ネタ切れなので恋愛ものを書いてみた。

ある日の午後。 若い男女が手を繋いで歩いていた。 「見て見て。あそこ」 「……なに?」 高齢の男女が手を繋いで歩いている。 「なんか、可愛いよね」 「僕たちも、あんな風になりたいね」 二人が、見つめ合った。 「見て。あの人たち」 「……どこ?」 中年の男女が手を繋いで歩いている。 「なんか、気持ち悪い」 「生々しいな」

成長

あの人のことを思い出す時間が少なくなったのは 果たして、いいことなのか、それとも、悪いことなのか ひとまず、成長ということにしてはいるけれど その成長というものをなかなかには自覚できずにいる もしかしたら、たんなる錯覚なのかもしれない いっときの気の迷いなのかもしれない 後退という名の変化や違いを 成長と都合よく思っているだけなのかも ふと、からあげが食べたくなって でも、部屋でやるとにおいとかなにかと面倒で それでお店で買ってしまった ダメだなあ、と思い しかたないよ、とも思う 商店街の風景と夕陽とのステキすぎる調和に 気持ちがやけにときめいて 嫌なことは、もう忘れている 実家から荷物が届いていたんだった 野菜とか、くだものとか、食べものがたくさん 正直、ありがたい ―届いたよ 電話で元気に言ったつもりでも ―元気にしてんの? そうやって聞かれてしまうのは、子どもとしては 受け入れないといけないことなのだろう おかあさんの声のうしろで犬のちゃたろうの声がして 姿を見てもいないのにうれしくなる 今度、会うとき、わたしのこと覚えてるかな それがちょっぴり気がかりになりながら でも、泣かないでいられたのは やっぱり成長なんだろうなあ、と小さく思う

金のプレート

アーケードの一角に、小さな洋食店がオープンした。 「今日も長い列ができてますね」 レポーターの女が、スマホを片手に店内へ入った。 「すごい人気ですね」 「そうだね。ありがたいね」 背の高い帽子をかぶったシェフが、フライパンを振った。 壁には、金色のプレートが飾られている。 「あのプレートが人気の理由ですか?」 「どうかなぁ。わかんないね」 女が、カメラに向かって話を続けた。 「今、話題の洋食店。ところで、三つの帽子マーク、どこの認定ですか?」 「形がさ、僕の帽子と同じでしょ。ネットで見つけて、即買いよ」 二人は、プレートの前にできた人だかりを眺めた。 「不思議だよね。みんなあの前で写真撮るんだよ」

宇宙人初めて人を好きになる。それは恐らく恋という名の。

地球生活初のヴァレンタインズデイ、何でもない日のように過ごす人はほんのひと握り。 学校という名の建物内にいる10代の人間達は、どこかしらソワソワしている。 記念日、イベントの日、と言うだけで特別な気持ちが湧き上がる不思議を、今日も無駄に考えていた。授業終了の鐘が鳴り響く頃、その結論は未だに思い当たらない。 前に座る子の後頭部を瞬時に描き表せる程に眺めて一時間。その子が振り返る。 見つめる眼差しは、いつものように冷たかった。 何を考えているか分からない。と噂され、大人にも呆れられ、この建物中が冷めた目を向けられる中、最も冷えた目で見てくる。それが前の席に居た。 「これあげる。」 目線を下ろすと、手のひらに乗せられた茶色いパッケージの飴玉があった。 「学校で、食品の授受は固く禁じられているはず。」 「バレなかったらいいの。」 「ほら。」と押し付けられた飴玉を仕方なく受け取り、しばらく眺めていた。 やがて授業開始の鐘が鳴り、そしてまた終了のチャイムが聞こえた。 まだ考える。 これは今日という特別な日のプレゼント?それとも、美味しい食べ物のおすそ分け。 しばらく。いや、一時間ずっと眺めていた。 すると、飴玉は前から伸びてきた手によって一瞬で視界から消え去った。 「まだ見てたの?」 「食べろということ?」 「うん。」 視線を合わせたまま、手元の飴玉がグチャっと容赦なく開けられた。それを何気ない顔でまた押し付けてくる。 「封を切ったなら、早く食べるしかない。」 「うん、早く。」 葛藤していた。 学校でお菓子は禁止。ましてや、他人から受け取ったもの。 それでも漂う甘い香りに、食べずに捨てられる未来を選択する余地はない。 周囲を警戒しつつ意を決して飴玉を口の中にほおりこんだ。 「一ヶ月後楽しみにしてるね。」 頭の中ではまだ、不思議な正体の答えも思い浮かばないまま、特別に甘いコーヒーの味が口の中で広がった。 「好みかもしれない。」

好きな人と付き合えた、ぼくの影が

「好きです! 付き合ってください!」 「わ、私でよければ」    秋。  ぼくはついに好きな人と付き合うことができた。  問題があるとすれば、実際に付き合ったのはぼく自身でなく、ぼくの影武者だということくらいだ。   「なんでだよ!」 「落ち着いてください、坊ちゃま」 「これが落ち着いていられるか!」    ぼくは影武者を呼び出し、目の前に正座させた。  影武者は大人しく座り、ぼくを諫めようとする。   「仕方ありません。やんごとなき血を持つ坊ちゃまは、表舞台に顔を出すわけにはいきませんので」 「それは、わかってるけど」 「それに、私はしょせん坊ちゃまの影。私が付き合っているということは、即ち坊ちゃまが付き合っていることと同義です」 「そうなんだけど……なんか違う!」    頭を抱えるぼくとは対照的に、影武者はどこまでも冷静だった。  あくまで仕事の一環であると、そんな態度を崩さなかった。   「坊ちゃまに満足いただけるよう、付き合っている時に感じたことは、くまなく坊ちゃまに伝えましょう」 「……例えば?」 「手のぬくもりです。告白の後、最寄りの駅まで二人で帰ったのですが、自然と手を繋ぎましてね。自分の手とは別物の様な柔らかさで、相手も緊張しているのか、体温も平均より高く、ほのかな温かさが」 「聞きたくねえ!」    俺は思わずうずくまる。  冷たい床がぼくの頭を冷やそうとするが、それでもなおぼくの対応は上昇し続けた。  この熱は怒りなのか、それとも嫉妬なのか。  とにかく、今日ほど影武者と入れ替わりたいと思ったことはなかった。    ぼくは顔を上げて、影武者の目をじっと見る。   「提案がある!」 「お断りします」 「一日だけ、ぼくと交代……まだ何も言ってねえ!」 「影武者ですからね。坊ちゃんが言わんとしていることなど、簡単に予想がつきます」 「ちくしょう!」    ぼくは微かな希望を求めて、スマホで予定を確認する。  実際過去には、重要な会議のときだけは、ぼく本人の外出を許された時もある。  今回もそうだ。  重要な会議のついでに、デートの予定を入れればいい。  新たに追加されただろうぼくの予定を、片っ端から確認していく。   『デート(一回目)』 『デート(二回目)予定日』 『寝落ち通話予定日』 『デート(三回目)予定日』 『お泊りデート予定日』   「ちくしょう!」 「どうしました、突然叫んで」    予定を確認すればするほど、ぼくの精神がすり減っていく。  ぼくのふりをして、ぼくの代わりに好きな人と密接になっていく影武者が、羨ましくて羨ましくて血の涙を流しそうになった。  しかし、手を止める訳には行かない。  ギリギリと歯ぎしりをしながら、次のぼくの外出日を確認する。   「ここっ!」 「……確かに、その日は坊ちゃまが外出する日ですね」 「ここで! ぼくが! デートするんだ!」 「かしこまりました。そのように、予定を組みましょう」    心をすり減らしたかいがあって、ぼくは小さな奇跡を掴んだ。  影武者も承諾したので、この予定は確定だ。   「いやったー!」    ぼくは両手を伸ばして、全身を使って喜んだ。  影武者は、そんなぼくを、温かい瞳で見ていた。  少し恥ずかしいが、嬉しさには勝てない。  ぼくはそのまま、万歳三唱をした。    影武者は、ぼくから腕時計へと視線を落とし、うやうやしくぼくに礼をした。   「では、私はこれで。次の予定がありますので」 「おう!」    そして影武者は、分厚い扉を開けて、外へと出て行った。  牢越しに見える景色が、またいつもの分厚い鉄の壁だけになった。  冷たい冷たい空間だ。  それでも、心は温かかった。   「楽しみだなあー!」    ほんの小さな未来の予定が、不自由すぎる人生をもうすこしだけ生きてみようかと思わせてくれた。

