夏が室外機に見える 金色になった草の墓場が広がっている 白いスニーカーは晴れの日に良く似合う 「花火をやろう」と友達の家の側まで呼ばれて、川に降りて花火をした 友達は浴衣を着ていたけど、僕は何も言わなかった なんて言っていいのか分からなかったし、何か思ったかも覚えていない ただ、子供同士は綺麗という言葉が合わない まだ、あの橋の下の暗がりを覚えている 花火がついたまま二人で橋の下へ入っていく、あの場面を 夏は暑い。それだけ アイスコーヒーが美味しく感じる 恋が夏に始まっただけ。春でも冬でも良かった 恋が終わるのはどう決めるのだろうか クーラーが不憫だ
夕凪が 心地よく感じられたら 秋は すぐそこ そう思っても 事はうまく運ばない 秋は まだまだ ちょっと気配がと思って いなくなって ふたたび来たと思って また帰っていって おっとり? のんびり? きまぐれ? ときに怖がり? 夕凪を 心地よく感じるのは 秋はねこだから かもしれない
何か寝られなくて機嫌が悪い。 指先が震えてくる。 世間では煙草のアニメがやっている。 煙草なんてそんないいもんじゃねーよ。 戦争中に配られるものなんだから。 政府に上納してる税金が膨れ上がる。 傭兵は死体の山を築く。 大麻とか覚醒剤でもやってろ。 そんで国に反乱を起こせ。 これは何の罪に問われるんだろう? あ、ヤバい国家転覆罪だ。 僕しか煙草を吸わなくなれば国は大麻でも解禁するだろう。 酒を静脈注射してろ。 もしくは肛門に流し込め。 本当にやりたいことやって捕まるなら本望だろう? ただし責任は取れ。 僕は花の盗撮と見るハラと詐欺罪で捕まりそうだ。 悪いことして金作ってもいいよ。 ただし上品さが必要だ。 幼稚園児の悪戯の延長みたいなことが多すぎる。 政治家なんてその最たるもんだろう? 俺より餓鬼っぽいことやって金もらってやがる。 大人が全部正しいならこんな世の中になってねえよ。 俺の弾倉は不思議パワーによってまた弾丸を詰められる。 でも使うのは料理の包丁で料理するだけ。 セルフレジで他人の仕事を奪う。 仕事のための仕事。 ハリボテの世界。 考えがまとまらない。 パスタの放射能は上がる一方。 金を儲けて石油を飲む店員は何処か寂しそうだ。 まあ働いて税金納めて貰ってるから僕は僕に出きることをしよう。 オーバーワークになってるやつはキ○ガイがまともかのどっちかしかいない気がする。 俺はキチ○イの方だが。 本物がやっかんでくる。 偽物は猫をいたぶる。 中庸は無視する。 あるいは中庸こそが本物かもしれない。 価値観の転覆。 俺の嫌いな派閥はまあ必要悪なんだろう。 俺は必要ない悪。 毒草。 人を殺すのに必要な人が摘み取る植物。 なるほど俺は煙草の葉っぱと同じなんだな。 合点がいった。 死にたがりが多い。 皆俺を吸っている(妄想)
マスターは帰ってきた。短く、 「どうだった?」 と言った。 「どうって、別に。誰も来なかったし」 「ま、常連たちは、オレが夏のあいだ日本にいないの知ってるからな。そりゃ、そうなるわな」 なんだか、素直にマスターの顔を見れない。 「どうした? なんか不満か? 平和だったろ?」 「でも、まあ、そうだけど」 言って、ポケットから店のカギを取り出し、マスターに渡した。 渡すとき、自然と言葉が出た。 「ひと夏くらいじゃ、さ」 マスターは、すこしきょとんとした表情を見せた。 それから考えるように、受け取った手のなかのカギを見つめ、でも突然、僕を見て、にやりとした。 黒く焼けた顔に、白い歯が、ヘンに眩しい。 多少、構えた僕に、マスターは、あっけなかった。 「そう言うな。コーラでも飲むか?」 カウンターの席に座り、マスターの背中を眺める。 振り向いたマスターが、コーラを置いた手を、そのまま僕の頭に置き、軽くなでた。 くすぐったくなって、僕は、下を向くしかなくなった。 「また、やってみるか? 来年」 視界の外から、マスターの声が耳に飛び込む。 僕は、ほんの少しだけ考えて、顔を上げ、でも、言葉にはせず、ただ、うなずいた。 涼やかな空気に、すこしだけ、日が短くなった気がした。 窓の外には、あの日の、すてき、の欠片は、姿も声もないけれど、波の音が、いまは、不思議と澄んでいる。
日曜日の朝、八時。 幹線道路脇に、二人の警官が立っている。 「先輩。雨降ってきたっすね」 「寒いな」 歩道の植え込みの影に、レーダーを置いた。 「なんか、ずるくないすっか?」 「なにが?」 「レーダー隠してるし」 「見えたら、スピード落とすだろ」 二人は、気づかれないよう、身をかがめた。 「なんかこの瞬間、ワクワクしません?」 「あぁ」 「この前、釣りに行ったときと、同じなんだよなぁ」 「獲物を取る感じだ」 すると、一台の車が速度を超えて走ってきた。 「きたぞ」 「あっ、スピード落とした」 「バラシたか……」 水しぶきを上げ、余裕の顔で通り過ぎた。 「流れもポイントも、いいんだけどなぁ」 「おぉ、きたぞ」 「大物ですよ」 大型トラックが、スピードを上げて近づいてくる。 「あせるなよ。よし、ヒット」 待機していたパトカーが、サイレンを鳴らす。 二人は、停車したトラックに駆け寄り、運転席の窓を叩いた。 「運転手さん、飛ばしてたね」 「はぁ……」 「で、なに急いでたの?」 「鮮度が命なんで……」
蝉が泣いている 彼等は他人なんか構ってられない 自分の人生(蝉生)の短さを感じているから 毎日身体のどこかが朽ちていく パズルのピースが一つまた一つ取れていくように サルスベリの花は何か素敵だ 今日1日を振り返って、そつなくこなしたが、辛い 見た目が素敵な人は心が素敵だ 死神が後ろにいる気がする また相手をするとなると溜息が出てしまう 彼は僕を殺しはしない 死なせようとするだけだ 蝉が泣いている 最近、妹なのかと思う時がある 母親に会いたいとは思わない 父親に似た人が職場に来た どうしてか、そんな気なんかサラサラないのに、応援してしまう もう一人の僕が来ている 学校とは特別な場所だ 息子がフエラムネを使ってリンクの真似をしていた そろそろJAPANからNIPPONに国名を変えてもいいと思う 太陽の寿命は後50億年程らしい 小さな太陽ほど長く生きて大きな太陽程早く死ぬ それは使えるエネルギーが同じだけしかないように感じる ゆっくり歩いていくかダッシュするか 遠くに行くなら歩いていく 座りながら貧乏ゆすりをしている人そのまま前へ走り去ってしまいそうだ なかなか筋肉が冷めない 明日にでも動けなくなるんじゃないかとビクビクする もし、そうなれば今の僕は居なくなってもう一人の方の彼がここに座る 彼はどのくらい苦しめば許してもらえるのだろうか 目が乾く 子供が出来たら厳しく育ててはいけない 世界が厳しい所だと思ってしまうからだ 家族は世界で唯一の安全地帯でなくてはならない なぜならそんな世界はハズレだからだ 昔のラブソングが流れている 愛してるなんてそんな大げさなことではない 至極当たり前のことだ どこかでストーカーと言うフレーズを聞いた気がする 今思えばストーカーも唯一の安全地帯を探しているのかもしれない。家庭で持てない子供はどこかに求めるしかない 寝ても覚めても厳しかったら気が狂うからだ。 優れた漫才師は自分達の引き際を分かるという 自分が優れたとは思わないが引き際を察して終わりにしようとしているのではないかと思いたくなる時がある 欲しいものは全て手に入れた 本当にもう何もない 沢山の努力もしてきた 結果も出ている 自分以外も認めている 悲しませないために生きている 皆そうだろうが モバイルフォン Mobileと言う英語が不思議で原語を調べてみたが腑に落ちないMOVEの辺りにいる言葉らしいので、その辺は少し納得はするが可能性があるとなるとよく分からない 他に仲間はいないものか 調べたらFlexibleがあった。これは分かる bilisと言うラテン語は僕の人生から遠くにある。相性が悪いと思う ガンダム世代ではないし。 彼女が欲しいと言うが彼女が出来たらどうしたいのかの具体性がない。 本当に彼女が必要な人は既に行動している。なぜなら必要だから。つまり、必要ではないということだ 「年を取ると説教臭くなるね」というオジサンをよく見るが、よく分かる 黙って見守って危ない時や助けを求められたらフォローするが良いと思う つまり親父は黙ってろと言うこと だから大人は静かなんだと思う 女性に抱かれるならイケメンと非イケメンだったらどっち?と聞かなくても答えは出ている さっきも言ったようにイケメンは心から 決して無駄話をダラダラと話してはいけない
