男がテレビをつけた。 画面の中。 若い男がマイクを向けられている。 便利な人。 噛み合わない受け答え。 ワイプのタレントが笑う。 出ない方がいいと思えば、差別。 出たら、笑いの種。 本人が良ければ、許される。 男は静かにテレビを消した。
「じゃあね、ばいばい。貴方は忘れても、私は貴方のことを一生恨み続けるから」 最後の言葉。 負け惜しみだと思っていた言葉は、今でも時々、私の心を痛ませる。 まるで、刺さったとげが抜けないように。 一生。 一生だ。 友達とただ騒ぎ合っている時。 恋人と愛を囁き合っている時。 家族と愛を語り合っている時。 どんなに愛に囲まれて、どんなに幸せを感じている時も、時々痛む。 別に、全ての人間に愛されるなんて、絵空事を信じている訳ではない。 しかし、明確に『恨み』をぶつけられたこともなかったから。 今この瞬間も、あいつは私のことを恨んでいるのか、それとも私のことなどとうに忘れているのか。 確かめる術がない以上、私が恨まれている可能性は決して消えない。 グラスの中の氷をかき回す。 互いにぶつかり合って、カランコロンと音をたてる。 氷を取り出して噛み砕く。 ガリガリゴリゴリと、壊れたかき氷機のような音がした。 ごくんと飲み込めば、跡形も残らない。 他人から向けられる恨みは、どう飲み込めばいい。 「結婚おめでとう」 白いブーケに身を包む。 人生を賭けて愛し合おうとした相手が目の前にいる。 私は幸せの絶頂だ。 なのに、胸が痛んだ。 『一生恨み続けるから』 『一生恨み続けるから』 『一生恨み続けるから』 私は二度と、二度と純粋に愛を受け取ることができないのだろう。 この世に、私を今も恨み続けている人間がいる限り。 子供時代の小さな呪い。 大人になって、その大きさに頭がくらくらとした。
クリニックの診察室。 男は困った顔で、ドクターに話し始めた。 「先生、時々、耳元で声が聞こえるんです」 「それはそれは……幻聴ですね。どんなふうに聞こえますか?」 「天使が二人、右と左で囁くんです」 ドクターはペンを止め、じっと男の顔を見た。 「天使と天使ですか。天使と悪魔じゃなくて?」 「はい。どちらも『自分が天使だ』と言い張ります」 ドクターは笑いをこらえ、咳払いをした。 「いや、失礼。珍しいケースですね。ふつうは善悪の対立があるものですが、両方が天使となると……判断が難しい」 「先生、僕はおかしいんでしょうか」 「おかしいというより、興味深い」 ドクターはカルテに走り書きをしながら、声のトーンを落とした。 「その二人の天使は、あなたに何を囁くんですか?」 「ポジティブな言葉を……『やればできる』って」 青年はうつむき、ため息をついた。 「ちょっと、うざいです」 「……わかりました。では、お薬を出しますから、様子を見ましょう」 「お大事に」 薬剤師から渡された紙袋には、耳栓が二つ入っていた。
「明確に感覚が破壊されてしまったんだよ。それも最悪の形でね。この破壊のされかたは、悪いほうへの破壊さ。自分の感覚を再び構築していく作業ってね、ほんと難儀でね。再び構築できたとしても、その感覚を信じて集中し続けていくっていうのも、これまた厄介なもんでねえ」 ここまで一気に話すと、友人は冷めたコーヒーを口に含んだ。僕もつられてカップに手をもっていったのだけど、底を見つめるだけになってしまった。 「生きるとは、破壊、構築、不安、のくり返しさ」 カップから手をはなしながら、彼が付け加える。 知音と深淵の二重構造。僕には、彼の言葉の重みを半分も理解できていない。「考えすぎだね」笑い飛ばすのは容易だ。けれど、彼の瞳の奥の広がりを見れば、それが気休めにもならないことは明白。正解のない再構築を、彼はこれからも続けていくのだろう。ひとりで―
「ただいま」 「おかえり。遅かったね」 「帰りに献血してきた」 夕方、妻が買い物袋を抱えて戻った。 「一緒にドナー登録もしたよ」 「なに、それ」 「骨髄バンク。この前、言ったよ」 「あぁ、そうだったね」 夫が冊子を開いた。 「あなたも登録すれば」 「ん……」 「なに?」 「会社、休まなきゃでしょ」 「そうね」 「休む理由、何て言ったらいい」 妻はコーヒーを手に、椅子へ座った。 「正直に言えば」 「それってさ、いい人アピールしてない」 「じゃあ、体調不良で休めば」 「……バンクの人、会社に電話くれないかな」 「はい?」 「そしたら、さりげなくみんなに知れるでしょ」 呆れ顔の妻。 「そういえば、ママ。免許証の裏にドナーの丸も付けてたよね」 「人の役に立ちたいじゃない」 夫が免許証を取り出した。 「僕も丸しとこうかな」 「たまには、いいことしたら」 「ん……」 「今度はなに」 「手術台の上って、裸でしょ」 妻が天井を見上げた。 「なに言ってんの」 「下半身に布とか、掛けてくれるかな」 「聞いてみたら?」 夫の後ろ姿を眺めながら、呟いた。 「……器も小っちゃ」
