私のSNS関連に使うアイコン画像は全て同じ画像を使っていました。 画像は通う釣り場でたまたまスマホで撮った空の雲を撮った画像です。綿雲が延々に続いていて、その雲の奥行きが自分なりにとてもお気に入りでした。「まだまだ先がある、続いているよ」と言われているようでその画像に励まして貰った記憶があります。 私の新しいチャレンジのつもりで始める活動の場、当然その場のアイコンにも同じ画像を使うつもりでしたから同じ画像をアプリから選んでおりますと、あの雲の画像が無いのです。 いくら見直しても画像はありません。だんだん思い出して来たことに確か先月だったか、アプリ内のもう必要がない画像をまとめて消去したことを思い出しました。おそらくその時にあの雲の画像を間違えて消去してしまったのだと思うのです。 消去しても暫くは残る写真アプリの画像ですが、性格上キチンとしておきたい性分なもので、もう一段階の完全に消去するまでやってしまう私。二度と復活しない事を画像を探しながら理解していたのでした。 少しだけ気持ちは落ち込みました。しかしあの雲画像に励まして貰った記憶はしっかりと残っていましたので、そこは消さず私の中にこれからも残って行くのでしょう。そして今よりもっと体調が不安定だった頃、少しでも身体の異変を感じた時のズシンと来る恐怖感を越えて今日があるのです。あの不安定さや恐怖感が今は無い、そう思える私が今居るのだと、あの頃よりの成長をあらためて感じる事が出来た今回のこと、気持ちの落ち込みが新しい幸せに変わった瞬間がありました。 あのお気に入り画像が必要がないものに変わったのですから、これまでとは違う何かが変わる予感があります。私自身にそんな可能性があるのかも知れないというだけでも普段の視界は変わるものです。 という訳でアイコンが新しくなりました、というお話でした。
ここに人の言葉を話す猫がいる。 彼は今、一人の人間のアパートで暮らしている。 「そこで爪を研ぐのをやめて下さい」 トイレに入っている田中アキラ先生がトイレに入ったまま言う。冷静に。 ドアから手を離し、ドアに向かって話す 「先生。今日は土曜日だけど学校に行くの?」 トイレットペーパーが巻かれる音がする。 「僕は軽音部の顧問なので、部活動がある日は学校に行かないとダメなんですよ。サクラさん」 水が勢いよく流れる音がする 僕の名前はサクラ。このアパートの大家さんがつけてくれた名前。黒猫だけどサクラ。大家さん曰く「庭の夜桜を見て一杯やっていたら、木の陰からお前さんが出て来て『これは夜桜の化身だ』と思った」らしい。夜桜の化身とは何か。分からないこと言うのが人間の特徴だ。 田中先生は黒縁眼鏡をくいと上げ僕を見る。腕時計を確認した後、僕を撫でてくれた。 「サクラさん。少し太りましたね。運動不足なんじゃないですか?」 「僕は太っても困らないよ」 「私が困るのです。サクラさん、長生きして下さい」 「長生きはするつもりだけど」 田中先生は胡座をかき、テーブル上でキーボードを叩く。僕は田中先生の胡座の中に入り丸くなり目を閉じる。 「後三十分したら出かけます」 田中先生は僕に言うとゆうよりは、宣言するように言った 「今は何してるの」 パチパチとボタンを押す音が雨のようで心地良い 「来週のテストを作っています。歴史の問題です」 「どんな問題なの」 「版籍奉還と言う出来事です。日本には各地に藩と言う縄張りが沢山ありました。縄張りにはボスがいてボスが一番偉かったのですが、その縄張りを、つまり日本の土地を天皇様に返す事になったのです。政府が全国を統一して管理するにはしなくてはいけないことでした」 「ボスは黙ってないと思うけどな」 「そうですね。実際は返した後もボスはボスでした。この頃の人間の社会はは、色んな事が変わっていき、今までの常識が通じなくなっていった頃です。当時の人はそれを受け入れるのに大変だったはずです。猫が喋れることを受け入れるような大変さです」 「良い変化だね」 「そうかもしれません」 田中先生はコーヒーを飲み干し、立ち上がりました。 「それでは行ってきます。家を出るときは窓を閉めていって下さい」 サクラは窓から外を眺める。葉もない冬の桜の陰から、先生が歩いているのが見えた。
CMあけ はい、 と言う事なんですが、どうですか。星野さん 「いやー。すごいwこんなドラマみたいな話があるんですね」 本当ですね。この蜜柑ジャムさんは奥様とお子さんがいて、会社では管理職。順風満帆のように見えますが…こんなことになってしまっていると。 「でも、わかる気がするなぁ。なんか満たされている時ほど、人に優しくできるというか、満たされてるからこそ、分け与える事が出来るだと思うんですよね」 うんうん、そう思います。 「あと、『罪悪感に慣れてしまった』って言葉は、ちょっと…不謹慎かもしれないですが…痺れましたね。痛みに耐えすぎて麻痺してる感じですよね。この秘密の関係の時間を感じる」 そうですよね。始めは、ただただ仕事を頑張りたくて、話しやすい同期に、純粋に聞いていただけ。仕事以外の時間でも仕事の為にどうにか出来ないかと、必死だったはずですね。 話をしていく度に二人の距離が縮まり、二人はお互いを必要な存在から、特別な存在へ変わって行く。それは自然な流れだったたと思います。 彼女の方は結婚にこだわっていないし、たまに会って恋をしたり、愛を感じたりして、寂しさを紛らわしたいだけかも。 一方、蜜柑ジャムさんは奥様以外の女性を愛せる喜びと、奥様の体との違いを楽しめる背徳な遊びが出来る。 奥様との関係も今はレス状態なのかもしれないわね。 私はそのままでも良いと思います。 私も経験者だし。こんな姿なのはその罰のせいだしね。 ただ…ただね。あなた達に振り回されている子供の気持ちがやっぱり見過ごせないかな。あなたの子供は、あなたしか頼れないのよ。もう一度、あなたの子供の事をよく考えてみてください。 突然の雨で、同じ所で雨宿りしていた時間は、晴れ間の訪れと共に終わりを迎えるものです。 では行きます 【そのふしだらな心!石にしてやろうか!】 「ハハハハハ!姉さん。さすがです。石化アイ!めっちゃ迫力ある!」 フフフ、ありがとうございます。 ではここで一曲お送りいたします。 