雑貨屋で買った、真っ白な便箋。 ぼくは、買ったそれを夜空に向けて、一分間待つ。 「できた!」 真っ白な便箋には夜空が映り、紫と黄色の鮮やかな色が浮かんでいた。 ぼくはペンを手に取り、彼女を顔を思い浮かべながら、文をしたためていく。 星の輝きが眩しい空の色は、都会では決して見ることができない。 文字を書いている間も視界に入り、思わず見とれるほどだ。 「驚いてくれるかな?」 遠くまでやって来たかいがあった。 そんな思いで、手紙を完成させる。 近くの郵便局で切手を買い、ポストへ投函。 田舎の消印が押されて、彼女に届くことだろう。 そして、数週間以上が経過する。 彼女から、返事が届く。 「……やられたなあ」 便箋に映るのは、鮮やかなオーロラ。 消印は、もはやなんて書いてあるのか、よく読めない。 国際郵便であることは確かだ。 「オーロラが、見てみたいな」 彼女からの返事を読みながら、次はどの空を映そうか考える。 彼女を驚かせることのできる、鮮やかな空はどこにあるのか考える。 「富士山でも登ろうかな? それとも、ギリシャやエジプトの歴史ある空とか?」 未だ見たことのない空を思い浮かべながら、ぼくは便箋を買うために雑貨屋へと向かった。
夏は嫌いだ。 変に感傷的になってしまう。 これも、夏は高エネルギーで不安定な状態だからだ。降り注ぐ太陽光に地球の運動エネルギーは増大する。アスファルトを素足で踏んでみろ。一瞬で焦げ焦げになる。 青の絵の具を直に塗り広げたような夏空を見ていると、見上げているはずなのにどこか覗き込んでいるかのような感覚になる。それは海でもあり川でもあり宇宙でもありそうだ。でもどれも違う気がして、やっぱり空なんだと思い知る。 向こうには太陽の光を反射して白く煌々とする雲が縦に伸びている。 何度も見て来た夏空だ。なのに、新しい本の一頁を捲るに近い疼きが目の奥にある。これまでの夏空が一枚の絵画になる。それはたった一枚だけではなく、何枚も何枚も連なり重なり私の網膜に浮かび上がる。どれも似たような絵なのに、けれどどれも決して同じではない。違いを知ろうと見比べるほどにやはりどれも同じものであることに気づく。 橙色になりつつある太陽が西の窓から差し込み、ガラスに反射して私に飛び込む。青と白と橙を薄く混ぜ合わせたような夕空に、今日の太陽が静かにゆっくりと姿を隠していく。 私は胸に込み上げて来たものに息苦しさを覚えながら、まだ東の空に残る絵の具のような青色を見ずにはいられなかった。
深く暗い森の奥に、年老いたリスのおばあさんがひとり住んでいました。 おばあさんは毎朝、杖をつきながら森の奥へ 食べ物を探しに歩いて行きます。 ある日のこと。 木の実を拾っていると、聞きなれない鳴き声が耳に届きました。 「ピィ、ピィ、ピィ…」 声のする方へ向かうと、苔むした切り株の陰に小さな鳥の子どもがうずくまっていました。 羽はまだ生えそろわず、大きな口を開けて泣いています。 「どうしたんだい」 声をかけても鳴き続けるばかり。 「親とはぐれたんだね」 おばあさんはその子を抱きかかえ、家へ連れて帰りました。 小鳥はピィ、ピィと鳴き続けます。 おなかがすいているのでした。 けれど家の中に食べ物はありません。 おばあさんは虫を捕まえて食べさせましたが吐き出してしまいます。 花の種も駄目でした。 「困ったねぇ…何が食べたいんだい」 そこへ、ドンドンドンと扉を叩く音。 「ちょっと、ばあさん」 隣に住むおばさんリスでした。 「ピィピィうるさくてかなわないよ。静かにしておくれ」 「ごめんよ。子どもを拾ってきたんだけど、鳴きやまなくて困っているんだよ」 「なんだい、その汚い子どもは。とっとと捨ててしまいな」 そう言うと、おばさんは怒って帰っていきました。 翌日も小鳥は鳴きやみません。 おばあさんは隣の家を訪ねました。 「すまないが、少しだけドングリを分けてもらえないかね。あの子が欲しがるようなんだよ」 けれどおばさんは顔をしかめました。 「冗談じゃないよ。大事な実をあんな子にあげられるもんか。欲しいなら自分で取りに行くんだね」 おばあさんは黙って頭を下げると、心に決めました。 ──あの山の向こうに残る大きなドングリの木へ行こう。 それは若い頃の苦い思い出の場所でした。 夫と実を拾いに行ったとき、人間の作った広い道路を渡らねばなりませんでした。 そこで夫は車にひかれて命を落としたのです。 それからずっと、その道はおばあさんにとって恐ろしいものでした。 けれど今は違います。 小鳥のためなら、恐れを越えてもかまわない。 おばあさんは走り出しました。 轟音を立ててすれ違う車。 小さな足はもつれそうになりながらも、心はひとつの願いで満たされていました。 「どうにか…たどり着けたよ」 大木の根元には、黄金のように輝くドングリがたくさん落ちていました。 おばあさんはポケットに実を入れ、家へ帰ろうとします。 「さぁ、帰ろう。あの子が待っている」 けれど再び道路に立ったとき、老いた足は思うように動きませんでした。 ついによろめき、転んでしまいます。 ポケットから転がり落ちた大切な実。 それを拾おうとした瞬間──。 大きな車が、おばあさんの小さな体を飲み込んでいきました。 そのころ、家では小鳥がまだピィピィと鳴いていました。 やがて扉を叩く音が響きます。 「おい、ばあさん、いるのかい」 隣のおばさんリスでした。 けれど部屋の中にはおばあさんの姿はなく、ひとり、小鳥だけが鳴き続けています。 「うるさい子だねぇ。…仕方ない」 おばさんはしぶしぶ、自分の家からドングリを持ってきて口に放り込みました。 小鳥はしばらく鳴きやみましたが、すぐに吐き出し、また声をあげます。 「なんだいこの子は、もう知らないよ」 そう言い捨てておばさんは出ていきました。 おばあさんは、もう帰ってきません。 やがて鳴き声は途絶え、 小鳥は静かに、冷たくなって横たわりました。 森の奥に夜の帳が降りると、ただ木々だけがその小さな命の終わりを見守っていました。 ──物語はそこで終わりました。 照明が少しずつ明るくなり、朗読をしていた女性がマイクを握った。 「皆さま、本日はお忙しい中、弊社主催の投資セミナーにご参加いただき、ありがとうございます」 正面のスクリーンに、大きな文字が映し出された。 『未来の子どもたちのために、里山にドングリを植樹しよう』 すると、ステージのそでから、高級なスーツを着た中年の男が現れた。 拍手が響くなか、司会者が声を上げた。 「皆さま、お手元の資料をご覧ください」 資料には、植樹をするために必要な金額が書かれていた。 「高いな…」 参加者が、となり同士で小声で話している。 すると、気づいた男が、マイクを持ったままステージを降りた。 「この植樹は投資です。損はしません。ドングリの木を植える“権利”を買っていただく。何本でも構いません。それを親戚や友人に紹介すれば、その分の利益があなたに入る。これを繰り返すだけです」 男はゆっくりと会場を見渡し、声を張り上げた。 「植樹しますか?」 「植樹します」 そして一歩近づき、もう一度言った 「植樹しますか?」 「…植樹します」 男はほくそ笑みながら、小さく呟いた。 「よし。また、たくさん子どもが生まれた」
新落語 誰もが知っている 「ピックの話」 今宵は、豚をようい このような 言葉があるのは それは、誰もが知っている 料亭 文字を書く 豚を よういしろ はやくだぞ それからどうした ピックは豚 選ぶもピック そのあとどうした よーいドンならぬよーいトン こんなの どうでしょう 書けるもんなら 書いてくれ
