「何も書きたくない!」 私は叫んだ。 キーボードから手を離し、机から離れ、ベッドに思いっきり飛び込んだ。 ギシリときしんだベッドに罪悪感を感じながら、もう少しだけごろごろとさせてもらう。 書くことは趣味だ。 しかし、書きたくない時だってある。 そんなときにどうすればいいのか。 小説家と言う肩書を持つ人たちは、それでも書くしかないんだと胸を張る。 そのたびに、脂肪と筋肉で膨らんだその胸を、思いっきり引っぱたきたくなる衝動に駆られる。 「書きたくない時に書いて、何が楽しいんだ」 本音がこぼれる。 人間だ、楽しいことだけして生きていきたい。 楽しむために選んだ書くと言う遊びを、わざわざ苦しむために使いたくなんてない。 自分の本音。 ごろごろしきって、ストレスが抜けていく。 不平と不満でパンパンにつまった脳のダイエットに成功し、ぼくには書きたくないのに書く人の気持ちを考えるくらいの余裕ができた。 やりたくないのにやるときっていつだろう。 ぼくにとって、それは勉強だった。 学生時代、勉強をしなければ先生に怒られていた。 ぼくにとって、それは仕事だった。 社会人時代、仕事をしなければ上司に怒られていた。 つまり、やりたくないのにやるときとは、人生そのものなんだろう。 「あー、だからか」 思考の一つが、ホールインワンでもしたように、ぼくの納得感と言う穴に落ちた。 人生だから、書く。 小説家と言う肩書を持つ人にとって、書くとは勉強であり仕事であり人生そのものなのだ。 故に、書かないという選択肢がそもそも存在しないのだと、ゆっくり気づいた。 「……書くかぁ」 ぼくは小説家ではない。 書くことが仕事ではない。 でも、勉強ではある。 上手くなりたいといつでも思っている。 ベッドから起き上がり、さっき来た道を逆走して、ぼくは机に戻った。 こきこきと指を鳴らした後、指をキーボードに押し付けた。 画面に文字が浮かび上がって、何やら日本語を形作っていった。
張り込みは今日でもう五日間になろうとしていた。 慎一郎はヤカンに水を入れ、コンロにかけた。 もういい加減にカップ麺にも飽きてきた。 なにしろ醤油とシーフードの2種類しかないのだ。 一度、二つを合わせて食べてみたが、大して味は変わらなかった。 せめて片方はカレーにしておけば良かった、と後悔した。 ぴゅーとヤカンが言うと、慎一郎は、はいはい、と言って火を止めてお湯を注いだ。 なんだかんだ言って、やはり食事は嬉しいものだ。 ※※※ 慎一郎は食べながら一軒のニ階の窓を覗いた。 そこにはニ人の殺人犯がいるのだ。 慎一郎は、今や遅しと、本部からの踏み込み許可を出るのを待っていた。 犯人たちに出かける様子はなく、ときどき外の様子を伺っていた。 どうやら、当分立て籠もるつもりのようだ。 双眼鏡で様子を覗くと、犯人たちはアンパンなんかを食べている。 慎一郎は犯人たちは相当追い詰められているのだろう、と思った。 いつもアンパンと牛乳だったからだ。 カップ麺をすすりながら、こちらは温かいものを食べれることに少し優越感を感じていた。 ※※※ 「いつもアンパンばかりで飽きますね」と部下から言われると、まったくだ、と警部補の秋元は返した。 「ところで、今ヤッコさんは何してる?」と部下は、カップ麺を食べてます、と言った。 張り込みは今日で五日目になっていた。 今回の殺人犯は、精神科から出てきたばかりの誇大妄想持ちとのことだった。 どうやら自分を警察官だと思い込んでいるらしい。 道端で路上喫煙者を射殺した後、この家に立て籠もっているのだ。 「おい、これでカップ焼きそばでも買ってこい」と秋元は自分の財布から金を取り出すと、そっと裏口から買いに行かせた。 これでも秋元は部下思いなのだ。 ※※※ 翌日も張り込みをしていると、犯人たちはカップ焼きそばを並んで食べていて、慎一郎は羨ましいと思った。 お湯を注いだ後で、お湯を捨てるという、一見矛盾していて一手間かかるものを食べていることに、どこかしら負けた気がしたのだ。 慎一郎はどこかに食べに行こうと思ったが、監視をやめることは出来ない。 なにしろ相手は凶悪な殺人犯たちなのだ。 とはいえ慎一郎は負けず嫌いであったから、黙って見過ごすわけにはいかない。 そこで蕎麦の出前を取ることにした。 カツ丼セットだ。 慎一郎は届いた蕎麦を食べながら、優越感に浸ることが出来た。 ※※※ ヤヤ!っと部下の大声で秋元は仮眠から起きた。 なになにどうした、と話しかけると、部下は、カツ丼カツ丼っと大声で叫んだ。 望遠鏡を覗くと、犯人が美味しそうにカツ丼を食べている様子が見える。 秋元はごくりと唾を飲み込んだ。 実に美味しそうに食べているではないか。 秋元は落ち込んでだ部下を見ていると居た堪れなくなった。 犯人はカツ丼を食べ、こちらはカップ焼きそばである。 これでは国家権力の敗北ではないか、秋元の正義感に火が付き、部下に命じた。 おい、向こうが和食なら、こちらはフランスだ。フランス料理を頼め。 ※※※ 慎一郎はフランス料理が次々と運ばれているのを見て、ほとんど失神しそうになった。 闇の組織が支援しているに違いない。 慎一郎はフランスに勝つには、四千年の歴史を持つ中国料理しかないと思った。 紹興酒がそこいらへんのワインなんかに負けるわけがない。 慎一郎は中国に電話をかけた。 いくらかかってもいい、中国本場の味を出前してくれ。 ※※※ TVレポーターはヘリからニ組の殺人犯の様子を生中継で伝えていた。 「今度はフランスから料理人がやってきました。ミシュラン三星の一流店からスカウトしたようです。 さて、これはさすがに参ったか」 カメラがパンしてもう一軒の家を映し出す。 「おおっと、こちらにも中国の一流の料理人が来ます。 手には、かの始皇帝も食べたと言われる幻の果物を持っているようです。 高らかに掲げてアピールしています」 ニ軒の家の間には出店が並び始め、野次馬が取り囲んだ。 視聴率は六十パーセントにも達していた。 今や日本中の人々がフランス対中国、世紀の料理対決を固唾を飲んで見守っていた。
「どうしてそんなに続けられるの?」 幼馴染の透が不思議そうに問いかけてきた。僕はただ絵を描くのが好きで、理由なんて考えたことがなかった。毎日欠かさず机に向かい、紙に向かってペンを走らせる。ただ、それだけだった。 「理由なんてないよ。好きだから続けてるだけ」 そう答えたものの、その夜、僕はベッドに横たわって考え込んだ。僕はなぜ絵を描いているんだろう。描くことが当然で、理由を考えたことすらなかった。 翌日、また透に会った時、僕は口を開いた。 「考えたんだ。僕は絵を描いてるとき、自分が自由になれる気がするんだ。誰にも邪魔されない、自分だけの世界がそこにあるから続けられるんだと思う」 透は感心したように頷いた。「すごいな、それだけはっきり理由が言えるなんて」 それからというもの、僕は絵を描くたびに自分が自由になれているか確かめるようになった。絵を描いている最中、ふと立ち止まって考えてしまうことも増えた。 「今、僕は自由だろうか?」 絵を描く前に、無意識にそれを自問してしまう日が続いた。そして徐々に、僕にとって絵を描くことは確認作業のようになっていった。 透が褒めてくれた理由が、いつのまにか僕の絵を描くことの基準になり、純粋だった楽しさは薄れ、代わりに胸が締め付けられるような義務感が生まれ始めた。 やがて僕は、机に向かうことに疲れてしまった。机の前に座り、紙を前にペンを握る。それだけで息苦しくなる。自由でなくてはならないという自分が作り出した条件が、僕の手を縛った。 ある日、透が再び尋ねてきた。 「最近、絵はどう? また新しいの描いてる?」 僕は少し躊躇した後、小さく笑った。 「ちょっと、休んでるんだ。描く理由を見つけすぎたのかもしれない」 透は首を傾げたが、何も言わなかった。 その夜、僕は机の上の紙を眺めながら、ふと思った。理由なんて、いらなかったのかもしれない。ただ好きだった。それだけで良かったのだと。
