文化の神の責任

ほら見て御覧何れこれも偽装結婚嘘の相方と 仲良しごっこ番組笑い差し込み必見に人気者 気取り観客席は微かな嘲笑い貴方もう限界ね 可哀想にエネルギーチャージしないとネジが 切れた人形の様ゴースト活動が楽しくて全部 忘れる有り様多分もう一生涯本当の姿見失い 変容し続け生きる道化師お疲れ様です悲しい 定めな器用貧乏かな違うスポンサーさん居た 筈貴方の様者に騙された哀れなスポンサーが 恩を足蹴にする者は2度お笑い王の羅針盤も 壊れて仕舞い誰でも無い素人の凄い者を演じ 自己満の中に消え失せる宿命さよなら偽善神

矯正 (掌編詩小説)

子供の時から、世の中に馴染むのが苦手だった 上手く世の中に馴染めない事を痛感させられては、適応を急かされての繰り返し 主張も・意思も、次第に喉から出なくなった 頭が上手く働かなくなる時がある 机に並べられた付箋たちを自分の元へ両腕を使って掻っ攫うようにして 乱雑に集まった付箋に書かれた文書を読むイメージ そして、その工程を瞬時に求められる時 情報過多の世界に堕ちて、思考が停止する感覚 この認知が貴方に伝わるか判らない 上手く生きていけないようだ シングルタスクのようだ 当たり前の認知が、私の認知にあるとは限らない。残念な事だが カメレオン達の中から自身の存在を忘れさせて 後ろから肩をぶつけられる感覚を忘れさせて (完)

データ系細胞分裂

 人間の細胞は、絶えず変わり続けているらしい。  そして、七年でほとんどすべての細胞が入れ替わる。    ほとんどすべての細胞が入れ替わるなら別人じゃないかと思うけど、私の意識は連続しているので、そう単純な話でもないらしい。  実際、周りの人も私が誰かわからなくなったりはしない。   「SNSの名前とアイコン変更っと」    なら、きっとSNSでも同じこと。  ドットをほとんど全部入れ替えたけど、皆私を見つけてくれるはずだ。  垂れ流した投稿は変わらない。  私という中の人は変わらない。   『誰かと思ったw』    さっそく、私が私として認識された。

ジ・アート・オブ

 深夜過ぎ、会社帰りの道で通りかかった居酒屋から、一台のピアノが出てきた。ピアノはだいぶ酔っていた。ピアノはふらふらと路地を行ったり来たりした後、電柱の陰に隠れた。「ああ、吐くな」と思った。案の定、ピアノは電柱に向かって吐き始めた。地面に広がったそれは見事なソナタだった。優雅なソナタだった。ピアノはすっきりした顔になると、またふらふらした足取りでどこかに去っていった。俺はそれを見送り、ピアノが吐いたソナタのメロディーを鼻歌で口ずさみながら家に帰った。翌朝、出勤のためにその道を通りかかった。電柱の陰に吐かれたソナタは既に片付けられていた。俺はわずかに地面に残った跡を横目で見ながら、昨夜のメロディーを鼻歌で歌おうと思った。だが、もうそれがどんなメロディーだったか、思い出せなかった。「まぁ、いいか」と俺は思った。

『 ’词 写 縮 ‘ ✳︎ 定 指 小 』

『 “ 些 一 了 齐 対 女 彼 / 加 ( 料 描 / 葉 言 ) 几 个 〜 进 縮・は ( イセラスとラツミヤ ) ょじのか ( ばとこ/ りいか )  かつくい 。たしましかいつーつれいせゝ を 。{ ’ゃしくゅし‘  } , ルイてうょし 。정 지 은 작 ; ( 섳 솰 , 홓 튼 ) 는 녀 그 ’ 몇 ﹆ 지 가 ( 를 어 단 ) 렬 정 , ‘ 칭  ( 슈 )  약 ’ 。 ” 』 { 「」} れそゴョヒ き好が

ジャッジメント

 ある春の日、午後の電車に乗っていた。乗客はまばらだった。みな寝ていたり、スマホを見ていたりして、うつむいていた。俺も含めて。小さな駅で電車が停まり、一人のお爺さんが乗ってきた。お爺さんはきょろきょろと周りを見回した。そして、持っていたバッグから、何か、小さな黄色い、四角い塊を、いくつも取り出した。それは、バターだった。お爺さんは、そのバターを、一つ一つ、うつむいている一人の乗客の頭部に置いた。それは微動だにしなかった。「溶けへんな」お爺さんは言った。「君はパンじゃないみたいやね」お爺さんはその行為を、他の乗客たちにも続けていった。乗客たちは誰も反応しなかった。そして、お爺さんは俺の目の前に立った。俺の頭頂部にバターが載せられた。どのくらいの時間が経っただろうか。それは何十時間にも感じたが、実際は数秒だっただろう。つーっ。おでこに液体が垂れてきた。指ですくう。それは解けたバターだった。「君、パンか」お爺さんの目は輝いていた。俺はゆっくり頷いた。

憧れ (掌編詩小説)

『自分にしかできないことをしている人』になりたい 理由はこの世界に自分が存在した証明ができるから 具体的には、文や絵で自分が存在した証明を作りたい 自分の想像力を武器にして この世界を生きていきたいと思っている 最後に、『客観的に世の中を見れる人』であり続けたいとも思っている 自分の生きた姿勢・作品を後世に、残像のように残したい (完)