私は、女諜報員。 任務は、この国の男性と結婚し、日常をノートに記録すること。 《指令1 一日の出来事を記録せよ。我が国との違いを把握せよ》 夜になると机に向かい、黙々と書いた。 数か月後、新聞のチラシに紛れて、メモが入っていた。 《指令2 買い物を記録せよ。我が国との経済の違いを把握せよ》 買い物から帰ると、レシートを広げ、商品名と値段をノートに写した。 私は結婚し、やがて子どもが生まれた。 届いた花束には、メッセージカードが添えられていた。 《指令3 子どもの成長を記録せよ。我が国の子どもたちの参考になるだろう》 私は、家族の日常をブログにアップした。 すると、編集者の目にとまった。 日記はエッセイに。 買い物記録は、主婦目線の経済書に。 育児記録は、若い母親向けのハウツー本に。 私の記録は本になり、評判が広がっていた。 玄関のチャイムが鳴る。 ポストには、メモが。 《指令4 今までの記録を全て本国に送れ》 私は、電子書籍のURLを書いた紙を封筒に入れた。
新落語 誰もが知っている 「シングの話」 今宵は、ソング このような 言葉があるのは それは、 誰もが知っている 練りに練る 文字を変更 ソング から シング それからどうした 寝具はねる時に役立ちます しかしながら ねる時に立つことは ありません 横になるのてす。 こんなの どうでしょう 書けるもんなら 書いてくれ
今年はエルニーニョ現象が凄いらしい(語彙力不足) 街を行く女の子達がえるにーにょ♡えるにーにょ♡って萌えキャラの語尾みたいに囁いて歩く。 気象情報さえも萌えと商業化の波に飲まれる。 天気予報士のオネーさんの夜の生活も私今日はえるにーにょな気分なの…って言って相手を誘惑する。 地球の気象変化もリビドーの奴隷だ。 お前はフロイトか何でも性に結びつけるな下品な奴め!と怒られそうだ。 水槽の中で産卵する魚は大海でたくさんの犠牲が出る想定をしていない。 ガラパゴス的な地域に暮らす僕は色んな人にお裾分けをする(性のお裾分けは官能小説でしなければならないかもしれない) 駆け引きの下手な僕はまた群れから弾かれて1人自慰をする。 僕のラニーニャがあの娘のエルニーニョと暴風雨のあとに起こる晴天で聖典に書き加えられないか画策する。 そんなあなたも素敵よエルニーニョ!とフランス歌劇っぽく毎日を暮らしたいが僕のアパートにある造花ではラ・マンは振り向いてくれない。 花を敷き詰める前に一稼ぎせねば皆を笑顔に出来ない気がするが別にイケメンでもない僕は何故か力が無い(煙草を吸っているのが原因な気がする) おお🎵世界よエルニーニョとあの娘達を讃えておくれ🎵 La La La…
例年よりはやい夏の足の進みに、僕の気持ちは追いついてこなかった。 でも、そんな僕のことなんて、なんの考慮にも入れてもらえない。 二学期はやって来る。 僕にも、そして、キイのもとにも。 「今日で最後?」 「そうだね」 「さよならできるね、この無責任な空間とも」 「強がるなよ」 キイは、ただ、窓の外を見てるだけだった。 犬も女性も見えない、窓の外を。 いよいよ、二学期が来る。 僕にも、そして、キイのもとにも。二学期は、勝手に。
世は、大物価高時代。 貧しい私は安いパスタをまとめ買い、毎食毎食パスタ生活。 ソースを変えれば味変できるが、こうも毎日パスタだと飽きるのも事実だ。 ニュースでは、物価高によって若者の健康的食生活が脅かされていると叫ばれる。 昔の人はさぞいい物を食べていたのだろうと、私は父親のところへ行った。 私は不遇なのだ。 さぞいい物を食べて育った世代に、嫌味くらい許されるだろう。 「お父さん。大学生の頃、何食べてた?」 「パスタ」 「他には?」 「パスタ。お金なかったし」 おかしい。 想定と違う。 昔はソースの種類も少なくてな、と昔話を始める父親を放置して、私は祖父の元へと向かった。 「おじいちゃん。大学生の頃、何食べてた?」 「昔は、大学なんて行く人、ほとんどおらなんでな」 「じゃ、高校生の頃でいいや」 「パスタ」 「パードゥン?」 「パスタ」 パスタ二連続。 どうした、我が家は呪われているのか。 前世でパスタに悪さでもしたのか。 「ひいじいちゃん」 「おにぎり」 私は、今日もパスタを作る。 物価高になろうがなるまいが、なんか皆パスタだったから。 「ほな、しゃーないか」 地域限定の珍しいパスタソースを取り寄せたので、今日はリッチなパスタさんだ。
新落語 誰もが知っている 「画王の話」 今宵は、ガォー このような 言葉があるのは それは、誰もが知っている 怪獣 文字を変更 ガォー から 画廊 それからどうした 絵が人気ならば画王と 言うことになる これはなに 心の中 その時 ガォーと言うかもしれません 私はそんなこと しりません こんなの どうでしょう 書けるもんなら 書いてくれ
ただ電車の中で、気になったタイトルの曲を流してだだけ。 その曲は失恋ソングだった。 最終電車の中で人もいない車両で、彼と同棲してる最寄り駅までの道のりで失恋ソングを聴いていた。 それだけなのに、歌詞が痛いほど刺さって私は泣いていた。お酒が入っていたからかもしれないし、呑み友に彼の愚痴を聞いてもらったからかもしれないし、一人しかいない車両に乗っていたからかもしれない。 視界が歪んで、歌詞にのめり込んで泣いていた。 彼が好きで、大好きで、それなのに彼は私と同じ温度で私を愛してくれない。そう思っていた。 でも、それは見返りを求めた愛だったのかもしれない。恋愛をしてる私が私は好きだったのかもしれない。 そう思いながら最寄り駅まで後2駅。 彼を好きなのか、彼を好きな私が好きなのか。 ただ気になったタイトルの曲を再生して聴いていただけ。 君はきっと「そっか、ごめんね」と言うのだろう。止めて欲しい。止めて欲しくない。 私はワガママだ。 ただ気になったタイトルの曲を聴きながら何回も再生しながらの帰り道は、とても綺麗だった。 最後に目に焼き付けて帰ろう。 愛してたフリをして愛されていたフリをしてた。
新落語 誰もが知っている 「メジロの話」 今宵は、メジロ このような 言葉があるのは それは、誰もが知っている メジロは野鳥 生きてます 文字を変更 メジロ から メジロ それからどうした 死んても 生きていても メジロ あしからず こんなの どうでしょう 書けるもんなら 書いてくれ
電車のドアが開くと、熱気の塊が先に乗り込んで来た。押しのけるように私は降りる。電車を待っていた人たちの中に、浴衣を羽織っているのが何人か居る。仰ぐ団扇の風が、私の首元の空気を微かに揺らした。 いつもなら硬く響く改札の雑踏は、今日は揉まれ柔和になった蕎麦の生地のようだった。人から発せられた音が人へ吸い込まれていく。 改札の先に、茶褐色の背中が露わになった二人の女性が、しきりにスマホをいじっている。足元にはそれぞれの子供があるべきところに収まっている本のようにじっとしている。子供の手にはヨーヨーのような物がぶら下がっている。風船なのにどこか硬くつくたびに中で暴れる水の感触が私の右手の、そのまた五本の指の、それぞれの内側に蘇る。 一瞬ゴムの香りがした。
徐々にではあるけれど、店内の掃除にも慣れてきた。 自分の部屋のこと、全部、母親に頼りきってる僕としては、驚くべきこと。 もちろんそこには、おおきな存在として、キイの姿がある。 都合よく使ってしまって、すまないとの思いも。 僕が店を開けたとき、キイは、来てくれるようになった。 けど、来るのはキイだけで、ほかには誰も。 風と砂と、太陽の光をのぞいては。 金色の毛が眩しいあの犬も、青い服の女性にしても、あのときかぎり姿を見せない。 すてき、を散りばめたあの光景に、出会うことは、もうないのかも。 苦いものが、口のなかを走る。 そんな思いの僕とちがって、キイは笑顔だ。 「楽しいの?」 「え? 楽しくないの?」 不思議だ。 「だって、誰も来ないからさ」 「だから何?」 わからない、キイの言ってること、すこしも。 「もっと、この状況を楽しんだほうがいいよ」 「誰も来ないことを?」 「じゃなくてさ。わたしたち高校生なんだよ。高校生らしく、してれば」 「無責任すぎるよ」 「無責任? それでいいんじゃない? ちがう?」 釈然としないものもある。 でも、すこし。 「そんな感じでさ」 言って、キイが、グラスに入ったコーラをストローで勢いよく吸い上げる。 最後にぞぞっ、と短く響き、それが、夏の終わりの合図のように、僕には聞こえた。 重くあった冴えのないおなかの痛みは、知らない間に、消えていた。