「魔王退治は辞めた」 勇者は敵地を前に踵を返した。 「ここまで来て何を言ってるの!?」 「魔王を倒せば終わりなのに!」 戸惑う仲間たちは必死に勇者を止める。だが、勇者は引かない。 勇者は悟った。世界最悪のモンスターは魔王ではない。人間たちの方だ。 自然を破壊し、生き物を殺し、何が残るのだろう。 それならば、人間を滅ぼした方が世界のためになる筈だ。 「止めるなら、お前たちから殺す」 剣を振るう勇者に、仲間たちは為す術なく散っていった。 この世界に魔王など最初から居なかった。人間が作り出した偶像だった。 勇者はこの世界最初の魔王に成り下がったのだ。
老人は口にする。 「恐い世界になったもんだ」 若者は、スマートフォンと呼ばれる機械ばかりを見ている。 近所の人間を見なければ、すれ違う人々の顔も見ない。 若者は、故郷を見捨てる。 故郷からは活気がなくなり、店も施設も次々と閉業する。 若者は、しけた顔をしている。 趣味を聞いても応えられず、かといって仕事が楽しいわけでもなさそうだ。 老人にとって、若者と言う生物は不気味だった。 故に、恐ろしかった。 そんな生物が隣を闊歩していることが。 「わしらが若い頃は、もっと平和だったのに」 肩を落とす老人と、疲れ切った若者がすれ違う。 老人の言葉を聞いた若者は、老人をギロリと睨んで愚痴をこぼした。 「楽しみのない世界を作ったのはお前らだろ」 老人は、若者を公園から追い出した。 若者に室内での遊びを強制した。 老人は、故郷の発展を怠った。 未来のない大好きな故郷から出て行かざるを得なくなった。 老人は、国の賃金を下げた。 趣味と仕事を楽しむ余裕などない程の労働を強いた。 老人と若者。 すれ違った互いの心は完全に独立していて、互いの心のうちなど見えるはずもない。 ただただ、心の内で互いを非難し、見下し合った。 綺麗な町の中で。
妖精は今日もせっせと花の蜜を集める。愛しいあの人を射止める為に。 黒い秋桜は訊ねた。 「どうしてそんなに私の蜜が欲しいの?」 妖精は答える。 「貴方の蜜が最高に美味しいから」 だから、恋敵からあの人を奪う為に利用するの。 薄ら笑いを浮かべ、妖精は花の蜜が入った瓶を大事そうに抱える。 妖精が恋敵に敵う筈が無い。 何故なら、恋敵は秋桜に勝る金木犀の花の蜜を毎日あの人に送っているのだから。 黒い秋桜の花言葉は「恋の終わり」。 金木犀の花言葉は「真実の愛」。
四季巡る日本。 食豊富な日本。 春はキャベツ。 夏はきゅうり。 秋はサツマイモ。 冬は白菜。 季節ごとに美味しいの主役が交代し、次の季節の到来に人々は思いをはせる。 「ああ、そろそろアレが旬だ」 未来を楽しみにすることは、幸せの土台だ。 今年もまた、母なる大地が食物を産み出す。 「そんなことを考えてる時期もありました。餓鬼の頃はな」 男はラーメンをすすっていた。 味噌ラーメン。 年がら年中食べられる、日本の国民食。 春はラーメン。 夏はラーメン。 秋はラーメン。 冬はラーメン。 変わらぬ味が、男の季節を動かさない。 唯一動くのは、コンビニに冷麺とおでんが登場した時だけだ。 「はー、味気ねえ」 いつでもどこでも、便利が用意される現代社会。 いつの間にか季節を見失った事実を目にしながら、今日も男は季節を食さない。 超コスパ時代、残業地獄の隙間にはスーパーで買い物する時間など残っていない。
いつになったら、この戦いは終わるのだろうか。今日も戦線は膠着状態のまま、一日が終わろうとしている。春に始まったこの戦争は、季節が移ろい変わり、夏になっても進展は見られない。 私は鬱々とした気持ちで哨戒任務を続けていると、ふと戦場には似つかわしくない音が聞こえた。戦友もその音に気づいたようで、レーダーから目を離し、何の音か確認する作業に移った。音は続いている。耳をすませば、それが単なる単発的な音ではなく、繋がっていることがわかった。まるでメロディーのように。 そう時間を置かずして、音源と戦場の様子の確認を終えた戦友が「お前も見てみろ」と急かしてきた。その表情は明るい。どうやら、敵の作戦でプロパガンダを流されていたり、睡眠や休息の妨害の音ではないようだ。 私も見張り用の機器を使って戦場を確認する。そこには一人の男が鍵盤楽器を携えて演奏している姿が見えた。私は詳しくないが、あの鍵盤楽器は鍵盤ハーモニカのように軽量のようには見えないし、男は防弾チョッキこそ身に着けているが、戦場に立つにはあまりにも軽装だ。 いったい、どういうつもりだろう。私は訝しんだ。しかし、そんな私を置き去りに最前線で塹壕の中にいた兵たちは浮足立っていて、中にはもっとよく聞こうとして塹壕から出て行ってしまう者までいる始末。幸い、それは相手も同じだった。お互いに兵が塹壕から出ているという状態なのに、戦闘が発生しなかった。 敵意のない兵士たちは、ただ奏でられる音楽に夢中のようだ。私はクリスマス休戦の話を思い出した。しかし、今は夏でクリスマスには、ほど遠い。それに何の記念日でもないはずだ。 戦場で物資も乏しいなか、娯楽にい飢えていた皆が聞き惚れていた素晴らしい演奏は、無情にも終わりを迎える。 雨だ。突如、降り始めた夕立は雨足を強めていく。楽器が濡れてしまっては故障のもとだ。男はやや慌てた様子で楽器を片づけ始めた。しかし、重い鍵盤楽器は泥に沈み、片づけは難航しているようだ。 私はその様子を眺めながら、演奏が終わったことを残念に思い、またこれから先も続くであろう戦争の日々に嘆息した。 雨の中、片づけに四苦八苦している男に、戦友が近づいて行った。おそらく防弾チョッキの国旗から敵軍側だと思われる彼に攻撃するのかと、私は身構えた。本来なら、それが正しいと分かっている。だが、それでも私は――。 しかし、それらは杞憂だった。私と同じく彼の演奏に感銘を受けた戦友は、楽器の片づけを手伝い始めた。それを見て私は、この長く続く戦争に変化の兆しが現れたように思えてならなかった。 ―――――― お題:「夕立」「戦」「鍵盤楽器」
古いテレビだ。もうだめだそうだ。テレビは病室で、点滴が繋がれている。テレビは静かに息をしている。その時、病院の外から、五時を告げるチャイムが流れてくる。テレビは目を覚ます。テレビは俺の顔を見て、幼児向け教育番組を、画面に薄く映し出す。「坊ちゃんはこれが好きでしたよね」テレビは目でそう伝えてくる。俺はもう子どもじゃないんだよ。俺はテレビの画面をそっと撫でる。スピーカーから、お兄さんお姉さんの歌声が聞こえてくる。それは俺が好きだった歌だ。「坊ちゃん、歌いなさい」俺は小さな声でその歌を歌い始める。ふいに、画面が暗くなった。その暗くなった画面に、俺の泣き顔が映っていた。
「ご家庭でご不用になった物……」廃品回収の軽トラが商店街をゆっくり走っていた。「これお願いしまーす!」軽トラにそう声をかけた少年がいた。少年は空っぽの鳥かごを持っていた。彼は焼き鳥屋の一人息子だ。
