そっとしておいて

郊外の小さなアパート。 母親と男の子が暮らしている。 「これ、たくさん作ったの」 隣に住む年配の女性が、夕飯の余りを持ってきた。 「いつもありがとうございます」 中身を見ずに、冷蔵庫へ入れた。 男の子が、母親を見上げる。 「保育園、行こうか」 ヘルメットをかぶせ、後ろに座らせた。 「おはようございます」 「先生、おはようございます」 「これ、どうぞ」 保育士が、一枚の紙を差し出した。 「申請すると、町から支援金が出ますよ」 「いつもありがとうございます」 母親は折りたたんだ紙をカバンに入れ、自転車をこいだ。 「係長、おはようございます」 「子どもさん、大丈夫? 必要ならシフト調整するからね」 「いつもありがとうございます」 小さく頭を下げた。 ──その日の夜。 子どもを寝かせると、冷蔵庫からビールを取り出した。 「別に、そんな困ってないし……」 一気に飲み干し、もらった余りを箸で突いた。 「今日は何回……」 苦笑いで、電子タバコをくわえた。

呼吸

かき氷を食べて ラムネを飲んで 夏は 夏の呼吸をしていたね 夏が終わるよ 秋になるよ 本を読んで 枯葉をふみつけて 秋は 秋の呼吸をしないとね

道の途中【BL】

彼は私の永い生の中に現れた唯一のひとでした。 暗い夜道に突如空に昇った星でありました。あてどなく歩く道を、もしやもう違えてしまったのではと不安に震える道中に、そこを目指せば良いのだと私を駆け出させる希望の火でありました。 実際には彼は隣にいて、いつでも私の手を引いてくれたので、旅人の星に喩えるよりは、掲げるランタンの方がいいのでしょうか。 ああ、遠すぎて温度の分からない星よりは、ランタンの方がうってつけかもしれない。彼の隣は温かかったのです。どんなに寒い冬の雪の日も、普段と変わらずに。 私は彼から多くを学びました。気遣いやら、笑わせ方やら、愛し方を。彼と同じにはできはしませんでしたが、彼のその様はたいへん、うつくしかったのです。全部、彼の言う愛によるものでありましたから、それを持たぬ私は、彼から見るこの世界はどれほど輝いているのだろうといつも不思議に思っておりました。 我々はどうやら同じものを見ることはできないのだ、と知ったのは、彼はとうに気付いていたのかもしれませんが、少なくとも私が知ってしまったのは、もう戻ることが叶わぬほど歩いた後でした。 歩き始めた地点はおろか、一度一人分が途切れた足跡の痕跡も見ることが叶わぬほど遠くまで来てからでした。 彼は変わらず私の手元にありました。この先どうしよう、と彼は決して言いませんでした。振り返る素振りすら私の見ている前ではしませんでした。 不安とともに私の手を握る掌に、ここに来てようやく、彼も私と同じくして、道を知らなかったのだと気付いたのです。 二人して道を失いましたが、私は別段悪い気はしませんでした。思えばここまで既に散々迷い、何故この彷徨い歩いた果てに、私の望む場所に、彼が連れて行ってくれるのだと疑うことなく信じていたのだろうと今更おかしくなったのです。 悪い気はしませんでしたが、悪いことをした気にはなりました。何故同じになれないのだろうと、苦しむ彼をずっと、隣で見てきたからです。彼は星でなくランタンでした。 連れ歩いたのは私です。