昨日のデートは 少し物足りなかった 遊園地は たのしかったけれど ホットドッグは おいしかったけれど 抹茶フラッペは 冷たかったけれど 観覧車で ちょっぴり期待した 眺めは キレイだったけれど てっぺんに来るのが ドキドキだったけれど 手のひらは 汗まみれだったけれど なんのための 観覧車だったのかな なんか少し 物足りなかった
二人乗り 生殖細胞と自分 生殖細胞が改造に改造を重ね、とうとうCPを搭載した。それが自分 生殖細胞はCPに任せて、子孫繁栄をオートマチックで進めていく。 CPは壊れるまでデータを蓄積し、最適解の選択を取り続ける。それを自分の人生だと疑わずに。 成功とは 勝ち組とは 夢とは 生殖細胞はそんなCPの事には気にもかけない。そんな気がする
新落語 誰もが知っている 「ヒツジの話」 今宵は、ロング このような 言葉があるのは それは、誰もが知っている 日本語で長い 文字を変更 ロング から ロンク それからどうした ヒツジの言い違いから生まれたことば そのあとどうした ヤギとなる これはなに メイメイで そのわけは 考えてくれ こんなの どうでしょう 書けるもんなら 書いてくれ
玄関を出るときに妻が泣いて謝ってくる 僕が悪いのに僕の気持ちを考えて妻が謝る 1年以上仕事が出来なかった時、彼女は僕を生かすために莫大な貯金を使い果たした こんな僕を捨てずに、そして生かすために全身全霊で支えてくれている。今でも。 息子も僕を頼りにしている。 死ぬわけには行かない そんな事は分かっている でも、小便が漏れそうでしょうがない状態をどのくらい我慢できますか 限界と思って少し収まってまた限界が来て。 希死念慮とはそう言う感じで訪れる 常に表面張力で保たれている まさにギリギリだ 死にたい人間を生かせたとしても、その後その人間が楽しく毎日を過ごせるわけではない。またあのギリギリを味わうときが来ると怯えながら過ごしていく 社会で生活をしていると 取るに足らないことに拘り、不満を言い、笑い、泣いている。 それはその人にとって大変な出来事なのかもしれないが、ギリギリの状態でそんな風景を見ると、幸せそうに見えてしまう。 自分はその段階にいけないのだ。もっと底辺の生きるべきが死ぬべきかの「はい」「いいえ」の所で止まっている 死ぬことはいつでもできるし、そのうち死ぬ 仕事に関しても同じ事が言えると思う。 辞めることはいつでも出来る。辞める前に、視点を変えて、頑張っているなら、ダラダラやるとか。大きくしているなら、細かくしてみるなど自己改革を試してから辞めてもいいと思う。 まぁ出来るものならだけど 大抵は出来ない。自分を自分の考えを変えて試してみるなどなかなか出来ない。陽キャが陰キャに陰キャが陽キャに簡単には変化出来ない。 なぜならそれが自分だから。自分らしくしていないことに意味があるとは思えないから。そうだと思う。希死念慮もそうなのだ。自分の意志を抵抗するのは並大抵ではない。
郊外にある一軒家。 男がカメラを片手に、玄関の扉を開けた。 何十年も誰も住んでいない家。 家具には、白い布が掛けられていた。 「二階の奥……」 廊下に、きしむ音が響く。 階段を上がり、目的の部屋に入った。 「これか……」 男は窓際の白い布をめくり、中を確かめた。 そこには、ひじ掛けのついた古びた椅子があった。 横の机には、家主だった老婆の写真が立て掛けられている。 「皆さん、ご覧になってどうでしたか?」 スーツ姿の男が声をかけた。 部屋には、数人の男女がモニターの前に座っている。 男がスタッフに視線を送ると、窓際の椅子が運び込まれた。 「晩年、お婆さんはこの椅子に座り、外を眺めてました」 集まった男女は、緊張した顔で耳を傾けた。 「さぁ、皆さん。順番に椅子へ座ってみましょう」 机の上には、老婆の写真が置かれている。 「私は無理です……」 声が震える。 「大丈夫ですよ」 男が、そっと寄り添った。 女は恐る恐る、椅子のひじ掛けに手を掛けた。 そして、ゆっくりと腰を下ろした。 「がんばりましたね」 部屋に拍手が響いた。 すると、一人の男が手をあげた。 「先生。この椅子には、どんな因縁があるんですか?」 「……そんなものはありませんよ」 「でも、この写真の顔……」 スーツの男が、写真を手に取った。 「このお婆さん、私の母ですね」
薄暗い草原に佇む青と赤、2つの影。 「どこかから、川の流れる音が聞こえる」 「あの雲はどこまで行くんだろう」 「それを私達は忘れてしまった」 「私達がどこから来たかも忘れた?」 「覚えてるの?」 「忘れた」 しばしの沈黙。草原に日が差し始める。 「瞼の裏側にも日の光りが届く」 「じっとしていると少し熱い」 「でも心地いい」 「足の裏が乾いてきたね」 草原が風に揺れる。 「少しくすぐったい」 「みんな目覚めてきたみたい」 遠くから聞こえる獣の足音。地を這う虫たちの気配。 「鳥たちも羽を撫で始めたわ」 「きっと川に向かう」 「私達と同じ 彼らも旅をする」 「あっ飛んでいった」 大きな翼が風を切る。2つの影はそれを愛おしむように見つめていた。 「西の空ね」 「彼らも果てを目指していたのかな」 「そうかもしれない」 「まだ旅は続ける?」 「いつかあの光を掴むまで」 「まだ遠い」 その声を遮るように一陣の風が吹く。しかし赤い影は答えた。 「辿り着くかも分からない」 どこまでも響く、清涼な声で青い影は問うた。 「どうして旅を始めたんだっけ」 「生れたから」 「生まれたから?」 赤い影は、その細長い指で草原の一点を指す。 「あそこに花があるでしょう?」 「まだ蕾だね」 「あれもいずれ種を撒く」 「風にのせて?」 赤い影は囁くように答えた。 「そう、だから私達も旅をする」 「遠くに行くために?」 足元では虫たちが列をなして葉を運んでいる。 「生れたことを忘れないために」 束の間、青い影は瞬きをし、言葉を探して発した。 「何かを残すために」 2つの影は続ける。 「あの光の方へ」 「あの風が吹く方へ」 ふと赤い影が目を開く。 「蕾が開いてきた」 頷きながら青い影は空を仰いだ。 「太陽が眩しい」 「また朝がくる」 空はもう、茜色に染まる時を終えようとしていた。青い影は空から目を逸らし草原を見渡す。 「あの鳥たちは、今どこにいるのかな」 赤い影は微かに笑い、答えた。 「夜明けよりも明るい所」 ガサと草の擦れあう音が響く。 「あっ新しい鳥が来た」 「私達もそろそろ行かなきゃ」 「どっちの方角に行く?」 「この鳥の来た方へ」 2つの影は立ち上がる。ずっと座っていたから、体は重くなっていた。 「靴を履こう」 「もうすっかり足が乾いてる」 「やっぱりもう一度だけ土を踏んでいこうかな」 すっと足を伸ばす青い影。 「柔らかい?」 「柔らかくてひんやりしてる」 「手のひらを当てても気持ちいいわ」 赤い影は、靴紐をきつく縛った手を休めるように地面に触れた。青い影も真似をする。 「本当だ」 赤い影は静かに立ち上がり、青い影の手をとった。 「さあ、行きましょう」 「さようなら」 青い影は草原に手を振った。 「長い夜明けだったわね」 「そうだね」 「私達は呼ばれている」 2つの影は見つめ合う。 「夜に?」 「次の朝に」 「じゃあそこへ行こう」 2つの影が地平線に視線を戻すと、時が動き出した。 「いつか辿り着くまで」 「歩き続けよう」 草原の夜は明けた。2つの影はもういない。
ピピンは世界中のどこにでもいる一羽の鳩に過ぎなかった。見た目だって、皆が近くの公園や駅で見かけるあの鳩さ。でもピピンが他の鳩と違っていたのは、音楽が好きだってこと。お気に入りの場所は、コンサートホールの屋根の上。演奏者たちは気付いていないが、ピピンも立派な聴衆のうちの一人なんだ。
いつの間にか、眠っていた。 となりでは、カウンターに突っ伏して、キイの寝息が聞こえる。 キイを起こさないように、ゆっくりと、硬くなった体を動かしてみる。 窓の外では、重い雲が海を黒く染めていた。 僕の心が、そのまま目の前にあって、海は、それを否応なく映す。 背けたくなる光景に、なつかしさも、心の扉が開くことも。 灰色のその海の上で、空が光り、その数秒あと、神さまの声があった。 世界と離れてしまうって、こんな感じか。 僕だけが取り残されていたらと不安になる。 僕だけが取り残されたわけじゃないと安心する。 結局、雨にはならなかった。 それでも湿った風は、熱を奪っていった。 波の音ですら、ひんやりしている。 灰色の海が、僕を見ている。 その視線が、僕をとらえて離してくれない。 雨が降って、僕のこの不安を、すっかり流してくれればよかったのに。
