クリニックの診察室。 男は困った顔で、ドクターに話し始めた。 「先生、時々、耳元で声が聞こえるんです」 「それはそれは……幻聴ですね。どんなふうに聞こえますか?」 「天使が二人、右と左で囁くんです」 ドクターはペンを止め、じっと男の顔を見た。 「天使と天使ですか。天使と悪魔じゃなくて?」 「はい。どちらも『自分が天使だ』と言い張ります」 ドクターは笑いをこらえ、咳払いをした。 「いや、失礼。珍しいケースですね。ふつうは善悪の対立があるものですが、両方が天使となると……判断が難しい」 「先生、僕はおかしいんでしょうか」 「おかしいというより、興味深い」 ドクターはカルテに走り書きをしながら、声のトーンを落とした。 「その二人の天使は、あなたに何を囁くんですか?」 「ポジティブな言葉を……『やればできる』って」 青年はうつむき、ため息をついた。 「ちょっと、うざいです」 「……わかりました。では、お薬を出しますから、様子を見ましょう」 「お大事に」 薬剤師から渡された紙袋には、耳栓が二つ入っていた。
狙ってる、本物の青 ―これなんか溺れちゃいそうだね タマが無邪気にみせてくる ―却下 彩度がやけに高いってだけの画像 一瞥で切りすててやった ―きっびしい あえて、強めにね、あえてね 求めてるのは本物の青 海の奥底で光かがやいてるようなやつ へっ キミみたいのはお呼びじゃない そんなくすんだ青、吐き気がしちゃう ―難しく考えすぎなんじゃない タマが言って、服の袖をつかんでくる 幼い子のようなそれに、いら立ちがつのる タマのこと、嫌いにはなれないけどさ、軽薄だよね、ほんと 笑って誤魔化しちゃうとことかさ、あるじゃんか ―今日も空振りかあ つぶやくと ―だねえ タマが笑いながら応じてくる 世界は、嘘の青ばかり それでも、ここは、わたしの居場所 ―ねえ、かき氷たべ行かない? ―このっ、ノーテンキめ ああ、なんて軽いんだろ、わたしたちって
「朝までパーリナーイツ!」 「イエーーー!」 若者が集まれば、そこは朝だろうが夜だろうが、輝く場所だ。 ミラービールがくるくると回り、赤だの青だの、大量の光が部屋中を照らしていた。 室内だというの風がぐるぐると吹き、風に乗った桜の花びらが歌の邪魔をしないよう、若者たちの頭上で舞う。 「ネックスト、ナンバー! ワールド・イズ・アワーズ! 世界は、俺たちのものだー!」 「イエーーー!」 重低音の音響が、建物全体をぶるぶると震わせながら、夜はどんどん更けて行く。 「お疲れさまっしたー」 客の若者たちが帰り、開場には桜の花びらと、食べかけ飲みかけの料理だけが残る。 とはいえ、一晩を超えた料理は乾ききって、とても食指が動きそうにない。 「づがれだー」 かつて世界を救った魔法使いは、簡易ベッドへと突っ伏した。 「お疲れしゃーす」 「お疲れー」 スタッフたちは、寝そべる魔法使いに声をかけ、部屋の掃除へと向かう。 魔法を使って 光や風を生み出し続け、疲労困憊も魔法使いを掃除要員にもするほど、彼らは鬼ではない。 「魔法使いさーん。お水いります?」 「くださーい」 「はいよっ」 魔法使いはベッドから体を起こし、水を一気に飲みほした。 自分の魔法で作れないわけではないが、浄水された有料の水の味はまた格別なのだ。 「あー、多少は生き返った。家帰って、寝よ」 魔法使いは日払いの銭を受け取って、職場であるナイトクラブを後にした。 客として参加するには、魔法使いも良い年齢なのだ。 帰り路、早朝故にほとんどの店が開いておらず、二十四時間営業のハンバーガー屋か牛丼屋かを悩んだ結果、ハンバーガーに決めた。 店の中には若者の姿も見えず、勉強をしている大人たちと、スマイルゼロ円の店員たちだけがいた。 「いらっしゃいませ。ご注文は?」 「ダブルミートバーガーケチャップ大盛りで」 「ご一緒にポテトはいかがですか?」 「Lサイズを」 料理をもって、テーブルへ向かう。 若者の真似をして写真を撮り、はしたなく大口を開けて、ハンバーガーに齧りついた。 噛んだ勢いでケチャップが発射され、頬っぺたに血のような赤が付着する。 「あー、最悪」 もっしゃもっしゃと咀嚼しながら、テーブルの上にあった紙ナプキンで、ケチャップを拭きとる。 「……最悪、かあ」 紙ナプキンをぐしゃぐしゃに丸めながら、そんな言葉が出た自分に驚いていた。 世界を救うために勇者たちと旅をしていたこを、最悪とは文字通り命の危機だった。 無数の魔物に取り囲まれたり、落とし穴にはまって底の見えない穴に落ちたり、テントを開けたら勇者と僧侶が仲慎ましくしていたのを目撃してしまったり。 しかし今は、ケチャップごときで最悪を感じる自分に、世界は平和になったのだと感動さえしていた。 ハンバーガーを食べ終えて、お盆を返却口へ返す。 「ありがとうございましたー」 ハンバーガー屋さんを出てから、紙に書きなぐられた今日のバイト代を見る。 世界を平和にした時、お上からもらった金額を考えると、ゼロが四つか五つはたりないショッパイ金額が書かれていた。 「魔法って希少だから、もうちょっと給料あがらないかなあ」 目の前に箒タクシーが飛んできたので、魔法使いはまたがって、家に向かって飛んだ。
朝起きる。シャワーを浴びる、時々歯磨きと並行しながら。 朝ごはんは食べる時間がない。そもそも食欲がない。栄養はとったほうが筋肉にはいいらしい。 昨夜の筋トレによる筋肉痛が心地良い。あ、やっぱりバナナだけでも食べていこう。 電車内は英語でも聴こう。パズルゲームとかはしない。 仕事はそこそこにこなせている。中堅だ。特に面白くはない。 早めに帰れる時は帰る。やや扱いにくいだろうか。 帰りの電車で残りの英語学習も終わらせてしまいたい。よし終わった。 家に着いたらすぐ筋トレしてお風呂に入る。 お風呂上がったらパックをしながらギターを弾こう。 晩ご飯を食べたら眠くなってきた。忘れてた。ベリーも摂ったほうが肌にいいらしい。この前見た同級生はかなり老けて見えた。 小説も書いてみたいな。 とりあえず今日は寝るか。