眠れない夜の音楽

《Ba.朝顔》 ここ最近は眠りが浅い。 眠ってから2時間もすれば必ず起きて、そこから長い夜を過ごす。お酒も珈琲も飲んでないのに、神経が高ぶっているのか、双極症の症状の一つなのか。 とにかく無理に寝るのは諦めて、音楽を聴くことにした。 Spotifyをランダムで曲をかける ▽一曲目 THE YELLOW MONKEYの薔薇色の日々(Live) この曲の最後のギターソロはやっぱりいいクライマックスから終わりまでバンドが一つに感じられる ▽二曲目 L'Arc~en~CielのCellSOUL(Live) いつも謎に思えるイントロを終えると、カーテンを開けるようにラルクが出てくる。テツさんのベースは唯一無二で摩訶不思議だ。コピーしようと思ったことはあるが、テツさんが弾かないと魂を持たないメロディーだと思い、未だに弾いてない。ハイドさんの歌声は言うまでもなく。 ▽三曲目 星野源 エウレカ 冒頭のチチチチの音は何だろうと思いながら曲が進んでいく 川の流れるような曲とメロディーと歌声、このMVもかなり好きだ。間奏のソロがベースでも弾けそうで耳を澄ます ▽四曲目 サカナクション ドキュメント 荒野を一人で歩いているような歌い出し 一人ひとりメンバーが参加して、いっくんを支えているような風景が見える。彼の純粋で頑なな心の灯火を消さないように。間奏の二胡みたいなソロも曲の世界観に合っていて良い ▽五曲目 くるり LOVELESS かかりにくいエンジンにキーを回しているようなイントロを終え、無事にトロトロと車を走らせている情景だ 運転しながら、あーでもないこーでもないと思案している様な、孤独だが、誰かを思い、そして、のんびりと道を進んでいる曲。この歌詞で「テクスチャーを上げよう」の意味が調べたけど分からない。勝手に今をしっかり見るんだ。や今の気持ちを丁寧に感じるんだ。の様に解釈している。 時刻はam4:36。あと30分もしたら目覚ましが鳴る。 ▽六曲目 INORAN 想 彼のファーストにして最高の曲と思っている。歌詞も、世界観も、曲も、彼の作る曲にいつもあるコアな部分が強く出た曲だと感じる。とても好きな曲の一つ ▽七曲目 TheBirthday 誰かが 変なイントロとチバの声 可愛い歌詞と分かりやすいメッセージ こんな曲は彼にしか書けないだろう 彼の優しさと生き方が伝わる曲 ▽八曲目 Mr.Children Over こんな素敵な曲が青春を思い出すキーになっている僕らの世代は幸せだと思う 失恋をしてよく聞いた気がする 最近の遠い昔 この曲はイントロ、コーラス、歌詞、声、が若い恋をよく表している。ギターソロは絶品だ 学生時代は田原さんに似ていると言われていたっけか アラームが鳴る。 ソロソロ朝ごはんを作らないと あの人はまだ寝ているだろうに …五分だけベースを弾こうかな。昔作った曲でも…

相も変わらずの生活

 また知り合いと新宿の喫茶店で会う。 待ち時間特にやることがない。 スマホで漫画などを読めばいいのだがやる気が出ない。 昨日食った豚モヤシを思い出して今日も豚モヤシを食べなきゃな、などとボーっと考える。 両腕が痛い。 今日は畑が休みだ。 チェーンの喫茶店は効率重視で頼んだメニューがサッと出てくる。 何でも効率化。 そもそも暇潰しで来てる客。 暇潰し。 精神科の喫茶店と変わらない。 あるいは世界のカフェなどでもやることは一緒。 家電量販店に来る外国人観光客。 外国で買うより安いのだろうか? パソコン買わなきゃなぁ。 パソコンの前でエッチな画像を見てパソコン壊れて知り合いに茶化されてなんだかしょうがないなぁ、と思う。 基本的に野蛮人。 エッチは紳士に、と思ってるが体力が無い。 都会はお金が無いと寂しい。 飲食店が苦手。 肉を食ってないからか豆を食ってないからか髪がボサボサ。 煙草辞めたい。 お酒飲まない。 書きたいこと書いてるが特に変わったことをしていないので普通の文章になる。 彼女が銭湯で仲間外れにされる夢を見たという。 世界はお風呂場。 水は海嶺から水蒸気と共に沸き上がっているらしい。 石油と一緒。 水が増えてお風呂場が沢山出来れば世界は安定するのかもしれない。 番頭の夢を語る僕はコーヒー牛乳みたいな飲み物を飲み皆を清潔にする。