たこ焼きになりたかった。 薄力粉として生まれたから、もしかしたらと思った。 でも、駄目だった。 「おら、どけどけ! たこ焼き粉様のお通りだ!」 世界には既に、たこ焼き粉が生まれていた。 薄力粉とたこ焼き粉。 二つ並べられた時、人間はどちらを使ってたこ焼きを作ろうとするだろうか。 言うまでもない。 たこ焼き粉だ。 早々に察し、たこ焼きになるのを諦めたこともあった。 しかし、諦めきれなかった。 食卓に並ぶ、ほかほかのたこ焼き。 タコを包んだ、ほかほかのたこ焼き。 一目見た瞬間、とうに心は奪われていたのだ。 なんとか、たこ焼きになれないかと、必死に調べた。 そして見つけた。 薄力粉で作るたこ焼きのレシピを。 たこ焼きを作るためだけにたこ焼きを買っても、余らせてしまう。 ならば、汎用性のある薄力粉でたこ焼きを作ってしまおうという人間の英知の結晶。 私は、それにかけた。 薄力粉を使ったたこ焼きのレシピを書いた本を、開いて机の上に置いておいた。 人間は、本を覗き込んだ後、ぐうっとお腹を鳴らした。 そして、棚にたたずむ私に視線を向けた。 やった。 と、期待したのもつかの間。 私に向いていた視線は、すぐにたこ焼き粉へと変わった。 違う。 違う。 違う。 その本には、薄力粉って書いてあるんだ。 私の叫びは人間に届かず、人間はたこ焼き粉でたこ焼きを作ってしまった。 羨ましい。 羨ましい。 羨ましい。 踊る鰹節。 輝く青のり。 湯気を立てる、ほかほかのたこ焼き。 「いただきまーす」 人間は、美味しそうにたこ焼きを頬張った。 数日後。 私は人間に掴まれた。 「今日は、お好み焼きにすっか」 私は、たこ焼きに慣れなかった。 私の体が、半球の穴が開いたたこ焼き機ではなく、平べったいフライパンの上へと落とされた。 水と卵とまざったドロドロの体は、たこ焼きと同じ。 しかし、体に埋め込まれていくキャベツが、「お前はたこ焼きじゃねえよ」と現実を突きつけてきた。 たこ焼きに、なりたかったな。 思わず涙がこぼれる。 「やっべ。肉、賞味期限切れてんじゃん」 私の気など知らず、人間は暢気にそんなことを言う。 冷凍庫を開けて、中からシーフードミックスを取り出し、お好み焼きの記事の中へぶち込んでいく。 私の体の中に、海産物が飲み込まれていく。 エビ。 イカ。 アサリ。 ……あ。 そして、タコ。 私の体が、熱によって固まっていく。 冷凍状態から解放されるタコは、私を見て優しく微笑んだ。 ああ、神様。 私は、たこ焼きにはなれなかった。 私の行き着く先は、お好み焼きだ。 でも、タコと一緒にお好み焼きとなれるなら、それはもうたこ焼きと言っても差し支えないだろう。 だって、タコと一緒に焼かれているんだから。 「いっただっきまーす!」 鰹節は踊っていない。 青のりは輝いていない。 あるのは、しなしなのキャベツとシーフード。 しかし、タコと共に湯気を立てるほかほかの私は、最高の幸せを噛みしめていた。 「お、タコ入ってんじゃん! 珍しい!」 どうぞ、召し上がれ。
次の週末、店に、幼馴染のキイが来た。 「ほんとにやってんだね」 「まあね」 「客、来た?」 「風は、よく来るよ」 「あと、砂も。みたいね」 「大盛況だろ」 「冗談言ってる場合か」 キイは、差し入れのジュースの入った袋をカウンターに置くと、掃除を手伝ってくれた。 テキパキと手慣れてて、ほんと頼りになる。 海からの風が、砂と肩を組み、この店に訪れることを、僕はこの夏、はじめて知った。 マスターがいたときには、そんなこと、すこしも感じられなかった。 この店を守ることの苦労を、やっていくことのたいへんさを、知ることにもなった。 洋風な音を出す風鈴の音色に、砂が床を転がる音が愉快にまじる。 ジャンポール かすかに聞こえていた声が、時の流れとともに大きくなる。 ジャンポール 砂浜をゆくその声に、犬の声が重なる。 金色の毛が、夏の光のように眩しい。 おおきな犬が、砂浜をかける。 その足跡が、ささやかな混沌を生み出す。 つかの間の混乱は、でも、波が、きれいに鎮めてくれる。 ジャンポール 犬が、青い服の女性に飛びついて、女性が、犬を抱きとめて。 キイと僕とで、その光景を眺めた。 暑いなかにあって、でも、その姿は、異質なまでに涼やかだ。 「すてきだね」 窓の外を見つめながら言うキイに、僕は、笑みだけでそれに応じた。
高校生の俺は、小学生のころは体が弱く運動は苦手だったし嫌いだった。そして飯を食うことが大好きだった。 運動嫌いで運動しない理由にはお墨付きもあり、飯ばっかり食べていた俺はいわゆる巨漢になっていた。自他ともに認めるデブである。デブでも特に困ることはなかった。太っていることをネタにして日々みんなの笑いをとることで教室での居場所を確保していたし、別にそれが無理に作ったキャラクターでもなかった。そんなわけで俺は何不自由なくデブライフを謳歌していた。太ったまま大学生になり、社会人になり、少し早死にする。それが俺の人生設計だった。 ところがそんな俺の人生設計を大きく狂わせる出来事が起きた。転校生だ。 高校の転校生とは珍しいがなんと我がクラスにやってきたのだ。とんでもないそれはスラッとした背の高い彼女は肩まで黒い髪を伸ばしていた。ときおりのぞかせる八重歯とメガネがチャームポイントに思った。なにからなにまで俺の好みだった。それだけだったら、俺の人生設計は変わらなかっただろう。ところが彼女が移動教室の際に俺の隣に座っていろいろおしゃべりする間柄になったところで俺はやっぱり彼女と付き合うところまでいきたいと思ってしまった。俺の中で何かがガチャリと切り替わる音がした。 その晩、学校指定の体操着とジャージを着て俺は外に出た。ジョギングを始めたのだ。 小学生のころこそ体が弱かったが、実は以前のような虚弱体質ではなくなっていた。いくらか走れる。 俺はとりあえず近所の河川敷まで走ってみた。まだ余裕だ。 河川敷を川の上流に向かって走り続ける。なんだか気分が良くなってきた。今まで運動は食わず嫌いだったのかもしれない。彼女と話したことが次々に思い出される。前の学校であったこと、父の突然の転勤で話し合いの末に転校することにしたこと。 少しきつくなってきたがまだ行けそうだ。俺はいつもどおり太っていて人の二倍場所をとること。家ではおれの食器だけ特別枠のこと。短距離走が意外と速くて驚かれること。そんな話をする。 きつくなってきた。そこで家に向かって折り返したが完全に見誤っていた。段々と足が回らなくなり、歩くのも辛くて歩くのよりも遅く走っているような姿勢で自宅へと向かう。 「大丈夫よ。家までって考えると辛いから、あそこの橋まで行きましょう」 彼女が応援してくれる。 「そうだね。橋までだ」 橋を通り過ぎて、次の橋は結構遠い。 「あそこのポールまで行きましょう」 「うん、ポールまでならいける」 彼女がいれば百人力だ。だが、だんだんと呼吸が辛くなっていた。小学生のとき以来だ。息を吸おうとしても普段の十分の一くらいしか吸い込めない。気管が腫れて空気の通り道が狭くなっている。深く息がしたいがそれができない。 俺はベンチを見つけるとそこに倒れ込んだ。 「大丈夫?」 彼女が心配する。 「大丈夫、大丈夫」 答えてベンチに腰掛けたが全然大丈夫ではなかった。呼吸は浅くしかできず、息を止めているような気分だ。 彼女が俺の隣りに座った。ただでさえフル稼働している心臓がさらにどぎまぎしていると俺にもたれかかってくる。 「あなたのこと好きよ」 ふと、そんな妄想に囚われるとなにも痩せなくたって彼女と付き合えるんじゃないかと思った。その瞬間彼女は立ち上がり俺に軽蔑の眼差しを向けた。 「最低ね」 俺は息ができなくなった。