雨上がりは好きだ。 まだ、雨の滴が残っている風景に、水溜りや、お日様の光。 なんだか、とっても開放感に包まれるから。 ウキウキするから。 決して、あいつが帰って来るからではない。 あくまでも、雨上がりが好きだからだ。 別に、スクーターでこのバス停に停まっているのも、この風景が好きで、いつもここから眺めてるだけで、特に理由が有るわけではない。 ただ、あいつが帰って来た時に、一番に出逢ってしまうのは偶然で、それは、その、仕方のないことだ。 うん、そう。 別に、私が待ち望んだ事ではない。 私はスマホで、時間を確認する。 田舎のバスはいい加減なもので、予定の時刻に差し掛かるが、まだその姿すら見えない。 私はもう一度、バックミラーを覗き込んだ。 これは、鏡越しの風景が見たいだけで有って、偶然にそこに写った私の前髪が、跳ねているのを、手直しするのは当たり前の行動だ。 そこで鏡の片隅に、虹を見つけた。 私は振り返り、口を開けたままの間抜けな顔で、しばらくそれを眺める。 「………これは、あいつに教えなくっちゃ」 思わず、口から出た台詞で我に帰り、言い訳を付けようと考えて居るところに、バスの音が聞こえてくる。 私は念のため、もう一度だけバックミラーを覗き込んだ。 勘違いしないで欲しい、あくまでも虹を見るためだ。 よし! 乱れていない! 大丈夫のはずだ。 ………虹がね。
人の税金で暮らしてる俺は恥ずかしい。 しかし人の税金で嘘をつき犯罪をしてのうのうと給料をもらってる奴らはもっと恥ずかしい。
離婚した元妻が、俺の経営するケーキ屋に、息子の誕生日ケーキを注文しに来た。「チョコレートのプレートに『7さいおめでとう』って書いてください」俺はそのプレートを作りながら、「そうか、生きてればもう7歳か」と感慨深くなった。きっとこのホールケーキは、元妻が一人で全部食べるのだろう。あいつももう年だ。胃もたれしないよう、俺はそのケーキを甘さ控えめに作った。
かすかに うっすら 頭が痛いのは 水分不足によるもの それは明白 いつくらいまで エアコンを がまんできるかチャレンジは 今年も 開催される わたしの中でだけ ひっそりと 夏の終わりまで エアコンを使わずに いたなんてこと これまでなかった 学ばない人の夏は 今年もこうやって… 夏のはじまりは すいかだろうか? それとも かき氷だろうか? はたまた プールに足を つけた瞬間か 夏のはじまりは ××××××××に まかせたい それも夜 夜こそが それにふさわしい 季節は 夜におとずれて そして かわっていくのだと 魔法つかいが 言っていたから
さっきまで街を明るく照らしていた空は、暗闇に包まれる。その中に、淡く光る月や星が宝石のようにきらきらと輝いている。そんなあるひとつの芸術作品のような空の下。 周りは、大事な人や生き物と共に、この芸術作品に自然と入り込むかのように過ごしている。 そんな中、俺は独りだ。 芸術作品のような空にたった独り、酒とつまみを買った袋を持って立ち尽くしている。 毎日残業ばかりで、上司にも後輩にも同僚にも、全ての人間から哀れな目で見られる。 俺は人並みより仕事が出来ない、社会にのめり込めない人間だから、あんな目で見られるのだろう。 今日は早く仕事が終わり、ストレス発散にと宅飲みをしようとしていた。そんな時、ふと空を見上げると、芸術作品が拡がっていて、 俺は、それをただ見つめている。何も考えず、ずっと…。 なんて俺は、哀れなのだろう。 空はこんなに無数に輝いているのに、俺は何一つ輝くことが出来ない。輝きを失ってしまった。 きっと俺は、ずっとこの芸術作品に入れない。 ただ、見つめることしか出来ない、哀れな人間。 俺は誰よりも、この空に似合わない男だ。
春にまいた種 いまだに 芽がでて くれないのは 生まれてこのかた 芽がでたことのない わたしが まいたからかしら お庭の あそこいらにまいた種が 芽をだしたら わたしにも芽が でてくるかしら どうですの? だあれも お返事してくれない チュンチュンチュン お空で小鳥が さわがしく チュンチュンチュン 芽がでても 小鳥に つっつかれないようにしないと チュンチュンチュン きいろいお花と しろいお花と あおいお花と あかいお花 チュンチュンチュン きれいなお花が 咲くといいね チュンチュンチュン どうですの? チュンチュンチュン
シンデレラは王子に別居を申し出た。 勿論、王子は拒否をする。しかし、シンデレラも妥協する訳にはいかなかった。 互いに何も知らないまま結婚してしまったのだ。意見の相違が出ても仕方の無い事だった。 王子は気ままに、優雅に生活をしたい。 シンデレラは質素に、慎ましく生活をしたい。 煌びやかな世界を知らないシンデレラにとって、優雅な生活は継母や姉を思い起こさせる。 もう、過去には囚われたくない。 過去から解放される為の結婚生活は、逆に過去を連想させるものだったのだ。
I like that we share recovery have a day I could ride every day but walk every head that I’ve been telling him about how do I go to head that I had to go to that whole wide wild can we hit that bottom? It will be a good one. We have a buddy I have a water out of that had about to head to a cab a cup. My dad had a cup of cup go way with that battery dead but he could have a back of the head back. Could water be dead. Go walk walk dead walk with that walk walk without that with that with that money could have a buck back about we did make a bottle have a doubt I have a car and I walk in right now and I gotta go. I gotta go with that really grab a broccoli that I could eat and go with that and I go to I will be dead. I had a dad where is your dad have to go with that we have a way… And that way that we have a bad way with that we have a brother that that we did with that we welcome with that with that bottom with that. How do I head that way with that that way that would be that with that rehab that we have about that and we could come come when we have a back doubt about that, but with that had to have done that way without a break way right now cab now they have a dad that could come about that we have Had to walk with them now we could cover recovery here with that cover out with that to have my dad go with that make go to go to go to rehab with that. I have an hour they have that we have a way