ただ電車の中で、気になったタイトルの曲を流してだだけ。 その曲は失恋ソングだった。 最終電車の中で人もいない車両で、彼と同棲してる最寄り駅までの道のりで失恋ソングを聴いていた。 それだけなのに、歌詞が痛いほど刺さって私は泣いていた。お酒が入っていたからかもしれないし、呑み友に彼の愚痴を聞いてもらったからかもしれないし、一人しかいない車両に乗っていたからかもしれない。 視界が歪んで、歌詞にのめり込んで泣いていた。 彼が好きで、大好きで、それなのに彼は私と同じ温度で私を愛してくれない。そう思っていた。 でも、それは見返りを求めた愛だったのかもしれない。恋愛をしてる私が私は好きだったのかもしれない。 そう思いながら最寄り駅まで後2駅。 彼を好きなのか、彼を好きな私が好きなのか。 ただ気になったタイトルの曲を再生して聴いていただけ。 君はきっと「そっか、ごめんね」と言うのだろう。止めて欲しい。止めて欲しくない。 私はワガママだ。 ただ気になったタイトルの曲を聴きながら何回も再生しながらの帰り道は、とても綺麗だった。 最後に目に焼き付けて帰ろう。 愛してたフリをして愛されていたフリをしてた。
新落語 誰もが知っている 「こうそくの話」 今宵は、そくてい このような 言葉があるのは それは、誰もが知っている.はかる 文字を変更 高速 から 低速 それからどうした 高速道路は 高速です 測定はキケンです お仕事は拘束 されているので しかたなし こんなの どうでしょう 書けるもんなら 書いてくれ
私は、女諜報員。 任務は、この国の男性と結婚し、日常をノートに記録すること。 《指令1 一日の出来事を記録せよ。我が国との違いを把握せよ》 夜になると机に向かい、黙々と書いた。 数か月後、新聞のチラシに紛れて、メモが入っていた。 《指令2 買い物を記録せよ。我が国との経済の違いを把握せよ》 買い物から帰ると、レシートを広げ、商品名と値段をノートに写した。 私は結婚し、やがて子どもが生まれた。 届いた花束には、メッセージカードが添えられていた。 《指令3 子どもの成長を記録せよ。我が国の子どもたちの参考になるだろう》 私は、家族の日常をブログにアップした。 すると、編集者の目にとまった。 日記はエッセイに。 買い物記録は、主婦目線の経済書に。 育児記録は、若い母親向けのハウツー本に。 私の記録は本になり、評判が広がっていた。 玄関のチャイムが鳴る。 ポストには、メモが。 《指令4 今までの記録を全て本国に送れ》 私は、電子書籍のURLを書いた紙を封筒に入れた。
夏祭りの屋台はやけに魅力的。夏の、夜の、それも非日常の。その枠組みに加えて、涼し気な浴衣姿、下駄の音、焼きそばの暴力的でパンチのきいたソースのにおい、方々から聞こえてくる話し声にこの時期しか耳にできない笛や太鼓の音もまじってくる。さわがしくも心地よい空間。 右手にキミのくちびると同じような色のあんず飴を持って、左手にはお店のおじさんがきちんと拭ってくれたと思われるラムネのビン。けれど、かすかに濡れている。走る雫は、キミの白くて細い腕を伝い、ヒジから地面へと落っこちた。 白地に青い花があしらわれた浴衣姿のキミを見て、その瞬間、大きくふくらんでいた僕の気持ちがみるみるしぼんでいく。両手がふさがっていたんじゃ手をつなげないじゃあないか。 ひとりひそかに憤っていると、 「これ持って」 と、キミがラムネのビンを差し出してくる。言われるまま僕はそれを取り、手を濡らす。 「行こっか」 キミの濡れた手が、空いている僕の手をさっと引いていく。 ―ああ、そういうことか よく冷えたラムネを胸に当て、やけに熱くなった鼓動をしずめる。
平日の午前。 男は整理券をもらうため、小走りでパチンコ屋に向かった。 「今日は勝つ気がする……」 ポケットの中の軍資金を握った。 すると、道路脇でかがんでいる女を見かけた。 「……あの婆さん」 アパートの隣に住む婆さんが、お地蔵様を雑巾で丁寧に拭いていた。 男は足を止めた。 「信じる者は救われるか」 鼻で笑う。 夕方。帰り道、うつむいて舌打ちをした。 「ん……」 隣の婆さんがビニール袋をぶら下げ、地蔵の前に立っている。 そして、気にする素振りもなく、お供え物と小銭を袋に入れた。 「婆さん、こずるいこと考えたな」 「なにがだ」 「いやいや、今、お供え物と小銭、盗ったろ」 婆さんは笑いながら、男を見た。 「この地蔵、私が通販で買って、ここに置いたんだ」 「なんだそれ」 「他にも、何か所も置いてるさ」 辺りが暗くなってきた。 「私はねぇ、ちゃんと考えて置いてるんだ。リピーターを増やすためにね」 そう言うと、地蔵を抱えた。 「それ、どこに持って行くんだ」 婆さんが振り向いた。 「……ここは儲けが少ない」
新落語 誰もが知っている 「お好み焼きの話」 今宵は、ヘラ このような 言葉があるのは それは、誰もが知っている 作る人 文字を変更 ヘラ から ペラ それからどうした しゃべる人 そのあとどうした 妖怪人間ベラ まんがの人 これはなに おこのみ焼屋 お客の まんがの話題なんです こんなの どうでしょう 書けるもんなら 書いてくれ
薄暗い草原に佇む青と赤、2つの影。 「どこかから、川の流れる音が聞こえる」 「あの雲はどこまで行くんだろう」 「それを私達は忘れてしまった」 「私達がどこから来たかも忘れた?」 「覚えてるの?」 「忘れた」 しばしの沈黙。草原に日が差し始める。 「瞼の裏側にも日の光りが届く」 「じっとしていると少し熱い」 「でも心地いい」 「足の裏が乾いてきたね」 草原が風に揺れる。 「少しくすぐったい」 「みんな目覚めてきたみたい」 遠くから聞こえる獣の足音。地を這う虫たちの気配。 「鳥たちも羽を撫で始めたわ」 「きっと川に向かう」 「私達と同じ 彼らも旅をする」 「あっ飛んでいった」 大きな翼が風を切る。2つの影はそれを愛おしむように見つめていた。 「西の空ね」 「彼らも果てを目指していたのかな」 「そうかもしれない」 「まだ旅は続ける?」 「いつかあの光を掴むまで」 「まだ遠い」 その声を遮るように一陣の風が吹く。しかし赤い影は答えた。 「辿り着くかも分からない」 どこまでも響く、清涼な声で青い影は問うた。 「どうして旅を始めたんだっけ」 「生れたから」 「生まれたから?」 赤い影は、その細長い指で草原の一点を指す。 「あそこに花があるでしょう?」 「まだ蕾だね」 「あれもいずれ種を撒く」 「風にのせて?」 赤い影は囁くように答えた。 「そう、だから私達も旅をする」 「遠くに行くために?」 足元では虫たちが列をなして葉を運んでいる。 「生れたことを忘れないために」 束の間、青い影は瞬きをし、言葉を探して発した。 「何かを残すために」 2つの影は続ける。 「あの光の方へ」 「あの風が吹く方へ」 ふと赤い影が目を開く。 「蕾が開いてきた」 頷きながら青い影は空を仰いだ。 「太陽が眩しい」 「また朝がくる」 空はもう、茜色に染まる時を終えようとしていた。青い影は空から目を逸らし草原を見渡す。 「あの鳥たちは、今どこにいるのかな」 赤い影は微かに笑い、答えた。 「夜明けよりも明るい所」 ガサと草の擦れあう音が響く。 「あっ新しい鳥が来た」 「私達もそろそろ行かなきゃ」 「どっちの方角に行く?」 「この鳥の来た方へ」 2つの影は立ち上がる。ずっと座っていたから、体は重くなっていた。 「靴を履こう」 「もうすっかり足が乾いてる」 「やっぱりもう一度だけ土を踏んでいこうかな」 すっと足を伸ばす青い影。 「柔らかい?」 「柔らかくてひんやりしてる」 「手のひらを当てても気持ちいいわ」 赤い影は、靴紐をきつく縛った手を休めるように地面に触れた。青い影も真似をする。 「本当だ」 赤い影は静かに立ち上がり、青い影の手をとった。 「さあ、行きましょう」 「さようなら」 青い影は草原に手を振った。 「長い夜明けだったわね」 「そうだね」 「私達は呼ばれている」 2つの影は見つめ合う。 「夜に?」 「次の朝に」 「じゃあそこへ行こう」 2つの影が地平線に視線を戻すと、時が動き出した。 「いつか辿り着くまで」 「歩き続けよう」 草原の夜は明けた。2つの影はもういない。
砂がこぼれ落ちるように 時計の針は、止まらない 時間はどんな人にも、等しく流れるもの でも、その時間の長さは人それぞれで その時間をどう過ごすかは、その人次第 いつか必ず来る、『終わりの日』 その日が来るまでに、あなたがしたい事は なに?
