カーテンを少しだけ開けて、外を見る。 家の周りにはバットや金槌を持った人々が集まり、塀をがんがんと叩いている。 「はー。今日もいるのか」 このままでは、外出一つできやしない。 私は警備会社へと電話した。 「移動用の車を一台」 「申し訳ありません。既にすべての車がご予約で埋まっておりまして」 「はあ!? なんのために、高い金を出して契約してると思ってるんだ!」 「……お言葉ですが、運転手がいないのは、あなた方の世代が子供を作らなかったせいですよ? 労働力を生み出さずに、労働力が当たり前にあると思うなんて図々しい」 電話が切られた。 何度かけ直しても、電話は繋がらない。 銀行アプリから通知が届き、サービス利用キャンセルの払戻金が振り込まれた。 「くっそ! 勝手にキャンセルしてんじゃねえよ!」 銀行アプリに溜まる、莫大な金。 凡人が人生何周しても手に入らない、莫大な金。 しかし、使おうとして断られる今、この価値が俺の中で揺らいでいる。 国が荒れたら、国外に逃げればいい。 そう思っていた数年前の俺を殴りたい。 空港が占拠され、家の周りを囲まれては、国外に逃げるなんて選択肢があるはずもない。 「……今日も出前か」 俺は、ピザ屋へと電話した。 「ピザ一枚」 「ただいま大変込み合っておりまして、お届け三時間後でもよろしいでしょうか?」 「よろしい! よろしい! いつでもいいから、届けてくれ!」 「かしこまりましたー!」 あらゆるインフラは、底辺に支えられている。 警備も、出前も、家を囲む暴徒たちが金を得るためにやっている。 「お待たせしましたー。ピザとなります」 玄関には、先日、俺の家の壁を叩いていた男が笑顔で立っていた。 俺は金を払って、ピザを受け取った。 男は、バットや金槌を持った人々の間を、平然と抜けてピザ屋へと戻っていった。 加害者と、被害者を守る人間が、同一である世界。 こんなゲームチェンジが起こるなんて、資本主義に胡坐をかいている時は思わなかった。 俺は冷めたピザを取り出して、一口齧った。 「美味い」
「いつもありがとう。」 動かしていた手を止めて君が言った。不意を突かれてポカンとしている僕をいつになく柔らかい笑顔で見る君。 「どうしたんだい、急に?君らしくもないね。」 君の笑顔につられて口角を上げる。パソコンを打つ手を止めて君の方を向いた。 「うーんとね。なんとなく。」 にっこり笑う姿が愛おしくてまじまじと君を見つめる。すると、自分の言ったことを思い返して恥ずかしくなったのか、頬と耳を赤くして真っ白な布団に隠れてしまった。 「ねぇ、明日も来てくれる?」 布団の中からくぐもった声が聞こえる。 「もちろんだよ。明日はママも一緒に来るからね。」 僕の言葉に「ほんと!」と元気いっぱいに布団から出る。ほんとだよと言いながら君の頭にポンと手を乗せる。 いきなりで驚いたのか最初は少し遠ざかったが、すぐにもっともっとと言わんばかりに頭をグイグイ押し付けてきた。あまりに可愛かったので今度は両手でわしゃわしゃと頭撫でた。「やめてよー!」と言いながらもキャッキャと喜ぶ姿に嬉しさが込み上げてきた。 この日々がずっと続けばいいのにな。 ふと時計を見る。そろそろ帰らなければならないな。 「ごめんね。もう帰らなきゃ。」 さっきまでの笑顔が寂しさを纏う。それでも頑張って笑いながら君は「バイバイ」と手を振った。 「じゃあねパパ。明日もきっときてね。」 「明日も来るよ」そう言いながら僕は病室を後にした。 明日もまた、君の笑顔が見れますように。
ある日の午後。 色彩心理学の教授が、学生を前にマイクを握った。 「皆さん、人の購買意欲を引き出す色って、何色あると思いますか?」 「それって、4大販売色のことですか?」 「そのとおり。その中で赤が一番、購買意欲をかき立てると言われてます。チラシに赤色が多いのは、それが理由ですね」 学生たちは耳を傾け、ノートを取った。 「色が人間の感情や行動に、どんな影響を与えるか。なんですが……」 教授の合図で、正面のスクリーンに映像が流れた。 「これを見てください」 手のひらサイズの、四角く、縁が少し錆びた赤色の缶が、道路脇の草むらに置かれている。 「缶の中にはですね、石ころを二つ入れてます。少し重みを感じますかね」 隠しカメラで撮られた映像に、スーツ姿の男が現れた。 男は赤い缶に気づくと、周りを気にしながら手に取り、蓋を開けた。 「なんだ、これ」 男は赤い缶を、草むらに投げた。 映像が替わり、ブランド物の服を着た女が画面に映った。 女は辺りを見回すと、バッグの中に缶を入れた。 画面から消えたあと、カラカラと音がして、草むらに缶が転がった。 「先生。これは何の実験ですか?」 最前列の学生が手を挙げた。 「これですか……ただの面白動画ですね」
保護費支給まであと2週間。 大体の飯は買ってあるが肉が足りない。 デイケアの食券代を煙草に変える。 うむ、クズである。 あとで残ったお金でセールのお肉買ってこなきゃ。 食券残り3枚。 お昼のお弁当を作るので5日分の豚肉が必要だ。 1日100gとして500gの豚肉。 安く買えて¥550。 残り¥1000。 野菜も買うのでこれ以上煙草を買うとマズい。 ニコ中の食料事情は切ない。
踊り場のドアは、五秒だけ開いたままだった。 団地の四階と五階のあいだにある、重い鉄のドアだった。押すたびに腹の底へ響くような音がして、閉まるときには必ず、最後に少しだけ息を吸う。 夕方の階段には、煮物の匂いが薄く漂っていた。 下の階から、老婆が上がってきた。 両手に買い物袋を提げている。白いレジ袋の中で、大根の葉が少しだけはみ出していた。袋はどちらも重そうで、老婆は一段上がるたびに、手首を小さく揺らした。 三階の踊り場で、青年が追い越した。 黒いパーカーに、片方だけイヤホン。手にはスマホを持っていた。老婆の横をすり抜けるとき、青年は何も言わなかった。老婆も何も言わなかった。 ただ、老婆は少しだけ体を壁に寄せた。 青年は軽い足音で階段を上がっていった。 四階の踊り場に着くと、青年は鉄のドアを押した。外廊下へ出るためのドアだった。 ぎい、と音がした。 そのまま行くのだと思った。 けれど、青年はドアの向こうへ出なかった。 半身だけ外へ出し、肩でドアを押さえたまま、スマホに目を落とした。 老婆はまだ、階段の途中にいた。 右手の袋が、何度も膝に当たっていた。左手の袋は、底の角が少し伸びている。中の何かが、ビニールを押していた。 青年は画面を見ていた。 親指は動いていない。 老婆は一段ずつ上がった。 踊り場まで、あと七段。 あと六段。 あと五段。 鉄のドアは、青年の肩で止まっていた。 冬の風が、外廊下から細く入り込んでいた。青年のパーカーの裾が少し揺れる。ドアの取っ手が、青年の背中の横で小さく震えた。 老婆は四階の踊り場に着いた。 息を整えるように、そこで一度立ち止まった。 青年はまだスマホを見ていた。 老婆は青年の横を通った。買い物袋が、青年の靴の先をかすめそうになった。 その瞬間だけ、青年は足を半歩引いた。 老婆が外廊下へ出た。 鉄のドアは、すぐには閉まらなかった。 老婆は少し振り返った。 青年は画面を見ている。 それから、老婆は小さく頭を下げた。 深い礼ではなかった。買い物袋の重さで、首だけが少し沈んだような会釈だった。 青年は気づいていないふりをした。 画面を見たまま、ほんの少しだけ顎を引いた。 老婆が廊下の奥へ歩いていく。 青年はドアから肩を外した。 鉄のドアは、ゆっくり閉まりはじめた。最後に息を吸うような間があって、それから、低い音で閉じた。 階段に、夕方の匂いが戻った。 青年はスマホを持ち直した。 画面は真っ暗だった。 通知も、動画も、地図も、何も映っていなかった。 青年はそれをポケットにしまい、五階へ続く階段を上がった。 四階の外廊下では、老婆が自分の部屋の前で鍵を探していた。買い物袋を一つ足元に置き、もう一つを腕に掛けたまま、ゆっくりポケットを探っている。 青年は一度だけ、階段の途中で足を止めた。 ドア越しに、鍵の触れ合う小さな音がした。 それを聞いてから、青年はまた階段を上がった。 五階の踊り場に着くと、同じ鉄のドアがあった。 青年はそれを押した。 今度は、誰も後ろにいなかった。 それでも青年は、すぐには手を離さなかった。 五秒だけ、ドアを開けたままにした。 それから、誰にも見られないまま、静かに外へ出た。
宇宙空間の端っこ。 地球からずいぶん離れたところに、知的生命体の住む星があった。 「偵察隊からの連絡は、まだないのか」 「はい。通信は途絶えたままです」 この星の研究者たちは、移住先を探すため偵察隊を送り出していた。 「早く見つけないと…」 科学技術は進んだ。しかし、それと同じくらい自然破壊も進んだ。 「室長。我々は、どうしたらいいんでしょうか」 「わからん。彼らからの連絡を待つしかない」 その時、微かな電波を受信した。 「ん…何かのニュース映像みたいだぞ」 「おぉ。見てみろ」 画面の前に、大勢が集まった。 「偵察隊が、歓迎されてるぞ」 画面は、そこで切れた。 「もう、向こうで生活してたんだ。室長、我々も今すぐ行きましょう」 皆、宇宙船に乗り込み、偵察隊の待つ地球へと旅立った。 誰もいなくなった星。 研究室の受信画面から、映像の続きが流れ出す。 マイクを持った女性が、水槽の中を覗き込んだ。 「今年も、ここから全国に出荷されます」
彼は、小説を書いていた。それは、水のおいしさについて。 「水ってさ、無味無臭で、しかも透明じゃん。でも、なんか他のドリンクよりもおいしい気がするんだよね」 嬉々としてしゃべる彼に対して「そんなの錯覚でしょ」と言い返したことを、いまだに覚えている。 あの時は卑屈だった。べつに水がおいしいとか、おいしくないとか、今になって考えたらどうでもいい。でも、彼は水がおいしいと感じて、その気持ちを文章にしてみたいと思った。この行いには、きっと価値があったのだと思う。 結局、彼の小説は完成しなかった。それは、私の卑屈な返事で彼の胸をえぐったからなのかもしれない。水のおいしさを言語化するのは、たんに難しいからだったのかもしれない。 べつに完成しなかったからといって悲しむわけでもなく、完成したところで「だから、どうした」程度の話になっていたと思う。 それでも、おもむろに水道水をひねって出す時。透かした先がよく見えたり、ぼやけて見えなかったりする。そんな液体に心と手を動かされた者がいる。ただそれだけのことを、今後も覚えていたい。