「さあ。今日からここが、君の家だ」 引きずり戻された。 大嫌いな実家のあった場所へと。 両親が死んで、空き家になった家の維持は、子供であるぼくの役目らしい。 本当、くそみたいな法律だ。 「取り壊していいんですよね?」 「もちろん。更地にして、不動産会社にでも売っぱらえば、君の義務はなくなる」 「売れると思います?」 「売れたとして、二束三文だろうねえ」 他人事のように笑いながら、担当者とやらは帰っていった。 「最悪だ」 見慣れた玄関に鞄を置いて、家の中へと入る。 長い間人間が住んでいなかったせいだろう。 歩くだけで埃が舞って、どことなくかび臭い匂いがした。 ここは、両親の理想郷。 結婚生活を始めるために建てられた、夢の新居。 尤も、ぼくが物心ついた頃には両親の中は険悪で、ぼくから見れば絶望郷でしかない。 「死んでまで迷惑かけやがってよ」 冷蔵庫の中には、父が好きだった缶ビールが入っている。 クローゼットの中には、母が好きだった大量の服がかけられている。 「捨てるとこからか」 コンビニでゴミ袋を買って来て、家にある物を放り込んでいく。 ふと懐かしさを感じる瞬間はあるが、捨てることに躊躇いはなかった。 実家を捨てて上京したというのに、また引きずり戻されたのだ。 懐かしさよりも怒りの方が強かった。 「仕事、どうすっかなあ」 強制的に実家に戻らされるとなれば、今の仕事を続けることもできなかった。 暗に退職を匂わされ、結局やめてしまった。 結婚を考えていた恋人も、仕事をやめたと話してから、メッセージの反応が鈍くなった。 実に最後まで、迷惑をかけてくれる両親だ。 「うーん。この家ですかー。うーん」 最低限の片づけを終えてから、不動産の人間を呼んだ。 不動産の人間は、家の前に来たときからがっかりとした顔をしており、頭をぼりぼりとかいていた。 「ここはですねー。なんというか、駅からも大分離れてますし。建物も、なんというか」 「売れないってことですか?」 「んー。正直、この土地を欲しいと思う方は、なかなか」 「ですよね」 不動産の人間が帰った後、がらんとして家の中で、俺は一人天井を見上げた。 天井のシミは、子供の頃から増えていない気がして、天井に手を伸ばしていた子供の頃の自分を思い出した。 この家の中が、世界の全てだった時代。 就職して、家を出て、世界の広さを知った。 ここが、自分の住むべき場所だと思った。 でも、結局ぼくは、この家に囚われていたままだったらしい。 デリバリーなんてできないから、スーパーに買い出しに行く。 懐かしい顔とすれ違ったから挨拶した後、久々にフライパンを振る。 ジュウジュウと景気のいい音が響き、母の味とは無縁の味気ない食事ができた。 「いただきます」 ウインナーを頬張りながら、改めて誓う。 どんな手を使ってでも、両親の夢の新居をなくしてやろうと。 ぼくがぼくの新居を手にするには、それしかないのだから。 食べ終えた食器を洗い場において、ぼくはスマホを取り出し、周辺の土地相場を調べるところから始めた。
よく見もしないで 手に取ったのを かごに入れたもんだから とりのもも肉を買ってしまった むね肉がよかったのに あのぱさっとした感じを 今日は求めていたのに パックに入れられたもも肉を 台所に置いて 指先をほんの5センチ動かして それで もも肉が むね肉に かわるんならね わたし 魔法使いじゃないんだ
いつもの幸福である意味不幸。 そんな話をしよう。 意味も無意味もない、 そんなお話なんだけどさ。 「今日ご飯は何食べたの?」 君は半ニヤケで、怪訝そうな表情を浮かべた。 だから言ったでしょう。 意味なんてないよ。 「なんだ、そんなことか。たいそうな振りだから、なんか面白いこと言うと思ったのに……」 僕は、盛大に微笑むのさ。 君のふくれた頬を横目に。 いつも通り、僕の話題。 君は呆れてこう言うだろう。 「暇だね。どうしよう」 どうしてだろう。 心が冷たくなるのは。 まだまだ終われない。 「そうだね。どうしようかな……」 たわいもない会話で乗り切る僕は、 とても小さく思えた。 僕が去ると、また一人、君のそばにくるよね。君は人気者さ。君はもちろん、こう言うよね。 「今日暇だったよ!」 納得する。 ただ、それ以外ないからさ。 僕といる時間も、 君にとっては「暇」の一つなのだろう。 そんなことを考えてしまう僕と、 何も知らずに笑う君。 いつもの幸福で、 いつもの不幸。 そんないつもの話
遠い意識 本の背表紙が並んでいる 左から、本のタイトルがあいうえお順で並んでいる 本の仕舞われている棚には埃が溜まっている 小さな白い虫が急いそと動いている 大人になって夏休みが嫌いになった 宿題を気にしなくてはならないし 道具箱の整理や清掃 帽子のゴム紐の確認も煩わしい すぐ出来るのにやりたくない 夏休みの宿題のように スイカは美味しいが生ゴミが増える 二三日経つと必ず種を見つける 電車では本を読むが書いている 嘘だ。綺麗な人を眺めている それもない。最近遠くなっている、か細い意識をどうにか繋ぎ止めている 妻からは病院に行ってほしいと言われるが 治す必要性も感じられない 次はどこに行ったらいいのか分からなくてクリア出来ない 新しいクエストが嫌で座標を動かせられない
「私、砂糖入れないと飲めなくて」 いつものように向かい合って座る、君と私。向こう側の君は、地に着かない足を揺らしながら、塊を二つほど、カップの中に沈めた。 「あれ、それ、ラテアート?」 君は、物珍しそうに私のカップを見つめる。 「そう、描いてもらったの」 「へえ、すごいね」 優雅に座る猫の絵。見慣れているようなそんな絵でも、ラテの上に描かれていると印象が違う。 これを描くために、お店の人はどれほど努力したのだろうとか、そんなことを考える。 「でもさ、ラテアートってなんか、飲めなくない?」 口からカップの縁を離した君は、そう言葉を漏らす。 「わかる、もったいないかも」 「じゃあなんで頼んだのさ」 「いやまあ、珍しいし、すごいし。見てみたいじゃん」 「そうだけど」 もったいない。積み重ねられたものが、この線が。 色の境界が歪んで溶けていくのが、物悲しく感じてしまう。 それはきっと、当たり前のこと。 「まあもったいないけどさ、一応ラテなんだから、飲まないとアレじゃん」 「……そうだね、捨てるわけにもいかないもんね」 「それとも、ずっとそのまま取っておく?」 悪戯っぽく君が笑う。もちろん冗談だろう。 「そんなことできるわけないでしょ。どうせ崩れちゃうんだから」 どうせ崩れちゃう。 不意に、自分の口からそんな言葉が漏れ出た。 「まあ何でも良いからさ、冷めないうちに飲んじゃいなよ」 「うん、そうだね」 カップを傾ける。 少しずつ混ざり合っていく二色の液体を一瞬見つめた。 そうして店を後にした私たちは、 また行く当てもなく歩く。 いつものように、互いの手の中の温度を感じながら。 私たちのこの境界も、いつかは崩れてしまうのだろうか。 そのとき、私たちは、どうなってしまうのだろうか。 「どうせ崩れちゃうんだから」 どうせ、崩れてしまうのなら。 握った手をほんの少しだけ強めて、隣で笑う君の顔を見つめた。
夢は脳内が生み出す願望らしい。なんて、そんな訳が無いだろう。ならば、視界いっぱいに広がる光景は、僕が望んだ世界なのだろうか。 僕は、君に消えて欲しい。 夢に落ちる時、奈落に落とされたような抗えぬ感覚に陥る。覚めたくても覚めれない。ならば、存分に楽しもうと思ったんだ。 1つのドアを開けるとそこには水槽があった。水族館にある大型の長方形の水槽。干からびて何年も使用されていないような空っぽの水槽。 その中に君はいた。 君は僕に向かってガラスを叩く。水なんか入っていない。抜け出せばいいのに、君は溺れているみたいに藻掻いてる。 僕はそれを見て口角が上がったんだ。 「ざまぁみろ」 自分で発した言葉なのに、乗っ取られたように感じた。 途端に激しい勢いで下からボコボコと間欠泉のように吹き出した水は、あっという間に小さな海を作り出す。 こんなことを言いたかった訳じゃない。 焦って水槽の外側から手をあてる。気づいた君は内側から手を合わせる。 数秒後、諦めたように笑って 君は目の前で死んだ。 闇が君の遺体をも呑み込んで、水槽が壊れていく、水が自分の体を侵食していく。液体になって自分も溶けていく。 暗転。自分の体が外の世界に引っ張られていく。強制的に内側の世界から弾き出された。 「おはよう!朝だよ!もー、遅刻しちゃうよ」 エプロンをつけた君は、鳥の巣のような寝起きの僕の頭を掻き乱す。太陽の光みたいだ。 「…………夢」 呆然とする僕に、君は一つ口付けをする。目の前に広がる君の伏せたまつ毛の一本一本が綺麗で息を飲む。 「...……。」 「……。」 静寂。君はあわあわとなにか言いたそうに口を形作る。僕は、君の耳から顔全体へと広がる紅を眺めるのに夢中だった。 「……い、良いだろ!恋人なんだから!」 悪役みたいな捨て台詞を吐いて君は出ていった。 天使のような可愛さに僕は胸を撃たれてまた布団へと倒れた。 僕は君に消えて欲しい。 僕から君を奪って欲しい。 こんな幸せ、僕には似合わないんだ。 水槽は僕の心で、水は僕の想い。 僕は君に消えて欲しい。 愛に溺れて、君には僕だけの人になって欲しい。 そんなわがままが通用するはずないだろ。 「ざまぁみろ……」 自分に向かって言った言葉だ。 「もー!時間ないから先に仕事行くね!ちゃんとご飯食べてお仕事行ってね!」 君は今日も外の世界へと出ていく。玄関先から聞こえる言葉に適当に返事を返した。 行って帰る。 現実世界には君がいる。理想世界にも君がいる。僕が帰るべき場所は君のもとだった。