最低限度の保証が受け取れない

 働けなくなってしまった。  身体はボロボロ、精神もボロボロ。  できるなら、生活保護を受け取って、休息をとりたかった。    しかし、世界がそれを許さない。    ベッドで眠る私の体は、ベッドごと職場へと運ばれる。  ベッドに付いた足とホイールは、歩道だろうが階段だろうが、お構いなしだ。   「それでは、今日も一日頑張りましょう」    ベッドの半分が起き上がり、上半身が無理やり起こされる。  私の目の前では、私の手足代わりとなる人形立ちが、せっせと労働をしている。  私は、それをじっと見つめる。  立て付けは監督者だが、正直何やっているかわからない。   「今日もお疲れ! 日給は振り込んでおくから」    終業時間が来ると、私は再び、ベッドで自宅に戻る。  ようやく仕事が終わったのだと、部屋の天井を見上げながら溜息をつく。    ああ、休みたい。  全ての労働を人形が代行する世界は、全ての人間が労働環境から逃れられない世界だと思わなかった。  見ているだけの仕事も労働扱いだから、収入が入ってしまう。  生活保護は受けられない。    過去の人間たちが私を見たら、働かなくとも収入が入って羨ましいと思うだろうか。  働かなくとも働いたことになって羨ましいと思うだろうか。    私は、何もできないのに労働者として扱われる今が、苦痛で苦痛でしょうがない。

ネタ切れなのでホラーものを書いてみた。

平日の午後。 男がようやく目を覚ました。 「さてと……今日こそ倒す」 パソコンの電源を入れた。 「飯食ってからするか」 タバコを咥え、一階に下りる。 すると、母親が居間で横になっていた。 「オカン、なんか食うもんは? オカン……」 青白い顔。 返事はない。 「オカン、どうした?」 冷たくなった体を揺すった。 「ゾンビでいい……年金さえ……」

朝の支度

朝の支度が終わりかけの時間になり、スヤスヤと布団で眠る息子を起こしに行く。 夜中何度も掛け直した毛布は、今は息子の隣で添い寝をしている 「朝だぞ。起きろ〜占いが始まるぞ〜」 ニュース番組の合間に発表される占いランキングを息子は楽しみにしている。今日のパパは何位だ。とかラッキーフードはパンナコッタだよ。とかいちいち報告してくれる。 たが、今日は様子が違った 寝言なのか、微睡んでいるのか分からないが「こわい」と呟いている。 洗い物の手を止め息子の下へ行き背中を擦ってやる。 「こわいの?」 「…」 毛布を掛け背中を擦りながら寝ている息子を抱きしめる 今日は久しぶりの学童で、私と妻も仕事の日。妻の仕事は時間が読めず学童の閉園時間ぎりぎりに迎えに行くことが多くなる。私は定時で上がれば電車の遅延がない限り閉園時間には何とか間に合う。 昨晩、お互いの仕事の話や体調のこと、お迎えの事を話していたので、息子は内心、不安に思っていたのかもしれない。 何もない私は愛情しか与えることが出来ない せめて愛情くらいは惜しみなく注いでやるのだと決めたのだ 暗く途方もない洞窟の中で僕らは家族は決めたのだ

お仕事リアル体験館

郊外にあるテーマパークに、新しい施設がオープンした。 入口には、大きな看板が掲げられている。 『お仕事リアル体験館』 ──キンコン、キンコン。 開園の合図。 子どもたちが扉を開けた。 「ママ、あれなに」 「何かしらね」 スタッフが、手招きをする。 「こちらは、企業の給湯室をイメージしています」 親子は首をかしげた。 そこへ、制服を着た女の子が二人、給湯室に入ってきた。 台本をもらうと、演技を始めた。 「昨日さぁ、店に課長が来て、びっくりしたわ」 「大丈夫だったの?」 「すぐ隠れたから」 「うち、副業禁止だからね。気を付けなよ」 廊下を気にしながら、来客用のお茶を入れる。 「でもさぁ、給料安いくせに、副業禁止とか、あり得ないんだけど」 「ここの上の人たち、古いのよ。金欲しけりゃ残業しろだもん」 「昨日だって、領収書くれとか言ってたし」 「みなさん、どうですか?」 子どもたちに声をかけた。 「では、続きを見てくださいね」 二人は、スタッフに向かってうなずいた。 「そしたらさぁ、あいつ、キャストの子にアフターしつこく誘って、黒服に注意されてやんの」 「バカだねぇ。嫁にチクっちゃえばいいのよ」 「はい、ここまでです。みんな、拍手を」 子どもたちが、拍手を送る。 「他にも台本を用意しています。やってみたい人、いるかな?」 「パパ、私もやりたい」 女の子が、父親を見上げた。 「あなた、どうしたの。顔色、悪いわよ」