that and we could have a battle with that with that and we could go walk. You have a way out with that could come with that come with that I don’t go that way with that. We have a black with that black hair with that with that and we could come over and cut the rocket and a camera woke up with Denver and back bucket I have a dead by that and a happy workout now and a club every day, a bag and bottle cupboard, broccoli heads out with that we had a dad and about water down while down by that way, and Hannah walk with them and I could rule it out with that as we could wake up
赤ん坊の息子が泣くたび、アパートの隣の部屋から壁を叩かれていた。そしてとうとう、郵便受けに、『あかんぼううるさい』と書かれた紙が入れられていた。それから数日間、毎日その紙は入れられた。ある日、大家さんにこのことを相談しようと、息子を背負ってそっと部屋を出た時、隣室の玄関のドアが、薄く開いていることに気づいた。視線を感じた。そそくさとその前を通り過ぎた。その日、大家さんは不在だった。仕方なく自室に戻ると、玄関の方から、コトン、と音がした。また紙を入れられたのだ。憂鬱な気分で郵便受けを開けて、案の定入れられていた紙を広げると、そこには『あかんぼうかわいい』と書かれていた。
「忘れないで下さい」 それだけを言い残し、英雄はたった一人で敵に立ち向かい、儚く散っていった。 人々は英雄の最期の言葉を忘れず、英雄の名を語り継いだ。 それを見て、英雄は思う。 自分の名を忘れて欲しくなくて、あの言葉を言い残したのでは無い。 誰も自分を助けようとも、代わりになろうともせず、自分だけを敵地に送り出したこの世界の非情さを忘れて欲しくは無かった。それだけだった。 毎年、英雄の命日には雨が降り注ぐと言う。
私たちは食べ物を食べる側だが、食べ物の食べられる側の気持ちを考えたことがあるだろうか? まず、私が食べ物だとして、食べ物に感情があると考えてみよう。 私がいざ、誰かに食べられるとなったとき、食べられて嬉しいと感じるか、食べられるのは嫌だと感じるかの2つの思考が生まれるだろう。だが、これは私という人間にはしっかりとした感情があるからこその思考だと思ってしまったのだ。 食べ物といっても様々だ。例えばくだもの。これは成長までに何年とかかる。早いものでも1年。1年もあれば人間で考えると、感情は快、不快から複数の枝分かれをし、自分でも言語化不可能な感情が複数生まれてくる。 くだものは、収穫をしたら、ほとんど皮をむいてそのまま食べてしまうだろう。つまり感情がたくさんある状態で食べられるということだ。それは恐怖だろう。人間に皮をむかれるだけでも恐怖だというのに、そのまま口に運ばれ食べられてしまう。せっかく大きくなれたのに、そのまま食べられてしまう。とか考えたとしても自分が腐ってしまうという運命を知らないのだ。 そして料理。広義で言ったが、今回はオムライスでいこう。オムライスには米、卵、ケチャップ、肉、全てちゃんとしたものにするにも、何か月、何年とかかってしまう。だが、5がゴールだったとして、オムライスになるということは0に戻るのだ。米だって、生米から炊いて食べれる状態になる。これは5が0になるということ。生肉も、焼いたなら0に戻る。ケチャップも、そのままかけるのなら5かもしれないが、米と混ぜながら焼くだろう、それは5が0に戻るということだ。 なら、オムライスなどの料理は人間で言うと0歳に近いと考えたのだ。つまり、このオムライスにはほとんど感情がない。自分がいまどういう姿になっているのかも、これから自分にはどういう結末があるのかも、全く知らないのだ。知ることができないのだ。 食べられる側として何週間も考えていたが、私にも少々感情が生えすぎていたようでしたね。 あなたも腐りそう、もしくは腐っている食べ物があったら腹痛覚悟で食べるか、捨ててください。 私のようなカビの生えた食パンにさせないようにね。
-ある男と女の対話- ▪️男▪️ 人生に意味などない。 ▪️女▪️ 人生に意味はある。 ▪️男▪️ 世界に意味などない。 ▪️女▪️ この世界が存在した時から意味は存在している。 ▪️男▪️ 意味は人間や動物の価値観で生まれたものに過ぎない。動物も人間も、ただそれぞれが意味を見出して生きているに過ぎない。世界はただそこに在るだけだ。 ▪️女▪️ 意味は愛と関係性で生まれるものだ。例え、物質であろうと、エネルギーであろうと、それぞれが関係して、違う形になる。そこに意味が存在している。 ▪️男▪️ では愛とは何だ?俺は家族を愛しているが、それは俺がそこに意味を見出して、価値を感じているからだ。 ▪️女▪️ 愛とは、そんな限定的なものではない。人間や、動物、物質、全てに感謝し、全てを普遍的に捉える事だ。 ▪️男▪️ そんなことは無理だろう。それに、意識も何もない物にも意味があるのか?意識も何も無いのに、愛など無いだろう。 ▪️女▪️ 物質やエネルギーも自然に全てを愛する事をしている。それを感じないのか?あなたは気付いていないだけで、あなたも大きな愛の一部だ。意味をあなたが見出しているのではなく、この世界にある限り、すでに意味を持っている。 何故なら、全てが繋がって、関係性を持っているからだ。 ▪️男▪️ お前の言ってる事はよく分からないな。俺は考えを曲げない。この世界に意味などない。ただ存在し、そこに在るだけだ。 ▪️女▪️ あなたが否定しても、あなたはその意味や愛の中にいる。 男と女が対話している。それを聞いていた老人はつぶやいた。 ▪️老人▪️ この世界に正しい事などない。どちらも正しいのだ。
善と悪、天と地、相容れぬものがこの世には存在する。滲む境界線、黒と白の重なり、薄く混ざる水平線、どこまでも追いつけない虹の麓と同じだ。手を取り合おうと伸ばしても、決して触れることが叶わない。 日本某所、とあるビルの屋上に立つ男が白い息を吐く。煙草の煙が夜空に溶けて、間延びした声が気だるげに空気と同化する。 「嫌んなるね、うん。嫌な職だ、化け物扱いは俺たちさ。お前が羨ましいよ、黒は黒として染まる。絶対に灰色にはならないお前らが羨ましい」 ぽとり、煙草を地面に捨てて踏み潰す。 向き合うのは髪の長い女。ただし、身に纏うのは洋服ではなく鱗、肌は夜の中でも青白くまるで発光しているようだった。吹き上げる風に男の髪が揺れる、対して女の濡れ髪は毛先が揺らいだ程度でぴたりと体に張り付いている。 ――妖怪、と言う言葉を知らない人間はいないだろう。この日本において、妖怪は人間と切り離せない関係にある。妖怪は人を襲い、人間は食われる、捕食者と被捕食者の関係だ。そこに第三者的立場として、男のような退治屋が存在する。 妖怪が見える人間は極少数だ、つまり人間のほとんどは見えないモノに襲われて突然死を迎える。対して退治屋は認識される人間だ。 大多数の人間は、成人男性が一人で戦闘のような動きをしていたらどう思うか、想像に難くはない。