君の残り香

 女の子は不思議だ。  いい香りがする。    あの子が部屋にいた。  それだけで、ぼくの部屋がどんな芳香剤にも負けないくらいのいい香りに変わってしまう。  女の子はファンタジーなんだ、で終わらせてもいいんだけど、あいにくぼくは科学が好きだ。  香りの正体を調べてしまった。    女の子からは、ラクトンというピーチやココナッツのような甘い香りのする成分が出ているらしい。  ちなみに、男にはないということだ。    すごく納得した。  この部屋に香る甘い香りは、女の子の発するラクトンの香りなんだ。  気持ち悪がられるかもしれないけど、ぼくは部屋に充満するあの子の残り香を吸った。  あの子を近くに感じるために。    でも最近、あの子の香りが変わってしまった気がしている。  昔ほどいい香りじゃなくなったし、言葉を選ばずに言うと少し臭くなってきた。    ラクトンの量は、十代後半をピークに下がるらしいから、そのせいかもしれない。  でも、例え香りが変わっても、ぼくはあの子を愛すると決めている。  問題はない。    ぼくは薄まったあの子の香りを部屋に補充すべく、押し入れからあの子を引っ張り出した。    ああ、また漏らしてる。  こっちも変えなきゃ。

髪噛むに澹淡

エロ本を買いに行ったら不時着した。 どこかも分からぬ砂漠のど真ん中、太陽がただただ元気そう。俺は今にも干からびそう。 影も見つからない砂丘の真ん中で口に入る砂に水分を奪われる。風は吹いているがなんの香りも運ばない。海は遠そう。てか、そもそもこの星に海はあるのだろうか。もうずっと砂だった気がする。 そうボーッとしていると、セスナ機が近づいてくる。救護車か。あ、車じゃないか。 「全然大丈夫じゃないか!」 そう言われながら機内へ入る。 「こんなところで何をしてるんだ!」 「いや、あの…」 「そんなこと聞くなや!この土地に来る理由なんて一つ、エロ本のためだけやろ!」 お見通しならば仕方ない。 「それもそうか!でも自分もアホやな!こんななんもない砂漠の真ん中に落ちるなんて!」 「ま、それは、はい…」 「なんもないお陰で見つけやすいんやけどな!」 「はぁ…」 「で、自分はどこからきたんや!」 「えーっと…」 えっと、どこだっけ? 思い出せない。 砂に記憶まで持ってかれたか? んなバカな!だって俺は…俺は…誰だっけ? 「おいおいこの場において恥ずかしくなって言えないってか!しょーがないな!口が割れないっていうなら、あのバァさんのところへいくしかない!」 そう言って飛行機は旋回する。砂のなかに町が見える。オアシスをぐるっと一周、張り付くようにある大きくはない町。特産品はとりわけないが、町と町の中継地として重要な水源のある町。飛行機の発達でその役目を終えて以降は、町の風紀によって追い出されたエログロを一挙に担うようになった町。それ故に、未だに生き残っている町。 空港に着陸すると、俺は寂れた美容院に連れて行かれた。 「いらっしゃい!あら、アンタたち!ひさしぶりね!」 「どうもバァさん!」 「ひさしぶり、バァさん!」 にしてもこの町の人はすこぶる元気だな。 「さぁ、髪型はどうするかね!」 「いや、今日は別に頼みたいことがあるんだよ!」 そう言って前に出される。 「こいつの生まれ故郷が知りたい!」 「よろしく頼みたい!」 「あぁ!なんだいそんなことかい!」 そう言ってバァさんは笑いながらこちらへ来る。 「報酬は弾むかい?」 「あぁ!この子を送り届けたらな!」 「ほほう!」 いつのまにか、自分が金のやり取りの対象になってるな。 「では、失礼するぞ!」 「はぃ…いってぇ!!!なにするんだ!」 と言って振り向くと、バァさんは無理やり抜き取った俺の髪の毛を噛んでいた。 ただ唖然。 周りは慣れっことばかりに結果に集中してる。 仕方なく、空気を読んで倣う。 「ふむ…ふむ!」 「どう?解析は済んだ?」 「どう?どう?」 「ふむ…わかったぞ!この御仁、この星の者ではない!」 「はい…?」と口に出たのは俺だ。 「ふむ…ついでに言うと、今の時代の者でもない!」 「はい…?」とまた口に出す。 これには兄弟も口をあんぐり。 「あの…どう言うことでしょうか?」 「写真!」 「…は!はいさ!」 「…ふむ…オマエさんが乗ってたもの、これは棺じゃ。」 「棺…?」 「そうじゃ。オマエは400年前に死んでいたはずじゃ。ただ親戚のうちの誰かが、オマエの意識が戻るのを願って液体窒素に閉じ込めて、さらに飛ばしたんじゃな。それが今回、運良く砂漠の真ん中に刺さったわけじゃ!」 「はぁ…?」 そんなバカな話があるかよ。 「試しに、図書館に行ってみるが良い!」 言われてみるがままに図書館へ。そこにはそれはそれは多くのエロ本が。人々は思い思いの本を取って個室へと急いでいる。 「いつ見ても壮観だな!ここは!」 「さすが!当代一の図書館だな!」 絶対に他にもあるだろう…と思いつつ、見て回る。ふと、ある本が目に留まる。知ってる女だ。 「やはり、400年前の本を取ったな!」 「聴くぞ、表紙ってのはその当代一の美人がなるものだと!」 「やはり、オマエも当時の顔に惹かれたわけだ…ん?」 「どうした兄者?…あれ…?」 写っていたのは俺…ではなく妹だ。よく似ていた。似ていた上で、俺は妹の出ている雑誌を買い漁り、そこに載っている妹の服を着て、時には化粧もして、外に出歩いた。バレるか、バレないか、そんなゲームだったが、ある日俺は妹のストーカーに刺された。いや、本来なら死ぬところを、オレが男だったために死に切らなかったのだ。 ストーカーがどうなったのか知らない。ただ、俺は死んでもおかしくなかった。その俺を生かし、また液体窒素に入れたのは妹だろう。 俺はどうだったのだろう? そのあと個室に入って迸らせた熱は、生きている証拠だ。砂漠でなくても、兄は孤独だ。ただ、お前にあえて嬉しいよ。きっと、好きだった。ずっと、言えなくてごめんね。

AM 6:37

誰かがいる場所では眠れない。大部屋も漫画喫茶も完全アウト、新幹線内でも無睡の私は自他共に認めたくは無いが神経質だ。そんな私の睡眠事情が何故か解決の兆しを見せている。 「おはよ〜」 「…おはよ」 「よく眠ってたね」 「……そうなんだ」 「私より先に寝てたよ。疲れてたんかね」 「かもしれない…」 「てかあんたって人の気配あったら眠れないんじゃなかったっけ」 そう。私は他人の気配がある所では決して眠れなかった筈。昨夜は友人の部屋にずっといたんだから眠れるわけがなかった。それが何故いま一緒に朝チュンしてるんだ。いやちょっと待て私よ朝チュンには語弊しかないぞ。 「あんたと朝チュンしたの初めてだわ」 「お前もか」 「は?何が?」 「いやなんでもない」 何処ぞのローマ軍人のような言い方でツッコんでしまった。

Are you gonna matter we had to go to grab a battery be dead to make a bit of a dumb

I had to go to bed every day to look at that but we don’t do you wanna go but I have a double. that’s good OK babe OK babe I had to repeat that and the guy with the camera menagerie with that I’m OK been a bit of a doctor I got my brother will be dark I have to go to David J McDonald Memorial regional dad we’re about to be dead by the ductwork MLB that at the cabin gonna be at her dads that would be a double with that bag that I’m not gonna be able to be there with dad had to go back in a bit of a dead rabbit at the back available double-decker that back up in a bit about that and Gabby are going to be ridiculous that my battery that’s in the bed with that back I believe we did with that work better with that and I gather gonna be able to definitely do it that way I can remember that’s what I meant about that I will be done with that I need to go to Cabo battle between dead River but after that will be done with that I will be there but that’s what I’m going to be buried my dad had to go to dead River to be that man that will be dead and grab a cup Adam Bronken motor vehicle guy by the baby daddy baby daddy baby that’s why I got better but that’s what I’ve been a bit that I had to go to Cabo but I get my battery Debbie that will be that big of a birthday with that work every day at 20 to be that I will be there adopt undercover going to go down to Devens after we get back but will be dead rabbit bit dad’s back about to be dead at the cabin gonna be able to visit with dad to wake up every day that I never know how we do that at the cabin gonna be a bit dad without America better be dead dead redemption Meineke baby without Ruby that that had to go get a bit of a WWB did you break up every bit of her death back every day with dad and a good ability to have it without the wreck everybody will be dead really dead smack every day but that would be dead animal Gabi Bara debit OK bye it’s good to go brother would be that I think I got about that black Adam