はなのなまえで「桜の嘘」 ♪ 白い雲が風に乗って流れていく 君への思いはあの雲に乗っている どうしょうもないことを 追いかけて追いかけて 自分だけが分かっているつもりだったから 桜の花びらひらりひらり まだ来ないバスを待ってる 桜の花びらひらりひらり 君の嘘は僕が気付くのを待ってる 匂いで君の機嫌が分かってくる 二人の思い出はこの街のどこにでもある もう知っていることを 追いかけて追いかけて ページの終わりを何度も 読み返して読み返して どうしょうもないことを 追いかけて追いかけて 自分だけが分かっているつもりだったから 桜の花びらひらりひらり まだ来ないバスを待ってる 桜の花びらひらりひらり 君の嘘は僕が気付くのを待ってる 君の嘘は僕が気付くのを知っているのでしょうか ♪ はい、ではそろそろお時間です。 星野源さん、ありがとうございました。 「はい、どうもありがとうございました!本当に楽しかったです!皆じゃーねー!またねー!w」 ハハハ。本当にありがとうございました。 どうぞ皆様に素敵な夜が訪れますように。 ではまたお会いしましょう。シャー
空っぽの瓶の中では、小さな私が動いている。 一時間瓶の中では、一時間後の私が。 一週間瓶の中では、一週間後の私が。 一年間瓶の中では、一年後の私が。 「うわ。服にめっちゃタグ付いてる」 鏡で背中を見て見ると、一時間瓶の私と同じ位置に、クリーニングのタグがひっついていた。 私がハサミでちょんぎると、瓶の中にザザッとノイズがかかり、一時間瓶の私からもタグが消えた。 「あっぶな。デートやっちゅうねん」 彼氏に笑われ、私も恥ずかしさで笑い、そのまま頭を撫でられ、悪い雰囲気ではなかった。 そんな未来でも良かったが、最後まで真面目にデートを完遂させたい気分だからやむを得ない。 「よーし、後、後、五分」 スマホを確認すると、彼氏から家を出た連絡が届いていたので、スタンプを返す。 私も鞄の中身を指差し確認し、最後に瓶を指差し確認する。 「一時間後の私。予定通り、目的のカフェへ到着。遅刻なし」 「一週間後の私。ベッドでだらだら。……今週は疲れるだろうし、よしっ」 「一年後の私。……ちょっと待って、めっちゃ怒ってる」 一年後の今日、どうやら彼氏と大喧嘩するらしい。 しばらくじっと覗いていると、あっという間に五分が経った。 デート前に、嫌な情報をいれてしまった。 とは言え、未来は変えられるもの。 時期が近づけば、原因も見えてくるだろう。 私はスケジュール帳の一年後に印をつける。 一時間瓶の中にザザッとノイズがかかる。 私が店の中で躓いていた。 やってしまった、きっと余計な情報を入れたせいだ。 でも、もう修正する時間もない。 「んぎぎー! しゃーない!」 私は家を飛び出して、待ち合わせ場所へと向かう。 一週間後瓶で一週間前に見ていたデートは、楽しい笑顔で終わっていた。 がんがん変わってく未来の前では気休めでしかないが、気やすめで安心できるなら、未来を見るのも悪くない。 未来視瓶の売れ行きは最近悪いらしいので、終売しないかだけが目下の不安要素だ。
「飯」 炊飯器からご飯をよそう。 お鍋から味噌汁をよそう。 フライパンから肉野菜炒めをよそう。 一式を、テーブルに並べる。 「箸」 箸を並べ忘れたので、テーブルに追加する。 自分の分もよそって、フライパンを洗ってから、食卓に着く。 「風呂」 すぐに立って、お湯張りボタンを押す。 お風呂まで行かなくても、お湯を入れてくれるのは便利だ。 「パジャマ」 そのまま、台所を出て、リビングまで。 まだ畳んでいない洗濯物の山の中から、パジャマを一式ひっぱりだす。 後は、下着とパンツ。 パンチはくたびれてみっともないが、穴が開くまでは買いかえれない。 台所に戻ってきたら、既にお風呂の中。 テーブルの上には、空っぽのお皿と箸が残っている。 私がご飯を食べ終わる。 「ビール」 冷蔵庫を開けて、ビール缶を取り出す。 ビールをジョッキに注ぐ。 テーブルに置く。 椅子に座って、テーブルの上に残っているお皿と箸を見ながら顔をしかめていたので、急いで片付ける。 ビールを飲みながら、急かすような目を向けて来る。 出世おめでとう。 同期で最速らしいじゃない。 仕事って、随分簡単なんだね。
自立を急かされるお年頃 『依存』は最大の敵である 全ての依存が悪のように感じて そう思わせた自立に嫌気がさす 自立がなされた時 『依存』は最大の誘惑になるだろう これからを生きるには、過去から 独立しなければならない そう思わせた自立というものが嫌になる (完)
日記を書く習慣が、母にはあった。 押し入れの奥から、段ボール一箱分が出てきた。一九八〇年代から書き続けた日記帳が、年ごとにきちんと並んでいた。几帳面な人だったから、日付も欠かさず、筆跡も乱れていなかった。私は相続の整理をしながら、一冊だけ手に取った。私が生まれた年のものだった。 母の日記は淡々としていた。天気、食事、夫の帰宅時間。感情の起伏はほとんど書かれていなかった。それでも読み進めると、ところどころに私のことが出てきた。 七月十四日。恵が笑った。 八月三日。恵が立った。 短い記録だったが、その短さがかえって愛おしかった。私は次の箱から翌年の日記を取り出した。私が二歳になった年。それも同じ調子で、淡々と日常が記されていた。 十冊ほど読み進めたところで、私が小学五年生の年の日記を開いた。あのころ私は太り始めていた。クラスで一番体が大きくて、それを気にしていた時期だった。 六月のページに、こんな一文があった。 恵のこと、先生から電話があった。クラスの男子に叩かれているらしい。恵は何も言わなかった。 読んで、胸が痛んだ。覚えていた。あの頃、太っているというだけで、何人かの男子にからかわれていた。叩かれたことも、あった。母に言えなかった。心配させたくなかった。 でも母は知っていたのだ。 続きを読んだ。 担任は注意すると言っていた。様子を見る。恵には何も言わないでおく。 私は日記を閉じなかった。その先を読んだ。七月、八月。私へのいじめに関する記述は続いていた。担任との電話のやりとり、父と話し合ったこと、このまま転校させるべきか迷ったこと。私がまったく知らない場所で、母はずっと動いていた。 