墓石がぽつんとある。同じ墓石で並べるように埋めろという指示を添えられていた。 ''死後くらい、好きにさせてくれ'' 葬式の時に彼の顔は微笑んでいるように見えたと参列者の多くは語った。 そして、生前彼が最後に話した言葉がある。 「愛した人に逢いに行ってくる」 それはどこか誇らしげで満足そうだったと。 養子の息子は翡翠の瞳からボロボロと涙を流し「いってらっしゃい」と返した。

A dead raccoon tablet plugged to be sad today bud to big Beach and true

How to locate a bidet believable data probably debatable WGT property bit after a bit be dead property be bad educated people WPT Deborah going to be bad to be better prepared and they go to the beach head to big Burger Burger today to look at the paper to put up a TV did it broke I did it and she broke her to be bad for the baby back I said I could do over the BBQ Depot data by Cardi B day and directed to be ready by debit brookie did that we did it true what you did and you located by Burger Depot refrigerator but I did put dead and packaging vegetable be dead redemption at the bracket a bit better every day better look at the bottom of the data to read it and your ability Bedford we did Rocco to be bad blood with a dirtbike ADP to Ruby did your back and you both are ready and you broke a TV Broadway did it record GP but how do you graduate degree to be Detroit got a better prohibited record of it but I don’t like to be deputy BDT provided that type of gravel did it ruin your debt AJ bracket to be said to blow coat to be a bra Betty bitty brokerage be taken to refer to be debt-free BD dad had to break out to be brought back to bed after BG technical repair www. Edgebrook Adobe pet baby did Brocato paper to put a busy day trip we did that I gotta put a bite to prepare to get up at potato patch detective of a jet and your blood blood party paper vegetable tempura catch a bit but very decorated and Debra better be tragic everybody to be dead bro could you be better but he’s dead and you’re a good brother to bed that blueberry better brother did it broke a TV battery battery dead end road get your paper and ribbon to be dead rabbit with a trip with you get educated coach about Coach Myrtle Beach bro could you be back to meditate provided it and to go to bed but busy day to go to bed with that but he did your brother did it probably did it and you break out the way but will be the death of that property Petit bye-bye

ふうせん

ベランダから空を眺めていると、  視線の先に、UFOが浮いていた。  その正体は、プカプカと漂う赤い風船  「あれを取って」少女の声。  手を伸ばし、ひもを掴む。    「ありがとう」 彼女の声と笑みに温かくなる。     僕の胸にも届いたよ、  キミのコトバのふうせんが。 

How do you record the bad we had to provide bed bath

How do I get a bad way headed to blue boat to Bedford report which way did you provide the big bedroom could do it better better better to Ruby Beach educator call Papa to be dead Roberta bit but Robert TP back to the PD did Andrew go to bed blueberry page regarding the battle buddy be dead proper GB bet edge broker to be better about your dad real quick be back really did it and you look crazy people to put a battery to be baseball coach be back about eight it and drag Hey Jake Rakata Raper to break out the bed Deborah better be dead but I could be better at BTB Detra buddy be dead and to go to Cucci pizzeria could be better better better be dead to repeat it probably better to Bobby did it everybody be great to catch up with both ready to record a bit but refugee did Angela go to the boat ready that Roku TV better very decorated it and to record the paper to be ready to record it be bad to read it to everybody be ready for PT did educated people really decorated a tree with a date and packaged birthday buddy did you enter a code to be patched blueberry dead broke ODP both but we did it to unplug the battery dead and you will get a paper printed it probably did and plug Algebra goddamnit I had a bit of both the best picture we both put a better better better be detrimental be dead we did it ruin you get a picture but you will get revenge is that Edgebrook would be able to provide a date would be the day trip will be there to rub he did and you will go to battle ready did report to be dead provided with a GGGB bedroom with a date and Eureka JP multiple petty bitch group with the Dutch bro could you be a bunch of Bobby Digital pretty dead right by the dead probably do tomorrow did it and should I buy the bloody bitch broke bitch provided spaghetti dish petty but it will be needed educator going to pay both but it broke the better of the two best blueberry date and place