PLAY

 喫茶店でコーヒーを飲んでいた。向かいのテーブルに、上品な老婦人が、こちらを向いて座っていた。老婦人の目の前にはコーヒーカップが置かれており、老婦人はその中をスプーンでかき混ぜていた。カップの中に入っているのはコーヒーのように見えたが、何だか違う気もした。コーヒーにしては、と言うのも変だが、何だかやけにきらきら輝いているのだ。老婦人はお金持ちに見える。高価なコーヒーなのだろうか。そんな単純なことを思った。その時、老婦人のカップの液体の中から、小さな腕が、にゅっと出てきて、スプーンを掴んだ。小さな腕には金色の毛が生えていた。その腕は助けを求めているように見えた。老婦人はそれに気づき、自身の細い指先で、小さな腕をスプーンから剥がし、それからスプーンを思い切り、カップの底に押し付けた。激しい泡が液体の表面にぼこぼこと浮き上がった。やがてそれが途絶えた。老婦人は再びスプーンで液体をかき混ぜ始めた。徐々に液体の色が変わってきた。さっきより濁ってきた。老婦人はそれをかき混ぜ続けていた。老婦人はその液体をいつまでも飲まなかった。

睡眠不足

 僕は夢の中で、これが夢であることを祈り早く目を覚まそうとしていた。また別の日は、夢であることに気付き、少しでも長くその夢に居続けようと目覚めることを拒んだ。  場面転換を繰り返し嫌なものから逃げ続ける。  夢も現実も疲れてしまった。

 夏祭りに行った。屋台が立ち並んでいた。その中に、キンギョすくいの屋台があった。屋台の至る場所に『囚』というマークが書かれたシールが貼られている。ということは、この屋台のキンギョたちは、前世は死刑囚らしい。水槽を覗き込む。キンギョたちは美しかった。店主は夜空を見上げながらタバコを吸っていた。その腕には刺青が彫られていた。ふと、頭上ののれんを見た。『キンギョ掬い』と書かれていた。普通はひらがなで『すくい』と書かれているイメージだが、わざわざ漢字で『掬う』と書かれていた。少し考えてわかった。『すくい』とひらがなで表記すると、『救い』と勘違いする人がいるのだろう。前世が死刑囚のキンギョだ。そういうのはきっとややこしいのだろう。遠くで花火があがった。

梅の花

 たまに、(自分はちゃんと生きられているのか)と不安になる。勿論、ちゃんとなんか生きられてはいないのだが、そうではなく、そういう事ではなく、人として、大人として、親として、夫として、最低限の行動が出来ているのかと不安になる。  法に触れることはしていない。いや、たまに信号無視や、横断歩道を渡らない、女性が泣いていても声をかけない、なんて事はたまにある。が、無闇矢鱈に自分の不機嫌を外に出さないとか、挨拶をするとか、愛想笑いをするとか。日々、少しでも、善良に生きる事を実行しているのかと自分に問いかけてしまう。そんな日がある。    街を歩いていると、肩で風を切って歩く若者を見たりするが、彼が一生あのままでいられないことを私は知っている。彼が結婚し子供を持つ頃にはもう少し普通になっている。また、自分を変えられないのなら、家族から弾き出されるだけである。もう少し言えば、町内からも弾き出される。妻や子供を持てば自分という存在は家族というチームの中の一人になる。周りはそんな目で彼を見て、自分達の過去と比較し、正常か異常かを判断するのだ。  誰でも若いうちは世間に対して自分のズレは気が付かない。社会に放り出され莫大な情報に圧倒されるからだ。転生と言っても良いほどに。だがラジオのチューナーが徐々に合わさり声が明瞭になるように、歳を重ねれば重ねるほど世界が見えてくる。自分の足元から延びている光の道が見えてくる。  近所の道路脇にさりげなく梅が咲いている。ほのかに良い香りが記憶に残る。通りをスクーターが孵化しながら通っていく。ハンドルを細かく捻り、ガゾリンを非効率に爆発させ、大きな音を自分の威厳と同化して楽しんでいる。何十年も前から変わらぬ作業だ。そして梅もおそらく何千年も前から変わらぬ作業で花を咲かせるのであろう。    私も梅のようにさりげなく咲き、ほのかに良い記憶を残していきたい。

ハエの王

「ただいま」学校から家に帰った。「おかえり」母さんの声がした。台所から良い匂いが漂ってくる。台所に入る。母さんの姿はない。鍋で何かが煮えている。蓋が閉じられている。良い匂いはその蓋の穴から漏れている。ふとシンクの三角コーナーが視界に入る。赤くて細い物がいくつも散らばっている。それはいくつもの小さな鳥居だった。ということは、今夜の夕飯のおかずはアレだな。唾が出てきた。鍋がカタカタ揺れ始めた。楽しみだ。アレを食べると、その夜、嫌な夢を見るが、あの旨さには勝てない。気が付くとにやにやしていた。「嬉しそうね」母さんの声がした。母さんの姿はどこにも見えなかった。

線路の跡

 その日の空は雲ひとつなく、青と白を混ぜて均一に塗られた天井のようだった。林の中の舗装された道の中心には、背の高い姿勢の良い木が行儀良く真っ直ぐに道の先へと並んでいる。林の中にはぽつぽつと別荘が静かに隠れている。奇妙なほど綺麗なそれらは異国の町から抜け出したような装いで、シャッターを下ろして眠っているようにも見える。しかし僕には、家の主でない僕に無関心を装いながらも警戒し軽蔑しているように感じてさっと視線を外した。  僕は俯きながら人気のないその道を歩いていく。かつて鉄道が走っていた道は、線路の跡もなくその名残は感じられない。  いつの間にか舗装された道は終わり、僕は枯れ葉の上をざくざくと音を響かせて歩いていた。別荘との距離が近くなり、庭に入っているのではないかと心配になった。時々木の枝を踏み、ぱちっと音を立てた。その度に僕は後ろめたい気持ちになった。  時々、鳥の鳴き声が頭上から聞こえた。これはカラスだろうか、そんなことを考えながら足下のどんぐりに目をとられていた。割れていない、穴もあいていない綺麗な形を保ったままのどんぐりを見たのはいつぶりだろうか。それを拾ってみようと、足を止めた。  足音は消え、周囲の音が一気に耳への覆い被さる。枯れ葉の上にポツポツと何かが落ちる音、鳥の羽ばたく音、木を何かが駆ける音、電車が線路を走る音。はっとして辺りを見回す。見えるのは木と別荘と青い天井。  遠くで風が走っている。木々の間を目的地もなく、通り過ぎていく。僕は木になりすまし、目を閉じて風の走る方向を探してみる。  日が暮れるまでそうしてみたが風が僕に触れることはなかった。