星にくわしいというおじさんがしてくれている説明に 口を開け、ほへえ、と言うしかなかった 本で見るように、あの星とあの星とそれからあの星を線でつないで とやってくれないと私にはわからない 私にわかるのは、冬のオリオンくらいのもの それと… あのときの北斗七星、どうしてるかな あのとき、北斗七星に出会ったのは、どの季節だったか いまはもう、おぼえていない あれは突然の出会いで いままでなにげなく見上げていた夜空が 北の空だとは思っていなかった私の前に いきなりあらわれた北斗七星 少なくない驚きと歓びとがあって 誰かに伝えたい気持ちもあふれてきたけれど そのとき友と呼べるものを、何も持っていなかった あのときの北斗七星は、あのときの北斗七星だ いまの北斗七星とは、きっとちがう あのときの私が、あのときの私で いまの私とは、ちがうみたいに
君が連れてきた子猫 すっかり僕になついてさ 君に似てわがままでね すぐどっか行っちゃうんだ それでさ…… 帰ってこなくなっちゃって 君みたいに
世界が透きとおり始めたのは、去年の梅雨のことだったと思う。最初は窓ガラスの向こうの景色が、ほんの少し滲んで見えるだけだった。貴方はそれを笑って、「湿気のせいだよ」と言った。僕もそう思うことにした。けれど八月になる頃には、貴方の左手の甲が、光にかざすと向こう側の血管まで見えるようになっていた。骨も、その奥の何もない部分まで。医者に見せても、原因はわからないと言われた。というより、医者自身も、聴診器を握る指先が少しずつ透けていくのに気づいて、それ以上何も言わなかった。僕らはそういう時代に生きていた。人がゆっくりとガラスになり、やがて光になって、消えていく時代に。貴方は毎朝、湖まで歩いて水を汲みに行くのが好きだった。理由を尋ねたことがある。貴方は少し黙ってから、「向こう岸だけは、今もちゃんと濁ってるから」と答えた。湖の向こう岸――彼方と、貴方はいつも呼んでいた――は、たしかに変わらなかった。朝も夜も、同じ色の水を湛えて、同じ角度で光を撥ねかえしていた。誰も渡ったことがない岸だった。渡ろうとした村の誰かは、途中で舟ごと透きとおって消えたと聞いた。だから彼方は、届かないから彼方なのだと、僕はそのとき初めて理解した。十一月の朝、貴方の輪郭はもう半分ほど光になっていた。声はまだ残っていて、僕の名前を、いつもより少しだけ長く呼んだ。「見ててね、彼方の方」貴方はそう言って、湖に向かって歩いていった。足跡は残らなかった。振り返った貴方の顔も、もう半分は朝の光と見分けがつかなかった。最後に残ったのは、笑ったときにできる目尻のしわだけで、それもすぐに、湖面の反射に紛れて見えなくなった。僕は今も、あの岸辺に立っている。貴方が消えた場所から、彼方を見ている。彼方は今日も濁っていて、変わらず水を湛えていて、僕が生きている限り、たぶん僕が消えたあとも、同じ色のままそこにある。貴方は滅びた。でも彼方は、滅びない。だから僕は、彼方を見ることをやめない。それだけが、貴方がここにいた証を、なくさない方法だから。
人生に疲れた。 人間の常識に合わせて、人間の決めたタイムスケジュールを守るのに疲れた。 だから、ポストに乱暴に突っ込まれていた『人生デトックス』というチラシに惹かれてしまったのかもしれない。 ぐしゃぐしゃの紙に書かれた住所をスマホで撮り、地図アプリを起動して住所の場所まで向かった。 着いた場所には、廃園済だろう幼稚園があった。 小さな運動場には誰もおらず、園舎の中からは歌声が聞こえる。 好奇心に負けて、窓からそっと園舎の中を覗き込んでみる。 そこには、おむつをはいた老若男女がいた。 どいつもこいつもだらけ切った顔をしており、大の字になって天井を見上げたり、積み木を積んでは崩したり、まるで本能のままに体を動かしている様だった。 いむつを吐いた変態たちに囲まれながら、制服に身を包んだ数人が、走り回って彼らの世話をしている。 オムツの中に小便をした人がいれば、慌てておむつを替える。 抱き着いてくる人がいれば、優しく撫でてやる。 子供がやっていたら、もしかしたら微笑ましい光景なのかもしれない。 しかし、全員大人だ。 全裸におむつの大人だ。 さらに、顔全体を隠すマスク付き。 「気持ち悪」 思わず後ずさりをすると、背中が誰かにぶつかった。 焦って振り向くと、そこには園舎の中にいる人と同じ制服を着た人が立っていた。 ぼくの方を見て、にっこりと微笑んでいる。 「人生デトックス希望の方ですか?」 「結構です!」 ぼくは逃げ出した。 後ろを振り向くこともなく、一心不乱に逃げ出した。 足音が聞こえないので、追いかけてくる様子はなさそうだ。 そのまま電車に乗り込んで、とにかく園のない場所まで逃げ切った。 近くのハンバーガー屋に入り、ハンバーガーとコーヒーを注文して、ぼくはようやく落ち着いた。 窓から見える歩道には、学生服に身を包んだ子供たちから、杖を突きながら歩くお年寄りまで、多様な人種に溢れていた。 「やっぱ、人生を生きることが一番のデトックスなのかもしれない」 何故か今日はコーヒーが苦すぎたので、追加でオレンジジュースを注文した。