純白の聖女

ライネス・ハッシュヴァルトは信仰の対象だった。  教会の司教の元に生まれた彼女は、齢18にして魔法を極めて「聖女」と崇められた。  さらにどんな悪人でも彼女の前では改心すると噂が広まり、いたずらな子供から死刑を待つ囚人まで列をなした。  今日もまた彼女の前に悪人が連れてこられる。  狭い部屋の中、ライネスの前に座ったのは強盗殺人を引き起こした張本人であった。  捕まったものの仲間の居場所を吐くこともなく、最後の手段として聖女の前に連れてこられた。 「けっ!聖女だかなんだか知らねぇが何も話すことなんかねぇよ!」  男は後ろ手を椅子に縛られながらも悪態をついて唾を床に吐く。 「みなさんそうおっしゃいます」  真っ白なドレスに身を包んだライネスは笑顔で受け流す。 「お前みたいな若造に素直に改心させられるバカどもの気持ちが知れねぇよ」  強がりでもなく男はそう思っていた。 「みなさんそうおっしゃいます」  笑顔のライネスはツカツカと足音を鳴らして男に近寄った。  ___  そして、ライネスは男の右頬をなぐりつけた。  男は何が起きたか理解できなかった。口内に鉄の味が広がる。  見上げるとそこには笑顔のライネスがいた。 「なにしやがる!」  男は血をライネスに吐く。彼女の真っ白なドレスに鈍い赤色が加えられた。  しかし、彼女は気にもしない。 「みなさんそうおっしゃいます」  ライネスは男の右頬をもう一度殴りつける。今度は歯が飛んだ。 「くそったれ!これが聖女の正体ってか!」  男は唇の端から血を流しながらライネスを睨みつける。 「みなさんそうおっしゃいます」  笑顔のライネスは男をまた殴りつける。何度も、何度も。  男は反抗する隙すら与えられずに左右に揺さぶられ続けた。  男の顔面は真っ赤に腫れあがり原型をとどめていない。  何も言えずにただ頭を垂れるしかなかった。  ライネスのドレスと拳は返り血で真っ赤に染まっている。 「あらあら、何も言わなくなってしまいました」  彼女は小さく呟くと男に回復魔法をかける。みるみる顔の腫れは引いていき、果てには折れた歯まで生えてきた。  やがて、男は目を覚ます。  男が見上げるとそこには笑顔のライネスがいる。ただし、男の目は恐怖であふれていた。 「やめてくれ・・・。なんでも話すから・・・・」  男は懇願した。しかし、ライネスは笑顔で言い放つ。 「みなさんそうおっしゃいます」  彼女は再び男を痛めつける。拳の皮が裂けても気にせず殴った。  そして、遂に男は死んだ。床には血だまりが出来てぬるりと流れている。 「あらあら、何も言わなくなってしまいました」  ライネスは男に回復魔法をかける。心臓は鼓動を始めて男は血を吐き出す。  男は見上げる気力すら失っていた。小さく呟く。 「助けてくれ・・・・。誰か・・・・」 「みなさんそうおっしゃいます」  ライネスはひたすらに男を殴り続けた。  真っ白なドレスは真っ赤なドレスになり果てた。 「ふぅ」  ライネスが汗と返り血を拭う。そして、一度だけ手を打った。  ___ 「けっ!聖女だかなんだか知らねぇが何も話すことなんかねぇよ!」  男は後ろ手を椅子に縛られながらも悪態をついて唾を床に吐く。  しかし、言い終わって男は自分の震えに気づいた。  向こうに見える聖女に恐怖を抱いている。  彼女はツカツカと足音を鳴らして近づいてきた。 「やっ、やめてくれ!何でも話す!」  男は得も言われぬ恐怖に負けた。  そして、笑顔のライネス・ハッシュヴァルトは優しく言った。 「みなさんそうおっしゃいます」 編集

Derogative by the way headed to upload it to Paris

How do you get really bad if you took it already had a paper about the pizza truck got to be back here by the Dietrick OTB pottery Paintin pediatrics Goodwood battle busy did it work out to be but brother to do to repair to bed at property between Truity but would you be dead broke a TV but Ruby did it into Regatta Bay but with me to look at to be better prepared rated rookie to be back to rotate it and then you could work better before perpetuate Ricciardi birthday detector operate it How do you provide everybody to be tapped by temperature veggie dip to write back to bed for KGB petrified to be Double Vie detector pretty decorated the brother did it we did it it will go to better body repair but would you be repeated it probably did it work out your paper but you didn’t forget your big bottle of beer did it into Regatta Bay but probably didn’t look at the paperwork with the ditch repeated it up and up I did it we did it At Roubidoux deprecating paper PDJ regrettable but probably get to Ruby Ridge and go to Ruger Park but everybody did your buddy get up at four BTD PT provided she will be detach Katurah network petty bitch by battery Bill’s probably be true but you did Rudy date and a good word but better get ready to be back to my TV repair to be Debra with GG to read it probably did it and ketchup or both paperwork with the propane Rebecca to provide better tomorrow but you did it we did it purposely did your coach bottle ready to pour Academy Deborah deeply ditch provided it at your body better property with your buddy the property did Ruthie did it at Kroger Add a girl we had a great get to bed to bring her to bed for about to be dead Ricardo bit prerogative Patryk activated required to be Teterboro Coochie be back to Ruby Beach and will be deprecating bit better but he did to be dead and dead by where the better broker to be better Beatty Beatty to go to back to provide repeat it and break it but bro could be by to prepare to be dead broke with a big butt

教育無料化

「教育にお金をかけない国に未来はない!」   「もっと未来に投資を!」   「国は何もしてくれない!」        日本国憲法第二十六条第二項教育基本法第五条第四項学校教育法第六条。  国公立学校における義務教育は無償    二〇一〇年四月。  高等学校等就学支援金制度開始。  公立高校実質無償化。    二〇一九年十月。  幼児教育・保育の無償化開始。    二〇二〇年四月。  高等学校等就学支援金制度改正。  私立高校授業料実質無償化。        国は、次々と無償化施策を打ち出した。  ついに、学費は無償となった。    浮いたお金は、誰が食うか。   「今の時代、塾に行かないと将来がないですよ?」    答えは、新しい常識を作った者が勝つ。       「教育にお金をかけない国に未来はない!」   「もっと未来に投資を!」   「国は何もしてくれない!」    そして家計簿は常に赤い。