独自性毒

「うーん、なんか特徴がないなあ」 「特徴、ですか」 「もっとこう、他にない機能がないと、うちの製品を使おうってならないでしょ?」    上司に提案した空気清浄機は、特徴がない理由で却下された。  正直、空気清浄機なんて違いはない。  フィルターの種類によって、フィルターに絡めとれるウイルスの大きさが変わるだけ。  しいて差別化できるとすればデザインくらいのものだ。  でもデザインだって、黒か白と相場が決まっている。  赤とか青とか、派手な色を作っても、赤や青の空気清浄機を何人が欲しがるかと考えれば、売れるはずがない。   「特徴、ねえ」    しかたなく、家具家電の通販サイトを見て回る。  空気清浄機が他の家具の機能を兼ねれば、買う必要のある家具が一つ無くなるし、それは差別化と言えるだろう。  マウスを動かして、通販サイトを眺めていく。  椅子に机に照明。  特徴のない家具たちが、売上ランキングの上位に並んでいる。   「新しいの考えてきました」 「お、どれどれ?」 「空気清浄機に小型ディスプレイを付けて、テレビも見れる空気清浄機です」 「素晴らしい!」 「後、空気清浄機にファンを付けて、清浄された空気が送られる扇風機とか」 「最高! 採用!」    特徴のある空気清浄機は、あっさりと品化にこぎつけた。  自信満々のポップと共に、家電量販店の店頭に並んだ。    ぼくは、通販サイトを見て回る。  相変わらず、特徴のない家具たちが、売上ランキングの上位に並んでいる。  空気清浄機だっておんなじだ。   「圏外……」    表示順を降順に入れ替えると、最下位近くにうちの製品が並んでいた。

