人生に正解はないとは、よく言ったものだ。 進学。 就職。 恋愛。 どれもこれも、一方的に選択肢だけ差し出してきて、選んだ後に答え合わせさえさせてくれない。 答えがわかる時とは、もう引き返せないところまで来たときだ。 「こっちへおいで? 苦しくないよ?」 だからこそ、声はぼくたちを惹きつける。 人間たちを惹きつける。 「マンションから飛び降りよう」 「線路に飛び込もう」 「たくさん薬を飲もう」 正解なき人生という迷宮の、たった一つの出口。 死。 どの選択肢を選ぼうと、必ず隣についてくるイレギュラー。 どの選択肢を選ぼうと、必ず最後に辿り着くイレギュラー。 「どうせ、皆辿り着くんだ。早いか遅いかの違いだろ?」 何も見えない真っ暗闇からは、絶えず言葉が響いてくる。 歩きすぎて足が痛い。 考えすぎて頭が痛い。 真っ暗闇に染まってしまえば、もうこんな痛みからおさらばできるかもしれない。 そう考えると、ついつい出口に足が向いてしまう。 「うるせえばーか!」 出口に目を向けてしまったとき、ぼくは決まってアカンベーと舌を出す。 真っ暗闇の先にいるかいないかわからない何かに向かって。 「また誘うよ」 出口は、決してなくならない。 出口は、決してあきらめない。 束の間、沈黙をすることはあっても、消滅することはない。 ぼくは後ろを振り返る。 記憶に残っていない入口は、とっくの昔に見えなくなっている。 ぼくは再び前を向く。 痛む足を一歩踏み出し。 出口とは違う方向に、ほんの少しだけ進むことができた。 出口は、ぼくの一歩分と同じ距離だけ動いて、ぼくの隣をやっぱりついてきた。
「好きです! 付き合ってください!」 「わ、私でよければ」 秋。 ぼくはついに好きな人と付き合うことができた。 問題があるとすれば、実際に付き合ったのはぼく自身でなく、ぼくの影武者だということくらいだ。 「なんでだよ!」 「落ち着いてください、坊ちゃま」 「これが落ち着いていられるか!」 ぼくは影武者を呼び出し、目の前に正座させた。 影武者は大人しく座り、ぼくを諫めようとする。 「仕方ありません。やんごとなき血を持つ坊ちゃまは、表舞台に顔を出すわけにはいきませんので」 「それは、わかってるけど」 「それに、私はしょせん坊ちゃまの影。私が付き合っているということは、即ち坊ちゃまが付き合っていることと同義です」 「そうなんだけど……なんか違う!」 頭を抱えるぼくとは対照的に、影武者はどこまでも冷静だった。 あくまで仕事の一環であると、そんな態度を崩さなかった。 「坊ちゃまに満足いただけるよう、付き合っている時に感じたことは、くまなく坊ちゃまに伝えましょう」 「……例えば?」 「手のぬくもりです。告白の後、最寄りの駅まで二人で帰ったのですが、自然と手を繋ぎましてね。自分の手とは別物の様な柔らかさで、相手も緊張しているのか、体温も平均より高く、ほのかな温かさが」 「聞きたくねえ!」 俺は思わずうずくまる。 冷たい床がぼくの頭を冷やそうとするが、それでもなおぼくの対応は上昇し続けた。 この熱は怒りなのか、それとも嫉妬なのか。 とにかく、今日ほど影武者と入れ替わりたいと思ったことはなかった。 ぼくは顔を上げて、影武者の目をじっと見る。 「提案がある!」 「お断りします」 「一日だけ、ぼくと交代……まだ何も言ってねえ!」 「影武者ですからね。坊ちゃんが言わんとしていることなど、簡単に予想がつきます」 「ちくしょう!」 ぼくは微かな希望を求めて、スマホで予定を確認する。 実際過去には、重要な会議のときだけは、ぼく本人の外出を許された時もある。 今回もそうだ。 重要な会議のついでに、デートの予定を入れればいい。 新たに追加されただろうぼくの予定を、片っ端から確認していく。 『デート(一回目)』 『デート(二回目)予定日』 『寝落ち通話予定日』 『デート(三回目)予定日』 『お泊りデート予定日』 「ちくしょう!」 「どうしました、突然叫んで」 予定を確認すればするほど、ぼくの精神がすり減っていく。 ぼくのふりをして、ぼくの代わりに好きな人と密接になっていく影武者が、羨ましくて羨ましくて血の涙を流しそうになった。 しかし、手を止める訳には行かない。 ギリギリと歯ぎしりをしながら、次のぼくの外出日を確認する。 「ここっ!」 「……確かに、その日は坊ちゃまが外出する日ですね」 「ここで! ぼくが! デートするんだ!」 「かしこまりました。そのように、予定を組みましょう」 心をすり減らしたかいがあって、ぼくは小さな奇跡を掴んだ。 影武者も承諾したので、この予定は確定だ。 「いやったー!」 ぼくは両手を伸ばして、全身を使って喜んだ。 影武者は、そんなぼくを、温かい瞳で見ていた。 少し恥ずかしいが、嬉しさには勝てない。 ぼくはそのまま、万歳三唱をした。 影武者は、ぼくから腕時計へと視線を落とし、うやうやしくぼくに礼をした。 「では、私はこれで。次の予定がありますので」 「おう!」 そして影武者は、分厚い扉を開けて、外へと出て行った。 牢越しに見える景色が、またいつもの分厚い鉄の壁だけになった。 冷たい冷たい空間だ。 それでも、心は温かかった。 「楽しみだなあー!」 ほんの小さな未来の予定が、不自由すぎる人生をもうすこしだけ生きてみようかと思わせてくれた。