また、目が覚めた。 時計を見ると、午前二時を少し回ったところだ。カーテンの隙間から、街灯の薄い光が斜めに差し込んでいる。 暗闇から夫の寝息が聞こえる。規則正しい、穏やかな音。それが今夜はやけに遠くに感じられた。 体が重く、自分の心臓の音が頭に響く。 この状態はもう何ヶ月も続いていた。 午前中から肩が張って、昼を過ぎると頭の芯がじんと痺れるような感覚が来る。 締め切りと、報告書と、部下への返信と。仕事を終えても今度は家のことが待っている。 子どもたちが独立して夫婦二人になっても、私が楽になったわけではなかった。 先週、部下の女の子に「係長って、いつ休んでるんですか」と聞かれた。笑って誤魔化したけれど、帰りの電車の中でその言葉がずっと頭の中をぐるぐるしていた。 ──私はいつ休んでいるのだろう。 夜中に目が覚めて天井を見ているこの瞬間も、何かを考え続けている。 起き上がるのも億劫で、しばらく横になったまま闇を見ていた。波のように押し寄せる熱感と、胸の奥の鈍い動悸。 婦人科では「更年期の症状ですね」とさらりと言われた。そうですか、と答えながら、私はなぜか少し泣きたくなった。 病気ではない。異常ではない。ただ、年齢というものに、現実を思い知らされただけだ。 寝返りを打ち、頬に当たる枕の冷たさに息をつく。 ふいに、思い出した。 大学二年の初夏のことだ。 **** 同じゼミに、田辺という男がいた。 特別に目立つわけでも、よく喋るわけでもない。人の話を聞くとき、少し伏し目がちになって、静かに頷く癖があった。 いつのことか、教授の誤りを指摘していた。 相手の考えを否定するのではなく、尊重しながら指摘する様子が、心にとまった。 その日から、彼の発言が気になるようになった。ただそれだけだ。 六月の終わりだったと思う。図書館の閲覧室で、偶然隣り合わせになった。 お互い黙って本を読んでいたけれど、私が参考文献を棚に戻しに立とうとした瞬間、彼も同じタイミングで立ち上がって、肩が、触れた。 本当に、ほんの一瞬のことだった。 「あ、すみません」と私が言って、「いえ」と彼が言った。 それだけなのに、自分の席に戻ったあと、ページを繰る手が少し震えている。胸の中心に、火が灯ったような感覚があった。あんな感覚は、後にも先にも、あのときだけだったと思う。 彼とは、それ以上何もなかった。ゼミが終われば接点はなくなり、卒業式で遠くに姿を見かけたのが最後だった。 名前を呼んだわけでも、連絡先を聞いたわけでもない。告白も、約束も、何も。 それなのに、あの肩の感触だけが、二十五年経った今も、消えずにいる。 《刹那》という言葉の意味を、私はあの瞬間に体で覚えたのだと思う。 一瞬が、永遠よりも長く感じられることがある。世界がその一点に凝縮されて、私の心臓だけがひどく速く動いていた。 あの図書館の、夏が始まる少し湿っぽい空気の匂いまで、今でも鮮やかに思い出せる。 **** 今の私に、あんな瞬間がどこにあるだろう。 月曜の朝から上司の顔色を読み、チームの数字を気にして、昼休みも席で弁当を食べながらメールを返す。 家に帰れば今度は別の役割が待っていて、私はずっと誰かの何かであり続けて、自分がただの《私》でいられる時間が、どこにもない。 体は悲鳴を上げているのに、立ち止まる場所が見当たらない。そのうちに感情は鈍化し、胸が熱くなるという感覚そのものを、どこかに置き忘れてきてしまった。 暗い天井を見ながら、私はそっと目を閉じた。 彼の横顔を思い浮かべる。伏し目がちになるときの、静かな目。 偶然触れた、肩のぬくもり。あの一瞬に確かにあった、息が止まるような感覚。 ──あれは恋だったのだろうか。 きっと、そうだった。形になる前に消えてしまったけれど、形にならなかったからこそ、純粋なまま残っている。傷つかなかった分だけ、あの刹那は今も光ったままでいる。 思い出の中の彼は、あの夏の午後の光の中に、ずっとそのままの顔で立っている。 夫の寝息が、遠くで続いている。 私はそっと、布団を引き上げた。肩まで包まって、目を閉じたまま、あの閲覧室の中に戻る。 窓の外で揺れていた青葉。冷房の効き始めた、少し肌寒い空気。そして、触れた肩のぬくもり。 この闇の中だけでいい。 誰にも言わない、誰にも見せない、この胸の奥の小さな灯。 明日になればまた、報告書と上司の顔と、帰りの重い足と向き合うことになるとしても。今夜だけは、あの刹那を抱いたまま眠ろう。 それでいい。 それでいいから、今夜だけは。
「ねぇ、キミ。何をしてるの?」 雨が降るのを待っているのです。 「えっ。でも、いつ雨が降るのかは、誰にも分からないでしょー」 もうすぐかもしれないでしょう。 「そりゃあ、まあ……でも、一週間先だったらどうするの。それでも待つの?」 待ちますよ。待つしかないですから。去る者、追わず。来る者、拒まず。私はそういう存在です。生まれた頃から、私には使命があるのです。 「それって生きづらくない? ぼくは、キミよりずっと自由だ。そのほうがいいと思ったりしないの?」 ええ。アナタは、私に比べたら、うんと伸び伸びとしていますね。でも、限りある場所で、限りある時間を精一杯に生きるほうが……。私のようなものには、ふさわしい。私には動かす手足も、揺らせるフリフリも無いですから。 「まあ、キミが納得しているのなら、それでいいさ」 フリルはありますけど。 「べつに、つっこまないよ」 残念です。 「雨が降ったらいいね」 ええ、私の頭がおかしくなる前に。せめて。自分の使命はまっとうできたと、思いたい。 「へえー」 ジメジメとした蒸し暑さと暮らしている。大きなワンルーム。 製氷機から氷を取り出す、あなた。その足取りは昨日よりも軽やかで。あなたがステップを踏むたびに、手のひらのマグカップでは水面がおどる。 今。ボクは意を決して、あなたのひざに飛びこむ。 ぱちゃっ。 上空まで、はねる飛沫。あなたの衝撃と困惑が、ボクの頭へと降りかかる。 「ちょっと、ポメ! ああ、もう。サイダー、こぼしちゃったよ……」 あなたは机上にマグを置いて。箱からティッシュを取り出し、せわしなく手を動かす。 床に広がっていく甘い水たまり。その水分を含んで重たくなった彼女が、ぐったりと横たわっている。 「あっ! ふれふれ坊主、落ちちゃってるじゃん!」 悲しそうに、あなたは眉をひそめる。これじゃあ、明日も仮病を使うのは無理か……と、わけのわからないことをぼやきながら。あなたは濡れたティッシュとともに、役目を終えた彼女をつかんで、ステンレスのかごに入れる。 ――よかったね。これでボクらも、明日は外でおさんぽできるよ! 肩をすぼめるあなたを励ましたくて。ボクは、めいいっぱい自分のしっぽを振って見せた。
僕は、幸福というものを、どうにも信じきれませんでした。 いや、幸福そのものではない。人々があまりにも器用に幸福を演技している、その技術のほうが恐ろしかったのです。 朝の電車では、無数の無表情が同じ方向へ運ばれてゆく。皆、同じ速度で歩き、同じような靴を履いている。その光景を見ていると、自分が巨大な工場の内部へ紛れ込んだような気分になりました。もっとも、黒煙を吐く古い工場ではない。静かで、清潔で、衛生的な工場です。 そこでは歯車たちが、自分を歯車だと知らぬまま回転していた。 僕も、その一つでした。 高校二年の春、担任教師は言いました。 「社会に必要とされる人間になれ」 僕は、“必要”という言葉が妙に気になったのです。 必要とは便利ということでしょうか。交換可能ということでしょうか。 けれど、そんな疑問を抱くたび、僕は自分を恥じました。教室では皆もっと快活だったからです。 「どこの大学行くの?」 「将来どうすんの?」 「年収って大事じゃね?」 彼らは悪人ではない。善良で、従順で、少し疲れていただけでした。 昼休みになると、教室にはスマートフォンの光が満ちる。誰かが踊り、誰かが炎上し、誰かが泣き、誰かが商品を宣伝している。 怒りも、恋も、思想も、死さえも、即座に消費されてゆく。 長い文章は読めない、と友人は言った。二十秒以上の動画は退屈だ、と別の友人が言った。 現代人は、思考する前に次の刺激へ移動する。怠惰なのではない。常に何かへ駆り立てられているのです。 成功しろ。 自己実現しろ。 努力しろ。 どこからともなく響く命令を、皆、自分自身の声だと思い込んでいた。 授業で教師は「自由意思」を説明していた。窓の外では運動部が怒鳴られながら走らされている。 僕は吹き出しそうになりました。しかし誰も笑わなかったので、僕も笑わなかった。 笑ってはいけない空気を察知する能力ばかり、年々上達してゆく。 最近の若者は個性を大事にしている、と大人は言う。けれど僕には、その個性が規格化された商品のバリエーションに見える時がありました。 流行の音楽。 流行の服。 流行の思想。 流行の反抗。 反抗でさえ様式化されていた。 ある日、古本屋で奇妙な本を読んだ。難解で陰気な本だったが、不思議な慰めがあった。 人間の不幸を、個人の弱さだけへ還元しない視線が、そこにはあったのである。 僕が弱いから苦しいのではない。もっと巨大で、無機質な何かが背後で動いている。 けれど、それを口にすれば「思想強いね」で片づけられる。 便利な言葉です。人間の苦悩を、一瞬でラベル化できる。 駅前の巨大モニターでは今日も広告が笑っている。 “あなたらしく生きよう。” “夢を叶えよう。” “人生をアップデート。” その言葉は少しも迷わない。まるで、この世界に敗者など存在しないと言いたげに。 しかし実際には、無数の敗者がいる。そしてその大半は、声を上げる気力さえ失っている。 夜、自室で天井を見つめていると、「おすすめ」が次々に表示される。 僕が何を欲しがるかを、機械のほうが先に知っている。その事実がどこか侮辱的でした。 自分は生きているのではなく、運用されているだけなのではないか。 そう思うことがある。 それでも朝になれば制服を着て、愛想笑いを浮かべ、模試の結果に一喜一憂するふりをする。 そうしなければならないからです。 現代では、失格することさえ難しいのかもしれません。 どれほど空虚でも、疲弊していても、とりあえず笑って働けるなら、社会はその人間を正常として処理する。 だから僕は今日も、壊れていないふりを続けているのです。
初めての契約。 昨日はできなかったこと。 日付と同時に判子を押されたみたい。 終わって、始まって、しまった。
五月の光は、残酷なほどに鮮やかで、それでいて瑞々しい。 意識に仲介されずとも、視界へ飛び込んでくるたくさんの緑。 自動ドアが開くとむせ返るようにわっと匂いが流れ込んでくる。 世界はいっせいに、新しい季節へと更新された。 手にしているエコバッグには「キミ」が好きだった人工的なシトラスの洗剤。 ひとりではじまった私の世界に、後からまざり込んできた「キミ」の匂い。 季節が変わっても、私の部屋の空気だけは「キミ」が決めた清潔の枠から、少しもはみ出ることはない。 それは、過去への執着ではなくて… もうとなりにいないのに「キミ」が好きだったものばかり買い集めてしまう。 それは、いつでもキミが帰ってこられる場所を維持するため。 私にとっての、終わりきれない静謐な作業。 ◇ 街路樹がしめし合わせたようにいっせいに葉を広げ、五月の陽射しをさえぎる。 アスファルトの上には若葉の隙間から漏れた光が、ゆらゆらと複雑な模様を落としている。 その影の輪郭をなぞるように「キミ」の歩幅に合わせ、一歩、また一歩、踏み抜いていく。 「もっと早く歩かないと季節に置いてかれるよ」 凛とした記憶のあの声が、私の足を動かすたったひとつの原動力。 ひとりのときは、もっとゆるやかだったはずの私のリズム。 「キミ」とのふれあいのなかで、速度は書きかえられてしまった。 速度を落とせば、からだのバランスが崩れてしまうような、そんな怖さ。 もう、この速さを手放せない。 眩しすぎる光のなか「キミ」の速度で「キミ」のいない場所へ向かって、正しく歩き続ける。 キミに恥じることのないように。 ◇ 朝の仕事前、公園のベンチに深く腰を下ろす。 若葉がこすれ合うかすかなざわめきが、そこここで空気とともに歩き出す。 頭の上を抜けていく風の気配を、どこか他人事のように聞きながら、スマホの画面に指を這わせる。 自分とは無縁なはずの野球のスコア。 ただの数字の羅列。 「キミ」が熱狂していた夢の続き。 勝ち負けに心をゆらす感情は、とっくにどこかへ置いてきたはずなのに。 これを確認しないと、今日という一日が正しく動き出してくれない。 私にとってのニュースとは、世間の慌ただしい動向ではない。 遠くにいる「キミ」という座標を更新し、静かに、眺めるだけ… 季節がどれほど鮮やかに移ろっても、変化することはない。 私の世界の照準は「キミ」という視点を介さない限り、決して合うことはない。 ◇ 限りなく透き通って、どこまでも抜けていくような緑の季節が、街の景色をぬりかえていく。 強い光は、建物の縁を鋭く削り、すべての輪郭を白くぼやかしてしまう。 私たちはもう、あのころのようにはいかない。 この光のなかを、並んで歩くことはない。 言葉を交わすことも、視線を重ねることだって。 それでも… 朝の光のなかで、私が選ぶ服の色には「キミ」の好みが混ざり合う。 「キミ」がいまどこかで口にしているコーヒーの苦さには、私のクセが残っている。 好き、という簡単な言葉でひとまとめにするには、あまりにも日常を侵食しすぎた習慣。 「キミ」をいまもなお、消えないルールとして、抱えたままに生きている。 この眩しい世界を、それぞれに、そして、別々に。 私は、正しく「キミ」と生きていく。