日曜日の朝、八時。 幹線道路脇に、二人の警官が立っている。 「先輩。雨降ってきたっすね」 「寒いな」 歩道の植え込みの影に、レーダーを置いた。 「なんか、ずるくないすっか?」 「なにが?」 「レーダー隠してるし」 「見えたら、スピード落とすだろ」 二人は、気づかれないよう、身をかがめた。 「なんかこの瞬間、ワクワクしません?」 「あぁ」 「この前、釣りに行ったときと、同じなんだよなぁ」 「獲物を取る感じだ」 すると、一台の車が速度を超えて走ってきた。 「きたぞ」 「あっ、スピード落とした」 「バラシたか……」 水しぶきを上げ、余裕の顔で通り過ぎた。 「流れもポイントも、いいんだけどなぁ」 「おぉ、きたぞ」 「大物ですよ」 大型トラックが、スピードを上げて近づいてくる。 「あせるなよ。よし、ヒット」 待機していたパトカーが、サイレンを鳴らす。 二人は、停車したトラックに駆け寄り、運転席の窓を叩いた。 「運転手さん、飛ばしてたね」 「はぁ……」 「で、なに急いでたの?」 「鮮度が命なんで……」
毎日 ぽちぽちと 見えない誰かと たたかうみたいに ポイントの 獲得に 精を出す ポイントのために 生きてるのでは ないのだけど 何かを 奪われていることは ないと思う ポイントのために 生きてるのでは ないのだけど 何かを 吸い取られてることも ないと思う ポイントのために 生きてるのでは ないのだけど ポイントが得られるのは うれしいと言えば うれしいことだ ポイントのために 生きてるのでは ないのだけど ポイントのために 生きてるのでは ないのだけど ポイントのために 生きてるのでは ないのだけど ポイントのために 生きてるのでは ないのだ
「あの、変わってもらえませんか?」 「何をですか?」 「僕は、あの娘に介助をお願いしたい」 ベッドの上で、中年の男が視線を上げた。 「ここ、同性介助ですが」 「僕、見てるだけです」 「それって、結構セクハラですよ」 「合理的配慮でお願いします」 薄暗い部屋に、デジタル時計が光る。 「まぁ、上に相談してみます」 「僕、不安定になるかも……」 「はい。お大事に」 男は扉を閉めた。
「誰か彼を止めないと……」 「それが、制裁だって言って聞く耳持たないんですよ」 「みんなが迷惑してるよね」 集まった代表たちが、深いため息をついた。 「この前も『我々は最強だ』って言ってたでしょ」 「そう、自分たちファーストってね」 「でも、一般人にケガさせるのはやりすぎ」 「黙ってるけど、君はどうなの? 仲間でしょ」 部屋の隅に、視線が集まった。 「すみません。一部が暴走してて。ぼくも、シャケくわえてた頃が懐かしいです」
昨日のデートは 少し物足りなかった 遊園地は たのしかったけれど ホットドッグは おいしかったけれど 抹茶フラッペは 冷たかったけれど 観覧車で ちょっぴり期待した 眺めは キレイだったけれど てっぺんに来るのが ドキドキだったけれど 手のひらは 汗まみれだったけれど なんのための 観覧車だったのかな なんか少し 物足りなかった
「いやー、遂にお前がノーベル賞を取るとは。」 十席程度しかない狭い酒場のカウンターに二つの背中が並んでいた。 「お前ならいつか取れると思っていたよ。なんたって天才だからな。」 右に座る男がビール片手に言った。 「やめてくれよ。運が良かっただけだ。」 左に座る男は照れ臭いのか目を伏せた。 「結婚だって、お前に先を越されるし、俺は一体何だったらお前に勝てるって言うんだ。ずっと、お前と比べられる俺が不幸で仕方ないよ。」 右の男はすでに酔いが回っているようで、おぼつかない手付きでジョッキを勢いよくテーブルに置いた。 店の女将さんが一瞬、ビクリと二人の方に振り向き、笑いかけた。 「おい、そんな大声を出すんじゃないよ。恥ずかしい。」 左の男がひっそりとした声で右の男に注意した。 女将さんは口元を袖で隠すように、おしとやかに笑った。 「フフッ、大丈夫ですよ。今日はお客さんたちしかいませんから。それよりも、お話勝手に聞かせてもらったんですけど、もしかして、貴方いま話題の木村教授?」 「あ、はい。そうです。」 左の男は軽く頭を下げながら女将の問いに答えた。 「あら、この度はノーベル賞おめでとうございます。」 女将は美しい所作で木村という左の男へ祝福を示した。 そして、一杯注がせてくださいというと木村のお猪口へ酒を注いだ。 「どうも、すみません。」 木村は一気にその酒を流し込むと今度は、女将さんのために酒を注いだ。 「そんな、私はよかったのに。」 女将はそういったが、まんざらでもなさそうに酒を一口で飲み干してしまった。 右の男はすでにテーブルに突っ伏して大きいイビキをかいていた。 「私無知だから、あなたがどんな研究をして賞を取ったのか何も知らないの。教えてくださる?」 木村はなぜかその問いにすぐには答えず、ちびちびと酒を飲みながら数分にわたって腕時計を何度か確認していた。 数多くの客を相手してきた女将にとって、数分の沈黙など臆するに足らないものだった。しかし、目の前の頭脳明晰な男と彼の不可解な行動が女将を不安にさせた。 木村は長い沈黙の末、再び口を開いた。 「私の研究の成果は、簡単に言うと人間の潜在意識を呼び起こすんです。本人が隠しているはずの虚栄心、憎しみ、妬み、無関心なんかが無自覚のうちに出てしまう。」 女将も負けじとたっぷりと間を開けてから木村に言った。 「へえ、でもそんなことをして何の意味があるのかしら。」 「意味はありますよ、犯罪者の心理を読むこともできる。自白剤とは違うから、これから法整備も進むでしょう。どうです、もっと詳しいことも教えましょうか。」 木村は今度はすぐに女将へ返答した。 「いや、もういいわ。」 女将は本心からそう言った。 普段なら男が得意になって話す話題には興味がなくたって聞き入るふりをしていた。そういう商売なのだから。 はっとした女将が前を向くとすでにそこには、木村の姿はなかった。 カウンターには、すやすやと眠る木村の友人であろう男と二人分の代金が残されていた。
新落語 誰もが知っている 「ヒツジの話」 今宵は、ロング このような 言葉があるのは それは、誰もが知っている 日本語で長い 文字を変更 ロング から ロンク それからどうした ヒツジの言い違いから生まれたことば そのあとどうした ヤギとなる これはなに メイメイで そのわけは 考えてくれ こんなの どうでしょう 書けるもんなら 書いてくれ