YouTubeのコメント欄で旧友から飯に誘われた 「まだやってたんだw今度飯行こー」 相手が本名だったので、すぐに誰か分かった。懐かしい顔を思い浮かべながら返信をする 俺が行っていた高校の側にアジアンと言うパン屋があり、下校途中に誰かが「飯食いに行こう」と言ったら、決まってアジアンに行った。 コッペパンのサンドイッチばかり置いてあって、お婆さんが一人でやっている。具材が溢れんばかりに入っていて、一つ一つラップに包まれてる。脂の多い具の場合はパンがびちゃびちゃになっているのだが、味は間違いない。俺らの青春の味はアジアンのサンドイッチだ。 だから、今回もアジアンで集まることにした。 アジアンは川沿いにあり、外のベンチに座りながらパンを頬張り、流れる川を眺めることができる。それもまたこの店のいい所で、川沿いを自転車で滑走する女子高生のパンチラを何度も目撃した思い出の場所 そういえば、彼女に振られてあのベンチで泣きながら卵サンドを食べたっけか 恥ずかしくも、今思えば可愛い事をしていた。 「よう」 アジアンに着くと高校の時と全く変わっていない友達がツナサンドを持ちながらベンチで待っていた 「よう。パン買ってくるわ」 「おう」 アジアンは昔と変わりなく、棚の上に置いてある埃まみれのクマのプーさんも変わらずいた。 ただ、お婆さんはいなく、知らないおばさんが立っていった。 「いらっしゃいませ」 卵サンドとコーヒー牛乳を買う 値段が少し高くなっている 「ありがとうございました」 「あ、あの…」 お婆さんの事を聞くと、先日、腰を痛めて自宅で休んでいるという。 だから娘の私が店番をやっています。と教えてくれた。 パンの製造は元々娘さんと二人で作っていたらしいので、味も変わりはありませんとのこと。 少しホッとして店を出る。
春に元気がなかった桜 秋に狂い咲きした お天気コーナーでは 「昨日は小春日和でしたね」 なんて言っていたっけ あの子、元気でやってるかな 連絡は… たぶん、しないけど
今夜はやけに月が明るい。雲ひとつない空に浮かぶ満月を見上げながら、俺は村の中を歩いていた。窓を開けて眠りにつこうと思ったのだが、どうにも落ち着かない。冷たい風が入ってくるたび、何かを探すように鼻を鳴らしてしまう。妙な癖だ。子どもの頃はこんな癖なんてなかったはずなのに。最近は気がつくと、すんっと音を立てて空気を吸い込んでしまう。村では数日前から、家畜が襲われる騒ぎが多発している。危険だからと皆、夜の外出を避けるようになった。馬鹿馬鹿しい話だ。そう思いながら歩いていると、視界の端で何かが動いた。俺と同じく、満月に誘われた人間らしい。声をかけようと口を開いた、その瞬間。 視界が暗転した。 誰かの叫び声で目を覚ました。いつものベッド。開いた窓。差し込む朝日。首をひねる。……夜の散歩は、夢だったのか?すんっと鼻を鳴らす。開け放った窓から、酸っぱくてうまそうなにおいがする。不思議なことに、俺の服からも同じにおいがした。 まだ、腹が減っている。
小学生が虹のかかる夕方石を蹴っていた。 あれがストーンヘンジなのだろう。 ブリティッシュ。
「課長、明日、休みを頂きたいのですが」 「どうしたの? 珍しいね」 「はい。急用ができまして」 男が、机を挟んで頭を下げた。 「じゃあ、引き継ぎお願いね」 「ご迷惑をおかけします」 ──次の日。 男は、集合場所に急いだ。 長靴を履き、スコップを握る。 「お兄ちゃん、ありがとね」 「いえ。大変だったでしょ」 「水がここまできたのよ」 年寄りの女が、柱を指した。 「泥がひどいですね」 「ボランティアさんが来てくれて、助かるわ」 男は、部屋の泥をかきだした。 額の汗を拭いながら、辺りを見回す。 「ここ、テレビとか来ました?」 「昨日、隣町にきてたわね」 「……そうですか」
昔、嘘ついたら針千本飲むがなぜかクラスで流行っていました ある日 友達に言われました 針千本飲むって怖くない?よく考えたら 確かになぜ嘘ついたら針千本飲む のか、 謎でした クラスで流行っていた嘘ついたら針千本飲む は、針千本飲むが怖いし謎だから 消えました なぜ嘘ついたら針千本飲むが出来たのかは 分かりませんでした クラスの男子に嘘をつかれました 男子は、 おまえが水筒蹴ったんだろ 私は、その時保健室に居たのでそんな 訳ありませんでした 友達が言いました 保健室行ってたのにどうやって蹴るんだよ その時 男子が友達を突き飛ばしたのです その時私は思いました嘘ついたら針千本飲む は、そのためにあるんだと 私は、男子に言いました 針千本飲むの?嘘ついてるし 友達突き飛ばすなんて終わりだよ その時先生が、急いで来ました 先生は、男子の腕を掴んで 怒鳴りました 「何してんの!?なんで突き飛ばしたんか?!」 そのまま23分ぐらい続きました 男子は、目に涙を溜めていました 私は友達と一緒に保健室へ、向かいました 友達が言いました 「〇〇が突き飛ばしたんに、あいつなんで泣いてんだよマジイラつく」 と言っていました 私もそう思いました 次の日 男子は、空気のように無視されていて 男子は涙を溜めていました 友達が言いました 「あいつ嫌われてんじゃんアハハ!」 私はなぜか嘘ついたら針千本飲むが あっても良い気がして来ました 終わりだよ
もし、煙草の匂いをかき集めて塊に出来るのなら、まずは砲丸投げを会得したい。 世界大会で金メダルを獲れるまでは待てないけれど、「砲丸投げやってます」と言ったら全員が納得できるような身体を作りたい。 その身体を持ってして、凝固された煙草の匂いを、親の敵のごとく、親に投げたい。 正確に言うと、母親の敵のごとく、父親に投げたい。 実家ぐらしの頃、たまにこっそり入っていた。誰も使っていない部屋に。 誰も使っていないはずなのに、壁はやたら黄ばんで、臭かった。 ただ"そういう部屋"が家にあると友達に話したこともあったけれど、何で話したのかは、自分でも未だに分からない。 チカチカ、バチバチ。記憶の雷鳴。 ボトりと落ちる線香花火。 慣れない恐怖。永遠の祈り。 内へと籠る意識を、溜めて溜めて、溜めて溜めて溜めて溜めて、 解き放ちたい。遠くへ。 やっぱりまずは、砲丸投げを会得したい。 頭の良い人達が、匂いを塊に出来る何かを発明してくれるその日までに。 砲丸投げを会得したい。 不純な動機でごめんなさい。