ぼんやりとした復讐

 ブタ  うつむくと、服を剥ぎ取られたお腹に、緑色のクレヨンで書かれた落書きが見えた。指でこすっても落ちなかった。おもちゃに飽きた子どもたちの笑い声が遠ざかっていった。  排水溝に捨てられた泥まみれのシャツを掴み、それで胸元を隠しながらなるべく細い道を通ってアパートまで帰った。親の帰る前に頭からシャワーを浴びながら、ぽっこりしたお腹を必死にこする。手に巻き付けたボディタオルで、血が出るほど。口に流れ込む水はしょっぱかった。  そこで目が覚めた。もう昼休みになっていた。まだ冷房が入らない最悪のタイミングのうたた寝で、制服のシャツが汗だくだった。  足を組みなおすと、鞄からコンパクトを取り出し、顔のパーツを素早く確認する。ばっちり上げたまつ毛も頬のチークも問題なし。シャツの裾をスカートの中に入れなおし、少したるませて調整する。  コンビニの袋からサンドイッチとミルクティーのパックを取り出して口を開いたが、食欲がすっかりなくなってしまっていた。手首の輪ゴムをはじく。 「今の感じからは想像できないね」 「あの頃はぽっちゃりしてたんだと思う」  茶色に綺麗に染めた髪の毛を耳にかける。正直あまりちゃんと覚えていなかった。十数年前の出来事、思い出すこともなかった記憶が、今更夢に出てくるとは。  スクールカウンセラーの先生が、ペン先を撫でながらこちらの発言を待っていた。手元に広げたノートには文字がびっしり書き込まれているが、書いているところを見たことはなかった。  カウンセラールームを見渡す。心理に関する雑多な本が詰め込まれた本棚には、所々にカラフルなぬいぐるみが鎮座している。昔懐かしいパッケージのクレヨンも。 「あの辺の人形も、カウンセリングに使うんですか?」 「人によってはね」 「へぇ、やってみたい」 「いいよ。今度試す?」  生徒の言うことに決して反論しないマニュアルでもあるのだろうか。その余裕さに苛立つ。 「もういいですか」 「わかった。じゃあ来週も同じ時間に来れる?」  同意するしかなかった。来たくて来てるわけじゃない。  教室に戻ると、段ボールがあふれる文化祭前の様子が広がっていた。黙ってはさみを取り出し、引き続き作業を続ける。今年の教室企画も縁日だ。小さなゲームを取りそろえた、よくあるやつ。あまり考えずに作業に没頭すればクラスに貢献できるというのは悪い気分ではない。  射的の的にみんな各々が好きな動物たちを作っている。最近話題のクマがボスだ。輪ゴム鉄砲で倒せるわけの無い大きさの段ボールの塊が奥に控えて、手前は小動物たちが並ぶ。  それにしたって、ペンギンはないだろ。せめてもう少しコンセプトを決めた方がいいの。例えば害獣駆除とか。クマがいるならイノシシとか、シカとか。  ブタの的はどこにもなかった。 「特別活動が認められているクラスも、帰宅時間になりました。速やかに校舎から出ましょう」  結局、あまり作業は進まなかった。自分の心がくだらない奴のくだらない記憶に支配されているということが、一番不愉快だった。 「よくない」  周りが一瞬こちらを見るが、素早く視線を外していく。声に出てしまった。手首の輪ゴムをはじく。落ち着け、こういうときにやらかすのだ。気持ちがどんどん広がっていく、まずは六秒時間を。 「何がよくないの」  うるさい奴が来てしまった。でもそれはそれでいい気分になれるありがたい奴。 「やな夢を見た」 「実際にあったやつ?」 「話したことあったっけ」 「自分の事なんて話さないじゃん」  そんなにかな。でもまぁ、忘れていたことを話すわけはない。鞄を持って教室を横切り、電気を消す。 「カラオケ行く?」 「文化祭後の打ち上げ用に、今は節制しとくかな」  靴箱から靴を取り出し、校舎の外に生徒たちの群れと共にあふれ出る。と、そこで足を止めた。靴箱に立てかけられたスコップがあった。 「ミキ」 「なに」 「探して欲しいんだけど」  ミキは二つ返事で了承した。 「そういうの、得意。そっちはなにしとく?」 「穴を掘っておく」  視線の先を追って、ミキは笑った。 「じゃあバケツもいるね」  そこまで頭は回っていなかった。 (お題:クレヨン)

お買いものフラッシュフィクション

八百屋さんに行く、ジャガイモを買おうと思っていた、けれど、安かったからとキャベツを買った、おんなじ理由で、ニンジンではなく、大根を 安くすんだなあ、と思ったのだけど、家に帰って、カレーにしようって思ってたんだった、と、気がつき、ちょぴっとヘコむ しばらくして、少し気持ちが戻る、もう一度、八百屋さんへ、今度は、ちゃんとジャガイモとニンジンを購入 その帰り、ねこを見る、黒い子と三毛の子、黒い子は、毛のツヤがよく、光って見えた、三毛の子は、しっぽが短かった 最初の買いもので、目的のものを買ってしまっていたら、再度、買いものに行こうと思ってなかったら、この子たちとは、会えてなかったかもしれない そう思うと、おかしな買いものも、たまにはいいかなあ、なんて、思えてきた カレーは、無事、おいしくできた

いいねの重み

『いいねが届きました』    嬉しいことだ。  わかっている。    同時に、本当に読んでくれたのかとも疑ってしまう。  いいねにはPV機能なんてないのだから。  たった一つの記号には、何分滞在したのかなんて載っていない。    こうも思ってしまう。  いいねは一秒で押せる。  だから、軽いな、なんて思ってしまう。  感想なら、もっと時間がかかる。  もっと、重い。  だから、より嬉しい。    これは、贅沢な悩みだろうか。  感想一つ書くくらいの重みを、読者に求めるのは傲慢だろうか。    ぼくは、心の中の思いっきり醜い部分を書き出して、投稿ボタンを押した。        答えは、すぐに出た。       『いいねが届きました』   『いいねが届きました』   『いいねが届きました』

ピアス

梅雨真っ只中の雨の日。タオルケットを引っ張り出して昼寝をしていたのが最後の記憶だった。 急に耳元でホチキスの音が鳴ったような気がして目が覚めた。 
「あ、起きちゃった」 
「………」 
「おはよ」 
「…え?」 
目の前でふらふらしている女は元カノだった。 左右に揺れながら話すクセは治ってなくて、懐かしく思う自分にイラついた。刺さっているでかい棒みたいなピアスや軟骨ピアスも相変わらず。 「帰って」 
「すっごく時間かけて来たんだよ」 
「どうでも良いし、今あんたのこと心底気持ち悪いと思ってるから帰って」 
「ねえ!」 
「………」 
「似合ってるよ、じゃーね」 
ひらひらとか細い指を振りながら元カノは何か言いたそうにでて行った。 
たった数分だったけど、あれ以上居座らさせてたらどうなってたか考えただけでも寒気がする。 
「似合ってるとか言ってたな」 
取り敢えず顔を洗おうと思い、洗面所に向かった。 
鏡の中の自分はあいも変わらず間抜け面だったが…ひとつだけ違う点がある。  
耳に鈍色に光る何かがあった。 
石とかではなく、シンプルな丸っこいピアスが刺さってる。 
「あいつ、これのためだけに来たの?」 つくづくどうかしている。 
とにかく外さないとなにかと日常生活に支障がでるので、後ろの金具をぐいぐい引っ張ると強い痛みが襲った。 
金具を摘んで左右に回す。 
頑固にピアスにくっ付いて、動く気配すらない。 このピアスが外れるとき、私はどうなっているんだろ。

私の人生2

私の人生が変わり始めたのは中学生の頃からだった 小学生の私はクラスに友達がいなかった 先生とも喋らなかった 学校が嫌いだった 本が好きだった 勉強が嫌いだった 家が好きだった 自分が好きじゃなかった 1日誰とも喋らない日だってあった それが普通なんだと思ってた でも心の底では楽しそうに笑うクラスメイトを見て羨ましかったんだと思う 小学6年生の時に中学校になったら新しい自分になろうと決意した でも、長い間1人で過ごしてきた私にいきなり明るく元気に友達をつくることなんてできなかった 始めにできた友達にはいじめをされた 次にできた友達とは次第に疎遠になった 勉強もうまく行かなくなって 本当に電車のホームから飛び降りようと考えたことが何度も何度もあった 夜は毎日のように1人で泣き 朝が来るのを恐れて一睡もしない日もあった 辛い毎日から逃げる為に、学校をサボるようになった でも親から怒られるだけで辛い毎日に変わりはなかった そんな辛い毎日にいつか、光が差すと信じて、毎日を生きていた でもね、光なんて誰にでも降り注ぐわけじゃないんだよ 光を頼りに生きる人達はいつかその光に裏切られるんだ

