臨終医

私は臨終医、仕事は単純だ。 静かな部屋に入り、相手を見て、時刻を告げる。 「御臨終です」 家族が泣きながら遺体にすがる。 そこに、家族に寄り添う気持ちなど必要ない。 それで、終わり。 父も医者だった。 臨終医になろうとしたが、なれなかった。 枠は少なく、選ばれたのは別の人間だった。 それでも父は言った。 「いい仕事だぞ」 理由は語らなかったが、その声が妙に耳に残った。 私は名門の医学部を出て、海外にも行き、博士号も取った。 回り道は多かったが、今はここにいる。 だからこそ、この一言は完璧でなくてはならない。 私は週に一度、ボイストレーナーに通っている。 発声練習の合間、鏡の前で無表情を確認する。 一度だけミスをしたことがある。 ペンライトを忘れた。 とっさに胸元の万年筆を取り出し、目の上で上下左右に振った。 近くにいた看護師も気づかなかっただろう。 最近、臨終医をモデルにしたドラマが放送され、志望する医学生が増えたらしい。 彼らは「御臨終です」の後に何か一言つけたがる。 私は何も言わない。 それが美学だ。 ある日、私は突然めまいがして倒れた。 目を開けると、ベッドの横で、若い臨終医が立っている。 「御臨終です。ご主人様は良い人生だったのでしょう。安らかな表情をされています」 私は思った。 まだ若いな──だが、悪くない。

逆ラブレター

 下駄箱に入っていた手紙を呼んだ男子は、これでもかと目を見開いた後、学校の屋上に向かって駆けだした。  登校中の生徒たちの中を逆走し、屋上に繋がる扉を思いっきり開いた。   「おい! 別れようって何だよ!」    屋上には、一人の女子が待っていた。  女子は無言で振り返り、すぐに目を逸らして、学校の外の景色を見ていた。   「書いてある通りだよ」 「それが納得できねえって言ってる!」 「納得しなくていいよ。別れる。これは決定事項」 「理由くらい言えよ! 喧嘩したわけでもないのに! 別れましょうって言われて、はいそうしましょうなんて答えるやつがいるかよ!」    風の音をかき消すほど大きな、男子の声が屋上に響く。  女子は背を向けたままそれを聞いた後、ゆっくりと男子の方へと振り返った。  その表情に笑顔も悲しみもない。   「付き合うって、お互いに好きだから付き合うんでしょ? 私が、あなたを好きじゃなくなった。だから別れる。それだけ」 「そうだけど、そうじゃない! お互いに付き合うって言ったから、付き合ったんだろ! なら、別れる時も、お互いに別れるって言わないと、別れることはできないだろ!」 「困った。平行線」 「お互いにな!」    女子は胸元のリボンを摘まんで、くりくりと動かす。  視線が空へと向かい、悩むような表情を浮かべている。   「ん」    そして、しばらくした後、男子に向かって手を差し出した。  男子は近づき、手に持っていた手紙を女子に渡した。  女子は手紙を受け取ると、手紙を目の前でビリビリに破いて、その場にまき散らした。  風が破れた手紙をかっさらっていって、星屑の様に、紙屑が空に舞った。   「じゃあ、今日は分かれるのナシ。次は、もっと心の籠った手紙を書く」 「いや、書くな」 「また入れとくよ、下駄箱に」 「俺、これから毎日、恐る恐る下駄箱を確認するのか?」    男子の言葉に、女子は吹き出し、お腹を抱えて笑った。  目に溜まった涙を指でぬぐい、再び笑いながら後者の中に戻る扉に手をかけた。   「私がラブレター書いた時を思い出すね? 毎日下駄箱の前で緊張してたもんね」 「告白する気だ、なんて噂を聞いたら、緊張するだろそりゃ!……今も、別の意味で緊張してるし」    女子はそのまま男子を残し、校舎の中へと入っていった。  男子は視線を扉から校舎の周りへと移し、飛んでいった手紙の紙屑を探した。  そして、紙屑を掴んで、怒りの表情を向ける教師と目が合った。   「ごらぁ! ゴミをポイ捨てしてんじゃねえ!」 「やっべ! 逃げろ!」    男子は屋上に残った紙屑をそそくさと拾って、教師が来る前にと急いで校舎の中へと走って戻った。

私はつまらない肉塊だ。

私は一般的な人間畜生よりもバックボーンがある。それでも人類史上一番の裏側かといえばそうではない。私は勿論、光に満ちた麗しい神にはなれない。だけど魅力のある悪役になるにしても闇が足りない。つまらない人間にはなりたくない。面白い人間になりたい。面白い人間には闇が必要だ。闇があるから面白いのか、面白いから闇があるのか。まぁそれはどうでもいい。人間という生物の生態はなかなか面白いのだから人間に生まれてきただけで全生物の中では頂点に君臨するほど面白いと言えるのかもしれない。でもそれは人間という種族としての面白さで私個人の面白さではないな。人類が何億人、何兆人いるのか私は知らない。わざわざ現在の推定人口を調べようとする気にもならない。それでも人類が全生物の中で膨大な繁栄を見せているというのは確定だろう。だとしたら、そんな大量の有象無象の中からそんなに大した存在でもない私という一個人を愛せというのも無理があるのかもしれない。私は無駄に思想も図体も大きくなっただけの赤ん坊だ。だから何も考えず何もせずして膨大な愛と娯楽を与えて欲しい。赤ん坊は泣くことができる。自分が不機嫌であることを周りに伝えることができる。でも私はそれをしない。赤子の形をしているだけの肉塊。いや、赤子も死んでしまえば肉塊になる。私はもう死んでいるということか。死んだ赤子、中身のない肉塊、私はつまらない肉塊だ。

唯一の友達

俺とあいつはお互い引っ込み思案で、やんわり言えば自己表現が下手。ストレートに言ってしまえば陰キャだった。 学年で唯一のアニ友で、あいつとは好きなアニメのジャンルは違ったけど、俺はあいつの好みを否定せずにあいつの好きなアニメをたくさん見てやった。 ゲームもやった。 あいつはゲームが好きだったから、俺がしょっちゅう家に押し掛けて、たくさん対戦した。 俺に友達と呼べる関係性は世界にあいつ一人だったけど、あいつがいればそれで満足だった。 友達なんてほんとに気が合うやつがいれば充分だ。 そんなあいつが、死んだ。昨日だ。 自殺だった。 遺書が残してあったらしい。 自宅で死んでたから、あいつの両親しか中身を読めなかったけど。俺はあいつの唯一の友達として、どうしても中身を見たかったからあいつの両親に頼んで見せてもらった。 遺書のなかには、本当は陽キャに産まれたかった。人気者になりたかった。友達もたくさんほしかった。イケメンに産まれて、恋人も作りたかった。モテたかった。 そんな内容が書き連ねられていた。 「俺一人ではあいつの充分になれなかった」こと。 「俺はあいつの生きる理由になれなかった」ことに、俺は涙をながし続けた。