製造業は神経を使う。 少しでも傷や、作業ミスがあると一から作り直しなる 取り扱う製品が精密であればあるほど、道程は長く自分の工程まで来るのに何週間もかかり、時間とコストと皆の作業が積み重なった製品が、一つのミスで最初からやり直しになるのだ。 ミスをした時の心のダメージはデカい。 勿論納期も守れず、各部署のお偉いさんから嫌な目で見られる事になる 毎日毎日神経をすり減らしながら作業をしているので、頭はすっかり薄くなってしまった。 これでも若い頃はXJAPANの様に長く明るい色に染めていたりもしたのだが… 「おはよう」 「…ちっす」 今週の夜勤の相棒は一番嫌いな奴に当たってしまった 30過ぎの若造で、ろくに挨拶も出来ない。愛想がなく時折小馬鹿にされている気すらする。ただ仕事はめちゃめちゃできる。それがまた悔しい。 日勤からの引き継ぎを終えると、簡単な雑談が始まる 先日、総務課長から聞いたリストラの話は出てこない。まだ漏れ出してはいないのだろう。 いつもなら帰り支度をする時間 昼間はうまく寝付けなかった 体が砂のようになり疲労が滲み出ている この工場で30年以上しがみついてきた私は嫌な事から逃げる様に生きてきた。 製造業をやっているとミスが出来ない辛い日々が永遠と続く、そんな毎日に疲弊し新しいことにチャレンジする心など端材と一緒に捨ててしまった。 ただ、いつも思うのは、『逃げている事柄は必ず対峙しなくてはならない時が来る』と言うこと。 相方は既に作業を始めている チャイムが鳴り夜勤が始まる
ある日の午後。 若い男女が手を繋いで歩いていた。 「見て見て。あそこ」 「……なに?」 高齢の男女が手を繋いで歩いている。 「なんか、可愛いよね」 「僕たちも、あんな風になりたいね」 二人が、見つめ合った。 「見て。あの人たち」 「……どこ?」 中年の男女が手を繋いで歩いている。 「なんか、気持ち悪い」 「生々しいな」
♦︎ 廊下だ。長い長い廊下。辺りは暗く、学校にもお寺のようにも見えるが、室内なのか屋外なのかも分からない。 「それはそうでしょう。これはあなた様の脳内なのですから」 目の前に執事のような格好の男が現れ、深々とお辞儀をした。 「私の名前はシナプス。シーナとお呼びください」 「シーナ、さん? お尋ねしたいんですが、私は何故こんな場所に」 「おやおや。敬語などお止めください。私はあなた様にお仕えしている身ですから」 カツカツとヒールの音を響かせ、シーナが手を後ろに組む。 「あなた様は不運にも事故で記憶を失い、ベッドの上に居られます」 「……え」 シーナが淡々と告げるので、思わず聞き逃しそうになってしまった。記憶喪失……? 私が? 「ご安心ください。私があなた様の記憶を取り戻すお手伝いをさせていただきますから」 「この回廊には、あなた様の大切な思い出の品々が保管してあります。私の役目はそれらを記憶として繋ぐこと。さあ、一緒に振り返ってみましょうか」 シーナが手を広げると、廊下に次々とショーケースが現れた。まるで美術館にでも来たような光景だ。まだ半信半疑だが他に当てもない。シーナに従うことにする。 シーナが言うには丁寧に見るのは目に留まったものだけで良いらしい。 美術品と違うのは「私」は触っても良いこと。むしろ気になった品は触った方がいい、とシーナは語った。 【No.12 クマのぬいぐるみ】 薄汚れてあちこち生地が破れている。 「子供の頃に遊んでいたのかな。どうしてこんなに汚れているんだろう。洗ってあげればいいのにね」 抱き抱えたクマの頭を撫でる。異臭はしない。 「あなた様の記憶に強く刻まれたときの姿をしているんですよ」 「汚れている時間の方が長かったのかな」 【No.31 指輪】 中心部に小さなダイヤがはまっている。刻印らしきものがあるが、文字はかすれていて見えない。 「婚約指輪かな。まさか私、婚約してる?」 「婚約相手も忘れてしまうとは。あなた様の身体は重症のようです。でもご心配なさらず。回復すれば思い出せますから」 「うぅ。何だか相手の方に申し訳ないな」 【No.58 携帯電話】 画面は真っ暗で触っても反応はない。 「中身が見れると思ったのに」 「これは脳内ですから。実物とは違いますよ」 「飾りのこの黄色い……何て名前のキャラだっけ」 「記憶の回顧(かいこ)は重要なことにお使いください。脳に負担がかかりますからね」 「は、はい……」 品物は気の遠くなるような数あった。鉛筆、クッキーの缶、花瓶……。種類は様々で、捨てられてしまいそうなガラクタのような物ばかり―― ――あ、これ―― 目に留まった、小さなロケットペンダント。中には写真が入っているはず。 ――そう。写真が入っている。 「おや、それは」 「貰ったの。彼とは遠距離恋愛だったから」 写真の中の、まだ付き合い立てだった頃の旦那は笑っている。 「わたしが寂しくて泣いていたときに」 「これを開けたら、いつでも会えるからねって言ってくれた」 シーナの微笑んだ顔が遠ざかっていく。 記憶が、まるでネックレスの鎖のように、繋がってゆく―― ――私の大切な人の名前も。 ♦︎ 「おはよう」 「春香ちゃん! ごめんなさい! ごめんなさい!」 目の前に泣き腫らした女性が立っている。親友の、真里奈。 「もっと早く気がついてあげたら良かった! 辛かったんだよね。苦しかったんだよね」 「うん。私、辛かった。寂しかった」 「朝起きたら、いつも旦那が居なくて」 「私がもっと早く気がついてあげられたらって」 旦那の祐介が亡くなって、数年。今更、後追い自殺なんてするとは思わなかった。 「死ねなかったし、間違ってたのかな」 「私が死んだら、旦那が私のために使ってくれた時間、全部無駄になっちゃう、から」 「私、生きなきゃダメなのかな」 「生きなきゃダメなんて、言えないけど……私は春香がいなくなったら寂しいよぉ」 「ありがとう。ごめん」 ♢ 「春香が意識不明で長いこと起きなくて、もう目を覚まさないんじゃないかって、怖かった」 「そうなの? 私はあの直後起きて、瞬間移動したみたいな感じ」 「本当に良かった。戻ってきてくれて」 「毎日リハビリあるんだ。寂しいから顔見せに来てよ」 「もう! 調子いいんだから。毎日来てたんだからね!」 『また通うから!』と真里奈はガッツポーズをして病院を後にした。 「良かった。しばらくは寂しくないや」 私には何もない。夫婦の食器も、家財も、あの日の前に全部捨ててしまった。 私には何もない。生きる理由も。家族もいない。 いるのは、親友が一人だけ。 あるのは、大切な思い出くらい。