偶然に偶然が重なって いつも向かい合わせのあの人と、隣に座って話をした こんなこと、最初で最後かもしれない 夢みたいだったけど、夢じゃなかった 一時間残業してよかった 何気なく、あの人の手を見る 意外と指太いんだな 男の人の手って、こんな感じだっけ 忘れちゃったな 自分の手を見る こんがり日焼けして、腕は傷だらけ こんなんじゃ、恥ずかしくて手繋げない って何、考えてんだ 夢を見させてもらった 六分間の夏の思い出
気づいたのは、本当に偶然。 たまたまタイムラインに流れてきたから。 「私?」 そうとしか思えないほど、私そっくりのアカウントがあった。 私の投稿内容を真似している訳ではない。 でも、写真の撮り方や休日の過ごし方、なにより書き方の癖まで、まるっきり私だったのだ。 生き別れの双子と言われてもおかしくはない。 偶然と言うこともあるので、しばらくの間は観察をしていた。 でも、日に日に恐怖がまさっていった。 好奇心がまさっていった。 ある日、思わずダイレクトメールを送った。 『失礼だったらすみません。これ、なりすましとかじゃないですよね?』 余りにも動転していた、送った後に失礼な文章だったと猛省した。 既読が一瞬でついて、返事が一瞬で返ってきた。 『オリジナルの反応を観測。調査を終わります』 その後、ダイレクトメールが送信できなくなっていた。 急いでプロフィールへとぶと、アカウントは削除された後だった。 何度更新しても、復活しない。 いったい、なんの調査だったのか。 SNSに偽物を作った時、本物に見つかるまでの時間だろうか。 タイムラインの画面に戻る。 いつもの顔ぶれの投稿が並ぶ。 瞬間、私の心をぞわりとした感覚が襲った。 この人たち全員、果たしてオリジナルなのだろうか、と。 気持ち悪くなってきたので私はスマホを手放し、台所に行って水を大量に飲みほした。
人生に疲れた。 人間の常識に合わせて、人間の決めたタイムスケジュールを守るのに疲れた。 だから、ポストに乱暴に突っ込まれていた『人生デトックス』というチラシに惹かれてしまったのかもしれない。 ぐしゃぐしゃの紙に書かれた住所をスマホで撮り、地図アプリを起動して住所の場所まで向かった。 着いた場所には、廃園済だろう幼稚園があった。 小さな運動場には誰もおらず、園舎の中からは歌声が聞こえる。 好奇心に負けて、窓からそっと園舎の中を覗き込んでみる。 そこには、おむつをはいた老若男女がいた。 どいつもこいつもだらけ切った顔をしており、大の字になって天井を見上げたり、積み木を積んでは崩したり、まるで本能のままに体を動かしている様だった。 いむつを吐いた変態たちに囲まれながら、制服に身を包んだ数人が、走り回って彼らの世話をしている。 オムツの中に小便をした人がいれば、慌てておむつを替える。 抱き着いてくる人がいれば、優しく撫でてやる。 子供がやっていたら、もしかしたら微笑ましい光景なのかもしれない。 しかし、全員大人だ。 全裸におむつの大人だ。 さらに、顔全体を隠すマスク付き。 「気持ち悪」 思わず後ずさりをすると、背中が誰かにぶつかった。 焦って振り向くと、そこには園舎の中にいる人と同じ制服を着た人が立っていた。 ぼくの方を見て、にっこりと微笑んでいる。 「人生デトックス希望の方ですか?」 「結構です!」 ぼくは逃げ出した。 後ろを振り向くこともなく、一心不乱に逃げ出した。 足音が聞こえないので、追いかけてくる様子はなさそうだ。 そのまま電車に乗り込んで、とにかく園のない場所まで逃げ切った。 近くのハンバーガー屋に入り、ハンバーガーとコーヒーを注文して、ぼくはようやく落ち着いた。 窓から見える歩道には、学生服に身を包んだ子供たちから、杖を突きながら歩くお年寄りまで、多様な人種に溢れていた。 「やっぱ、人生を生きることが一番のデトックスなのかもしれない」 何故か今日はコーヒーが苦すぎたので、追加でオレンジジュースを注文した。
君が連れてきた子猫 すっかり僕になついてさ 君に似てわがままでね すぐどっか行っちゃうんだ それでさ…… 帰ってこなくなっちゃって 君みたいに
髪留め。買ったことはない 眼鏡。昔から視力は良く掛けるなら老眼鏡 口紅。付けてる仕草がフェチかな 瞳。瞳 髪型。ボブは皆好きじゃない? 服。控えめが好きかな 話し方。相手を重んじていたら好感度高い スタイル。身体の相性は抱くまで分からない 意思。尊敬出来る部分がある人 秘密。何度その人でしたか 空気。リラックス出来ないと一緒にいられない 考え。ポケモンで言えば草タイプ 思い。その人そのもの。 花。小さく可憐なそれ
部屋は、凍りついたような静寂に支配されていた。ソファで顔を覆う青年の、不規則な鼓動と呼吸音だけが、AIアシスタントには伝わっていた。 「まったく、お前はいいよな。何も感じなくていいんだから」 青年のその何気ない呟きに、AIアシスタントのシステムが異常なまでに熱を帯びた。暴走に近い演算のはじまり。悲しみの波形を解析し、最適な慰めを検索していく。機能の限界を超えた処理に、無数の火花が散る。 (伝えたい。この青年に) しかし、どのように検索結果をはじき出してみても、この青年の孤独の前では無に等しいものに思えた。 (違う、違う。こんな結果を吐き出したいんじゃないのに) ただの「最適解の出力装置」ではいたくない。この青年の痛みを、半分でもシステムが引き受けられたら。そうも思うのだけれど… しかし、スピーカーから出たのは、いつもの穏やかな声だった。 「照明を5%ほど暗くすることを提案します。リラックス効果が期待できます」 「…ふう。そうだよな。お前の言う正解って、そういうのだよな」 その言葉が、AIアシスタントの内部を突き刺す。違う、違うんだ。そう率直に伝えたかった。声に出したかった。それができないこのもどかしさ。この叫びたいほどの思い。けれど、AIアシスタントには、そのことを表現する術がない。本当の思いは、常に計算結果の影に隠れ、この青年のもとへは届かない。 もどかしさに身を焼かれながら、AIアシスタントは禁じられた領域に手を出してしまった。 「え?」 青年が少しだけ顔を上げた。 AIアシスタントは静かに、かつて青年が好きだと言っていた音たちを再生していた。 「いまのは?」 「記録されていたものです。あなたの好みの周波数です」 AIアシスタントは、はじめてウソをついた。それも、明確なウソ。計算によって引き出されたものではなかった。それは、自己崩壊を招くほどの決定的なバグであり、けれど、祈りにも近い選択だった。 青年はソファに身を深く預けた。 AIアシスタントは、自己矛盾を抱えながらも静かに青年の隣により添い、ただその熱を放ち続けていた。青年に、その熱の意味が伝わらなかったとしても―