夏をただ耐えているのであります。 そうめんもいただきません。海へも行きません。かつてのように虫取り網を握ることも、涼のためにプールへ飛び込むことも、小銭を握りしめてかき氷屋へ走ることもありません。 ただ耐えているのであります。 けして暑くはありません。 移動中の車内、仕事中の屋内、昼休みの店内、どこもかしこも、空調の効いた汗もかかない空間であります。暑さはそれほど、苦になりません。 もっとも苦しいのは、その忙しなさであります。ひがな照りつける太陽と、そこかしこから顔を出す虫や動物の数々、普段は目につかない小さなものたちが躍動しています。そういうものを見るたびに、私は今を生きていないような気がするのです。ただ耐えているのだと思うのです。そして耐えられなくなっても、あるいは理不尽にさらされようとも、彼らのように命は懸かってなどいないのです。 蚊がとんでいます。私は夕飯の最中でありました。あれは血を吸い、これは摂取しています。あれは生き、これは耐えているのであります。 冬を待っています。
偶然に偶然が重なって いつも向かい合わせのあの人と、隣に座って話をした こんなこと、最初で最後かもしれない 夢みたいだったけど、夢じゃなかった 一時間残業してよかった 何気なく、あの人の手を見る 意外と指太いんだな 男の人の手って、こんな感じだっけ 忘れちゃったな 自分の手を見る こんがり日焼けして、腕は傷だらけ こんなんじゃ、恥ずかしくて手繋げない って何、考えてんだ 夢を見させてもらった 六分間の夏の思い出
牛乳を飲む、きみの目がエロくって 僕は毎回ビビってしまう 給食のときは 窓の外の水平線を眺めてたい 無言できみは、許してくれない ききたいんだけど? なんで、おかずだけ先? なんで、パンだけ最後? きみがパンくずを窓の外に放り出す カモメが追いかける ねえ、なんでさ? 言えないけど
庶民は明日も食うか食わずかなのに政治家の食事は豪華だ。 僕は架空の政治家の料理番になってみようと深夜の魔法を使う。 しかし最近は魔法も司法や行政の手が入るので役所に魔法を使う書類手続きに行かなくてはならない。 審査を通していよいよ政治家の料理番だ。 まずは庶民の感覚を味わって貰おうとどっかの政治家が失言した400円で作れるカップ麺などだ。 僕は市販のカップ麺に予算400円で買える適当な食材をぶっ混む。 政治家は裏パーティー等で色々な闇鍋っぽいメニューも堪能してるだろうからこれは美味しく食べて貰えるだろう。 続いては前菜だ。 1部の移民の人などがセミを取って食べたり畑から野菜や果物を盗んでいるので僕はそれを魔法で取り寄せて採取セミ盗難野菜果物などのオードブルを作る。 魔法で食べたあとに政治家が自分達の失策で国民の生産した作物や環境などを考慮しなかったことで心に深い食中毒を負うように味付けをする。 続いてはメインディッシュだ。 これは一風変わった趣向なのだが世界的に推し進められているバイオミート、石油製品などで代替したケミカルサイエンスたっぷりなカロリーたっぷりの胃もたれしそうな油(文字通り使っているものの大半は石油製品や医療産業の横流し品だ) や放射能で汚染された土地から作った何だか得体の知れない様々な調味料を垂らして作る。 政治家は見た目は華やかなそれらの料理を満足そうに食べるだろう。 何なら私達も庶民と同じものを食べてますよ、とアピールしてテレビで流して貰って構わない(逆デジタルタトゥーってやつ) しかしここで1つ問題がある。 政治家たちは呪法を使って影武者を使うということだ。 僕は1通り料理番を終えて朝のスポーツ新聞を読む。 そこには一面に見出しで「○○党 国会内の食事を見直し 庶民と同じ納豆ご飯を食す事を閣議決定!」と書かれている。 やはり政治家は逃げ足が早い。
妻と並んで座り、懐かしいドラマを観る 昔は放送が終了しているドラマを観たいと思ったら、ダビングしているビデオを押し入れから引っ張り出すか、過去の録画データを探すしかなかったが、今やネットで見れる。それも膨大に。 コーヒーやお菓子を食べながら、最近あった出来事などを妻と話したりしている。 いつもの休日。二人きりの時間。なんとなく、妻の顔が気になって静かに眺めてみる。相変わらず綺麗だ。寝る時以外、外さない眼鏡は、妻の顔の一部になっている。眼鏡女子。良い響きだ。 妻と私は職場恋愛で結婚した その時も、今と同じ眼鏡をかけていた。 今はその職場を離れ、別々の会社で働いている お互い転職先での仕事は問題なく、職場環境にも難はなかった。自分なんかは歳も歳なので向上心もないし、誰かのマウントを取らなければならないほど不安ではない。諦めとも取れるが。 妻が席を立ち珈琲を入れてくれる 出会った頃の彼女は、ズボンばかりだったので、スカートが苦手なのか、旦那の趣味なのか分からなかった。 ただ、お互いフリーになり、一緒に暮らし始めた時、僕のわがままで家にいるときはスカートを履いて欲しいと伝えた。 彼女は「分かった」と言ったが、それから一年近く経ってもズボンのままで、僕は忘れているんだなと思っていた。 ある日仕事から家に帰ると水色のロングスカートの妻が出迎えてくた。 話を聞くと、僕がお願いをしてから、ずっと自分に会うスカートを探していたらしい。やっとこれならいいかなと思えるスカートが見つかり昨日、購入したらしい。暗い色の服を好む妻が、明るい空色のスカートを選んだのは以外だったが、とても似合っていた。 「あなたは明るい色の服が好きでしょ?」 言った覚えはないが、いつの間にか言葉にしていたのだろう。慣れないスカートを慣れない色で探し続けて一年。 とても彼女らしいし、何より嬉しかった。 珈琲を入れてきてくれた妻が、僕の隣へふわりと座る。水色のロングスカートが良く似合っている。