丸3年

 あれから丸3年経ちました。絶望のふちに、生後半年の息子を騙すように連れ戻し、実家に身を寄せてから。貴方は何を思っていますか。息子のことは今でも大事に思っていますか。  産婦人科医の貴方に惹かれて、恋において結婚するまでは時間はかからなかったです。貴方の何に惚れていたのか。私には無いものが沢山あって、何でもできて、手先が器用で。まるで、別世界の宇宙人のように突然現れた貴方が新鮮で、凡人の私には革新的な出会いでした。  当時25.6才の私は不妊でしたが、仕事柄直ぐに不妊治療を初めようと後押ししてくれて、子を授かれたこと感謝しています。  でも貴方が主治医で、貴方の病棟で、子を産むプレッシャーはまだまだ世間の右も左も分からない私にとっては、とってもプレッシャーで、何度も現実逃避を考えました。性別が男の子だと分かると、貴方の熱量は今までにまして、2人の愛すべき子より、跡取りを無事に産むことを課されている気がしていました。仕事柄当直も多くて、飲みも仕事のうちの時代が残っていましたので、私は知らない土地で1人寂しくお腹の振動も励みになれず、母親になってしまっていました。  身体は正直者で、そんな私の不安やストレスを充分に感じ取ってくれて、前置胎盤、切迫早産、高血圧、妊娠性痒疹、点滴アレルギーと次々に不調が現れ、貴方の病棟に入院を余儀なくされました。24時間点滴で、マグセントを最大量の投与で、心臓に負担を抱えながら、生きていない日々を過ごしました。さらに悲劇が続き、子は逆子の立位だと言うのです。貯血も高血圧のせいで、一度しかできず、本当に自分が死ぬのではないかと、心機能を測る機械を何回か外してみたものです。一度本当に心が折れて、治療拒否を行ない、原因はそれはそれは本当に些細なことで、貴方と同僚を困らせましたね。胎児の心拍が一度落ちて、慌てて帝王切開の日取りが決まりそうなこともありました。  37週目0日。オペ室に何人もスタッフがいるなか、貴方は私の手を握りじっと祈っていました。私は恥ずかしい反面、貴方も相当なプレッシャーの日々をおくっていたことを感じました。執刀医の貴方に、腹を切られ、前置胎盤のオペを並行して、息子が誕生しました。目をつぶっていましたが、涙を隠すのに必死でした。  でも、それはゴールではなくて、始まりに過ぎませんでした。子を産んだ後の方が何倍も大変だとこの時は気付かなかったのです。  しばらくは遠くの実家に子と帰っていましたが、それはそれは実家という楽な環境でも大変で、寝られない我が子に落胆し、次第に叫び出す自分が現れるとは思ってもいなかったのです。それは、産前のストレスが原因なのか、私に子を育てる力量も精神力も無かったのか分かりませんが、一つだけ確かなことは、私は子育てが得意ではないことは明確でした。末っ子で甘やかされて育ったことも影響したと思います。子のペースに合わせることが出来なかった。面倒見も皆無。苦しい日々が続きました。  貴方に私の状況を知られると、貴方は自分の実家に相談しました。田舎の厳格な家です。母親が子育てができないなんて通用しない世界で、私の状況を受け入れることは到底できませんでした。貴方の実家は初めは優しい言葉をかけてくれていましたが、だんだん厳しい言葉に変わってきました。貴方と暮らすために実家から自宅に帰ってきたときも、仕事でなかなか帰れないので、ワンオペ育児が続きました。反論としては、今までよりは帰ってきているというところでしょうが、私にとっては居ないのと当然でした。  自分が自分でない、泣き叫ぶ息子にどうしていいか分からない、自分も一緒に泣き叫ぶ。育児というのは、こんなにも辛いのか。私は何故母親になったのか。私は生きているのか。私はなんなのか。  当時、育児訪問してくれた保健師に電話をかけ、せめても私は虐待していない、そう肯定しなかったのかもしれません。助けを求めました。保健所で面談を行い、頑張っていると励まされ、まだまだ私は駄目な母親ではないと、そう思いたかったのかと思います。  子は唯一ベビーカーで寝られていたので、まだ春先なのに、指輪に日焼けの跡が残るまで散歩を毎日していました。泣いて嫌がる子を無理矢理一時保育にも預けてみました。罪悪感に押しつぶされないように、美容室に行ったり、ネイルをしました。 それでも改善されない症状。何がいけないんだろうか。どこで間違えてしまったのだろうか。どうしたらいいんだろうか。見えない暗いトンネルを幼い我が子と歩いていたように思います。  そんな私を見かねて、貴方は田舎の実家に子を連れて帰ってしまいました。私はやはり母親にはなれなかったと確信しました。荷物をまとめて実家に帰り家族と話しました。そこには子の写真と共に寝る私が居ました。母親は辞められませんでした。

価値観

 皆は幸せを望むのか。  私は幸せを望んでいるのか。  痛々しく感傷的な夜が心地良く、落ち着く私の価値観は異常的なのか。  夜の海に沈んでゆく寂しさ、孤独は誰にとっても想像するには苦々しくて、安眠を求めたくなる。それでも、落ち着いている私はなんなのか。  全ては虚しい、そう言い聞かせて生き抜く。ロマンスが何処かに存在していると考える方が苦しくなるだけだった。  何度も罪悪感に押し潰されて、不安になる。またそれが薬のように、心が元に戻る。  そう考え、息を詰まらせた。  気がつけば、日付が変わっていた。ベランダで景色を眺めていたはずなのに、自分の傷ばかり眺めていたようだ。  肩まで伸び、傷んだ髪を手で撫でてみる。ザラザラしていて、触り心地は悪い。割れてしまった爪のように、傷んだ髪は戻らない。同様に、自分の傷も。そしてあの日々も。  でも、それでもいい。その方が落ち着くから。

未履修おじ

「え、これわからない?」   「すみません。私、数Ⅰまでしか履修してないんです」    そう言われてしまえば、何も言えない。  未履修なのは、仕方ない。  私は会社に置いていた数Ⅱの教科書を引っ張り出し、公式を教えるところから始めた。  多様な才能を受け入れるのはいいが、最低限の基礎を欲しいと願ってしまうのは私の我がままだろうか。    あるいは、私の未履修も、世間が受け入れてくれないだろうか。       「え……。なんで、花束……なんですか……?」   「えっと、初デート……なので……」   「ごめんなさい。ちょっともう、今の段階で、あわないかなーって」    振られた。  出会って十秒も経っていない。    学生の頃、恋愛未履修だっただけで、私は恋愛という科目の入試会場にすら入らせてもらえない。    未履修なんだ。  誰か、助けてくれ。  誰か、教えてくれ。    しかし、周囲は皆結婚を終え、私に構ってくれる者はいない。  懇切丁寧に基礎を教えてくれる者はいない。    私はコンビニのゴミ箱に花束を突っ込んで、スマートフォンで夜の店を予約した。  学なき私にできることは、もう金を積んだ裏口入学だけなのだ。    電車に座って見る乗客たちが、いつにもまして輝いて見えた。

壁ドン。【コメディ】

相川さんのことが好きで好きでたまらないッ。 もう朝から晩まで考えてる。 俺のそんな気持ちを知っているのは親友の高木だけ。 「そんな好きならコクっちゃえよ」 高木が煽る。 それができるなら、こんな風に悩んでない! 「やー、だから勢いだって。あれ、壁ドンっての? 最近流行ってるらしいし、やってみたら? お前結構かっこいいんだしよ?」 自分でいうのもなんだけど、自分の見た目はちょっと自信がある。 「こー、萌えるシーンっての? 夕方とかに呼び出して?」 俺はとうとう高木の悪魔のささやきに耳を傾けてしまった。 というか、高木が勝手に呼び出しのラブレターを相川さんの靴箱に忍ばせたのを後から知った。 そんなことされたら、後に引けないじゃないか! 糞っ高木め! バクバクと高鳴るを気持ちをおさえながら、オレンジ色の夕日が差し込む校舎の裏に足を向けた。 そしてそこには……相川さんがもじもじしながら待っていた。 足が震える、肩があがる、俺がもし汗っかきなら多分汗だくだ。 俺は相川さんの前に立つ。 顔を上げた相川さんと目が合う。 心なしか、照れているように、みえなくもない。 夕日で赤く染まった顔がとてもきれいだ。 よ、よし、壁ドンだな! 勢いだな!? ドンッ! その勢いで、俺の目玉が零れ落ちた。 相川さんは気絶して倒れた。 あ……。 俺はその日、教訓を得た。 『ゾンビは壁ドンをしてはならない』