How do you get off work headed to b to be about unplug

Edger go to ballet people will be changed to blue Cardi B tabulated data LaBonte bit but I’ll repeat that to drive to Pizza Pro partner Petit at crooked Lake portobello by DJ top 3BTBDBTW meditate and record to be Puerto Rico to be put prepare to be dead for a cut you be better about your dad and we’re good to be bad with a detective busy day crack HEB but we did it at Kroger to be battery pediatric her to be but probably did it and it will go to robotics Pettigrew Carter babysitter probably did it extra good to be bad will be dead trigger to bed Ruby Dee Dee and truck to be ready be ready did that really did it at work at a big boat property bit broker to be better prepared detective by the day until I go to bed property with a property that located but Robbie dead and you’re a good boy prepared we get regret the battery dead it will go to paper provided education bed Ruby did that at work at a big battery PDB through could be better How do you go to the Hā’ena Beach locate the better because every detail probably be dead forever to be dead repeat the potato patty be dead body dead body be dead at Kroger to be both will be the day to quit it with both potato probably did it repeat TV did I probably did that it will go to the bathroom with a digital body be dead but I did it ability to get into a good report but it better be the death of Eddy pediatric OTB bought Ruby did it and I got to put radiator practically dead broke her TV but we did it and you look at your big birthday Patty potato Peggy DiPietro but we decorated it actually go to bed but rugby with 80 but we did it crack of paper to Robbie ditch and forgot a big bottle of veggie platter of Egypt brokerage big butt and your casual but which one by DJ property but it will be the death trooper today and tomorrow possibly put Ruby didn’t record it got power did it and played

神様は見ている

「神様は、皆を見ているんだよ」    幼馴染にそう言われてから、私は恐くなった。  着替えの時も、トイレの時も、お風呂の時も、覗かれているということだろうか。    更衣室にも、トイレにも、お風呂にも、天井はあるし壁はある。  見られるはずはないが、もしかしたら神様は天井や壁を透視できるのかもしれない。  私は、着替えの時に巻きタオルをつけるようになった。  トイレはオムツで、お風呂は水着だ。    これで大丈夫。  神様が透視をできたとしても、私の裸が見られることはないだろう。  私が安心していると、幼馴染が申し訳なさそうに話しかけてきた。   「ごめんね、お風呂で水着を着るくらいに不安がらせちゃうなんて。実は、神様はいつも、皆を見てるわけじゃないんだ。着替えてる時やトイレに入ってる時は、ちゃんと身ないようにしてくれてるんだ」   「そうなの!?」    私は安心して、いつも通りの生活に戻った。  ああ、解放感。        でもなんだろう、何か引っかかるような。

プールのなかの金魚(BL)

 寝苦しくて目が覚めた。  遠くで蝉の鳴き声が響いている。  いつのまにかエアコンのタイマーが切れていたようだ。リビングの床で仰向けになったまま、天井を見上げた。  午前中、ふたりでプールに行った。水泳のあとの気だるい疲労感。どうしてみずの中で遊んだあとはこんなに眠気を覚えるのだろう。  からだを動かそうとして、首を左に捻ると、すやすやと眠っている兄の姿が見える。起き上がろうとして気づいた。左手がしっかりと兄に握られていた。  ──手を離すとお兄ちゃんが起きてしまうかもしれない。  兄は、すうすうと寝息を立てている。  手を握ったまま、遙は兄の顔をじっと覗き込んだ。  こどもながらすっと通った鼻梁が美しい。  小麦色に日焼けした肌はつやつやとしていて張りがある。みずを落とせば玉になって弾きそうだ。繋いだ手の腕の、金色の産毛をそっと撫でてみた。顔を近づけるとプールの匂いがした。  部屋の温度が上がってきたようだ。  兄の額にうっすらと汗が浮かんでいる。  遙はエアコンのリモコンを探したがテーブルの上にあり、ふたりの位置からは立ち上がらないと触れない。  ──困ったな……  何気なくあたりを見回すと、ちょうど手の届くところに団扇を見つけた。  寄り添う二匹の金魚を描いた和紙が貼ってある。絵をちらりと見ると、竹で出来た柄の部分を取り、ゆっくり仰いだ。  薄い胸が上下に動き、気持ち良さそうだ。緩くカーブした長い睫毛。微かに開いた唇。白い歯が見えないかとじっと見つめる。遙はしばらく飽きもせず兄の顔を眺めていた。  その時兄がぱっと目を開けた。 「あ、手……?」  強く握られた掌は汗でぐっしょり濡れていた。  寝起きのぼんやりとした頭で困惑気味の、兄の表情が可笑しかった。

ついに!!

みなさん・・・・ついにわたくし推しのこと大好きだよ。は・・・・ 多分知ってる人は多い 2年前からやりたかったエブリスタという小説投稿サイト新たに始めました・・・!! あ、うれしい、 涙出そう ここの小説投稿サイトももちろんやり続けますのでそこのところは安心してください。 自分が前に投稿した「天使」という作品の リメイク版も投稿しております!! プロフィールにリンク貼っておくのでぜひ見てください!!