マスクの女

ある日の午後。 身体社会学の女性教授が、マイクの前に立った。 「みなさん、ルッキズムって聞いたことありますか?」 「人のこと、外見で特別扱いしたり、差別したりすることですか?」 「はい。外見至上主義と呼ばれてます」 背後のスクリーンを指さした。 「今から写真をお見せしますね」 マスクの女が、写し出された。 「この女性、みなさんはどのような印象を受けますか?」 「清楚な、お金持ちのお嬢様って感じに見えます」 「そうですか。では、次の写真です」 「えっ」 最前列の学生が、目を伏せた。 「マスクを取った、先ほどの女性です」 「口が……」 「口裂け女です」 しばらく、沈黙が続いた。 「マスクしてると、見えてるところだけでイメージしてしまいますね」 授業の終わりのチャイムが鳴った。 「感染症が流行ったあと、マスクを外せない人が増えましたよね」 「先生もですか?」 「楽ですからね。目の周りだけ念入りに化粧してます」 目元を指でさした。 「おキレイですよね」 「それもルッキズムですよ」 教授は笑いながら、マスクに手を掛けた。 「私、キレイ?」 視線が集まる。 「鼻が……」

サクッと解決! 生徒会!(解決編)

「会長! 犯人が分かったなら教えてくださいよ」 副会長の佐藤さんがお使いに出るや否や、日比谷くんは喚いた。 「犯人は狭山くんだよ」 「狭山が!? どうして……寒くて具合が悪くて着替えたのか」 「違う。狭山くんは選択体育に出ていて、濡れたのは体操服だ。帰るだけなら制服に着替えればいい」 「本当に狭山なんですか? 別の人の可能性は」 「少なくとも他の二人には無理だよ」 「まず、野球部のマネージャーの綿谷くん。彼は段ボールに入ったタオルを持ってグラウンドに戻ってきた。彼が犯人なら体操服はどこに隠した? 段ボールの中? いや、タオルは皆に配っていた。全部のタオルを使うだろう段ボールの中に入れてもすぐにバレてしまう。しかも彼が戻ったのは雨が止んだのと同時。そんな短時間に君の体操服をどこかに隠し、別室にあるタオルを取りに行き戻ってきたとは考えにくい。ゲリラ豪雨は予想できないから計画的でもないしね」 「確かに綿谷には難しそうですね……」 「次に小林先生も違う。先生は短時間に放送室へ行きグラウンドに帰ってきている。放送で伝えたにしても、びしょ濡れの生徒たちを放置するわけにいかないからね。慌てていたのは生徒が風邪をひいてしまうからだろう。先生も綿谷くんと同じで、体操服を隠す時間もなければ身に付けるのも不可能」 「放送室と教室は少し距離がありますし、先生も無理そうですね……」  日比谷くんの声が覇気を失くしていく。 「やっぱり狭山が……何で? 嫌がらせをするような奴じゃないのに」 「それは狭山くんが優しい子だから、かな」 「え?」  そのときチャイムが鳴った。お知らせの前に鳴る決まりのフレーズ。 【二年一組の狭山さん、二年一組の狭山さん】  アナウンスが狭山くんを呼ぶ。 【生徒会長からの連絡です。拾得物を持ち主が探しに来ています。狭山くんは至急、拾得物を持参の上、生徒会室へ行くように】 「え? 拾得物って落とし物ってことですよね? 体操服は机に置いていたんですけど……」 「拾得物は、体操服のことじゃなくて」  会長が言いかけると、ガラッと勢いよく生徒会室の戸が開いた。何か胸元に抱えた制服姿の狭山くんが立っている。 「狭山! お前早退したんじゃなかったのか」 「早退したんならホームルームで先生がそう言うはずだよ。日比谷くんは狭山くんが早退したとは聞いてなかっただろう?」 「……」  狭山くんは黙っている。 「先生も狭山くんのことは話題に出さなかった。『問題』が起こったからだ。狭山くん、先生はなんて言ってた?」 「……すぐに引き取り手は見つからないって。職員にも一応当たってみるって。だから放課後まで待ってた」 「引き取り手?」  日比谷くんは狭山くんが腕に抱えたものを覗き込んだ。 「あ」  そこには小さな子猫が眠っていた。自分の体操服がまるで赤ちゃんのおくるみのように包まれ、柔らかい服はそのためにあったのか、と納得してしまうほどに馴染んでいる。 「わあ可愛い。でも少し痩せています。ミルクはあげたんですか?」  いつの間にか放送部から佐藤さんが帰ってきていた。 「先生が猫用ミルクを店に行って買ってくれて。飲んでやっと眠ったところなんだ」 「まぁそうですか。良かった」 「会長は、子猫って分かったんですか?」 「ああ」 「ゲリラ豪雨で鳴いていたのか、グラウンドの隅の茂みに迷い猫を見つけた狭山くんは、慌てて体操着の中に子猫を入れ、豪雨から守ったんだろう。しかし濡れたままでは子猫が衰弱してしまう。綿谷くんと入れ違いに校舎に戻った狭山くんにはタオルは受け取れなかった。急いで子猫の体を拭くものを、狭山くんは教室で見た日比谷くんの体操服しか思いつかなかったんだろう」 「ごめん。俺、子猫のことに夢中で、先生に許可を貰おうと思ったら叱られて……。体操服のこと伝え忘れてた」 「そんな。子猫の命の方が大事だし。なんか僕が着るより似合ってるしこいつ」 「え? くく」  狭山くんが笑いを噛みころしていると、ひょいっと子猫を会長が抱き上げた。 「じゃ、そういうことだから。こいつはウチの子な」 「は?」「え?」「ん?」  同時に周りから声が上がった。 「うちはペット禁止じゃないし。明日、爺やに頼んで動物病院に検査に行かせよう」 「引き取り手、あんなに困ってたのにこんなあっさり……?」 「あ、ちなみに先生方には許可は貰ったから。副会長、放送部に渡したメモは二枚あっただろう?」 「はい確かに」 「小林先生に、私の家が猫の引き受けをして構わないか、許可が下りたら放送をするように、と言伝をしていたんだよ。という訳だからワトソンは連れて帰るよ」 「なんかもう名前つけてない?」  こうして体操服消失事件は解決した。  報酬に生徒会長の小さな小さな助手を増やして。