何せ退治屋は隠匿された職業である、誰しも男が妖怪と戦っているなど思いもしないだろう。 そも、妖怪を知っているというのも、日本の昔話として認識しているということで、現代日本に存在する殺人鬼としてではない。人々は空想上の生物として河童や雪女、鬼や妖狐などを知識として得ているに過ぎないのだ。そして妖怪にも名のないモノもいる。 それが、男が今対峙している女だった。 「魚の鱗だろ、それ。陸にあがるなんて目的でもあるんかね? まあ、魚は焼いて食うのが一番うめえよな。酒のつまみにもアリなんだ、知ってたか?」 何も答えない女に、男はそっと小さな玉を取り出す。ゴルフボール程度の大きさのそれを、男は女の足元に投げつけた。飛びのく女ではあるものの、その頭上には男が足を振りかぶって待ち構えていて、ニヒルな笑みを浮かべながら地面へと蹴り飛ばす。 女がコンクリートにめり込んだ瞬間、投げつけた玉も地面に当たり弾ける。広がった炎から逃れるように落下防止のフェンスの上に立った男は、目下で燃え踊る女を眺める。 「はぁ~やだね、やだやだ。これで俺は放火魔にされるんだよな。理不尽だろうよ、俺至って正常な人間だって。真面目に社会人やってるって」 首を左右に振りながら、男はフェンスの上を走りビルから隣のビルへと飛び移る。 消防車のサイレンの音を耳にしながら、彼は暗い方へと走り去り、距離の取れた場所で人混みに紛れた。
死神がどこかへ向かっている。何処へ向かっているのだろうか?誰かの死が近づいているのかもしれない。 死神は、ある男の部屋に着いた。 死神が男を見て、話しかける。 ▪️死神▪️ お前の寿命はもうすぐ尽きる。 ▪️男▪️ お前は死神か?何故俺は死ぬのだ? ▪️死神▪️ さっきも言ったが、お前の寿命が尽きるからだ。 ▪️男▪️ 死、か。俺と言う存在は無くなるのか。 ▪️死神▪️ 存在がなくなる?お前は死んでも、存在は無くならないではないか。 ▪️男▪️ 死んだら、無になるのだろう? ▪️死神▪️ お前たち人間は、輪廻転生があると信じているのではないか? ▪️男▪️ そんなものはないだろう。生まれ変わりなんて・・・死んだら無になるだけだ。 ▪️死神▪️ 輪廻転生、これはお前たちの言う意味では無いかもしれないが、お前の存在、情報は失われるわけでは無い。 ▪️男▪️ それではどうなると言うんだ?分解されて、土に還るだけだろう。 ▪️死神▪️ そうだ。お前は死に、分解して、土に還る。 それはお前が土に変わっただけだ。形が変わっただけだろう。 ▪️男▪️ それは俺じゃない。ただの土だ。 ▪️死神▪️ そうだ、お前の言うとおり、ただの土だ。 しかし、お前の情報はそこに残っているだろう?お前は土として存在することになるだけだ。 ▪️男▪️ それでは生まれ変わったとは言えないだろう。 ▪️死神▪️ しかしお前は、植物の栄養になり、植物の一部となる。そして昆虫や動物がそれを食べ、その一部となるだろう。それはその生命の一部になることだ。 ▪️男▪️ それが何だって言うんだ?考えることもできないし、俺ではない。 ▪️死神▪️ しかしお前は、今お前の形になっているに過ぎないんだぞ?それは永遠には続かない。ごく短い間だ。生命は土に還り、他の栄養となり、さらに他の栄養となって循環していく。 ・・・そもそもお前たちは最初から人間だったのか? ▪️男▪️ 俺は最初から人間だ。生まれた瞬間からな。 ▪️死神▪️ そう言う事では無い。人間が生まれたのは、最近では無いのか? ▪️男▪️ ・・・進化して、人間になった。 ▪️死神▪️ 進化する前にも、お前は存在していたのだ。 わからないか?死など存在しないと言うことが。存在の形を変えるだけだ。情報も失われない。 ▪️男▪️ しかし俺は、死ぬことが怖い。無になる事が。 ▪️死神▪️ それは生物としての本能だな。それは仕方のない事だ。しかし、お前は無くならない。宇宙の始まりから存在していたのだからな。形を、変えているだけだ。 ▪️男▪️ 俺は、形が変わるだけなのか?また人間に生まれ変わることもあるのか? ▪️死神▪️ それははっきりとはわからないが、可能性はあるだろう。死を恐れる事はないが、今の存在として、やりたい事をすれば良い。 ▪️男▪️ そうか、俺は無くなることはないんだな。 しかし、俺は、死にたくない・・・ ▪️死神▪️ 全ての流れの一つなだけだ、お前と言う存在も、お前が形を変えることも。 死神は男の死を見届け、また何処かへ向かった。
中年のサラリーマンは、一人残業を終えると、油性ペンを持ってトイレに行き、鏡の前で、禿げあがったおでこの中央に『疲れています』と書いた。そして、終電に乗るために駅に行った。駅にはそれなりに人がいたが、皆、彼のおでこをちらりと見るだけで、誰も慰めの言葉をかけてくれなかった。彼は落胆した。彼はホームに入ってきた電車に飛び込んだ。しばらくして、作業員たちが、バラバラになった彼の死体を片付けている時、一人の作業員が、彼の頭部を見つけた。そしてそこに書かれている文字を見て、苦笑いを浮かべ、ポケットからボールペンを取り出し、『みんな』という言葉を書き足した。
汚い猫だと人間に追い回され、お腹がすいた猫がいた。この猫は捨て猫だった。食べ物を探している時、人間に捨てられて怯えているハムスターと出会う。猫はハムスターを食べようとするが、ハムスターは自分が人間に捨てられた話をした。猫は自分と同じような目にあったんだと気付いた。食べるのをやめ、話をしだす。 -仲良くなった二匹の会話- ▪️猫▪️ 人間は大きくて強いから偉いのかなあ。 ▪️ハムスター▪️ それを言ったらあなたは私より大きいし、いつでも私を食べることができる。あなたは私より偉いって事になるね。 ▪️猫▪️ そんな事はない!私とあなたは対等だよ。 ▪️ハムスター▪️ それならあなたと人間もじゃないの? ▪️猫▪️考える。 そうなのかもしれない。でも、わからない。 ある日、食べ物を見つけて二匹で分け合って食べていた。 ▪️猫▪️ 君は何で捨てられたんだい? ▪️ハムスター▪️ 何故だろうね。人間にとって私に価値がなくなったからじゃないかな? ▪️猫▪️ 価値?価値って何だい? ▪️ハムスター▪️ 価値は価値さ。例えば飼い主はキラキラした石や人間の顔が書いてある紙を価値があるって言ってたよ。 ▪️猫▪️ 魚の方がいいけどなあ。 ▪️ハムスター▪️ 私はひまわりの種がいいけどなあ。 ▪️猫▪️ そうなんだ?じゃあ・・・価値ってなんなんだ? ▪️ハムスター▪️ 本当はそんな物、ないのかもしれないね。 ▪️猫▪️ でも、魚は私にとって大事なものだよ。 ▪️ハムスター▪️ ひまわりの種だって、私には大事だよ。 ▪️猫▪️ そうか、価値って大事なもののことなんだ! ▪️ハムスター▪️ じゃあ君も価値があるね! ▪️猫▪️ 私は汚いし、嫌われてるから価値なんてないよ。 ▪️ハムスター▪️ 私の大事な友達だから、私にとって価値があるよ。 ▪️猫▪️ ありがとう。それじゃあ、君にも価値があるんだよ。 二匹は食べ終わって歩いていた。 ▪️猫▪️ 君をあの時食べなくて本当に良かったよ。一人ぼっちになってたし、悪いことをするところだった。 ▪️ハムスター▪️ 悪いことって? ▪️猫▪️ 君を食べるところだったじゃないか。 ▪️ハムスター▪️ あの時君はお腹がすいていたんだろう?私を食べたとして、何が悪いことなんだい? ▪️猫▪️ え?つまり君を殺すところだったんだよ? ▪️ハムスター▪️ その時、私たちはお互いを知らなかったじゃないか。君も私も食べなければ死んでしまう。それだったら仕方のないことじゃないの?何も悪くないじゃないか。 ▪️猫▪️考える。 そう言えば私を追い回した人間が違う人間に良いことをしたと褒められていたな。私はあんな酷いことをされたのに。良いこと、悪いことって何だろう? 二匹は木の陰で休んでいた。 そうしていたら、遠くから黒猫が近づいて来た。 ▪️黒猫▪️ 美味しそうなの持ってるね。食べないならちょうだい。 ▪️猫▪️ この子は食べ物じゃない!大事な友達だ! ▪️黒猫▪️ 変な奴だな。おかしいんじゃないか?それは食べ物じゃないか。 ▪️猫▪️ 私はおかしくない!お前がおかしいんだ! ▪️黒猫▪️ 他の仲間に聞いてみるか?どっちがおかしいか。まあ変な奴の相手はしてられないな。 そう言って黒猫はその場を去った。ハムスターは怯えていた。 ▪️猫▪️ 私はおかしいのかな? ▪️ハムスター▪️ おかしくないよ。友達を守っただけじゃないか。守ってくれて、ありがとう。 ▪️猫▪️考える。 あの黒猫は私のことをおかしいと言った。だけど友達はおかしくないと言った。どっちが正しいんだろう。 ある日の夕方、二匹は空を眺めていた。 ▪️猫▪️ 黒猫と私はどっちが正しいんだろう? ▪️ハムスター▪️ 私にとっては君の方が正しいよ。 ▪️猫▪️ でも、黒猫の仲間は黒猫の方が正しいって思ってるだろうね。正しいって何だろう? ▪️ハムスター▪️ 君が正しいと思ってるなら、それは正しいんじゃないかな?私も君と同じ考えだし。 ▪️猫▪️考える。 いろんな考え方があるんだな。つまり、正しいも間違ってるもないのかもしれない。 ▪️猫▪️ あの黒猫は私のことをおかしいと言った。黒猫にとってはそうなんだろう。でも私と君は私がおかしいと思っていない。ただそれだけのことなのかもしれない。私は考えを変えないし、黒猫もそうだろう。でも、それで良いんだろうね。 ▪️ハムスター▪️ そうかもしれないね。ただ、自分の考え、価値観を持つのは良いけど、それを傷つけるように言う必要はないと思うよ。ただ、必要だと思うものを持っていけば良い。 -二匹は、眠った-
飲み干したはずの味噌汁のお椀の底に、豆腐が一欠片、へばり付いているのにキヨは気付いた。くの字の背中を更に曲げてお椀を掴み、口を付け、天を仰ぐように上を向いた。豆腐が嫌々ながらもキヨの口の中へと滑り落ちてゆくのと同時に、看護師が叫んだ。「キヨさん、背中が、背中が今」、「まっすぐよ」
そのドラゴンは片翼だった。 兄弟は生まれた時から五体満足で、片翼のドラゴンをよく馬鹿にしていた。 「空も飛べない癖に。すぐ餓死するのがオチだ」 今日も兄弟は獲物を狩りに空を飛び回る。 しかし、片翼のドラゴンは知っている。空を飛べずとも、この地上にも自分が生きていく為に必要な食べ物が揃っていることを。 巣から出て、片翼のドラゴンはじめっとした洞窟に入る。 少し進むと、青白く光るキノコが群生していた。 思う存分に頬張ると、甘く香ばしい味が口いっぱいに広がった。 兄弟は誰も気付いていない。 片翼のドラゴンが、片翼ではなくなったことに。 生きる為に見つけたそのキノコは、どんな願いも叶える、誰もが追い求めた秘薬だったのだ。
「ねえ、あの子」 少女は笑いながら、瘦せ細った猫を抱くもう一人の少女を指差して嘲笑う。 「ボロ雑巾みたいな猫抱いちゃって! あの子にお似合いだね!」 ボロボロになった茶色の服を纏った艶の無い茶髪の少女は、確実に貴族街で浮いていた。 「私、ああはなりたくないなー!」 貴族というだけで何が偉いのだろう。 笑いものにされた少女は、猫を撫でながら澄んだ空を見上げる。 「私も先月までは貴女と同じことを思ってた。貴女は私みたいにならないと良いね」 香水のつんとした匂いを残して走り出す金髪の少女に、届かない程の声量でぽつりと呟いた。
ごはんを 食べなくなって しまったのは この暑さのせい ではなくて 食べると 汗がぶわっと 噴きだしてくるあれが いやでいやで だから この暑さのせい ということでも いいのかな あれ? 扇風機 どうやるんだっけ ああ コンセント入れて ボタン押すだけかあ 簡単 簡単 わすれてた わすれてた あっははは 長らく わすれていた恋愛 キミとのことも これくらい簡単に いけばいいのにね まずは あした 声を かけてみるかな クリームソーダの話でも してみようかな
我田引水、という言葉がある。意味は、他人のことを考えず、自分に都合がいいように言ったり行動したりすること。あるいは、自分に好都合なように取りはからうこと。自分の田んぼにだけ水を引き入れる意からだそうだ。 私は今、そのような人物たちから連絡がひっきりなしに押し寄せていて、疲労困憊だ。というのも、私は米農家なのだが、昨今のコメの価格高騰により、あまり面識のない人からも米を安く売ってくれと頼まれているのだ。いわゆる、お友達価格で、という訳だ。 当然、私は断った。そんな贔屓をすることは、誠意がない。それに、昔の知人の多くは、私が家業を継いで米農家になると決めたとき見下してきた奴らばかりだ。 そんなある日、一日の作業を終えて一息つこうと思ったら、宅配便が来た。私は辟易しながら荷物を確かめる。米をたかりに連絡してくる人のなかには、こうして賄賂のように何かを送り付けてくることもある。それだけならまだしも、たちの悪いことに受け取ったからには取引は成立したと言い、米を強引に要求する手口も使うのだ。 だが、そんな私の鬱屈とした気分は、送り主の名前を見て晴れた。母親からの荷物だ。米農家を引退して妹夫婦の住む静岡県に移住した両親は、何かとひとり暮らしの私を気にかけてくれている。 私は喜びをかみしめ、親孝行をしなくてはと思いつつ、荷物を開封した。中身は静岡県産の深蒸し茶だった。私の好物を覚えていてくれたのかと驚き、嬉しく思った。 深蒸し茶を宅配用の段ボール箱から取り出すと、底にメッセージカードがあることに気づいた。私は何の気なしにそのカードの文字を読む。そして、硬直する。 そこには、私が嫌悪する知人未満たちと同じように、米を要求する文章が書かれていたのだ。 ―――――― お題:「稲」「一日」「茶」
お庭の水やり めんどうな時期が やってきた 暑くって 暑くって お庭に出ていくのでさえ 嫌になってしまう 暑くって 暑くって 電線の上の鳥たちも ちょちょちょん ちょちょちょん 暑さを訴えているよう けれど ちょぴっとだけ いいかも と思えるような季節 でもある 顔にあたる 水のかおりが なんとも よさげ 水やりを終え すこし休んだら あれをやって これもやって こころが いい雰囲気で 動いていくよう 背中をさしてくる 太陽の日ざしは 容赦がないけれど そのあとに待っている 冷えた麦茶が 絶妙に光明 すこし ミルクを入れてみたり 今年は 麦わら帽子でも 買ってみようか かたわらに メモを残す 火照った顔が やっとほころぶ