黄金色のお菓子

 焼き色こんがり黄金色。  きっと中身も美味しいはずだ。   「黄金色のお菓子を持ってきました!」    我が家では、黄金色のお菓子はごめんなさいするときの定番品。  とっても甘くて、とっても綺麗な、最高のお菓子。  お父さんがお母さんにごめんなさいするとき、いつも作っていた。   「ほほう。黄金色のお菓子か」    悪い顔をしたお兄さんは、にんまりと笑ってお菓子をうけとった。  お菓子の入った箱を上下に動かして、重さを確認してる。  お菓子の入った箱を左右に動かして、音を確認してる。    変わった楽しみ方をするお兄さんだ。  食べて美味しいお菓子なのに。   「仕方ねえな。許してやろう」  お兄さんはお菓子の箱を振って満足したのか、にこにこ顔で許してくれた。   「ありがとうございます!」    ぼくも、にこにこ顔でお兄さんの家から出ていった。  お父さんとお母さんに報告するんだ。  ちゃんと許してもらえたよって。   「ちっくしょおおおおお!?」    帰る途中、お兄さんの家の中から大きな声が聞こえた。  どうしたんだろう。  黄金色のお菓子を落としちゃったんだろうか。

赤かった君の顔

「一年おつかれ!かんぱーい!」 今日は塾講師たちで打ち上げだ。 今年の六年生が皆受験を終えたので居酒屋にみんなで飲み会に来ている。 各クラスの先生たちが生徒自慢をしている。 特進一クラスの津田くんがどうだとか、普通2クラスの松森さんがどうだとか。 私の番になった。 「えと、特進四クラスの塩原さんがテストで全国5位をとりましたね。今年は」 適当にあったことを言って次に回す。 そして、やっぱり六年生はすごいね、と。 「じゃあ、俺帰ります」 特進2クラスの藤原先生が言った。 そしてぞろぞろと帰っていく。 最後に残ったのは私と、幼馴染で同僚の裕太だけだ。 ちょうどそこで電話が鳴る。母からだった。 「なになに、彼氏?」 電話に出終わったあと、裕太がやけにニヤついてこっちを見ていた。 「べ、別にそんなんじゃないから!」 その会話をきっかけに、私達の話題は恋愛になった。 昔好きだった人とか、彼氏いない歴とか。 「そろそろ俺達の年齢だと婚期だな〜」 「ぷっw裕太、早く彼女作らないと婚期のがしちゃうぞ〜w」 「うるせぇ!」 しばらく笑ったあと、沈黙が続いた。 そして裕太がぽつんと言った。 「もう、俺にしとけよ。」 「は?」 嬉しかったはずなのに、何故かそんな言葉が出た。 それを言ったあとの裕太の顔が赤かったのは、アルコールがまわっていたからだろうか。 いや、絶対にそうだ・・・! それから数年たった頃。 私は彼の名字を貰うことになりましたとさ。

明日

 虚空に向けて手を伸ばす。そこに在る何かを掴むために。  もしかしたら、その先には何もないかもしれない。それでも、諦めなければきっと取り戻すことができると、そう信じている。  だから私は宇宙(そら)を目指す。折れた翼を羽ばたかせて、失われた未来を求めて。  かつて、この世界は終わりを迎えた。人々は偽善と裏切りによって未来を掴む術を失い、廃れた過去が形として残った。  空の色も、私の足も、何もかも。  失意のどん底に落ちた私は、死を願った。 これ以上生きる意味を見いだせないと。  だが、天は私を見捨てなかった。  義足。その存在で私は再び立ち上がれた。  故に、私は諦めない。  たとえ、悪意でこの世界を滅ぼそうというものがいても、私の道しるべに不可能の文字はないから。

人の金で焼肉が食いてえ!

 財布をひっくり返す。  出てきたのは、百円玉二枚と、十円玉四枚。        ピッ。    ガコン。    ゴクゴク。        俺は、百円玉一枚と十円玉一枚を財布に戻した。  そして、天を仰ぐ。    視界に入ってきたのは、夜空を明るく照らす看板たち。  焼肉という文字を見るだけで、口の中に唾液が溢れてくる。   「人の金で焼肉が食いてえ!!!!!!」    俺は叫んだ。  周りの人間が驚いて俺の方を見るが、知ったことか。  他人のことを考えてる余裕なんてない。   「いいよ」    すると、奇跡は起きた。  どこの誰ともわからない男が、俺の前に笑顔で立っていた。   「え、人の金で焼肉食っていいんすか?」   「いいよ。ぼくが奢ってあげよう」    言ってみるもんだ。  ぼくはその人の後をついて行き。焼肉屋さんへと入った。   「カルビとロースとハラミとタンと」   「塩とタレは」   「両方一皿ずつ下さい!」    目につくメニューを片っ端から頼めば、しばらくすると目の前に肉の草原が広がる。   「いただきまーす!」    俺は肉を焼いてかぶりついた。   「うめぇ!!」    人の金で食う焼肉はうめえ。  自分で稼いだお金で食べるご飯は旨いだろうと言う大人はいるが、努力せずに食べるご飯の方が旨いに決まっている。  努力や手間暇をかけたらご飯が旨くなるなんて幻想だ。  そうであれば、大人はみんな手間暇かけて、自分で料理しているはずだ。  美味しい料理に努力は不要。  しいていば、美味しい料理を出すお店を見つけることに、努力が必要なのだ。   「美味しそうに食べるね。ぼくも、奢ったかいがあったよ」    はふはふ食べる俺に、今日の主役が話しかけてきた。  食べるのに夢中で存在を忘れてた。   「はい! ありがとうございます!」    奢られた者の務めとして、お礼だけは言っておこう。  俺は元気に叫んだ。   「いいさ」   「ところで、なんで見ず知らずの俺に奢ってくれたんすか?」   「んー、実験かな」   「実験?」   「このお店、ぼくのお店なんだ」    俺は辺りをきょろきょろ見渡す。  客は俺以外におらず、壁も床もピッカピカ。  確かに、ほとんど使われていなさそうだ。  焼肉ばかりに目が言って、気がつかなかった。   「肉には自信があるし、内装も拘った。友達も、美味い美味いと食べてくれた。でも、やはり友達だ。どうしても甘めになってしまう。そこで」   「焼肉食いてえって叫んでる俺がいた、と」   「そう。まあ、モニターのようなものだよ、美味しいと言ってくれてよかった」    むしゃむしゃむしゃ。  俺は肉を頬張る。   「じゃあ、提案なんすけど」   「ん?」   「テーブルに、コチュジャンとかニンニクとか置きません?」   「ああ!」    奢られた俺の役目は決まった。  俺の欲しい物を素直に言うこと。  たぶん、この人にとっては、一番の礼になるだろう。       「ごっそうさんでした! また来ます! 次来るときは、大流行りさせといてくださいね!」   「ああ、頑張るよ」    腹は満ちた。  心も満ちた。  俺は軽い足取りで岐路に着く。    人の金で焼肉を食うのは、いいものだ。