準チョコレート菓子

 2ヶ月続いていたダイエットが無に帰すような赤いチープなパッケージの準チョコレート菓子の袋を荒々しく開けたとき、むわっと、甘い匂いが迫り上がってきた。食べるの?顔を出した逡巡にすかさず、食べるよ、とビンタした。  できるだけ高潔でありたいと思う。  今朝、彼からショートメッセージが届いた。何でLINEやってないんだよ、なめんな。しかも、LINEやってないんだよねー、じゃなくて、LINEやってないんだよねっ、だった。その時点で私からフっておけばよかった。  準チョコレート菓子に手を伸ばす。コロコロとしたそれを一粒口に放り込んだ時、口の中に広がる甘さより、手のベタつきが気になった。気になった、と言えば、一粒ってどこからが一粒なのだろうか?人間を基準とした、かなり曖昧な表現だと思う。宇宙から見れば私たちも一粒ではないか。  目が覚めた時、あっ遅刻だ、を直感した。時計を見ると案の定、出勤時間を20分ジャストで過ぎている。うそやん。  丸テーブルの上には昨晩の飲みさしの日本酒と準チョコレート菓子が身を寄せ合っていた。準チョコレート菓子。パッケージの右下の隅っこに表記されているそれ。私はいつも商品のパッケージの右下の隅っこを真っ先に見てしまう人生だった。いつからだ?いや、子供の頃からそうだった。  靴下の穴は2回は見過ごす人生だった。  点滅する信号機に余裕で間に合わない人生だった。  ようやく涙が溢れてきた。  てか今日仕事休みだった。

うわあ太陽系孤立しとる

 太陽系は宇宙の中のぼっちらしい。 たまにタコや犬や猫が系外宇宙系からエサ食いに来たりゲームしに来たりプロレスやりに来たりするが太陽系はムッツリスケベなので絵本を見てニヤニヤして出てこない。 本当は田舎のお隣のお兄さんがギターを教えれば良かったのだがそこまで手が回らなかった。 駄菓子屋で企業ハックの練習をしていた同級生は(それは万引きと言う)遺伝的欠陥を抱えていたり情緒が疲れているのか不安定だったりするので太陽系のぼっちは影響を受けて偏執狂気味になる。 あるいはバイクで一緒に友達と走った時期があった時が一番安定していたかもしれない。 あるいは児童館でノックでボールを当てるのが上手いのだなこの子は、と褒められていたころ。 色々事象がリンクする。 狸は数が多い。 狐は実は外国人を相手にするのが得意だ。 僕は人格を乗っ取られたりするので(まあワクチンとそれに付随する機械と毒を打ったので)あまり乗っ取りは好きじゃないというか興味がないので隣のうちのネイティブアメリカンの兄妹にたまに歌を歌っていればいいのかも知れない。 僕は遺伝的に白人になったり性質的に黒人になったり向いてるので百済になったり色々変化するのだが基本的にリズム感を育んでこなかったのとデッサンをサボっていたのと野山を駆けていなかったので泳ぎが苦手だ(背泳ぎとバタフライが出来ない)。 田舎には部族のオブジェがあるのだがあの辺は人口が増えているので正しい伝道師や教師がいるのだろう。 日蓮のいた寺なんかも近い。 うちの近所にも日蓮の寺がある。 日蓮宗の知り合いなんかも転がり込んでくる。 あるいはもう一方の田舎は炭鉱と漁の町なので猫や狸や狐は住みやすいかも知れない。 誤報に継ぐ誤報の大地震は何かの予兆だろうが僕は大陸と地続きになったらニュージーランド沖に浮かび上がる昔の大陸に移り住んで塩採って無くなったら牧畜して暮らすのでそしてポリネシアの人達と暮らすのでそれでいい。 余りその土地に拘りすぎるのは良くないのだ。 そもそも僕だって何処から来たか分からない。 皆そうなのだろう。 あるいはアマゾンは植林らしいのでそこをまた植林し直すのも手かもしれない。 環境は変わる。 喧嘩してもいいこと無いのだ。 犬は南極で餌を探して耐える生活を送る。

強く強く

毎朝出勤前に駅のジムでトレーニングをしていく。 上半身のトレーニングをした後で下半身のトレーニングをしていく。各筋肉のトレーニングを3セットしインターバルも適切に取っていく。 朝のメニューを終えシャワーを浴びる 最近は今さっきまで酷使していた筋肉を延々と眺めることもなくなった シャワー室を出ると顔馴染みの人達が挨拶をしてくる 挨拶を軽く返してジムの扉を勢いよく開けて駅にいく。 昔から背が低くく、線が細いため世界を見上げて生きてきた 満員電車では人の中に埋もれ、電車が揺れれば簡単に弾かれる 今の小学生の方がたくましく見えるときすらある だけど、 私は私を守ると決めた 私は強くなる。必ず。 男に負けないくらいに。 人生に負けないように。

武勇伝

「俺、昔やんちゃしてて」 テレビの中。 男が、インタビューを受けている。 「やんちゃって?」 「夜中にバイクね。総長だった」 「じゃあ、ケンカも強いんだ」 「負けたことないな」 「昔の自分のこと、どう思う?」 「若気の至り? もう時効でしょ」 男がカメラに視線を送り笑った。 「今、俳優も目指してるんだよね」 「そう。俺の芝居、見た人が感動してくれたら嬉しい」 テレビを見ていた男が、呟いた。 「まずは……ごめんなさい」

厄災のドラゴン

険しい山の絶壁に空高くそびえる塔が建っていました その塔の天辺にドラゴンの生贄にされた一人の少女がいました 少女は閉じ込められた狭い塔の天辺で来る日も来る日もドラゴンが来るのを待っていました 自分を犠牲に村の皆を守る呪われた人生を、少女は受入れて身を捧げる日を待ちわびていました 恐怖とともに。 ある時、少女のもとにある男性が訪れます 彼は少女の村に訪れた旅をする剣士でした 彼が言うにはドラゴンが村を襲っていたので退治し、生贄の少女の話を聞いて馬を飛ばして急いで助けに来たと言うのです 少女は安心し涙し剣士にお礼を言いました 少女は剣士と共に馬に乗り村へ帰ります 道中、夜はテントを張り見張りをする剣士と久しぶりの安らぎを抱いて眠る少女。 彼らは次第に距離を縮め共にテントで夜を過ごす日が訪れました。少女はその後、年老いて永眠するまでこの日の事を心に生きていました。あの旅する剣士に救われた人生を大切に生きていきました 少女が助けられたすぐ後に、悪魔の魔術で森の中を彷徨っていた剣士は、やっとの思いで絶壁に建てられたドラゴンの塔にたどり着きました。塔の最上階にある生贄の部屋にはドレスを着た骸骨が倒れていました