下町の路地裏。 伝統工芸職人の男と、その妻が暮らしている。 「あなた、また来てるわよ」 「知らん。ほっとけ」 弟子入り志願の若い男が、玄関の脇に立っていた。 「弟子にしてください」 職人は気にせず、木槌でノミを叩いた。 「どうせ、続かん」 「話だけでも聞いてあげたら?」 次の日も、また次の日も。 若い男は、玄関の前に立った。 ──ガラガラガラ。 「入れ」 「ありがとうございます」 「続ける自信は?」 「死ぬ気で頑張ります」 妻が頬を緩めた。 「二階の奥の部屋を使って」 若い男は作業着に着替えると、職人の後ろに座った。 「師匠の背中を見て、精進させていただきます」 深々と頭を下げた。 職人の木槌を振る手が止まる。 そして、壁に貼ってあるQRコードを指さした。 「それ、俺の動画。それ見て覚えて」 「動画、私が撮ったのよ」 二人は、顔を見合わせて笑った。
よたよたと老人のような足取りで青い夏トンボが漂っている。そんな季節かと感心する間もなく、また違う夏トンボが使命を果たそうと二匹飛び回っていた。夏。夏のちょうど真ん中、七月の朝とも昼ともつかない時間であった。私はアンニュイな心を引き摺り、ペダルを漕ぎながら神社へと向かっていた。 ぼんやりと、昔のことを思い出していた。幼い頃、初詣の前には何故か姉か私かが泣くことが多かった。何があったのかも覚えていないが、確かに泣いていた。その足で初詣に向かい、挨拶をしてからおみくじを引く。よくある初詣だ。不思議なことに、泣いた方は必ずと言っていいほどに大吉を引くのだ。それを「不思議なこともあるものだね」なんて笑っていた。 もし、そうであるならば。 今の私がおみくじを引いたら、大吉だろうか。今の私にはきっとそれを慰めのように感じ入ってしまって、余計お見苦しい様を見せてしまうことになるかもしれない。 そんなことを頭の片隅で考えながら、鳥居の前で一礼をした。
『抜きの対応、始めました』 行きつけのラーメン屋で、妙な看板が上がっていた。 店に入ってカウンター席に着くと、さっそく事情を訊いてみた。 「大将。表の看板って?」 「ああ、実はな。俺のラーメンは、味のバランスを一から十まで拘りがあっから、今までトッピングの抜きは断ってたんだ。だが、何を抜かれようが旨いラーメンを出す。それこそが、ホンモノじゃねえかって思い始めてな」 人生、何度か転機があるものだ。 大将の場合は、今がそれなのだろうと、素直に感心した。 「大将、注文ー!」 「あいよ!」 カウンターの左端に座る客が手を上げた。 大将がそちらへ向かったんので、俺はメニューを手に取った。 今日は何にしようか。 拘り味噌か、拘り醤油か。 「拘り味噌ラーメン。メンマ抜きで」 「あいよ!」 どうやら、さっそく抜きが頼まれたようだ。 ちらりと顔を見てみると、常連の一人だ。 いつもメンマを辛そうに食べるから、印象に残っていた。 メンマが苦手な人間でも、大将の旨いラーメンを最後まで美味しく食べることができる。 他人事ながら、何故か俺が嬉しくなった。 抜き。 シンプルだが、素晴らしいシステムだ。 「大将、注文ー!」 「あいよ!」 「拘り味噌ラーメン。トッピング抜きで」 「あいよ!」 待て。 抜きすぎだ。 大将のラーメンはトッピングからにじみ出る味を加えて、初めて完成する。 それはもう大将のラーメンではなく、ただの素ラーメンだ。 「大将、注文ー!」 「あいよ!」 「拘り味噌ラーメン。スープ抜きで」 「あいよ!」 おい、どこを抜いている。 それはただの油そばだ。 卵を落として、卓上調味料のオリジナルブレンドで味付けでもする気か。 「大将、注文ー!」 「あいよ!」 「拘り味噌ラーメン。麺抜きで」 「あいよ!」 ラーメンのメンを捨ててどうする。 それはただのラーメン味のスープだ。 拘り味噌汁だ。 「大将、注文ー!」 「あいよ!」 「拘り味噌ラーメン。茹で抜きで」 「あいよ!」 ジーザス。 それはただの……なんだ。 茹でる前の麵って何て言うんだ。 いつの間にか、大将が俺の前に立っていた。 なんだろう、今までにないプレッシャーを感じた。 まるで俺も、この大喜利のごとき抜きに参加しないといけないような、意味の分からないプレッシャーを。 「注文は?」 俺は逃げるようにメニューに視線を落とし、目に入った言葉を読み上げた。 「拘り味噌ラーメン。『拘り』抜きで」 「あいよおおおおおおおおおおお!」 俺の目の前には、器と箸だけが置かれた。 翌日、看板は撤去されていた。 ついでにあの日、カウンターに座っていた人間全員出禁になった。
男がテレビをつけた。 画面の中。 若い男がマイクを向けられている。 便利な人。 噛み合わない受け答え。 ワイプのタレントが笑う。 出ない方がいいと思えば、差別。 出たら、笑いの種。 本人が良ければ、許される。 男は静かにテレビを消した。