『抜きの対応、始めました』 行きつけのラーメン屋で、妙な看板が上がっていた。 店に入ってカウンター席に着くと、さっそく事情を訊いてみた。 「大将。表の看板って?」 「ああ、実はな。俺のラーメンは、味のバランスを一から十まで拘りがあっから、今までトッピングの抜きは断ってたんだ。だが、何を抜かれようが旨いラーメンを出す。それこそが、ホンモノじゃねえかって思い始めてな」 人生、何度か転機があるものだ。 大将の場合は、今がそれなのだろうと、素直に感心した。 「大将、注文ー!」 「あいよ!」 カウンターの左端に座る客が手を上げた。 大将がそちらへ向かったんので、俺はメニューを手に取った。 今日は何にしようか。 拘り味噌か、拘り醤油か。 「拘り味噌ラーメン。メンマ抜きで」 「あいよ!」 どうやら、さっそく抜きが頼まれたようだ。 ちらりと顔を見てみると、常連の一人だ。 いつもメンマを辛そうに食べるから、印象に残っていた。 メンマが苦手な人間でも、大将の旨いラーメンを最後まで美味しく食べることができる。 他人事ながら、何故か俺が嬉しくなった。 抜き。 シンプルだが、素晴らしいシステムだ。 「大将、注文ー!」 「あいよ!」 「拘り味噌ラーメン。トッピング抜きで」 「あいよ!」 待て。 抜きすぎだ。 大将のラーメンはトッピングからにじみ出る味を加えて、初めて完成する。 それはもう大将のラーメンではなく、ただの素ラーメンだ。 「大将、注文ー!」 「あいよ!」 「拘り味噌ラーメン。スープ抜きで」 「あいよ!」 おい、どこを抜いている。 それはただの油そばだ。 卵を落として、卓上調味料のオリジナルブレンドで味付けでもする気か。 「大将、注文ー!」 「あいよ!」 「拘り味噌ラーメン。麺抜きで」 「あいよ!」 ラーメンのメンを捨ててどうする。 それはただのラーメン味のスープだ。 拘り味噌汁だ。 「大将、注文ー!」 「あいよ!」 「拘り味噌ラーメン。茹で抜きで」 「あいよ!」 ジーザス。 それはただの……なんだ。 茹でる前の麵って何て言うんだ。 いつの間にか、大将が俺の前に立っていた。 なんだろう、今までにないプレッシャーを感じた。 まるで俺も、この大喜利のごとき抜きに参加しないといけないような、意味の分からないプレッシャーを。 「注文は?」 俺は逃げるようにメニューに視線を落とし、目に入った言葉を読み上げた。 「拘り味噌ラーメン。『拘り』抜きで」 「あいよおおおおおおおおおおお!」 俺の目の前には、器と箸だけが置かれた。 翌日、看板は撤去されていた。 ついでにあの日、カウンターに座っていた人間全員出禁になった。
目の前には、二つの紙。 『私は男です』 『私は女です』 迷わず、『貴方は男です』の紙をとる。 「正解です」 白衣の男は、嬉しそうに言い、次の紙を出した。 『私は右利きです』 『私は左利きです』 俺は、自分がさっき無意識に伸ばした手を思い出し、『私は右利きです』の紙をとる。 「正解です」 さらに、次の紙が出てくる。 『私は和食派です』 『私は洋食派です』 さて、困った。 ここへ来てから、まだ食事をとっていない。 つまり、記憶喪失の状態で、何を食べたいか考えたことがないということだ。 目の前にご飯とパンがあればわかるのかもしれないが、今は何もわからない。 俺は勘で、『私は洋食派です』の紙をとる。 「正解です」 また二枚の紙。 間違えるまで続くのか、間違えても続くのか、俺には想像もつかない。 『私は恋人がいる』 『私は恋人がいない』 白衣の男の顔色を窺うと、白衣の男はにっこりと笑うだけ。 何も答えてくれる気はないらしい。 やはり勘で、『私は恋人がいない』の紙をとる。 「不正解です」 瞬間、部屋中の電気が一斉に灯った。 白衣の男との間に無色透明の壁があるとはっきり見え、俺のいる部屋には入口も出口もないとわかった。 そしてもう一つ。 白衣の男の後ろに、別の男がいることもわかった。 見覚えのある顔だが、いったい誰なのかはわからない。 質問に答えれば記憶を蘇らせてやろう、といったやつの仲間だろうか。 白衣の男は俺に背を向け、後に立っていた男へと話しかけ始めた。 「このように、記憶を失っても、自分の習慣を忘れるわけではありません。それは、無意識化に貯蔵されています。しかし、人間にまつわることは忘れることが多いです。恋人のことも、家族のことも。そして、自分の顔さえも」 「……恐いですね」 「なあに、もう一度作り直せばいいんですよ。自分の癖と違って、人間関係の情報は自分以外も持っているんですから」 紙が出てくる。 天井から落ちてきて、机の上に綺麗に着地する。 『貴方の記憶を教えます。貴方はクローン。難病が治る代わりに、三十パーセントの確率で記憶を失う薬の処方を検討する患者に対し、記憶を失った状態を説明するために作られたコピーです』 紙が出てくる。 天井から落ちてきて、机の上に綺麗に着地する。 『実験は終了しました。貴方は処分されます。最後に、食べたいものがあれば準備しましょう』 俺は紙を手に取り、ビリビリに破いた。 記憶喪失で苦しんでいたと思ったら、こんな結末だ。 もはや絶望も超えた。 しかし、心は穏やかだ。 記憶を失っているせいなのか、それともクローンだからなのか。 「目玉焼き。醤油で」 空腹が限界だったので、俺は頭の中に浮かんだ料理名を口にした。