最近はネットから商品を購入する事が増えました。 少し前までは、ネットから商品を購入する事に何処か信用が置けなかったり、商品自体が画像だけでは分かりづらく購入し難かったのですが、最近はその商品説明に〈動画サイト〉が添付されてあり、それを見れば分かり易くなったのです。 これは使える これはちょっと無理か 動画を見て商品に自分の好みが合うかどうかが分かるのです。 これは私の場合だけなのかも知れませんが、読んだ文章よりも、目で見た音声付きの動画からより早い理解を得られています。 それは一発で分かると言っても良いぐらいの理解ですから、これ以上を求めるなら手にして触ってみるしかありません。 何を言いたいのか 自分の身の回り、仕事関係や、プライベート関係においても嫌な人、苦手な人、合わない人は絶対と言って良いほど存在しませんか。 残念ながら私もまだ…居られます。 ただ言えることは、以前よりか大幅に減って来たのです。 だから「まだ」と付けました。 私の場合、嫌な人の共通点は言動。あの嫌な部分を音声付きの動画と捉えました。要は嫌な見本である訳です。ご丁寧に私の目の前でやってくれますから非常に分かり易い。ただこちらは全く動画再生を希望はしていません。だから見ない。動画が勝手に流れていても興味がないから全く見ませんし、視界に入ってしまったとしても自分の脳にその情報が記録されません。 実際は居られますが、私個人的にその方は存在して居ないになります。こうやって存在を消してしまうのです。 おそらく正確にはコレだと思います。 自分の気持ちから消してしまう そうなってしまえば、これ迄の不快さが意外と軽くなるものです。 これ迄は自ら進んで読まなければ自分内に入り込まなかった嫌な情報が、現代は勝手に再生されてしまう動画として自分の視界に入り、気持ち部分に取り込み易くなったのかも知れません。 だからすぐ容量いっぱいで溢れてしまう。 最近は何故か疲れ易いというのにも納得してしまいます。 元々一人行動が好きな私は、おそらくこの容量が極端に小さくて疲れ易い筈なのに、そう思って来なかった。 自分に正直となれなかったのです。 だからこの気持ちから消してしまう方法が必要でした。 例えば可愛い子犬がキャンキャンと吠えていたり、小さな小鳥がピピピと鳴いていたら嫌な気分になるでしょうか。 「また吠えてんのね、鳴いてるね」になると思うのです。感覚はそれに近い。 あっ、嫌な人は決して可愛いくはないんですよ。 でもそう勝手に例えれば気分を崩したりしません。 ココ迄は気持ちから消したり変換する方法でしたが、嫌な人についてはこうも考えられます。 まだ自分が克服出来ていない部分 自分にとってこの嫌な人がその部分を克服するが為に登場してくれたという考え方です。嫌な人物になり敢えて目の前に登場したとでも言うのか、私としては別に登場しなくても…というのが本心ではありますが。 しかしこのパターンは克服と危険が表裏します。それは頑張り過ぎてしまうからです。 真面目、几帳面、部活動を頑張った人、すぐ没入してしまう人は特に要注意。 自分が悪い、まだまだ出来ていないと捉えがちになります。 そして克服出来なくて気分がとことん落ち込んでしまう。 これがモロに私の沼パターンでした。 私がこの沼から抜け出た方法、まずは克服なんて無理!と割り切ること。これは今の自分には出来ない事なのだと理解するのです。 何ならその嫌な人から即離れてしまう事も一手だと言えます。 出来る(克服する)をゴールに据えてしまうと危険域まで突っ込んでしまいます。 実際これがとても多い気がします。 もう一つ、その場に居続けるならサボるぐらいで実は丁度を理解する必要があります。 真面目過ぎはダメ。 私の現在地はこの辺りにあります。 というのも自分が自由に頑張れた時期は随分過去のものであり、歳を重ねて現在はそこ迄対応が出来ない年齢となっていました。 大事なのは、会社の為に働く程、一生は長く無いということ。自分の為にどうあるべきか、芯を間違えては一体何のため?が疑問として残ります。 凄く自分に正直になると分かるもので、結局は会社に、上司に、好かれようとしていた自分が居なかったか、ということ。 そんな事をしても収益面で会社が合わないと判断すれば解雇だし、会社は新しい人材を探し、ちゃんと新人材は登場します。 自分の気持ちや心を削っても収益でプラスにならないと判断されたらそこ迄の間柄なのだという事を踏まえるべきです。 自分が居易いところに身を置くという、このごく普通の主張。 心を大きくノビ出来る環境に居るか? 極めて重要な条件です。
その服を着るのに一年かかった。 それは彼にも分からなかった。なぜその服を着れなかったのか、なぜその服を着るだけにそれだけの時間がかかっててしまったのか、きっとそれは誰にも分からなかった。いや、彼にはやはり分かっていたのだろうか。見えない不安が彼の心を覆いつくし、分からない責任が彼の精神を圧し潰してしまったのかもしれない。だが事実として、彼はその服を途中まで着る、そして脱ぐという行為を繰り返し、一年経ってやっとその服を正しく着ることができた。 それは晴れた日の月曜日の朝のことだった。四角い小型な電子端末からいつも通り不快な音が鳴っていた。それは清々しいほどに嫌気のさす音だった。だが、それを設定したのは彼自身だった。彼は目を覚まし、なぜこんなにも不快な音を朝から聞かなければいけないのかと、うんざりしながら枕を後にした。 まず初めに顔を冷たい水で洗った。顔を上げると知らない誰かがいた。少し経ち、それが彼自身の顔だと気づいた。ぼんやりした頭で彼が思ったことは”何かがおかしい”、というただの妄言に近い違和感であり、それはおそらく客観的には何も意味しないが、彼の無意識にはとても重要な萌芽であったに違いなかった。そして彼は鏡の前から立ち去った。 ベットの反対側の壁には、一着の服が掛けられている。彼はそれを見て顔をしかめた。体がげんなりしていくのが分かる。その症状は脳を介さない脊椎からの直接反応だった(に違いない)。だが、彼の頭は嫌でも社会性を尊重していた。彼は一切無駄のない手際でシャツのボタンを留め上着に袖を通す。まるでそれは、その服を着るために生きている証のようだった。 きっと彼も分かっている。やはり何かがおかしいのだ。彼は先ほど着たその服を脱ぎ、壁に掛け直し、またベットで眠った。 次の日は不快音が聞こえる前に目を覚まし、一杯のコーヒーを淹れた。コーヒーの芳醇で香ばしい香りが起床後の体を巡り、活力へと変換された。彼はこの素晴らしい始まりに感謝した。人にはこんな朝が必要なのだ。そう思い、彼はもう一杯コーヒーを淹れた。今日も彼はその服を着ては脱いで、また壁に掛けなおした。 その次の日も、またその次の日も、些細な違いはあれど大体同じような朝が過ぎた。”何かがおかしい”というその違和感は、明確な形を帯びて速度を上げながら彼の中で膨張していく一方だった。 一週間が経ち、また月曜日がやってきた。壁に掛けられた服はどこかみすぼらしく見えた。それは何日も着脱を繰り返したことの証拠でもある。今日こそは確固たる意志で服を着なければいけない。いつになったら着るのかと彼自身うんざりしていた。だが結果は明らかだった。 そこから三週間が経った。彼の社会性はもう現代人の姿していない。だが、彼の幸福は前よりも人間らしい形をしていた。彼は毎日掃除をした。彼は規則正しい食事を心がけた。彼は適度な運動をした。彼はしっかりひげを剃った。それらのどれもが、その服を着ている時にできていないことだった。 彼にとってその服を着るという行為は、積み重ねてきた幸福を脱ぎ捨てるということであり、既に耐えがたい拷問の一つに陥っていた。今更それを着ることは本当に価値があることなのだろうか。これまで培ってきた全ては一体何だったのだろうか。きっと全てがおかしかったのだ。 彼にはもう、その服は必要なかった。壁に掛けられていたそれは床に崩れてしわしわになっていた。 彼は時間があるときに本を書いていた。内容は分からない。だがそれは、きっと彼があの朝に見つけた萌芽の種に関わることに違いない。種は蕾となり花を咲かせる。彼の使命はその花をきちんと咲かせることだった。なぜそれが彼の使命だったのかは誰にも分からない。代わりに人生は小説よりも奇なりということは誰もが知っていた。 彼は一年越しに、なぜかその服着ていた。そして彼は書き終わった本を手に持ち、そしてどこかへ行ってしまった。
(こんにちは、今からあなたはこの世界の主人公であり,モブに過ぎない気持ちをより一層感じさせる日を迎えられるようになりました。ありがとうございました)私のメールに一通不思議でとても興味深い文章が送られてきた。よくあるフィッシングメールなどの詐欺メールとは違って明らか本気な気がして胸がざわざわした。しかし何故か私一個人に対してメールが送られただけであり世間は何も変わらない空や時が流れていく。いつも私たちと同じ学生や,小学生が学校に向かっていく。確かにと少し思ってしまった。私は特別な人物であり,ただの一般人Bでしかないと自覚した,だが別にいい出来事など何も起こらず,ただの日常を私は淡々と,そして静かに過ぎ去っていった。電車がガタガタと音を立てながら私はいつもの,何も変わることない駅を出た。しかし出た瞬間私は戦慄した。異様なほどに私の顔のポスターや,コマーシャル商品と一緒に自分自身がポーズを取っていた。あまりにも怖く大学も折角着いたはずなのに颯爽と帰りたくなる気持ちが私の感情に襲ってくる。あまりにも突然で,とても怖くなった、バカッターや,バイトテロを起こしたら完全にプライベートがなくなるんだなと前々から思っていたがいざやられてしまうととても怖くなりすぎて嗚咽が止まらない。なぜだ,私はただメールがきただけなのに,理由も有耶無耶でただのメールではないと確信し再度メールを確認した。メールの送り主はSとゆうらしい,私は早速電話をかけた。しかし[今この電話番号は使われておりません]謎が謎を呼ぶとはこのことだなと思いながら絶望がまた襲ってくる。確かに有名人のように扱えわれているとは解釈のしようで思うことはできるがあまりにも度が過ぎている,しかもポスターや,商品モデルの許可は無し,プライバシーのプの字もなくただただ呆れる気持ちが沸々と湯のように湧き上がる。仕方ない,こんなことで悩んでたら社会人になった時困るだろと気持ちを抑えながらいつも通り,しかし不穏な気持ちで大学の授業に出席した。友達も別にポスターのことは気にする様子もなく呆気なく最終授業が終わった。なんだったんだよ、自分自信疲れて少しおかしくなってしまったのか?と思いながら家の戸を重く,そしてゆっくりとギーギー軋む音を立てながら開ける。もう無理だ,課題もやはり多くてもう疲れた,風呂入って夕飯作ってもう寝てしまおうと思いながら私はソファにぐったりとそしてずっしりと腰を下ろす。その時ピロン!と静かな家の中に音が響き渡る(今日1日お疲れ様でした。私自身おっしゃっていませんでしたね,Sと名乗っていますが今から真実をお伝えします。このメールはあなたの未来をお伝えするために送りました。Sと名乗っていましたがこれはあなた様が佐山とゆう苗字の頭文字から引用しました。そして疑問に思ったでしょう?何故ポスターが知っている道や,自販機に貼ってあるのか?とゆう問題ですが,これは未来の状況を可視化したある意味予知のような現象です。ですからあなたは今一般人として生きていると思いますがこの予知が起こるのは明日かもしれませんし,十三年後かもしれません、なので身構える経験をしていただきたく送っていただきました。しかし有名って定義って何処からなのでしょうか?犯罪者も確かに有名人とも解釈できてしまいますよね?今後ともあなた自身をよろしくお願いいたします)