水層の島

 その島は水で出来た島である。 陸の表面は水で覆われており、まるで水の世界に閉じ込められてしまっように、陸を水色一色に染めている。陸の森の緑色、地面の茶色、アスファルトの灰色、何もかもが水色に塗り替えられてしまった。この島の姿は人間に発見されることはなく、穏やかにざぶーん、ざぶーんと波を揺蕩わせている。  その島の上には、魚がまるで楽しそうに泳いでいる。まだ島の上の水の層が浅いので、クジラやシャチのように大きな魚は泳いでいない。しかしながら、小さな魚たちがまるで遊び回る子どもたちのように自由に泳ぎ回っている。右から左へ、左から右へ、上と下へと、方向も自由に。ただ彼らの泳ぎを妨げるものなんて何もない。その島は、水色の幕に覆われた島であり、色とりどりの魚の彩色の幕に覆われた島でもある。   こんな島はあり得るのだろうか? 夢物語、空想の世界、確かにそうだろう。現代にこんな島は見つけられていないんだから。そう、現代には。ただ一言、言えることがあるとするならば、そんな島がある世界に人間はいないということだけだ。

恋していたのは君でした

鏡を持つ。 その瞬間、君が現れる。 胸の鼓動が早まって、君に見惚れる。 「なんて綺麗なんだろう」 ミルク色の肌にどんぐりまなこ。 長いまつ毛にキリッとした眉毛。 何回見てもやっぱり好き。 そしてある日、君の正体を知った。 それは、自分だった。 僕は鏡に向かって一生懸命に叫んだ。 自分自身に告白しに来たのだ。 「恋していたのは君でした!」

『日々の欠片』1/31『並んで咲いた赤白黄色』

「どしたの? これ」 「ん? キレイだったから」 「えー、わー、ありがとー」  花瓶どこだっけー、と彼女が納戸を探る。帰宅してすぐに渡した花束を飾るため。  花貰っても嬉しくないって人がいるっての聞いたことあるけど、彼女は素直に喜んでくれるから贈り甲斐があるというか。 「あったあった」  テーブルに花束を置いて見つけた花瓶に水を注ぎ、花束のラッピングを解いて花瓶に……活けようとして、入らなくて苦戦してる。しばらく格闘してあきらめて、こちらを見た。  少し困り顔でこちらを見る彼女が可愛くて、季節になるとつい買ってしまうその花はチューリップ。 「前にもう少し口が大きいやつ、買ってなかったっけ?」  俺の言葉に彼女が考えて、漫画だったら頭の上に電球が点いてそうなヒラメキ顔になった。  可愛いなぁって思いながら、再度納戸に上半身を突っ込んで「あった!」なにかを見つけた。  手に持つそれは、俺がさっき言った“口が大きい花瓶”だ。 「入った」  とても嬉しそうにこちらを見る彼女を見る俺の顔は、きっとだらしなく緩んでる。 「春って感じ」 「ね。最近あんま、外でも見なくなっちゃったけど」 「確かに。でも可愛いから嬉しい」  笑顔で花を眺める彼女の隣で、俺も一緒になって眺める。うん、やっぱりこの色で正解。 「赤白黄色で並んでると、なんか子供の絵みたいだね」  彼女が笑いながら言った。 「ほんとだね。クレヨンで模写してみようかな」 「クレヨンなんてあったっけ」 「ない」 「じゃあ無理じゃん」  他愛のない会話をしながら、楽しく笑う。やっぱりずっと、一緒にいたいな。 「これからも毎年買ってくるね」  ほんのり未来をほのめかしたら 「期待してます」  彼女はふふっと笑った。