縄文の森のスーパーで

 元カノと会う。 縄文のビルから仕事帰りに縄文のスーパーに寄る彼女は忙しそうだ。 龍脈の走る土地。 偶然にも地下鉄が延伸する場所は彼女の故郷。 何か示し合わせたような仕組み。 湧き水を汲んで喉を潤していた時代からずっと。 でも移り気な僕は優柔不断。 狩人になれれば彼女にお肉を持っていけるのに。 この土地に住んで43年。 アフリカから来たあの人や東ヨーロッパから来たあの子も狩りや編み物をして暮らす。 皆たどり着く土地。 知り合いがビルで水耕栽培をするらしい。 猪小屋、鶏、畑。 飛脚のおじさんも農業を手伝っているらしい。 江戸時代の独身男の蕎麦。 湿地帯のメガロポリス。 お地蔵さんも日向ぼっこする。 色んな時代が錯綜して廻る世界。 世界が終わる前に世界を取り戻したい。 終末を予言する牧師さん。 西の都に憧れてそこから来たインディアンのような人と連絡を取る。 狸も狐も馬も皆それぞれに暮らす。 焼き八つ橋を食べる。 ミステリー・サークルを作る少年は人生の1週目だ。 イギリス人のような彼は王朝をさらりとかわしフランス人のような僕を横目に玉遊びに興じる。 フィッシュアンドチップスを食べている女の人はいい匂いがする。 蛮性と協調性。 科学エンジニアは海外向けの思考をもって論じる。 僕は百済とロシアの血を使ってそれを解析する。 同じ血を持った彼女は外資系の彼氏さんを射止めてメガロポリスで女子会をする。 文系物理屋の僕は変な髪型でブツブツ言いながら自転車を漕ぐ。 世界の縮図を参考文献にしながらAIと心で分析し解析する。 今日も中動態でいられただろうか?

JUNK

 リサイクルショップに行った。ジャンク品の棚があった。何気なく眺めていると、隅の汚い箱の中に、派手な色の何かが入っていた。それは千羽鶴だった。手に取る。安い値段が書かれた値札の下に、注意書きが貼られている。『効き目ありません。』私はそれを買って、義母が入院する病院へ向かった。

玉手箱の外側

今となっては昔のこと、砂浜に一人のおじいさんがおりました。かつて浦島太郎と呼ばれていた彼は、今より何百年も前に一度姿を消しましたが、長い時を経て海の底にある竜宮城から帰ってきたのです。  ひょんなことから竜宮城で過ごしていた一日が、陸における百年であることを知ってしまった浦島太郎は、咄嗟に乙姫様から貰った玉手箱を開けました。  そして中から出てきた煙を浴びたことで、彼は年老いてしまったのです。 「こんな姿となってしまっては、もう乙姫に会いに行くこともできまい」  浦島太郎は悲しみながら、乙姫様の言葉を思い出しました。 「困ったことがあれば、この箱が助けとなってくれるでしょう。ただし、けっして開けてはいけませんよ」  忠告を思い出したところで、今更どうにもなりません。浦島太郎はすっかり途方に暮れてしまいました。 「もしもし、浦島さん」  そこへ声をかけてきたのは、浦島太郎をここまで送ってくれた亀でした。 「おや亀さん、まだいらしたのですか」 「言いつけをちゃんと守ってくださるか、心配になって戻ってきたのです」 「ああ亀さんや、見ての通り私は取り返しのつかないことをしてしまった。この先たった一人でどうすればよいのだろう」  亀は静かに答えます。 「いいえ、あなたは一人ではありません。そこの玉手箱に今一度触れてごらんなさい」  浦島太郎が言われた通りにすると、玉手箱は光の霧となって彼を包み込みました。そして霧が晴れると、一羽の鶴が現れました。 「これはどうしたことだろう」  鶴の姿になった浦島太郎が不思議に思っていると、亀が教えてくれました。 「あの玉手箱は特別な力が宿った珊瑚から作られたもの。そして、中身は私の願いによって封じ込めまれていたあなたの未来だったのです」  それを聞いた浦島太郎は、目の前にいるのが亀に化けている乙姫様その人であることに気がつきました。  浦島太郎はすぐに言いつけを破ったことを改めて謝罪し、乙姫様も彼の行いを許しました。そして、新たに一つの約束を交わしたのです。  それからというもの、鶴と亀は度々揃ってこの砂浜に現れるようになり、見た人に幸福を与える存在となりました。

溺者 (掌編詩小説)