死を告げる預言者

「あんた、死ぬわね」    預言者には、他人の死が見えた。  瞬きをするように、目の前の景色を見る瞳から他人の死を見る瞳へと変えられた。  死んだ人間を見ると、その人間が真っ黒なモヤで塗りつぶされた。   「お母さん、これなあに?」    最初に死を宣告したのは、実の母親に対してだった。  母親は、子供の戯言だろうと聞き流した一週間後に死んだ。  この時は父親も、母親の死を不慮の事故だとしか思わなかった。   「ねえお父さん、あそこにも真っ黒が」    しかし、預言者と過ごすにつれて、預言者に向ける目が変わっていった。  預言者が黒いモヤが見えると言った相手が、全員死んでいくからだ。   「いいか! お前は絶対、俺以外に言うんじゃないぞ!」 「うん、わかった! ところで、お父さんにも黒いのあるね?」    それでも預言者を愛そうとした父親は、すぐに死んだ。    自分を愛してくれる人すべてを失って、ようやく自分の異能に気付いて、預言者は泣きながら笑った。   「わた、私の力は! 皆を不幸にできるんだ! あーっはっはっはっは!」    預言者は、自身の異能を公開した。  化け物と石を投げつけられても。    余命宣告された人間たちが、預言者の元へやってきた。  治療で動けぬまま死ぬのであれば、黒いモヤが見えてから一週間、約束された余生は自由に生きたいと。  遺族たちから、預言者はたいそう感謝された。    予言を受けた者たちが、預言者の元へやってきた。  残りの人生を疑わなかったにも関わらず、突然突きつけられた死の宣告。  その怒りが、預言者へと向かった。    預言者は、善でもあり悪でもあった。  しかし預言者は、自分のことを悪だと認識していた。  なにせ、自身の都合で人の死を伝えるのだから。   「あーっはっはっは!」    預言者は、努めて他人の死を喜んだ。  自分の予言が当たったのだと、感情をすり替えることで。   「……あれ?」    ある日、預言者は首を傾げた。  他人の死を見ようとすると、突然視界が真っ黒になったからだ。  通常の瞳に異常はないため、失明ではない。   「あ、そっか。私が一週間後に死ぬから、もう見えなくなっちゃったんだ」    預言者は、そのまま姿を消した。        警察が見つけた時、預言者は気に首をくくって死んでいた。  木には文字が掘られており、預言者の死体は満足そうに笑っていた。   『ざまあみろ』    それは、預言者が自らの死を予言した、三日後のことだった。

思考のベル

 駅のホームで電車を待つときの考えごとはやけに捗る。日々にあるこまごまとした処理にちょうどいい。やけに考えが進んで「ああ、これ乗るんだった」となることも。どうしてあれほどまでに、と友人にきいてみたところ「トイレじゃなくて?」との返答。うん、確かにトイレでも思考はなかなかに回転してくれるよね。でも、駅のホームかな、わたしの場合。適度なざわつきが、アタマをうまい具合に刺激してくれるのかもしれない。人を観察した結果としてのちょっとしたあれこれが得られるからかもしれない。  始発駅で、電車に乗って、発車を待つ。窓から外を見る。ほとんど決まって向かいのホームを見る。電車のなかから見られていると思っていない人たちは、やけに無防備で、節操がなくて、哀れみを誘ってくる。  ホームのベルが鳴り、車内にもアナウンスが流れる。ドアが閉まるより前に、向かいのホームに電車が入ってくる。わたしの乗っている電車のドアが閉まり、向かいのホームでは、ひとりの男が大股で何段かを飛ばしながら階段をかけ下りてくる。ああ、なんて滑稽なんだろう。顔色ひとつ変えず、わたしは思う。あまりに急いだその男は、よろけながら崩れるように…… その行く末は、電車がすっかり隠してしまう。  こちらの電車がゆっくり動き出す。向こうの男は、どうした? あの男の少し先の未来をわたしは知りたくなくて、そっと目をそむける。乗れたのでも、乗れていないのでも。  わたしはあの男の未来を背負えない。背負う必要もないのだし。そこまで、大きな話でもないのだし。

薄暗闇から

 この薄暗い部屋に閉じ込められて、一月が経った。部屋の中は質素な造りだが、ベッドは意外にも上質なマットレスで、シャワーとトイレも完備してあり、生活するには申し分ない。食事は野菜などの彩は無いが、三食差し入れられる。  堪えがたいことは、娯楽が少ないことだ。テレビやパソコンが無いのは勿論、所持していたスマートフォンも取り上げられている。何故かカバーを外された本だけは差し入れられるが、異常な状況では読む気力も湧かない。言わば、生きる楽しみを見いだせない空間。  犯人はわかっている。目の前にいる女だ。 「どうしてこんなことをするんだ」  鉄格子の向こうにそう詰問すれば、女はいつも困った様な表情をするばかりだった。   彼女のかつての交際相手に相談を受けたのが、出会いのきっかけだった。曰く、彼女は相手に尽くすタイプの女性で、しかしそれに際限が無い。ノイローゼになった彼が逃げ出し、身近にいた自分が次の寄生先として選ばれた。  意外にも彼女との生活は悪くはなかった。容姿は華美ではなく、常に地味な服装だったが、むしろ奥ゆかしく好感が持てる。流行の話題には疎いが、古文や歴史に造詣が深く、博識深い。聞いていた異常性を置いておけば、所謂大和撫子そのものだったのだ。  うまくいっていたはずだった。この場所に監禁されるまでは。  あの日は雪が降っていた。寒さに身を震わせ、数か月後に来る春を思い、道すがら在原業平や西行が詠んだ句について語った。 「和歌に詠まれる桜は、どうしてこうも魅力的なんだろう」 「昔は、今よりも目に入る色が少なかったですから、桜の初心な色ですら、貴重な彩、だったのでしょう」 「成程。そもそも現代とは環境が異なるか。僕もいつか全身で感激するような桜を見てみたいものだ」 「ええ、そうですね」  そんな些細な夢も語って、彼女も微笑んでいたというのに。  当夜、勧められるまま深酒をしてその後の記憶がない。目が覚めたらこの部屋にいた。初めは激昂して、それから諭すように、ある時は懇願に近い声色で、どんな言葉で尋ねても、彼女の答えは無いか、曖昧なものばかりだった。  彼女は、僕の思いを試しているのか? 監禁という行為が生み出す歪んだ関係性。被害者からの依存性を期待しているのだろうか。彼女の目的は、ただこうして廃れていく僕を、籠の外から眺めて居たいだけなのかもしれない。  薄暗い部屋で、食事と睡眠の数を数え、もう二月も経った。ひたすら薄暗闇の日々が続いたのだ。段々と、自分の中の何かがすり減っていくのを感じる。 「なあ、今日でもう二月だ。あんたはいつまでこんなことをするつもりなんだ?」  辛うじて、まだ忘れていなかった声と言葉で問いかける。どうせ返事は無い。宛てのない言葉は、壁の中に消えていってしまうのだろう。ただの独白だ。  そう自嘲しながらも、久々にあの困った顔つきを拝んでやろうと、俯いていた顔を上げた。彼女の唇が動いた。 「あと、二週間、くらい?」  食い下がるべきだったろうが、驚き、言葉が出ない。明確に期限を口にしたのはこれが初めてだった。彼女に何の変化があったのか。  その日を皮切りに、彼女は、毎日私の言葉に返事をするようになった。 「もうちょっと、今日は、まだ」 「まだ早いの、だめ」 「きょ、今日は、雨が降ったから」  ある日、聞きなれない金属音と共に、いつもとは異なる微妙な風の流れを感じた。ひた、ひた、と足音が近づく。顔を上げると、鉄格子の向こうの彼女が傍にいた。 「あの、これ」  差し出されたものは、黒いアイマスクだった。付けろというのだろうか。視線で問いかけても、困った表情をするだけだから、望まれるままに装着した。手を引かれ、立ち上がる様促される。僕は彼女のするまま、素直に従った。 「どこに向かっているんだ」  答えのないまま、歩いた。あの仄暗闇から解放されるのならば、どこでもいい。僕はあの薄暗い部屋を出たのだ。  途中から、足の裏に感じていたものが、コンクリートよりも柔らかい感触に変わった。風にのって、土と草の匂いがする。 「取ります、ね」  もう随分歩いたと疲労を感じ始めた頃、ふと立ち止まって彼女は言った。  髪が巻き込まれ頭皮が引っ張られたが、些細な問題だった。  流れ込む光の束に、すぐには目を開けなかった。ゆっくりと瞼の裏に馴染ませ、恐る恐る開いていく。  色の洪水だった。失くしていた色、求めていた色、知っていたはずのものが、未知のものに見えた。背丈を優に超える幹は、大地の色を吸い込んでいる。風に舞い散る花びらには、一枚一枚色があった。全て、異なる色なのだ。  言葉にならない僕に、彼女は嬉しそうに笑った。久しぶりに見た笑顔だ。僕は、彼女が僕を閉じ込めた理由を悟った。後はただ、手を握り締めて、桜を眺めた。