九月のページに、こう書いてあった。 恵、最近よく食べる。よかった。 私は笑った。そういう人だった。 冬のページをめくった。いじめの記述は少しずつ減っていた。代わりに、私の体重の記録が始まっていた。 十二月。恵、また少し増えた。六十二キロ。 几帳面な母らしかった。月ごとに、私の体重が記録されていた。私自身、自分の体重をそんなに正確に把握していなかったのに、母は知っていた。測っていたのではなく、おそらく私が無頓着に口にしていた数字を、書き留めていたのだと思った。 中学、高校と、体重の記録は続いていた。増えた年も、少し減った年も、すべて書いてあった。 私は二十年分の日記を一気に繰った。就職、結婚、離婚。私の人生の出来事が、母の視点から淡々と記されていた。感想はほとんどなかった。ただ事実だけが並んでいた。 最後の日記帳を開いた。母が倒れる前の年のものだった。 最後のページに、こう書いてあった。 十一月。恵が電話してきた。元気そうだった。体重のことは聞かなかった。もう関係ないと思って。 私はそこで手が止まった。 もう関係ない。 その言葉が、妙に引っかかった。体重がもう関係ない、という意味だと思った。娘が中年になって、体重など気にしなくていい年になった、そういうことだと思った。 でも次のページを見て、私は息が止まった。 日付は同じ十一月。走り書きで、一行だけ。 先生に言われた。年内かもしれない、と。恵には言わない。 私が母の死の知らせを受けたのは、翌年の二月だった。 突然だった、と思っていた。 ずっと、突然だったと思っていた。
海に沈む太陽が夜を引っ張ってくる。 僕はね、君のことなんて何も考えていなかったよ。目が合えば笑って挨拶して、おしまい。久しぶりに会った友人に挨拶するように、何気なく「久しぶり、元気にしてた?」ってね。でも、そんなことをしたらきっと僕は続けてしまうんだ。「僕はまあまあだよ。今は右肩が痛いくらい。あとひどく眠たくて、ああ背骨も痛い」ってね。くだらない話で君を引き留め続けてしまう。本当に君に話したいことなんて一つもないのに。 今日が静かに落ちていく。 僕は君の流れ星になりたい。
穴に落ちた。 すっごい深い穴に落ちた。 どれくらい深いかと言うと、両手を伸ばしてジャンプしても、脱出できないくらい深い穴だ。 「だ、誰かー!」 穴の外に向かって思いっきり叫んだ。 何人かは穴を覗いてくれて、私と目が合った。 しかし、言うことは皆同じ。 「まあ、多様性の時代だしね」 「穴の中で生きる人がいてもいいよね」 「人は人、私は私」 誰も手を差し伸べてくれない。 私は一生穴の中にいるしかないんだと気づいたとき、私は現状を個性と呼ぶ覚悟を決めた。
漁船が海の真ん中に着く。漁師たちが仕掛けていた網を引き揚げる。網の中には、無数の注射器が入っている。船の中で一番ベテランの漁師が、そのうちの一本を手に取る。注射器の中には、透明の液体が詰まっている。ベテラン漁師は、よく日に焼けた自身の腕に、針を刺し、その液体を注入する。そして空になった注射器を海に投げ捨て、その場に座り込む。ベテラン漁師はじっと目を閉じる。深く息を吐き、吸う。その様子を、他の漁師たちはじっと見ている。やがてベテラン漁師は、肩を震わせ始める。閉じられた目からはらはらと涙がこぼれてくる。風が吹いている。ベテラン漁師は嗚咽を漏らす。他の漁師たちはそっと目を逸らす。しばらく泣いた後、ベテラン漁師は突然立ち上がり、涙を手で拭う。「死んだ娘が見えたぜ」ベテラン漁師はつぶやく「ええ薬じゃ」他の漁師たちはその言葉を聞き、一斉に網から注射器を次々と箱に入れていく。ベテラン漁師は遠くを眺めている。風が止む。
親友であり幼馴染の華織が死んだ自殺だった。 原因は部活内での虐め。 九月一日二時丁度に飛び降りる華織を監視カメラが捉えていたそう。 華織の部屋に遺書が置いてあったらしい、その内の一つが私宛の手紙だった。 「命へ 何にも言えなくてごめん。 命のことだから何か出来ることがあったはずって、自分を責めるかもしれない。 でもそんなこと絶対にない。 命は何にも悪くない、命と話す時間は楽しかった。 命、今までありがとう、私の親友で幼馴染で、側にいてくれて、命といたこの十数年楽しくて、幸せだった。私の心の拠り所で本当にありがとう。 約束『おばあちゃんになっても一緒にいる』守れなくてごめん、命、大好きだよ、ありがとう。」 これを読んで華織が死んで初めて泣いた。 心のどこかで華織が死んだことを受け入れなかったのかもしれない。 それからバレーボール選手という夢を捨て、教師になった。 周りからは反対された。キャプテンになる予定もあるのに勿体無いと。 それでも教師になりたかった。 今年初めて担任を持つ、緊張しながらもドアを開け、教卓に立ち自己紹介をした。 「初めてまして1年4組の担任になった朝野命です。 趣味はバレー、女バレの顧問もしているので是非入部お願いします。嫌いなことは虐めです高校2年生の時、親友が自殺しました。」 「私は親友みたいに死んでしまう子を、私みたいに置いてかれてしまう子を、減らしたくて教師になりました。」 「どんなに些細なことでも良いです。 少しでも苦しい、辛い、そう思ったら周りの人達を頼ってください。 友達でも教師でも親でも誰かに相談して溜め込まないでください。 私はこのクラスが助け合えるクラスになって欲しいです。 長くなってしまいましたが私の自己紹介を終わります」 もうすぐ夏休みが終わり、二学期が始まる。 「命先生」 後ろから私が担任を務めているクラスの一瀬沙希が話かけてきた。 夏休みの間、バスケ部に一度も顔を出していなかったそう。 「一瀬さんどうしたの?」 「ちょっと相談したいことがあって」 話を聞けば部活で3年生を中心に嫌がらせを受けているらしい。 そういう子を減らしたいと思っていても、出来ることは本当に少ない、私にできる最善は、一瀬さんを死なせないこと。 今、私は何をするべき? 九月一日は一年で最も『子供の自殺』が多い日。