無自覚に、今日もひたすらに秒針を回した その代償に、スマホのバッテリーおよび自身の視力を浪費した 理由もなく、果てしなく、ネットという水平線の見えない海をサーフボードと化したスマホを使い遠泳した そこに大義はなく、無駄という言葉しか当てはまらない だが、きっと明日もこの遠泳をするのだろう 昨日も泳いだのだから… 遠泳は時間の無駄でしかなく、一刻も早く足のつく場所へ辿り着かなくてはいけない だが、荒波によりサーフボードはどこまでも泳いで行ってしまう 私は、自らを一種の依存状態に溺れていると悟った 私はこの遠泳に終止を打つため、ライフセーバーを呼んでいるが、中々に救助が来ない 貴方も溺れているなら共に陸地へ向かいませんか? 私と共に依存状態から這い上がりませんか? (完)

kitaihazurenaseiken

kekyokudaeganaroutoonajidaradarajik ankaketemonanimkawaranainannotameni syuuhasudesityosyasuagekoukensitano darouoreimomoraenainonifuzakerunaku soseijikadomowatasiwakongonidotoant aranikyouryokuitasimasennanikaareba itudatesenkyonouragawabakurositeyar uoboetokeyokusoseijikatatiyowatasin osoboodasiyagarekekyokutanakakuejya naitonanimokawaranaiwatasiwasinbani tanakakakuewomitakarakyouryokusitas imasakatadadeenerugidorobousurutowa omowazuniyudansitesimaidoitumokoitu mousotukibakarisaitenakibunhayakuni genohoumureyokosinukedomotatisayoun arasiyoukajbundetyantodekinainonara damedame👎koreda

人間関係クーポン

 A君と喧嘩をした。  正直、くだらない理由だ。  でも、A君にとっては重要なことだったらしい。  A君は決して謝らず、ぼくが謝るまで口もきく気がなさそうだった。   「仕方ない」    そこでぼくは、人間関係クーポンを使った。  今までの人生で、良い人間関係を築き続けてきた人間に、たまに配られるクーポンだ。  このクーポンを使えば、壊れかけた人間関係を戻すことができる。  壊れた人間関係を戻すことはできないが。   「おはよー」 「おはよー」    翌日、A君とは仲直り。  クーポンは役目を終えて、破れて消えた。    人とは仲良くしておくものだと、つくづく思った。

一円玉天気

 土砂降りの雨が降っている。急に降り出したのだ。ついさっきまで晴れていたのに、俺は駅の出口で立ち尽くしていた。  最近あまりにもいいことがない。スマホは手から滑り落ちるし、鳥は俺の肩に糞を落とすし。今だってそうだ、降り出した雨になす術がない。  俺はため息を吐いて、駅のコンビニへ歩き出す。バイトの開始時刻まで残り三十分。憂鬱な気分で自動ドアをくぐり、傘と缶コーヒー、夕飯の菓子パンを手に会計に進んだ。  俺はさらにため息を吐く。今の今まで降っていた雨はそこになく、崩れそうにない晴れ間がそこには広がっていた。

本棚の向こう側

 返却された本を抱え、一冊ずつ丁寧に棚へと戻していく。  ゆっくりと、図書室のドアが開く音。目の端にちらりと移る少女の姿。  セーラー服のスカーフの色で下級生とわかる。ここ最近、図書室をよく利用している子だ。  控えめな足音は琴巳のいる棚の向こう側へと進む。  この辺りの棚に彼女の好む本はないはずなのに、と、少し不思議に思いながらも本の整理を続けていると、 「先輩、萱島先輩」  棚を挟んで呼び掛けてくる声。彼女のおっとりとした性格を現すような、柔らかく穏やかな声だ。 「そのまま聞いてくれますか」  数冊の本を持ったまま回り込もうとしていた琴巳は、素直に足を止めた。 「私、初めのうちは本当に勉強のためにここへ来てたんです。でも、今は目的が変わってしまいました」 「それで? 言いたいことがあるならハッキリ言ってほしいな」  琴巳には彼女のようにたおやかな美声は出せない。なるべく穏やかに話したいのだが、言葉遣いも声音もキツくなってしまいがちだった。悪い癖なのは自覚している。 「すみません……」 「謝らなくていいから、さ」  しばらく無言の時が流れた。  琴巳は彼女の言葉をじっと待った。 「私……、先輩のことが、好きです」 「それは、どういう“好き”?」 「いつも先輩のことばかり考えるようになって、いつの間にか、先輩に会えるのを期待して図書室に通うようになっていました。私は……、恋、だと思っています」  琴巳は黙って手にしていた本を棚にしまい始めた。向こうも黙っている。琴巳の返事を待っているのだろう。 「ねえ」  本をしまい終えたところで、琴巳のほうから呼び掛けた。 「私の話も聞いてくれる?」 「はい……」 「昼休みの放送でね、ちょっと変な子がいるの。しゃべり方がのんびりしすぎて、いっつも時間が足りなくなっちゃうんだ。バカにして笑ってる子も多いけど、でも、とってもきれいな声なの。聞き惚れて本も読めなくなるくらい」 「あの……それ……」  本棚越しに彼女の表情を想像して、くすりと笑う。  目の前の本の背に軽く額を当て、琴巳は言葉を続けた。 「いったいどんな子なんだろうって気になり始めたときに、本を借りにきた子の声を聞いてビックリしたわ。『あっ、あの子だ!』ってね。声から想像してたのよりも、もっとずっと可愛くてお人形さんみたいで……、気が付くと、その子が来るのを何よりも楽しみにしてて、来てくれるといつも目で追ってた。これって、恋だと思わない?」  一呼吸おいて気持ちを落ち着かせ、琴巳は向こう側へと囁きかけた。 「私も、貴女が好きよ、牧野志帆さん」  途端に、パタパタと忙しなく駆け寄ってくる足音。 「先輩!」 「図書室ではお静かに」  琴巳は人差し指を唇にあて、本棚の陰から現れた少女――牧野志帆に微笑んだ。