家族からの贈り物

子にとって、両親の存在なくしてはこの世に生まれてこれない。一番最初の両親からの贈り物は命と体だ。その次の贈り物はコトバ。今、コトバが話せるのは両親のおかげだ。 幼少期、絵本やおもちゃも惜しみなく与えてもらった。父の日と母の日には、私は折り紙で作った手づくりの時計をプレゼントした。両親はとても喜んでくれた。子供の日には、遊園地や動物園、旅行へ連れて行ってもらった。 成長の過程を通して、私は気づいたんだ。家族の愛がこんなにも素晴らしいということを。 私が両親にしてあげられることはなんだろう? とりあえず、一心不乱に勉強することにした。「本を読みなさい。本にはね、生きるための知恵がたくさん詰まっているから」父からの教えだった。 あなたは本当に賢い子ね。ありがとうママ。 学校にはちゃんと行きなさい。自分の人生を決めるのは勉強よ。 私は司法試験に合格し、弁護士になった。 世の中には理不尽な事がたくさんある。 でも、気づいたんだ。自分自身の人生はいつも自分の心が決めると。

君が君なら

僕は、困惑した。 「……無い」 昼飯にする予定だったカップラーメンを見失った。確か、昨日見た時にはあったはずなんだけど。 仕方がないので、買いに行くことにしよう。 近所のショッピングモールに入り、適当な簡易食をカゴに放り込んでいく。通りすがりる人が怪訝な視線を向けてくる。 無精髭にボロボロのシャツ、くたびれたズボン。 どんな目を向けられたって、文句は言えないだろう。 少し前までは、それなりに身だしなみや、食生活にこだわっていたが、今となってはこの有様だ。心の奥底から湧き上がる危機感を無視し続けるとこうなるぞ、と過去の自分に警告したくなる。 もう、何もかも手遅れだけれど。 買い物を終え、帰路に着く。 少し買い過ぎてしまったが、何事もやり過ぎるくらいが丁度いいんだぞ、と通りかかった小学生に教えておいた。小学生は、「ふーん」と言って去っていった。最近の子供は素っ気ないな。 「ただいま」 家の玄関を開ける。 家で待っていた彼女が、「おかえり」と返してくれるのではないか、という淡い期待を必死に押し殺した。 僕は、早足で仏壇の前に行った。そこに飾られているのは、こちらに優しく微笑みかける彼女の写真。 僕は、そっと手を合わせた。 「……」 不意に、背後に人の気配を感じた。 振り向くと、そこに居たのは死んだはずの彼女の姿。髪が伸び、体も半透明に近い。幽霊だとでも言うのだろうか。 けれど、不思議と恐怖は感じなかった。 否、恐怖など感じるはずがない。そこいいるのは間違いなく彼女だ。会いたかった、彼女の姿だ。 会いたかった。 君がいない世界は悲しい。 君がいればそれでいい。 幻でも奇跡でもいいから、 「ずっと、一緒にいてくれ」 僕は、彼女を抱きしめた。 「……一緒」 彼女もまた、僕を抱きしめた。 もう、何でもいい。 君がどんな姿であっても、君が君ならそれでいい。 ……あ、そういえば、 「カップラーメン、君が食べたのか?」 「……ごめんなさい」 僕たちは、笑った。

数学と空

快斗「はぁ〜雨じゃねーかよ」 僕は今日も塾に行こうと朝、外を出ると昨晩見た天気予報が外れていることにがっかりした。 舞先生「晴れてた?」 塾に着き、地下の教室に入るやいなや舞先生が僕に言った。 快斗「、、、降ってました」 僕は首を横に振ってから言った。 舞「あはは、テンション低いね」 快斗「そりゃそうでしょ、雨ですよ、外れてんすよ」 舞先生がいつものように意味のわからないことを言ったので不満を吐露した。 舞先生「そっかぁ〜、私好きだけどなぁ、雨」 快斗「やっぱ、意味不だな」 舞先生「あっそれまた言った!、やめてくれる、嘘は良くないよ」 快斗「別に嘘じゃないし、ホントの事だろ」 聞こえるかわからない声で言った。 舞先生「はいはい、今日の宿題は『君が嫌いな』確率の問題多めにしとくね」 聞こえてたみたいだ。 快斗「ちょっと!今回の試験範囲でもないのにそれは勘弁。わかりました、嘘をついていました、『舞先生は意味不ではありません』」 一応それっぽく宣言しておいた。 舞先生「んーなんか棒読みな気がしたけど今日は多めに見といてあげる。試験も近いし」 快斗「あざっす!」 一応頭を下げる 舞先生「じゃあもう授業始めよ」 快斗「えっ?!まだ僕しか来てないですよ」 舞先生「今日、君以外みんな休みだから」 快斗「はぁ?なんでぇ?9人全員?」 舞先生「もうリアクションいいから、始めるよ」 快斗「なんで僕がおかしいこと言ってるみたいになるんだよ」 本当に10人クラスなのに僕一人だけで授業が始まった。 快斗「疲れたぁ、もう1時間経ってますよ、マン・ツー・マンで!」 舞先生「えっ、マウス•トゥー•マウス?」 また意味不な事を言った。 快斗「疲れすぎて、ツッコむこともできねーわ」 舞先生「別にツッコむ所なんてないでしょ」 快斗「もういいわ、、」 舞先生「あはは、なんでちょっとキレてるの?」 快斗「だって!この問題の解がわかんねーから、、、先生みたいに」 例えだけは小声で言った。 舞先生「んん~これはぁ、」 聞こえてないみたいだ。 舞先生「それが解だよ。」 快斗「ん?」 まただ 舞先生「あっ今また、意味不とか思ったでしょ」 バレた 快斗「いや別に、、、」 舞先生「まぁとりあえず聞いて、私が『意味不じゃない』ってわかるから」 快斗「はい」 舞先生「この問題の解は『解なし』だから」 快斗「、、、」 舞先生「私を睨むな!ほらっ見ろ、この解答」 舞先生はテキストの解答を見せてきた。 快斗「確かに」 そこには本当に『解なし』と書いていた。 舞先生「ほらな、ふんっ」 快斗「何威張ってんすんか、それよりこんなわけわかんない解答、わかるわけないじゃないですか」 舞先生「こんなこと日常生活でもよくあるでしょ、『今日の天気みたいに』」 快斗「、、、、、、別に上手くないですよ」 舞先生「なんでよ〜」

エロの置き場所

「父さんが子供の頃はな、コンビニのレジ前にエロ本が置かれててだな。じっと見てると親から怒られるから、こう、横目でチラッチラッと」   「親の自覚あるか糞親父?」    案の定、母さんが親父を引っぱたいていた。  日本の性教育はどうなっているのだろう。   「後、誰かがエロ本を置いてくれる隠し場所があってな。毎年、上級生から下級生こっそりと置き場所が引き継がれてたんだ。父さん、大人になったら置く側に回ろうと思ってたんだけど、今はネットで何でも見れる時代だろ? もう、俺のすることはないなって」   「まだ言うか糞親父!?」    ついに親父が部屋の奥に引きずり込まれた。  多分、しばらくは母さんの説教タイムだな。    しかし、昭和というのはずいぶん大変な時代だったな。  わざわざ山に隠されているものを探しに行くなんて。    俺はパソコンを開いて、ダークウェブにアクセスした。  検索では決してヒットせず、特殊なブラウザを使わなければ見ることもできない、インターネットの奥底だ。    そして開くのは、クラスの男子たちの隠れ家。  各々が探し出した、エロ画像保管庫だ。    令和。  山登りなんてしなくても、エロが探し出せるいい時代だ。             「何見てんの?」   「あ」    俺も親父と同じ部屋の奥へと引きずり込まれた。    ファイルは全部母さんの手で削除された。