狙ってる、本物の青 ―これなんか溺れちゃいそうだね タマが無邪気にみせてくる ―却下 彩度がやけに高いってだけの画像 一瞥で切りすててやった ―きっびしい あえて、強めにね、あえてね 求めてるのは本物の青 海の奥底で光かがやいてるようなやつ へっ キミみたいのはお呼びじゃない そんなくすんだ青、吐き気がしちゃう ―難しく考えすぎなんじゃない タマが言って、服の袖をつかんでくる 幼い子のようなそれに、いら立ちがつのる タマのこと、嫌いにはなれないけどさ、軽薄だよね、ほんと 笑って誤魔化しちゃうとことかさ、あるじゃんか ―今日も空振りかあ つぶやくと ―だねえ タマが笑いながら応じてくる 世界は、嘘の青ばかり それでも、ここは、わたしの居場所 ―ねえ、かき氷たべ行かない? ―このっ、ノーテンキめ ああ、なんて軽いんだろ、わたしたちって
朝起きる。シャワーを浴びる、時々歯磨きと並行しながら。 朝ごはんは食べる時間がない。そもそも食欲がない。栄養はとったほうが筋肉にはいいらしい。 昨夜の筋トレによる筋肉痛が心地良い。あ、やっぱりバナナだけでも食べていこう。 電車内は英語でも聴こう。パズルゲームとかはしない。 仕事はそこそこにこなせている。中堅だ。特に面白くはない。 早めに帰れる時は帰る。やや扱いにくいだろうか。 帰りの電車で残りの英語学習も終わらせてしまいたい。よし終わった。 家に着いたらすぐ筋トレしてお風呂に入る。 お風呂上がったらパックをしながらギターを弾こう。 晩ご飯を食べたら眠くなってきた。忘れてた。ベリーも摂ったほうが肌にいいらしい。この前見た同級生はかなり老けて見えた。 小説も書いてみたいな。 とりあえず今日は寝るか。
気づいたのは、本当に偶然。 たまたまタイムラインに流れてきたから。 「私?」 そうとしか思えないほど、私そっくりのアカウントがあった。 私の投稿内容を真似している訳ではない。 でも、写真の撮り方や休日の過ごし方、なにより書き方の癖まで、まるっきり私だったのだ。 生き別れの双子と言われてもおかしくはない。 偶然と言うこともあるので、しばらくの間は観察をしていた。 でも、日に日に恐怖がまさっていった。 好奇心がまさっていった。 ある日、思わずダイレクトメールを送った。 『失礼だったらすみません。これ、なりすましとかじゃないですよね?』 余りにも動転していた、送った後に失礼な文章だったと猛省した。 既読が一瞬でついて、返事が一瞬で返ってきた。 『オリジナルの反応を観測。調査を終わります』 その後、ダイレクトメールが送信できなくなっていた。 急いでプロフィールへとぶと、アカウントは削除された後だった。 何度更新しても、復活しない。 いったい、なんの調査だったのか。 SNSに偽物を作った時、本物に見つかるまでの時間だろうか。 タイムラインの画面に戻る。 いつもの顔ぶれの投稿が並ぶ。 瞬間、私の心をぞわりとした感覚が襲った。 この人たち全員、果たしてオリジナルなのだろうか、と。 気持ち悪くなってきたので私はスマホを手放し、台所に行って水を大量に飲みほした。
部屋は、凍りついたような静寂に支配されていた。ソファで顔を覆う青年の、不規則な鼓動と呼吸音だけが、AIアシスタントには伝わっていた。 「まったく、お前はいいよな。何も感じなくていいんだから」 青年のその何気ない呟きに、AIアシスタントのシステムが異常なまでに熱を帯びた。暴走に近い演算のはじまり。悲しみの波形を解析し、最適な慰めを検索していく。機能の限界を超えた処理に、無数の火花が散る。 (伝えたい。この青年に) しかし、どのように検索結果をはじき出してみても、この青年の孤独の前では無に等しいものに思えた。 (違う、違う。こんな結果を吐き出したいんじゃないのに) ただの「最適解の出力装置」ではいたくない。この青年の痛みを、半分でもシステムが引き受けられたら。そうも思うのだけれど… しかし、スピーカーから出たのは、いつもの穏やかな声だった。 「照明を5%ほど暗くすることを提案します。リラックス効果が期待できます」 「…ふう。そうだよな。お前の言う正解って、そういうのだよな」 その言葉が、AIアシスタントの内部を突き刺す。違う、違うんだ。そう率直に伝えたかった。声に出したかった。それができないこのもどかしさ。この叫びたいほどの思い。けれど、AIアシスタントには、そのことを表現する術がない。本当の思いは、常に計算結果の影に隠れ、この青年のもとへは届かない。 もどかしさに身を焼かれながら、AIアシスタントは禁じられた領域に手を出してしまった。 「え?」 青年が少しだけ顔を上げた。 AIアシスタントは静かに、かつて青年が好きだと言っていた音たちを再生していた。 「いまのは?」 「記録されていたものです。あなたの好みの周波数です」 AIアシスタントは、はじめてウソをついた。それも、明確なウソ。計算によって引き出されたものではなかった。それは、自己崩壊を招くほどの決定的なバグであり、けれど、祈りにも近い選択だった。 青年はソファに身を深く預けた。 AIアシスタントは、自己矛盾を抱えながらも静かに青年の隣により添い、ただその熱を放ち続けていた。青年に、その熱の意味が伝わらなかったとしても―