天使

 駅におじさんがいた。スーツを着た真面目そうなおじさんだ。おじさんは両手で何かを抱えていた。それはゾウの鼻だった。うねうね動いている。おじさんは歩き出した。俺は暇だから後を尾けた。おじさんは八百屋の前で立ち止まった。そして辺りをきょろきょろ見回すと、店先に並べられていたリンゴに向かって、ゾウの鼻の先端を差し出した。ゾウの鼻は、リンゴを掴み取った。次の瞬間、おじさんは全速力で駆け出した。俺は後を追った。おじさんはそのまま動物園に入っていった。俺も入った。おじさんはゾウの檻の前に立った。そしてゾウたちをじっと見つめ始めた。「鼻のないやつはおらんか!」だが、どのゾウも、鼻はきちんとあった。そのことを確かめると、おじさんはその場に崩れ落ちた。ゾウの鼻が掴んでいたリンゴも衝撃で地面に落ちた。おじさんは大声で泣き始めた。「大人が本気で泣く声は聞くにたえないな」俺は辟易して、リンゴを蹴り飛ばしてから、動物園を去った。

赤と青

歩道で信号が、青になってもじっと動かない初老の男がいた。膨れ上がった鞄を両手に提げている。男の視線は、信号機のほうへ一点に注がれていた。青はやがて、赤に変わった。あの赤の人影は、何を待っているのか。青の人影は、どこへ向かうのか。男は俯いた。まだ暫くは、動けそうになかった。

自販機

孫娘との散歩の途中、祖父は自販機の前で足を止めた。取り出した百円玉が滑って、転がり落ちた。自販機の下を覗き込むと、暗闇の中でぬらぬらと輝く丸い物体を見つけた。掴むと、いやに柔らかく、じっとり濡れていた。祖父の手の平で、真昼の光に晒されたそれを見て孫娘は言った。「これ、お目目ー?」

穴の中から見上げる多様性

 穴に落ちた。  すっごい深い穴に落ちた。  どれくらい深いかと言うと、両手を伸ばしてジャンプしても、脱出できないくらい深い穴だ。   「だ、誰かー!」    穴の外に向かって思いっきり叫んだ。  何人かは穴を覗いてくれて、私と目が合った。  しかし、言うことは皆同じ。   「まあ、多様性の時代だしね」 「穴の中で生きる人がいてもいいよね」 「人は人、私は私」    誰も手を差し伸べてくれない。    私は一生穴の中にいるしかないんだと気づいたとき、私は現状を個性と呼ぶ覚悟を決めた。

他人を演じ過ぎたゴーストの果て

本体が自分としたら役者は誰かを演じながらも ちゃんと誰でも認識する己を持ちプライベート 普通に充実させられるが元々の姿が存在しない ゴーストは何れに焦点置き行動するのだろうか 姿無き者=透明人間は突如現れ天才ピアニスト 美声な少年美人バイオリニスト奇才な書道家等 姿を変え沢山の評価と称賛受けるが素人集団の 1人に過ぎない自己満足最早ゴーストの孤独な 生涯を写す鏡の様だ何遣ろうが別の誰かの手柄 幾ら素晴らしい映画の監督に成ろが心撃つ小説 書こうが当人が絶賛される事は生涯無いだろう 有る意味哀れなゴーストは今日も他人を演じて 本体求め探す旅に出掛けるかも知れない

taijyu=yalubyougami

長瀬智也、高橋克典sukidatajidawayokata motironiyanakototakusanatakedoginou kaitoiumononi夢gamotetaminasanikeme nnakatagaookukirakirasiteita長瀬智也 sanwarongedesitakedobikurisuruhodon ikemenengimohadougaafurerukuraijyou zudattahajimeteutawokiitatokimososu kitooruamaikoeninokuautosaremasitas oatokarajyojyonikarewoterebidemiruk ikaigafuewatasiwanagasetomoyanodaif uantonatajibunnokeitaitisikitukaize nzusakanoborinagasesakuninwosagasit amotironnakaniwakonomijyanainomoari masitakedohotondogadaisukidesitanaz ekakarenoskuhiowomirutoanamidagaafu retakiokuatosingonsyuunodaimokujyou zudatakotokandousimasitatugini高橋克 典saniwazutosireta特命係長只野仁dosiya nimitehamarimasitasonoatokarenosaku hinmozenbusakanoborikasyudatakotomo sirifankurabunimohairimasitakedobin bounamonodeibentotuasankadekizuyame tesimaimasitagakarenoengiwaimamodai sukidesuotituitaratouyamanokinsanga mitasidesugakedozenbuuranitaijyunok agegayumenaidesukarewazenoregasutan tositautautatanowaoredatoiimasitaga moudoudemoiikaregaiwanaikagirisyouk onaisiwatasimosinjitenaikamosirenai hontoyakubyougamiyosayonarasirouton ogosutosan

あばよ

 夕方、商店街の八百屋の前を通りかかった。「このアマ!」店の中から怒鳴り声が聞こえてきた。そして、八百屋の店主のおっさんが店の中から出てきた。手には一個のリンゴを持っていた。「色気づきやがって!」おっさんはそのリンゴを店の前の地面に叩きつけた。ぐしゃっ、という音がして、リンゴは潰れた。「どうしたんですか?」俺が尋ねると、おっさんは「香水ですよ」と吐き捨てるように言って、リンゴを指さした。「嗅いでごらんなさい」潰れたリンゴに鼻を近づけると、リンゴの香りではない匂いが漂ってきた。それは確かに香水の匂いだった。「リンゴにはリンゴの匂いがあるんだ……」おっさんはぶつぶつ言いながら、店の中に引っ込んでいった。その数日後、俺は見知らぬ年上の女に抱かれた。その女は、あのリンゴがつけていたのと同じ香水をつけていた。