小鳥と猫にまつわる不思議な話

「小鳥が猫に食われたから明日は雪が降るだろう」カバさんは岩陰からそう言った。  私はカバさんの言葉に首をかしげた。彼の言うことはいつも少し変わっているが、その言い伝えにはなにか不思議な魅力があった。 「本当ですか?小鳥が猫に食べられたら雪が降るんですか?」  カバさんはゆっくりと頷いた。 「そう、昔からの言い伝えなのだ。小鳥たちが落ち着かない気配を見せるとき、それは自然が何かを告げようとしている兆候だ。」  私はカバさんの話に興味を持ち、その言い伝えについてもっと聞きたくなった。 「それは面白いですね。その兆候が雪を意味するとは、どうしてでしょう?」  カバさんは深く考え込んでから、ゆっくりと語り始めた。 「自然の力は深い。小鳥たちは風を感じ、天候の変化を察知する生き物だ。彼らが警戒する時、それは我々にも天変地異が近づいていることを知らせているのだ。」  私はカバさんの言葉に耳を傾けながら、その意味を考えた。自然界の微妙な変化が、動物たちによって感知されることがあるのかもしれない、と感じた。 「なるほど。小鳥たちの知恵は深いですね。」  カバさんは微笑みながら、再び岩陰に身を隠した。私はその場に立ち尽くし、明日の天気を思い巡らせながら、小鳥たちのささやきに耳を澄ませた。

可愛らしい転校生

 今日、うちのクラスに転校生がやってきた。高校生とは思えない、とても幼く見える男の子だった。黒い髪を中性的なマッシュルームカットにして、切り揃えた前髪から、大きくてぱっちりした目が覗く。私のような下手な女子より、ずっと可愛らしかった。  いつもクラスメイトたちは、帰り学活が終わると雪崩のように帰っていくところだが、今日は男女問わず大勢が彼の周りに群がった。みんなのノリについていけない系女子の私や友達もなんとなく帰りづらく、かと言って転校生の輪に入れるわけでもなく、教室でぐだぐだとおしゃべりして過ごした。まぁ、結局帰り道で寄り道しながらしゃべるつもりだったから、別にいいのだが。  夕陽の光が教室に差しこんできた。こうやって高校生たちが紅い陽に照らされ、楽しそうに喋っていると、青春って感じがする。自分が青春できるような体質じゃない私は、こうやって見て摂取しないと……。  やがて私は、話しているふりをしながら転校生の様子を伺い始めた。言わずもがな女子からはひどく人気で、男子ともなかなかうまくやっているらしい。それなのに誰からも妬まれている様子はないから、彼のコミュ力は相当なものだ。私は勝手に感心した。 「そう言えば、前はどこに住んでたの?」 「どんな高校だった?」  クラスメイトたちは矢継ぎ早に質問を浴びせている。彼は、小さなエクボを作って微笑んだ。 「僕ね、少年院にいたんだ。人を殺しかけたの」 「……え?」  一瞬で教室が静まり返った。彼を囲んでいた人の輪が、少し崩れた。彼は笑顔のまま、ポケットに手を伸ばした。 「やっぱりみんな引いちゃうんだ。あーあ、少年院に帰りたいなぁ」  次の瞬間、彼のナイフが夕陽を反射してギラリと光った。少し遅れてそれがクラスメイトの血飛沫であったことに気づき、私たちは悲鳴をあげた。教室はパニックで狂乱状態だ。その真ん中で、彼はひどくおかしそうに、可愛らしい笑顔を浮かべていた。

女の子扱い

彼と一緒にいるのが 居心地がいい理由 気持ちをしぐさや言葉で 表現してくれること 私の外見も内面も 存在を評価してくれること でも一番の理由は 『女の子扱い』 歩いている時 電車に乗る時 遅い時間に帰る時 仕事も 遊びも デートでも 常に女の子扱いしてくれる だからこそ はりつめた緊張感の仕事から 解放される瞬間 彼のもとへ走りたくなる 人を傷つけてる罪悪感から 逃れたくなる瞬間 彼のもとへ走りたくなる わがままも言いたくなるし かわいい性格でいたいと思うし きれいでいたいと思う 女の子扱い いくつになっても 欲することなんだと 彼と出会って知ったこと 彼と出会って知った自分

言葉は愛を囁き続ける

『今日はとっても楽しかった! ありがとうー!』    未だに元カノとのメッセージを見返している自分は、何と女々しいことだろうか。   『別れたい』    メッセージで届いた味気ない失恋の言葉は、とっくに削除してぼくからは見られない。  いま、この箱の中には楽しかった時の景色しかない。    彼女はもう、ぼくの前には現れない。  会いに行こうとすれば会えるだろうが、次に会えばストーカーと呼ばれるだろう。  ぼくを愛した彼女は死んだのだ。    あまりにも現実が受け入れられなくて、一人で泣いた。  友達を呼んで泣いた。  慰めてくれる友達の手が、彼女の手ではない時がつく度、いっそう惨めな気持ちになった。   『今日はとっても楽しかった! ありがとうー!』    メッセージを見返す。  ぼくを愛した彼女の遺書を。    彼女からのメッセージは、精神安定剤のようにぼくの涙を止めてくれた。   「ぼくも楽しかったよ」    箱に向かって、言葉を返す。  箱は、一方的な受信機でしかない。  ぼくの発した言葉は、送信されない。  部屋に空しく響くだけ。   「いつまでもうじうじしてないでさー。次行こうぜ、次」    友達の言葉は正論だ。  彼女と面識がない分、全面的にぼくの味方になってくれる。    友達の優しさとわずらわしさ、同時に感じる地獄の時間。  思わず怒鳴りそうになる感情を必死で推し隠し、「そうだよな」なんて悲しそうに答えることしかできない。    正直、このままでいいと感じる自分もいる。  どこかにいる彼女を想いながら生きるのも、一つの人生ではないだろうか。  だって、彼女は箱の中にいるのだから。  彼女とのメッセージのやり取りを見返せば、彼女はそこにいるのだから。    二次元に恋心を抱くことが肯定される現代。  ならば、過去に恋心を抱き続けてもいいのではないだろうか。  誰の迷惑にもならないのだから。  せいぜい、彼女に知られた時、気持ち悪がられるくらい。   「合コン行かね?」    誘いは全部断った。  そんな暇があれば、彼女の過去のメッセージとデートしていた。        ある日、スマホが壊れた。  うんともすんとも言わなくなった。  発狂して新しいスマホに変えたが、彼女とのメッセージが全部消えた。  バックアップを取っていない自分を呪った。    そして、僕の中からようやく彼女が消えた。    泣きはらした頭の中にもう彼女はおらず、ぼくはようやく失恋したのだと気が付いた。   「合コン行かね?」   「……行く」    まだ、彼女との時間を思い返すことはある。  これは、ぼくについた傷で、勲章だ。   「こいつ、最近振られてさー」    自覚した傷は、いつか治るはずだ。  じくじくと痛む心を押さえながら、ぼくは次の恋へ一歩踏み出した。

生きづらい世界 〜「悪意」と「ミス」〜

 隣のクラスのsちゃんは話題の中心でそのクラスの顔的存在。そんなsちゃんは頭が良いし、特別いいってわけではないけどヘアアレンジとかもよくしてて女子力が高く、可愛い。たまに「はにゃ」っていう。私から見るとノリなのかなって思うけど、どうやらこのクラスの女子は『ぶりっ子』って裏話。sちゃんはヒソヒソ色んな人、よく女子の悪口を言うらしい。まぁ、私もsちゃんの口から「愚痴大会」って言葉を聞いたことがあるけど。女子を好き嫌いで判断してるときもあるんだって。だからか女子は冷たい目、ふざけるなって本人に言わず私にチクる。  私は「そうなんだね」って話を受け止めて心の底で思う。sちゃんが悪いだろうけど、完全にいじめじゃね?  私はクラス替えをする前、mちゃんと親友でとっても仲が良かった。自分で言うのも何だけど、私はクラスの中心で皆から笑顔を浴びていた。学校はとっても楽しい。クラス替えが終わった。mちゃんの次に仲が良いjちゃん。いつも「一緒に帰ろう」っていってくれたのに最近一人ですぐ帰っちゃう。なにかがおかしいと思って考えた。本人に話を聞こうとした。そのときにmちゃんを無視していたらしい。私は考えすぎると周りの音が聞こえなくなるな。何ヶ月かたってmちゃんが「いじめられた」と先生に相談した事がわかった。私は『いじめた』らしい。この話が上る前、mちゃんとだんだん距離が空いていくのを感じたからなぜだろうとたくさん考えたし泣きもした。 『いじめ』られているであろうsちゃん 『いじめ』たであろう私 【悪口】などが原因なsちゃん 【無視】が原因な私 〈悪意〉sちゃん? 〈ミス〉私?  『現実』の天秤にかけたら釣り合ってしまう。『心』の天秤にかけたら私のほうが重くなってしまう。いじめをした罪が。〈悪意〉と〈ミス〉。生きづらい世界だな。