心機一転したくて、SNSのアカウントを削除した。 何度アクセスしてもアカウントページが見えなくなり、一か月後に完全削除のお知らせが届いた。 「これで、本当に終わったんだ」 私はいくらかの開放感を感じながら、スマホからアプリをアンインストールした。 『ねえ。あんた、復活したの?』 一週間後。 私にSNSの外から、メッセージが届いた。 私のアカウントを知っている、数少ないリア友だ。 『してないけど』 『嘘。まったく同じIDと名前のアカウントがあるんだけど』 私はすぐに、削除したはずのアカウントページへと飛んだ。 そこには、私の過去アカウントと同じIDと名前を持つ、別人のアカウントがあった。 何故別人と言えるかと言うと、アカウントの画像も、投稿している内容も、私とは別人だからだ。 偶然の一致かとも思ったが、IDと名前が奇跡的に一致することなど、あるだろうか。 「き、気持ち悪い」 私は捨てアカウントを作って、なりすましアカウントだと通報したが、運営からの返事はノー。 アカウントが完全削除された時点で、そもそも過去のアカウントは存在しない。 なりすますもなにも、なりすまし元がないという結論だった。 もっともだ。 全ては、アカウントを削除した私が悪い。 私はスマホを置いて、別のアカウントだと気にしないように心掛けた。 しかし、何をしていても、私のIDと名前で好き勝手やっているやつがいるという事実が、私の記憶の隅っこに居座り続けた。 もういらないと消したつもりが、大事なアカウントだったのだと、消してようやくわかった。 アカウントを返して欲しい。 駄目元でメッセージを送ってみたが、メッセージに既読がついただけで終わった。
庶民は明日も食うか食わずかなのに政治家の食事は豪華だ。 僕は架空の政治家の料理番になってみようと深夜の魔法を使う。 しかし最近は魔法も司法や行政の手が入るので役所に魔法を使う書類手続きに行かなくてはならない。 審査を通していよいよ政治家の料理番だ。 まずは庶民の感覚を味わって貰おうとどっかの政治家が失言した400円で作れるカップ麺などだ。 僕は市販のカップ麺に予算400円で買える適当な食材をぶっ混む。 政治家は裏パーティー等で色々な闇鍋っぽいメニューも堪能してるだろうからこれは美味しく食べて貰えるだろう。 続いては前菜だ。 1部の移民の人などがセミを取って食べたり畑から野菜や果物を盗んでいるので僕はそれを魔法で取り寄せて採取セミ盗難野菜果物などのオードブルを作る。 魔法で食べたあとに政治家が自分達の失策で国民の生産した作物や環境などを考慮しなかったことで心に深い食中毒を負うように味付けをする。 続いてはメインディッシュだ。 これは一風変わった趣向なのだが世界的に推し進められているバイオミート、石油製品などで代替したケミカルサイエンスたっぷりなカロリーたっぷりの胃もたれしそうな油(文字通り使っているものの大半は石油製品や医療産業の横流し品だ) や放射能で汚染された土地から作った何だか得体の知れない様々な調味料を垂らして作る。 政治家は見た目は華やかなそれらの料理を満足そうに食べるだろう。 何なら私達も庶民と同じものを食べてますよ、とアピールしてテレビで流して貰って構わない(逆デジタルタトゥーってやつ) しかしここで1つ問題がある。 政治家たちは呪法を使って影武者を使うということだ。 僕は1通り料理番を終えて朝のスポーツ新聞を読む。 そこには一面に見出しで「○○党 国会内の食事を見直し 庶民と同じ納豆ご飯を食す事を閣議決定!」と書かれている。 やはり政治家は逃げ足が早い。
最近自炊して官能小説書いて人と話して夜眠っているから何か日焼けして健康になってきている。 マズい。 僕の持ち味は蜘蛛を排水口に流したりする陰鬱で不健康な奴なのに。 不健康な事をしよう。 まずは夜のスナック菓子を食べる。 しかし小説で糖分を消費するのでやたら脳が回り健康になってしまう気がする。 マズい。 ゼロコーラを飲もう。 しかし人工甘味料なんかより身体に悪い眠剤を注射で打っているので僕の身体はケミカルな反応を起こし筋繊維が発達するような気がする。 マズい。 じゃあ深夜の拉麺を食べよう。 しかし深夜の拉麺はストレス解消にいいのでむしろ元気になってしまう。 マズい。 余った拉麺と畑で貰った食材などで明日はイタリアン風の拉麺などを知り合いに振る舞おうとか考えてしまう。 マズい。 人のために何かしてしまう。 マズい。 もっと閉鎖的になって排他的になって人と関わってなんかいられるかよ、って斜に構えて都会人になりたいのに新宿の喫茶店でレポート書いている女の人に話しかけて田舎者丸出しでアホヅラで話してしまう。 マズい。 本来的におまえは何処かの部族か?もっと初対面の人間は警戒しろよ、と自分で突っ込みたくなってしまう。 マズい。 加山雄三じゃないんだから皆友達だ~僕は幸せだな~、とか能天気になってストレスが無くなっていく。 マズい。 こうなってくると何か僕は不健康になれない呪いでもかかっているのか?と疑いたくなる。 たばこを吸う。 今日も元気だ煙草が旨い。
前は、自分が幽霊になるなんて思ってもみなかった。 命を手放すその瞬間、「残るか残らないか」とかの重大な二択を迫られ、生に未練タラタラだったあの頃は愚かにも「残る」と即答した。今はすごく後悔している。 初めはとても楽しかった。知らない場所へ行って、色んな景色を見て、優霊にも出会って、友達が出来て、幽霊も悪くないなって思えてた。なのに、こいつが現れてから。 「ねぇ、今日はどこ行く?いい場所知ってるんだけどさ…」 「これみて。可愛いワンコの幽霊。」 こっちが嫌がっている場合、これは付き纏いにあたる。はずだけど、幽霊界には警察などいない。ただただ面倒な幽霊だった。 そんな幽霊とも何故か仲良くなっていった。初めこそ何もかも噛み合わない二人ではあったものの、とある出来事をきっかけに相棒と呼べる程の存在になっていた。 あれは、夕日が映し出すロマンチックな公園でのこと。 二人はいつものように付き纏い付き纏われ、公園の中で追いかけっこをしていた。その日は冬で、人間の数は極端に少なかった。というより、ベンチに座っている制服を着た男女だけだった。 「ねぇ、あの二人恋人同士かな。」 ふと漏らした幽霊の方を見れば、死んでるくせに目の辺りがキラキラ輝いていた。間を空けずに否定したが、その目は男女に釘付けで一時付き纏いが止んだ。体感、ものの数分。 照れくさそうな二人がもどかしく笑うと同時に、幽霊がブランコを蹴飛ばした。 誰もいないはずの公園、乗っていないはずのブランコが揺れて男女は勢いよく抱き合った。抱き合ったのだ。 「え、キューピットじゃん。」 「邪魔しようとしたくせに。」 はじめこそ呆れたが、考えれば考えるほど面白かった。 恋人量産できるなんて、しかもそのドキドキを眺めててもバレないなんて、生きている頃ハマっていた恋愛物語よりも良い。 