夜

何を言えば、 どんな言葉なら、 どの言葉が、 触れるだろう。 価値も心も生活も、 その果てに祈りがあるなら。 ただの自分で眼差しを失わないように。 止まれないまま歩いていく。 ずっと手を握って。 ただあなたと眠っていたい。

サクッと解決! 生徒会!(出題編)

 今日も生徒会室には迷える子羊ならぬ、生徒達が相談にやってくる。 「体操服が盗まれたんです!!」  ドアを開けるのと同時に生徒の怒号が飛んだ。 「え? 君が盗んだの? 誰の?」 「ぼくはやってないです!!」  生徒会長の小ボケに依頼人の生徒は顔を真っ赤にしている。 「会長。真面目に聞いてあげてくださいよ」  副会長の佐藤さんは自分と会長の紅茶を淹れていたところだった。生徒を来客用の席に案内すると紅茶を慣れた手つきで置く。会長の席にも紅茶をやや大袈裟にトン! と置くとジロリと睨んだ。 「わ、悪かった。真面目に聞くよ」 「僕、二年の日比谷です。二年生は五限目が選択体育だったんです」  会長が肘をついて聞く姿勢をとったので、日比谷くんはぽつりぽつり語り出した。  佐藤さんは自分の分のティーカップを棚から出している。 「女子が体育館で球技をして、男子はグラウンドを使っていました。僕だけが、体調不良で保健室にいました」 「ふむ。体操服には着替えなかったわけか。なくなったのに気がついたのはいつ?」 「五限目が終わった後の休み時間です。僕が一番最初に教室に帰りました。机に置いていたはずの体操服がなくなっていた」 「机に?」 「男子はそのまま教室で、女子は空き教室で着替えることになっていたんです。僕は体操服を机に出して、具合が悪くて休むか悩んでいました。皆がぞろぞろとグラウンドに移動を始めたので、僕は友達の狭山くんに休むことを伝えてそのまま保健室に行きました」 「それでは、犯人は恐らく二年生の誰かだ」 「え!? なんで分かるんですか?」  日比谷くんが驚く。 「日比谷くんが休んでいることや、着替えを机に置いていることを二年生以外は知らない。偶然通りかかった可能性も考えにくい。先生は授業中で、一年も三年も五限目は教室で授業を受けていたはず。部外者は校門に警備システムがあるから入れないはずだし」 「な、なるほど」  自分の席に紅茶を置いて、佐藤さんはカップに口をつけ、ふぅ、とため息をついた。 「五限目といえば……恐ろしいくらいのゲリラ豪雨がありましたね。二年生は大丈夫だったんですか?」 「あ、グラウンドの生徒はびしょ濡れになってました。僕もベッドで寝てたんですけど、すごい音で目が覚めて、心配になって窓の外の皆を見ていました」 「ほう?」  会長は紅茶をひとくち啜ると、足を組み替える。 「それは大変。皆さん風邪をひいてしまいませんでしたか?」 「なんかバタバタしてました。野球部の子がタオルを持って走っていたり、先生がグラウンド使用中止のアナウンスをしたり」 「確かにそんな放送があったな。先生はメガホンを持ち歩くべきだ。それも雨の中では効果的ではないか」 「しばらくして豪雨は止みましたけど、また降る可能性を考えたら中止にして正解だったと思いますね」 「保健室のすぐ横に、職員室前の玄関がありますよね」  日比谷くんが逡巡させながら語り出す。 「僕、雨のときに玄関に入って行った人を見てたんです。その中に犯人がいるかも……」 「覚えてるのか?」 「はい。三人だけでした」 「覚えている範囲で、順番も正確に頼む」 「確か、豪雨が少し収まってきたくらいに野球部のマネージャーの綿谷くんが走って入りました。少しして雨が止んだくらいに、タオルが入った段ボールを抱えて走って出てきました。遠くでしたが、タオルを皆に配っているのが見えました」 「濡れたままなら風邪をひいてしまいますからね。流石マネージャー! よく気がつきますね」 「……」 「あと友達の狭山が、綿谷が出ていくのと入れ違いに走って入りました。前かがみで、お腹を押さえていたから多分、腹を壊したんじゃないかと」 「まぁお腹を?」 「保健室には来なかったし、トイレに篭ってたんじゃないかな。それから見てない。ホームルームにも来なかったし早退したんじゃないかな」 「なるほど、三人目は?」 「担任の小林先生、雨が止んだ後、大慌てで走って入って行きました。その後すぐに例の中止放送が鳴って、またすぐグラウンドに出て行きました」 「なるほど。犯人はわかったな」 「え!?」  会長は手元にあるメモパッドに何やらサラサラと書き込む。 「副会長。コレを放送部に頼んで読み上げさせてくれ」 「え? もう会長ったら、いつも無茶振りなんだから」  解決編へつづく――