I’ll drive away I had them out to Colorado but dial you

I’d rather go to Kobe rivage Atlanta middle by dad to look up every day bro Kevin behavior driveway to be dark by the bed with dad and grandma gonna be repaired about a break up a bottle by the bed that I bought a bit of a day trip out of it that’s why I would be debited I’d rather cuddle cuddle by the data him and we had that provided very bad at the other with that I’m OK brother – probably busy with that I had to go because I’ve been rejected back every death every bit of it that’s why we did not get rid of a dead dead end of Cabot creamery did bad we give that back in with you but that will be there to make a bit of a debt that we did we did that we did make a bit of a day of the dead it’s on record that I had to keep a good objective death death I’m gonna get rid of that we didn’t make a bit of a job that I had to get a good adaptability to recommend we do it at the bank that the medical paper that had to go back in a bit of a date with a Deco Maccabi rid of that bag that I had to keep a kind of a deadline that we will be there to make that had to go back I don’t work out I may be educated guy but I will be there till about maybe that’ll really be there to make a bit of a dead already be dead at the cabin kind of better the devil will be there to make a bit of a double-decker electronica but if we do that with a debit www.McAbee double-decker Vietnam cable Bridge will be at the Cabot creamery reject every vegetable and a couple really didn’t make a bit of a debacle with it at the cabin Creek Rebekah bit of a double-decker bus and I could go to Kamuela Delta Ridge I don’t wear a color of 18 and we had a better day by day but I truly do it a bit that’s why I will be there trouble with getting that Anacapa could be the damn not have a bad bitch with that we do that to make a bit of a diva dental visit to make a bit of a double-decker gonna be dead and you get good about everything out of the death of a date to make a bit of a date with her to make a bit of a damn

正座してピザを食べる夜

ひとりがいい 言うわりに 夢の中では 誰かと一緒にいる ひとりがいい 思ってるわりに ひとりでいると さみしく感じる リセットボタンは求めてないし お呼びじゃない 電源をオフにしたい その電源が見あたらない 電源が見つかったとして 自分で電源をオフにする勇気はない テントは張っていないのだけど 家の中でキャンプをやっているような そんな毎日 自分以外の人と暮らしていたときは ふたり でいることが 普通 だったから ひとりになると とてもさみしく感じられた いまは ひとり でいることが 普通 だから さみしくなることがあるにしても あのときほどではない いまのわたしには かけすぎくらいのタバスコが ちょうどいいのかもしれない

メトロノーム

「はじめから僕ら、出会うと決まってたならばどうだろうなー」 私はスピーカーから流れる曲を口ずさみながら運転していた。助手席の彼もニコニコしながらそれを聞いていた。この曲は私と彼二人のお気に入りの曲だった。 今日は二人で久々のディズニーランドデートだった。着いてからは、ビッグサンダーマウンテンにのった。 かなりの時間待たなければならなかったが、私は彼といっしょにいるだけで楽しかったし、それで良かった。少なくとも私はそうだった。 彼に対して違和感を感じたのは、スプラッシュマウンテンに並んでいる途中のことだった。 「ねえねえ、ちょっと立つの疲れてきちゃったね。トー君おなかすいてない?次どこかのレストランにはいる?」 「うん、どっちでもいいよ」  彼は、スマホを見たまま曖昧に返事をした。ほんの一瞬、私のなかで黒いもやがかかった。その後も私は彼に対して話しかけたが、彼はそっけない返答を繰り返した。私はもやもやした気持ちのまま、スプラッシュマウンテンに乗り、その後近くのレストランに適当に入った。 「へー、スペシャルセットだって、なんだろうこれ、美味しそう!あ、シーフードのグラタン?みたいなのもあるよ、トー君好きだよねシーフード!」 「うーん、じゃあそれで」  ろくにメニューを見もせずに彼は決めてしまった。私と話をする気もなさそうだ。いよいよ私は彼に対して嫌悪感を抱いた。  いつもそうだ。この前買い物に行ったときだって、最初はニコニコしておしゃべりしてたのに、だんだん無口になって、そっけなくなる。時間が経ってくるとすぐどうでもよさそうな態度を取るのだ。  お出かけしたときだけじゃない。少し前の1周年記念の日も覚えてなかった。  私は今この瞬間にわかった。私が彼をどんなに好きでいても、それとは裏腹に、彼は自分のことを愛してなんかいないということに。  私はもう我慢できなかった。これまでの積み重なってきたすべてが溢れ出した。イスから立ち上がり、あたりをはばからず大きな声で怒鳴った。 「なんなのもうっ、だるそうに返事して!いつもそうだよね、私よりスマホのほうがよっぽど大事なんでしょっ。車だってそう、いっつも大体私ばかりに運転させるし。免許持ってんならたまには運転しなさいよ!」  周りの客の視線が集まった。 「っ、ごめ」「もういいよ、我慢できない!」  彼は目を丸くして私を見つめた。 「さようなら」  私は捨て台詞を吐いてそのまま店を出た。  私は車を出し、船橋に向けて走らせた。 ―彼を置いてきちゃったな―  先ほどまで激怒していた相手に対して、早くも申し訳ない気持ちになっていた。しかし、彼は自分を愛してもいないくせに、惰性で付き合いをつづけていたような人間だ。このくらいしてやってもいいんだと割り切ることにした。  スピーカーから音楽を流しながらしばらく走らせていたら、彼との思い出の曲が流れ始めた。私はしみじみと聞き入った。  改めて聞くと、私たちと状況が同じだ。私たちはいつしか、少しずつテンポがずれ始めて、やがて足並みを揃えることができないほどに亀裂が入ってしまったのだ。  彼の顔が浮かんだ。それに追随するように彼との思い出が溢れてきた。どの彼も笑顔だった。その笑顔が大好きだった。  私は彼を愛している。今だって彼を愛している。でもその彼は自分のことを愛してはいないのだ。今日それがはっきりと分かった。それがなによりも悲しい。  やがて曲はサビに入った。 “今日がどんな日でも何をしていようとも、僕はあなたを愛してしまうだろう”  まさに私の今の気持ちと全く同じだ。胸が締め付けられる思いになった。  私は道路のわきに停車した。彼の優しい笑顔がまぶたのうらに浮かぶたび、眼の前の視界が滲んでいった。とっさに口元を抑え、うう、と嗚咽をもらした。手の甲を雫が伝って落ちていく。  私はただ、あの頃の幸せな毎日に戻りたい、その一心だった。  その時、スマホが振動した。とっさに画面を見ると、彼からだった。 「…」 「あ、もしもし、、あの、さっきは、、ごめん」 「…」 「俺、君に甘えてたよ。ほんとにだらしないとこばっかなんだ。俺」 「…」 「…俺、君のこと、本当に好きなんだ。ほんとに愛しくてたまらない。だから、君が居ない生活なんて考えられない。これから俺、自分の悪いところを見つめ直して、改善していくよ。君とまたテンポを合わせて、もう一度歩いていきたい、頼むよ」  彼は泣きながら懇願していた。私は息をするのもやっとな状態で聞いていた。  私はなにか応えようとした。でも、出ない。どうしても声が…出ない。 メトロノームはラスサビを迎えていた。