エンジンを止めると途端に一月の冷えた空気が全身を包み込んだ。 フルフェイスのヘルメットを外し、バイクから降りる。すると、その冷たさが耳や頬に直接刺さった。冬独特のそれは嫌いではないが、愛車の振動と熱から離れるこの瞬間は少しだけ寂しいものだ。 「はぁ……結構遠くまで来たな」 少し暗くなりはじめた空に、息の白さと熱が溶ける。 そろそろ何か自分にも買うか。とぼんやりと考えながらサービスエリアへと入る。自動ドアを境に、空調のきいた緩い空気が一気に纏わりついてくる。冷え切った体には嬉しいのだが、篭った空気は少し息苦しい。 「そういえば、樂から電子チケット来てたな」 ふと今朝のグループチャットを思い出す。 『誕生日おめでとうございます。ツーリングに行くんすよね?道中どぞ』 そんなメッセージと一緒に、後輩から送られてきたコーヒーチェーン店の電子チケットだ。ドリンク二杯分ほどがチャージされていて、行き帰りにちょうどいい。 「普段は署内の自販機かコンビニだしな。誕生日のぷち贅沢か」 そう独り言を口内で転がして、まっすぐコーヒーショップに向かった。 人気店だけあって店内は賑やかだった。とはいえ都心の店よりはましだ。 テイクアウトにして車で飲む人が多いのか、席には幾分か空きがある。これならそのままレジに行っても大丈夫そうだな、とまっすぐレジへ向かう。 「エスプレッソアフォガートフラペチーノをベンティで」 そう"いつもの"を頼む。せっかくの誕生日なのだから、限定メニューにしたりケーキをつけても良かったのだが、それはまぁ三人での時に取っておこう。 カップを持って席に座ると、プライベート用のスマホが通知を告げてきた。 「ん?先輩か樂か?」 二人なら少しばかり返信が遅れても問題ないだろう。とりあえず一口飲もう。 エスプレッソの苦味がまず口に広がった。そこからじんわりと広がる甘さに溜息が漏れる。 カップをテーブルに置きポケットからスマホを取り出すと、ロック画面に表示された文章に先ほどとは違う息がふっと漏れた。 「ははっ、そんなに待たれてたら早く帰んないとじゃん。ベンティ頼んじゃったよ」 あーあ、と言いながらも黒田泰斗は嬉しそうに笑った。
郊外にある一軒家。 男がカメラを片手に、玄関の扉を開けた。 何十年も誰も住んでいない家。 家具には、白い布が掛けられていた。 「二階の奥……」 廊下に、きしむ音が響く。 階段を上がり、目的の部屋に入った。 「これか……」 男は窓際の白い布をめくり、中を確かめた。 そこには、ひじ掛けのついた古びた椅子があった。 横の机には、家主だった老婆の写真が立て掛けられている。 「皆さん、ご覧になってどうでしたか?」 スーツ姿の男が声をかけた。 部屋には、数人の男女がモニターの前に座っている。 男がスタッフに視線を送ると、窓際の椅子が運び込まれた。 「晩年、お婆さんはこの椅子に座り、外を眺めてました」 集まった男女は、緊張した顔で耳を傾けた。 「さぁ、皆さん。順番に椅子へ座ってみましょう」 机の上には、老婆の写真が置かれている。 「私は無理です……」 声が震える。 「大丈夫ですよ」 男が、そっと寄り添った。 女は恐る恐る、椅子のひじ掛けに手を掛けた。 そして、ゆっくりと腰を下ろした。 「がんばりましたね」 部屋に拍手が響いた。 すると、一人の男が手をあげた。 「先生。この椅子には、どんな因縁があるんですか?」 「……そんなものはありませんよ」 「でも、この写真の顔……」 スーツの男が、写真を手に取った。 「このお婆さん、私の母ですね」
あの夏 ステイシーに ハイチュウを あげたんだった アタシの国には こんな食べものないよ はしゃぐステイシーの息は 青りんごが香っていた 帰っていくステイシーに ハイチュウを あげたんだった いちごと 青りんごと ステイシーは わたしを抱きしめ アタシの国には こんな食べものないよ と、その数日 何度もきいたことを またくり返した あの夏は とても暑かった ステイシーも とても熱かった
深く暗い森の奥に、年老いたリスのおばあさんがひとり住んでいました。 おばあさんは毎朝、杖をつきながら森の奥へ 食べ物を探しに歩いて行きます。 ある日のこと。 木の実を拾っていると、聞きなれない鳴き声が耳に届きました。 「ピィ、ピィ、ピィ…」 声のする方へ向かうと、苔むした切り株の陰に小さな鳥の子どもがうずくまっていました。 羽はまだ生えそろわず、大きな口を開けて泣いています。 「どうしたんだい」 声をかけても鳴き続けるばかり。 「親とはぐれたんだね」 おばあさんはその子を抱きかかえ、家へ連れて帰りました。 小鳥はピィ、ピィと鳴き続けます。 おなかがすいているのでした。 けれど家の中に食べ物はありません。 おばあさんは虫を捕まえて食べさせましたが吐き出してしまいます。 花の種も駄目でした。 「困ったねぇ…何が食べたいんだい」 そこへ、ドンドンドンと扉を叩く音。 「ちょっと、ばあさん」 隣に住むおばさんリスでした。 「ピィピィうるさくてかなわないよ。静かにしておくれ」 「ごめんよ。子どもを拾ってきたんだけど、鳴きやまなくて困っているんだよ」 「なんだい、その汚い子どもは。とっとと捨ててしまいな」 そう言うと、おばさんは怒って帰っていきました。 翌日も小鳥は鳴きやみません。 おばあさんは隣の家を訪ねました。 「すまないが、少しだけドングリを分けてもらえないかね。あの子が欲しがるようなんだよ」 けれどおばさんは顔をしかめました。 「冗談じゃないよ。大事な実をあんな子にあげられるもんか。欲しいなら自分で取りに行くんだね」 おばあさんは黙って頭を下げると、心に決めました。 ──あの山の向こうに残る大きなドングリの木へ行こう。 それは若い頃の苦い思い出の場所でした。 夫と実を拾いに行ったとき、人間の作った広い道路を渡らねばなりませんでした。 そこで夫は車にひかれて命を落としたのです。 それからずっと、その道はおばあさんにとって恐ろしいものでした。 けれど今は違います。 小鳥のためなら、恐れを越えてもかまわない。 おばあさんは走り出しました。 轟音を立ててすれ違う車。 小さな足はもつれそうになりながらも、心はひとつの願いで満たされていました。 「どうにか…たどり着けたよ」 大木の根元には、黄金のように輝くドングリがたくさん落ちていました。 おばあさんはポケットに実を入れ、家へ帰ろうとします。 「さぁ、帰ろう。あの子が待っている」 けれど再び道路に立ったとき、老いた足は思うように動きませんでした。 ついによろめき、転んでしまいます。 ポケットから転がり落ちた大切な実。 それを拾おうとした瞬間──。 大きな車が、おばあさんの小さな体を飲み込んでいきました。 そのころ、家では小鳥がまだピィピィと鳴いていました。 やがて扉を叩く音が響きます。 「おい、ばあさん、いるのかい」 隣のおばさんリスでした。 けれど部屋の中にはおばあさんの姿はなく、ひとり、小鳥だけが鳴き続けています。 「うるさい子だねぇ。…仕方ない」 おばさんはしぶしぶ、自分の家からドングリを持ってきて口に放り込みました。 小鳥はしばらく鳴きやみましたが、すぐに吐き出し、また声をあげます。 「なんだいこの子は、もう知らないよ」 そう言い捨てておばさんは出ていきました。 おばあさんは、もう帰ってきません。 