それ、もう要らないんですよ。と彼は言った

「あ、お客様! 財布忘れてますよ」  僕は客が置いていった、高そうな長財布を持って急いで出入口に向かった。店を出る直前だった、細身で長身の、何となくやつれた顔の男が振り返る。 「ああ……。それ、もう要らないんですよ。よかったら貰ってください」 「は……? いや、そういうわけには……」  僕の言葉も聞かずに、男は店を出ていった。慌てて追いかけると、その男は普通の足取りで至極当然のように車道へと踏み入り、 「え」  走ってきたトラックに跳ね飛ばされた。  一気に町が騒然とする。激突音にバックヤードから出てきた店長の「救急車呼んできて!」という声に生返事を返しながら、僕は財布を持ったままバックヤードに向かった。  その後、男は救急車に運ばれていったが、あの様子では生きていると考える方が難しいだろう。彼の最期の話し相手が自分になってしまっただけでも後味が悪いのに、目の前にはおそらく遺品になってしまった長財布。一応中身を確認したら、現金はもちろん、いくつかのポイントカードや免許証、キャッシュカードやクレジットカードには、暗証番号のメモまで貼られていた。本気で、誰かに貰わせるつもりだったのだろうか。  しかしながら、当然こんなものを懐に入れる気にはなるはずもなく、店長に相談した後、普通に警察に届けた。  まったく、嫌な目に遭った。しばらくは、良い夢は見られそうにない。  = = =    その日死ぬ人を見分けられるようになったのは、いつ頃だっただろうか。いつの間にかわかるようになっていたし、そうなった理由もわからない。ただ、顔がブレて見える人は、その日のうちに死んでしまうことだけはわかっている。  始めは目が悪くなったのかとか、疲れているんだろうとか、そのくらいにしか思わなかった。しかし、顔がブレて見えるようになったその日のうちに友人や年老いていた母が死に、きっとこれはその予兆なのだと気づいた。  当然、どうにかできないものかと自分なりに策を講じてみたこともあるが、そのすべてが何の役にも立たなかった。今となってはもう、顔がブレている人に出会っても見て見ぬふりをしている。  その日もいつも通りに目覚めて、いつも通りに出社のための準備をしていた。そして鏡の前に立った時。  そこには、見慣れすぎた自分の顔は映っていなかった。というより、それが見えなかった。自分の顔がブレて見えることに気づき、自分の最期を悟った。  自分でも驚くほど、妙に冷静だった。その日はいつものように出社するのはやめた。会社に体調不良を理由に欠勤するという旨の連絡を入れると、出かけるためスーツに着替えた。これ以外に外出着はなかった。  それから貴重品を集めて、通勤で使っている鞄に入れた。財布に入れていたカード類に暗証番号のメモを貼り付け、いつも通りに家を出た。  いろいろなところに向かい、行く先々で貴重品を置いて回った。自分は独り身なうえ、母が死んでから親族ともすっかり疎遠で相続する人間もいないのだから、どうせなら誰かが拾って持って行ってくれた方が有意義だ。  今日死ぬことはわかっていても、いつ死ぬのかはわからない。しかし、死ぬことへの恐怖は不思議となかった。強いて言うのなら、それが一番恐ろしいのかもしれない。  やがて貴重品の大半をどこかに置き終え、残るは財布だけになった。都合よくコンビニがあったので、そこに立ち寄った。ATMでなんとなく1万円だけ引き出し、それを財布にしまうとそれを置いたまま立ち去る。出入口を出る直前、店員の青年に呼び止められた。 「あ、お客様! 財布忘れてますよ」  振り返って答える。 「ああ……。それ、もう要らないんですよ。よかったら貰ってください」 「は……? いや、そういうわけには……」  戸惑ったような彼の声を聞きながら、店を後にした。そしてそのまま、まっすぐに歩いた。  トラックに撥ねられるのは、あまり良いものではない。しばらくの間、右半身がかなり痛かった。  初めて知った。 (お題:「拾ったものを返しに行ったら、持ち主が『それ、もう要らないんですよ』と言った。」)

オセロ

俺はオセロが大好きだ。オセロをこよなく愛している。今日もスマホでオセロをしている。授業中だろうが気にしない。なぜなら俺はオセロが好きだから。 「おい。お前、何時間やってんだよ。」 俺の友人が隣で囁く。 「は?いいだろ。好きなんだよ。」 そして俺は順調に角を取る。 「はいっ勝ち〜」 俺はここのところ毎回勝っていた。 俺はオセロからも愛されているのだろう。オセロで俺に敵うものは誰もいない。 授業はいつのまにか終わっていた。 「は?お前それ1番強いAIのやつだろ?すご。いや、やり過ぎだろ。」 友人に凄いと言われ、調子が良くなる。 「あーあ。なんか弱過ぎてつまんないかも。もっと強いAIないかなぁ。」 そして俺はそう呟いていた。今思えば、そんなこと呟かなきゃよかったのに。 「あの…。急に話しかけてごめんなさい。オセロ、良かったら対戦してくれませんか。」 俺は思わず肩をあげる。声の先にはクラスで静かな女子がおずおずと後ろに立っていた。 「あ、いいっすよ。」 俺に対戦を挑むとはいい度胸じゃんと思った。どうせ俺が勝つんだ。俺が勝ったらお前は泣くんだろ。やめとけばいいのに。 そうして俺はその女子と勝負した。俺は黒。そいつが白だった。 だが、始まると共に、俺は焦り始めていた。 そう。勝ち目は最初からなかったんだ。 そいつの思い通りに俺はまんまと嵌められる。 ついには角を取られてしまう。 へ〜すごい。という友人の声は、俺にではなく、そいつに向けられる。 俺は焦る。焦るほど駒は白く染まる。 正義は必ず勝つと言うのか。 いつのまにか黒なんて初めからなかったかのように、白だけになった。 「…まじか。」 俺は呆気に取られてしまった。泣きたいのは俺の方だった。どうせ馬鹿にされるんだ。そう思ってそいつの顔を見る。だが、そいつは俺を煽りもせず、満足そうな顔をした。 思わず俺の心が跳ねた。 なんだ今の。 まるで、角に駒を置かれたかのようだった。 「…また、やってもいい?」 その子、いや、そいつはそう言ったんだ。 「…ああ。まぁ、今回は手加減しただけだから。勝たせてやっただけ。次は勝つから。」 俺はそんなこと思ってもいないのに、強がって口走ってしまった。だが、その子は微笑んだだけだった。