ただ妄想

 昼休みの真っ只中。和気藹々とした声色が教室を満たしていた。  集まった人数以上の大盛りの弁当箱を囲むサッカー部。教師に釘を刺されないギリギリのラインを見極めたメイクの女子たち。  それぞれがそれぞれに空間を切り取って、笑顔を振りまき会話を成していた。  そんな教室の窓に突如として人間大の影が上から下へ通り抜ける。  ソレに気付いた者は一斉に窓へ駆け寄り始めた。直後、縁日のスライムを思い切り地面へ叩きつけるような音が響き渡る。  影に気づかなかったものたちも次第に窓から外の様子を見下げ、地面にある自分たちと同じ制服を見て理解する。 「あれ、深谷さんだよね」  水面を打ったような静けさのなか、誰かがぽつりと呟いた。すると、別の誰かが吐いた。その酸っぱい臭いが漂って、また別の誰かが吐いた。 「わ、私せんせえとこ行ってくる!」 「これ救急車?救急車って何番だっけ?」 「119!あれ?110のほうか?」  次第に理性を取り戻した何人かが、できることを見つけては奔走していった。  けれど、大半の生徒は窓の側であり得ないものを見たように呆然と立っているだけだった。  しばらくして汗だくになった担任が静謐を保つ教室に到着した。  警察が来ることになり、それを待ってひとまず今日は帰宅するようにとだけ言うと、またすぐにどこかへ去っていく。  生徒たちは誰も喋らない。ただ虚無感に似た共通認識が、誰の発言も許さないでいた。 「ねぇ、あれって深谷さんだよね。同じクラスの」  教室前方の席に座る女生徒がすっくと立ち上がり、振り向いてそう問いかけた。 「実際深谷さんもいないし、そうだよね」 「……だからなんなんだよ」  だれに言うでもなかったそれに、サッカー部のひとりが不満気に応えた。 「深谷さん、虐められてたよね」  その発言の瞬間に焦燥、不快、悲哀、憎悪。それらが綯い交ぜになって張り詰めた。  けれど、女生徒を除く誰もが口を開こうとしない。沈黙し、目を伏せ、無関係を貫こうとしているように。 「あんたたちのことよ!」  そう言って、女生徒はメイクの濃い生徒たちを指差し声高に叫んだ。  差された生徒たちは気まずそうに目を逸らした。それは女生徒にとり、肯定と同義だった。 「あんたたちがイジメなんて低レベルなことするから、深谷さんがここまで追い詰められたんじゃない!」  女生徒が問い詰める。すると、今度はメイクの濃さがずば抜けた生徒が顔を歪め、女生徒の言い分に否定を投げた。 「こっちはそんなつもり無かったし……なんならそこまで酷いことしてない……」 「はぁ!?あんたたちのいう酷いことってなによ!強請りや暴力暴言以上に酷いことって何!?」  彼女の言い訳のように絞り出した言葉を、女生徒は真っ向から斬り伏せた。 「……ってか、なんで強請りがあるって知ってんの?」  サッカー部の生徒が思い出したように女生徒へ投げかけた。すると女生徒は少しの間があって口を開く。 「……たまたま見たのよ。校舎裏でこいつらに深谷さんがお金渡してるところ」  弱々しい声音だった。 「見てただけなんだ」  サッカー部の生徒は短く告げる。さも、お前も同罪じゃねぇの?と言いたげに。 「それを言うなら、あんたらだって……クラス全員同罪じゃない!みんなクズじゃない!深谷さんを見殺しにしたでしょ!」  ヒステリックな女生徒の叫びが、静まり返った教室に反響して、ゆっくりと消えていく。  クラス全員が再び俯いて沈黙し、息詰まる雰囲気を充満させる。時たまぽっかりと空いた席に目を向けては、ばつが悪そうにあらぬ方向へ目をやりながら。  「そもそも深谷は、本当にイジメで死んだのか?」  それは、幾人の耳に届くかも分からないくらい小さな声だった。  しかし、それに答える者はもはやこの教室にはいなかった。

ケミカルプリンの何が悪い

「私さ、プッチンプリンあんまり好きじゃないんだよね」 その聞き捨てならない言葉に、暇つぶしにWikipediaを読んでいた私は思わずその声の方を振り返った。 クラスの女子グループのうちの一人が頬杖をついて他の子にそう話していた。ときどき話をする仲だが、今度から顔を合わせても「でもこの人プッチンプリン嫌いなんだよなぁ」といった思考がいちいち頭をよぎることになるだろう。 今後の彼女への対応について考えていると、会話に動きが出たようだったので再び聞き耳を立てる。 「え、何で嫌いなん?」 「えー、なんかゲロいっていうかー」 味じゃないのかよ、と心の中で突っ込んだ。てっきり味でダメなのかと思ってたのに、まさかの見た目。 それはあんたの食べ方が下手くそなだけでしょうがよ、うまく食べればプリンは美しいままでフィニッシュできるでしょうがよ。その理屈で言ったらもんじゃ焼きとか完全アウトじゃん。 猛抗議が喉まで出かかるが何とか午後の紅茶と共に飲み込む。その間にも会話は続く。 「それならさ、どういうのなら大丈夫なの?」 「んー、あ、カスタードプリンは好き」 ほぼ変わんないよ。食べ方次第でカスタードプリンだって十分ゲロくなるわ。 唇のすぐ後ろまで出かかったが、声には出さなかった。顔には出ただろうが。 家に帰ってから調べてみると、どうやらプッチンプリンはカスタードプリンとは違う、ケミカルプリンという種類のものらしい。 私はその後、ベランダまで歩くと窓を開けて叫んだ。

とあるメディアの入社式

 えー。  まずは新入社員の諸君、入社おめでとう。    君たちはこれから、マスメディアという業界で仕事をすることになる。  マスメディアは、第四の権力と呼ばれるほど、世界に与える影響が大きな仕事だ。  緊張しすぎる必要はないが、自分たちの影響力の大きさを考えて仕事をするよう意識してくれ。    では、まず簡単なゲームをしてもらう。  何、ただのレクリエーションさ。  そう気を張ることはない。    まず、二人組を作ってくれ。    速く。    はい、できたね。  では、五分間あげよう。  互いに、ペアの相手の印象を伝え合ってくれ。  よーい、始め。        五分だ。  どうかな。    じゃあ、そこの君。  相手から、どんな印象を受けた?    ふんふん。  なるほど、身長が高い、髪が綺麗。    じゃあ、そっちの君は?  何か優しそう、笑顔が可愛い。    なるほど。  うちの社員たちも聞いていたんだが、君たち、全然駄目。  君と、君と、君は、明日から部署へ配属。  もちろん給与も、トレーニー用ではなく社員用を採用する。  それ以外は、全員教育から。    え、レクリエーションじゃないのかって?  何を言っているんだ。  君たちは人生で、本音と建て前を学んできたんじゃないのか。  口ではレクリエーションと言いつつ、レクリエーションの動きで評価が変わるなんていくらでもある。    え、何が駄目だったのかって?  決まっている、君たちは褒めてしかいなかったじゃないか。    国民が気になるニュースは何だと思う。  政治家の不祥事、芸能人の不祥事、そして凄惨なニュースだ。  親切な子供が交番に忘れ物を届けた、なんてニュースはたまにでいい。    君たちには、相手の欠点を見つけ、それを堂々と口にする度胸が足りなかっただけだ。  実際の取材では、ゴミムシを見るような目で見られることも多々あるだろう。  そんな目を跳ねのけて、仕事のためと無礼なことを言わなければ、この業界ではやっていけない。    理解したかい。  わかったら返事をしろ、ひよっこども。    これから三ヶ月をかけて、みっちりとしごいてやるからな。  覚悟するように。    では、グラスを手に持って。    KP。

夢世の戦士たち

 子供というのは、大人に比べて寝相が悪い。それは、夢の中の世界……“夢世”で戦っているからだ。相手は、大人の醜い野望が具現化した魔物。奴らは、毎晩容赦なく戦士たちの命を奪っていくのだった。  私は、戦場から少し離れた山の上の本拠地で、薬草を数えていた。ここには看護役の私1人と、見張り1人、まだ剣を持てない小さい子たちしかいない。今回の戦いは厳しいらしく、他の戦士や看護役は、みんな前線に出てしまった。私はテントの下から、傾いてきた日……いや、月を見ながら、無事勝っただろうかとそわそわしていた。  ガチャリ、ガチャリ、と、戦士たちの鎧が擦れる音が聞こえてきて、私は待ち構えていたように立ち上がった。薄暗くなってきた森の中を、見知った戦士たちが歩いてくる。私と同じ小学生たちで構成された、年少部隊だ。私は手を振って駆け寄った。 「みんな無事みたいだね、よかった! 怪我した人はいない?」 「擦り傷程度だ。ちょっと座って休もう」  隊長のハルトはそう言って、戦士たちを薪の周りに座らせた。みんな、無事に帰ってきたにしては顔が暗く、元気がない。私は恐る恐る、隊長に耳打ちした。 「あの、もしかして、他の部隊に犠牲者が出たの……?」 「……出たなんてもんじゃねえよ」  いつも明るいハルトが低い声でそう言ったので、私はびっくりした。見ると他の戦士たちも、うめいたり啜り泣いたりしている。私が硬直して何も言えないでいると、ハルトは諦めたように報告した。 「倒した魔物は45体。こっちは115人死んだ。年中部隊、年長部隊は全滅だ」 「……うそ」  私は掠れた声でつぶやいた。もちろん、夢世で亡くなっただけで、現世では生きていることはわかっている。けれど、彼らはもう二度と、この世界に足を踏み入れることはできないのだ。夢世のことは忘れ去り、毎晩行くあてもなくうつらうつらするだけの“大人”になってしまう。それは誰しもが通る道だとはいえ、私にとってはただ辛い別れでしかなかった。ボロボロと涙が溢れた。 「中高生の兄さん姉さんたちはみんな死んじゃったの? 看護役の先輩……マヤさんも?」 「……仕方ないよな、魔物は年上を執拗に狙うんだ」 「他に看護仲間もいないのに……これからどうしよう」 「……そうだよ……今俺たちがいちばんの年上なんだ。しっかりしねえと」  ハルトは勢いをつけて立ち上がると、空の鍋を叩いて、皆を静まらせた。 「戦士総長ケンタの亡き今、年少部隊隊長、ハルトがこの意志を継ぐ! まずはここの守りを固めよう。それから、10歳以下のやつにも剣を持たせて……」  ハルトが戦士たちを鼓舞し指示を出している間、私はじっと自分の手のひらを見ていた。夕べ、マヤさんと手を取りながらみた美しい星空と、その下に広がる荒れ果てた戦場。あの景色が頭にこびりついて離れない。