天悶薄命捜索論

 2週間分の食べ物を買い込んでアパートに帰ると、隣の家の女の子がドアの前で外を眺めていた。暮れなずむ世界の地平線は紅く、空は濃い青だった。夕日に向かって歩いきたのに、僕はこの美しい薄明に気づかなった。ずっと寒くてうつむいていた。  彼女は小学3、4年生だろうか。よく父親といるところを見る。苗字は高橋なのは知っているけど、下の名前までは知らなかった。こうしてじっと彼女のことを見たのはこれが初めてだった。変に大人びた雰囲気をまとっていた。思えばこうしてアパートの廊下で見かけることが多い気がする。 「綺麗な空だね」  余計なおせっかいだろうか。もう数分もすれば日が落ちようとしていた。 「そうですね」  当たり前のように返事が返ってきて、言葉が詰まった。彼女の母親を見たことがないことを思い出した。 「部屋に入れないの?」  僕は隣の部屋のドアを見る。カギっ子でカギを忘れてた。それが一番しっくりする答えだった。僕もカギっ子だった。 「学校行ってないので」 「ん、ああそっか」  手すりに両腕を突っ伏すようにかけながら、彼女はじっと何もない空を眺めていた。空中に吊るされた幽霊と話しているように見えた。僕の言葉は彼女の耳に届き、返事を彼女は目の前の幽霊に話す。僕はそれを盗み聞きしてまた話しかける。 「お兄さんも学校行ってないですよね」 「僕は大学生だから、わりと自由なんだ」 「大学、行ってないですよね」 「そうだね。行ってない」  手が冷たくなって、ビニール袋を持つ手が痛くなってきた。頬に指を当てると、指の冷たさが際立つ。ビニール袋を持つ手を変えて、僕は彼女の隣の手すりに寄りかかった。 「外にいて寒くないの?」 「家の中の方が寒いから」  僕は何と返せばいいのか分からず、曖昧にうなずいた。小学生の女の子相手に返す言葉が見つからないなんて、僕も彼女と同じようにまだ大人ではない何か。 「絵、描くんだ」  僕は彼女の足もとに無造作に置かれたスケッチブックと鉛筆を見つけた。それは人見知りのモノクロ写真のように彼女の影に隠れていた。 「わかるの」  彼女の言葉には疑問符がなかった。濃淡なく空の色を塗っていくような声。僕はうなずいて、それから 「僕も描くんだ」  と言った。 「そういう大学」  筆をさっと走らせるように彼女は言う。 「違う。大学ではコンピューターについて学んでた。javaだとか深層学習だとかフォン・ノイマンだとか」 「そうなんですね」  描き終えた絵をぽいっと捨てるように彼女は言った。僕はそれを目で追う。 「それ、見せてよ」  足もとのスケッチブックを僕は指でさす。彼女はスウェットパンツに上は薄いジャンパーを羽織っていた。そのジャンパーをカサカサと鳴らしながら座り込み、スケッチブックを拾う。パンパンと軽く叩き目に見えない砂を払い落とした。 「さっき描いたやつ」  そう言ってぱらぱらとページをめくって僕に差し出した。 「ありがとう」  そこに描かれていたのは白黒の天使だった。正統的な羽と輪っかを持ち、薄ら慈愛を感じる微笑。小学生が描いたものとは思えないほど美しく、そして強く訴えるものがあった。その天使は自らの光輪で首を吊っていた。 「どう」 「僕より上手いよ。才能あると思う」 「そう?」 「うん。僕、作品を見る目はそこら辺の人よりはあると思う。ネットにあがってる絵に頭の中でケチつけて回ってるから」 「他の絵も見る?」  僕はうなずいた。  ・・・  それから彼女は父親がいない平日――なぜか決まって夕方だった――に僕の部屋に来るようになって、ふたりで絵を描いては見せあった。そこに冬の冷たい空気を震わす言葉はなくて、あるのは薄明かりのような互いの創作論だけだった。  絵を描くことだけでしか僕らはコミユニケーションを取ることができなかった。昨年描き始めたばかりの僕はまだまだ上手くいかず、よく彼女に「へたくそ」と言われた。僕はただそれが嬉しくて、彼女に進んで絵を見せた。彼女も僕が絵を褒めると、満更でもないような顔をよくそっぽに向けた。  その冬、僕らは何かを見つけようと必死になって絵を描いた。  しかしそんな僕らの時間は長くは続かない。彼女は4月の進級のタイミングに合わせて引っ越してしまった。理由は父親の転勤と彼女が新しい学校に通うためだという。

『日々の欠片』1/30『合理的求婚』

 彼はいわゆる“ケチ”だ。  遠く離れて付き合う私たちの交流は、毎日無料でできる3分間の通話だけ。  彼曰く、アプリを使った無制限の無料通話は「なんか違う」のだそう。  彼の出向初日から始まった時間制限付きの電話は、彼が仕事の都合でこちらに戻ってくるまでの3年間、毎日続いた。  彼がこちらに戻ってきた日、久しぶりに会って一緒に食事をすることになった。彼にしては奮発してくれた、高級レストラン。私も久しぶりに会えるからって、ここ数年で一番ってくらいおしゃれして行く。 「なんか痩せた?」  開口一番、彼が訝しげに言う。 「うん、痩せた。ダイエットした」 「あぁ、そうなんだ。それはお疲れ様」  あんたのためだよ、と思うけど言わない。きっと『そんなの頼んでない』とか言われてイラッとするから。  彼には行間というか余韻というか、そういう“察する”能力があまりない。付き合ってきて嫌ってほどわかったから、最近は全部言うようにしてる。  それでも気遣って言えないこともあるんだけど、彼はそんなのお構いなしだ。  なんで好きなんだろう、私。  3分間の電話中にも思った。3分しかないんだから、そんなのいいじゃん、って。とかく理由がハッキリしていないと気持ちが悪いんだそう。  友達に話すと高確率で『そんな気難しそうな人、私やだ』って言われる。うん、私もヤダ。でも好きなんだよなぁ。  目の前にいる彼をこっそり見つめて、胸の高鳴りを確認する。うん、好きだ。  二人で楽しくフルコース料理を堪能して、食後のデザートと彼はコーヒー、私は紅茶を楽しむ。 「そういえば、こっちで住む家、決まったの?」 「いや、まだ。別に社宅でもいいんだけど、家に帰ってまで会社付き合いするの、気が休まらないなあと思って」 「そっか。うちから近いとこだと助かるな。やっぱり毎日喋るのが3分だけだと、ちょっと」 「あー、うん、そうね」  彼はなにか奥歯に物が挟まったような言い方をした。 「なに?」 「そっちのさ、更新っていつぐらいだっけ」 「来年の3月くらいかな?」 「あー、そっか。うん、そうだよね」  相変わらずハッキリしない、彼にしては珍しい回答。 「なに」  さっきよりもつい強い口調で聞いてしまう。彼の性格がうつってしまったみたいだと感じてこっそり反省していたら、彼が意を決したように口を開いた。 「……なんかさ、色々もったいないから、一緒に住まない? で、問題なければ、結婚、しよう」  久しぶりに会った上にせっかくのプロポーズなのにそんな言い方ある? って言いそうになったけど、彼の照れた顔に気付いて苦笑した。そうだ、こういう人だった。  時間を決めないで電話すると、切るタイミングがわからない、と付き合う前に言っていたし、無料通話を使おうっていうのも、きっと色々考えた末の妙案だったんだろうし。 「うん、そうだね。うち帰ったら、家探す?」 「うん。指輪も探すか」  まだそこまで承諾してないんだけど、まぁいいか。  窓の外に見える五分咲きの桜を見て嬉しそうにする彼を見て、私の顔もほころんだ。