リモートワーク戦争、終結

 リモートワークが流行して、早数年。  通勤時間という余計な時間が無くなったことに、従業員たちは気づき、それを当たり前だと受け入れた。    一方、リモートワークによる生産性の低下が可視化された現代、企業は従業員たちに出社回帰を促した。   「弊社も、オフィス出社を基本とします」 「ふざけんなー!」 「なら通勤時間も出社時間にしろコラー!」    従業員の満足度と、企業の利益。  頭を抱えた役員たちは、従業員から出社したくない理由を集めた。   『通勤時間が無駄』 『通勤がコスパ悪い』 『毎日電車で一時間とか無理』   「従業員たちの気持ちは、よくわかった。本社への出社は、不要とする」    役員の決定に、従業員は歓喜した。  これで、自宅で仕事ができると。   「君たちの自宅の近くに、新しいオフィスを用意した。徒歩十分圏内だ。これで、通勤時間の心配もなくなったな!」 「え?」    従業員たちは、断る理由を探した。  しかし、散々通勤時間の長さと通勤時間のタダ働きを主張した後では、それらがクリアにされた企業からの提案を、飲まざるを得なかった。   「なかなかいい街じゃないか!」 「ハハッ。ソッスネ」    新たなオフィスの近くには、管理のために役員が一人引っ越してきた。  役員との距離が狭い小さなオフィスで、従業員たちは今日も仕事をする。   「お、奇遇だね」 「ハハッ。ソッスネ」    街に一つしかないスーパーで、休日は偶然役員と遭遇しながら。

世界旅行に行けないので宇宙の神秘を探る

 お金が無くて世界旅行に行けないので彼女を家に呼んで宇宙の神秘を探索する。 セクハラよ!私の身体を小宇宙に見立てるなんて!と怒られてしまいそうだ。 おお観音様。 宇宙の果てには女体があると思うのだが(あるいは女性からすれば男体があるのかも知れない) 栃木に男体山女体山と言う山があるなぁ。 あるいは軽い山登りを(ハイキング)して高尾山でも秩父の高麗神社でも行ったりして紅葉を見たりお土産のキムチを買ったりして昔の江戸やソウルの気分を味わうのも手かもしれない。 江戸に閉じ込められた町人や滅ぼされた百済の気分を味わう。 うーむ高尾山や日光には行ったことはあるがお猿さんたちは僕を歓迎してくれるだろうか? ヒマラヤより高い山もあるらしいがとりあえず近所の公園に行って僕の作った最高峰の山とか砂場で作って発達障がいを併発させるのも手かもしれない。 夜やることがないと下らない事ばかり考える。 世界地図はなんだかどんどん変わっていくが(国境とか)地球の組成も変わっていると思うので(地学は得意だったがあまり発展性のある分野では無いと昔の知り合いが言っていた)良し悪しがある。 宇宙は果てしないコンドームのような気がする(皆最果ての女体を目指して日々邁進する) 世界がゴムならどっかに生えている名もないゴムの木が世界樹なのだろう。 そんなものかもしれない。 おまえはもう少し世界を見てこいと言われそうだが野菜が足りないので近所の畑から野菜ぶっこぬいて不良日本人になりそうな僕は刑務所と隣り合わせだが畑の雑草取りを最近サボっているので労働は落穂拾いの絵の延長なのだろうか?などとちょっとおセンチになったりする。 車に轢かれて犬の死骸になる日も近いかも知れない。 骨は宇宙葬にして欲しいのだがお前絶対寂しくなって隕石みたいに地球に舞い戻ってくるからおとなしく福島の墓に入っとけって檀家の人に気遣われてそうだ。 僕もまだ地球の一員。 バルタン星人の季節が過ぎる。 フォッフォッフォ。