世間を知ることを若い人に求めることは不可能だ 世間知らずが時間をかけて、恥をかき悔しがり、無我夢中で生きたその事が知識となる それまで待たなくてはならない 僕らを待ってくれたように 電車の手摺が氷のように冷たい 夥(おびただ)しい数のポリタンク この辺の町は家の向きが不揃いだ 農薬を散布する人 鳩と鳩 貧血気味で疲れすぎて声が出ない 自己主張する不安と遠慮する余裕 この辺は同じような家ばかりだ トンネルに入ると窓に自分の顔が映る 少し若く映る 誰か川に落ちている石ころを数えたことがある人はいるのだろうか フェルマーの定理は四角形の話をしているんだとしてしまえば、2しかない事が分かる 知らないことを感動は出来ない 水を飲む姿は、そのまま「私は生きるぞ」という意思を表している ファンが着いたサイボーグがはびこっている 家に帰る道のりのほとんどを親が手を引き、家に着く直前は子供が親の手を引いて走る 茸を買いに行って茸だけを買い忘れる 電車が当たり前のように時刻通り運行している 扉が勝手に閉まる エレベーターで降りやすいようにと、閉めるのボタンを押してしまう自分を酷く責めてしまう 英語で何か話している 男性と女性は別々の星のエイリアンだと思う あんなに惹かれてしまうのは他に説明が出来ない あんなに理解が出来ないのは他に説明が出来ない 身体の作りも若干違うし 手に書いたボールペンのメモが汗で滲んで読めない 英語で何か話している 遅くまで残業をして帰るあなたが、くだらないこの散文を楽しんでもらえたら幸せです いい加減靴が壊れそうだ 主体性がない人は責任がない代わりに、生きている意味も無さそうだ ずっと怯えている様にもみえる 勝手だけど マルはよく人を観察している 鳴き声を聞いたことがない マルに懐かれる人は幸せだろう その人はマルの声を聞けるのだろう
エアコンをつけないかわりの扇風機は この夏、かわいそうなくらい動き続けている そろそろ、壊れてしまうかもしれない 壊れないかもしれない 扇風機が壊れるときってどんなだろうか さっきまでブルンブルン動いていたのが 急にフルフルフルフルとなって ついには止まってしまう そんなだろうか ごめんねえ、動かすねえ とスイッチを入れたけれど 断固拒否の構えを この先ずっと貫くとかだろうか あ、この子いいなあ ひと目ぼれした私が 新しい子を連れて帰ってきて もうこっちの子はいいかなあ と私が一方的に別れを突きつけるとかだろうか いまは、そのどれでもない未来を 希望したい このまま、まわり続けてくれる未来を 希望したい
ずっと言えない悩みをつぶやいた。 「体は男なんだけど心は女 もう女になっていいですか」 出た息すら吸いたくなくて鼻も口も目も 全部閉じた。 「全く同じことで苦労しています」 しばらくして 音が聞こえて開いたら返信が来ていた。 ────私から。 何もコメントしなかった。
キャスちゃん へ 8月8日は何の日? 結婚記念日 8は無限マーク これからも、私たち夫婦は無限にやっていけるのかな 最近、自信がないんだ 肌が弱いから、化粧といえばリップを塗るくらい 基本はTシャツとデニム、たまにカジュアルなワンピース あなたは、私がどんな格好をしようと、特に感想は言わない 部屋は心の中と同じで散らかっている あなたは、帰宅すると何も言わず、コロコロで床を掃除する 料理は得意じゃない あなたは、味の評価はしないで「うん、うん」と呟きながら、それを食べる スーパーで何を買うにしても考え込んでしまう あなたは「ゆっくり決めていいよ」と言って、どこかへ行ってしまう 前日は楽しみに準備していても、出かける直前になると、床に突っ伏す あなたは「なっち、寝ちゃったんだ」と言って、怒らないけど心配もしない こんなズボラで、マイペースで、気まぐれな私と一緒に暮らせるのは、あなただけ 拾ってくれて感謝しているよ 私は妻というより、猫かもしれない 猫だから、人並みの家事スキルはないんだ ブラック企業の社畜だったから、がむしゃらに働いて稼ぐ根性はあるよ 毎日、首を揉んでくれるけど、頭も撫でてくれると嬉しいな いつも好き勝手させてくれて、ありがとう でもね、なんか寂しい だから、フィクションの世界で恋をしたんだ バカ猫だけど、泥棒猫にはならないよ 8月8日は何の日? 世界猫の日 なっち より
最初に寄生した人間には たくさんの仲間がいた。 白血球も屈する地位を手に入れていたが 上に立つ者の指揮が危うかった。 なにより未来がない。 もうすぐこの人間は病死する。 私には合わなかった。 次に寄生した人間は 評判の良いウェブサイトで紹介されていた オススメの寄生場所で出会った人間だった。 仲間はほとんどいなかった。 綺麗で免疫力があるような感じで、 新鮮味があってワクワクしたが、 健康な人間特有の リッチ臭いコミュニティが鬱陶しくて辞めた。 私には合わなかった。 また次に寄生したのは 前に寄生した人間で仲良くなったウイルスが ウワサでは良い物件だと教えてくれた人間だ。 ここには私のように何人か経験したウイルスが たくさんいて、 古参もみんな優しいウイルスばかりだった。 中堅のようなボジションを持つ仲間もおり、 ウイルス関係には恵まれたところだった。 体の環境がだんだん悪くなっていき、 治安も悪化していくまではよくあることだったが、 いけすかないやつらに目をつけられたので さよならも言わず逃げた。 今度こそ大丈夫だと寄生したのは 良物件な人間をネットサーフィンの如く 探し練り歩き始めて三日ほど経って辿り着いた 人間だった。 仲間がたくさんいたことと 話の合う別種のウイルスに恵まれていたことが 決め手だった。 まさに理想郷。 ウイルス関係も良く、程よく不健康で、 どストライクに 私が住みやすい環境作りがされていた。 すっかり慣れるほど過ごしたが、 辞めた。刺激がなかった。 仲間たちや他のウイルスも 特異点のないつまらないやつばかりだった。 平坦な暮らしの満足心と戦い、 自分はもっと成長したいんだ。 と投げやりに言い放ってまた逃げた。 この時から 自分は本当に逃げているんじゃないか と思うようになった。 合う合わないとは何なのか。 そもそも自分はどんなウイルスなのか。 分かってんのかと言われれば分からなくて 分からないのかと言われれば分かるような 死に迫る勢いの不安に涙で彷徨った。 時には適当な人間 の中の適当なコミュニティを見つけて 障害者のように叫び荒らし追い出されることも 気持ちが爆発したゆえに大きなミスを犯し その場全員に嫌われて出禁になることもあった。 そんなことを繰り返して、 自分を見つめ直すようになったのは 最近のこと。 見つめ直した上で自分を認め、 冷静に人間を吟味するようになった。 自分を知ったことで合う合わないの感覚を しっかり掴んでいく新たな歩みを手に入れた。 今は最初に寄生した人間で ひっそりと暮らしているが、 他の人間も悪くはなかったかもしれない。 そう思えるだけで自分は成長したと思う。 周りの環境ではなくて、 自分が進化するべきだったのだ。 そう意識して人間を巡っている。 まだ居場所と言えるものは見つかっていない。