選手宣誓

 おい、アンタ、そうそこのアンタだよ。  アンタ、平日でも休日でもずっとスマホ見てるだけなんだろ。どうせ、short動画見出たらいつの間にか一日の半分終わっちまってるようなつっまんねぇ人生送ってんだろ。そうに決まってらぁ。 じゃなかったら、こんなとこ来るわけねぇ。どうせこれも趣味らしい趣味もねえから初めてみるかくれいのあっっさい動機で書いてんだろ。分かったんだぜ。そんなん何日も続くわけねえ。これ書いてきっとおさらばさ。だってこれまでもそうだったろう?何やっても続かない、続かないから中途半端なまま終わる。そのくせ、自分にはその才能がなかったから、上手くいかんかったからだとか言って愚痴ってんだろ。そりゃ上手くなるわけねぇさ。なにもかも手付けちゃ、少し触ってハイおしまいってな訳だからな。そんなんで何愚痴ってんだ。立派にやんかやってから文句言えや。オマエに言ったんだぞ、画面でこれ眺めてるアンタに言ってんだよ。どうせオマエも俺のことバカにしてんだろ。意味わかんねえ文章書いてらとか思ってんだろ。こんな文章見ても意味なんざねぇからな。俺はオマエの数分奪ってやったに過ぎねぇんだよ。知ってっか?今この瞬間ってのはイマにしか存在しないんだってよ。俺が今文字打ってる0.000000000000001秒ですらイマにしかないんだってよ。要するに、アンタはこの文章を見ることでそのきちょーーーな時間を無駄にしたわけだ。……そう考えたら、俺は凄いことをしたのかもな。だって、俺はたった今この画面の向こう側にいるオマエの頭のレイテン、ナンナンナンナンパーセントくらいを邪魔したっつうわけだ。俺は今からオマエの頭の中にいるかもしれねぇな。おぉ!そう考えたら、ちょっと興奮してきたなぁ!!おい!聞こえるか!!俺だぞ!!!オマエの中に俺がいんだ!そうだ。いいこと思いついた!おい、いつかオマエの頭ん中の50パーセントを俺にしてやる!!こんなん書いてる今の俺でもちったぁアンタの頭の中に入れたんだ!!!いつか、50パーセントくらい簡単に犯してやるさ!  見てろよ

奥底で眠る

 不幸な子供がいました。  親の愛を受けず、友達にも恵まれませんでした。  大人しい性格が災いし、子供はその不幸を受け入れ続けました。    子供は自分の身を守るため、無意識にもう一つの人格を作り出しました。   「よお、何をしょぼくれてんだ?」 「君、だれ?」 「俺か? 俺は、お前だ。安心しろ。俺が、お前を幸せにしてやる」 「え?」    もう一つの人格は、子供本来の人格と違い、苛烈でした。    もう一つの人格は、定期的に表に現れ、世界を変えていきました。  親が罵声を浴びせて来れば、数倍の音量で怒鳴り返しました。  友達がいじめてくれば、返り討ちにしてしまいました。  何度も何度も警察の世話になって、子供の周囲の環境が如何に劣悪かを、世間に振りまきました。    その間、もう一つの人格は、子供と話し続けます。   「いいか? 右から拳が飛んで来たら、こう避けて、こう殴り返す!」 「こ、こう?」 「そうだ。お前、自分で思ってるより弱くないんだ。やられたら、やりかえせ!」 「でも、人を殴るなんて」 「いいか? 時には殴らねえと、間違った成長をしちまうやつだっているんだ。これは、人助けなんだよ、人助け」    もう一つの人格は、子供に生き方を教えました。  なにせ、心の中での対話です。  時間はたっぷりありました。    ほどなくして、子供は警察へと保護されました。  同じ境遇の友達がいる場所へと隔離され、専門家によって定期的な治療が施されました。    もう一つの人格は、徐々に表に出てこなくなります。  子供は、安全な場所で、徐々に自分を取り戻していきます。   「最近楽しいんだ」 「よかったな」    もう一つの人格は、子供と対話する回数を減らしていきました。  そしてある日、完全にゼロにしました。    もう、子供が泣かなくなったからです。    誰もいない、子供の心の地下室。  もう一つの人格は、冷たく静かな空間で、ようやく眠りにつきました。  もう二度と、自分が表に出なくていいように。  もう二度と、子供が不幸にならないように。  そんな祈りを捧げながら、目を閉じ、眠りにつきました。    子供は今も、元気に遊び回っています。  もう一つの人格のことを、思い出せなくなるほど、楽しさに満たされて。

X

「…というわけなんで、すまないけど…今月までと言うことで」 目の前に座る店長はボサボサの髪の毛を掻きながら眉毛と目尻を八の字にしてロッカールームを出ていった またバイトを首になってしまった 僕は何をしても上手く行かないし、何をしても楽しいと思えない 高校生のバイトの人に自分の事を「コマわりさん」と呼ばれているのを聞いたことがある コマ送りの様に作業が遅いからと言う理由を仲間内で話していた。私に聞こえる様に。 仕方が無いと思う。その通りだから。 アパートに帰ると台所にヤモリがいた 私の帰りを待っていてくれたような気がして嬉しかった 5センチもない子供のヤモリ。体が透けて見えそうだ ヤモリはよく見ると可愛く、僕の空っぽの心が、ほんのりと温かくなった 帰り道、ブックオフに寄って安いワゴンCDをジャケットも見ずに数枚買った。 今夜は無性に音楽に溺れたいと思った それもまだ聞いたことのない音楽に。 蛇口の水をコップ一杯に入れラジカセの前に座る 明かりをつけないのは電気代節約もあるが、明るい所にいたくなかったから この世界を鮮明に見たくなかった 自分をみたくなかったから。 袋から適当にアルバムを一つ取り出す 蓋を開きCDをセットして再生ボタンをガチャリと押す 彼がラジカセにセットしたCDはXJAPANのアルバムだった。 彼は一枚通して聞いた後、ヘッドホンを、して夜通し聞いていた。コップに入った水を飲むことも忘れて。 水面から口だけ出して何とか呼吸をするように、一枚のXJAPANのアルバムに溺れていった。