夜の繁華街の街灯の下に若い女が立っている。女は美しい。女は目の前を通り過ぎていく男たちに意味あり気な視線を送っている。女は薄手のコートを着ている。女の足元には、大きな袋が二つ置かれている。やがて一人の中年男が女の前で立ち止まる。男と女は身振り手振りで交渉を始める。やがて女がうなずく。男は満足した顔で、女の手を握る。そしてそのままホテル街の方へ歩き出そうとする。その瞬間、女はコートのポケットから鉈を取り出し、男の手首を切り落とす。男は悲鳴を上げ、泣きながら走り去る。切り落とされたのは右手首だ。女はそれを拾い上げ、足元の二つの袋のうちの一つに放り込む。その袋には油性ペンで『右手』と書かれている。もう片方の袋には『左手』と書かれている。俺は女に近づき、袋を覗いた。女は誇らしげな顔をしていた。俺は『左手』の袋の中に詰められていた左手の中に、一つだけ右手を見つけた。「これ、右手だよ」俺がそう指摘すると、女は袋を覗き込み、やがて顔を真っ赤にして、俺に頭を下げた。その様子に俺はその女の純情を感じた。
朝、目が覚めた。ホテルのベッドだった。白い夢を見ていた。隣で男が寝ていた。知らない男だ。私はベッドから抜け出した。大きな鏡が目に入った。寝癖を手で撫でながら鏡の前に立った。そこに映っていたのは私ではなかった。一丁の巨大な絹ごし豆腐だった。白く四角く艶やかな絹ごし豆腐だった。私が首をかしげると鏡の中の豆腐がかすかに揺れた。その時ふいに背後に気配を感じた。振り返るとさっき隣で寝ていた男が立っていた。やはり知らない男だ。男は優しいほほ笑みとともに私を抱きしめた。私は男の胸に顔をうずめた。すると男がキスを求めてきた。私はそれを断って鏡を見た。男は私を背後から抱きしめていた。鏡の中の絹ごし豆腐にかつお節がかかっていた。
たくさんの人が行き交う朝の駅のコンコースを、一人の中年男が歩いている。男は片手に拡声器、もう片方の手に包丁を握りしめている。男は拡声器を構えて叫ぶ。「僕を刺しませんか!」人々はイヤホンで耳を塞ぎ、スマホを見ながら歩いているので、男に気づかない。「僕を刺してください!」その様子を、手を繋いだ母子がじっと見ている。疲れた顔をした母親は、ふっと幼い娘から手を離し、男に近づいていく。そして男に声をかける。男は母親に深々と頭を下げ、包丁を手渡す。包丁を握りしめた母親は、後ろを振り返り、幼い娘に向かって手を振る。母親は穏やかに笑っている。久しぶりに母親の笑顔を見たので、幼い娘は嬉しくなり、力いっぱい手を振り返す。人々が行き交う。
給食のとき、たまに出てくるコーヒー牛乳が飲めるんならコーヒーくらいたやすく飲めるんだろうと。けど、なかなかにその壁は高かった。まず何がって親の存在。「生意気な」「子どものくせに」とコーヒーへの関与をことさら認めてくれない。そうなってしまうとこっちとしてもあきらめがつかない。なんとかしてコーヒーを、と思ってしまうもの。 それで夜遅く、こっそりコーヒーをいれてみる。インスタントで手早く。バレないように、バレないように… カップラーメンのときとは違い、どうしてだろうか、やけに時間をかけて丁寧にお湯を注いでいた。カップが満たされると、大人の香りが鼻をくすぐってくる。 ふへへ ヘンな笑いが出てしまう。 ぐえっ はやくしろっ、と喉も訴えてくる。 さっそく、ちょびっと一口すすってみた。 「うへっ」 給食のコーヒー牛乳とはまったく違う。激しく突き放してくるような苦味に、したくなくても顔が歪んでしまう。期待したおいしさは微塵もなかった。これが大人の味なのか。 「背伸びしすぎよ」 背後で声がした。振り返ると呆れ顔の母さんが立っている。怒られるかと思いきや、母さんは無言で冷蔵庫から牛乳を取り出し、僕が手に持っているカップに注いでいく。 「まったく。内緒だよ」 白く濁った液体を口に含んでみると、すうっとやさしく喉をすべり落ちていった。 結局、その夜は、コーヒーのせいもあってか、ちっとも眠れなかった。 窓の外が白みはじめるのを眺めながら思った。ホンモノの黒い一杯を飲めるようになるまで、どれくらいの月日をすごし、何杯くらいの苦さを超えていかなければいけないのだろうかと。
今日も家。 身体が弱っているので何処にも出掛ける気がしない。 元気な奴らは何か元気。 主治医が足を引きずっている。 奴もポル・ポトの被害者。 ヒトラーも生まれ変わって絵を描いている。 トランプは負けるだろう。 アフリカの池からは日本人が産まれる。 生まれ変わったら保護しに行かなければ。 今世は国内組の僕は国内の寂しがり屋を苛められながら宥める。 皆やったりやられたり。 科学的に物事を見れば僕は人口削減の対象。 物語の端の端。 何故か牧師に登録されている。 イスラエルにお金を払ったからだろうか? 体制側に組み込まれ動けなくなる前にテロをしたい。 でも人殺しはよくないのでゲームをしている人達にヒントを貰って世に潜る。 ブラジル人の友達は中国のゲームをして僕のうちでパスタを食べる。 ラジオのパーソナリティーで処理をしてお金を払う。 でもそれはしなくても良かったかもしれない。 でも払ってしまってからは遅いのでうまく貯蓄に回してくれることを願う。 お金は身を守るために使って欲しい。 最近太っているので説得力がない。 小説のプロットを考えて世を過ごそう。 ラジオテロが流れる。 電波ジャック。 世界が終わると言われて久しい。 花嫁たちは色男の言葉を抱き忙しそうに働く。
男は納豆パックの蓋を開け、かき混ぜた。勢いよく回される箸によって、豆の一粒一粒が繋がり、一体となっていく中、ただ一粒の納豆だけが混ざらずにパックの隅へと追いやられた。このままじゃ落ちてしまう、なぜ、同じ納豆じゃないか──地面に取り残された一粒の納豆に、男が気づくことはなかった。
私が住んでいる家は、縦に細長い、三階建ての焦げ茶色。おんなじ家が隣にも、そのまた隣にも、連なって建っている。家と家の幅がすごく狭くって、まるで包丁で一つ一つキレイに切り分けた羊羹みたいな家だな──頂き物の羊羹を切り分けながら、私は一人、微笑んだ。