やがて鳴き声は途絶え、 小鳥は静かに、冷たくなって横たわりました。 森の奥に夜の帳が降りると、ただ木々だけがその小さな命の終わりを見守っていました。 ──物語はそこで終わりました。 照明が少しずつ明るくなり、朗読をしていた女性がマイクを握った。 「皆さま、本日はお忙しい中、弊社主催の投資セミナーにご参加いただき、ありがとうございます」 正面のスクリーンに、大きな文字が映し出された。 『未来の子どもたちのために、里山にドングリを植樹しよう』 すると、ステージのそでから、高級なスーツを着た中年の男が現れた。 拍手が響くなか、司会者が声を上げた。 「皆さま、お手元の資料をご覧ください」 資料には、植樹をするために必要な金額が書かれていた。 「高いな…」 参加者が、となり同士で小声で話している。 すると、気づいた男が、マイクを持ったままステージを降りた。 「この植樹は投資です。損はしません。ドングリの木を植える“権利”を買っていただく。何本でも構いません。それを親戚や友人に紹介すれば、その分の利益があなたに入る。これを繰り返すだけです」 男はゆっくりと会場を見渡し、声を張り上げた。 「植樹しますか?」 「植樹します」 そして一歩近づき、もう一度言った 「植樹しますか?」 「…植樹します」 男はほくそ笑みながら、小さく呟いた。 「よし。また、たくさん子どもが生まれた」
『それでは外で鬼ごっこをしましょうか』 先生からその掛け声があったのと同時に僕らは外に駆け出した。 クラスの誰もが、その声に応じていた。いつも静かなあの子や、しょっちゅう幼稚園に来ないあの静かな女の子すらも。特にあの女の子の母親はとても怖そうな人で、なぜだか記憶に残っている。 今日は氷増え鬼だった。 いつも以上に日差しが強く差していて、とても蒸していたし、中庭は皆の位置が見渡せるくらいの広さだから、先生は端からベンチに座って僕らをみていた。 じゃんけんの結果なんと、いつも静かなあの男の子がひとり、鬼になってしまった。彼は数を数えずに、周囲の子に近づいたので、皆は彼に「10かぞえるんだよ!」とこっぴどくいった。 彼は秒数を数えた後、しばらく周りをキョロキョロしていた。 皆が彼から逃げていく。 今日はいや、最近は、ずっと暑いから逃げているふりをして、日陰に隠れたり、遊具の上に身をかまえている子もいた。『僕もそれに混じった』。 しばらくして、彼はなぜだか泣いてしまった。 『あの女の子が駆け寄った』。
夏が室外機に見える 金色になった草の墓場が広がっている 白いスニーカーは晴れの日に良く似合う 「花火をやろう」と友達の家の側まで呼ばれて、川に降りて花火をした 友達は浴衣を着ていたけど、僕は何も言わなかった なんて言っていいのか分からなかったし、何か思ったかも覚えていない ただ、子供同士は綺麗という言葉が合わない まだ、あの橋の下の暗がりを覚えている 花火がついたまま二人で橋の下へ入っていく、あの場面を 夏は暑い。それだけ アイスコーヒーが美味しく感じる 恋が夏に始まっただけ。春でも冬でも良かった 恋が終わるのはどう決めるのだろうか クーラーが不憫だ
じゃわじゃわと 聞こえてくる セミの声 ラジオのなかからか 窓の外からなのか わからないくらい 頭が混乱している やはり夏の暑さの せいなのか 深夜ではない 昼のラジオは 少しだけ新鮮 透明性のある話題と にごりのない笑いと ひそかに隠される本音と 雨になるだろうか 週末のキャンプは 天気が心配だ セミの声が また 聞こえてきた ラジオのなかか 窓の外か わからないくらいの
玄関を出るときに妻が泣いて謝ってくる 僕が悪いのに僕の気持ちを考えて妻が謝る 1年以上仕事が出来なかった時、彼女は僕を生かすために莫大な貯金を使い果たした こんな僕を捨てずに、そして生かすために全身全霊で支えてくれている。今でも。 息子も僕を頼りにしている。 死ぬわけには行かない そんな事は分かっている でも、小便が漏れそうでしょうがない状態をどのくらい我慢できますか 限界と思って少し収まってまた限界が来て。 希死念慮とはそう言う感じで訪れる 常に表面張力で保たれている まさにギリギリだ 死にたい人間を生かせたとしても、その後その人間が楽しく毎日を過ごせるわけではない。またあのギリギリを味わうときが来ると怯えながら過ごしていく 社会で生活をしていると 取るに足らないことに拘り、不満を言い、笑い、泣いている。 それはその人にとって大変な出来事なのかもしれないが、ギリギリの状態でそんな風景を見ると、幸せそうに見えてしまう。 自分はその段階にいけないのだ。もっと底辺の生きるべきが死ぬべきかの「はい」「いいえ」の所で止まっている 死ぬことはいつでもできるし、そのうち死ぬ 仕事に関しても同じ事が言えると思う。 辞めることはいつでも出来る。辞める前に、視点を変えて、頑張っているなら、ダラダラやるとか。大きくしているなら、細かくしてみるなど自己改革を試してから辞めてもいいと思う。 まぁ出来るものならだけど 大抵は出来ない。自分を自分の考えを変えて試してみるなどなかなか出来ない。陽キャが陰キャに陰キャが陽キャに簡単には変化出来ない。 なぜならそれが自分だから。自分らしくしていないことに意味があるとは思えないから。そうだと思う。希死念慮もそうなのだ。自分の意志を抵抗するのは並大抵ではない。
「明日遊びに行かない?」 「ちょっと待って。『AI。明日、遊びにって大丈夫?』……うん、行こう行こう!」 「じゃあ、水族館とかどう?」 「ちょっと待って。『AI。明日遊びに行く場所、水族館はどう?』……うん、水族館いいね! 私も行きたかったんだ!」 友達は、いつもこう。 全ての判断に、AIを使う。 一度、AIを使うのをやめたらと行ったことがあるが、それさえもAIに相談し、AIの判断でいまも使い続けている。 いっそ、友達を止めてしまえばいいのじゃないかと思ったこともある。 でも、幼稚園からずっと一緒の腐れ縁だ。 心が、友達を手放す覚悟を決めさせてくれない。 時々、友達と同じように、スマホの中に入っているAIに質問すれば、正解をくれるんじゃないかと考えてしまう。 でも、悩み、苦しみ、葛藤することが人間だと私は思っている。 とても、判断を仰ぐ気なんて起きない。 「『AI。家に直帰した方がいいかな? それとも、どこかに寄り道した方がいいかな?』」 私と別れた後も、友達はスマホに話しかけていた。 友達に、人間らしい感情は残っているのか。 友達を、人間と呼んでいいのか。 私はまた悩みを一つ増やして、人間の苦しさを感じながら帰路についた。
二人乗り 生殖細胞と自分 生殖細胞が改造に改造を重ね、とうとうCPを搭載した。それが自分 生殖細胞はCPに任せて、子孫繁栄をオートマチックで進めていく。 CPは壊れるまでデータを蓄積し、最適解の選択を取り続ける。それを自分の人生だと疑わずに。 成功とは 勝ち組とは 夢とは 生殖細胞はそんなCPの事には気にもかけない。そんな気がする