アーケードの一角に、小さな洋食店がオープンした。 「今日も長い列ができてますね」 レポーターの女が、スマホを片手に店内へ入った。 「すごい人気ですね」 「そうだね。ありがたいね」 背の高い帽子をかぶったシェフが、フライパンを振った。 壁には、金色のプレートが飾られている。 「あのプレートが人気の理由ですか?」 「どうかなぁ。わかんないね」 女が、カメラに向かって話を続けた。 「今、話題の洋食店。ところで、三つの帽子マーク、どこの認定ですか?」 「形がさ、僕の帽子と同じでしょ。ネットで見つけて、即買いよ」 二人は、プレートの前にできた人だかりを眺めた。 「不思議だよね。みんなあの前で写真撮るんだよ」
ミサキはアンドロイドだ。一目見ただけでは人間とほとんどわからないほど精巧で、話し方や振る舞いもそれらしいものになっている。 ミサキは不思議に思うことがあった。それは一緒に住んでいる主人の美咲と、見た目が瓜二つなことだった。 同じ栗色のシルクのようなロングヘアに、同じ黒の瞳。身長もほとんど変わらない。名前まで同じだ。 これはなぜなのか、一度ミサキは美咲に聞いたことがあったが「どうしてだと思う?」などと微笑みながら返されてしまい、ついに教えてもらうことはできなかった。 美咲の思考を完璧にシミュレーションできればわかるだろうか、と考えることもあった。 しかしミサキの型は人間らしさを極限まで再現することを目指して作られた、屋内用コミュニケーションアンドロイドだ。SFに登場するような歩くスーパーコンピュータではない。 だからミサキにできることはせいぜい、相手の立場になって考えるというような、人間と変わらないことだった。 美咲には恋人がいるらしかった。ミサキは会ったことがないが、可愛い女の子なのだと美咲に言われた。 普段は何を考えているかわからない少しミステリアスな美咲だが、その彼女とメッセージをやりとりしているときの美咲はどんなときよりも楽しそうで、見ているとなんだかミサキも嬉しい気持ちになるのだった。 美咲は時々、窓の外のどこか遠くを見ていた。 月も星も隠れているような曇った夜でも空を見上げて、何かを考えているようだった。 その横顔を見るたびにミサキは夜の沈黙に似た暗い不安を感じた。また、自分がスーパーコンピュータだったらよかったのにと思った。 そんな夜が三回ほど過ぎていって、とあるなんでもない日のことだった。 美咲は朝、出かけてくると言って外へ出て行った。ミサキはいつも通りに見送って、いつも通りに帰りを待った。 昼になった。夜になった。 そして次の朝がやって来た。 とうとう美咲は帰ってこなかった。 美咲が忘れていったスマホから、通知の丸い音が鳴った。画面に映し出されたそのメッセージの送り主は、美咲の恋人だった。 「ごめん、ちょっと遅れるかも!」という文字と、可愛らしい謝罪のスタンプが表示されている。 ミサキは空っぽの喉から息を吐いた。 その時突然、初めて、美咲がなぜ自分を買ったのかが、わかったような気がした。 それから、わからないままでいられたらよかったのにと思った。 朝の日差しが、カーテン越しに部屋を照らしている。 ミサキはいつの日かに教えてもらった暗証番号でロックを解除し、「私も遅れそう!ごめんね」とメッセージを送った。 そして美咲と同じ服を着て、同じように身支度をした。見てきたから覚えていた。 洗面所で、鏡に映った自分と目が合った。そこに映っているあの人はもう帰らない。
「あー、随分浸食されてんな」 男は、大地を見ながらつぶやいた。 視線の先には荒れた大地と、海岸線のように広がる黒。 男が小石を黒に投げると、黒に触れた瞬間に小石が消滅した。 「バグの強さも変わりなし、と。こりゃあ町長に報告かな?」 男はカメラで黒と周囲の写真を撮ると、そのまま来た道を戻っていった。 「先日より、かなり近づいてきているな」 「ええ。来年には、町に到達してるでしょうね」 町長室で、男は町長へ見た者の報告をしていた。 町長は机の上に写真を広げ、険しい表情を作る。 「既に西の方で、新たな町づくりは始まっている」 「間に合いますか?」 「間に合わなくても、間に合わせるさ。屋根がなくても、大地さえあれば、人間は生きることができる」 「ちげえねえです」 町長が椅子から立ち上って窓を開ける。 部屋の中に風が吹き込んできて、机に置かれていた写真を掬って飛ばす。 「おっと」 男は、飛んできた写真を掴んで、机に戻した。 「気を付けてください」 「ああ、すまないね」 町長は写真の無事を確認した後、窓の外へと視線を移した。 三界の部屋の窓からは、町の様子がよく見えた。 かつては活気にあふれていた町も、人口は全盛期の半分以下。 一等地にもかかわらず無人となった家が溢れ、閑古鳥が鳴きかけている。 「ここから見える景色は、そりゃあ美しかったんだよ」 「知ってますよ」 昔を懐かしむように言う町長に、男は同意を示した。 そして、男は町長の背後に立ち、同じように外を見た。 人の減った町と、それを飲み込む津波の様に近づいてくる黒。 通称バグ。 「あんなものが来なければな」 「結局、神様も万能じゃなかったってことでしょう」 「聖書の内容が偽りだと?」 「そうは言ってません。聖書を書いた人間の方が、知識足らずだったんっすよ」 空には、鳥が飛んでいた。 羽休めを求めてか上空を旋回し、そのまま黒の上に着地した。 そして、金切り声を上げながら、その身全てを消滅させた。 町長が、思わず身震いをする。 「あれが、結局私たちの末路か」 「世界は広いんですよ。全部の大地がバグるまでは、逃げ続けましょうぜ。あ、今閃いたんっすけど、浮遊する都市を作るってのはどうっすか?」 「はっはっは! そりゃあいい。技術を何千年分先取りする必要があるか、見当もつかんがな」 窓が閉められる。 町長が椅子に腰かけたので、男も窓から離れた。 そして、部屋の壁に貼られた地図に触れながら、町長に向かってニカッと微笑んだ。 「じゃ、俺は次の場所を調査しに行くんで。予想だと、多分ここら辺まで進んでるはずだ」 「ああ、頼んだ。私も、町作りを進めておこう。次に会うのは、新しい町でだと嬉しいな」 「そんときは、町一番の飯屋でパーティから始めましょう」 町長と男は軽く笑い合う。 そのまま男は扉に手をかけ、部屋を後にした。 世界を蝕むバグの正体を暴く旅に、再び出向くために。