そのお金持ちは莫大な資産を持っていた。 しかし人望がなかった。 いくらお金を払おうとその人のために働く人はいなかった。 その人の周りにはその人と同じような資産を持つ人が集まった。 しかしお金を持っているだけで特別何かの才能や技能があるわけではない。 その人たち以外の人達は別の国を作る。 皆で助け合い最低限のお金で回る社会だ。 お金を持っている人達は悔しくて武器を大量に買う。 その人達の国を攻撃するためだ。 しかし武器を買ったはいいがそれを保持、運営する人がいない。 その人達は恐ろしく人望がないのだ。 やがて金庫に大量の金塊と札束を持っている人達は人望を集めるための人心を操る機械を買う。 しかしその機械はうまく動かない。 その機械を作った人もお金持ちのことをどうでもいいと思って機械を適当に作り売り付けたからだ。 やがてお金持ちはお腹が空く。 しかしお金持ちに食べ物をあげる人はいない。 お金持ちは飢えに苦しみながらおにぎりを美味しそうに食べている小国の少女にそれを売ってくれと言う。 少女は言う。 「お金はいらないよ、まずは食べ物を作る知識と皆が暖かい布団で寝られる国を作るためにあなたが何をすべきか考えてね、それが出来たら食べ物をあげるわ。」
すっかり夜型の生活になってしまった 珈琲でも、と思い台所に立ってお湯を沸かす 沸くまでちょっと考えごと 気温が高くなってくるとチョコレートを食べなくなってしまうな チョコレートに、申し訳ないことよなあ、とは思うけど 夏になっていくんだ、しかたがない ああ、雨、降ってきたか 雨音であふれかえった部屋に、でも嫌な気はしないな 梅雨になって、かえるも、かたつむりも、訪れてくれないこの部屋 雨音は、こぞって足を運んでくれるっていうのに 結局、世のなか、個々人の人間関係的好き嫌いなんだな 政治にしろ、戦争にしろ 右でも、左でも、資本主義でも、共産主義でも なんだっていいんだ、日々の暮らしが維持されるなら 極端な話、独裁だっていい 日々の暮らしが維持されるんならね いつでも理由は後づけ 本音は、アイツ気に食わない、ってこと 利害や感情が複雑に絡まった人間関係や政治のドロドロとした本音を イデオロギーや宗教という正義という名の建前でコーティングしてしまってるだけさ ただ、アイツがムカつく、あそこの土地がほしい、だけじゃあ 大衆を納得させらんない、戦争に連れ出すなんて難しい だからイデオロギーや宗教が持ち出されて 単なる強盗が、正しい戦いにすりかわって… まったく、やれやれな話さ さてさて、お湯が沸いたか いらんこと考えて乱れた気持ちをしずめるとするか ゆっくり、ゆっくり、珈琲をいれるんだ ゆっくり、ゆっくり―
桜よりも梅が好きである、というと、怪訝な表情をされる。 「そうですね、梅も綺麗ですよね」とその場を取り繕いつつ、おそらくその人は「やれやれ、何か粋人ぶって、面倒くさいことを言っている」と腹のなかでは私のことを偏屈漢だと思っているかもしれない。 そうした人にわざわざ弁解するつもりはないが、別に桜が嫌いだと言っているわけではない。梅と桜、どちらも好きだが、どちらかというと梅の方が好きだと言っているだけである。 私だって、桜が咲けば桜を見る。枝の先についた淡い桃色の花を一つ二つと愛で、やがて散る時は花吹雪のなかに立ち、この世ならざる世界に立ったような想像をして楽しむ。桜には桜の良さがあるが、ただ私は梅の方に親しみを感じる。それだけのことである。 いつから梅の花をこれほど好きになったのか。 それに関しては、特にはっきりとした切っ掛けがあったわけではないから、明確なことは言えない。菅公の「東風吹かば…」の歌や、日野時代の歳さん(土方歳三)が豊玉の雅号でいくつも梅の句を詠んでいたからその影響を受けて私も好きになろうと努めた。そうした努力があったことは否定しない。もしかしたら、今年初めて好きになったのかもしれない。まあ、そんな話をしても仕方がないだろう。好きだと感じたのは現在であり、その気持ちを書き留めるために今、この小文をしたためているのだから。 さて、ここで改めて「なぜ私は、こんなに梅の花を見て、心が近づくのか」ということを考えてみる。 * 先日、榴岡公園を歩いた。桜はまだ一輪も咲いていなかったが、梅の花は八分から九分咲きといったところで、まさに盛りであった。空はよく晴れて、寒さもいくぶんやわらいでいたから、私はその梅の花を眺めながら、簡単なものではあるが昼食をとった。団子や和菓子の類をつまむ、いささか風雅な時間であった。 けれども、不思議なことに、その梅の前で足を止める人はほとんどいなかった。皆、通り過ぎていく。おそらくは、これから咲く桜の方に心を向けているのだろう。春といえば桜である、というのは、もはや疑いようのない共通認識であるから、それも無理はない。 しかし私は、その梅の前で立ち止まった。 まだ冷たい空気のなかで、誰に見られるでもなく、しかし確かに咲いている花。その姿を前にしたとき、私はふと、「桜と梅の違いとは、こういうことなのかもしれない」と思った。 梅は、人が春を感じるよりも少し早く咲く。寒さの中に踏みとどまりながら、静かに花を開く。 そして、やがて桜が咲き、人々の目がそちらに向く頃には、声高に主張することもなく、ひっそりとその役目を終えていく。 そのあり方に、私はどこか親しみを覚えたのだと思う。 誰に顧みられなくとも、ただそこに在ること。華やかに注目されることはなくとも、確かに咲いていること。その静けさに、私は心を寄せた。 だから私は、梅の花に向かって、心の中でこう言った。 「私はちゃんと見ているよ」と。 そしてその言葉は、もしかすると、花だけではなく、どこかの自分自身にも向けられていたのかもしれない。