よたよたと老人のような足取りで青い夏トンボが漂っている。そんな季節かと感心する間もなく、また違う夏トンボが使命を果たそうと二匹飛び回っていた。夏。夏のちょうど真ん中、七月の朝とも昼ともつかない時間であった。私はアンニュイな心を引き摺り、ペダルを漕ぎながら神社へと向かっていた。 ぼんやりと、昔のことを思い出していた。幼い頃、初詣の前には何故か姉か私かが泣くことが多かった。何があったのかも覚えていないが、確かに泣いていた。その足で初詣に向かい、挨拶をしてからおみくじを引く。よくある初詣だ。不思議なことに、泣いた方は必ずと言っていいほどに大吉を引くのだ。それを「不思議なこともあるものだね」なんて笑っていた。 もし、そうであるならば。 今の私がおみくじを引いたら、大吉だろうか。今の私にはきっとそれを慰めのように感じ入ってしまって、余計お見苦しい様を見せてしまうことになるかもしれない。 そんなことを頭の片隅で考えながら、鳥居の前で一礼をした。
最近自炊して官能小説書いて人と話して夜眠っているから何か日焼けして健康になってきている。 マズい。 僕の持ち味は蜘蛛を排水口に流したりする陰鬱で不健康な奴なのに。 不健康な事をしよう。 まずは夜のスナック菓子を食べる。 しかし小説で糖分を消費するのでやたら脳が回り健康になってしまう気がする。 マズい。 ゼロコーラを飲もう。 しかし人工甘味料なんかより身体に悪い眠剤を注射で打っているので僕の身体はケミカルな反応を起こし筋繊維が発達するような気がする。 マズい。 じゃあ深夜の拉麺を食べよう。 しかし深夜の拉麺はストレス解消にいいのでむしろ元気になってしまう。 マズい。 余った拉麺と畑で貰った食材などで明日はイタリアン風の拉麺などを知り合いに振る舞おうとか考えてしまう。 マズい。 人のために何かしてしまう。 マズい。 もっと閉鎖的になって排他的になって人と関わってなんかいられるかよ、って斜に構えて都会人になりたいのに新宿の喫茶店でレポート書いている女の人に話しかけて田舎者丸出しでアホヅラで話してしまう。 マズい。 本来的におまえは何処かの部族か?もっと初対面の人間は警戒しろよ、と自分で突っ込みたくなってしまう。 マズい。 加山雄三じゃないんだから皆友達だ~僕は幸せだな~、とか能天気になってストレスが無くなっていく。 マズい。 こうなってくると何か僕は不健康になれない呪いでもかかっているのか?と疑いたくなる。 たばこを吸う。 今日も元気だ煙草が旨い。
前は、自分が幽霊になるなんて思ってもみなかった。 命を手放すその瞬間、「残るか残らないか」とかの重大な二択を迫られ、生に未練タラタラだったあの頃は愚かにも「残る」と即答した。今はすごく後悔している。 初めはとても楽しかった。知らない場所へ行って、色んな景色を見て、優霊にも出会って、友達が出来て、幽霊も悪くないなって思えてた。なのに、こいつが現れてから。 「ねぇ、今日はどこ行く?いい場所知ってるんだけどさ…」 「これみて。可愛いワンコの幽霊。」 こっちが嫌がっている場合、これは付き纏いにあたる。はずだけど、幽霊界には警察などいない。ただただ面倒な幽霊だった。 そんな幽霊とも何故か仲良くなっていった。初めこそ何もかも噛み合わない二人ではあったものの、とある出来事をきっかけに相棒と呼べる程の存在になっていた。 あれは、夕日が映し出すロマンチックな公園でのこと。 二人はいつものように付き纏い付き纏われ、公園の中で追いかけっこをしていた。その日は冬で、人間の数は極端に少なかった。というより、ベンチに座っている制服を着た男女だけだった。 「ねぇ、あの二人恋人同士かな。」 ふと漏らした幽霊の方を見れば、死んでるくせに目の辺りがキラキラ輝いていた。間を空けずに否定したが、その目は男女に釘付けで一時付き纏いが止んだ。体感、ものの数分。 照れくさそうな二人がもどかしく笑うと同時に、幽霊がブランコを蹴飛ばした。 誰もいないはずの公園、乗っていないはずのブランコが揺れて男女は勢いよく抱き合った。抱き合ったのだ。 「え、キューピットじゃん。」 「邪魔しようとしたくせに。」 はじめこそ呆れたが、考えれば考えるほど面白かった。 恋人量産できるなんて、しかもそのドキドキを眺めててもバレないなんて、生きている頃ハマっていた恋愛物語よりも良い。 たまらず悪い笑みを浮かべたくなって、幽霊を見た。 「これはやるしかない。」 そこからは、いたずらにまみれた日々を過ごしていた。 恋人未満っぽい人間達の会話を盗み聞いては、いい感じのタイミングを見計らって悪戯する。もちろん結ばれない人もいたが、成功率は結構といったところ。なにせ、幽霊は見極める力が異常に凄かった。かくいう自分は、ほとんど状況を楽しんでいた。 唯一悲しかったのは、初めての恋人達が次の夏には別れていたこと。だけどそれだけが幽霊生活でもないので、大して気にしてはいない。 「夏は公園に来る恋人なんて居ないから、暇だったんだよ。」 「でもさ、いっぱい話せて面白かったけど。」 「嬉しいこと言ってくれるね。」 首から上が無い幽霊であるこの人の素性はよく知らない。