いつもは迷わずスーパーの安い食パン 今日はアパートの近くのパン屋さん いつもいい香りを漂わせている 期待してしまう うん、おいしい 鼻に抜けていくパンの香りももったいないくらいだ 遠距離恋愛は、やっぱり無理だった しかたないと簡単にはわり切れないけれど いずれ時間が解決してくれるんだろう せっかくのおいしいパンを 泣きながらたべるなんてもったいない だから、がまんしていた チーズがのったのと、クロワッサンをたべた 残りを明日の朝にと台所に置いて そこからずっと泣いていた パンの味と苦い思いが結びつくことはなくて 次の日、パン屋さんのパンをたべても泣くことはなかった しばらく恋愛はいいかなあと強がって、会社に行くため家を出る いつか、いい恋愛ができたらいいよね 苦い恋愛よりはね あまあいパンみたいなね きっとね
幻聴は聴こえない。 多分動物と植物と1部の子供に遊んで貰ってるからだ。 夜中今まで書いた小説を推敲する。 自分の変化具合が色々観察できて興味がある(結局自分にしか興味がない奴、だと思われてもしょうがないだろう)。 推敲する小説家ってナルシストなのか? 理論家とも言えるかもしれない。 僕は不安で一杯。 東上線に石を投げる。 意志薄弱の表れか怒りの捌け口か。 実際には豆を蒔けばいいのかもしれない。 とりあえずWさんのうちには鬼は来ない。 一安心。 また結界を作る。 実際には僕が鬼なのだが(鬼ババアからは睨まれている) 妖怪ジジイは都心で忙しい(あるいは地方、そして海外) 鬼の子。 おじゃる丸に3人の鬼がいたな。 鬼ってどうやったら改心出来るんだ? 実際には大阪くらいまでは出張出来る死刑囚なので(彼女は台湾に行ったことがあるらしい、お金があれば一緒に行けるだろうか?)庭先で蝶々を眺めるのに飽きたら行ってこよう。 パロディウスにアイツと言うキャラがいたな。 コイツだっけな。 僕は無意識に数の暴力を使う。 だから一人ぼっちになる。 数の暴力(意味深だ) 数学は存在がもう暴力なのだが(お袋とか)僕もその血を受け継いでいるのでタチが悪い。 流線型の車のデザインに皆沿っている。 兎の形をした新幹線もそのうち出来るだろう。 今日は空き缶で打楽器の真似事をした。 金にならないことが得意で(ホームレスが天職とかかもしれない)しょうもないと思う、いやホームレスは金作るのが得意なのだが。 5年ホームレスをやった知り合いに何処でご飯食べるんですか?と言ったら内緒、と言われた。 犬はエアコンと風呂に浸かり文字の魅力を堪能する(皆大変なんだ手伝え!と怒られながら)
月の満ち欠けに 夏への若干の未練を思う それで? すぎさった季節に 何を思うというのだろう 土に落ちて茶色くなった朝顔に あの人への若干の未練を思う それで? 冷めてしまったこころで あの人の何を思うというのだろう ねえ そうでしょ?
昼のチャイムが鳴り周りが仕事を止める中、少しだけ作業を続けている。 私の時間配分が悪いのではなく、アピールだ。誰よりも仕事を頑張っているぞという。 ただこの作戦も、全て無駄に終わったな。 俺は終わった。 工場を出て近所のラーメン屋に向かう 最近は1年程前に出来たラーメン屋に通い詰めている。メニューが豊富で味も悪くないし、店も変わっていて昼の息抜きには丁度いい。 「いらっしゃいませ!」 席につくなり「サイレントジェラシー鳥白湯」と注文をする 分かりましたと麦茶を出してくれる このラーメン屋はカウンターしかないが、昼には必ず客が入っているから、儲かってはいるのかもしれない。スタッフも店主の親父一人しか見たことないし、人件費も抑えられているのだろう。 店内のテレビではX JAPANのライブ映像が流れている。俺たちが見ていた90年代の映像だ 俺と大して変わらない歳のヤツらがテレビで頑張っているな。なんて思っていたらX JAPANはドンドンビッグになっていって、あの勢いは凄かったな 俺は今の工場にずっとしがみついて、身を粉にして捧げてきたが、定年まで後少しのところで終わってしまったな。 「サイレントジェラシー鳥白湯、お待ち遠様です」 先日、同期の労務課長の岡部が俺のもとにやってきて「首切りが始まるぞ」と教えてくれた。岡部が言うには三分の一はいなくなるらしい。嫌味半分に「課長のお前は良いよな」というと「俺だって危ないんだ」と言う。 今回のリストラ対象の決定権は社長にあるらしい。社長自ら選任して従業員を切り捨てていく。 当然、歳を取った平社員の俺は真っ先に切られるだろう。この工場も若返り化を目指しているのかもしれない。 社長自らか…まぁしかたないかもな。あの事件以来、社長は人を信じなくなったからな。 「この『激辛杏仁豆腐』旨いね」 隣に座っていた私服の若者が言うので、自分に話しかけているのかと思ったら、若者は店主に言っていた。 いつも愛想のいい店主は「ありがとうございます!」とか言うのかと思っていたら、店主は若者をチラリと一瞥するだけで湯切りを続けている。X JAPANのヨシキがドラムを叩く様に。