多くの人が行き交う駅のコンコースで立ち止まっている男がいる。 男を避けるように人の流れが出来ている。 彼の名は松本繁。56歳男性だ。 繁は人の海の中で空を見ている。 正確には街灯の上に佇む鳩を見ている。 繁の左手には手の平サイズのノートが握られ、右手に短い鉛筆を持って鳩を描いている。人の渦の中で。 繁は気になったものをノートに描く。一つ描いた物の輪郭が他の絵の輪郭になり、出来上がった時はパズルのように全ての絵は邪魔することなく、むしろ、あるべき場所に書かれている。そして次のページへと次々に繁の目に付いた物が描かれて行く。 今、彼はバイトの帰り途中である 平日は大型ショッピングモールでゴミ集めをしている。作業中に絵を描くことは禁止されているので、繁は時々立ち止まって描きたい対象を長く観察して記憶している。 繁は仕事終わり、ニ日に一遍は怒鳴りながら歩いている。仕事終わり、繁の記憶が曖昧になり、ノートに描く対象をはっきりと思い出せないのだ。酷く落ち込み、一人で暴れる。そして次の対象を見つけノートに書き留めるのだ。 繁の小さなノートを買っているのは繁の母親、美由紀だ。 美由紀は女手一つで繁を育ててきた。別れた父親は死んだと繁に言ってある。 繁は自分の描いた絵を母親の美由紀には見せない。理由を聞いても答えない。 鳩を描き終えた繁は歩き始める。 繁は5歳の時に知恵遅れと言われた。 幼稚園に言っても他の子とは遊ばず、一人で積み木を永遠に並べていた 小学校に上がっても読み書きが苦手で、卒業する頃になってようやく自分の名前を漢字で書けるようになった。 母親の若かりし美由紀は支援学校には通わせず、そのまま中学に入学した。繁は良き友達も嫌なクラスメイトも持たず、いつも一人で絵を描いていた。授業中も絵を描いていて、その度に先生に叱られた。先生も他の子と区別せず、確りと叱った。 中学の時の担任の田村先生は繁の事を「絵を描く人」と呼んだ。そして繁の絵を良く褒めてくれた。 その田村先生は定年退職後、小さな喫茶店を営んでいる。そのお店は繁のバイト先であるショッピングモールと繁の家の間にあり、繁はいつも帰宅する前に田村先生の喫茶店「素数」に寄る。 喫茶店「素数」に繁が入ると、入り口に一番近いカウンター席に座り200円をテーブルに置く。田村先生は「おつかれさま、松本繁くん」と言い200円を受け取って冷えた牛乳をコップに注ぐ、繁は目で牛乳の入ったコップを追って、繁の前に置かれると、一気に飲み干す。そして大きなゲップをする。 「松本繁くん、今日も絵を描きましたか?」 「はい」 「描いた絵で気に入った絵はありますか?」 「はい」 「私に見せてくれますか」 田村先生に向けてノートを開き指を指す。先ほどの街灯の上の鳩の絵だ。 「これは何ですか?」 鳩の背の輪郭と対になっている歪んだ円の中に何が描かれている 「はと」 「こちらも鳩ですか?」 「はい。みずたまり」 「水溜り?…あぁ、水溜りに映った鳩ですね!」 「はい」 「これは、良い絵ですね」 繁は、これで用は済んだ、と喫茶店「素数」を出ていく。 真っ直ぐ家に向かって歩く、空は夕焼け空に変わっている。車のタイヤが水溜りを弾いていく。 繁はと言うと、家の塀のコンクリートブロックを登るカタツムリをノートに描いている。カタツムリが夕日を浴びて、キラキラとオレンジ色に輝いている。
どうも皆さんこんばんは メデューサ・メデュ子のお悩み相談室 どうぞ今夜も楽しんでお聴きください この番組は短編作品限定の小説投稿サイト『Prologue -プロローグ-』の提供でお送り致します この番組のナビゲーターを務めるのは私メドューサ・メドュ子です。皆さん、どうぞよろしくね 皆さんはお花見に行きましたか 私の住んでいるマンションの前に桜並木があって、夜な夜な散歩しながらお花見をしました。お酒片手に。フフフ 夜の桜って、切り絵で作った星みたいでなんか綺麗だなって思います。 はい、今日はゲストに嵐の大野智さんに来ていただいております 「どうも。嵐の大野智です。よろしくお願いします」 大野さんはお花見されますか? 「します。でも、移動中の車の中から見るくらいですけど」 お忙しいですものね。大野さんの中で桜の思い出などありますか 「特にないですw綺麗だなと思うくらいですね」 ハハハ。正直で素敵です 「正直者なんでw」 はい、ではお悩み相談に参ります ペンネーム東京ペンギンさんからお便りです メデュ子姉さん。こんばんは 僕は高校二年生の男子です 僕は高校一年生の頃からイジメにあっています。 高校へ入学したとき、同じ中学の人は一人もいませんでした。なので、心細かったですが、新しい自分になれるチャンスとも、思いました。高校へ行ったらカッコよくなろうと思って髪を茶髪にして、少し悪い感じを出して通いました。 だけど、高校には僕なんかよりも怖い人達は沢山いて、その人達に目をつけられ、入学して直ぐにタバコを買いに行かされたり、それを学校に通報されたり、クラスの女子に言いたくない事を言わされたり、別の高校生に喧嘩を売りに行かされたりしました。地獄の日々でした。 でも学校は休まず行きました。行かないと、自分が壊れてしまいそうで怖かったのです。 僕はこの春二年生になります。僕をイジメていた人達は、二年生になれず、学校も辞めて働くそうです。 やっと解放されます。 ですが、怖いです。イジメていた人達はいなくなっても、それを見ていた人達は残っています。そんな人達と過ごすのが怖いです。やっと解放されたのに、学校に行きたくないです。僕はどうすればいいのでしょうか?助けてください。 と、言うわけなんですが、一旦ここでCMです。
大人になったら自立するのが当然だと言われたので、一人暮らしを始めた。 今までかからなかった、家賃とやらを支払うことになった。 電気代とか、ガス代とか、水道代とか、そういうのも払うようになった。 「一人暮らししてるなんて、偉いねえ」 年寄りたちに褒められたけど、何が偉いのかわからない。 「やっぱり一人暮らし経験のある人とない人じゃ、責任感が違うよね」 マチアプで出会った人がそんなことを言ってたけど、どこに違いがあるのかわからない。 実家にいた頃も家事はしていた。 料理はやっていたし、掃除もやっていた。 洗濯は、まとめてやったほうが速いからと親がやっていたが、手伝っていたことはある。 実家にいようが、一人暮らしをしようが、できることは変わっていない。 数をこなしたから、手際が良くはなったけど。 『ニュースです。運送業界の人手不足が深刻です。単身世帯の通販需要が増え、一回の運送による利益が減り、皆苦しんでいます』 だらだらテレビを見ていたら、そんなニュースが流れてきた。 払うお金が増えて、自分の仕事が増えた自立とやらは、どうやら他の業界も苦しめていると知った。 『家事代行サービスがぼろもうけです。朝から晩まで働いている独身は、金があるけど家事をする時間がないので、家事代行サービスに依存しまくりです』 一方、潤っている業界もあると知った。 「匂いますねえ」 最近の自立文化。 実は巨大な利益を手にしようとしているどこかの誰かが操っているんじゃないか。 そんな陰謀論を思い浮かべたところで、良い感じに酔いが回ってきた。 「……寝るかあ」 たった一人では、陰謀論が嘘か本当かを確認する方法もなく、ぼくは洗濯を終えたばかりのふかふかの布団に飛び込んだ。
「貴方にこれを託します。どう使うかは、貴方が決めなさい」 母は、息を引き取る直前に、卵くらいの大きさの宝石を渡してきた。 正直、余裕で億を超えてくるサイズだ。 そして、宝石の中には、一枚の紙切れが埋め込まれていた。 母の言葉が書かれた、最期の手紙。 手紙を読むためには、億の価値がある宝石を破壊し、取り出さなければならない。 なるほど。 母の気持ちと実用的なお金、どちらを優先したいか決めろと言う意味だったのか。 なんてクレバーな母だろう。 別々に渡してくれれば、悩むこともなかったのに。 とりあえず、宝石を研究機関に持っていった。 破壊せずとも手紙の中を読めるのであれば、それに越したことはないからだ。 しかし、特殊な紙とインクが使われているらしく、スキャンで読み取ることはできなかった。 次に、超能力者のいる機関に持っていった。 破壊せずとも手紙の中を読めるのであれば、それに越したことはないからだ。 しかし、超能力よりも科学の方が強いらしく、念視で読み取ることはできなかった。 「ああー! 私の億ー!」 これ以上の手が思いつかなかった私は、宝石に金槌を振り下ろした。 パキンと気持ちの良い音を立てて、宝石は割れた。 中から出てきた手紙を広げると、それは埋蔵金の地図だった。 『お金よりもお母さんの言葉を選んでくれた愛娘に、お母さんから愛のプレゼントだ!』 私は数十億円を手に入れた。 やっぱり、お金より愛だよ、皆。 愛って大事。
それは、ある学校での体育祭の放課後であった。 体育祭も終わりを迎え家での出来事であった。 そこにスマホに一件の通知がいく。 それはあの子からのLINEだった。 緊張した手でスマホを触る。 その子は、僕の2回目の人だった。 1人目は、とっても可愛く、優しい人だった。 教室の隅で見せてくれるあの笑顔。 悲しさを分かちかあってくれたあの日の放課後。 彼女が辛い時も、 どんな時でも笑ってくれた。 そんな彼女が好きだった。 ずっと、最初から。 でも僕には無理だった。 彼女にはいたんだ、他の男が。 そのことを知った日、僕は悲しみに押しつぶされそうになった。 「辛い」 部屋の隅でそう呟く。 諦めきれなかった、まだ好きだった、でも気づいたんだ。 無理だって。 寒い冬の空、一人顔を上げている。 その顔は、くしゃくしゃにつぶれていたと思う。 辛かった、泣きたかった、甘えたかった。 でも僕にはそんなは人いない。 その時、1件のLINEが来た。 その時の通知は、今までで一番嬉しいかったと思う。 「ねえ、何かあった?」 見えていたんだと思う、彼女には。 透き通るようなグラスのように。 ふと、こう返した。 「ごめん笑バレてた笑?」その時は見栄を張っていた。 誰にもこの姿は見られたくなかったから。 彼女はそう返してくれた。 「もう笑バレバレだよ笑」 その何気ない返信が、僕の心を抱きしめてくれたんだと思う。 その後もLINEは続いたが、よく覚えていない。 あまりにも、心が高ぶっていたから。 そして今、彼女からLINEがきたのだ。 「ねぇ、今日の体育祭どうだった?」 彼女からの何気ないLINEだった。 この何気のが好きだった。 「楽しかったよ!」 そう返した。 「えーそう笑私はあんまだったなー笑」 「そうかなぁ笑?」 「というかさ、関係ないんだけど、好きな人いる?」 僕の隠れていた心が、浮き出てきた。 「いるよ笑そっちはいるの?」 この時は頭がおかしくなったと思う。 「いるよ笑」 こう帰ってきた、そのと時はドキドキと、そして恐怖心があった。 こう返した。 「そっち何部?」 「えー笑じゃあ一緒言おう笑」 本当に死にそうだった。 僕の心は最高潮だった。 それでも、僕はこう続けた。 「僕は管弦楽だよ笑」 「私は野球だよ笑」 この時が、人生で一番の時だって、身に染みた。 「まじ笑じゃあ一緒に言わん?」 「いいよ笑」 この言うまでの一瞬が、今までで一番長かったと思う。 「あなたが好き」 「きみが好き」 その言葉を聞いたときの空は、今までで一番凛と澄んでいた。