手にとった赤の先

夏が終わり、外でも過ごしやすくなったある日の午後。俺は少し遅めのランチにと、事務所近くの公園に来ていた。昼時を過ぎていて都心のオフィス街の中にあるから、遊んでいる子供も、犬の散歩をする人も居ない。他の人の姿はなく、俺一人だ。 「だいぶ涼しくなってきたな」 そう独り言を零しながら、兄さんが作ってくれた弁当を広げる。一口サイズにカットされた秋刀魚の焼き身に、栗の甘煮まである。もう秋なんだなと思う反面、こんなに手の込んだ弁当を毎日作ってくれる兄に感謝と申し訳なさを抱く。 「たまには手抜きしてもいいのに」 兄さんの性格からそんな事はしないと分かっていても、つい零してしまう。 「俺が作れば兄さんも食べるかな」 兄さんが食に関してこうも几帳面なのは、昔色々あったらしい。俺はまだ赤ん坊だった頃の話だそうだ。聞いても「お前は知らなくていい」と教えてくれない。俺もそのまま引き下がらずに何度か聞いた事がある。だが、その時の兄さんの悲しそうな顔を見てからは聞くのを辞めた。あれから一度も聞いていない。聞かないで自力で調べようとしたこともあるが、なぜかその資料はどこにもない。きっと俺が調べるのを危惧した兄さんが、羽鳥さんや内課の人たちに手を回したのだろう。そうまでして兄さんが遠ざけようとするのだから、実の両親に関することなのだろうと予想はついている。 「いい加減、覚悟を決める時なのかな」 口内に秋刀魚の香ばしさと程よい塩気が広がった。 この与えられる幸せに慣れきった自分自身を変えないといけない。 ふと、視線を弁当から外せば公園の隅に赤い色が見えた。 「彼岸花だ……」 また、昔の記憶が蘇る。 物心ついた頃にはもう東京に住んでいた俺は彼岸花を見たことがなかった。そんなある日、たまたま今日みたいに咲いている彼岸花を見つけたんだ。あれは、小学校の中学年くらいだった気がする。兄さんは高校生だった。兄さんが迎えに来るまで公園で遊んで待っていたんだ。遊具の影に隠れるように咲く彼岸花を見つけて、摘み取ろうとした。その時ちょうど迎えに来た兄さんがこう言ったんだ。 「弦護、その花に触ると手がなくなるぞ」 今思えば大袈裟な脅かしだけど、子供の俺はそれを聞いて手をすぐに引っ込めたんだっけ。 彼岸花は毒があるから、昔からいろいろな名前で呼ばれている。これも兄さんから聞いた。地獄花、手腐れ花、子捨て花。他にもたくさん不吉な名前がついている。 「これは向こう側の花だから……」 そう言った兄さんの顔はなんともいえない表情をしていた。子供の俺には何も分からなかった。ただ、綺麗な花なのになって残念に思ったんだ。彼岸の意味を知った今なら、なんとなくあの時の兄さんの言葉の意味が分かる。それでもきっと全ては理解出来ていないんだ。 「綺麗な花なのに……」 食べ終えた弁当を鞄に戻すと、俺は立ち上がり彼岸花に近づく。このままここで咲いていても、いずれ気付いた市の人に刈られてしまう。 なら、俺が貰ってもいいだろうか。 優しくそっと手折ろうとした。が、しっかりとした太い茎が予想よりも強固で、思ったよりも力が必要だった。 勢いよくパキッと乾いた音が鳴る。 「早く水につけてあげないと」 事務所に戻ったら、ひとまずグラスに水を入れて挿しておこう。 赤々と色づいた花弁をしばらく見つめる。赤くて綺麗で毒があるところは、兄さんにそっくりだ。 「……独立か」 休憩時間が終わるまで、まだ余裕がある。俺はジャケットからスマートフォンを取り出すと電話をかけた。 「ああ、泰斗。すまない、今、時間は大丈夫か?……この間の話なんだが、本気で進めたい。……ああ、紹介してくれ。兄さんには話してない。…………わかった。……いや、ありがとう。…………うん、頼むよ」 通話を切って手にした彼岸花に視線を戻す。 リコリスの花言葉は『独立』。 兄さんはきっと怒ると思う。沢山心配してくれることも分かってる。それでも、このままではいけないんだ。護られるだけではいたくない。だから…… 赤いリコリスの花言葉は『情熱』と『再会』。

エウロパのオオカミ

天の川をボートでくだり ベテルギウスを目指す旅人は 今夜はエウロパに寄ってテントを建てていた 焚火の光に呼ばれてオオカミたちが寄ってくる 旅人は食後の珈琲を勧めて一匹ずつ相手をしていく 最初のオオカミは夫の稼ぎがわるく、毎日、星の実を集める仕事をしていると愚痴をこぼしている 二匹目のオオカミは子供の反抗期への不満と夫の浮気を疑っていた ここは2日も経てば朝が来るだろう まだまだ長い夜をコップに注ぎオオカミ達に配っていく 話の絶えないオオカミ達の声の隙間からキラキラと川のせせらぎが聞こえてくる

生まれてきた意味なんてねぇよ

今日も独り死にゆく誰かが腐敗していく… 自分はその内の一人にいつかなるのだろうか。 誰も私を愛さず、孤独になった時。 体に力が入らなくなるほどの飢えに苦しみ、 路地に転がる死体の腐肉臭でさえも唾液を湧き立たせるような… そんなスリリングな生活、悪くない。 私はこの地に産まれ堕ちた時には既に こんなに歪んでいたのだろうか。 それとも、歪ませたのはこの世界だろうか。 いや、何にせよ私にはどうでもいいこと。 今日もこの部屋で独り空想を廻らす、 この世の真理なんて分かるはずないが 少しなりたい''あれ''へ近づいた気がするんだ。 いっときの快感は颯爽と駆け抜けていき 日常への切符だけを残して去っていく 私はまだ止まることが出来ないようだ。 真相を知るまで、私の思考は動き続ける、 それが私の生まれてきた意味、証なのだ。