昔々、ある国のある山の麓の森に一人で住んでいるお爺さんがいました 熊のようにたくましい体を持ったお爺さんは昼間、薪割りや釣りをして過ごし 夜は近くの川で焚き火をしながら空を眺めるのでした ある夜のこと お爺さんが、いつものように焚き火をしながら空を眺めていたら、後ろから虎に襲われお爺さんは亡くなってしまいました 今はもう誰もいないお爺さんの小屋には虎の顔のついた毛皮が床に敷いてありました
雑貨屋で買った、真っ白な便箋。 ぼくは、買ったそれを夜空に向けて、一分間待つ。 「できた!」 真っ白な便箋には夜空が映り、紫と黄色の鮮やかな色が浮かんでいた。 ぼくはペンを手に取り、彼女を顔を思い浮かべながら、文をしたためていく。 星の輝きが眩しい空の色は、都会では決して見ることができない。 文字を書いている間も視界に入り、思わず見とれるほどだ。 「驚いてくれるかな?」 遠くまでやって来たかいがあった。 そんな思いで、手紙を完成させる。 近くの郵便局で切手を買い、ポストへ投函。 田舎の消印が押されて、彼女に届くことだろう。 そして、数週間以上が経過する。 彼女から、返事が届く。 「……やられたなあ」 便箋に映るのは、鮮やかなオーロラ。 消印は、もはやなんて書いてあるのか、よく読めない。 国際郵便であることは確かだ。 「オーロラが、見てみたいな」 彼女からの返事を読みながら、次はどの空を映そうか考える。 彼女を驚かせることのできる、鮮やかな空はどこにあるのか考える。 「富士山でも登ろうかな? それとも、ギリシャやエジプトの歴史ある空とか?」 未だ見たことのない空を思い浮かべながら、ぼくは便箋を買うために雑貨屋へと向かった。
『これ以上、誹謗中傷はやめてください』 とある芸能人のSNSに投稿された一文。 さすがに心が痛む……わけない。 イケメンの顔。 ブランド物の服やバッグ。 そして豪邸。 顔にも金にも恵まれたお前たちは、誹謗中傷されてもしょうがないだろ。 いわゆる、有名税ってやつだ。 「恵まれてるくせに、ちょっとやそっとで被害者ぶってんじゃねえよ!」 開示請求するならすればいい。 どうせこっちは、無敵の人。 何も取られる物はないし、下がって困る名誉もない。 『よしよししてる信者きめええええええ』 苛立ちを返信して、一度スマホから目を離す。 腹が減ったのでカップ麺を探すが、備蓄なし。 「しゃーねえ。買いに行くか」 財布を持って、コンビニに出かける。 玄関の扉を開けば、今日は快晴。 外には、楽しそうな親子連れが歩いている。 俺に見せつけるように。 「こいつら全員、車に引かれて死ねばいいのに」 独り言をこぼして、イライラとしながら曲がり角を曲がる。 次の瞬間、激しいクラクション音が鳴り、俺の体が吹き飛ばされた。 痛む全身と霞む司会で見たのは、高そうな自動車と、後部座席に乗るイケメンの姿だった。 「あ…‥‥て……」 文句を言おうにも、言葉が出てこない。 自動車が止まり、中から慌てた顔の運転手が飛び出してくる。 そして、俺の顔にスマホを向ける。 『判定完了。無名税の対象者です』 「あ、なんだよかった」 スマホから発せられた音声を聞くなり、運転手はほっとした顔になり、自動車の中へと戻っていった。 「お……待……」 俺の声は届かない。 「安心してください。引いたの、無名税の人でした。事件にはなりません」 「助かったー。でも、今度から気を付けてよ? 引いたのが一般人なら、俺の人生積んでたから。マジで」 「大変失礼いたしました」 運転手が自動車の中に戻って、自動車が動き始める。 エンジン音が徐々に近づいてくる。 有名税の人間は、誹謗中傷されても仕方ない。 ならば、誹謗中傷を行う無敵の人も、無名税として法が保護しなくても仕方ない。 そんなくそったれな法律が可決したのが、運の尽き。 「ふざけ……」 自動車は、道端の段差を乗り上げて進むように、俺の体を踏みつぶしてどこかへと言ってしまった。 通行人は、誰も近づかない。 ただ、空腹を解消しようとするカラスだけが、俺の周りに集まってきた。
診察室で、男がうつむいていた。 「先生、私は……」 「あなた、最近オチばかり考えてるでしょ」 「はい」 「何だっけ? 蛇口から、漢字の水がたくさん流れて、排水溝が詰まった? これの何が面白いの」 「はぁ……」 「これ、思い付いたとき、ニヤけたでしょ」 「ダメですか?」 「重症だね。少し頭を休めなさい」 クリニックを出ると、男は幹線道路沿いを歩き、自宅へ向かった。 すると、サイレンを鳴らしながら、パトカーが通りすぎた。 「そこの車、左に寄せて止まりなさい」 道路脇には、パトランプから落ちた『あと二人』の赤い文字が転がっている。 一瞬、足を止めた。 「……いいじゃん」 男は、ニヤけ顔でポケットからネタ帳を出した。
昨日、仕事から家に帰ると怒りが収まらず息もつけないほど愚痴を垂れ流していた 躁が来ている。かなり高い ここから降りたらかなり勢いがついて下までいきそうだ 酒を飲みながらテーブルに置いてあったマジックで身体に絵を描いていく 手、爪、肩、胸、乳首 夜中に目が覚めて怒りが嘘のように消えていた。ただ不安が止まらず妻を叩き起こして苦しみを吐露する。朝まで 二人とも寝ていないし、二人とも仕事だ。僕はフラフラで家を出る、いつものように息子を愛でて。昨日パパが早く帰ってきたと思って一緒にゲームしている途中で機嫌が悪くなって結局息子一人でゲームをしていた 息子と遊んでやりたかったのに最悪だ 朦朧とする 妻は仕事なんか休んでいいと言ってくれる これは長年の経験から言っていて、このまま無理をすると長期休まないと復帰できなくなるためだ。収入が無くなるのだ それなら少ない方がまだ良い でも体調が悪い時に限って休めない 休むのも辛いのだ 残り5%のバッテリーで一日過ごす感じに似ている 無駄遣いはせず、必要最低限にする それで何とか持たせる そんな感じだ 皆思うと思う。買い換えたほうが良いと
新しく出来た彼女は関西と関東の両方の特性を併せ持つ。 怒ると怖いらしい。 僕は彼女の欲しいものをなるべく用意する。 おかん怖いよ。 私あなたのママじゃないの🎵 練馬の百済は何故か大阪の枚方に生まれなかった。 ボーンスリッピー。 帰り際ほんまやなー、と言われる。 世界の終わりになっても女の子と遊んでいる。 あるいは世界はそれで安定するのかもしれない。 元カノの名字が変わる。 女の子は強い。 僕がアシストしたのかはわからないが幸せになって欲しい。 これをイマカノに送るとこれは私に向けての小説じゃないの?と嫉妬されてしまう。 僕は慌てて弁明する。 女の子は上書き保存、男の子は名前をつけて保存。 魔術と呪術。 真ん中をとるのは秘術らしい。 恋をすると寿命が伸びる。 今日は何か気分がいい。 秘術。 理論と思い込みの中間。 物理学の本を読まないと。 教会に来た女の子はアルゴリズムと呟いていた。 ヒントだ。 料理は出来る。 自転車に乗りながら歌も歌える。 つまらないかも知れないが小説も書いている。 畑仕事も自分を治すためしている。 明日も日が昇る。 世界のアルゴリズムは雑多に動くがここ3000年ほど複雑化しているので精一杯やろう。 そういえば秘術の話だ。 萌えからそして燃えから少し距離を取っていたがまた動き出したみたいだ。 骨まで燃やし尽くせ。 灰は灰に塵は塵に。 理論と根性との中庸。 明日から少し長雨が降る。 雨の中犬は愛を歌い地に満ちる。