「僕はエリーのこと忘れないから」 それが、彼――アレンと交わした最後の言葉だった。 あれから、どれほどの歳月が流れたのだろう。まばゆい都会の喧騒の中、私は独り、変わらぬ姿で生き続けてきた。 私の名はエリー。誰もが老いて去っていくのをただ見守るだけの不老の存在だ。彼と出会い、恋に落ち、そして彼が老いていくのをただ見送るしかなかった、孤独な旅人。 彼の最期の言葉を胸に封印し、ひっそりと喫茶店を営んでいた私の元に、その青年は現れた。 店に入ってきた青年の瞳を見た瞬間、心臓が大きく跳ね上がる。そこにあったのは、あの日の彼と全く同じ、深く澄んだ琥珀色の光だった。 「……エリー、さん、ですか?」 少し緊張した面持ちの青年に、私は小さく頷いた。 青年は愛おしそうに目を細め、ポケットから色褪せた革の手帳を取り出した。見覚えのある、あの不器用で温かみのある筆跡。 「祖父の名は、アレン・ウォーカー。亡くなる直前まで、何度もあなたの名前を呟いていました。祖父の手帳の奥に、この店の住所と、一枚の古い写真が隠されていたんです」 青年が差し出したモノクロ写真には、若い頃の彼と、今と寸分違わぬ姿で微笑む私が写っていた。 「写真のあなたは、今のあなたと全く同じ姿をしている。あなたは、僕たちと同じ『人間』ではないんですね?」 彼の真っ直ぐな視線に、私は静かに微笑んだ。 「ええ、そうよ。何十年経っても、私には皺一つ刻まれない。驚かないのね」 「祖父の手帳に書いてあったんです。『彼女は時間を旅する美しい妖精だ。もしお前が大きくなって彼女に会うことがあったら、これを渡してくれ』って」 青年は手帳の中から、小さな銀色の鍵を取り出し、私にそっと預けた。 「これは、祖父があなたに遺した、最後の宝物の鍵です。僕たちの実家の地下室に、この鍵で開くチェストがあります。案内させてください」 私は頷き、彼と共に古い洋館へ向かった。 薄暗い地下室の奥、埃を被った木製のチェストに鍵を差し込む。カチリと音がして引き出しを開けると、そこには一通の手紙と、青い砂のような液体が入った小瓶が収められていた。 震える手で手紙を開く。そこには、アレンの懐かしい文字で、私への深い配慮が綴られていた。 『エリー。君を一人置いて先に行くことを、どうか許してほしい。 君はきっと、俺が死んだ後、俺との約束を守るために自分の心を檻に閉じ込めてしまうだろう。俺の言葉が、君を永遠の孤独に縛り付ける鎖になってしまうのではないかと、それだけがずっと怖かった。 この瓶の中にあるのは「時の砂」だ。これを飲めば、君も俺と同じように時を刻み、いつかは終わりを迎える人間になれる。 けれど、これは俺からの願いではない。君がいつか、この永遠の命に本当に疲れ果て、誰かと共に歩む温もりを欲したときのために、一つの『選択肢』としてこれを遺す。君の長い旅路のどこかで、この薬が君の救いになる日が来るかもしれないから。どうか、君の未来が自由でありますように』 彼が薬を遺したのは、いつかエリーが孤独に耐えかねたとき、彼女の手元に「逃げ道」という救いを用意してあげるためだった。どこまでもエリーの未来を案じた彼らしい配慮だった。 「エリーさん……」 青年が静かに見守る中、私は青い小瓶をじっと見つめた。 そして、愛おしそうにその瓶に触れた後、ゆっくりと首を横に振って、小瓶をチェストの上に戻した。 「……飲まないの、ですか?」 驚く青年に、私は涙を浮かべながらも、誇らしげに微笑みかけた。 「ええ、飲まないわ。アレンは私が孤独に負けてしまうと思ったのかもしれないけれど、それは違うの。アレンが最後にくれた『僕はエリーのこと忘れないから』っていう言葉、あれは私にとって最高の贈り物だったのよ。アレンが私を忘れないでいてくれたように、私もこの永遠の時間を使って、アレンのことをずっと覚え続ける。人間になって彼の元へ行くことよりも、私がこの世界で彼を愛し続けることの方が、私にとっては幸せなの。アレンが遺してくれたこの選択肢のおかげで、私は自分が『自分の意志で永遠を生きている』って、胸を張って言えるようになったわ」 青年は、私の言葉をじっと噛みしめるように聞いた後、その琥珀色の瞳を優しく細めた。 「……そうですか。祖父も、どこかで苦笑いしながら、あなたらしいって喜んでいるかもしれませんね」 私は「時の砂」を残したまま、地下室の階段を上り、光の射す地上へと一歩を踏み出した。 アレンがくれた優しさを胸に、私はこれからも変わらぬ姿のまま、愛しい彼がかつて生きたこの世界を、愛し、歩み続けていく。
去年の5月政府は新しい制度を発足した。(今はインターネットがとても進化していると国民の皆様一同感じていると思います。なので私たち一同極秘でとあるシステムを一般化するために実験をしていました。そのシステムは意識の電脳化,いわゆる意識のデータ化です。今後随時そのための法を整備していきますのでよろしくお願いいたします。)僕は???が脳内に駆け巡ったのは今でも鮮明に覚えている。まだ設備が整っていなく電脳化するにしてもそのための手術や,専用設備の設置費用が洒落にならない。巷のYouTuberや,インフルエンサー,芸能人が電脳化し今では大半の人がデータ空間で完全なアバターとなり,身体も不気味の谷現象が起こりうる冷たい義体で企画などをしているとゆうあまりにも非日常な日常が毎日毎日アップロードしている。電脳化発表して以降見かけなくなった有名人も多くいるが,どうしたのだろうか、いまいち微妙なのかな?と思いながら僕はぼーーと何も考えずテレビのニュースを見ていた(速報です。電脳による犯罪が発生しました。何か起こるか私も分かりませんので電脳接続している方々は即座に切断を行ってください。お願いいたします。速報です電脳による犯罪何発生しました)僕は昨日電脳化のための手術と電脳空間接続のための専用設備を会社の支給額と自腹でやっとゲットした。正直これから電脳化で仕事をするのが一般化するのではないかと思っていたのでちょうど良い,じゃあ折角だし犯人を見つけるとゆうあまりにも無謀な計画を立てて私はあまりにも無機的な冷たいがんじがらめの配線ばかりの機械の椅子に頭の接続穴にコードを刺す,痛みを感じるかと思うともうこの時点で接続完了に近づくため痛みはなかった。にしてもSFアニメのような事を今現実で,しかも自分自身が体験していると思うと心がドキドキバクバク音を立てながら僕は電脳空間に入っていった。仮想空間が私の視界に入る。本当にデータの規則的で,秩序だらけの空間が僕の目に襲ってくる。とても楽しい。データ空間では何もかもやりたいことができる。私は昔からやってみたいことがある。そう,地面を泳ぐことだ。僕はワクワクしながらプールに飛び込むかのようにデジタル空間の地面をクロールしながら泳いだ,感覚だけは確かに感じるはずなのにとても不思議な気持ちが溢れ出す。しかしやはり慣れない。データをこれまで手に取って利用することしか体験していなかったのかとても違和感を感じる。そして僕はプールに上がるようにコンクリートのようなテクスチャに足を上げる。とてもこの時は楽しかったといまだに思う。そして僕は心を踊らせながら仮想空間の建物を散歩した。やはり大手企業はもう進出しているな。そう思いながら僕はベンチに座った。全てが仮想空間なのに肌や,匂いが感じるのはあまりにも新鮮で楽しい。しかしもう楽しい気分はすぐに過ぎ去った。近くで黒いフードを被った体格のいい人物が周りを徘徊していた。その前には見覚えのあるインフルエンサーが挙動をおかしくしながら人物の前でひれ伏せていた。システムバグを伝えるために伝えるために警察署を探しているのかな?ただしかし本来の目的を思い出し私はすぐ近くの駐車場の車の前で隠れた。(ここはデータ転送された者たちのオーシャン。しかしここを穢すのなら罰を与えることに値する)フードで隠れているが顔はどうやら顔文字で隠れていた。とてもじゃないが言動と容姿が全く釣り合っていない。早くこの空間から抜け出したいと思い僕は必死に駐車場近くから静かに静かに立ち去ろうとした。だがもう僕は一つ盲点があったことを突然思い出した。(電脳化空間をお立ちにする際にはマニュアルを必ず持参してください。戻れなくなる場合があります)僕はマニュアルを持っていなかった。急いで亡骸を漁りマニュアルを見つけ(マニュアルを持参する際戻るセーブポイントが存在します,ここに行きましょう)僕は急いでセーブポイントを急いで見つけた。やっと見たかった機械に私は急いで接続を試みた。(お前も穢れの一種だったんだな,だがいい,後でこの意味がわかるだろう)顔文字が淡々とそして冷たく語る。だが今はどうだっていい,早くこの空間から抜け出そう。僕はすぐに現実えと帰った。この時は,この時だけは安心した。だがもう遅かった(すみません,警察です。田口のぞみ様ですよね?データハッキング容疑のため逮捕しますのでお開けください)僕は犯罪者に生まれ変わったのだと確信した。
毎日、あなたになりたいと思う。
「私、記憶を消したいんです」 土砂降りの雨が降る夕暮れ、少女は私の営む「記憶屋」へ飛び込んできた。 ここは、忘れたい過去を現金で買い取る奇妙な店だ。買い取られた記憶は、特殊な青いカプセルに閉じ込められ、棚に陳列される。 ずぶ濡れの制服、青白い顔。少女の due(期限)は切れかかっているように見えた。 「どんな記憶を消したいんだい?」 私は温かいココアを差し出しながら尋ねた。 「幼馴染の男の子の記憶です」 彼女は震える声で話し始めた。 「彼とはずっと一緒でした。でも、五年前の大雨の日、私の目の前で車に撥ねられて……。彼を救えなかった後悔と孤独に、心が押しつぶされそうなんです。毎日が辛すぎて、息ができない。だから、彼の存在ごと、全部忘れたいんです」 よくある依頼だ。愛する者を失った人間は、その思い出そのものを呪うようになる。 「いいよ。その記憶、私がすべて買い取ろう」 私は彼女の頭に電極をあて、マシンの起動スイッチを押した。 淡い光が走り、彼女の目から生気が抜けていく。数分後、彼女の脳から抽出された『幼馴染の記憶』は、綺麗な青いカプセルとなって私の手元に落ちてきた。 施術が終わると、少女の表情から苦悩が消え、すっきりとした顔になった。 「あれ……私、なんでここにいるのかしら」 「雨宿りだよ。さあ、雨も上がったようだ。お嬢さん、お気をつけて」 少女は「ありがとうございました」と微笑み、足取り軽く店を出て行った。彼女はもう、失った幼馴染のことで泣くことはない。 私は一人、残された青いカプセルを見つめた。 そして、それを自分の頭に取り付けられた『記憶の再生機』へと挿入した。 脳内に、少女の記憶が流れ込んでくる。 ランドセルを背負って笑い合う二人。 手を繋いで歩いた夕暮れ。 そして、五年前のあの大雨の日。 トラックが少女に迫る。少年が叫び、彼女を突き飛ばす。 ガシャーン、という鈍い音。 激しい痛みと、薄れていく意識の中で、少年は泣き叫ぶ少女の顔を見ていた。 (泣かないで。僕のことなんて、全部忘れていいから。君には笑っていてほしいんだ――) そう、轢かれたのは少女ではない。 今、少女の記憶を体験している『僕』、つまりこの店の店主である私自身だったのだ。 五年前、私は事故で命を落とした。しかし、泣き叫ぶ彼女を残して逝けず、魂だけがこの世に留まった。それから何ヶ月も幽霊として彼女の街を彷徨い、彼女が自責の念でボロボロになっていく姿をただ見ているしかなかった。 触れることも、声をかけることもできない。 絶望の果てに、私は彼女を救うための「偽りの店」をこの街の片隅に作った。生きている人間には、本当に心が限界を迎えた時にしか見えない不思議な店だ。 それから私はこのカウンターで、彼女がこの扉を開く日をずっと、ずっと待ち続けていた。今日ようやくその時が訪れたのだ。 私の目から、実体のない涙がこぼれ落ちた。 君の心を壊すくらいなら、僕の存在なんて消えてしまったほうがいい。 店の外を見ると、雲の隙間から美しい夕日が差し込み、街を照らしていた。 彼女はもう、振り返る思い出を持たない。前だけを向いて、新しい人生を歩いていく。 「さようなら、僕の初恋」 私は自分の手で、その青いカプセルを握りつぶした。 パリン、と儚い音が響き、私の身体もまた、光の粒となって夕暮れの空へと溶けていった。