たしか正確には「社会通念動向適応型標準指針通知システム」という、お役所らしい無味乾燥な名前だった。でも、そんな名前は誰も使わず「ただしさルーレット」と呼んでいた。 何ヶ月かに一度、月の初めに「ただしさルーレット」が「通念指針」を発表する。個人の端末に通知が届き、テレビや広告はその指針一色になる。それが社会に浸透する頃には、「こうすべきだ」という空気が生まれ、みんながそれに従う。 何年か前に「人は見た目じゃない」という指針が出た時は、個性は見た目じゃなく内面で醸し出すもの、という空気が生まれ、人々の服装はどれも同じような服装になり、芸能人の顔もほぼ同じになった。あの時は頭がおかしくなりそうだった。 去年、「水に感謝を」と指針が出た時は、メーカーがこぞって「感謝メーター」を売り出したのは面白かった。テレビでは水を使うたびに感謝の言葉を贈る人々が映っていたし、どこかのプール開きでは総理大臣が「水を大量に使ってごめんなさい。」とよく分からない挨拶をしていた。 今ではこんな社会だが、昔は違ったらしい。 どこかの国で、何かが「ただしい」とされると、そうでないものは社会悪とされた。そして、「ただしい」ことに適応する頃には、別の「ただしい」が生まれ、次々変わっていった。 端的に言えば、みんな疲れ果てていたのだろう。どこかの博士はこう考えたんだと思う「いっその事、ランダムにしちゃえ」 そんなわけで「ただしさルーレット」ができ、遠くの国の正しさではなく、機械のつくるただしさに従い我々は生きている。 ちなみにルーレットと呼ばれているが実際は難しい計算で出力されているらしい。理解できないのだからルーレットと同じではないか、とはまったく同意だ。 様々な指針が示され、変わっていく。それでも、どこかの誰かが決めた正しさでなく、結局振り回されるなら「ただしさルーレット」があるだけマシだ。なにしろ、お互いがいがみ合わなくていい。 なんだかんだ我々は幸福だと思う。いや、思っていた。 先々月の初めに「先を行くものは、続くもののために」という指針が出た。 社会に吹き荒れたのは高齢者へのバッシングだった。 特に退職した高齢者へは、後進に道を譲れ、それは素晴らしく正しいことだ、と。要は「死んでしまえ」と公然と発信された。 テレビでは連日「迷惑をかけない道の譲り方」と称して自殺の方法や、遺書の書き方を放送している。 そんな事が続いたからこそ、母親が電話に出ないのが、不安だったのだ。 女手一つで私を育てた母親だった。 先日ようやく仕事に区切りがつき、「あとはあんたに養ってもらうからね」と笑っていた。いつも凛々しく逞しい自慢の母親だった。 扉を開けた時、母親はすでに死んでいた。 机には大量の睡眠薬と、「あんたに養ってもらうより、道を譲る方が正しいよね」という手紙が置かれていた。 よく覚えていないが、葬式はした。 ちゃんと見送りたかったが、先に行く人に金や時間を費やすのは「ただしくない」ことだそうだ。結局は形だけの葬式になった。友人と話すのが好きだった母だ、最期もきっと見送ってほしかったはずだ。 なんだこれは。 懸命に生きた母にこんな見送りをすることが、本当に「ただしい」ことなのか? いや、そんなわけあってたまるか。 これまで私は傍観者だった。ただ流されていた。自分に影響がないと思っていたからだ。今は違う。こんな社会は間違っている。だから決意した、「ただしさルーレット」を破壊する。 私は仲間を集めた。およそ正しくないと評された者たちが集まった。実行計画も話しながら進めた。詳細はここには書かない。 私は社会を破壊しようとしている。こんなのは正しくない。わかってる。しかし、このままではいけないのだ。覚悟を決める。 決行の日。中枢は大きなビルにあった。まるで昔のアクション映画の気分だ。あれも自粛されて長らく見ていないが。 警備をくぐり抜け、システムの前に立った。 ちょうど日付が変わった。すると、「ただしさルーレット」から通知が届いた。新たな指針だ。 「正しいことは自分が決める」 そうだ。そのとおりだ。 つまり、私たちが正義だ。 つまり、これは正しいことだ。 勢いづいた私たちは、一気にシステムを停止させた。 そして、血の気の多い仲間がハンマーを取り出し、振り下ろした。大きな音がした。 私も叩いた。 仲間も叩いた。 みんなで叩いた。 私たちはただしく、正義だった。 目の前には鉄屑になった「ただしさルーレット」があった。 ふと気づく。明日から私たちはどう生きるのが正しいのだろう。 それを示すシステムはもうない。 指針が届くこともない。 私たちが破壊したのだから。 生きていくしかないらしい。 ただしさのないこの世界で。
カーテンの隙間から差し込んだ光に細く瞼を開ける。急に飛び込んだ強い光に一度目を閉じ、再度覚醒に至る太陽光を視界に捉えた。 起きるか、と一人口に出してため息を飲み込みベッドから降りる。キッチンに向かってマグカップを取り出し、ポットのお湯を使ってコーヒーを用意する。 普段はブラックなんて苦くて飲まないのに、今日はなんだか砂糖をいれる気も起きず、白いマグカップの中の黒いコーヒーを少し眺めて、リビングのテーブルの前に腰を下ろした。 テレビをつければ、朝のニュース番組が今日の交通事故について報道していて、冬ならではの注意喚起を訴えている。確かに昨日まで天候は不安定で、昨夜のニュースでも路面凍結について話していたかとぼんやり思い起こしながら、コーヒーに口をつける。 舌の上に広がる苦みに眉が寄ってしまうが、やはり甘みを足す気にはならなくて。自分の心情を分析しながら嘲笑が漏れた。 結構さっぱりした性格だと思っていたが、人間って環境次第で変わるもんなんだな。 昔は引っ込み思案で、他人に興味もなくて、むしろ人の顔色を窺って黙っているタイプだった。それが周囲を遠ざけて孤立する要因だと今ではわかるが、当時は悪いことをしていないのにと疑問だった。 だからといって友達がほしいわけでもなかったから放置していた結果、今の俺がいる。そう思っていた。 どうやら俺の言う“今”は、昨日までのことを言うらしい。今日の俺は随分と未練がましい男で、寂しさで心に穴を開けたような気分に憂鬱としている。 一人で過ごすには少し広いが、あと一か月の付き合いと思えばなんだか寂寥感も湧いてくるというもので、そんな自分に少し笑いが漏れた。その寂寥感の正体が、彼女の残滓だということくらい、すぐに当たりがついたから。 縋ればよかったのだろうか? 抱きしめればよかった? でもあの場で首を横に振れば、きっと酷く困らせてしまうから。 少しだけ泣きそうな顔で笑った彼女のあの言葉だけが鮮明で、送り出してしまった後で潤んだ目の理由を訊けばよかったと一粒の後悔が心臓に落ちる。 そうしたら、俺の“明日”は変わっていたかもしれない。 俺の“今”は真逆の道へ進んでいたかもしれない。もしもの羅列が脳内に浮かんでは消えて、浮かんでは弾けて、思考を止めるように温くなっていくコーヒーを三分の一ほど流し込む。 ニュース番組は年末の特集へと移って、土曜日のショッピングモールの様子を中継している。人で溢れかえった店内はとても行く気が起きなくて、買い物に行くのは夕方にしようと今日一日の計画を練り始める。 この部屋の大掃除はどこから手を付けようか、昼は何を食べようか、夕飯の買い出しは何時に出て、何を買ってこようか。 相談相手がいないだけで、これほど自分の世話が面倒になるとは思わなかった。いや、正確には面倒に思うとは予想外だった。あの日までは当然のこととしてまるで機械的に過ごしていたから。 ニュースが終わると同時に空になったマグカップを持ち、キッチンへと移動する。泡立てたスポンジで洗って、流水ですすいで、布巾で水滴をとってから食器棚へ片付ける。 使ったらすぐに洗って片付ける! と最初の頃によく言われて、結果習慣になったことの一つ。昔は水につけたりつけなかったり放置したり、後になって面倒になっていたことが少しの手間で解消できるようになったのは彼女から学んだこと。 まだ若い方だから次を見据えることも可能ではあるけれど、彼女からもらったものが多すぎて、大きすぎて、次への一歩を踏み出す場所もわかっているのに、ただその歩きだす道を見ているだけの俺に、彼女はなんと言うだろうか? “今”考えても無益だということは重々承知なのだが、カーテンの色やテーブルの形、二人掛けのソファーや二人分の食器、部屋のあちこちに彼女が残っていて、いやでも脳裏に思い出が焦げ付く。 彼女の笑顔も仕草も、ずっと好きだった、いつまでも好きだった。彼女からの好意も自覚していた、言葉にもしてくれていた。 嘘をつくのが苦手な彼女の隠し事はいつだって見破れてた、けれどあの言葉だけが俺の中で見つけられなかった“本当”で。俺の中でも納得してしまった“本当”で。 手を離さなければ変わっていた“明日”、手を離してしまった“昨日”。けれどそこに俺の“今日”を見つけるのは難しくて。 だから誰かの“明日”を探す。だから誰かの“昨日”を辿る。 “今日”を塗り潰すようにして、自身の“昨日”を追いかけるのだ。彼女の“明日”から目を背けるのだ。 だから彼女の言葉は、俺たちにとって正しい選択だったのだと、そう信じるしかなかった。 『私たち、愛にはならなかったんだよ』 俺たちは、そういう恋だった。