夏の暑い日でも 長袖でいるのは なにも自分を 奇妙に見せることで 私ってば特別な存在なのよ と周囲に言ってきかせているのでは もちろんなくってね そんなふうに 人を刺激するようなこと 私には とてもとても 守ってもらってるの そんな心持ちにさせてくれるの 袖でおおわれているとね 繊細で 臆病で 頼りなくて 脆い私には だから必要なの
「さあ。今日からここが、君の家だ」 引きずり戻された。 大嫌いな実家のあった場所へと。 両親が死んで、空き家になった家の維持は、子供であるぼくの役目らしい。 本当、くそみたいな法律だ。 「取り壊していいんですよね?」 「もちろん。更地にして、不動産会社にでも売っぱらえば、君の義務はなくなる」 「売れると思います?」 「売れたとして、二束三文だろうねえ」 他人事のように笑いながら、担当者とやらは帰っていった。 「最悪だ」 見慣れた玄関に鞄を置いて、家の中へと入る。 長い間人間が住んでいなかったせいだろう。 歩くだけで埃が舞って、どことなくかび臭い匂いがした。 ここは、両親の理想郷。 結婚生活を始めるために建てられた、夢の新居。 尤も、ぼくが物心ついた頃には両親の中は険悪で、ぼくから見れば絶望郷でしかない。 「死んでまで迷惑かけやがってよ」 冷蔵庫の中には、父が好きだった缶ビールが入っている。 クローゼットの中には、母が好きだった大量の服がかけられている。 「捨てるとこからか」 コンビニでゴミ袋を買って来て、家にある物を放り込んでいく。 ふと懐かしさを感じる瞬間はあるが、捨てることに躊躇いはなかった。 実家を捨てて上京したというのに、また引きずり戻されたのだ。 懐かしさよりも怒りの方が強かった。 「仕事、どうすっかなあ」 強制的に実家に戻らされるとなれば、今の仕事を続けることもできなかった。 暗に退職を匂わされ、結局やめてしまった。 結婚を考えていた恋人も、仕事をやめたと話してから、メッセージの反応が鈍くなった。 実に最後まで、迷惑をかけてくれる両親だ。 「うーん。この家ですかー。うーん」 最低限の片づけを終えてから、不動産の人間を呼んだ。 不動産の人間は、家の前に来たときからがっかりとした顔をしており、頭をぼりぼりとかいていた。 「ここはですねー。なんというか、駅からも大分離れてますし。建物も、なんというか」 「売れないってことですか?」 「んー。正直、この土地を欲しいと思う方は、なかなか」 「ですよね」 不動産の人間が帰った後、がらんとして家の中で、俺は一人天井を見上げた。 天井のシミは、子供の頃から増えていない気がして、天井に手を伸ばしていた子供の頃の自分を思い出した。 この家の中が、世界の全てだった時代。 就職して、家を出て、世界の広さを知った。 ここが、自分の住むべき場所だと思った。 でも、結局ぼくは、この家に囚われていたままだったらしい。 デリバリーなんてできないから、スーパーに買い出しに行く。 懐かしい顔とすれ違ったから挨拶した後、久々にフライパンを振る。 ジュウジュウと景気のいい音が響き、母の味とは無縁の味気ない食事ができた。 「いただきます」 ウインナーを頬張りながら、改めて誓う。 どんな手を使ってでも、両親の夢の新居をなくしてやろうと。 ぼくがぼくの新居を手にするには、それしかないのだから。 食べ終えた食器を洗い場において、ぼくはスマホを取り出し、周辺の土地相場を調べるところから始めた。
香り立つ桃に 頬をよせ その産毛に 撫でられてやる お返しに 瞳を近づけ 自分のまつ毛で 桃を撫でてやる 夏の暑さはあと どれくらいであるのか すぎゆくことの安心と すぎた日のなつかしさと 秋の涼しさはあと どれくらいであるのか 待ちわびる微かなこころと いくらかのさびしさと
今日はデートに行った。 午後から雨が降る予報だが私晴れ女だから多分大丈夫!と言った彼女。 雨男の僕と間反対。 練馬のアニメの町でデートする。 あまり行かない店に入り彼女を奥の席に座らせたどたどしく注文する。 僕はパスタを頼む。 パスタは啜っちゃいけないんだよね、何かめんどくさいな、などとテーブルマナーなどについて話す。 ブレインフォグが起こっているのか言葉がうまく出なかったりする。 煙草の吸いすぎだろうか。 オタクな話などもちらほらするが周りが割と静かなので聞かれているかも知れない(自意識過剰) 君が何をしたいかなんだ、と人に言われたことを話すと何がしたいかより誰としたいかなんじゃない?と彼女は言う。 ヒントだ。 哲学的な統合失調症のYouTuberの人なんかの話をして考えすぎもよくないよね、運動して栄養摂らなきゃな、などと話す。 彼女は僕の顔をよく見る。 貧乏だから哲学をして友達がいなくなり孤独になりお金がかからない生活をしていたからかオタク的な会話が出来なくなっている気がする。 昼食をとって1時間半ほど店で話し外に出る。 アニメのミュージアムでも行こうか、と提案し1kmほど離れたミュージアムに行く。 煙草が吸いたくなりごめん、ちょっと吸ってくる、と待ち合わせして離れる。 再び合流。 もしかしたら減点されているかも知れない。 ミュージアムに入り彼女の父親が作品の玩具を持っていた、などと話したり友達がこの作品はとめられてあまり観られなかった、などと話される。 アニメの原画などを見てあの漫画家の先生はこういう西洋画家の影響を受けているんじゃないかしら?などと言われなるほどそういう見方もあるのか、と感心する。 彼女は大学の文学部で美術史をやっていたらしい。 年下の格上女子に優しく説明され(高卒の僕は引き出しが少ない)僕も何か文学的表現を頭でひねり出そうとするが思い付かない。 駅前でバスが来てあ、急がなきゃ、じゃあまたね、と駆け出す彼女を見送り雨が降る前に自転車で家に帰る。 やはり女の子は精神年齢が高い。 夜、雨が振りだす。 長雨に僕は今日もらったヒントで世界を構築する。 結局オタクデートになったが何だか地元デートの方が気が抜けていていい感じかも知れない。 練馬の犬は今日も犬小屋で雨を凌ぐ。
新落語 誰もが知っている 「とあるの話」 今宵は、とある このような 言葉があるのは それは、誰もが知っている 特定する 文字を変更 とある から とがある それからどうした とある所に とびら これはなに そこに とびらが あった それだけの話 こんなの どうでしょう 書けるもんなら 書いてくれ