起承転結

いつも思うの。あなたの作品って面白いけれど、起承転結がないわね。 ──そうでしょうか。これでも起承転結は考えて作っているのですが。 今読ませてもらったのもそうよ。「起」、「承」、「結」は.....まあ分からなくもないわ。でもね、「転」だけは分からないの。登山をしている2人が、ただ会話をしながら歩いてるだけで終わってるわ。これのどこに「転」があるの? ──ちゃんとありますよ、よく読んでみてください。結構分かりやすく展開が変わっているでしょう? 意地悪ね。普通に教えてくれてもいいじゃない。まあいいわ。どうせ暇だし探してあげる。当たったら何か奢りなさい。 ──この程度で奢らされるのですか。素直に言わなかったことを後悔しますね。教えましょうか。 冗談よ。すぐに見つけてみせるから待ってなさい。.....それにしても一直線を書いたような作品ね。もっとグネグネしてみてもいいんじゃないかしら。 ──貴方はたまに分かるような分からないような例えをしますね。 その言われようは嬉しくないわね。私の言いたいことは伝わっているのでしょう? それなら問題はないわ。今は探すのに必死であなたとの会話に頭を使えない.....あ。 ──あ、見つけましたか? あなたこれ。まさかこの「疲れて歩けないから休憩しましょう」 って部分じゃないわよね? ──正解です。見つけることが出来たじゃないですか。分かりやすでしょう? ふざけているのかしら? ──いいえ? あのね、「起承転結」 の「転」 って大事なイベントが発生しするところなのよ。いわばメインの部分。それなのにこの作品は疲れて休んでるだけじゃない。どこが「転」 なのよ。これは「承」よ。何も起こってないわ。 ──いいえ、登山中に疲れて休んでいるので「転」ですよ? 実際、休憩中の方が2人の会話が弾んでより仲良くなっているじゃないですか。.....酷いなあ。貴方は1番の読者なのに、それに気づいてくれないなんて。酷いなあ。 2度も言わないで。言いたいことは分かるけど、メインイベントとしてインパクトがないのよ。いえ、このままでも面白い作品よ。私は好きだわ。でも他の人に見せたら味気ないと思われるんじゃないかしら。 ──味気なくていいんですよ。そういうお話を作るのが好きなんです。それに貴方に好きと言ってもらえるのであれば、書き手冥利に尽きます。 そ、そう。まあ、あなたがこれでいいと言うのであれば私はいいのよ。ごめんなさいね、ちょっと気になっただけなのに色々と失礼なことを言ってしまったわ。 ──気にしないでください。前はこのインパクトの無さに悩んではいたのですが、結局はこの書き方に落ち着いたので。 あら、最初からこの作風じゃなかったのね。 ──はい。「起承転結」をじっくり考えながら作っていると、どうしても「転」で何か凄いことをしなければ、と考えてしまいまして。例えば、今貴方に読んでもらった作品だと、「休憩する」ではなく「足を滑らせて今にも崖から落ちそう」とかそういう考え方になるんです。それはそれでいいのかもしれませんが、全体を見ると「転」だけ雰囲気が合わなくなるんですよね。だから「起承転結」は考えるけど、真剣に考えるないようにしているんです。 なるほど、ちょうどいい所が分からずに行き過ぎてしまうのね。全体の雰囲気、そこまで考えていたとは.....いえ、これも失礼ね。 ──失礼ですよ。 わ、悪かったわね。これからは大人しく作品を楽しませてもらうだけにするわ。 ──冗談ですよ。いつも感想だけ頂いて解散していたので、こんな風に長くお話できて楽しかったです。さて、行きましょうか。 あら、もう帰るの? 確かにいつもより長く話していたけど、せっかくだからこのまま残ってお話しない?それともやっぱり気に障ったかしら。 ──貴方からそんなお誘いがあるとは嬉しいですね。安心してください。まだ帰らないですよ。数分前の会話を覚えていますか?ほら、早く行きましょう。 数分前?あなたの作品の事を話していたじゃない。 ──ええ、ですから.....正解した貴方に飲み物でも奢ってあげますよ。お話の続き、たくさんしましょう。