通り道

都会(まち)の隙間を すり抜けてくる 曖昧な吐息に 巻かれて歩く つめたくない あたたかくもない 中途半端な やさしさがいいの 理由(わけ)があるのは 風のほうでしょ? マフラーをほどいた この首筋を 私はただの 通り道 なでるように 風が駆けていく いつからかしら 私自身が コートを脱いだ 透明なあの人 私はただの 通り道 軽くなった さわぎだす襟元 知らないあいだに 春が来ていた 馬たちのあいだを 駆け抜けていく 土の匂いに 守られている 狭くもないの 広いのでもない 中途半端に 突き放されたい 理由(わけ)があるのは あなたのほうでしょ? 市場へと続く この道をずっと だってただの 通り道 なでるように 風が駆けていく いつからかしら あなた自身が 空を支える 足元で耐え抜いて やっぱりただの 通り道 無口な人々 笑顔は花のように 知らないあいだに 春がすぎていた

ふわふわ

 空を見上げた。雲が浮かんでいた。風が吹いた。その風のにおいを嗅いで、「ああ、神様、今日は柔軟剤を使ったんだな」とわかった。

友達を叩いて渡る

 友達ができたら、試すことがある。  耐久力だ。   「ほんと、馬鹿だよな」    日常会話の中に、少しずつ否定を混ぜる。   「またデブになったんじゃねえの?」    未来の自分が失言しても、縁が切られないかを確認するために。   「ダッサ。俺なら恥ずかしくて死んでるわ」    叩いて、叩いて、確かめる。    大抵、皆離れていくが、望むところ。  親友になる前に縁が切れれば、自分の傷も浅くて済む。  親友になった後に縁が切れることほど、辛いことはない。   「初めまして」 「初めまして」    今日もまた、一人と知り合う。  俺は心の中で、かなづちを振り上げる。

旅〜星の子〜

目の前に砂漠が広がっている 見渡す限り砂の大地に、ポツリポツリと小さな人が立っている 彼等は足元位のサイズで何もせずボンヤリと立っている まっしろなオオカミのルイは言いました 「ねぇキャロル。あの頭巾を被った子たちはどうしたの?」 お爺さん狸のキャロルが答えます 「彼等は星の子じゃ」 「星の子?星の子どもたちなの?」 「そうじゃ、空から落ちてきたんじゃろ」 キャロルは特別珍しいものではないと言い、砂漠をテクテク進んで行きます 「ねぇキャロル。あの子たちは、ずっとああやって立っているだけなの?」 「ずっとああやっている者もいるし、人になる者もおる、それこそ砂になるも者 もいる。どうなるかは彼等の好き好きじゃろう」 「そうなんだね。キャロルは物知りだね」 キャロルは、お爺さんだからなと言いました ij少年は星の子たちをよく観察していました 強い風が吹き抜けると、星の子は砂になり風に乗って舞い上がりました 砂になった星の子は高く高く舞い上がり、空の彼方へ消えて行きました 〜旅の記録、砂漠にて〜

春はあげもの

朝から風が強いのは 春の証としては正当で 立派な一日のはじまりと言える 昨日、買っておいたとり肉で からあげをつくって ついでだからと 野菜もいくつか 揚げものへと変身させてしまった ああ、アスパラの天ぷら あの人と食べたアスパラの天ぷら お塩をちょいとつけて食べたあのおいしさったら 春はあげもの からあげも 野菜の揚げものも おいしくできていると よいのだけれど

夜更かし (掌編詩小説)

お得な夜、都合の良い夜 レシートを家計簿に書き記す筆先は軽やかだった 買った物を眺めては、今日という日の肴にした こんな歳にもなって こんな物を買うのか と、言われる物でも私には満足のいく物なのだ 誰にも気づかれなくて良い 自分だけのひと時… 明日を人質にした夜と共に老けていく (完)