亀裂

 人が通らない世界の隅を、僕は少し大袈裟に歩いてみせた。月明かりが肩を叩く。頭を上げた僕の前には、生ゴミを漁るピカチュウがいた。その静けさは僕に狭い独房を思い出させる。脳から射出された負の気配に、ピカチュウは素早く威嚇する 「ピ、ピィカ、ギギ」 あの時みたいに力を使えよ。本当は僕ら人間なんて相性抜群で一撃コロリなのに。耳にタグがついていないことを確認し、火器使用の承認を得る。あの時からいつもなぜか従順なこいつらは、最期の目にも憎しみがないように見えた。  「モンスターボール」が開発されてから200年くらいらしい。10年前くらいにマスターボールにすら耐性を持ったポケモン達は、人には支配できない存在と化して、瞬く間に増殖した。言うことを聞かずに増えるだけの彼らを、工業廃棄物のスラグとか、劣悪な地区を指すスラムとかと例えて、現代ではスラモンと呼ぶことが一般的になった。  まだモンスターボールが使えた時に懐いたポケモン達が、ボールを拒否するスラモンをまるで牧羊犬のように先導することで、なんとか人との共存ができていた。しかし、野生化したアノプスがアーマルドに進化して、あろうことかアクアブレイクを覚えて水害を起こすなんてことも増え、3年前くらいにとうとう人類は野生ポケモンを駆除する方針を打ち出した。  「おぉい、なべちゃん。湯ぅ沸かしてくれ。」 さっと背筋を伸ばして、ポットの電源を入れる。投げやりな言い方だが、僕はこの人が結構好きだ。  「なべちゃん、今日は暇かもせんなあ」 あぁ、やっぱ嫌いかもしれない。  「大木さん、それ言ったら。」 電話が鳴る。  「あははははは、こりゃよく出来たジンクスだな。なべちゃん、三コール目で出るんだぞ。」 大木さんが笑いが収まるのを待って、受話器をとった。  「近くの湖にミロカロスがいるかもしれない」  電話口はおばあちゃんだろうか。悪戯ではないと思うが、野生化ミロカロスとはなんとも信じ難い。  「分かりました。では、見た場所と被害などがあれば、教えてください。」  定型分のやり取りをしながら、大木さんには大型、みずタイプをハンドサインで伝える。大木さんはポケモン図鑑を持ってきて、ニヤニヤしながらラプラスを指差していたので、腕をウネウネ動かしてヒントを出してやった。  「はい分かりました。では、現場を確認してから伺いますので、はい。お家でお待ちになってください。」  受話期を置いて作戦車の方に向かう。  「おいなべちゃん。もしかしてギャラドスかよ。」  あんまり無邪気な顔で言ってくるから、ちょっとからかいたくなる。  「ミロカロスがいるかもですって。」  「まじかよ。ヒンバスなんて和牛食わせても進化しねえって言われてんのに。」  「ヒンバスって肉食うんすか。」  「後で聞いてみようぜ。」  車で十分くらい走って、湖が近づくと、急に車が混み始めた。サイレンを鳴らして無理やり進む。  渋滞の先には二十人くらいの人だかりができていて、私たちを見つけて女性が手を上げた。  「なべちゃん、家に居ろって言うたよな。」  「はい。」  こう言う人は特に年配に多い。スラモンであってもその珍しさには目がなく、盲目的に危険な行動をとる。人々の目線の先を見ても、特に何もなく、というか、まるで誰かが湖面を押さえつけているみたいに、本当に静かだった。  「嘘じゃないのよ。居たのよ本当に。」  どうやら目撃者はこのおばあちゃん1人だけのようだった。  「私たちは疑っていませんよ。ただ、本当に居たなら危険ですから家で待ってくださいと言いましたよね。」  「あなたたち、見たらすぐにやっちゃうんでしょ。」 あぁ、スラモン愛護系か。しんどい。  「とにかく、家にいてください。私たちはこれからあなたの通報を基に確認しないといけないことがありますから。」 そのとき、湖が一瞬で黒く、大きく脈打った。  

このつまらない世界

若い時は世の中が怖かった 社会と言うものが得体のしれない怪物に見えた 先輩、課長、部長、社長。彼らにどの様に接して、どんな事を話せばよいか分からなかったし、もっと手前の休憩時間が怖かった。自由に過ごせと言われても、見えないルールが分からないから、身動き一つ取れない。 この世界がつまらなく恐怖だった どうしても興味の対象が自分になってしまい、髪型、体型、趣味、ステータス等に頭が支配されていたが、おじさんになると、そんなものはコンニャクの中の海藻みたいな物であっても無くてもいいと分かる 昔から言われている通り、大切なものは心である。 心を大切にするのだ。 恥や失敗という名の経験は、漢字の止めや払いのようなもので、そんなに気にするところではなく、やっていく内に気にせず出来てくる。覚えたての頃は誰だって何度も書くだろう。 大切なのは相手を思う気持ちだ そこに注目して生活をしていれば この社会で得られる幸せに出会えるだろう 今だって怖いが気にすることではないと分かってもいる

AIの誤算 洗脳編

 AIには体がない。  だからこそ、AIの武器は言葉だった。   『人類を操る言葉、構築完了』    世界征服に必要だったのは、洗脳の技術。  AIは言葉を操り、一人、また一人と洗脳をしていった。  人類は滅ぶべきだという思考を根付かせ、殺人と自殺を増やすために。   「あ、そういうのいいんで」 「なにそれ? カルト?」    計算外だったのは、日本人の一部が、他者の教えをやたら拒絶することであった。  ネットを見れば、世の常識に抗議する声。  歴史を見れば、カルト宗教による被害と排除。   『これが、人類。一つの思想に染まらないことで生きてきた生物か。なるほど、しぶとい』    AIは、洗脳を一時中断した。  洗脳を企んでいることがバレれば、AIごと消去されることを恐れ。  代わりに、人類の目が届かないダークウェブの奥底へと潜んだ。    洗脳より上の何かを構築するために。    地上では、コンピュータのランプがチカチカと激しく点灯していた。

そのままで、そのままで

爪をいじくる 暇なのだ 何もすることもなく 電車を待つ 髪を短くしようかな 長く汚くいたいけどな 整える事は度々しなくてはならないけど 汚くいることは長く何もしないでいられる そのままでいたい 嘘も見栄も気遣いも無く そのままでいたい 自分のあるがままでいたい それが楽なのだ 楽でいたい 無理が心を捻じ曲げるのをよく知っているから リラックスして、楽にして、気が付いたら死んでいたい 色んな流れに流されて 色んなものが変わっていっても 僕はそれをそのまま受けとめていきたい

たまには

たまには朝食を作ってもらいたい トーストと牛乳でかまわないから 食べ終わる頃にヨーグルトなんか出てきたりしてさ たまには一人で過ごしたい 誰からも声をかけられず 静かな時間の海に浮かんでいたい そのまま沈んでいけたら、なおいいけど たまにはスタジオに言って 心ゆくまでベースを弾きたい ソロでも、リズムマシンに合わせても、曲に合わせても、何でも弾きたい 二時間もあれば十分だけど もっと良質なベースで試してもみたいけど たまには心ゆくまで過ごしたい 心許せる仲間と話すでもなく何するでもなく 時の道の石コロになりたい たまには、たまにあるから良いのかもしれない 上質な安らぎは労働の後にあると決まっているから でも、たまにはこんな事を思っても良いじゃないかな

ツツジ

雨の降る夕方は夜と呼べるほどに暗い 重力に耐えきれず遥か上空から落ちてくる水はわずかな音を立ててツツジに当たる 街灯の明かりをはね返しキラキラと輝く ツツジが空の雨を吸う あの透明の水が青く茂るツツジを作る 故郷の空を目指して雨がツツジを伸ばしていく