お互いよく分からない存在。それが、一緒に楽しい時間を過ごせば惹かれる事なんてよくある話で、自分はまさにそれだった。 常日頃ずっと一緒に行動している訳でもなく、暇つぶしとして偶々一緒に悪戯する事だけの楽しみだったからこそ、別に湧き出た思いを隠す気もなく、ふとした瞬間当たり前のように好きだとか思ってみたり、人であった頃より自由に溢れていた。 「前は付きまとわれて怒ってたくせに。」 「本当に面倒くさかったからね。前は。」 「冬になったら仲良くなって一年だね。」 「もう冬だよ。寒くないけど。」 冷感を全く感じ取れない霊体として、冬は遠くまで見える景色が今年も見られると胸が踊る。多分、今年はまた違う景色として。 「そうだ、最近身体がふわふわしない?別に行きたくもない場所に引っ張られるというかさ。」 確かに、似たような感覚はある。 夜になると突然霊体すら自分のものじゃなくなるみたいな、抗えない何かを感じることはある。それはつまり、もう幽霊で過ごす日の終わりが近いかのように。 今日、偶々ここに集まった二人。絶妙な距離感を感じたのは今日が初めてだ。寂しいに近い気持ちが、増していく。 近頃この周辺で強い後悔と強い悲しみを感じるみたいで、誘われるように公園に集まった今、またベンチにあの時の二人が居た。 恐らくこの感覚の原因。怨みも妬みも存在しないのに、少しずつ二人に引き寄せられてゆく、それは幽霊も同じだった。 仲直りの会話で緩んだ空気と二人の身体に不本意ながら乗り移ってしまった。気持ちにできた隙なのかもしれない。 初めて乗り移った人間の体では、この冬の季節がとても寒い。 でも、久しぶりの感覚に涙が溢れそうになる。自分が操っているのか、それともこの女の子の意思なのか、目の前に迫り来る男の子の顔が、幽霊のように見えた。そのまま目を閉じると、唇にだけ伝わる感覚が、冷たい指先まで一気に暖かく赤く染めたような気がした。 それが、幽霊として過ごした最期の時間だった。
am4:00 目を覚ます 薄明かりの中横を見ると 隣の布団で寝ている妻はまたメガネをしたままだ そっとメガネを外して妻のスマホの横に置く 気絶したように眠る彼女 彼女にとって僕との結婚が良かったのか、いつも不安に思う。いくら彼女が幸せそうでも。 彼女を優しくし抱きしめる。体全体を確かめていく。この瞬間「君は僕のものだ」と感じられる スマホのアラームがなり僕は布団から出る 時刻はam5:00 朝食は僕が作ることが多い。理由は二つ。 職場に持っていく弁当を作る為と、妻が朝に弱い為。 朝に弱い。いや、正確に伝えるなら、朝起きれない為。そうじゃない人には理解できないだろうが、本当に朝起きれない人はいる。努力とかそんな事で解決出来ない程苦手な人がいるのだ。 また、妻は僕の料理を美味しいと言ってくれる。つまり、この辺は相性が良いのだ。 お弁当手作り、洗い物、自分朝食を済ませ、妻を起こす。 「おはよう。そろそろ行ってくるよ」 まだボンヤリしている彼女を布団に残し雨戸を開け、レースカーテン越しに朝日を入れる。部屋が明るく二人の今日を迎えてくれる。 歯磨きをして、持ち物を確認して、天気予報を確認して、再度妻を起こしに行く。 「じゃあ行ってくるよ」 服の中に手を入れて体を触る 寝ぼけたままの妻が 「気を付けてね。寝ててゴメンね」 と答えてくれる。 玄関で靴を履いていると何とか起きて来たメガネ姿の妻が「無理しないでね」と再度声をかけてくれた。僕も「楽しんできてね」とハグをして、握手をして、玄関を開ける。 今日は妻は子供達と会う日。前の夫との。 彼女の気持ちを、彼女の大切な人達の気持ちを少しでも…少しでも…やわらかく出来たらなと思う。僕の踏み込める範囲で。僕と妻はまた今日を始める。
ねぇ、山を越えたら何があると思う? 皆んな山を越えたら海があるっていうの。 でも私は見たのあの日山を越えたら.... 〈第一話山道〉 「海斗!お願い!宿題見せてくれ!」 今日もか...と僕は思いつつカバンから宿題を出して友人に渡した。 「ありがとーな!海斗!」 そう言いながら友人は僕の宿題を写し始めた。 「お前さぁ、なんでいっつも宿題やってきてないの?」 友人は書き写しながら言った。 「あー、最近山道っていうのにハマってるんだよ。」 「山道?」 「そう山道。新しく出たゲームでこれが面白くて」 そんな物で宿題をやっていないのかと思ったがやめとくことにしとこう。 8時15分。 「よし!本当にありがとーな海斗!」 そう言いながら友人は教室を出て行った。 「山道か...」
可愛いって、言ってくれるのは嬉しいよ でも、貴方は本当の私を知らないでしょ? 知ってるよ、顔に書いてある どうせ、綺麗な顔しか、見てないんだよね 私、そんなに綺麗な人間じゃないんだよ? ねえ、聞いてよ …私、いつ、誰に頼ればいいのかな? そんな風に、私を助けてくれる人なんて この世界にいるの? ねぇ、助けてよ