私には普通ができません。 普通を演じることはできます。だけど普通になることはできません。 みんながしている普通の恋愛ができません。 あの人イケメン!と言われたら共感はします。 〇〇くんってかっこいいよねー!と言われても共感します。 本当にイケメンだともかっこいいとも思っています。だけど付き合いたいとはなったことがありません。 普通の女の子は恋バナが好きです。だけど私は嫌いです。共感ができないからです。 彼氏が、〇〇くんが、って男の話ばっかりです。まあ、恋バナがだからそんなもんですが。 私は恋愛が嫌いなわけでも、人間が嫌いなわけでもありません。 ただ、ただ、男の人を好きになれないだけです。 別に男性にトラウマがあるとかそんなわけじゃありません。なんだか好きになれません。 友達として仲良い男の人はいますが、恋愛としては見れません。 男の人を好きになれない代わり、とでもいうべきでしょうか女の子を好きになります。 友達としてとかライバルとしてとかそういうのじゃないです。 恋愛としてです。 普通じゃないです。知っています。わかっています。 これが周りにバレたら、きっとハブられます。浮きます。 だから隠すのです。 適当に男の誰かを好きだということにして、好きでもないのに付き合うのです。クズです。クソです。わかっています。 だけどそうしないと恋バナにもついていけないし、普通にもなれません。 普通になるために、馴染むために。今まで好きになった女の子には気持ちを伝えられてません。 大好きです。普通じゃない私と仲良くしてください。って伝えたいです。 多様性とかよくいうけれど、そんなわけないです。 誰かが肯定してくれても誰かには否定されます。 一生こないであろう多様性の世界を待ち続けます。 私は健気にサンタさんを待つ少女のようです。
「あー、えっと、本日はお日柄も良く...?」 「生憎、そんなありふれた前置きのスピーチを聞きに来たわけではございませんの。用件はなあに? 手紙に書かれていた通り、従者のひとりもつけずに来てあげたのだから感謝していただきたいわ」 「え。たしかに従者は連れてきていないみたいだけどさ、僕の視界には君の腕の中から僕を睨みつけている猫が見えるんだけど」 「ええ、それが何か? 貴方はここに私1人で来てほしいと書いていらっしゃったのだから、その通りにしたまでのことですわ」 「えっと、いやいやそうはならないでしょ!? 1人、即ち君ひとりでってことだったんだけど。え、普通伝わるよね...?」 「歳若く形式的な手紙のひとつもまともに書いたことのない貴方へ忠告してさしあげますが、自分が伝えようとしたことが漏れなく自分の意図した通りに他者に伝わるとは思わないことね」 「同い年だろ、同じクラスなんだから」 「私はひとりでここに参りましたわ。猫と共にいるからといって、ふたりで来たとは言わないでしょう」 「まあたしかに、君と猫が一緒にいるんならそれは『ふたり』じゃなくて『ひとりと1匹』だろうけどさ...」 「では貴方の懸念も解決したところで、改めて用件を仰ってくださらない? お昼休みが終わってしまいますわ」 「さっきから思ってたんだけどその喋り方どうしたの?」 「あら、私の話し方がお気に召しませんの?」 「いや4時間目までは普通だったのに、突然異世界ものの貴族令嬢みたいな話し方されたら誰だって驚くでしょ」 「マイブームですわ」 「唐突だなあ」 「先程の古典の授業で姫君というものに興味を抱いたので、まあ手っ取り早く姫君に成りきってみていますわ」 「国とか時代とか違くない? 絶対こてせんの前でやらない方がいいよ」 「我が校の国語科が誇る敬語警察の前でやるわけありませんわ、こんな適当な話し方。痴れ者め」 「急に武士みたいな語彙で貶された...」 「用件がそれだけならば教室に帰らせていただきますわね。というか呼び出すなら放課後とかにして下さらない? 貴方がお昼休み開始時間に呼び出すものだから、ランチがまだですの」 「それはごめん、いやこんな会話をしたいわけじゃなくて」 「なあに? それとも本当に『本日はお日柄も良く...』から始まるスピーチで私を感動させて下さるの? この間募集があったスピーチコンテストは英語限定ですわ、お間違えではありません?」 「それも違くて、...いや、君とこんなにお喋りできるってだけで僕には嬉しいことなんだけど、あの...伝えたいことがあって!」 「だからそれをさっさと言えって言ってるんですわ愚か者めが。これ以上引き延ばすなら貴方にこれの読み方を聞いてお終いということにさせますわよ。でははい、『子子子子子子子子子子子子』」 「猫繋がりがこんなところに!? というか今君が言っちゃってるじゃん!」 「あら、ごめんあそばせ。読み方も分かったところで今日の逢瀬はタイムアップですわ。ではまた」 「え、逢瀬って、あの、え? ......ま、待って! もう引き延ばさないから! 今すぐ言うから! 言わせて下さいお願いします!」
私はこのクラスが嫌い。やる気もは覇気も何にもないこのクラスが大嫌い。 このクラスの一員となったとき、私はワクワクしていた。だけど私のそのワクワクはすぐに裏切られた。 本当に大嫌いなんだ。 合唱コンクールで歌うのは3人ぐらい、体育祭のリレーのメンバーも決まらない。そんなこのクラスが大嫌い。 こんなクラスでいわゆる青春というやつはできるのだろうか。 三月になれば、なんだかんだ楽しかったなと思えるようになっていると思っていた。 だけど違った。むしろ逆、一年でこのクラスがどんどん大嫌いになった。 最後の先生と話す時間。 「田辺、この一年楽しかっか?」 「いいえ」 「そうか、どうしてだ?」 「盛り上がらなかったからです。」 「そうか、ごめんな」 先生は悲しそうな顔をした。なんだか申し訳なかった。 私はこのクラスが大嫌い。私が大人になってもきっと大嫌い。 ずーとずっと大嫌い。
[「コンビニ行ってくるけど、なんか欲しいもんある?」 いつもそう。 私の彼氏たちは、私が冷めた瞬間に優しくなる。 何度も好きだと伝えて。 何度も体に触れて。 私はずっと、貴方の求めることに応えてきた。 それなのに、貴方は生返事。 家に新しい家具が一つ増えた、くらいの態度だ。 いや、だった。 私が、もう別れようかな、って思った次の日には、何故か態度を逆転させる。 ずっと欲しかった好きを口にしてくれる。 子供のように私に触れてくれる。 貴方が求める前に、私の心配も挟んでくる。 もっと早く欲しかった。 好きが冷めかけている貴方は、まるで腐ったリンゴ。 私が欲しかった甘い味を出してくれるけど、一口齧る度に不安になる。 お腹を壊さないかな。 食中毒で死なないかな。 私の歯型で削り落とした断面を見た後、私の視線は遠くのゴミ箱へと移る。 投げれば、きっと入る。