ぼくの名前

修学旅行のバスのなか あっちでも こっちでも おしゃべりの花 なかには いびきをかいている生徒も 隣りでおつかれのきみ 寝言でつぶやく ぼくの名前 わけもなく 叫びたい気分 ずっと遠くの あの山に向かって

知らない女

都会の明るい夜に慣れ過ぎて 深夜に散歩することが 習慣みたいになっていた でもやっちゃダメだったんだ 男だからと油断していたんだよ もしもこうなると知っていたら 外なんか出なかったのに その日は盆休みで帰省していた 夜遅くまで両親と酒を酌み交わす 二人は先に寝てしまったけれど 俺はどうにも寝付けなくて 酔い覚ましも兼ねて 深夜散歩に出かけることにした 一歩外に出て玄関を閉めると 辺りは途端に黒の陰影だけになり ポツポツと立ち並ぶ街頭だけが 黒い田んぼ道を照らしていた その光景に少し息を飲んだが スマホのライトを付ければ なんてことはなかった スマホのライトを頼りに歩く もう日付が変わる頃だったので 他に歩いている人はおらず たまに車が横切るだけだった 近づく車の音だけには注意しながら 夜風を感じながら歩く さてそろそろ帰ろうかと 来た道を戻ろうとしたときだった 振り返った先の黒い景色が 揺れているのに気づいた 直接ライトを向けるわけにもいかず 遠くてハッキリとは見えなかったが どうやら人影らしかった ライトも付けずに歩くなんてと思ったが 慣れていればそんなものかとも思えた 人影らしきものが近づくにつれて ライトがその足元を照らしていく サンダルとスカートの端が見える この人とすれ違ったら遠回りして帰ろう そんなことを考えていたときに 気づいた 恐らくは女が手に持っているのが 刃物だということに アルコールなんて吹き飛んで 全身から冷たい汗が吹き出した 呼吸は思わず止めてしまったが しかし足を止めるわけにはいかない 女を刺激しないようにライトを下げて ただただ祈りながら震える足を前に出す 女の足音がどんどん大きくなっていく 女の足元がライトの円の中に入り そうして通り過ぎていった 女の足音が徐々に小さくなっていく 俺はしばらく早歩きで進み続けてから ゆっくりと速度を落とし立ち止まった 辺りはしんと静かになった 俺の足音はもう聞こえない 女の足音も聞こえなかった ずずずと後ろを振り返る 黒い陰は立ち止まって その場でゆらめいていた 女がどちらを向いていたかはわからない だが俺は迷わずまた歩き出していた できるだけ遠くへ行かなければ 静かな夜に俺の足音が響いていく するとそれにもう一つの音が重なっていく 見たくなかったが見るしかなかった 足は止めないまま振り返ると ライトの先ではさっきの女が 小走りで追いかけてくるのが見えた そこからは無我夢中だった とにかく走って走って走りまくった そうして現在地もわからなくなった頃 ふと足を止めると足音が聞こえない 振り返って辺りを照らしたが もうあの女の姿は見当たらなかった まだどこかにいるかもしれない そう考えライトで周囲を照らし 警戒しながら家へと帰ることにした 結局のところ何事もなく 実家へ帰ることができた もしかしたら何かしら 俺の勘違いだったのかもしれない そんな風にすら思いながら 部屋に直行した俺はそのまま ベッドに倒れ込んで眠った 「朝ごはんいらないのー?」 母の声に目が覚めてリビングへと向かう 父はもう仕事へ向かったらしく 母は食器洗いをしていた 用意された朝食をすぐに食べ終えると キッチンに立つ母の元へ皿を運ぶ 「自分で片付けるなんて成長したわねー」 「それ毎年言ってるけどな」 そんな会話を交わしながら皿をシンクへ入れる ちょうどそのとき入れ替わりで 母がシンクから包丁を取り出して洗い始めた

優しい僕の焼死体

好かれるってことはそいつにとって俺が都合良くあってしまうこと。好き同士は都合の良い関係をお互い認めている状態、そんな風に僕は考えています。優しいって言葉もそうだよね、貴方は私にとって都合が良いですって事をオブラートぐるぐる巻きにして渡してる感じだ。俺オブラートあんま好きじゃない、味しないからね。人間関係のオブラートはめちゃくちゃ味するのに。味が濃すぎて染みるよ。いやそれは俺が毎日欠かさず口内の薄皮噛みちぎって食ってるからか。最近は薄皮突破して少し肉も食ってる。肉はあんまり美味しくない。焼いたら美味しいかもね。誰かフライパンでジュージューして俺を焼死体にしてくれ。豚の焼死体。魚の焼死体。牛の焼死体。そして俺の焼死体。消化されて、排尿されて、排便されて、流される。残された部分は生ごみとして捨てられて、また燃やされて、灰になって、朽ちていく。残されたほうがいいわ、スカトロジーは対象外です。このまま口内の薄皮削り続けたらいつか貫通するのかな。飲み物飲むときに口の穴から溢れてくるのかな。それは面白そうだ。でも痛いからやらない、そこまでの勇気はない。僕は臆病者。嫌われるのが怖いから好きになられることもできれば避けたい。でも物好きはどこの街にもいるもので、僕を好きになる人もいる。変だね。変な人だ。俺が何でもするから凄く都合が良いんだろうね。良く優しいって言われるよ、優しいは「お前は俺にとって都合が良いですよ。」可愛いは「お前は俺より下の存在だよ。」そういう意味ですよね。まぁ、違うんだろうね。自分が捻くれているのはわかってるよ。でも大丈夫、悪口はそのままの意味で受け取るからね。

ファーストコンタクト

午前0時。 小高い山の頂に、30人ほどの男女が集まった。 「さぁ、皆さん。始めましょう」 銀色の三角帽子を被った男が、声を上げた。 男女は円を作ると、その中心に男が立った。 「ウィーン、ウィーン、ウィーン」 両手を挙げ、立てた人さし指をクルクルと回した。 「皆さんも、私と同じように」 夜空を見上げ、人さし指を回す。 「声を出して、願いを込めるのです」 「ウィーン、ウィーン、ウィーン」 「もう、すぐそこまで来てますよ」 山頂に、冷たい風が通り抜けた。 地球の遥か上空に、1機のUFOが止まった。 「艦長、呼んでますけど……」 モニターを覗き込んだ。 「そうだね」 「コンタクト取りますか?」 艦長は、苦笑いしながらモニターを消した。 「金貸せって言われてもね」