限界集落の終わり

 小学校の全校生徒数は、五人。  ぼくの住んでいる場所は、限界集落と呼ばれるらしい。  まだ、社会で習ってないので、どういう意味かは分からない。    限界が無理って意味で、集落が人の集まる場所って意味だから、たぶん人が集まるのが無理な場所ってことだろう。    正直、不便を感じることはない。  スマホがあればSNSはできるし、本が欲しければお隣のおじさんが取り寄せてくれる。  お米も本も取り寄せてくれる、すごいおじさんだ。  テレビを見る限り、都会にはそんな店なさそうだから、おじさんはとてもすごい。    東京。  ちっとも憧れない。  スカイツリーってのがすごいらしいけど、うちの山の方が高い。  浅草ってのがすごいらしいけど、うちの家も同じくらい古い。  渋谷ってのがすごいらしいけど、渋谷の人以上にうちには動物たちがいる。  ああでも、喫茶店ってやつは欲しかったあ。  ジュースの上に、絵を描いてくれるらしい。  好きなアニメのキャラを、描いてほしかったな。        今日もお葬式。  ここ数年で、向かいのおじいちゃんや裏山のおばあちゃんが亡くなっている。  ずいぶん年寄りだったから仕方ない。  よく遊んでくれたから悲しい。   「ねえ、お引越しをしようと思うんだけど、どうかしら?」    ある日ママが、そんなことを言ってきた。   「どこへ? 皆で?」    ぼくの言葉に、ママは首を横に振る。  引っ越すのは、ぼくの家だけらしい。   「やだ! 皆と別れたくない!」   「ちょっと早まるだけじゃない」    ここには、高校がない。  ぼくが高校生になる頃には、遠くの町に引っ越すという話は、ずっと聞いていた。  でも、高校生まだあと何年もある。   「たった数年の違いじゃない」    違う。  数年も違うんだ。        しかし、子供ができることなんて、たかが知れている。  ぼくは、結局引っ越した。  何年も何年も、故郷には戻らなかった。  スカイツリーをデートの行先に提案できる程度には都会に染まった。   「ただいま」    ぼくが戻ったのは、二十を超えてからだ。  電車とバスを乗り継いで五時間以上。  ぼくは久々に、故郷へ足を踏み入れた。    ただでさえ少なかった家は、半分ほど廃墟と化していた。   「おおー、あんた、おやー、おーきゅーなって」    守り神と勝手に読んでいた、いつもベンチに座っているおばあさんが、話しかけてきてくれた。   「よく覚えてたね」   「あたりまえりゃー。みんな、おぼえとりゅよー」    同級生たちは、一人もいなかった。  皆、外に出たらしい。  ぼくの故郷は、ぼくが生きている間に人口がゼロになり、消滅することが確約されていた。  誰も、戻ってきたりしないのだから。   「ねえ、空き家って入ることができるかな?」   「あー。えーやろえーやろ。怒る人、誰もおらんって」   「だよね」    消滅が裂けられないのなら、せめてずっと、形を残そう。  ぼくは、特殊なカメラを取り出した。  写したものを3Dとして、オンラインの世界にデータ化できるカメラだ。  いわゆる、メタバース。    ぼくは、写真を撮り続けた。  人が住んでいる家は、許可をもらって撮らせてもらった。  細部の細部まで、データを残す。        故郷は滅んだ。  限界集落の言葉通り、限界を迎えたのだ。    そして、ぼくも年を取った。  毎日のように体が痛み、ぼくも限界を迎えつつある。   「ああ、今日もいい天気だ」    ぼくは最近、メタバースの世界に入り込み、ぼくの故郷を歩いている。  最期は、故郷で迎えたいと思ったからだ。    もう、誰もいない。  同級生の訃報は、全員分受け取った。    ぼくが最期だ。  僕が死ねば、完全に故郷はなくなる。   「ああ、今日もいい天気だ」    手を伸ばしても触れられない、ぼくの故郷。  世界で一番の場所を、ぼくは眺め続けた。

仮面夫婦

僕はため息をついた。 またあの家に帰らなければならない。 いや、他に帰るところがあるから行かなければならないの方が正しいだろうか。  憂鬱な気持ちのままガチャっとドアを開ける。  玄関で靴を脱いでふかふかの廊下を歩いてリビングへと入った。 奥ではトントンと包丁の音が鳴っている。妻が夕飯を作っているようだった。 目線を下へと向けると大きな犬が寝転がっている。うちの飼い犬のポチだ。 今までに何度か犬を飼ったことがあるが、妻が名付けるのはいつも決まってポチという名前だった。  たまには違う名前にしようと提案をしてみたこともあるが、犬は絶対ポチと頑として譲らなかった。  僕がリビングでくつろいでいると妻が料理を完成させて持ってきた。  今日はシチューよといつも通りの言葉を並べながら置かれたのは茶色いシチュー。  妻の料理はとても不味くて味わうなんてことはできない。最近はもっぱら余所で腹を膨らまして帰っては、妻に見つからないように捨てる。  今日もまた茶色いシチューを捨てた。  食事を終えて妻と今日あった出来事を話すのがなにより辛かった。嘘で塗り固められた僕の話を妻は笑顔で相槌を打ちながら聞く。  妻は僕の嘘に確実に気づいていた。  そうやって過ごしていると家の外から大きな声が聞こえた。 「みんな~!そろそろお部屋戻るよ~~!!」  ポチは真っ先に立ち上がり駆けていく。  僕と妻も立ち上がって砂を払う。  友達になった妻が今日は良かったよと笑う。  でしょ?って得意げに返した。