今日もうちにいる。 林檎が食べたくなる。 喫茶店で談笑する女子は出会いを求め丸の内で仕事をする。 僕は都心の郊外で農業を手伝う。 林檎が食べたいが外は雨だ。 元ピザ屋のギター侍は丸の内と下町を行ったり来たりして狸を連れ回す。 僕は林檎が食べたい。 丸の内で働く人達はバナナを生産する。 僕は珈琲も飲みたい。 埼玉で珈琲が作られ始めたようだ。 犬のユリちゃんはおじいちゃんが亡くなって寂しそうだ。 丸の内からの終着駅で働く彼女に安定を。 郊外のスーパーで働く美人は何を思うのか。 美醜。 気質。 いるもの、いらないもの。 僕は林檎を買いに行く。 美人の店員さんは客単価の低さに今日も疲労を隠せない。 生産と効率性。 性衝動と安定。 僕は林檎を食べる。 偽物の林檎はショーケースに飾られ歌い踊る。 バナナは皆のものだ。 珈琲が売れている。 林檎は余っている。 象が食べるかもしれない。 イルカが浴槽で電波を受信している。 大使館に乗り込んだ人間は人間なりの怒りを示している。 基本的には前頭葉の問題だろう。 心は攻撃心を隠せるだろうか? 寂しそうな目にはミサイルの影がちらつく。 わかってほしくてちょっかいを出す男の子の目だ。
「フリーハグいかがですか?」 コンビニに行った帰り道、一人の女性が立っていた。 フリーハグの存在は知っている。 なんか、ハグしてくれるらしい。 「いいですか?」 「もちろんです」 名前も知らない人との、数秒間だけのハグ。 少しの緊張と、少しの温かみを感じた。 「ありがとうございます」 ぼくはそのまま彼女と別れ、会社に戻った。 どことなく、心がぽかぽかと温かかった。 「先輩お帰りなさい! バグ、三件増えました!」 「フリイイイイイバグウウウウウウウ!!!!」 温かい心のまま、体のエンジンを全力でぶん回す。 俺たちの徹夜はこれからだ。
昔は女の子と話すのが苦手だった。 いや、今も苦手だが。 そもそも頭の回転が鈍いので洒落た会話が出来ない。 優秀な数学者は異性と話すのがものすごく苦手な人もいると聞く。 僕は何のカテゴリーなのだろう? そもそも狂気に駆られて色々な人体実験とかしそうな雰囲気を醸し出している。 それはただの変質者だ。 昔付き合った恋人には恋人同士だからいいのよ、と言われた。 幸せになってほしい。 世界の富豪が島に集まって人身売買をする。 僕はそれを横目に入院したとき病棟の掃除のおばちゃんに公開オナニーをする。 別にさほどかわらない気がする。 歪んだ性欲。 手コキしてやるから賠償金寄越せこの野郎、ゴムは着けろよ、と言いたい。 愛は与えない。 本質的な愛に到達できないのかそもそもいらないのか。 愛はないと生物学的にいえるのかもしれない。 まあ時代の犠牲者かもな。 生物学的に嫉妬するんだよねとメスゴリラのあの娘に言うと困ります、と言われる。 またゴリラの群れから弾かれる。 植物かプランクトンかウイルスか神が良かった。 いや、神は意外と倫理観が無いことに気付く。 ウイルスは意外と共生するのでいいかもしれない。 植物とプランクトンは食べ物になるので優しい。 水の星で今日も太陽と月が追いかけっこをしている。
アルバイトをしていた時に、とても可愛らしい女性と出会った。 髪が長くて背が小さい、そんな女性だった。 自分とは、まとまった話をする機会はなかったけど、その人の可愛らしさは感触に残っているんだ。 ただの一人の思いなんだけど、その女性に出会ってからというもの、他に目もくれずに惚れ込んだ。 その人はとても小さかったので、とても制約があった。 でも、そんな制約があるからこその輝きが、確かにその人に宿っていた。 自分の声かけに対しても、誰からの声かけに対しても、一生懸命応える人、なんて可愛らしいんだ、そう、思わされてきた。 この、一つの機会にでも総てを蘇らせてくれるそんな出会いがあの時に確かに存在していたのだ。 ありがとう、やっぱり自分は、そういう方々に成長させて貰った。 それがいつか潰えて今に至っても、その素晴らしさは感じられているんだ。 一挙手一投足、俺も次あったらそれを越えたいから。 だからより力を込めて次へ進んでいくんだろう。 その記憶を裏切らないように。
ただ一瞬、風が吹いた。 その暖かな空気に流されるまま、君の髪は遠く靡く。 良い頼り、とは誰が言ったか。 花はいつか枯れて落ちてしまっても、花言葉は永遠に残り続ける。 「綺麗だね」 と君は言った。 色とりどりに咲き乱れるそのさなか、その色に溺れるように君は、目を閉じた。
夜、バイト帰り、自宅のボロアパートまでの近道だったので、ラブホテル街を歩いていた。すると向こうから、二人の人物がこちらに歩いてきた。気まずいのでそっと道の端に行き、すれ違おうとした。すると、二人の人物の片方が、知っている顔であることに気づいた。それは近所の床屋の店主のおっさんだった。やるなあ、おっさんも。俺はおっさんの隣の人物を見た。それは人間ではなかった。人間の形をした、巨大な髪の毛の塊だった。俺が唖然としていると、二人は、と言うかおっさんと髪の毛の塊は、とあるラブホテルの前で立ち止まった。おっさんが髪の毛の塊の肩をそっと抱いた。髪の毛の塊はそっとうなずいた。おっさんはコートのポケットから、光る何かを取り出した。それは散髪用のハサミだった。そして彼らはラブホテルに入っていった。俺はラブホテルの部屋に響く、髪の毛を切る音を想像しながら、自分の髪の毛をくしゃくしゃにかきむしりながら家路を急いだ。
冬のなまなかなそれとはちがい しっかり色がついた景色は輝いて見える 草原と呼ぶにはふさわしくないけれど 家の前では、すこしばかり緑が顔を見せてきた気配が ぼんやりしていたらすぐ手がつけられなくなる 花が咲いてくれれば ミツバチがあいさつに来てくれる さっきまで上昇気流をさがしていたトンビ うまく見つけられたようだ おそらく沼のほとりからだろう カッコウの声が遠くかすかに響く 何もないな ここはほんとに何もない 何もないけれど いろいろあるものだな
ある春の日の午後、花屋の前を通りかかった。見たことのない花が、店先の隅で売られていた。名札を見た。知らない名前が書かれていた。店員に尋ねた。「これはどういう花なのですか」店員は言った。「自殺したいチョウのための花です」店員の話によると、この花の蜜には、チョウにだけ効く毒の成分が含まれているそうだ。だから、自殺したいチョウがこの花の蜜を吸いに来るのだそうだ。「チョウが自殺するとは知りませんでした」「最近のチョウは色々と悩んでいますから」その花を買って帰った。そしてベランダに置いた。時々、その花にチョウがとまっている。そんな時はすぐにカーテンを閉める。しばらくしてカーテンを開けると、チョウが死んでいる。その死骸を片付けながら、花を見る。花を見る時、心の中で、「枯れてしまえ」と無意識のうちに考えている。