「おお、勇者よ。どうか我らを救って欲しい。この世界は、世にも恐ろしい魔王によって支配されているのだ」 魔王の絵を見た。 超美人。 結婚したい。 「もしも魔王を倒した暁には、我が娘と婚姻を結び、この国の王子として迎えたい」 王女様を見た。 超ブサイク。 結婚したくない。 「わかりました。私にお任せください」 酒場で仲間を見繕う。 ブサイクたちから応募が殺到したが、美人を三人選んだ。 皆びっくり。 三人もびっくり。 「どうして私たちを選んだんですか?」 「貴女たちが、一番強そうだったので」 これは本当。 ブサイクたちは、この国では美人。 なので、強いブサイクたちは、とっくに強いパーティに勧誘されており、酒場には残っていない。 酒場に残ってるブサイクは、強いと言っても、その程度。 逆に、酒場に残っている強い美人は、誰にも選ばれないから、本当に強い。 というのが、俺の予想だ。 予想が当たったかどうかは分からないけど、冒険は順調に進んだ。 魔物を倒し、いくつもの村を救った。 村人たちは、俺たちに感謝し、仲間の顔を見た瞬間、眉を顰めた。 なんだ、なんか文句あるのかよ。 「すみません、私たちのせいで」 「気にしないで。悪いの、向こうだから」 冒険の中で、彼女たちの話も聞いた。 やはり、容姿で何度も差別を受けて来たらしい。 転生前の俺と同じだ。 顔なんて、生まれ持ったものなのに、生まれ持ったもので差別をしてくる世界が嫌いだ。 まあ、俺もまったくしていないわけではないが。 三人を選ぶとき、顔に惹かれたのは否めないし。 「魔王と戦う前にさ、考えがあるんだけど、聞く?」 「よくぞここまでたどり着いたな、勇者よ。妾を殺しに来たのか?」 「いや、人間の国裏切るから、一緒に魔王の国を作らない? 壁でも作って、世界を二つに分けちゃおう」 魔王がずっこけて、椅子から落ちた。 ああ、綺麗な顔にあざが……ついてない。 さすが魔王、肌まで頑丈だ。 「今まで、何人もの勇者を返り討ちにしてきたが、そのような提案を受けたのは初めてじゃ」 え、そんなに強かったの。 なにそれ、聞いてない。 国王め。 「妾の国を作ったとして、お主のメリットはなんじゃ?」 「妻三人と平和に過ごせる」 「……まさかとは思うが、後ろのそれか?」 「うん」 「……お主は、魔族のような顔が好きなのか。妾の国を作る目的、よもや魔族でハーレムを作りたいからではあるまいな?」 「ぎくっ」 魔王は呆れたように溜息をつき、俺の前までやって来た。 「あい、わかった。その提案、飲もう。妾も、戦い続ける人生にはほとほと愛想がつきたでな」 「やった。ちなみに、俺の四番目の妻とか、興味あります?」 「……妾は、妾一人を愛してくれる誠実な男が好きじゃ。妾の視界の外で、平和に暮らせブサイク」 その日、世界に大きな壁ができた。 魔物たちは全員、壁の後ろへと戻っていき、人間の世界に平和が訪れた、 勇者たちは、人間の世界に二度と戻ってこなかった。 「ねえ。昨日、新しい彼氏ができたんだ」 「魔族って、勇者様並にかっこいい人多くていいよねー。話せば、人間みたいだし」 「ちくしょお、妻たちまでハーレムを作り始めた。俺のハーレム計画、最大の危機」
小さい頃は、私のなかに神様がいた。だから、お願いをして、叶えてもらった。 「みんなとおなじかぞくになりたい」 それは叶った。 いがみ合っていた両親はその牙をすんなりと吐き続ける毒ごと納め、わたしにとても優しくなった。周囲の我が家を見る目は変わって警戒心を抱く上がった眼尻はゆっくりと目頭と変わらない位置まで降りていった。 そして願い事を叶えた神様は、わたしの中から居なくなった。 それから、幸せに暮らす私たちは終わりを迎える。 きっかけは母親だった。神様がいなくなる以前から悪かった母親の腎臓は、みんなとおなじにはならなかったらしい。みんなと同じになってなお、そうだっただけかもしれないけれど。 ともかく、母親の寿命はあと少しだった。 父は入院する母の下を何度も訪れた。母に拳を振るっていた昔とは大違いだ。対する私はひどく恐れていた。母が亡くなることで、父と母、そして私の家族が壊れてしまうかもしれない。神様が叶えた奇跡は、じきに薄れて元の父親に戻ってしまうかもしれない。 奇跡なんて、ひどく保証のないギャンブルに賭けられた私の人生に、ようやく賭け金の支払い時期が来たようだった。それがひどく恐ろしかった。 私は覚悟を決めた。 まずは母だ。病院と掛け合い、最期の時を家で過ごさせてほしいと何とか退院させた。次に父。母に代わって出した夕飯に睡眠薬を混ぜ、眠らせた。 母の体は軽く、車に乗せるのに苦はなかった。比べて父はとても重く、引きずりながら何とか運べるほどだった。シートベルトは締めないまま二人を父の自家用車に乗せると、ブルンとエンジンを始動する。 昔は後部座席に座っていた私が、まさか運転席に座るなんて、と感慨深いものを抱きながら、車を走らせ続ける。 到着した目的地は潮風の匂いが窓から入り込む船着き場だ。 エンジンは止めず、二人の顔をしっかりと目に焼き付ける。穏やかな寝顔の父と母。それがとても愛おしかった。いつまでもそうあって欲しいと思った。 だから、アクセルを強く踏み込む。目の前に広がる真っ暗な海と、浮かんでいる月の反射が揺らめいて、飛沫を上げて私達を飲み込んだ。
ある日、季節のめぐりは止まってしまった。それはまさしく、ぼくが買い物がてら、自宅の周りを散歩していた時だった。 ひゅぅと風が吹いてきて――それは突然の出来事だった。驚きのあまり、開いたぼくの口内に、やけに熱い冷気が通りすぎていった。それは、あまりにも一瞬のことで。ぼくは特に気にも留めず、家に帰ってしまった。 しかし、五月の半ばを迎えても例年より気温が低いまま、20度を超えない日々が続いた矢先。ふと、あの風は、ただの風ではない、という予感がした。あれはきっと、夏だ。 ぼくは夏をのみこんでしまった。 「ということなんだけど」 木陰のベンチにて。アイスを片手に、ぼくが事の顛末を語り終えると、隣に座る友人はぎょっとした顔つきになった。 「えぇっと……。つまり、おまえが夏を食べちゃったせいで、春が終わらなくなってしまいましたと?」 「多分、そうだと思う」 「ハアア!?」 絶叫する友人。その間抜けづらが面白くて、これだけでも彼に打ち明けた価値はあったな、と感じる。 「なんで、満足そうな顔してるんだよ……」と、友人は不満げに眉をひそめる。 だから、ぼくは仕方なく、先程から考えていた思いつきを口にした。 「それよりさ、考えてみてごらんよ。このまま夏がやって来ないほうが、ぼくらにとっては素敵だと思うんだ。日焼けしないし、汗もあまりかかなくてよくなるし」 くるりと、ぼくの目線は手元に流れていく。 「なにより、すぐにアイスが溶けないのは、すばらしい」 そうでしょう、と返事をするように、春風が頬をなでる。ぼくは満足げに舌を揺らす。ひんやりと下くちびるに伝うアイスの温度がじれったい。 今この時も、飲みこまれたアイスは体温で溶けながら、ぼくの胸にのこる夏を刺激している。やがて、じょじょに夏は熱気を失い、寿命を小さくしていく。 もし。もしも、ぼくのおなかの中で夏が終わってしまったら、どうだろう。 悲しいだろうか。嬉しい、だろうか? もしや、このまま地球は二度と夏を迎えられず、順番どおりに秋と冬が訪れることもなく、春という名のあたたかさに包まれて死んでいくのだろうか。 「なぁ。もしかして、このままじゃどうにもならないって思いこんでるだろ」 「えっ?」 友人の急な発言に、そりゃそうだ、と叫びたくなるのをグッとこらえる。しかし、顔までは驚きを隠せなかったらしい。 「ようは、おまえの体内から夏を取り出せばいいって話だろ。だったら、病院に行けばいいぜ。麻酔で、すぐに切開してもらえるからな」 あまりにも自信満々に、彼がそう言ってのけるので、ぼくはしぶしぶ首を縦に動かすしかなかった。 その後、病院に行ったぼくは、それはそれはとても優秀なドクターにおなかを切られることになった。手術は無事成功。ぼくは五体満足で生還し、世界は25度を急激に超えて、今年も夏を迎えることができた。 案外、春一強の時代は、あっけないものだったけど。あのまま何もしていなかったら、万が一ぼくの身体には異変が起きていたかもしれないし……。 それに、ぼくの身体が夏の墓場になるというのは、想像してみると――途端にジメジメと胸が汗ばんでくるようで――ちょっぴりイヤだったから。まぁ助かった、ということにしておこう。 ぼくの手元で、友人の買ってきてくれたアイスが溶けている。熱風にさらされながら、ふと、この暑さから夏も逃げ出してしまいたいのではないか、と思った。 でも、すぐにそれはおかしな話だと思った。暑さから逃れたいのなら、わざわざ人肌恋しく平均36度の胸に飛びこむわけがない。 なぁ、そうなんだろう? 思わず放たれた問いかけは、宙に溶け……。答えらしきものといえば、腕を濡らしていくひんやりとした温度だけ。それを見つめながら、ぼくはただ。 ああ、今年もアイスのおいしい季節がやってきたな。 と、思うばかりだった。(ちなみに、溶けたアイスを見て、友人は再び、あの間抜けづらを見せてくれた。)
明日は月曜日。 平日だ。 また仕事に行かなくちゃならない。 ああ、嫌だ。 嫌だ。嫌だ。嫌だ。 どうして月曜日なんて来るんだ。 ずっと、日曜日のままがいい。 それを呟いたのが、一万年前。 今日も目が覚めたら日曜日。 なんど時計を見ても、時間は変わらない。 何度も泣き叫んだ。 何度も神に祈った。 何度も自殺した。 しかし、日曜日は繰り返される。 「行ってきまーす」 隣の家から出ていく高校生は、今日も元気に部活へ向かう。 それを見送る親も、どことなく楽しそうだ。 二人を殺したのは、何千年前だったか。 もう、やりたいことがない。 月曜日、来い。 月曜日、来い。 月曜日、来い。 早く、休日を終わらせてくれ。
何でもない蟻ですが恋をしました 実りはしない恋をしました 僕は蟻と言うことを忘れた事は無いですが、いつの間にか花に恋をしてしまいました。 僕は毎日、花の側を通ります。横見でちらりと花を見て何でもないように歩いていきます。たまに花の周りをうろうろして「この辺に甘い物でもありそうだな」等の独り言ちをします。 そりゃあ僕は蟻ですから、花を盗もうとすれば、それはそれは簡単に盗めます。一人で穴の中で甘い蜜を飲むことでしょう。でもそれは違う。花は実を付け次の種を生むために咲いているのです。蟻はお呼びでないのです。 えっ?「少し蜜を貰うだけでは駄目なのか」ですって?そんな事で僕の恋心を満たせません。僕は全て食べてしまいたいのです。 僕はただの蟻です 花に恋をした何でもない蟻なのです 花に蝶がとまっていても何も出来ない蟻なのです
夕暮れ時の「陽だまりカフェ」は、焙煎された珈琲の香りに包まれていた。店主の修一(しゅういち)は、窓の外の赤く染まった街路樹を見つめていた。秋の終わりを告げる風が吹いている。 この店を開いてから三十年。妻の美智子(みちこ)と二人三脚で歩んできたが、その最愛の妻は三年前、病で先立ってしまった。「この店はね、お腹だけじゃなくて心を満たす場所なのよ」という美智子の言葉が、今も店内に染み付いている。だが、修一の年齢と一人での限界から、明日がこの店の閉店日となることが決まっていた。 ガラガラ、と引き戸が開く。入ってきたのは、仕立ての良いスーツを着た三十代半ばほどの男性だった。男性は緊張した面持ちで、カウンターの隅の席に腰掛けた。 「いらっしゃい」 「あの……一つお聞きしてもいいですか。ここには昔、『魔法のオムライス』という裏メニューがあったと聞いたのですが……今も作っていただけますか?」 修一の手が止まった。それはメニュー表には載っていない、美智子が考案した特別な一品だった。卵をたっぷり使い、トロトロに仕上げたオムライス。美智子は、元気をなくした学生や、悩み事を抱えた常連客にだけ、そっとそれを差し出していた。 修一は男性の顔をじっと見つめた。そして、記憶の引き出しが開く。 「……もしかして、ツバサくんかい?」 男性の目が丸くなり、やがて確信に満ちた笑みがこぼれた。 「覚えていますか、マスター。二十年前に毎日のように通っていた、高校生です」 長谷川翼(はせがわ つばさ)。二十年前、家庭環境に悩み、居場所をなくして荒れていた少年だった。彼はこの店のカウンターで、一杯のココアだけで何時間も粘っていた。そんな彼に、美智子が「試作品だから」といつも無料で出してくれたのが、そのオムライスだった。 「立派になって。スーツがよく似合っている」 「おかげさまで、今は東京で建築の仕事をしています。明日で店が閉まると聞いて、どうしてもあの味が忘れられなくて、新幹線に飛び乗りました。実は……最近、仕事で行き詰まって、自分の設計に自信をなくしていたんです。そんな時、思い出したのがこの店でした」 修一は深く頷いた。美智子が亡くなったこと、明日で店を畳むことを伝えると、翼は寂しそうに目元を緩ませた。「そうでしたか……」 「いや、美智子のレシピは、俺の身体が全部覚えているよ」 修一は厨房へ向かった。これが、この店での「ラスト・オーダー」になる。 修一はフライパンを火にかけ、鶏肉と玉ねぎを炒め始めた。香ばしいケチャップの匂いが立ち込める。美智子がいつも言っていた。「食べる人の心を包み込むように」という言葉を胸の中で反芻する。 チキンライスの上に、美しい卵を滑らせる。真ん中にナイフを入れると、パカッと左右に開き、黄金色のトロトロとした波がライスを覆った。 「お待たせしました。魔法のオムライスだ」 目の前に置かれたオムライスを、翼は愛おしそうに見つめ、一口、口に運んだ。 「……美味い。あの時のままです」 二口、三口と食べ進めるうちに、翼の動きが止まった。大粒の涙が、ぽとりと皿に落ちた。 「俺……あの頃、本当に消えてしまいたかったんです。でも、奥様がこのオムライスを出してくれる時、いつも『ツバサくんの未来は、この卵みたいにあったかいものがたくさん詰まってるよ』って言ってくれた。その言葉だけが支えでした。俺、大切なことを思い出しました。俺が作りたいのは、偉大な建物じゃない。あの時の俺みたいに、傷ついた誰かが『帰ってきたい』と思えるような、温かい居場所なんだって」 修一はカウンター越しに、翼の肩にそっと手を置いた。 「美智子の魔法は、ちゃんと効いていたんだね。君が立派に生きて、誰かのための場所を作ろうとしている。それだけで、あの人がオムライスに込めた願いは、全部叶ったんだよ」 翼は皿をきれいに平らげ、「ごちそうさまでした」と深く頭を下げた。彼の表情からは迷いが消え、晴れやかな決意が満ちていた。 「ありがとうございました、マスター。この味を胸に、また明日から頑張れます」 「ああ、応援しているよ。いってらっしゃい」 ガラガラ、と引き戸が閉まり、翼の背中が夜の街へと消えていく。 修一は、誰もいなくなった店内の明かりを少しずつ消していった。厨房の奥、美智子の写真が飾られた小さなスペースに向き合う。 「美智子、聞いたかい。俺たちの店は、間違っていなかったよ。お前の魔法は、ちゃんと一人の青年の未来を照らしていた」 写真の中の美智子は、優しい笑顔で微笑んでいるように見えた。修一は最後の照明のスイッチを切った。暗闇の中、窓から差し込む街灯の光が、きれいに洗われたフライパンを静かに照らしていた。