今を追いかけていく

ふぅ〜と体に溜まった息を吐くと、そのままベッドに仰向けに倒れる 天井にくっついている照明は息を潜め、役目を果たしたデスクライトがこの狭い部屋に光の粒を放出し続けている 22時くらいから始めて、今の今まで動画の編集し、終わったのが現在夜中の3時。朝というべきか。とにかくアレコレ気になって、編集して「もう合格点だろこれは」と半ば諦めに近い状態になるにはこの時間までかかってしまう 胃の中に珈琲しか入っていないのが自分で分かるが、何かを食べたいとも思わない。ただただベッドの底へ吸い込まれていくだけ…目を閉じ…目を開ける。アラームが鳴っている。一瞬で朝になってしまった。バイトへ行くために急いで支度をする。シャワーくらい浴びたいが時間がない。ベッドサイドに置いてあったカップ麺を横目にテーブルの上の煎餅を一枚頬張り、今日を迎えた朝へ飛び出していく。 今日も一日が始まっている

ススキを思いて

近くにススキの姿はなく 河原まで足をのばしてみる 秋空にススキを思い けれど目には もみじの葉っぱ ススキをみた帰り あれを買っていこう やさしい風に秋を思い けれど気持ちは もみじ饅頭とともにある

不老不死の明日

「貴方の願いを叶えましょう。貴方の明日を繰り返すことで」    ぼくは不死になった。  同じ日を繰り返す無限ループに閉じ込められることで。    しかし、すぐに飽きてしまった。  同じ日には、同じことしか起きないから。  一週間後の飲み会も、一か月後の旅行も、永遠にやってこない。  明日は神と出会う日でもないので、元に戻せとも頼めない。    結果、ぼくはモブになった。  同じことを繰り返すモブに。  同じ行動をし、同じことを口にする。  カセットテープの様に、自分が擦り切れていくのを感じた。    しかし、そんな感情さえも、いつの間にかすり切れた。

そのあと

「おかしいでしょ」  思わず、ぼくは叫んでいた。  ぼくの目の前には、一体の彫像が立っている。黒い服、黒い肌、黒い瞳。ヒトを象った像の口は、真一文字に結ばれていた 「この作品、『遺言』って名前なのに、お口チャックしてるじゃん!」  ぼくの興奮を察して、隣に立っていた親戚は端を発した。 「遺言って、本当にのこさなきゃいけないのかな?」  え? ぼくは驚きのあまり口がきけなくなった。文字通り、 え? という思考に支配されていた。  だって、遺言ってそういうものでしょ。遺す言葉って書くんだから。 「じゃあ、なんで口を閉じてるんだろうね」 「それが分からないから、ぼくは叫んだんじゃないか」 「ああ、そう」  ふっと親戚は微笑を浮かべた。そして、うなずいた。 「君は、まだ自分の想いを理解している。だから、叫べる間は、きっと大丈夫」  叫べる間は……。もう一度、彫刻を見る。全身まっ黒な人。本当に黒い。  もし、この人がブラックホールだったら、きっと言いたいことをたくさん抱え込んでいるはず。もし、この人が闇鍋だったら、言いたいことがゴッタゴタになって苦しんでるはず。 「だから、閉じたの?」  だから、のこすことをやめちゃったの? 死ぬのに? だって、死ぬんでしょ? 「君は死んだら、何をのこしたい?」  親戚の問いかけに、ぼくはしばらく思案していた。 「分かんないけど……」  この彫刻を知ろうとしたって。でも、やっぱり、まだ分からないけど。 「叫ぶ、かな。多分」 「ハハ、いいね。叫ぶか、そうかそうか」  ハッハッハッ、と親戚の豪快な笑い声が響く。 「こうやってw 叫んじゃえばw よかったのかもな……www」  親戚のおかしな笑い声につられて、思わずぼくも笑ってしまう。二人分の叫び声が、アトリエにこだまする。彼は、彫刻家だった。

死んだ奴は俺のことが嫌いなんだろうな

 俺が生きろハラスメントをしているからだろう。 実際には殺してくる奴がいる。 同じ土俵に立ちたくない。 機能なのか現代病なのか出来ない。 スポーツは一過性のもの。 全ての事象に関連するが欲を捨てきれていないので太る。 機能不全か寿命か。 カッコつけてればモテる。 それは世のルール。 それもつまらないが。 実際には近くなければ臭くない。 それも世のルール。 やり方と見方を少し変えるだけ。 心の問題で腹が立つ。 手に入らない玩具をねだり続ける。 歩み寄っても理解出来ない。 化学物質と放射能とトカゲ。 あるいは鳥。 鳥に変化するまで(あるいは偶像)。 何を読んできたのだろう? あるいは何を聴いてきたのだろう? 自分に都合のいい解釈(AIに頼る)。 関心を持ってあげるよ(何様)。 何もくれないだろうけどな。

現場訪問

昼の打ち合わせが終わり会社を出て、川沿いの工場に着いた。取引先としては古株で昔からうちを利用してくれている。 人材派遣会社としては小さな会社なのだが、うちの社長とここの工場長が昔からの仲で、設立当初から製造エリアの一角を請け負わせてもらっている。 人懐っこい笑顔と人を安心させる様な話し方は、うちの社長と正反対だ。どうして仲がいいのだろうと、度々疑問に思う 車の中で工場の現場に持っていく書類等を整理していると、自転車に乗った制服姿の少女が工場へ入っていく 「確か…工場長の娘さんだったけか…」 私はあまりお会いしたことはないが、現場のうちの社員が言うには、学校が終わると作業着に着替えて、慣れた手付きで作業を手伝っているらしい。 今時、珍しいほどの良い子だ あのお父さんだから、娘さんも良い子なのかもしれない 工場のチャイムがなり昼休みの終わりを告げている。

ファイル

「それは何ですか?新規の依頼ですか?」 先輩が集めてきた資料をファイリングしている 「いや…これは個人的に気になってね」 へぇ~と答えたが、先輩が個人的に調べ物をしているのを始めて知って興味が湧いた。 「何かの事件ですか?」 先輩は答える代わりに手に持っていたファイルを渡してくれた。 「読んでみろよ。お前の意見も聞いてみたい」 そう言うと、戸締まり頼むわ。おつかれ。と探偵事務所を出て夜の街に消えていった。 俺は戸締りを終え帰ろうとしたが、ファイルが気になりざっと目を通して見ることにした。帰っても親に小言を言われるだけだし。 ある土地で起きた少女の誘拐事件の記事だった 先輩が調査したノートのコピーもあり詳しくメモが書かれている 何故この事件を調べてるのか、その答えは見つからなかったが、痛ましい事件だということは分かる。 執拗に犯人が少女の親御さんを苦しめている所を見ると、怨恨で間違いはないだろうが、今のところ親御さんを恨むような人物は見つからない 気づけばかなり時間が過ぎていて、気になりつつもファイルを閉じて家に帰った