泡沫

私を見つけて名を呼んで さようならを伝えるために どうか私を見つけて  名を呼んで 消えてしまう前に ※  ゆらゆらと波に揺られているような感覚があった。ぼんやりする目で周囲を見回せば、見慣れた自分の部屋。  寝室から海が見えるのが気に入って即決した部屋には生活に必要な最低限の物しか置いていない。  夕べは海が月の光にきらめいていて、何時間も眺めていた。誰かが夜の海が怖いと言っていたが、これほど美しいものを俺は知らない。吸い込まれそうな漆黒の闇と金色の月。異国とも異世界とも思えるその景色がたまらなく好きだった。ずっと眺めていると自分と海との境が無くなっていく。そのうちに俺の意識は薄れていき、ゆらゆらと波に揺られる感覚に落ちていく。  最初はよく見る夢だと思っていた。徐々に鮮明に、やがて声が聞こえるようになった。鼓膜を震わせる声はまるで鈴を転がすような声だった。耳をすませてみたが、何を話しているのかはわからない。しかし心地よい「音」が残った。 「そろそろ顔が見れるかな」 ぼんやりとしか見えていなかったが今では後ろ姿がはっきりと見えるようになっていた。月明かりに照らされてとても美しかった。  あくびを噛み殺しながら仕事をするのにも飽きて、窓の外の海を眺めた。今夜も月が出ている。 夢の中の「彼女」を「人魚姫」と名付けていた。彼女の夢を見るのは決まって月明かりの美しい夜だったから。 なんとなく予感がした。 今夜は話ができるかもしれない。いつまでも終わらない仕事を切り上げ、眠る準備をする。そわそわと浮足立つ自分がなんだかおかしかった。  月明かりに照らされる海を眺めているうちに、いつの間にか深い眠りについていた。 「人魚姫」はいつものように俺に背を向け海を眺めていた。歌うように何かをつぶやいている。 「私を見つけて 名を呼んで…」 月明かりに浮かぶ姿があまりにも儚げで泡になって消えてしまいそうで、思わず声を掛けた。 ゆっくりと振り向く「人魚姫」は月の影に隠れてよく見えなかった。  彼女に近づこうと足を動かすと不意に月が輝きを増した。周囲が光に包まれ彼女の姿が見えなくなる。  ゆっくりと意識が浮上しはじめる。  目を開くと夢の続きの様に水面がゆらゆらと揺れている。少しの間、何処にいるのかわからずに朝日が射す部屋を見回した。紛れもなく見慣れた自分の部屋だ。窓際に置いた水槽の水面が天井に反射していた。 「顔、見れなかったな」 窓を開け、海を見る。昼間の海はなんだかぼやけていてあまり美しくなかった。  のろのろとスマホを持ち上げ日付を確認し、花を買いに外に出た。行く先は決まっていた。毎月必ず向かう花屋さん。買う花もいつもと同じ。店員さんもいい加減覚えてくれていて、顔を出すだけで用意してくれる。そして、必ず白いリボンをつけてくれる。 「気をつけていってらっしゃい」 「ありがとうございます…」 何ヶ月も通っているが初めて言われた。そういう気分だったのだろう。  毎月同じ日に海へと向かう。部屋から見るのとは違い現実感を持って現れた。強い潮の香り。相変わらず不愉快だ。 「やっぱり近くだと美しくないな」 吐き捨てるような言葉が口から出てくる。泣きたくなるような気持ちを投げつける様に花束を海へと放った。 「……」 俺を呼ぶ声がした。気のせいだと思ったが、あたりを見回す。やはり誰もいない。再び海に目をやると、そこには「人魚姫」がいた。 俺は彼女を知っている。名前を呼ぶことさえ忘れてしまっていた、彼女のことを。 誘われる様にさらに海に近づく。「……」人魚姫の名をよんだ。彼女は驚いた様に目を開くと、小さく笑って 「さようなら」 と言った。確かにそう聞こえた。会えたのに、話せたのにさようなら?消えていく彼女を抱き止めようと更に一歩足を踏み出す。 「危ない!!」 背後から誰かに腕を引っ張られた。あと少しで届きそうだったのに。怒りと苛立ちのまま振り返るとそこには花屋の店員さんがいた。あまりにも顔面が蒼白で、俺は怒る気が失せた。 「何故」 短く尋ねた。 「海に攫われそうだったから」  申し訳なさそうに店員さんが笑う。  あれ以来「人魚姫」の夢は見ない。 さよならを伝えてくれたあの日以降、海で亡くした彼女の夢を見るようになった。彼女の名前をそっと呼ぶ。  ありし日の愛しい人。  月明かりに照らされて微笑む姿がとても美しかった。

マイ・ジェネレーション

 道を歩いていたら、かつお節の自販機があった。この辺にはネコが住んでいるらしい。「昔のネコは」老人たちは嘆く。「可愛げがあった」俺たちの世代は昔のネコを知らない。今のネコだって可愛げはあると思う。自販機の前で小銭を数える姿とか。そういえばこの間、大学の図書館で、文献を読んだ。それは、今は絶滅した『ネコジャラシ』という植物に関する文献だった。「あんな植物があったのか」と驚いた。あまりにもネコを馬鹿にしていると思った。

文化の残像とは

素晴らしい物沢山有った筈キラキラ輝く歌達は 感動越えた愛と言う未確認生命体が折り重なる 糸と言う仕合わせは何処月が見え無いこの部屋 偶に覗く弱く光る移動する生命体頭上で跳ねた 何が正義敵とは誰が定め裁くのだろう昔の童話 笠地蔵、鶴の恩返しが示す意味とは皆誰も日々 忙しく生きる内に一番大切で最も必要な羅針盤 恩返しと言う最も美しい文化を忘却の彼方置き 忘れる位なら慈悲も存在したかも知れないけど 真逆仇討ち足蹴にする行為が証拠した物は一体 何だろう折角大切に積み重ねた好意一瞬で失う 愚かな行動とは童話カンダタの如く哀れな敗北 大泥棒の彼が人生でたった一つの光が蜘蛛救出 した行為で釈迦は天から糸を垂らし地獄の者を 救う慈悲を示したのにカンダタは揺れ不安定で 切れそうな糸の事危惧するだけ感謝の云々処の 話じゃ無く共に救われたいと望む者迄を足蹴に した行為釈迦は酷く悲しまれ糸は絶易く切れて カンダタは元の地獄へ堕ちたと言う童話が語る 意味とは何だろう感謝の念或いは恩返しの必要 不可欠な関係性多分何方も正解かも知れない事 私達は行動して学ば無ければ駄目な事好意から 裏切り操り悪い現状ばかり現実化する行為とは 神への冒涜進路妨害彼は何時の間にかカンダタ 現象へ堕ちかも知れない全て神の身ぞ知る物語

影、影、 影、影、 影、影。 ああ君はいつまで経っても影のままそこに居るのね。私はそんな君が好きだよ。私の影、私の影。君も私の一部。こころとは途方もなく広い世界だ。その中で私にいちばん近いところにずっと、ずっといる。気づいているよ。 ずっと、ずっと近くにいたのに、 ずっと、ずっと見ないふりしていてごめんね。 今日からは同じほうを向いて、時には喧嘩もするだろうけど、ずっと、ずっと、一緒だよ。