男の恋愛は新規保存、女の恋愛は上書き保存、だと世間では言われている。 その言葉を聞く度、私もそうであればどれだけ楽だったかと肩を落とす。 私の部屋には、額縁がある。 可愛い家具で揃えているので、友達から「浮いている」とお墨付きをもらったイカツイ額縁だ。 そして、額縁の中に入っているのは、初彼からもらったラブレターだ。 もっとも、もう別れているので、元彼という表現が正しいが。 高校生の頃に付き合って、同じ大学に進学して、順調な大学生活を送っていた。 別々の会社に就職した後、そろそろ同棲の話が来るかと思い始めて早一年。 やってきたのは、別れ話だった。 会社の同期と相性が合って、その人と付き合うから別れたいとのことだった。 最初は泣いて抵抗した。 何度も話し合いをした。 しかし、同棲していないことが災いした。 元彼はいつも、話し合いが始まってしばらくすると、逃げるように自分のアパートへと帰っていった。 私はただ話し合いたいだけなのにと泣いていたら、話し合いした日の夜に、元彼から音声メッセージが届いた。 そこには、ただただ泣き叫んで話し合いの『は』の字もできていない私がいた。 『こういうところが無理』 その時は、盗聴なんて悪趣味だと、罵詈雑言のメッセージを送った。 しかし、翌朝冷静になって聞き返すと、これは逃げたくなると正直思った。 私の記憶では、理路整然と、今まで付き合ってきた思い出や、私ほど相性のいい女はいないことを説明していたつもりだった。 しかし、録音の中の私は、巨大怪獣。 アンギャーアンギャーと叫ぶばかリ。 元彼が話し始めると、ひらがな三文字を話した時点で、私の咆哮が鳴り響いていた。 私は泣きながら別れを承諾し、最後にもう一度だけ会えないかとメッセージを送った。 『恐いからやだ』 それっきり、反応はなくなった。 私は、元彼の連絡先を消すこともできず、高校生の頃にもらったラブレターを額縁へと入れて飾り始めた。 最初は、見るたびに泣いた。 元彼との楽しかった頃を思い出して、ひたすら泣いた。 しばらくすると慣れてきて、まるでまだ、元彼と付き合っているような気分になった。 心配した友達が、私に男の人を紹介してくれた。 あれから二・三人と付き合ったが、元彼を超える男はいなかった。 分かれる原因は、いつも同じ。 『その手紙、捨ててよ』 『せめて、見えないところに仕舞ってくれよ』 私が首を横に振ると、その翌日か数日後に、だいたい別れ話になった。 私は独り身に戻る度、少しだけ安心感を得ていた。 これで、元彼が戻ってくる場所が蘇ったと。 「いい加減忘れなよ」 「あんたの元彼、結婚するらしいよ?」 時間は、容赦なく過ぎていく。 私との思い出を上書きした元彼は、どんどん幸せになっていく。 たった一度だけ、元彼から連絡が来たことがある。 SNSのダイレクトメールに、捨て垢から。 「まだ、俺が送った手紙を飾ってるって聞いたんだけど」 「飾ってるよ」 「頼む、捨ててくれ」 「なんで?」 「俺はもう、新しい相手を見つけたんだよ!」 「邪魔してないじゃん」 「……頼むよ。もう、俺を解放してくれよ」 「してるじゃん。お幸せに」 私の心は、歪にひん曲がっている。 元彼の幸せを願うのは本当だし、元彼が会社の同期と結婚するのを祝っているのも本当だ。 嘘じゃない。 幸せになって欲しい。 でも、同じくらい、元彼が私の元に戻ってくる期待を消すことができない。 私の恋は新規保存。 決して、元彼のことを忘れることはない。 待つのをやめることはない。 でも、邪魔はしない。 元彼の幸せの邪魔をしたら、もう二度と戻ってこないから。 私が、待つ資格を失くすから。 「ラブレター捨ててあげたら?」 「婚約者さんにあんたの噂が届いて、向こう修羅場みたいよ?」 邪魔はしない。 邪魔はしていない。 私は何もしていない。 これは本当。 『頼む! 何にもないって言ってくれ! 婚約者から、色んな誤解を受けてるんだよ!』 邪魔はしない。 邪魔はしていない。 私は何もしていない。 本当に本当。 未練がましく待ち続けた女の末路。 不幸しかないと思っていたけど、もしかしたら私は幸せになれるのかもしれない。 元彼が、戻ってきて。
電車を乗り換える人々が忙しなく行き交うのは、とある商店街。その賑やかな通りに、一軒の料理店があった。名前は『橋本料理店』。その名の通り、橋本一家が経営している、昔ながらの店だった。 その店に、今日は珍しく休業の札がかかっている。一家の娘、すみ子が婿を迎えたので、引っ越し作業をしているのだった。 「改めまして、よろしくお願いします」 すみ子の夫、|哲《さとし》は新しい家族に向けて、深く礼をした。すみ子もぴょこんと礼をして、照れくさそうに笑っている。すみ子の両親はそんな二人を見て、「よろしくね」と目を細めた。 だが、祖父の正二は一度頷いただけで、すぐ厨房の方へ戻っていってしまった。哲は少し戸惑ったようで、すみ子に耳打ちした。 「僕、何か失礼なことしたかな」 「ううん。ごめんね、じーちゃん、いつもはあんなじゃないんだけど……ばーちゃんのことで参っちゃってて」 「あぁ……それもそうだよな。まだ四十九日も終わったばかりだし」 哲は申し訳なさげに頷く。正二の妻は、約2ヶ月ほど前に亡くなっていたのだった。すみ子と哲の結婚式も、喪中だからと少し延期したりもした。 「――なんかごめんね。せっかくお婿さんに来てもらったのに、こんな雰囲気で」 すみ子は苦笑いして、哲に謝った。哲は思慮深い眼差しで、妻をじっと見た。 「そんなことないよ。むしろ、こんな時にお邪魔して申し訳ない。僕が来たことで、少しでもいいことがあればいいんだけど」 「それならもうあるよ!」 すみ子はパッと目を見開いた。 「若い男の人が来てくれたんだよ。優しくて頭が良くて、あとまぁまぁ力もある人がね。きっと、この店もすぐ元気になるよ」 そう言って、照れたようにふふっと笑った。哲は「おそれ多いなぁ」とはにかんでいる。 「じゃあその言葉に見合わないとな。早速、店のこと教わってくるよ」 「引越しで疲れてない?」 「大丈夫、今のうちに店に馴染んでおきたいしね。よし!」 哲は気合を入れて襟を正すと、厨房の方に歩いて行った。すみ子は微笑んで、その背中を見つめていた。
世間では脱炭素が叫ばれている。 知り合いが洋上発電とかすればいいのに、と言っていた。 でも利権でうまくいかないだろうから僕はAVの幼女体型の娘で自家発電する。 幼女発電。 日本のロリコンがこの夏発電量を増し電力不足をクリーンに補う。 実に合理的。 ピストンによる電荷は原子力をゆうに凌ぐだろう。 全国のロリ体型の女の人の儲け時だ。 脱炭素が加速する。 幼女が服を着ているだけでも発電量が増える。 産業が盛り上がる。 実に頭の悪い政策だ。 風俗産業を尻目に僕は畑に出掛ける。
山あいにある小さな沼のほとりを、中年の男が歩いている。 「釣れますか?」 石の上に座った年寄りの男が、釣りをしていた。 「さあな」 しばらく水面を眺めていたが、魚が掛かることはなかった。 男は家に釣り竿を取りに戻った。 そして、年寄りの男から少し離れたところで、糸を垂らした。 「釣れますか?」 帽子を被った男が声をかけた。 「さあね」 その男もしばらく水面を眺めていたが、魚が掛かることはなかった。 帽子の男は、車に積んでいた釣り竿を取りに戻った。 そして、中年の男から少し離れたところで、糸を垂らした。 「釣れますか?」 膝下ズボンを履いた男が声をかけた。 「さあ」 男はしばらく水面を眺めていたが、魚が掛かることはなかった。 膝下の男が年寄りに近づき、置いてあったバケツを覗いた。 「……ここ、何が釣れますか?」 年寄りが振り返った。 「知らんよ。ここ、この前の大雨の跡だ」 男たちは二人を横目で見ながら、浮きが沈むのをじっと待った。
お掃除がんばりすぎて、腰に少し重たい痛み ふう、と息をついたのもつかの間 そんなわたしを急かすように全身で跳ねまわる お散歩! お散歩!! と、愛犬のジャックラッセル 本当に、キミはいつも元気だねえ 手早く準備を整え、外のまぶしい世界へとくり出していく 新緑の青くささと、初夏の濃い光に挟まれた、心地いいこの時期 カレンダーには書かれていないこの季節の名前を、わたしはまだ知らない ふいに、ぐいと腕が引かれる 早く! 早く!! リードの先で、ジャックはおかまいなしに加速する 腰の痛みも、掃除の疲れも、この弾む足取りに追い越されて… 早く! 早く!! 目指すのは、たくさんのお友だちが待つあの公園
駅むこうの古本屋さんは、わたし好みの本をたくさん置いていて 学食は、からあげと麻婆豆腐がおいしくて となりの駅のブックカフェは、絵本が充実してて そのせいかお子さん連れがおおいみたい すこしずつこの街を知っていく すこしずつこの街に慣れていく お客さんのひとりがあの人に似ていて でも、よく見たらぜんぜんで みんなあの人みたいに見えちゃって でも、みんなちがう顔をしていて 教室では、講義の内容とは別のわたしの知らない単語が飛び交う まるで記号みたい それがわたしに向けられたものでないのが、せめてもの救い 自分の居場所だけは、きちんと確保できている 地元とこちらとで青空がちがうとは思わない でも、こっちのほうが狭い気がする 見上げると高い建物がおおくって 狭いと思うのはヒトの発想 空のほうからしたら窮屈ということかな 飛行機雲に、青い空が嫌そうな表情を見せている
自称ショートショート作家の男が、パソコンの前で固まった。 「なんだ……この世界は。異世界、転生、魔法、ファンタジーばかりじゃないか」 その時、微かに声が聞こえた。 「お前も、書いてみるがいい」 「その声は……星先生、筒井先生ですか?」 「パステルカラーな世界を書くのだ」 男は指を走らせた。 ある日の午後。 道路脇で、婆さんが杖を大きく振っていた。 かすれた声で呟きながら、ふらふらと歩いている。 「ん……魔法の杖か?」 そこへ、車が止まった。 出てきた女は、慣れた様子で駆け寄った。 「義母さん、帰りましょ」 婆さんは手を引かれ、小さく笑った。 その様子を見ていた男が、スマホにメモを書き込む。 『異世界転移寸前』 男はホッとした顔で、その場を立ち去った。