たまらず悪い笑みを浮かべたくなって、幽霊を見た。 「これはやるしかない。」 そこからは、いたずらにまみれた日々を過ごしていた。 恋人未満っぽい人間達の会話を盗み聞いては、いい感じのタイミングを見計らって悪戯する。もちろん結ばれない人もいたが、成功率は結構といったところ。なにせ、幽霊は見極める力が異常に凄かった。かくいう自分は、ほとんど状況を楽しんでいた。 唯一悲しかったのは、初めての恋人達が次の夏には別れていたこと。だけどそれだけが幽霊生活でもないので、大して気にしてはいない。 「夏は公園に来る恋人なんて居ないから、暇だったんだよ。」 「でもさ、いっぱい話せて面白かったけど。」 「嬉しいこと言ってくれるね。」 首から上が無い幽霊であるこの人の素性はよく知らない。お互いよく分からない存在。それが、一緒に楽しい時間を過ごせば惹かれる事なんてよくある話で、自分はまさにそれだった。 常日頃ずっと一緒に行動している訳でもなく、暇つぶしとして偶々一緒に悪戯する事だけの楽しみだったからこそ、別に湧き出た思いを隠す気もなく、ふとした瞬間当たり前のように好きだとか思ってみたり、人であった頃より自由に溢れていた。 「前は付きまとわれて怒ってたくせに。」 「本当に面倒くさかったからね。前は。」 「冬になったら仲良くなって一年だね。」 「もう冬だよ。寒くないけど。」 冷感を全く感じ取れない霊体として、冬は遠くまで見える景色が今年も見られると胸が踊る。多分、今年はまた違う景色として。 「そうだ、最近身体がふわふわしない?別に行きたくもない場所に引っ張られるというかさ。」 確かに、似たような感覚はある。 夜になると突然霊体すら自分のものじゃなくなるみたいな、抗えない何かを感じることはある。それはつまり、もう幽霊で過ごす日の終わりが近いかのように。 今日、偶々ここに集まった二人。絶妙な距離感を感じたのは今日が初めてだ。寂しいに近い気持ちが、増していく。 近頃この周辺で強い後悔と強い悲しみを感じるみたいで、誘われるように公園に集まった今、またベンチにあの時の二人が居た。 恐らくこの感覚の原因。怨みも妬みも存在しないのに、少しずつ二人に引き寄せられてゆく、それは幽霊も同じだった。 仲直りの会話で緩んだ空気と二人の身体に不本意ながら乗り移ってしまった。気持ちにできた隙なのかもしれない。 初めて乗り移った人間の体では、この冬の季節がとても寒い。 でも、久しぶりの感覚に涙が溢れそうになる。自分が操っているのか、それともこの女の子の意思なのか、目の前に迫り来る男の子の顔が、幽霊のように見えた。そのまま目を閉じると、唇にだけ伝わる感覚が、冷たい指先まで一気に暖かく赤く染めたような気がした。 それが、幽霊として過ごした最期の時間だった。
am4:00 目を覚ます 薄明かりの中横を見ると 隣の布団で寝ている妻はまたメガネをしたままだ そっとメガネを外して妻のスマホの横に置く 気絶したように眠る彼女 彼女にとって僕との結婚が良かったのか、いつも不安に思う。いくら彼女が幸せそうでも。 彼女を優しくし抱きしめる。体全体を確かめていく。この瞬間「君は僕のものだ」と感じられる スマホのアラームがなり僕は布団から出る 時刻はam5:00 朝食は僕が作ることが多い。理由は二つ。 職場に持っていく弁当を作る為と、妻が朝に弱い為。 朝に弱い。いや、正確に伝えるなら、朝起きれない為。そうじゃない人には理解できないだろうが、本当に朝起きれない人はいる。努力とかそんな事で解決出来ない程苦手な人がいるのだ。 また、妻は僕の料理を美味しいと言ってくれる。つまり、この辺は相性が良いのだ。 お弁当手作り、洗い物、自分朝食を済ませ、妻を起こす。 「おはよう。そろそろ行ってくるよ」 まだボンヤリしている彼女を布団に残し雨戸を開け、レースカーテン越しに朝日を入れる。部屋が明るく二人の今日を迎えてくれる。 歯磨きをして、持ち物を確認して、天気予報を確認して、再度妻を起こしに行く。 「じゃあ行ってくるよ」 服の中に手を入れて体を触る 寝ぼけたままの妻が 「気を付けてね。寝ててゴメンね」 と答えてくれる。 玄関で靴を履いていると何とか起きて来たメガネ姿の妻が「無理しないでね」と再度声をかけてくれた。僕も「楽しんできてね」とハグをして、握手をして、玄関を開ける。 今日は妻は子供達と会う日。前の夫との。 彼女の気持ちを、彼女の大切な人達の気持ちを少しでも…少しでも…やわらかく出来たらなと思う。僕の踏み込める範囲で。僕と妻はまた今日を始める。
ねぇ、山を越えたら何があると思う? 皆んな山を越えたら海があるっていうの。 でも私は見たのあの日山を越えたら.... 〈第一話山道〉 「海斗!お願い!宿題見せてくれ!」 今日もか...と僕は思いつつカバンから宿題を出して友人に渡した。 「ありがとーな!海斗!」 そう言いながら友人は僕の宿題を写し始めた。 「お前さぁ、なんでいっつも宿題やってきてないの?」 友人は書き写しながら言った。 「あー、最近山道っていうのにハマってるんだよ。」 「山道?」 「そう山道。新しく出たゲームでこれが面白くて」 そんな物で宿題をやっていないのかと思ったがやめとくことにしとこう。 8時15分。 「よし!本当にありがとーな海斗!」 そう言いながら友人は教室を出て行った。 「山道か...」
「ただいま」 「おかえり。遅かったね」 「帰りに献血してきた」 夕方、妻が買い物袋を抱えて戻った。 「一緒にドナー登録もしたよ」 「なに、それ」 「骨髄バンク。この前、言ったよ」 「あぁ、そうだったね」 夫が冊子を開いた。 「あなたも登録すれば」 「ん……」 「なに?」 「会社、休まなきゃでしょ」 「そうね」 「休む理由、何て言ったらいい」 妻はコーヒーを手に、椅子へ座った。 「正直に言えば」 「それってさ、いい人アピールしてない」 「じゃあ、体調不良で休めば」 「……バンクの人、会社に電話くれないかな」 「はい?」 「そしたら、さりげなくみんなに知れるでしょ」 呆れ顔の妻。 「そういえば、ママ。免許証の裏にドナーの丸も付けてたよね」 「人の役に立ちたいじゃない」 夫が免許証を取り出した。 「僕も丸しとこうかな」 「たまには、いいことしたら」 「ん……」 「今度はなに」 「手術台の上って、裸でしょ」 妻が天井を見上げた。 「なに言ってんの」 「下半身に布とか、掛けてくれるかな」 「聞いてみたら?」 夫の後ろ姿を眺めながら、呟いた。 「……器も小っちゃ」