蝶を追う彼の顔を、私は今まで見たことがなかった。その横顔には、何かに取り憑かれた者だけが持つ、ひどく無邪気な熱があった。私はそれを見て、胸の奥をきゅうと掴まれたような心地がした。嗚呼、私にはない。彼をあのように夢中にさせ、あのように一心に追い縋らせるものが、私には何一つないのだ。そう思った途端、私は自分の背中に、見えない羽根が生えたような気がした。地面に縛りつけられていることが、急に堪らなく疎ましくなった。もしこの足が鳥のそれであったなら。風を蹴って空へ舞い上がり、彼の背中へ手を伸ばして、その肩を掴むことが出来たなら。けれども現実の私は、何の取り柄もない二本の足で土を踏むばかりである。彼は蝶を追って、どんどん遠くへ行ってしまう。私の鈍い足では、とても追いつけない。とうとう彼は、大声で呼ばなければその声さえ届かぬほどのところまで行ってしまった。それでも私は、彼を呼ばなかった。呼べば、彼は振り返るかもしれない。けれど、振り返ったところで、その眼差しが私に向けられるとは限らない。私では、駄目なのだ。あの蝶には脳がない。否、少なくとも私には、そう思えた。蝶は彼を慕いもしなければ、彼の姿を美しいとも思わない。ただ風に吹かれ、花を渡り、彼に追われているだけだ。だから彼は、あの蝶を追うのだ。何も彼に返さないものだからこそ、彼はあれほどまでに追い求めることが出来るのだろう。私はそのことに気づいてしまった。そして、気づいてしまった以上、もう彼の背中を追うことは出来なかった。私は踵を返した。まるで、これが彼と会う最後の日であるかのような心持ちで、一人、家へ帰った。背中には羽根が生えたままだった。けれど、それで飛んでいく勇気だけは、とうに失くしていた。 家へ帰ると、間もなくして玄関の戸が乱暴に開いた。振り返れば、彼が立っていた。肩を上下させ、息を弾ませている。頬にはまだ赤みが残り、髪も少しばかり乱れていた。よほど急いで来たのだろう。 「どうして先に帰ってしまったの」 そう言って、彼は私を見た。その瞳は、確かに私を追いかけていた。私は、しばらく何も言えなかった。先刻まで私が追いかけていたのは、彼だった。彼が追いかけていたのは、蝶だった。そして私は、その蝶に自分が敵わないのだと思っていた。けれど、違った。彼が追っていたのは蝶だけではなかったのだ。私が背を向けた途端、彼は蝶を置いて、私を追って来た。その事実が、妙に可笑しかった。私はふいに、腹の底から笑いが込み上げてくるのを感じた。 「あはは……」 堪えようとしたが、駄目だった。 「あはははは……!」 とうとう私は腹を抱えて笑い出した。彼はきょとんとしている。当然だろう。何がそんなに可笑しいのか、彼には分からない。私だって、ついさっきまでは分からなかった。私は彼を夢中にさせるものなど、自分には何もないと思っていた。あの蝶のように、何も知らず、何も求めず、ただ彼の前をひらひらと飛ぶことさえ、私には出来ないと思っていた。けれど、そうではなかった。彼をあのように夢中にさせ、あのように一心に追い縋らせるものは、蝶ではなかった。私だった。否。私そのものですらない。私が彼を諦めた、その心だったのだ! 「どうして笑うの」 彼が、不思議そうに訊いた。私はまだ笑っていた。可笑しくて、可笑しくて仕方がなかった。あれほど欲しかったものが、最初から私の手の中にあったのだ。私は彼に追いつきたかった。けれど彼は、私が追うのをやめた途端、こちらへ駆けて来た。なんという皮肉だろう。なんという間抜けな話だろう。私は涙まで滲ませながら、彼を見た。 「何でもない」 そう言うと、また笑いが込み上げた。彼はますます分からないという顔をした。その顔を見て、私はとうとう声を上げて笑った。今度こそ、腹の底から。私には羽根など要らなかったのだ。飛んで彼の背中を追う必要もなかった。ただ、地面に立ったまま、彼を追うことをやめればよかった。そうすれば彼のほうから、ちゃんと私のところへ帰って来る。そのことが、私は可笑しくて仕方がなかった。
夕凪が 心地よく感じられたら 秋は すぐそこ そう思っても 事はうまく運ばない 秋は まだまだ ちょっと気配がと思って いなくなって ふたたび来たと思って また帰っていって おっとり? のんびり? きまぐれ? ときに怖がり? 夕凪を 心地よく感じるのは 秋はねこだから かもしれない
マスターは帰ってきた。短く、 「どうだった?」 と言った。 「どうって、別に。誰も来なかったし」 「ま、常連たちは、オレが夏のあいだ日本にいないの知ってるからな。そりゃ、そうなるわな」 なんだか、素直にマスターの顔を見れない。 「どうした? なんか不満か? 平和だったろ?」 「でも、まあ、そうだけど」 言って、ポケットから店のカギを取り出し、マスターに渡した。 渡すとき、自然と言葉が出た。 「ひと夏くらいじゃ、さ」 マスターは、すこしきょとんとした表情を見せた。 それから考えるように、受け取った手のなかのカギを見つめ、でも突然、僕を見て、にやりとした。 黒く焼けた顔に、白い歯が、ヘンに眩しい。 多少、構えた僕に、マスターは、あっけなかった。 「そう言うな。コーラでも飲むか?」 カウンターの席に座り、マスターの背中を眺める。 振り向いたマスターが、コーラを置いた手を、そのまま僕の頭に置き、軽くなでた。 くすぐったくなって、僕は、下を向くしかなくなった。 「また、やってみるか? 来年」 視界の外から、マスターの声が耳に飛び込む。 僕は、ほんの少しだけ考えて、顔を上げ、でも、言葉にはせず、ただ、うなずいた。 涼やかな空気に、すこしだけ、日が短くなった気がした。 窓の外には、あの日の、すてき、の欠片は、姿も声もないけれど、波の音が、いまは、不思議と澄んでいる。
蝉が泣いている 彼等は他人なんか構ってられない 自分の人生(蝉生)の短さを感じているから 毎日身体のどこかが朽ちていく パズルのピースが一つまた一つ取れていくように サルスベリの花は何か素敵だ 今日1日を振り返って、そつなくこなしたが、辛い 見た目が素敵な人は心が素敵だ 死神が後ろにいる気がする また相手をするとなると溜息が出てしまう 彼は僕を殺しはしない 死なせようとするだけだ 蝉が泣いている 最近、妹なのかと思う時がある 母親に会いたいとは思わない 父親に似た人が職場に来た どうしてか、そんな気なんかサラサラないのに、応援してしまう もう一人の僕が来ている 学校とは特別な場所だ 息子がフエラムネを使ってリンクの真似をしていた そろそろJAPANからNIPPONに国名を変えてもいいと思う 太陽の寿命は後50億年程らしい 小さな太陽ほど長く生きて大きな太陽程早く死ぬ それは使えるエネルギーが同じだけしかないように感じる ゆっくり歩いていくかダッシュするか 遠くに行くなら歩いていく 座りながら貧乏ゆすりをしている人そのまま前へ走り去ってしまいそうだ なかなか筋肉が冷めない 明日にでも動けなくなるんじゃないかとビクビクする もし、そうなれば今の僕は居なくなってもう一人の方の彼がここに座る 彼はどのくらい苦しめば許してもらえるのだろうか 目が乾く 子供が出来たら厳しく育ててはいけない 世界が厳しい所だと思ってしまうからだ 家族は世界で唯一の安全地帯でなくてはならない なぜならそんな世界はハズレだからだ 昔のラブソングが流れている 愛してるなんてそんな大げさなことではない 至極当たり前のことだ どこかでストーカーと言うフレーズを聞いた気がする 今思えばストーカーも唯一の安全地帯を探しているのかもしれない。