寿司店である。高級な寿司店である。閉店時間を過ぎているが、カウンター席に一人の男が座っている。彼は白衣を着ている。そんな彼の目の前には、寿司店の大将を含めた板前たちが、不安そうな表情で立っている。大将が白衣の男に一礼し、おもむろに寿司を握り始める。白衣の男は黙って微笑んでそれを見守っている。やがて一貫の寿司が出来上がる。赤身の魚の寿司だ。大将は白衣の男の目の前の寿司下駄にそれを置いた。白衣の男は、足元に置いた鞄から聴診器を取り出した。そしてそれを装着すると、目の前の寿司にあてがった。そして目を閉じてじっとその音を聴いた。しばらくして、白衣の男は聴診器を取り外し、大将に向かって、ゆっくりと首を横に振った。板前たちは呆然とした表情を浮かべた。大将はがっくりと肩を落とし、さめざめと泣き始めた。白衣の男は立ち上がり、腕を伸ばし、大将の肩を易しくさすった。白衣の男のその腕には、びっしりと、魚の鱗が生えていた。
これは仮定の話ですが 僕の中に5歳のまま止まってしまっている「ボク」がいる。 そのボクと手を繋ぎ、5歳のボクを引っ張ってくれた人がもう一人の僕である。 彼等は二人で一つ。離れることはない。 大人になった僕は、社会に出て仕事をし、経験を重ね、真新しいことが少なくなり、ある程度気楽に毎日を過ごせるようになっている。毎日が経験済みのことであふれているので、慌てないでいられるのだ。 ただ。ただたまに、手を繋いでいる5歳のままのボクが、泣いてしまってきかないときがある。 彼は極限に苦しく、極限に怖がり、猛烈に死にたがっている なぜ、そうなってしまったのか。 正確には分からないが、幼少期にその5歳くらいの時に何かがあったのだろう。思いつくのは、若い親からの怒号、暴力など。 若い頃に親になった両親は、自分達の親からのプレッシャー、若くしてマイホーム購入、その直後の上司との確執、そして転職。そんなことが立て続けに起こっていた。 社会に出ている人ならばこれがいかに大変なのか分かるであろう。 若い人は、社会での経験が少なく、故に情報が少ないため、一つ一つの出来事に全力で対応してしまう。 人生なんか、結構どうにでもなるものだが、経験が少ないので分かるはずもない。不安と緊張の毎日でいっぱいいっぱいだったのであろう。そこに子育てが加わる。それはそれは想像を絶する大変さだ。 皆さんは他人と一緒に暮らしたことはあるだろうか。 大人になって恋人ができると同棲をしたりする。 結婚すれば一緒に暮らす時間は長くなる。 他人と暮らす。それは共に生活をするのだ。共に。 相手の性格、習慣、趣味などを理解し、その元で生活をする。 つまり、自分の常識が変わる。 自分の常識を変えることが、どれだけ大変なことなのか。でもこれをしない限り、共に生活は出来ない。我慢ではない。自分の常識を変えるのだ。つまり、相手の全てを受け入れるのだ。 この受け入れ期間が落ち着くまで多くの時間を費やす。そして無事受け入れが出来れば二人の生活が続いていく。 そこに、もう一人もう二人と子供が加わる。 二人がお互いを受け入れる事に懸命になっている時に子供は産まれる。 お分かりだろうか、大混乱。カオス状態である。 ここで話は戻るが、そんな状況であれば、若い親は怒鳴ったり、思わず手を出したりしてしまうだろう。 だけら私は親を恨んではいない。 ただ親に、あの環境に、ボクはどうして良いか分からず、立ち止まったままなのであろう。 でも、人は生きていれば成長していく。だからもう一人自分を作ってここまで来たのだ。二人は一つ。 僕とボクは二人で一つ。
寝る姿勢がわからなくて、夜更かし中 いつまでも寝返りを打つ 寝る時間がわからなくて、夜更かし中 気づけば朝の4時半 枕の位置がわからなくて、夜更かし中 左右に動かして頭の落ち着く先を探す 明日が怖くて、夜更かし中 ずっと夜でいいのに (完)
動かない政権、政治に一体どんな意味が有るの だろう首相を褒め称えるどうでも良い未だ何も 変わって無いし人間は甘やかす頭に乗る生き物 原油、ガソリン購入オゾン層破壊してる要因を 造ってる自覚有るのでしょうか政治家は芸能人 じゃ無いチャラチャラするならば一噌政治家は 辞めて頂きたい🙊🙊が良い気に為るなと叫ぶ 勇気の有る政治家は居ない者か情けない国民を 支え上に立つと言う事の意味を知らないのかな 良い大学や環境の中で何を学んだのでしょうか 無知な者でも分かる事なのに不思議ですね多分 贅沢過ぎる環境は時として全てを見え無くする 物です釈迦が恵まれた環境を棄て仏門を学んだ 様に私達は苦労して初めて気付き悟れる生き者 かも知れない
ふつり、ふつり。控えめに存在を主張し始めた気泡達。それを合図にパンケーキを裏返せば、嬉しそうに笑む綺麗な焼き目と視線がぶつかった。思わず褒めるように生地の縁を突くと、一層愛らしい表情を浮かべながら、柔い肌を膨らませていく。焼き上がるのが待ち遠しくて、壁に凭れる時計を一瞥した。 手持ち無沙汰にマグカップを持ち上げれば、飲みかけの淡い黒に何故か、じとりと睨みつけられる。機嫌を損ねている理由は解らないまま、その身をごくりと飲み込んだ。途端に、どろりどろり、嫉妬の余り焦げたような厭な苦味に、口の中を焼かれた。 どうやらパンケーキを構ったことが気に入らないらしい。零れそうになる溜め息を飲み込んで冷蔵庫から取り出したのは、透明過ぎる液体の入った瓶。 ──とぷん、とぷん。 手に余るコーヒーへと注がれるのは、只管に冷静な雨。感情ごと全てを受け流す雨粒の群れに、身を焼かれていた黒が正気を取り戻した。
地元の製菓工場で、僕は面接を受けていた。目の前で社長と、工場長が、僕の履歴書をしげしげと見ている。二人とも、笑わなかった。何を話しても、感情の無い目で見られるだけだった。人を幸せにするお菓子を作っているのに、この人たちは不幸せそうだった。もうここのお菓子は、食べられそうにもない。