平日の午前。 男は整理券をもらうため、小走りでパチンコ屋に向かった。 「今日は勝つ気がする……」 ポケットの中の軍資金を握った。 すると、道路脇でかがんでいる女を見かけた。 「……あの婆さん」 アパートの隣に住む婆さんが、お地蔵様を雑巾で丁寧に拭いていた。 男は足を止めた。 「信じる者は救われるか」 鼻で笑う。 夕方。帰り道、うつむいて舌打ちをした。 「ん……」 隣の婆さんがビニール袋をぶら下げ、地蔵の前に立っている。 そして、気にする素振りもなく、お供え物と小銭を袋に入れた。 「婆さん、こずるいこと考えたな」 「なにがだ」 「いやいや、今、お供え物と小銭、盗ったろ」 婆さんは笑いながら、男を見た。 「この地蔵、私が通販で買って、ここに置いたんだ」 「なんだそれ」 「他にも、何か所も置いてるさ」 辺りが暗くなってきた。 「私はねぇ、ちゃんと考えて置いてるんだ。リピーターを増やすためにね」 そう言うと、地蔵を抱えた。 「それ、どこに持って行くんだ」 婆さんが振り向いた。 「……ここは儲けが少ない」
坂を下った先で、海が、僕を呼んでいる。 潮の香りが、やけに強く感じられる。 さわがしい脈の音が、重く冴えのないおなかの痛みが、そう思わせているようだ。 白い看板が見えてきた。 すこし色が褪せて、それでいて、味がある。 マスターみたいだな、と思い、僕とは、ずいぶん距離があるな、と思う。 夏休み、はじめての週末。 部活が休みのその日、僕は、店に行ってみた。 「純喫茶雪月花」 週末だけの、夏休みだけの、管理人。 ここが、と体が硬くなる。 とはいっても、喫茶店をするつもりはない。 といって、何をやる、ということもないまま、ここに来てしまった。 あたり前に、なかは静かで、でも狭い店内は、いつもより、やたらと広く感じる。 扇風機が濁った空気をかき回す。 その渦が、僕の気持ちをもてあそび、かき乱してくる。 窓を開け、簡単に掃除をして、気持ちを整えていく。 誰か、来てほしい気持ち。 誰も、来なくていいとの思い。 ただ、ここにいることで。 ただ、ここにいることが。 波の音が、僕を、やさしく抱きしめてくれようとするのを、すこし、鬱陶しく思う。 誰も来ないまま、何も起こらないまま、ゆるやかに、時間は、すぎていった。
片っ端からオジギソウにふれ みいんなにお辞儀をさせては 店のおじさんに怒られた オマケをしてもらえるとか そんな機会には恵まれず でも、クラスで人気のあの子は いつもオマケしてもらえてた 横一列になって歩く若い連中に おおいに迷惑して それはそれは嫌な思いをして 家まで帰った 夏のお祭りには いい思い出がない いい思い出がないのは いい思い出にしようとする努力が 足りてないのかもしれない と、そう考えるのは なんでもかんでも 自分に責任があるような考えに つながっていくような気がしてしまう とは言っても、もう遅い ひとしきり、自分に責任があるのだと そんな生き方をしてきたせいで そういった類のものごとを 様々、呼びよせているようだ いままで夏に いいことってあったかなあ これから夏に いいことってあるのかなあ べつに夏じゃなくてもいいから いいことがあるといいんだけどなあ
畑に農薬をまく人々 真夏の畑は虫との闘技場なんだろうに アスパラを半分に切って正解だった 妻の体が年々弱っていく きっと早く死ぬと思う 息子が大人になるまでは待ってもらいたい 強い人だけど 僕は彼女がいなければ死ぬだろう 息子が大人になるのを地獄のように耐えると思う マスクは日本版ヒジャブになっている気がする 息子が悲しまないために生きているだけだ 折りたたみ傘が錆びている 休みの人達が電車に増えている 楽しそうでとても良い 人が歩いていない 窓の開いた車をみない
新しく出来た彼女は関西と関東の両方の特性を併せ持つ。 怒ると怖いらしい。 僕は彼女の欲しいものをなるべく用意する。 おかん怖いよ。 私あなたのママじゃないの🎵 練馬の百済は何故か大阪の枚方に生まれなかった。 ボーンスリッピー。 帰り際ほんまやなー、と言われる。 世界の終わりになっても女の子と遊んでいる。 あるいは世界はそれで安定するのかもしれない。 元カノの名字が変わる。 女の子は強い。 僕がアシストしたのかはわからないが幸せになって欲しい。 これをイマカノに送るとこれは私に向けての小説じゃないの?と嫉妬されてしまう。 僕は慌てて弁明する。 女の子は上書き保存、男の子は名前をつけて保存。 魔術と呪術。 真ん中をとるのは秘術らしい。 恋をすると寿命が伸びる。 今日は何か気分がいい。 秘術。 理論と思い込みの中間。 物理学の本を読まないと。 教会に来た女の子はアルゴリズムと呟いていた。 ヒントだ。 料理は出来る。 自転車に乗りながら歌も歌える。 つまらないかも知れないが小説も書いている。 畑仕事も自分を治すためしている。 明日も日が昇る。 世界のアルゴリズムは雑多に動くがここ3000年ほど複雑化しているので精一杯やろう。 そういえば秘術の話だ。 萌えからそして燃えから少し距離を取っていたがまた動き出したみたいだ。 骨まで燃やし尽くせ。 灰は灰に塵は塵に。 理論と根性との中庸。 明日から少し長雨が降る。 雨の中犬は愛を歌い地に満ちる。
「雪月花って言葉、知らんのか?」 すんなり教えてくれてもいいだろうに。 困り果て、僕がスマホを取り出すと、 「すぐスマホだ、いまの若いのは」 「だって、便利なんだよ」 「知ってる。オレだって持ってる」 自慢するほどではないそのことを、大威張りでマスターは口にする。 聞いててなんだか、恥ずかしくなってしまう。 その恥ずかしさから逃れるように、僕は手のなかのスマホで、雪月花について調べた。 「ないんだね、夏が」 「そういうことだ」 「そういうことって?」 「ニブい奴だな。そんなこっちゃ女にモテんぞ。夏がない。つまり、夏はお休み」 「休んで、どうすんのさ」 「この国の暑い夏からオサラバさ」 「海外? この店は? もったいないね」 「ん、もったいない? そうか、ならお前、夏休みのあいだ、この店、頼むわ」 「ええ、な、ちょ、そんな」 「なんだっていい、有料の勉強スペースにして友だち呼ぶか? 家から好きな本、持ち込んだりしてな。駄菓子かなんか仕入れて、ちっこいのに売るんでもいいな。あるもん壊さなけりゃあ、なんだっていいぞ。どうだ?」 「どうって。でも、部活あるしさ」 「毎日じゃねえだろ。週末だけとか。それも含め、お前の勝手だ。な」 これが、僕が「純喫茶雪月花」の管理人になったいきさつだ。
診察室で、男がうつむいていた。 「先生、私は……」 「あなた、最近オチばかり考えてるでしょ」 「はい」 「何だっけ? 蛇口から、漢字の水がたくさん流れて、排水溝が詰まった? これの何が面白いの」 「はぁ……」 「これ、思い付いたとき、ニヤけたでしょ」 「ダメですか?」 「重症だね。少し頭を休めなさい」 クリニックを出ると、男は幹線道路沿いを歩き、自宅へ向かった。 すると、サイレンを鳴らしながら、パトカーが通りすぎた。 「そこの車、左に寄せて止まりなさい」 道路脇には、パトランプから落ちた『あと二人』の赤い文字が転がっている。 一瞬、足を止めた。 「……いいじゃん」 男は、ニヤけ顔でポケットからネタ帳を出した。
「ねえ、マスターから聞いたんだけどさ。夏休みのあいだ管理人だって? どゆこと?」 言ったキイの背後で、夏の青がまぶしい。 真っ白な飛行機雲がすっと走れば、完璧なのに。 「いろいろあって」 「いろいろって? てかさ、無理でしょ、あんたには」 「僕もそう思うけどさ」 「まったく、何、考えてんのかな、あの人」 キイがスマホを取り出す。 「どうすんの?」 「マスターに真意を確かめようかなって」 キイが耳にあてる前、僕は、スマホの画面を手でおおった。 その影が、不自然にも思えるほど黒い。 「ちょっと、何よ」 「もう、日本にいないんだ。マスター」 休憩時間が終わり、部活再開の合図が遠くで響く。 キイとの会話はそれで終わり。 セミの声がやけに響く、夏休み前の午後のことだった。