家庭で持てない子供はどこかに求めるしかない 寝ても覚めても厳しかったら気が狂うからだ。 優れた漫才師は自分達の引き際を分かるという 自分が優れたとは思わないが引き際を察して終わりにしようとしているのではないかと思いたくなる時がある 欲しいものは全て手に入れた 本当にもう何もない 沢山の努力もしてきた 結果も出ている 自分以外も認めている 悲しませないために生きている 皆そうだろうが モバイルフォン Mobileと言う英語が不思議で原語を調べてみたが腑に落ちないMOVEの辺りにいる言葉らしいので、その辺は少し納得はするが可能性があるとなるとよく分からない 他に仲間はいないものか 調べたらFlexibleがあった。これは分かる bilisと言うラテン語は僕の人生から遠くにある。相性が悪いと思う ガンダム世代ではないし。 彼女が欲しいと言うが彼女が出来たらどうしたいのかの具体性がない。 本当に彼女が必要な人は既に行動している。なぜなら必要だから。つまり、必要ではないということだ 「年を取ると説教臭くなるね」というオジサンをよく見るが、よく分かる 黙って見守って危ない時や助けを求められたらフォローするが良いと思う つまり親父は黙ってろと言うこと だから大人は静かなんだと思う 女性に抱かれるならイケメンと非イケメンだったらどっち?と聞かなくても答えは出ている さっきも言ったようにイケメンは心から 決して無駄話をダラダラと話してはいけない
夏は嫌いだ。 変に感傷的になってしまう。 これも、夏は高エネルギーで不安定な状態だからだ。降り注ぐ太陽光に地球の運動エネルギーは増大する。アスファルトを素足で踏んでみろ。一瞬で焦げ焦げになる。 青の絵の具を直に塗り広げたような夏空を見ていると、見上げているはずなのにどこか覗き込んでいるかのような感覚になる。それは海でもあり川でもあり宇宙でもありそうだ。でもどれも違う気がして、やっぱり空なんだと思い知る。 向こうには太陽の光を反射して白く煌々とする雲が縦に伸びている。 何度も見て来た夏空だ。なのに、新しい本の一頁を捲るに近い疼きが目の奥にある。これまでの夏空が一枚の絵画になる。それはたった一枚だけではなく、何枚も何枚も連なり重なり私の網膜に浮かび上がる。どれも似たような絵なのに、けれどどれも決して同じではない。違いを知ろうと見比べるほどにやはりどれも同じものであることに気づく。 橙色になりつつある太陽が西の窓から差し込み、ガラスに反射して私に飛び込む。青と白と橙を薄く混ぜ合わせたような夕空に、今日の太陽が静かにゆっくりと姿を隠していく。 私は胸に込み上げて来たものに息苦しさを覚えながら、まだ東の空に残る絵の具のような青色を見ずにはいられなかった。
新落語 誰もが知っている 「ピックの話」 今宵は、豚をようい このような 言葉があるのは それは、誰もが知っている 料亭 文字を書く 豚を よういしろ はやくだぞ それからどうした ピックは豚 選ぶもピック そのあとどうした よーいドンならぬよーいトン こんなの どうでしょう 書けるもんなら 書いてくれ
新落語 誰もが知っている 「シングの話」 今宵は、ソング このような 言葉があるのは それは、 誰もが知っている 練りに練る 文字を変更 ソング から シング それからどうした 寝具はねる時に役立ちます しかしながら ねる時に立つことは ありません 横になるのてす。 こんなの どうでしょう 書けるもんなら 書いてくれ
例年よりはやい夏の足の進みに、僕の気持ちは追いついてこなかった。 でも、そんな僕のことなんて、なんの考慮にも入れてもらえない。 二学期はやって来る。 僕にも、そして、キイのもとにも。 「今日で最後?」 「そうだね」 「さよならできるね、この無責任な空間とも」 「強がるなよ」 キイは、ただ、窓の外を見てるだけだった。 犬も女性も見えない、窓の外を。 いよいよ、二学期が来る。 僕にも、そして、キイのもとにも。二学期は、勝手に。
新落語 誰もが知っている 「画王の話」 今宵は、ガォー このような 言葉があるのは それは、誰もが知っている 怪獣 文字を変更 ガォー から 画廊 それからどうした 絵が人気ならば画王と 言うことになる これはなに 心の中 その時 ガォーと言うかもしれません 私はそんなこと しりません こんなの どうでしょう 書けるもんなら 書いてくれ
新落語 誰もが知っている 「メジロの話」 今宵は、メジロ このような 言葉があるのは それは、誰もが知っている メジロは野鳥 生きてます 文字を変更 メジロ から メジロ それからどうした 死んても 生きていても メジロ あしからず こんなの どうでしょう 書けるもんなら 書いてくれ
徐々にではあるけれど、店内の掃除にも慣れてきた。 自分の部屋のこと、全部、母親に頼りきってる僕としては、驚くべきこと。 もちろんそこには、おおきな存在として、キイの姿がある。 都合よく使ってしまって、すまないとの思いも。 僕が店を開けたとき、キイは、来てくれるようになった。 けど、来るのはキイだけで、ほかには誰も。 風と砂と、太陽の光をのぞいては。 金色の毛が眩しいあの犬も、青い服の女性にしても、あのときかぎり姿を見せない。 すてき、を散りばめたあの光景に、出会うことは、もうないのかも。 苦いものが、口のなかを走る。 そんな思いの僕とちがって、キイは笑顔だ。 「楽しいの?」 「え? 楽しくないの?」 不思議だ。 「だって、誰も来ないからさ」 「だから何?」 わからない、キイの言ってること、すこしも。 「もっと、この状況を楽しんだほうがいいよ」 「誰も来ないことを?」 「じゃなくてさ。わたしたち高校生なんだよ。高校生らしく、してれば」 「無責任すぎるよ」 「無責任? それでいいんじゃない? ちがう?」 釈然としないものもある。 でも、すこし。 「そんな感じでさ」 言って、キイが、グラスに入ったコーラをストローで勢いよく吸い上げる。 最後にぞぞっ、と短く響き、それが、夏の終わりの合図のように、僕には聞こえた。 重くあった冴えのないおなかの痛みは、知らない間に、消えていた。