防音マスクを買ってみた。 これをつければ、自分の声がマスクによって遮られ、何を口にしても相手に聞こえなくなるらしい。 「うるせー! はげ!」 嫌いな上司に叫んでも聞こえない。 「めっちゃおっぱい大きい!」 すれ違った美人に叫んでも聞こえない。 「今からここにいる全員で、殺し合いをしてもらいまーす!」 スクランブル交差点で叫んでも聞こえない。 自分が口にしたいことを全て口にできるって、なんて幸せなことなんだろう。 全裸で走り回っているくらいに、開放感がありすぎた。 防音マスクの噂は、どんどん広がっていく。 皆、どんどんつけていく。 いつしか街には沈黙が訪れて、人でごった返すスクランブル交差点すら人の声が消えた。 聞こえるのは動画広告と車の走る音のみ。 どこかの誰かとすれ違う。 防音マスクの中がもごもごと動いている気がした。 ぼくに向かって悪口を言っているのではないか。 そんな不安が頭をよぎった。 何も聞こえない。 何もわからない。 人の声を処理していた脳の機能が衰えて、代わりに不安を煽る気の腕も発達してしまったのだろうか。 最近、不安でしょうがない。 声が聞きたくてしょうがない。 周囲の人たちが、何を考えているのかわからなくて恐い。 信号が青になる。 スクランブル交差点を歩き始める。 向かい側から歩いてくる、無数の無言の集団 あの中に、ぼくを殺そうと狙う殺人鬼は何にいるのだろうか。 「おげえええええええ」 ぼくはその場に思いっきりゲロをぶちまけて、連鎖的に後ろから似たような音が聞こえた。
Other girl called Richard will recover and head of that car. I barely had to tell anybody that probably have I could, but I have that I have a very very broke, but I had to cut about a couple to get up. I have deadly that I go to come over we have that package, but I could definitely hear that and back to the web cover here that right about but definitely hit him with that. How do I go on and I don’t have any time right now we have about a half hour to go to the store how do I get break in Hambro Harbor very had to be down for a while. I have a broken bed. They broke up that we have did that and we get to go to cover recovery. Have a have a bad day, but it already been dead we have a buckle we deal with that with that has been covered, but we have about a day without with that cup cup with that bag that I had that done that had to go really badly that way that I want to book club while we have a car with that cab car with that car that I have a dead dead with that rocket Friday break up with without a cup of water that will cover that with that with that will be that head back cab had a cab without have a ride with the head of the walker down the bike could have a Edmonton chat table about traveling now and the company woke up with that for me anyway we have a travel to call my break. I wanna go back and back walk head that way I have a book I have a cup I have and how do I go about that we have without have that play with that Alba is there without I’d like to have a break, but we had a bad worker break up. I bought that we have a break up with that and talk about that but they have we did a cupboard that I definitely have that that I could come over we have a company. I have a couple that we have a lot of that with dad and I have a black dead at the back of a block block. I have I already have a bad deal with that with that and I have a black dead, dead body be dead come here whatever that was out that I’m gonna have to go to with that bottom of a black rock
こんなにも弱い生き物が、何故地球上で繁栄できたのだろう?
話をすれば 理解してもらえる 互いに理解し合える そう思っていたから がまん強く しんぼうしんぼう 好かないヤツ 嫌なヤツ そのときばかりは耐えて 話しかけていたりもしたけれど 話のあと 前より理解し難くなっている さらに嫌いになっている そのことが ふしぎでならなかった いまは 理解しようとも思わなくなった そもそも こっちが 理解し合おうと思っていたとしても あっちは そんなこと まったく思っていない それじゃあ 話にならない だから 話し合いにすらならない 失望 ではない 絶望だ そういう音がした わたしのなかで あっちは どうだったのか そんなの 知らない