新しい友だち

私は新しい学校に入った。 周りを見ると、生徒たちはそれぞれ友人と楽しそうに話をしている。けれど、私にはまだ友だちはいない。 廊下を歩いていると、同じ方向へ歩いている人と一緒になった。彼女と目が合うと、自然と会話がはじまった。 「次のクラスはなに?」 「物理。私、この学校に来たばかりなんだ。」 「あ、そうなんだ。物理だったら私も同じ。教室はこの先だよ。」 ダークブラウンの髪は肩まであって、目鼻立ちがはっきりしている美しい女性だった。アメリカ人だからか、どこか自信があるような雰囲気がある。私たちは何気ない話をしながら、次の教室へ向かって歩いた。 廊下の突き当たりまで来ると、彼女はドアを開けた。二階のドアの向こうは外だった。廊下はドアの外へ真っ直ぐに突き出ていて、畳一畳分くらい続いている。柵はない。まるでプールへ高飛び込みをする時の飛び込み台のようだ。彼女は躊躇せずに外へ出て行ったが、私は危ないと思い、ドアの手前で立ち止まった。 外をのぞくと、彼女が少しずつ沈み出すのが見えた。廊下は彼女をのせたまま、ゆっくりと前傾をはじめたのだ。廊下が曲がるのと同時に建物も屈んでいく。そうして音もなく、教室棟の建物の横だけがお辞儀をするように、ぐにゃっと曲がっていった。彼女の姿は見えなくなった。 「ああ、こうやって一階の外へ行く方法があるんだ。」と、私は思った。 横の窓から外を見ると、こちらを見ている他の生徒たちと目が合った。彼らも曲がって行く建物を見ているのだが、いつものことなのか、さほど驚いている様子はない。 建物が地面に向かって曲がり、ドアのすぐ外が一階に接続すると、私は校庭へ出た。けれど、彼女はそこにはいなかった。ドアの外側にあった飛び込み台に当たる部分は、地下にもぐっている。この下には地下室があるのだろうか。 ”彼女は埋まったのかもしれない。” 私は、周りにいる他の生徒たちに助けを求めた。 すると、生徒たちは「責任者に言うんだ!」と次々に言い出し、校庭の向こう側にある管理棟へ走って行った。 責任者に伝えれば、助けが得られるということなのだろうか。私も彼らを追いかけて走って行った。 管理棟に着くと、スーツ姿の太った男性が出て来た。ちょうど外出する予定の校長が、他の先生たちと出てくるところだったのだ。生徒たちは校長を囲むと、口々に言った。 「責任者の責任だ!」 「責任者の責任だ!」 生徒たちは、校長に向かって飛び跳ねながら叫び始めた。 “あれ、何かが違っている。” 生徒たちの声は大きくなりながら、渦を巻いて高揚して行った。 “ちょっと待って。そうじゃない。” 「聞いて! 私の新しい友だちを助けて!」 私は大声を出したが、興奮している生徒たちには聞こえなかった。 せめて校長に伝えようと思ったが、さわいでいる生徒たちに囲まれた彼に、私の声は届かなかった。 校長は、危険を感じたのか生徒を追い払って逃げるように去って行った。 「彼女を助けなきゃ。」 私は、生徒たちから離れて、ひとりで教室棟へ戻り始めた。 激昂した生徒たちは、いつのまにか増殖していた。校長を逃しても、興奮はおさまらなかった。 すると群衆のひとりから声が上がった。 「カフェテリアへ行こう!」 「そうだ、カフェテリアを襲撃だ!」 遠くでそう聞こえると、熱狂した人々は向きを変えて走って行った。 私が教室棟の前まで戻ってくると、彼女は地下から出て来ていた。どうやって出て来たのかは分からなかったが、無傷のようだった。 「良かった。」私はほっとした。 だけど、彼女は私を見ると、むすっとした顔を隠さなかった。私が彼女をおいてどこかへ行ってしまったと怒っているのだ。私は彼女のために助けを求めに行ったのだが、そのことは伝わらないようだった。 バタバタバタバタ 生徒たちが、後から次々とカフェテリアへ走って行くのが見えた。遠くの方から騒がしい声も聞こえる。 「みんなはどうしたの?」 にぎやかな音が聞こえる方を見ながら、彼女が聞いて来た。 「カフェへ向かったみたい」 とだけ、私は答えた。 すると彼女は、私には何も言わずに、カフェのある方へ向かって走り出した。 遠くのカフェテリアからは、火の手があがった。

秋に思いて

 道ゆく金木犀の香りが香水のそれじゃなくてホンモノなのが田舎のいいところ、あの人は誇らしくそういっていたっけ。そのことを否定はしないけれど、都会の真んなかでだってホンモノの金木犀は香るのだ。そのことをあの人に教えてあげたい。  花の香りひとつで涙は流せる。ずいぶんと繊細だな。繊細と、自分でいうぶんには自虐程度ですませられる。人にいわれるとなるとそうも思えない。 ―ずいぶんと繊細なんだな  ほめ言葉とはなり得ないその口ぶり。哀れみ、蔑み、冷笑と、見下し。  ああ、繊細です、繊細ですよ。繊細であることの何がいけないのか。それらいちいちに気持ちはゆれてしまう。まったくもって繊細なものだ。受け取るこちらが過剰反応なのは認める。そちらにしてもずいぶんと安易に発言したものよね。そうは思わない? ―あなたには、都会はつらすぎるようね  金木犀の香りはそういっている。それでもわたしの居場所はここなのだな。再確認は、すこしの意地がみえかくれ。暑さがすぎ去って、寒さを待つこの時期を憂う。それだけでもこころは大きく波打つ。  どこにいたって夕陽が山に沈みゆくのを眺められる、それが田舎のいいところ。確かにね、それは認める。でも都会の真んなかでだって、夕陽に涙を流すことも…  そのことも、あの人に教えてあげたい。