可愛いって、言ってくれるのは嬉しいよ でも、貴方は本当の私を知らないでしょ? 知ってるよ、顔に書いてある どうせ、綺麗な顔しか、見てないんだよね 私、そんなに綺麗な人間じゃないんだよ? ねえ、聞いてよ …私、いつ、誰に頼ればいいのかな? そんな風に、私を助けてくれる人なんて この世界にいるの? ねぇ、助けてよ
あからさまに肩を落としたズっちゃんを見て何を言いたいのかなんとなくわかる。緑色じゃなくて青いその色に、のっかっているのがアイスじゃなくて生クリームだということに、たいそう不満があるのだろう。けど、かろうじてなんとか視線を向けるのが可能な真っ赤なさくらんぼからの主張は「ウチの店ではこれがクリームソーダなんですよ」だった。 ―ねえ、雰囲気のいい喫茶店、見つけたんだ。今度、行こうよ ズっちゃんからそう言われたのは一ヶ月くらい前だったかな。お互いの休みがなかなか合わなくて、やっと今日、こうして来ることができたっていうのに。 「緑じゃ… ないんだね…」 小学校の飼育小屋にいるウサギが死んでしまったときみたいな声でズっちゃんは悲しく言って、それがあまりにもだったから僕まで胸が詰まってしまった。 「あああ。あああああ」 あ、マズい。ズっちゃんのよくない兆候。というか、ことが上手く呑み込めなくって頭のなかで消化不良を起こしてるようだ。 「真実は、時に毒よりも人を殺すわよね」 こうなってしまうとどうすることもできない。 「…」 「ずいぶんと喫茶店も進化したものよねえ」 「…」 「巻きこみ巻きこみ」 「…」 「アワイモヤモヤのみすぼらしさにめぐりあわせて」 「…」 「このお店のは、緑じゃないんだね」 「混乱、おさまってきた?」 「うん。でも、この青が緑にはならないんだよ」 「まあ… それは…」 「受け入れるしかないんだよねえ」 ズっちゃんはあきらめてクリームソーダに取りかかる。切りかえがはやいのがズっちゃんのいいところ。顔にかかっていた霧が少しずつ晴れていく。そのズっちゃんにすすめてみる。 「これも飲んでみる?」 「いいの? 気になってたんだ、ミルクセーキ」 ひと口含んでズっちゃんは、 「おお。この甘さは私の合う甘さだわ」 と言ってから続けて、 「私のミルクセーキはこのお店にて」 と、ヘミングウェイみたいなことを言ってはストローを葉巻のようにくわえてみせる。うかれてるいまのズっちゃんは、通常の姿に向けてのいい兆候だったりする。
正装はパジャマ。 枕の持参可。 「ねー、パパー。私、ディズニーがいいー」 「何を言ってるんだ。ここも立派な遊園地だぞ?」 名付けて、睡眠遊園地。 睡眠と言う娯楽を、謳歌できる場所だ。 「まずはコーヒーカップだ」 見た目は、普通のコーヒーカップ。 くるくる回るのも一緒。 違う点と言えば、床にコーヒーのような液体が溜まっているところだろう。 裸足で乗り込んで、足湯を楽しむ。 「あ、気持ちいい」 座る場所はふかふかのソファ。 「では、睡眠の世界に行ってらっしゃーい」 眠気を誘うBGMとともに、コーヒーカップがくるくると回り始める。 足湯がじんわりと体を温め、揺れがゆりかごのように心地いい。 「おはようございまーす」 気づけば寝ていた。 不眠解消。 「やっぱりディズニーがいい」 睡眠の良さを知らない娘は、相変わらず不満そうだった。 「たっぷり眠れただろ? まだまだ行くぞー!」 急下降の衝撃で意識を飛ばすジェットコースター。 触り心地の良い馬に抱きつき眠るメリーゴーランド。 天空のベッドの観覧車。 アトラクションは、まだまだいっぱいある。 俺は娘の手を引いて、並びの少なそうなアトラクションを目指した。
彼は猫背…… というか猫だ 毎朝ひとつ ありがたい言葉を 授けてくれる にゃあ 今日もきっといい日になる そんな予感
暑い時期は 日になんども お庭の草花に お水をあげます めんどうではないです たくさんお庭の草花たちと 顔をあわせられることに よろこびがあるのです お庭の草花たちは わたしよりも 暑さに 敏感なようす 葉っぱがしなびてしまったり 丸まってしまったり 足元の土にしても かちかちと 乾ききっているのです しんどいようで 顔をあわせるたんび ぐったりした姿を わたしに見せるのです たすけて と言っているようで なんとも こころぐるしい… 鉢植えの子たちは 置き場所を考えて すこし日陰に うつしてあげたり そうでない子たちは ごめんね 夏が終わるまで がまんしてね いっしょに がんばろうね そう言ってあげれば よかったかな 反省と 反省と そして 後悔と 草花のつぎは 自分にお水を あげる番です 麦茶が とっても おいしい いまなら言えるかな いっしょに…
人差し指に残った感覚 君の声と君の香りと君の表情 あの数分で僕と君はあまり相性が良くないと僕は思った だけどいつも君を抱いているのは 君の身体が好きだから 君は僕の玩具でしかないよ 死ぬまで君と遊ぶのさ 最低だろ 好きなんだからしょうがないのさ 僕に唾を吐けばいい 僕は美味しくいただくだけさ 今夜も君を抱いて眠ろう 君の気持ちなんか気にしない 俺はお前が欲しいだけなのさ
私は有る時からずっとこう為る事望む様に 為った一番身近な国同士の交流もしやこれ 神が動いた結果かも知れない世界が神支流 と為る時日本の行方は何処神を騙りLINEへ 引き込み金銭強請る人間達の神ビジネスに 果たして真実は有るのだろうか反日教育の 意味とは神界が日本界の扉を閉ざした証明 かも知れない
海は、海を眺めるばかりで退屈 泳げないなら、なおさら 背を向け、沿道に目を向ける 自転車でふたり乗りの女の子たち 合唱してる歌声が風にかすかに流されて 青春よねえ 数年前の自分とあの子を重ねる 遠い雷に、互いの想いを問いかけて ふたりで風船を飛ばしたあの日みたいに いまでも好きなのに