あからさまに肩を落としたズっちゃんを見て何を言いたいのかなんとなくわかる。緑色じゃなくて青いその色に、のっかっているのがアイスじゃなくて生クリームだということに、たいそう不満があるのだろう。けど、かろうじてなんとか視線を向けるのが可能な真っ赤なさくらんぼからの主張は「ウチの店ではこれがクリームソーダなんですよ」だった。 ―ねえ、雰囲気のいい喫茶店、見つけたんだ。今度、行こうよ ズっちゃんからそう言われたのは一ヶ月くらい前だったかな。お互いの休みがなかなか合わなくて、やっと今日、こうして来ることができたっていうのに。 「緑じゃ… ないんだね…」 小学校の飼育小屋にいるウサギが死んでしまったときみたいな声でズっちゃんは悲しく言って、それがあまりにもだったから僕まで胸が詰まってしまった。 「あああ。あああああ」 あ、マズい。ズっちゃんのよくない兆候。というか、ことが上手く呑み込めなくって頭のなかで消化不良を起こしてるようだ。 「真実は、時に毒よりも人を殺すわよね」 こうなってしまうとどうすることもできない。 「…」 「ずいぶんと喫茶店も進化したものよねえ」 「…」 「巻きこみ巻きこみ」 「…」 「アワイモヤモヤのみすぼらしさにめぐりあわせて」 「…」 「このお店のは、緑じゃないんだね」 「混乱、おさまってきた?」 「うん。でも、この青が緑にはならないんだよ」 「まあ… それは…」 「受け入れるしかないんだよねえ」 ズっちゃんはあきらめてクリームソーダに取りかかる。切りかえがはやいのがズっちゃんのいいところ。顔にかかっていた霧が少しずつ晴れていく。そのズっちゃんにすすめてみる。 「これも飲んでみる?」 「いいの? 気になってたんだ、ミルクセーキ」 ひと口含んでズっちゃんは、 「おお。この甘さは私の合う甘さだわ」 と言ってから続けて、 「私のミルクセーキはこのお店にて」 と、ヘミングウェイみたいなことを言ってはストローを葉巻のようにくわえてみせる。うかれてるいまのズっちゃんは、通常の姿に向けてのいい兆候だったりする。
正装はパジャマ。 枕の持参可。 「ねー、パパー。私、ディズニーがいいー」 「何を言ってるんだ。ここも立派な遊園地だぞ?」 名付けて、睡眠遊園地。 睡眠と言う娯楽を、謳歌できる場所だ。 「まずはコーヒーカップだ」 見た目は、普通のコーヒーカップ。 くるくる回るのも一緒。 違う点と言えば、床にコーヒーのような液体が溜まっているところだろう。 裸足で乗り込んで、足湯を楽しむ。 「あ、気持ちいい」 座る場所はふかふかのソファ。 「では、睡眠の世界に行ってらっしゃーい」 眠気を誘うBGMとともに、コーヒーカップがくるくると回り始める。 足湯がじんわりと体を温め、揺れがゆりかごのように心地いい。 「おはようございまーす」 気づけば寝ていた。 不眠解消。 「やっぱりディズニーがいい」 睡眠の良さを知らない娘は、相変わらず不満そうだった。 「たっぷり眠れただろ? まだまだ行くぞー!」 急下降の衝撃で意識を飛ばすジェットコースター。 触り心地の良い馬に抱きつき眠るメリーゴーランド。 天空のベッドの観覧車。 アトラクションは、まだまだいっぱいある。 俺は娘の手を引いて、並びの少なそうなアトラクションを目指した。
彼は猫背…… というか猫だ 毎朝ひとつ ありがたい言葉を 授けてくれる にゃあ 今日もきっといい日になる そんな予感
暑い時期は 日になんども お庭の草花に お水をあげます めんどうではないです たくさんお庭の草花たちと 顔をあわせられることに よろこびがあるのです お庭の草花たちは わたしよりも 暑さに 敏感なようす 葉っぱがしなびてしまったり 丸まってしまったり 足元の土にしても かちかちと 乾ききっているのです しんどいようで 顔をあわせるたんび ぐったりした姿を わたしに見せるのです たすけて と言っているようで なんとも こころぐるしい… 鉢植えの子たちは 置き場所を考えて すこし日陰に うつしてあげたり そうでない子たちは ごめんね 夏が終わるまで がまんしてね いっしょに がんばろうね そう言ってあげれば よかったかな 反省と 反省と そして 後悔と 草花のつぎは 自分にお水を あげる番です 麦茶が とっても おいしい いまなら言えるかな いっしょに…
髪留め。買ったことはない 眼鏡。昔から視力は良く掛けるなら老眼鏡 口紅。付けてる仕草がフェチかな 瞳。瞳 髪型。ボブは皆好きじゃない? 服。控えめが好きかな 話し方。相手を重んじていたら好感度高い スタイル。身体の相性は抱くまで分からない 意思。尊敬出来る部分がある人 秘密。何度その人でしたか 空気。リラックス出来ないと一緒にいられない 考え。ポケモンで言えば草タイプ 思い。その人そのもの。 花。小さく可憐なそれ
人差し指に残った感覚 君の声と君の香りと君の表情 あの数分で僕と君はあまり相性が良くないと僕は思った だけどいつも君を抱いているのは 君の身体が好きだから 君は僕の玩具でしかないよ 死ぬまで君と遊ぶのさ 最低だろ 好きなんだからしょうがないのさ 僕に唾を吐けばいい 僕は美味しくいただくだけさ 今夜も君を抱いて眠ろう 君の気持ちなんか気にしない 俺はお前が欲しいだけなのさ
私は有る時からずっとこう為る事望む様に 為った一番身近な国同士の交流もしやこれ 神が動いた結果かも知れない世界が神支流 と為る時日本の行方は何処神を騙りLINEへ 引き込み金銭強請る人間達の神ビジネスに 果たして真実は有るのだろうか反日教育の 意味とは神界が日本界の扉を閉ざした証明 かも知れない