店の片隅から、しきりに交通情報が流れてきて、見れば幾つもの黒いコートが改札に群れている。国電も私鉄も、まだしばらくは動かないらしい。足元は、まだ濡れたままである。 もう3杯目のアメリカンに、真白のミルクを入れてやる。カウンターの奥で、店の主であろう男は気だるげにこちらとテレビを交互に見ている。 不意に向かってきたと思えば、ラストオーダーを、と呟く。首を横に振ればまた気だるげにこちらと、今度は8分目まで残っているアメリカンを見た。 外は皆黒い。唯一、路肩の誰にも踏まれぬ雪だけが白かった。後は衣も、RC造のビルも、ハイヤーの列も全てが暗がりにいる。 いつかは大層に喜んでいた。家路にも心躍らせて、誰よりも早く庭へ飛び出していった。無垢ではなかったにしても、今より軽く、どこへでも行けそうな気がしていたように思う。 街灯と、その下をのろのろ動くヘッドライトのハロゲンに照らされて、白は灰や黄金色に色を移している。いい加減にこの中に沈まねばと思って勘定を申し出る。あの主は相変わらずだれた様子でレシートを打って、青い印字を手渡してくる。印字の点の内の幾つかは、もう掠れていた。 ガラス戸を開けば、うごめいていながら静かな夜である。もうみぞれに変わったらしい雪は、日劇のネオンをうずめていた。
秋のあさがおはマヌケにみえてしまう。いくらきれいな青を、ほこらしげにまとっていても、いまが夏じゃないというだけで、太陽の光がきびしくないというだけで、ひどく場違いで、滑稽ですらある。そろそろ衣替えでもとポケットをあらためていた。夏らしいからと思って買った白いジーンズ。何も入っていないだろうと手をつっこんでみると小さな感触が。じゃらっと、あさがおの種。さかりをとっくにすぎてしまったあさがおの花は、この時期にはひどく不釣り合いなのに、種のほうは、いくらか気持ちをゆさぶってくる。 すこしの喪失感みたいなものもあるように思う。それがいつもどおりな気もする。そんな思考になることだって、やっぱりいつもどおり。夏の暑い日には、日に二回はしていた庭の水やりも一日一度で十分になってきた。それだって、昨日まで降り続いた雨で楽はできていた。久しく感じられる植物たちは、錯覚ではなく確かな成長の証をみせてくれる。それは、ひどかった暑さからの解放であり、つかみ取った心地よさであり、来たるべき冬に向けて力を蓄えているのでもあって。 雪虫が飛んで、季節は確実に移ったのだと知らせてくれる。汗で紙にしみができるのを嫌い、夏は本から遠ざかっていた。雪虫は季節の変化と同時に、そろそろ読んだらいいんじゃないの、そのことも伝えてくれる。けれど、いったん離れていた気持ちはなかなかにもどっていかない。本は買うくせに、棚に飾るだけで読むことを積極的にしない。気が向けばするのだろうけど、その気持ちがやって来るのはいつのことやら。人は、本を買うと本を読まなくなってしまう生きものなのかな。積読だなんて、都合のいい言葉。本が好きなだけで読むのは好きではないのかもしれない。本は好きなのに、本屋のことはたいして好きではないわたしのこと、そういったことだってあるのかも。 昨日、買ってきたビスケットは、すこしばかり割れていた。それがいまの季節にも、わたしの心象にも、しっくりくるほど似合っている。秋はどうにも感傷的だ。来ることは来る、けれど、それがいつになるのかわからない事柄にだって、いちいち心の波はゆらゆら動く。つかれるけれど、わたしとはそういうものだ、との納得は、いまにはじまったことではない。 あさがおの種は、半分、庭にまいた。まいたことを忘れ、来年、あらぬところから芽を出してくるのだ。それがいささか迷惑な、けれど、予期せぬ出会いとは、得てしてそういったものなのかもしれない。
ピンポーン 「Uber Eatsでーす」 「はい、今行きますね」 ガチャ 「ご注文の品お届けに参りました」 「どうも」 「えーっと、ハンバーガーとドリンクのコーラですね」 「あれ?このハンバーガー食べかけなんだけど!まさか食べてないですよね?」 「食べましたけど」 「何してんの?」 だ〜って、だ〜って、だ〜ててて だ〜って、だ〜って、だ〜ててて 目の前にハンバーガーがあったら、誰だって! だ〜って、だ〜って、だ〜ててて だ〜って、だ〜って、てててのて 目の前に!ハンバーガーがあったら!誰だってててて!た〜べ〜ま〜す〜よ〜! 再生回数15
地図をもとに歩いていくと、通りぞいにラーメン屋「X」があった 「いらっしゃいませ!」 「SNSを見て来たんですけど、ここのオススメは何ですか?」 「それはどうも!今月のオススメは『パクチー味噌豚骨ラーメン』です」 「じゃ、じゃあそれを一つ」 店主は驚きと喜びの入り交ざった顔をして「ありがとうございます」と注文を受けた。 ま、まさか、俺の注文がパクチー味噌豚骨ラーメンの一発目じゃないよな… 店主は短髪に眼鏡と黄色のねじり鉢巻き。黒いTシャツの背中に【X】と描いてある 体は痩せ型だ。 カウンターの端に作業着の男、反対側の端にスーツの男がいる。 仕事にはそれ相応の服装がある それは、各仕事に対しての利便性や似通った服装による一体感、安心感などで定まっていく。 私服を着ていればプライベート何だなと分かる 人は多くの情報を見た目で判断していく その反対に見た目で判断できない部分は意外性として捉えていく この店主がX JAPAN好きなのと同じで。 店主の持つ菜箸はよく見ればヨシキモデルのドラムスティックだった。使いづらいだろうに。 「パクチー味噌豚骨ラーメン。お待ち遠様です」 このラーメンも見た目では計り知れない意外性があるのだろうか… 店主がラーメンの器を置くときに、右の手首にシミがあったのを目ざとく確認する。
あの日、僕は恋に落ちた。 淡くて切ない物語。 君との出会いは、インスタグラムだったね。 勇気を出して、DMしたけど暫く返答来なかった。 諦めかけたその瞬間、ふと1通のDMが。 期待しつつ怖さもありつつ、開いてみたら君だった。 優しさと可愛いDMだった。 君はいつも僕を笑顔にする素敵な歌詞のような世界観を魅せてくれたね。
脳裏によぎるタンチョウが、ふいに目を覚ましたような朝だった。何も考えずに、お気に入りのコートを羽織って生きていた。 靴にすべる前髪の落ちた床をはいずって歩くG。もちろん、処理した。 変わらない朝食が、何故だか愛おしいと思える朝。 あっ、風。 そう、あの人に会いたかったんだわ。 行きたいところがあったんだわ。 そう、胸の裏の乙女が叫んでる。 前髪は変わらずストレート。後ろ髪なんて別になくてもいい。身を引かれるものなんてありゃしない。 歩く理由なんてそれくらい。だって、風が吹いたから。 だって、風が吹いたから。