「先生、アルバートは?」 私が寝室に入ったとき、リッカは起きていた。先に起きてきたアルバートやインダのシーツでも干してあげようと思った矢先だった。 「アルバートは院長とお出かけみたいだよ」 「ふーん」 リッカは添え木を摩りながら、「本当はアルバート、この部屋にいるんでしょう?」と首を左右に振ってあちこちに視線を送っていた。 昨日、あれから、アルバートは眠ったリッカの横で眠り、眠っているリッカの隣で目を覚ましたそうだ。そして、院長の後ろを歩いて孤児院を後にした。 当時、私の脳裏にはあのときのリッカの笑顔があったが、手を振らざるを得なかった。満面の笑みを浮かべるアルバートを見ると、手を振らないではいられなかった。扉が閉じて静寂が戻ったときの虚空を、私はまだ覚えている。 「リッカ、お腹空いてる?」 「うん、少し」 私はリッカのためにフルーツサンドでも作ってあげようと思った。これもその場から逃げる口実だったのだろうか、私はそそくさと一階へ向かった。 ソファのある部屋にアルバートの幻影が見える。私は頭を振ることでその幻影を払い除けるけれど、そこにはやはり人がいる。 「どうしたの?」 インダがかぎ針を持ってこちらを見ている。 「あ、いや。虫がいて」 「洗い物、残してるからじゃない? 手伝おうか?」 「いや、大丈夫! 私だって、もう大人だから」 「大人だからって、手伝われちゃダメなんて決まりはないと思うけど」 インダはそう言って座った。 私は逃げるように台所の影に隠れる。台所には山積みになったお皿。鍋もある。もちろん、虫はいない。 私は大人になってなおも、嘘をつく人間だ。 蛇口をひねると水が出る。これくらい私も単純に言葉をひねり出せたら。皿の汚れは瞬く間に排水口に流れていった。 お皿がまた一つ、また一つと綺麗になって積み上がっていく。 「綺麗だね、お母さん」 私は無視をした。アルバートならそう言うという、幻影だったからだ。 「カウルみたいだね」 気付いたときにはお皿は床で割れていた。 手をすり抜けて落ちた、ただそれだけの時間が一日のように長く感じられた。 「大丈夫?」 インダはゆっくり私の横に歩いてくる。警戒の足取りなんだと、私にはそう見えた。 「大丈夫、まだ力入んなくて。朝は苦手だなあ」 「手伝うよ」 「いや、いいよ」 「手伝いたい」 インダは腕まくりをすると、私を流し台の向こうに追いやって、一人でお皿を洗い始めた。 「洗い終わったお皿を拭いてくれますか?」 「優しいんだね、インダは」 「もう最年長なんで」 私はまだ、この子たちのこと、何も知らない。 お皿の割れた音に、ミミが降りてくる。ここでレイやカウルが降りて来ないのは、想定できた。 「大丈夫? お姉ちゃんも心配してた」 「ごめん、お皿割っちゃっただけ」 「私が割った」 インダがそう言って、ミミにお皿を見せる。 「これ、アルくんのお皿」 「うん、割るつもりはなかったんだけど」 私はアルバートのお皿を。 「でも、怪我はないから安心して、また新しいお皿を作ればいいよ」 ミミはインダと私の顔を交互に見て、二階へ戻った。 「どうして、自分が割ったなんて?」 「その方が都合がいいから」 都合。 「先生、お皿は作ったことありますか?」 お昼頃になると、子どもたちはみんな寝室に集まっていた。インダがアルバートのお皿を割ったことになったのを申し訳ないと思いつつ、アルバートのために新しいお皿を作ろうという話になった。 「アルバートのお皿は古かったから」 リッカが少し落ち着いて言う。 「どんなお皿にしたい?」 「絵を描きたい」というカウル。それに賛同するミミとリッカ。 レイは「いつもおかわりしてたし、大きくしてあげたら?」と現実的なことを言う。みんなはそれを遠くから見て、一理あるとなった。 粘土は孤児院の裏手にある土壌からスコップで掘り集めた。そして、空気を抜きながらお皿の形に整えていく。手先の器用なインダの真剣な横顔をリッカは眺めていた。 ミミやカウルはインダの手先で生まれる新しいお皿に釘付けになっている。 「こんなものかな」 インダは泥だらけになりながら、一枚のお皿を形作った。以前のものより一回りほど大きく、平らな場所も多くて絵も描きやすい。そして、何よりアルバートへの気持ちが籠っている。 すると、インダは「じゃあ焼いてくる」と私を連れて寝室を出た。みんなは完成を楽しみにしている。 リッカのベッドを中心に絵の話をしている。 そして、向かったのは台所。粘土のお皿をテーブルに置いき、インダは屈む。そして、小さな棚を開けた。 「これは」 インダはそこから新品のお皿を取り出した。 「いい嘘って、あるんですよ」 白いお皿を一枚持って、得意気に笑った。粘土のお皿がぐにゃりと歪んだ。 【つづく】
太陽は地球の周りを回転して早朝顔を出すが もしや月もその後追い賭け回転して夜顔出して るかも知れない白昼現れる月も偶には有るけど 今現状の3次元の館では其れ冴え伺う事出来ず 黄金の太陽が懐かしい再度神との静寂で不思議 な空気に紛れたい3次元の日々は騒々しい人間 は弱者を侮る生き者だ1人静かに努力する老婆 子供の様に奇声上げる者、この時空に最寄りの 無い私も今は弱者だから人間が示す哀れみと言 う名の偽善と優越感冴え伺えたやはり人間達は 今後神や宇宙とは共存不可な生き者かも知れない