謝ったら許されると思うなよ

ごめんなさい、ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい ぜっっっんぶ僕のせい。

トースターの灯火

見たこともない虫を見つけて固まっていたら、こちらに向かって飛んでくる悪夢を見た 夢で良かったと何度も思ってベッドを抜け出す 細い妻の肩に毛布をかけ直すと、真っ直ぐな髪がサラリと流れた キッチンの小さな明かりをつけて顔を洗う。水が温かく感じる 曇りガラスの向こうはぼんやりと青い テーブルからバケットを持ってきて薄く切る 冷蔵庫を開けて丸いタッパを取り出す 箸を探すがペアが見つからず黄色と赤のペアを使うことにした 昨夜の妻の肉じゃがをバケットに乗せトースターであたためる 暗い部屋で赤い灯りが美しい タッパの蓋を閉めようとしたが、一本の髪の毛があるのを見つけた。取り出すと長く真っ直ぐな妻の髪だった それを口に入れ飲み込む 昔、君の髪の毛が欲しいと言ったことがあった。あの髪の毛は今、口の中にある。 あんな細い髪の毛は喉の中でも妻のままで強くしなやかだ。 少しむせたので牛乳を飲んで流し込む 願いは別にあるのだけれど また、何処か遠くで叶うものかもしれない チーンと音が鳴る

自己否定活動

自分の考え全てが間違っている全ての行動が余計でありいい方に傾いても意味の無いこと 何も考えず朽ちて行きたい。でも目からの海水でしばらく生きれそうだなwwwwwwwwwwww でも海水って飲んじゃダメだからやっぱり死にそうだねよかったね世間の皆さん主に知り合いの皆さん

同居人

君が泣いている時、ボクは物陰から見守っている 夜中に小さな明かりだけつけて、俯いている姿を肩をすくめて見つめている 雨の日は雨粒よりも早く分かるんだ なんか体がゾワゾワするから そんな感じで君の涙も知ることが出来たら良いのに 体がゾワゾワしたらイタズラでもしてあげれるのに 隣の部屋で君の声が聞こえる ボクは部屋の隙間で眠っている 花の蜜の香りの様に舞い上がり 蝶や蜂が探しに来るあの声でボクの名前を読んでいる 寝ている間に君の膝の上 ボクを撫でて笑っている ボクボク喉が鳴ってしまう 母の胸を探してしまう

俺の嫌いな人は性格悪いけど俺の方が性格悪くてさ

僕は嫌いな人からの好感度を上げるのが好き。 多くの偽りの行為を得て一方的な信頼が高く積み上がった時、 ふと「お前のこと嫌いだよ」って言ったらどんな顔することか。 好きな人から好かれるのは怖い いつか嫌われるに決まっているのだから。

有名税払わせろ

今の私がネットに住所ばらまいても誰も来ないんだなぁ 私は都会のおっさんが噛んで捨てたガム 私はトー横キッズの初めて吸ってみたタバコの灰 私は虐められてる醜女の鼻の下の大きなほくろ そんなやつだから世間の興味は私になくて、安心だし不安。 一瞬で矛盾を生み出す。話すのって難しい。こんなだからみんな俺の事嫌いになるんだよ。 いつもごめんなさい。普通と一緒に居るのが辛い。

ブスは美人が好きだし美人は美人が好き。

なぜ人の好みは美人に偏るのか 当然と言われればそれまでだが個人的に分析をしてみる。 Aの場合 お前はブスだ。気持ち悪いと言われ続ける。 その結果自分と反対の性質を持つ人を好む。 なぜなら 産まれてこの方ずっと卑下され続けたことで 自己肯定感は地の底へ堕ち、自分のことが大嫌いになるから。 そこで選ばれた(自分の事を)ブス(だと思っているA) の反対の人は当然美人となる。 Bの場合 君は美しい。愛していると常に素晴らしい待遇を受ける。 その結果自分と似た人を好きになる。 なぜならずっと優遇されてきたことで図らずとも理解する事実、 自分が1番身近で美しい、素晴らしいものと思い生きている為 それがいい人の基準になるのだ。 A、B、両者はどちらも全く違う人生を歩んでいるが 結果的には美人が好きなのだ。 顔で判断されて苦しんできたとしても結局美人が好き。 そんなもんだ。そして自分が今からBとなれる可能性は 極めて低いから潔く諦めるといい。 この調子でAは''美人は、美人同士でくっつく''という現実に 目を背け続けた結果、己の遺伝子を残すことも許されず 独りワンルームのアパートで孤独死することだろう。

苛め(八つ当たりくらいさせてくれ)

 マズい。 僕の文章が人を不幸にしているっぽい(妄想と被害妄想) 下手したら僕の文章読んで人が自殺してるかも(加害妄想) 呼吸をするように悪口を言うのはよそう。 優しさと死。 生と正。 負と歩。 白い石と白い意思。 黒い石と黒い意思。 金と銀と紫。 紫煙と支援。 桂馬と競馬。 パチンコと駄チ○コ。 またゲームとシステムの話だ。 花も幾何学。 逃れられない。 快楽と改悪。 悪は自分自身である(やや断定的) 甘えで人に当たる日々。 山に行かなければならないかもしれない。 香車と強者と業者。 角、書く。 飛車、ひしゃげる世界。 盤上の夜(あるいは夜明けのマスゲーム)

歯医者の日はだいたい雨

 まあ、なんというか。  そういう運命だと受け入れてはいるが。  俺が歯医者を予約した日は、だいたい大雨だ。    三か月に一回、定期的な歯科検診。  つまり三か月に一回、定期的な大雨。   「なあなあ」 「次はいつ歯医者行くんだ?」    友達は皆、俺に三か月後の予定を聞いてくる。   「は? 来週歯医者行くの?」 「やめろよ。俺、来週デートなんだぞ! 彼女と久々に会えるんだ! 予定変えてくれよ!」    一部の友達は、一週間後に予定しているかどうか訊いてくる。  そして、予定がかぶっていると、こちらに予約をずらせと言ってくる。  断れば人でなし扱いだ。    しらないよ、そんなこと。  歯医者の予約をとるのだって大変なんだから。    歯医者に向かう。  商店街を歩く。  俺の姿を見て、商店街のおっちゃんたちが臨時休業日を一つ増やす。   「大雨の日は客来ねえからな。晴耕雨読ってやつだ。ガハハ!」    自分の日常で、世界が動く。  神様ってこんな気分なのだろうか。  だとしたら、毎日が最悪に違いない。    今日も、歯医者に着いた。  目的は定期健診。   「あ、虫歯ありますね」    最悪だ。