朝の帰り道

今日は雲もなく青ばかりの空で、ジリジリと皮膚を焦がしていく最高神ヘリオスが溜まった洗濯物を「うむ」の一つ返事で乾かしてくれるだろう。 周りを見れば、あちらもこちらもベランダや2階の窓からべろりと布団が干されている。 幼稚園の門の前では登園する園児達を保護するため当番の保護者とガードマンが立って出迎えている。 「おはようございます」 彼等が私に挨拶をしてくる 見ず知らずのふらふらと歩いている私に 「お、おはようございます」 私は何とか挨拶を返して家路を急ぐ 寝不足の夜勤明けに燃えるような太陽光を浴びながら重い体を引きずり帰る 地獄の様な朝 虚ろな顔は不審者と言われてもしょうが無いが、こちとら必死で帰宅している。 もう次は夜勤は断ろう。 今回だけ夜勤に休みが出たから夜に回ったが、もう二度とやるものか。 「おはようございます」 また不審者と思われ、挨拶という警戒心タップリの攻撃をされたのだと思い、内心、苛つきながら返事をすると自転車に乗った制服姿の少女がいた。 セーラー服に黒いスカーフ 長い髪を後ろに結い、あの白い月のような透き通った肌をしている。 「やあ、これから学校?」 「うん。あれ?夜勤ですか?」 「あぁ、今回だけね」 お疲れ様でした!と手を振りスカートをなびかせ走り去っていく 工場長の娘さんだ 私が工場に入った頃から工場長の側でよくお手伝いをしていた。皆のアイドルだ。 今は工場も大きくなって人数も増えたが、当日はThe町工場感があって、あれはあれで良かった。夜勤も無かったし。 娘さんも、もう高校か。大きくなって。 太陽の光の中に消える彼女を暫く見送っていた。

 ゐきザマ

 ゐきること。  其れは呼吸、或いは会話すること。  かつて生きることが苦と云う概念は存在しなかった。  上を向いて歩くと云う言葉が其処に在ったから。  そうして、時代が移ろい多様性が組み込まれた今、理不尽は形を成した。  常識が当たり前では無くなった世界。  故に此処には言葉が在る。    数多の言葉は形を成す。  理不尽を吐き出す感情として。  世界を呪う言葉。  環境を憎む言動。  怒り、憎しみ、悲しみ。  全ての負の感情を、ただ一箇所にまとめる。  黒く染まる空に向けて、喉元へ集めた其れを放つ。  言葉にならない音を吐き出す。  何度も、何度も、何度も。    私は負けてない。  私は弱者じゃない。  私は勝者になる。  叫ぶ言葉は遠吠えだ。  それでも、此の情動だけは消させない。  見てろよ、世界。  全て、私が塗り替えてやる。  

夜伽(セクハラ)

 僕の股間は小宇宙だよ~。 好きに嗅いでもらって構わないよ~。 実際にはこんなことをやっていると1部の金もろくに払わない変質者の糞親父に狙われる。 金払え。 男娼のふりをしてヤクザの生業を荒らすのは辞めとこう。 僕は農夫。 マトリョーシカを狙っていたモテないドイツ人将校は冴えない生活をストレスの捌け口か移民や金持ちに向ける。 実に冴えない。 ドイツに喧嘩を売ると殴られるのでポグバに料理とファッションを教えたい。 今日は知り合いに無視された。 価値の無い生活をしているからだろう。 ルールを守る気がないようだ、とは正しいドイツ人の忠告だろう。 あっちもあっちで大変なのだ。

スウプの響き

 大きな木をくり抜いてできたようなお店です。木のなかですから、あちこちでくり広げられている話し声がやけに響きます。ですがそれは居心地の悪いものではなくて、ずいぶんとこころにしっくりくるのです。なんのお店なのかはさておき、そこではスウプをいただきました。「秋のはじめにおなかに入れるべきスウプ」という長くも的確なネーミングのそのスウプは、けれど秋が終わって寒い冬が来たときにも食したいものだとの気持ちにだってさせてくれました。  スウプという響きが好きです。そのスウプが野菜スウプならなおのことよいです。端的にいってしあわせな気持ちになります。なかに何が入っているのか、ひとまずそのことは脇にのけておいて、野菜が冠されるそれだけのことが、けれど、ひどく魅惑の面影を宿すのです。  お店に入ったときから思っていたことでしたが、奥から流れてくる香りに興味がわいていました。スウプにそえられているパンもとてもおいしいのです。このお店で焼いているのですね。大きな木のなかで焼かれた焼きたてのパン。なんてメルヘンなのでしょう。  お隣のテーブルでは「じん」についてのお話がされている様子。人さまに対する親愛や思いやりの「仁」でしょうか。わたしにはあまり縁のないことですけれど。お酒の「ジン」でしょうか。お酒は飲めませんけれど。もしかして「ZINE」でしょうか。どういったものなのか、わたしには皆目、見当がつきませんけれど。楽しそうにお話しされているのは、みなくてもよくわかります。このお店の料理が、人々をそのような気持ちにさせているのでしょうね。  まだこのお店に来たことのないみなさんにも、スウプやパンを味わっていただきたいのですが、たくさんの方に来られてさわがしくされては困りますから、場所は教えてあげません。

吸血鬼は眠りから覚めた

「余は今より、千年の眠りにつく。次に目覚めた時が、世界終焉の時だ」    そう言い残し、ヴァンパイアの王は眠りについた。  特別製の棺の中で横になり、部下に命じて棺桶を海底へと沈めさせた。  誰も、眠りを妨げないように。    そして千年後。  ヴァンパイアの王は、一秒のズレもなく目を覚ます。   「ああ、良い目覚めだ」    これから世界が血で染まると考えれば、ヴァンパイアの王の口元は自然と緩んだ。  鋭い眼光を輝かせながら、棺の蓋を押す。   「……ん?」    押す。   「あれ?」    押す。   「あれれー?」    棺桶は、なんと鉄製。  海底の水圧によって、壊れはしないが、蓋を開けさせない向きに膨大な力がかかっていた。  そのうえ、ヴァンパイアの王は千年間体を動かしていない。  筋肉がすっかり衰え、千年前には余裕で壊せた鉄も壊せない。   「え、ちょ、ま! だ、誰か開けてー!」        地上では、ヴァンパイアたちが集まっていた。  王の帰還を迎えるために。   「遅くね?」 「遅いな」 「きっと、寝坊してるんっすよ」 「なーんだ、寝坊か。まあ、千年も眠ってれば、寝坊くらいするよな」 「じゃ、王が来るまで、解散解散」    世界の支配者は、未だ人類のままだ。

HちゃんのSP

 やらなかった僕には飯抜きの罰が下っている。 なーめん。

俺の方が馬鹿

 明日は馬鹿にされそうだ。 賢くなりたいのか? プライドなどゴミに捨てろ。 無駄な議論。 小学生の学級会。 北京大学の首席に馬鹿って言ったらそうかもしれませんって言うだろ? 普通に考えろ。 腹が立っている。 やはり俺も馬鹿だ。

肝臓の事は余り知らない

 食べなければ治るとは思う。 肝臓は再生力の高い臓器だ。 暴発したら偉い死人が出る。 朱子学とリンクするのかも知れない。 バイク乗り(カブに乗っていた)の走行距離に比例して(反比例?)肝臓のガン細胞は目減りしていくだろう。 無駄に走り(あるいは有益かも知れない)無駄に文字を連ねた分だけそれは減っていく。 ガソリンの魔術、あるいはインクの秘術。 スーパーカブ。