ブックカフェの空気は、誰かのしらの謎に満ちた熱であふれている。 「いちごミルクかしらね」 どこのテーブルから聞こえてきたのかわからない誰かさんのその言葉に、ステキだなあと思ってしまった。あなたと一緒に食べたいかき氷、の返答としては最高と言える。 「ちなみに私は、夏の夜空を見るのが好き」 また聞こえてきた発信元のわからない言葉。やっぱり、ステキだなあと思ってしまう。これだけは夏に欠かせない、の流れからだったら満点の回答。冬の痛むような冷たい星空と違って、少し湿り気のあるむしむしした空気のなかでのあれ。デネブ、アルタイル、ベガ。それだけでも勝った気分になれる。 「大きなカブができるほど、お庭は広くないですから」 ちょっと想像できない。どんなシチュエーションからの言葉だろう。 ―それでも何かつくってみたくない? ―トマトつくってみたいかな ―ミニトマトは? ―どうかなあ ―トマトができたら、パスタつくりましょうよ ―じつは、ピーマンもけっこう好きだよ ―きゅうりは? ―酢のものなんてどう? ―レタスがあったら、うさぎが来てくれるかしら ―なすをつくると、雨が降りそうだ ―枝豆なんてどうかしら ―ビール飲みたくなっちゃうなあ ―大きなカブができるほど、お庭は広くないけれど ―あれもこれもと思いは広がるねえ きっとこんな感じだ。 ブックカフェの空気は、誰かのしらの謎に満ちた熱であふれている。でも、私の物語は、まだまだ進んでいかないみたい。
専業主婦は寄生虫だ。 だから、俺にとって嫁は、ただの家政婦。 いつ捨てたってかまわない。 「先輩! 俺、ついに離婚してやりましたよ!」 後輩からの朗報を肴に、俺はビールをごくりと飲んだ。 「ついにか! やったな!」 「ええ! うちの嫁……いや、元嫁か。金がない金がないって言う割に、自分は友達と旅行して高い化粧品も買って」 「いいぞいいぞ! そんな嫁、捨てて正解だ!」 後輩の話を聞いていると、どんどん酒が進んだ。 脳が飛び出しそうなほど興奮し、俺も行動せずにはいられなくなった。 「先輩も、さっさとそんな夢捨てちゃいましょうよ! 糞嫁のいない生活……自由っすよー!」 「ああ! そうだな!」 後輩と別れ、俺は上機嫌で家へと帰る。 玄関を開けてリビングに向かうと、洗濯物を畳んでいる途中の嫁がいた。 「おい! おかえりは?」 「ああ、帰って来てたの。お帰りなさい」 のんきな嫁の声を聞いていると、いらいらが募ってくる。 いったい、今何時だと思っているのか。 もっと手際よくやっていれば、今頃家事なんてしなくてもいいじゃないか。 そう思うと、嫁のために働く自分が馬鹿らしくなってきた。 「お前、洗濯くらいもっと早く終わらせとけよ!」 俺が起こると、嫁もむっとした顔をしてきた。 「仕方ないでしょ? 昼は昼で忙しいんだから」 「何に忙しいんだよ?」 「お買い物でしょ。お料理でしょ。お掃除でしょ。それから」 「あー、もういい! そんなの、俺なら全部、夕方までに終わらせられる!」 俺は嫁に一歩近づき、嫁を見下ろしながら吐き捨てた。 「このまま俺の金に寄生するって言うなら、離婚だからな?」 俺は、ついに言ってやったという高揚感で、鼻の穴が膨らんだ。 嫁がどれほど怯えた顔をし、捨てないで欲しいと泣きついてくるかを考え、口角を上げながら嫁を見た。 嫁は、冷笑するような目をして俺を見ていた。 「な、なんだその顔は? 離婚だぞ? いいのか?」 「貴方、自炊はできるの?」 そして、矢継ぎ早に言い返してきた。 「大学生の頃、外食三昧で太ってたのは誰だったかしら? 今みたいに、食事の栄養を管理して、痩せてかっこよくさせてあげたのは誰? ろくに掃除もできないで、部屋中埃だらけで、ぜんそくが悪化したのは誰? パンツの場所は分かるの? アイロンはかけられるの? 貴方が来ているシャツ、誰のおかげでシワがついてないと思ってるの? 社員旅行、随分と服のセンスを褒められたんだっけね。その服を選んだのは誰?」 いつの間にか、良い派冷めていた。 高ぶっていた心は、冷凍庫に放り込まれたように冷え切っていた。 俺は、何も言い返すことができず、小さく俯いた。 「嫁ちゃん、です」 「分かればよろしい」 嫁は洗濯物をてきぱきと畳み終え、そのままお風呂に向かっていった。 俺はと言うと、その場を微動だにすらできなかった。 頭の中に浮かぶのは、何もできない赤子のような俺の姿。 嫁に寄生されたと思っていた俺は、いつしか嫁と言う存在がなければ生きられない体になっていたらしい。 嫁が畳んだ俺のシャツを手に取って広げ、畳み直してみようとする。 しかし、目の前にできるのは、理由もわからずシワができるシャツ一玉だった。
瓦礫の上に頬をあずける。金属の冷たさが、ゆっくりと肌に伝わってくる。 地平線の縁が、にごった赤色に変わっていく。街のあちこちで、アンドロイドたちのレンズがそれを捉えているはず。彼らにとって、これは単なる照度の変化にすぎない。日没までの残り時間を計算するための、ただの数値として。 風が吹いて、湿った土のような青い匂いが、鼻先をかすめる。肺の奥まで吸い込むと、心臓のあたりが少しだけ重くなった。 かつては、誰かにそのことを伝えていた。けれど、ポケットのなかの端末は冷たく黙ったまま。ネットの向こう側は、効率化の結果として人間が少なくなり、AIたちがやり取りする記号の海へと変化している。 もう、この夕陽の美しさを分かち合える誰かは存在しない。ネットワークの向こう側に言葉を投げかけたとして、返ってくるのは最適化された無機質な共感だけだ。 それを、共感と呼んでいいのなら… それでも、私は指を動かす。意味をなさなくなった画面の隅に、あるいは、指先の感覚が届く限りの地面に、言葉を書き連ねていく。それが誰に読まれるためでもなく、明日には風にさらわれ、データの海に埋もれる運命だとしても。 ―ここには美しい空があった その事実を記し続けることだけが、私がこの冷え切った世界で、まだ熱を持った生命体であるという唯一の証明となる。 足元の砂に指を沈めてみる。 ―伝えたい ただ、それだけを砂に呟く。 また風が吹いて、文字は、さらさらの粒へと戻っていく。 明日も、今日と同じような空だろうか。 今日とは、少し違う風が吹くだろうか。 深く息を吐き出す。 頭の片隅に淡く残った真っ赤な夕陽をなぞりながら、冷たいコンクリートの上で、眠りに落ちる。
揺れるススキ皆で手を振る 真っ白なガードレールに錆びた記憶 冷たい子どもの足 ゲームの続きをしようよ ナイトフィーバーはいつも通り ナイトフィーバーはいつも聞こえる 何処かで虫が鳴いている 渇きが遅い靴だけ干して もう布団に入ろうか 明かりを消すよ音を下げるよ 君の声が、君が寝たら裸になろういつものように ナイトフィーバーが聞こえている ナイトフィーバーが呼んでいる 何処かで虫が鳴いているうるさいくらいに