「いいもん見せてやるよ」 「何?エロいやつ?」 「もっといいもんだって」 マクドナルドで下校途中の高校生がスマホ片手に話している スマホで再生された動画は何かの格闘技の試合だったが、明らかに観客が無許可で撮影している動画だった 白い覆面をした男が相手を一瞬で倒している 「何これ?」 「UGFCって言ってさ非公式の地下格闘技の大会何だって。武器を使わなければ何でもありらしいよ」 「何でもありって?」 「骨折ったり、囓ったりしてる動画がめちゃくちゃバズってる。血とかめっちゃ出るよ。それで、もし、死んじゃっても自己責任何だってさ」 「…やべーな」 次の動画がも白い覆面の男が自分の体の2倍ほどある巨体を瞬殺でノックアウトしていた。 「あっ次の動画ヤバイよ」 またも白い覆面の男の試合だ、相手の男も堪えているがヤラれるのが目に見えている。次の攻撃で白い覆面が勝つなと思っていると白い覆面の男が二人の男に後ろから羽交い締めされている。試合の相手の仲間だろうか、会場は大盛り上がりで、罵声であふれている。 相手の男がどこからか金槌を受け取る。迷わず男が金槌を振りかぶる。次の瞬間、三人男が床に倒れ白い覆面の男が観客に拳を上げている 周りは大歓声である 「ヤベーなこの人」 「なっ?すげーだろ」 「でも何でガンダムなの?」 「さぁ…好きなんじゃない?」
川沿いにある骨董屋。 白髪交じりの女が、奥の椅子に腰掛けている。 ──ギィー、ガチャン。 男が入ってきた。 店の中をゆっくりと見て回る。 そのとき、壁の戸棚に目が止まった。 「これは何ですか」 「知らん」 「売り物ですか」 「あぁ」 男は、戸棚から一冊の本を手に取った。 「鍵つき…鍵はありますか」 「ない」 表紙を眺めながら、しばらく迷った。 そして、安くはない金を払い、店を出た。 帰り道、鍵屋を探す。 「すみません。この鍵、開けられますか」 店主は本を手に取り、鍵穴をレンズで覗き込んだ。 「これ、無理に開けるより鍵作ったほうがいいな。どうする」 男は、鍵を作ってもらうことにした。 そしてまた、安くはない金を払った。 郊外の一軒家。 部屋には、趣味で集めた骨董品が並んでいる。 机の上に本を置くと、小さく深呼吸をした。 ──カチ、カチ。 鍵を回し、重たい表紙を開いた。 「二百年前か…」 最初のページには、日付と「予言書」の文字があった。 男は、ゆっくりと時間をかけて読んだ。 すべてを読み終えると、本を抱えて家を出た。 ──ギィー、ガチャン。 「これ、買い取ってくれ」 「安いよ」 女はカウンターに、わずかな金を置くと、 戸棚に本を戻した。 「予言、全部はずれだったぞ」 「知らん」 店を出た男は、持っていた鍵を川に投げた。 川の底には、同じ形の鍵が、キラキラと光っていた。
何だか怖い夢を見た気がするけど、起きて直ぐに忘れてしまった。 今日はとても静かな朝だ 世間はゴールデン・ウィークの初日で街の皆がまだ寝ているように感じる 実際、妻と小学生4年生の息子は起きる気配もない 一人で朝食を作り、音量をしぼったテレビを観ながら食べる。 朝のニュースでは、スポーツの試合結果や芸能人の不倫、人気のスイーツなど、見慣れた物ばかりだ。天気予報の次に事件のニュースが流れた。 コンビニで万引きをした犯人が逃走中にとおりすがりの一般人をナイフで刺して殺害したという事件が流れた。 いつどこで人生が終わってしまうか分からない。父親もそうだった。 父親との思い出はほとんどなくて、あっても一瞬一瞬の短い景色。写真や動画を観るかぎり、優しくて面白くていつも僕を大切にしてくれていた。父親が亡くなった日の事は少し覚えている。 僕は初めて一人で作ったガンダムのプラモデルを持ちながらユーチューブを見ていた。ユーチューブを見ながら「明日からパパとたくさん遊べるな。今日は早く帰って来るかな」と思っていた記憶がある。僕は父親と遊びたい子供だったのだなと思う。父親が好きだったのだな。 父親がいない人生は辛かった気がする。 それしか経験してないから分からないけど、ここまで来るのに楽ではなかった。だけど、いつも千絵が側にいてくれた。千絵がいたから僕がここにいる。千絵が僕の折れた心を直してくれた。 僕は千絵に何も出来はしないけど、出来る事と言えば… 「何考えてんの?難しい顔して」 「いや、ただ、君が先に死んでも僕は君以外とは結婚しないよって言おうと思って」 「えっ…急にどうしたの?」 「パパ、プラモデルやろう」 「あなたが先に死んだら私は別の人と結婚しようかな」 「さ、さようですか」 「さようです。だから私より長生きしてください」 「うん、さよう…」 「ママ〜プリン食べたい」 「あっ、はーい、ちょっと待ってね」 「じゃあパパも食べようかな」 「ママも一瞬に食べようよ」 「じゃあ皆でプリンパーティーだ」 「イエーイ」
どうでしょうか大野さん 「いや…大変ですね…酷すぎるよ。東京ペンギンさんはよく耐えてきましたね。本当によく頑張ったと思います」 本当ですね。辛い辛い日々だったでしょうね。地獄の日々でしたと書いてありましたね。 「そうですよね。…えっと、そうですね。僕ら嵐の歌で『サクラ咲ケ』と言う歌があるんですけど、その中に、その歌詞の中に『握りしめた手が何か言う 駆け出せば間に合うさ』というところがあって、本当そうだと思うんですよね。親でも地元の友達でも、東京ペンギンさんを大切に思ってくれる人が必ずいると思うんですよ。だから、その人達に相談して、思いのたけを吐き出して、そしたら、きっとその人達は分かってくれるから。自分は一人じゃないんだって分かるから、それから始まると思います。全てが。そりゃ時間がかかるかもしれないけど過去なんか振り返っても変えようがないし、明日の事なんて誰も分からないから、今、出来ることをね、したほうが良いと思いますね。どうですか、メデュ子さん」 一字一句同じです 「ハハハハハ。おい!メデュ子!…でもそれしかないよね。」 うん、東京ペンギンさんは強い人だから、分かっているのかもしれませんね。少しだけでいいから背中を押してもらいたい。そんな気持ちなのかもしれません。ですので私が背中を押します。 【その心に萌えた不安の蕾!石にしてやろうか!!】 「本物ヤバイね…」 ありがとうございます ではここで一曲お送りいたします 嵐で「サクラ咲ケ」 ♪ 握りしめた手が 何か言う 駆けだせば 間に合うさと コンビニで雑誌 立ち読みしてた 昨日の僕に Bye-Bye 走り出した 街の音は 歓声のよう サクラ咲ケ 僕の胸のなかに 芽生えた 名もなき 夢たち 振り向くな 後ろには明日(あす)はないから 前を向け 駅前で誰か 歌ってる それは君の好きな歌 遠く離れても 決して消えない だから別れじゃない いつかふたり 望む場所で めぐり会いたい サクラ咲ケ 君の胸のなかで 揺れてた 小さな 蕾よ 負けないように くじけないように今 歌うから 未来なんてさ すぐに変わる 変えてみせる 「右へならえ」から踏み出すこの一歩を 打った点が分ける結果 陰と陽 だから知っとこう 生きるヒントを かすむ蜃気楼すらも掴む勢い 今 蒔けば種 花咲かす やった後言うなら まだ分かるんだ そう そりゃ時間なんてのはかかる 春には 大きな花を咲かす めぐり会いたい 必ず サクラ咲ケ 君の胸のなかで 揺れてた 小さな 蕾よ 負けないように くじけないように今 歌うから サクラ咲ケ 僕の胸のなかに 芽生えた 名もなき 夢たち 振り向くな 後ろには明日(あす)はないから 前へ 前へ ♪ はい、今日は大野さん本当にありがとうございました。スペシャルゲスト大野智さんでした。 「ありがとう御座いました。皆さんどうぞお元気で!」 ではまたお会いしましょう。シャー
ある日私は婚約者のエリック公爵令息と妹のナタリーが2人で見つめ合っている姿を目撃してしまった! しかも私の家である侯爵家で堂々とだ! 流石に周りに人はいないとは言え、舐め腐っているにもほどがある! 私は「何をしているのですか!」と叫ぶと、エリックは流石に焦った表情を見せるも、開き直ったように言う! 「クリスティナ!お前のような可愛くない女よりも、可愛くて俺の庇護欲を駆り立てるナタリーのほうがいいに決まっている!この婚約はお前ら侯爵家から持ち込んだものだ!ならば家同士ならば、どっちと結婚しようが俺の自由だ!文句あるか!?」 そしてナタリーも「お姉様ズルいですわ、私だってエリック様の事を愛しているんです、だから譲って下さって当然ですわ」 などとエリックにすがりついている、私はこの様子を見て切れた! 「ざけんなボケが!浮気しておいて何開き直ってるんだ!」 そして私の怒りは止まらずに、怒りの言葉を連打するのであった! 「いいこと?庇護欲?そんな甘ったれた戯言に興味はありません!むしろ私の下僕になりなさい!何故なら私がそれを望んでいるから!」 「な……お姉様ワガママすぎますわ!」 ナタリーが反論してくるが、 「貴女の庇護欲なんて低レベルな雑魚ワガママ何か許しません!いいこと?エリック、この不始末は許しません、だから私の命令を聞きなさい!」 もう怒りのあまり自分でも言ってることが支離滅裂だとは思ったが何と…… 「は……はい!分かりました!」 何て言いだすでは無いか…… なんだこいつ…… ナタリーが「エリック様!?どうして?可愛い私を捨てるのですか?私エリック様がいないと死んでしまいますわ!」 なんて寝言を言うも、「無視しなさい!ナタリーは死んだりはしません!平気で他の男を作るのですから、これからは私の命令に従うことに人生を費やしなさい!」 ともう私もヤケクソでこの流れに乗ったら…… 「もちろんです、ああ私の素晴らしき妻になる、クリスティナ……」 なんてうっとりしだした…… 「どうして!?どうしてなの?あんなにお姉様のことを可愛くないと言って、私を愛してくれたじゃない!」 するとエリックは…… 「黙れ!お前のワガママなんか可愛くない!ああ、僕は女性を守るナイトになりたいのだ!それならば、クリスティナ……いやクリスティナ様こそ我が主に相応しい!」 ……どういう価値観をしているのかしら?と思うのだが、この男が何か知らないが人に仕えたい男だったので、 今の女王様スタイルの私>庇護欲のナタリー>以前の真面目な私で好んでいることが予測できた! ってことで婚約破棄はやめてやろう。 その代わり今後私の下僕として生きてね! そして私はエリックを見下しているのと浮気された恨みを忘れる気は無く…… 恐ろしい復讐を企てていたのであった……! 実は私には好きな男がいるのである。 それは護衛騎士のフィリップだが、身分差ゆえに諦めていた。 しかし私は恐ろしいほどの残酷な企みを考えていたのである。 フィリップも実は私に気があることは知っている、が身分差のせいで、お互い踏み出せないのだ…… ということで、私が迫ったところ、フィリップは抗うことができずに、一夜愛されることに成功…… フィリップは死ぬほど落ち込んでいたが私は「ごめんなさい、本当なら結婚したかった、でも家のためにそれはできないわ、でも安心して、きっと貴方との子をエリックに子として育てて見せるから!」 「き……君は何を!?」 そう驚くフィリップに対して、私はとびっきり可愛い悪魔のような顔をして、去った…… 幸運なことに1回で子供はできた。私はエリックに「たまには実家で少し休みたいので休ませてもらうわ!」と宣言をして、 お腹が膨らんでいてバレる時期を隠して出産した! 白い結婚なのでいかにエリックが馬鹿でも私が浮気したことがバレてしまいますからね! そして、堂々と子供を連れてエリックの元へ戻り宣言をする! 「この子可愛いでしょう?みなしごで可哀そうですから養子にしましょう!」 「しかしだな……どこの馬の骨ともわからぬものを……」 「黙りなさい!貴方は人の心が無いのですか!」 「わ……分かったよ……」 その後こいつには一生白い結婚を突き通すし、エリックは養子では外聞が悪いということで、子供ということで届け出ることにしたので、つまりだ、私とフィリップの子が、エリックの後継者になるってことなのよ…… まさかここまで上手く行くなんでね! 浮気と、そして舐め腐った態度は高くつくのよ!
書いて 消して 書いて 消して 書いて 消して 辛くなったら書けばいい 紙って、意外と丈夫なんだよね 言う 言わない 言う 言わない 言う 言わない 辛くなったら言えばいい 人って、意外と強いんだよね 洞窟の奥に入って、出口が見えなくなっても大丈夫 懐中電灯を持って、探しに来てくれる人達が必ずいる 過去は書き直せないけれど、未来は何度でも描き直せる