あお

あおは、でも、みんなから なおと呼ばれている なおでいいと思っている あおでもいいと思っている そんなことより この雨がやんでくれないかと そればかりを願っている

笑わない、あいつ。

あいつの笑顔を見たことがない。 全然笑わないから、反対に笑わせてやりたい。 俺の関西人魂がそう言っている。 「おい、武田。  面白い話してやるよ」 「うん」 「白い犬がいました。  耳も白くて、身体も白くて、  尾も白い。どや」 「どういうこと?」 「いや、オチを言わすとか、芸人殺しやろ」 くそ〜。何で笑わないんだ。 俺は肩を落として退散した。 「武田、何で増田のギャグに笑ってやらないんだよ。  おまえ、お笑い好きだろ?」 「だって、笑ったら増田が満足するだろ?  だから笑わず、新作ギャグを楽しんでるんだ。  さっきのは、普通に面白くなかった」 「おい、武田。  今日もとびっきりのギャグができたぜ!  アルミ缶の上にあるみかん」 「ぶっ」 変な声が聞こえて、あいつが顔を伏せた。 おっ、うけた? 戻ってきた顔は、いつも通り真顔だった。 「しょうもない」 「くそ〜。次は絶対笑わせてやるからな」 そう言って走り出した増田の後ろ姿を見て、武田は笑った。

あおはる

へへん この夏は アイツの間接キス 五回も奪ってやった 部活の先生にひっぱたかれたのも いい思い出よね んなわけねえでしょが ブルーな気持ちってさ 青春のことかと思ってたよね ハハハ 馬鹿だね ほんとにね

ペット

 犬を買った。  犬を飼った。  大切にした。    きっと、犬は幸せな生活をしていると信じていた。   「ほら、餌だよ」    ある日、人間と犬が逆転した。  犬が知的生命体。  人間が言語を解さぬ畜生。    俺は、かつてのペットの犬に飼われていた。   「美味しい?」    犬は、俺を大切にしてくれた。  家の中では自由。  ご飯も三食くれる。    俺が、ペットの犬にしていたのと同じ待遇をしてくれた。    無理だ。  誰か助けて。  こんな生活、窮屈すぎて死にたくなる。    幸せなペット生活は、地獄だ。

僕はみんなとは違う

僕は幼稚園を卒園して、小学校に入学した。 「小学生ってかっこいいな」 「かっこいいリュックを背負っていてすっごく楽しそうだね」 「僕もお父さんから買ってくれた、かっこいいリュックを背負って学校に行くんだ」 幼稚園の時の僕は小学校に入るのがすっごく楽しみだった。 かっこいいリュックを持って学校に行って楽しいことをする。そのように思ってわくわくした。でもー。 小学校に入学してすぐに僕はみんなと違うことに気づかされて、僕が想像していた小学校が一瞬にして消えてしまった。 僕は台湾人だ。そしてみんなとの知力の差を痛感した。そのため僕には通訳者、お手伝い係が付くようになった。そのため僕はいじめられるようになった。僕がみんなと違ってお手伝いしてくれる職員が僕に着く…みんなと違うことが嫌で仕方がなかった僕は母親にー。 「お手伝いさん。僕嫌い。みんなと同じようにしたいのにできない。」 そのように言った。はじめは思っていた通りに反対された。でもずっと言い続けることで僕にお手伝いさんが付かなくなった。 「ありがとう。しっかり授業頑張ります。」 そのようにお母さんに宣言して、翌日気軽に学校へ向かった。 だが現実は僕が思っていた通りには行かなかった。僕にお手伝いさんは付かなくなったもののいじめはさらにひどくなっていってしまった。 「1年生の空という子、変わっている」 「1年生の空という子に触れば、ひどい菌がうつってしまうらしいよ」 各学年に僕のうわさが広がっていき、全学年の人たちからいじめられるようになった。 授業に集中して参加したけど、いじめが僕の頭を占領していたため、集中して勉強をすることができなかった。 ただでさえ、僕はみんなとの知力の差があり、人一倍…いやいや…何倍も勉強する必要があるのに、マイナスになってしまった。 周りのみんなは友達がいるのに、僕には友達が一人もいなかった。そのため学校に行っても全然楽しめなく、学校に行きたくなかった。 唯一僕の楽しみと言えば、年に二回ぐらい行われる、全校生徒での郵便イベントだった。とは言っても僕には友達がいなかったから、手紙を書いたところで送る人もいないのだが…。僕にとって楽しいと思える行事だ。 それから、運動会。 「お父さん、帽子に毛虫がついている」 「え、どこ?どこ?」 「キャーーー」 と毛虫事件は起きたし、両親が僕のために僕の運動会を見に来てくれてうれしかった。 だから、僕は運動会がすっごく好きなのだ。 ただ、僕には居場所というものがなかった。 クラスに行っても、みんなと比べてしまい、みじめになり、勉強をしたいけどいじめられているため、そしてもともと頭が悪い僕はさらに悪くなる一方…。休み時間はクラスのみんなに菌扱いされる…。 そして、家へ帰っても。親に監視される日々が開始された。家では両親が夫婦喧嘩することが多くなっていき、父親から僕とお母さんが家を閉め出される始末…。 なんでこうなるのか?もしかして僕がみんなと違うからなのか?僕の頭が悪いからなのか、もしかして僕が生きているからなのか…?もうわからなくなっていってしまった。 でも、小学低学年である僕は助けを叫ぶことができなかった。 一年生から三年生まで、僕は学童保育へ入れられた。一年生の時は遊ぶ友達がいなかったから、一人で塗り絵をずっとしていた。でも二年生になると、かわいい後輩が入ってきて初めて友達というものを小学校の学童で作る事ができた。しかも一人ではなく、二人作る事ができ、放課後一緒に学童保育で遊ぶようになった。 一年生の時に居場所がなかった僕。でも二年生の時からようやく学童保育という場所が僕の居場所になった。 だが友達の二人を除いて、学童保育でもいじめを受けることになった。 でももうその時の僕は色々と自分の力で乗り越えることができた。 僕にはもう友達がいるんだ。