知らぬ間に

授業中、ふと視線を指に落とした。 知らぬ間に指に切り傷があった。 いつ切ったかも、どうやって切ったかもわからない。 よくあることだ。きっと、紙かなんかで切ったのだろう。 その傷を知った瞬間、痛みはじめる。さっきまでは全く気にならなかったのに。 絆創膏を貼ろうと思ったが、持っていなかった。女子力も持っていない。 この授業が終わったら友達にもらいに行こ。 つまらない数学の授業が終わった。傷はまだヒリヒリと痛い。 「あゆー、絆創膏持ってない?」 「持ってるよ。どうしたの?怪我?」 「なんか知らない間に指切れててさ」 「あー、あるあるだ。」 「そう」 「はい、絆創膏。」 「ありがと」 「てかあんたって本当女子力ないよね」 「あはは、そうかな」 あゆは余計な一言を入れてくる。毎回、愛想笑いで受け流す。 「そうだよ、その髪型だって何?ださいよ。本当に女子?」 今日の髪型、頑張ったのにな。 「え?ああ、今日寝坊しちゃってさ」 「へー、まぁ、あんたには似合ってるか」 「もう、ひどーい」 そう、笑って受け流す。うざいな。 でもこれで私が怒ったら、ノリが伝わらない私が悪い。 ノリってすごい。全部に使える無敵で無罪になる言葉。 あまりにもノリが悪い人は少し苦手だけど、全てをノリで通そうとしてくる人も嫌。 あゆはクラスで唯一の私の友達。あゆと仲良くなくなったら、私はきっとひとりぼっち。 あゆと仲良くなくなる?私はあゆが嫌い? なんだかしっくりきた。私はあゆが嫌いなんだ。 自覚した。 知らぬ間にと言うべきか、それとも私は知っていたのかはわからない。 私はあゆが大嫌いなんだ。 知らぬ間に傷ができた日、私は知らぬ間にあゆが嫌いになった。

スローライフ

 休日の昼下がりの公園を歩いていた。大きな池があり、その周りにベンチが設置されている。そのベンチの一つに、老夫婦が腰かけていた。老夫婦は池を見ていた。池は日の光を浴びて、風に揺られ、きらきらと輝いていた。老夫婦の夫は、それを見つめながら、スケッチブックに、鉛筆で絵を描いていた。その絵は、目の前の池の風景ではなく、涸れた池と焼け野原になった公園の風景だった。木は灰になり、地面には穴が開き、涸れた池の底には死体がいくつも倒れていた。彼には何が見えているのだろう。老夫婦の妻は、夫が一枚その絵を描き終えるたびに、スケッチブックからそれをちぎり取り、膝の上に置いた手動のシュレッダーにそれを突っ込んでいた。出来たばかりの焦土の絵が切り刻まれていく。その音は公園の様々な音に自然に調和していた。老夫婦は笑っていた。それを見て俺は微笑んで公園を去った。

指の腹ほどの小さな蜘蛛が、電信柱をよじ登り、空に垂れ下がる電線の上を歩いた。相変わらず頭上には空があった。風が吹き、落ちそうになった蜘蛛はそのまま電線の裏側へと回った。すると空が見えなくなった。電線の横から足元を覗くと、そこに空が広がっていた。意を決して、蜘蛛は空へと飛び降りた。

トリップ

 ある地方に出張に行き、ビジネスホテルに泊まった。仕事を終えホテルに戻り、夜中、ビールを飲みながらテレビを観ていた。チャンネルを適当に替えていると、ふいに、生ゴミの映像が流れた。家庭から出たらしい生ゴミを、色々な角度から映している。それが延々と続いている。何の番組だろう。音量を大きくした。「ぶぶぶ、ぶぶ、ぶぶぶ……」虫の羽音のような音が聞こえた。ああ、これはハエの羽音だ。「ぶぶ……」そして、わかった。どうやらこれは、ハエが観るためのテレビ番組らしい。「ぶぶぶ……」色々な番組があるものだ。ぼんやりそれを眺めていた。そうしたら、だんだんむらむらしてきた。気が付くと、俺は生ゴミの映像を前に、ズボンを脱ぎ始めていた。俺はもしかしたら、人間ではなく、ハエの亜種なのかもしれない。

月の姫からの贈り物

今となっては昔のこと、光り輝く竹から生まれた娘がおりました。かぐや姫と名づけられた彼女は美しく立派に成長しましたが、誰とも結婚しようとしませんでした。  そしてある年の満月の晩、迎えに来た使者達と共に真の故郷である月へと帰ってしまったのです。  かぐや姫が自分達の元を去ってしまったことを、おじいさんとおばあさんは深く悲しみました。そしてとうとう病気になり、寝込んでしまったのです。  しかしそんなある日の晩、驚くべきことが起こりました。  なんと、月へ帰ってしまったはずのかぐや姫が二人の前に再び現れたのです。  おじいさんとおばあさんはたいそう喜んで、かぐや姫に向かって声をかけました。しかし、かぐや姫は静かに微笑むだけで何も言いません。それどころか、少し経つと彼女は跡形もなく消えてしまったのです。  おじいさんとおばあさんはそこで目を覚ましました。かぐや姫が再び現れたのは、どうやら彼らがみた夢の中でのできごとだったようです。  おじいさんは悲しみつつも、これまでより身体が少々軽くなっていることに気がつきました。身体を起こして枕元を見ると、小さな箱が置かれています。 「これはいったい……?」  おじいさんはおばあさんに声をかけ、二人で箱の中身を見ることにしました。  中には青白く輝く丸い石が二つ入っていました。 「なんだろうな?」 「なんでしょうね?」  二人はそれぞれ石を手に持ってみましたが、何も起こりません。けれども、ほんの少しだけ、生きる活力が湧いてくるような気がしました。 「ひょっとしたらこれは、かぐや姫からの贈り物ではないか?」  おじいさんが言いました。 「ええ、きっとそうにちがいありませんわ。この石、あの子の故郷である月のようですもの」  おばあさんも言いました。  そうしてかつての元気を取り戻した二人は、とても長生きしたそうです。