君告白したまふことなかれ L編

 無言で握られた手を、私は振りほどいた。    唐突な告白を、私は侮蔑した目で見下した。    私はレズビアンだと公言しているにもかかわらず、告白してくるこいつは何なのだろう。  雄どもは、言葉の意味が理解できないのだろうか。       「雄は雄で大変なのよ」    相談した友達は、意外にも雄の肩を持った。  共感してくれるのが嬉しかったが、言い分があるなら知りたいとも思った。   「雄はね、女が嘘をつく生き物だって知っているの」    何を言っているのだろうか。  私は、嘘なんてつかない。  私の友達も、嘘なんてつかない。   「うん、貴女の目から見ればそうかもね。あくまで、雄の目から見れば、の話よ」    同じ世界を見ているのに、違う物が見えているとはどういうことだろう。   「例えば、告白された時に『貴方には私より良い人が』って断る人いるじゃん」    いるね。   「本当に、そう思ってると思う?」    いや。  告白してきた雄を傷つけないための気づかいかな。  後、変に強く振って、逆恨みされるのも嫌だし。  自己防衛。   「じゃあ、もう一つ。気が乗らない相手からデートに誘われた時、『ちょっと予定確認してみるね』って行ったっきり返信しないのはどう思う?」    同じだ。  デートに誘って来た雄を傷つけないための気づかいかな。   「どっちも『嘘』だよね?」    嘘?  いいえ、気遣い。   「気遣いのつもりかもしれないけど、思ってもないこと言ってるよね? つまり『嘘』だよね?」    嘘、じゃあない。  気遣い。   「ほら、もう見てる世界が違う」    呆れた。  この程度のことも察せないとは、雄は本当にどうしようもない生き物だ。  私は思わずため息をつく。   「気持ちはわからなくもないけど、少なくとも私たちは、嘘という言葉を使わずに本心以外を口にするの。それは、紛れもない事実。雄の世界にもそういうのあるけど、たぶん女の方がよく使うのよ」    雄って、馬鹿正直だもんね。  友達の彼氏が浮気してたら、すぐ気づく。   「だから雄からすれば、女は嘘をつき続ける生物なの。話を最初に戻すと、なんでレズビアンって公言している人に告白をしてくるか、だっけ。答えは簡単。その雄、あるいはその雄の周りに、『レズビアンだから付き合えない』という言葉で振った後、雄と付き合いだした女がいるからよ」    はた迷惑な話だ。  この場合、女の防衛反応だと気づかない雄が悪いのか。  それとも、レズビアンでもないのにレズビアンを断る理由に使った女が悪いのか。   「誰を恨んでもいいよ。だって、どっちも恨めるんだから。好きな方を恨みな?」    見え方の違う二つの生物。  雄と女が共存する世界において、私の胃痛はどうやらしばらく収まらないらしい。

AI就活二択編

 時代は移り変わった。  自分から選ぶ時代から、選ばれる時代へと。    かつてあった就職活動サイトは軒並み潰れ、残ったのはスマートフォンに入ったAIサポーターただ一人。   『貴方の就職先に適切な企業を、二社選びました。平均年収より高いですが企業内での成績は平均以下となる企業と、平均年収より低いですが企業内での成績は平均以上となる企業、お好きな方をお選びください』    AIは、残酷だ。  誰も言葉にしなかったことを、容赦なく言葉にしてくる。    指の震えを必死に我慢しながら、私は人差し指をスマートフォンに近づけた。       『そちらでよろしいですね?』   『たったいま、貴方の内定が決定しました。おめでとうございます』        私の一世一代の決断は、内定式の日付という無機質な返答をもらうだけで終わった。

ラジオをこころのオアシスに

勉強しながらラジオ 勉強しながらラジオ というより ラジオをきくついでの勉強 もっというなら ラジオをきくついでに なんとなくペンを動かす そんな程度のこと それでも 高校にも 大学にも 合格できたのさ そう言うとウチのねこは さっと姿を消し お布団の中で まるまってしまった その姿を見ながら あの手の先のクリームパンで よくペンを握れたもんだなあ そんなことを思った

Are you going to cover it again I’m a pro catchable

And you guys are about to go to buy regular bed by the way be there to have a look at the battery to be dead so I will be dead lame OK baby dad driving over there by 12 always dead but I will be dead how do you will be there to look at my bear with me that we have a bit of a detriment with that iPad over there to Vacaville with it I’m OK with that power which we did not look at my bed will be there to everybody with that burger with a visit and had to go to Gravette add camera cable guy bringing the matter what you go to bed when I get my badge will be dead by then with that I will be back in a bit of a red velvet Deborah Deborah through a double-decker ride with me that would be Deborah get me mad would be dead at the WJJBJBJBJBJB that would be dead by the way my dad had a better every day village I don’t have it I don’t have a cava good of a dad Add to bed we’re going to have a head to dead reckoning to Bible cover Reagan matter we had a great day back at the Evergreen Elementary bracket by Delray David that grandma made Vijay cadet and chemical be daydreaming out about the weather really didn’t make a bit of a day with DD driver busy with that and cabinet every bit better even after I have a little network cable with it and chemical better recover with the debit debit with Vacaville with rainbow death at the cabin gonna be down to have a very busy we didn’t really get to make it but if we do a dead rabbit it is a chemical bit of the regular OK baby whatever degree weather will get back to the cabin with a dead rabbit death Vacaville with it I don’t give a crap every day but I can’t be bad of a day with her baby daddy gets back it’ll be dead I had to get a crib FWB give Deborah will be decorated the table to cut it but I did go back in a bit of lemon Nevada Reno I had to go to Kobe Reagan and motivated jewelry came in and we had to do with that back everybody better day by day would be to be dead so I want to be the dad at the cabin cruiser bump

土曜の正午。午後からは特に用事もないため、お昼を食べ終わった後はペットボトル茶を飲みながらスマホで動画を見ていた。何かガツンとくるものが見たいと思っているとリビングに妹が入ってきた。特に気にならないのでスマホから目を離さずにいたら妹はこちらに近づいてくる。目を向けると妹は私のペットボトル茶に手を伸ばすところだった。 「お姉ちゃん、ちょっとお茶ちょうだいありがとう」 「は、」 私が言葉を発する隙も与えず勝手に自己完結し妹はペットボトル茶を呷る。 その様子を見ながらあーあと思う。 それもう中身無いのに。 約2秒後に妹から抗議の言葉が飛んできたが、私の目は既にスマホに戻っていた。結局ガツンとくる動画は見つからなかった。

自由の果てを臨む

 昔から、思い立ったことは即座に行動するタイプだった。  ある時、自由が欲しいと思った。  私はまず、会社を辞めた。組織からの自由を求めたからだ。すると、朝いつもの時間に起きなくても良くなった。昼までぶっつづけで作業を行う義務も無くなったし、責任もどこかへ消えた。重荷をひとつ、降ろしたのだ。  次に、住居に関する契約のもろもろを解消した。不動産、ガス、電気、水道、インターネット、エトセトラ。場所の自由、社会からの離脱を求めたのだ。契約という縛りから抜け出した。同時に、これからの生活に対する責任が生じたが、全てが己のみに関わる責任、自由に伴う責務であり、なんの後悔もなかった。  住居を転々と移しながら、納得できるだけの自由を得た気がした。けれど、なにかが不足しているようにも感じる。それが何かはわからない。  その時、エネルギーを求める体が腹をすかせる。  直後、閃きが迸る。欲であったのだと。  そして、欲からの解放を行った。物欲をはじめとした、俗物的な欲求。さらには三代欲求である食欲、睡眠欲、性欲に至るまで。これら全てから解脱し、頭も体も空っぽにして人のいないどこかを彷徨った。  とはいえ、やはり人間であることからは抜け出せなかった。あるいは可能であるのかも知れないが、それを行うには資産にしても知識にしても、何もかもが不足していた。  名前も知らぬ森の中、空腹に倒れ、密かな満足感と絶大な後悔を抱く。  凡そ人間における呪縛から逃れおおせたぞ、と。  しかし、いつでも脱せる束縛こそが自由であったのだ、と。  昏倒し、意識も溶けてゆく脳は、明確にそれを実感し、最期のアドレナリンを分泌する。