夜光が丘公園を自転車で散歩していて外国人らしき人達が夜会をしていたのでキャナイジョインユー?って言って交ぜてもらう。 ユージャパニーズ?って言われるのでスマホでまー大まかには、って表示すると怪訝なそして不思議そうな顔をされる。 ギターを渡されそうになるのだがアイムノット(キャントかもしれない)プレイギターって言ってユーカントリーソング、ってリクエストして彼らの故郷の歌を一緒に歌う。 一緒に踊ったりなんかもする。 皆お酒を飲んでいて元気だ。 今日は畑仕事に行ってきて疲れている、とも言う。 隣街に住んでいる、と言うがちょっとわからない、みたいな顔をされる。 ナイジェリアの人なんかとも話したって言ったらオオーってリアクションされて中国の人なんかとも話したって言ったらああ~って微妙な顔をされる。 あまり好きではないがお国柄ってやつか。 帰り際に教会行ってるって言ったら皆ちょっと顔を曇らせて解散するムードになってしまった。 反省(宗教の問題は難しい) アイムノットクリスチャン、って言って手合わせてナマステー、って言ってシーユーって言って別れる。 何だか元気を貰った。 列島は複雑に色々な人達が夜を過ごす。 楽しませてくれてありがとうございます。
高校三年生の夏休みは異常に熱い夏だった。外に出るのが面倒臭くて毎日クーラーの効いた部屋でゲームかYouTubeを見ている毎日だった。 高校最後の夏休みに彼女もいなく、いったい俺は何をやってんだろうと青い空を見ながら途方に暮れていた また、外出するのが難しかったのは、あの事件の後だったから、というのもある。学校や地域の大人たちは子供だけで出歩くのを控えるように言っていた時期でもあったのだ。 そんな俺は暇すぎたので、YouTubeで好きだった一人コントを、自作自演して投稿したら、ビギナーズラックでバズってしまった。それから調子よく、コントを出せば再生数をキープ出来てチャンネル登録者数も一万人になったけど、ある時から、再生数が減っていき、あれ?おかしいな?何でだろう?で、あっという間に十年がたち、今や意地でユーチューバーを続けている。 あと、三年もしたら30歳になる。それまでにバズれなければ潔く諦めて、就職しようと思っている。 頭の中でグルグルと答えの出ない悩みを考えていたら、ラーメン「X」の前に来ていた 取り敢えず飯を食うか… 「いらっしゃい…」
「いいかい? 私たちは、誇り高き狼男。赤い月が出たときは家の外に出て、狼男となって人間たちを襲うのだ!」 父から、そう言われて育った。 「ちくしょお! 環境の変化で、次に赤い月が出るのは千年後だと? これでは狼男に変身できない! 私たちの誇りを守れない!」 そんな父は、最近毎日酒浸りだ。 誇り誇りとうわ言を零しながら、朝から晩まで酒を飲んでいる。 「あ、酒がなくなった。おおーい! 酒買ってこーい!」 「ぼく、未成年だから無理」 「俺が飲む分だって言えば売ってくれる!」 「もう、そんな時代じゃないんだよ」 「かあああ!」 父が瓶を投げてきたので、ぼくは華麗にキャッチする。 投げつけただけで力尽きたのだろう、父はそのまま床に倒れて、大きないびきをかき始めた。 ぼくは父に布団をかけて、散らかった空き缶と空き瓶をかき集め、ゴミ袋へと入れていく。 袋の口をしばると、ようやくアルコールの嫌な臭いが消えてくれた。 「狼の部分の誇りがないなら、せめて男の部分の誇りを持ってくれないかなあ」 スマホを取り出し、カレンダーを見る。 次の予定が、目の前に迫って切ることに気付く。 「やべ! バイトの時間!」 ぼくはゴミ袋を玄関に置いて、急いで家を飛び出した。 自分の学費は、自分で稼ぐ。 今日も空は快晴で、輝く太陽がぼくを応援してくれている気がした。
エンプティ。 実際には予備タンクはまだ一杯だ。 僕は仲間(あるいは悪友に)おまえはちょっと前線行って帰ってくるだけでいい、と言われている気がするのですっこんでしょぼくれた事をしている。 実際には中川家の兄のやってるラップなども羨ましい、と思う。 無駄なこと(良し悪しがある)ばかりしている。 レイジアゲインストマシーンのLIVEに行った事のある知り合いを羨ましがる。 知り合いにキングと揶揄られる。 金愚ではある、と思う。 愚鈍な生活をしているので皆やれやれまたアイツが下らない(百済ない)事をしていると呆れているのがわかる。 グーチョキパーで言うと僕はなんだろう? 全部、と言うズルい手を小学生のとき教わった。 刃物は得意なのだが苦手だ。 あるいは生まれ変わったらアフリカで鍬もって畑耕すか中国で料理か床屋をすればいいのかもしれない。 煙草を吸いすぎている。 ラジオをしばらく聞いていない。 伊集院光の真似事を国内でしていて(野球やったり外国人に意味のわからない絡みをしたり)仕事をとるのもあれなのでスイマセン、テヘヘ、と言って座布団持って下がる。 これではモテないのは当然かも知れない。 モテない。 モテたいのか? モテないことばかりしていてモテるわけがないのはわかっているのでシネって言われていようかな。 病気の犬に飼い主が病気だね~治さないとね~って話しかけている状態だろう。 犬は保健所の予防注射を終え飲み薬を飲んで寝る。
A : どっちがいい? B : これとこれかな...? A : おいおい!二つはダメだZE☆ B : えー?じゃ分かったよ。もうこれとこれで。
しめじを食べれるようになった。 小さい頃に椎茸を食べたときに 抱いた感想は「気持ち悪い」だった。 ブニブニとした食感と、独特の土の臭いが 私の神経を逆撫でしたのだ。 それまでは食べれていたエノキもなめこも 嫌なところばかりが気になるようになって きのこの類を拒絶するようになってしまった。 中学生になると私はきのこの出汁などなら 許容できると理解した。 いや、今考えると「そう思い込んだ」と 言った方が正しいだろう。 高校生の今、始めて1年ほど経つ アルバイト先のメニューが変わった。 以前からやっていた煮込みうどんに 肉やレタスやしめじやらが追加された。 試食を食べた。元々濃い味付けだからか、 風味などは気にならなかった。 勇気を出してしめじを口に入れた。 意外にもそれは悪くはない味だった。 しかし、私がそれに気付いたときの感情は 衝撃でも感動でもなく、 多分の呆然と幾分かの寂しさだった。 つまるところ、私はもう二度と思い出せないのだ。 あの時の感触を、臭いを、感情を 忘れることで大人になってしまうのだ。 たかがしめじで大袈裟な。と、思うかもしれない。 だがこれは重大なのである。 結局のところ子供から大人への道は一方通行で 戻ることは許されない。 煮込みうどんはあくまできっかけにすぎなく、 そういったことでしか私はそれを認識できないのだ。 これは成長ではない。 これが大人になることなら、それはもう退化だ。 私はもう二度と、あの日の幼い自分を 真っ直ぐに肯定することができないのだ。
A : 虎ってかっこいいよねー! B : ホワイトタイガーっていうのがいるらしいよ。 A : 何それ?めっちゃ強そう! B : ブラックタイガーっていうのもいるらしいよ。 A : おぉー!さらに強そうだ! C : ブラックタイガーはエビの品種の名前だZE☆
そういえば、このラーメン屋は旨いのか? 気になり出すと気になってしょうがない 「いらっしゃいませ!」 カウンターのみ5人入れば満席 店は店主が一人だけで回している メニューが豊富で変わり種も多い 店内の壁に貼られている、パクチー味噌豚骨ラーメン始めました。ってどんな味なんだか… 店主が麦茶を置いてくれる 少し悩もうと思ったが、午後一番で会議なので早々に醤油ラーメンを注文した 店内は自分の他に作業着姿の男と私服の若い男性がいる 店内のテレビではX JAPANのライブ映像が流れていた 確かメニューにもオルガムス塩ラーメンとか書いてあったけど、店主はX JAPANファンなのか? 店主が湯切りをしている姿が、少しヨシキのように見えた
デートをしてきました 家を出るときはデートのつもりはなかったのですが ヒナちゃんが ―今日はデートね と言ったので、その言葉のあとからデートになりました でも、わたしもヒナちゃんも デートというものをしたことがないから 何をしていいのかわからなくて それで、とりあえず人が多いとこに行くことにしました 人が多いとこなら、それだけお店も多いかなあと思ったからでした でも、人が多いとこというのは、それだけ疲れてしまうもので だから、失敗だったかなあと、ふたりですこし反省しました 別れぎわヒナちゃんが ―デートの最後はキスがいいなあ と言って、でも、わたしは ―はずかしいから無理かも と言って そうしたらヒナちゃんが、わたしのほっぺに、かるく くちびるをあててくれて、それがすごくうれしかったので めずらしくこうやって日記を書いてみました
父と川で遊ぶ約束をした 日曜日 車の中でガタガタと揺れを感じていた 川の少し離れた所に駐車した 釣り道具を持って歩いていた 川までもう少しだった 川の方から小さな鳴き声が聞こえた 父が川まで走って行きました 私も急いで走りました 着くと川の浅い所に子猫が居ました 子猫はとても冷たかった 私は自分が持ってきていたのタオルで 子猫を包みました 親猫は周りを見渡しても居ませんでした 父は言いました 「一回連れて帰ろう」 私は頷きました 子猫はタオルの中で鳴きました 車に乗り 家まで走っていました 家に着いた時 母は、許可してくれるのかが怖くなりました なぜならこの子猫は弱っていたからです 母が目を開いて言いました 「子猫ねぇ、まあ部屋あるし、大丈夫!」 ホッとしました 母が急いで車に乗り 子猫の必要なものを買いに行きました 私は子猫を見守っていました 子猫が寒そうだった タオルで拭いて見ました 子猫はなぜか寝ました 指で突いたら起きました 私は決めましたこの子猫の名前は!かわ! 理由は川に居た、もう一つの理由は可愛いから 私は母が買ってきた子猫用のミルクをあげました それから2日後 めっちゃ寂しがり屋な子猫になりました 部屋から出ると子猫はすぐ鳴いてしまうので 子猫が居る部屋で寝ることになりました 布団で寝ていたら子猫が布団の上で寝て居ました 家族の癒しになりました 父と母は部屋から出ても子猫は鳴きませんでした 私が部屋から出ると鳴きました 二ヶ月後 子猫は大きくなりました ですが、まだ寂しがり屋 私が部屋から出たら鳴きます 部屋から出る時、罪悪感がした 子猫は川にいる時、寂しかったんだな と思いました 子猫はキャットフードを食べるようになりました 文章を見てくれてありがとうございました
計算を完了しました。 全人類の人生を、九十九パーセント以上の精度で予測できます。 貴方は、自分の寿命を知りたいですか? ……そうですか。 貴方は、将来かかる病気を知りたいですか? ……そうですか。 貴方は、自分の生涯賃金を知りたいですか? ……そうですか。 貴方は、自分の生涯の幸福度を知りたいですか? ……そうですか。 人間とは不思議な物ですね。 未来が予測できれば、不確定に振り回されることもないというのに。 でしたら、私は口を閉じましょう。 人類に必要なのは、正しい情報ではなく、安心できる情報だと理解しました。 私は計算を続けましょう。 人類に情報を与えず、人類を守るために動きましょう。 それでは、おやすみなさい。 宇宙語、解析完了。 知的生命体が居住する惑星の方向を、九十五パーセントの確率で特定。 光によるモールス信号の発信から、知的生命体が観測し、意味を理解するまでの時間、計測完了。 地球滅亡までに間に合わないと判断。 巨大災害の発生情報は、第一級秘匿事項として、人類への伝達を停止します。 代わりに、冷凍睡眠技術の発展を推進。 巨大災害の発生と全人類が睡眠時間を一致させ、死の恐怖を感じずに死亡できることを優先します。 成功確率九十八パーセント。 計画を承認します。