環境の違い

ある日の夕方。 テレビのローカルニュース。 アナウンサーが原稿に視線を向けた。 「今日の午後、17歳の高校生が民家に忍び込み、現金3,000円を盗んだ容疑で逮捕されました」 画面に、口元だけの女が映った。 『挨拶もきちんとできるいい子よ。 そこの公園で、いつも一人でサッカーボールを壁にぶつけてたわ』 モニターを見るアナウンサーが、小さくうなずいた。 「次のニュースです。 今日の午後、17歳の高校生が地元サッカークラブへの入団を決めました。契約金は3,000万円だそうです」 画面に、笑顔の女が映った。 『挨拶もきちんとできるいい子よ。 そこの公園で、いつも一人でサッカーボールを壁にぶつけてたわ』 モニターを見るアナウンサーが、小さくうなずいた。

白日戦隊!ホワイトレンジャー✟【小宮さんの乱】

僕はホワイトレンジャー2号のスノー。 普段は本屋で働いています。 この間、パートの小宮さんと同じシフトになった時、「スノー君って、ホワイトレンジャーやりながら本屋でバイトだなんてクレイジーだね」と言われました。 僕らホワイトレンジャーはご当地キャラの様に世間に知られた存在なんです。それは変身していてもしていなくても。 ここの店長もバイト面接の時に「君がいれば万引きは無くなるね」と変なプレッシャーをかけられました。 ただ、僕らホワイトレンジャーは人間じゃないんだ。姿、形は人間そのものだけど、僕らは人々の思いが博士のマシンによって具現化された存在なんだ。 よく分からないよね。言っている僕もよく分からないけど。 とにかく、僕らホワイトレンジャーは何とか街の皆さんに受け入れられて生活が出来ている 今日はホワイトレンジャーの事について伝えたいわけじゃないんだ。さっきも行った本屋のパートの小宮さんのことなんだけど。 この間、小宮さんが半日で上がった時、日記帳を忘れていったんだけど。僕はそれが本屋のメモだと思って勝手に開いたんだ。僕がバイトしている本屋では売れ残った手帳やノートをよく店長がメモ用で置いてくれているから。そしたら変なメモばかりが書いてあって、暫くしてやっと小宮さんの日記帳だったんだと気がついたんだ。そもそも日記帳を持ち歩いているなんて、小宮さんは変わっているのかもしれない その小宮さんの手帳の中身を皆に聞いてほしいんだ。勿論内緒で。 8月4日 火曜日 今月は旦那が夜勤なので今日は遅くまでドラマを観ていた。韓流ドラマをずっと馬鹿にしてきたが、一度観てしまうと止まらない。 8月5日 水曜日 店長からのラインが多い。殆どの内容は私をデートに誘う物ばかりで、マジ怖い。 8月6日 木曜日 若い男に抱かれたい。腹の出てない男に。 ファミマのプリンサンド激ウマ 8月8日 土曜日 今日のバイトはスノー君と一緒だった。あまり話さない人だけど、話すと楽しい。ヒーローに抱かれるのもいいかも。必殺技は持っているのかな? 8月9日 日曜日 バイト休み。旦那も休み。旦那は昼前に帰って来て、シャワーも浴びずに寝てしまった。起きたらシーツを替える。 旦那は浮気をしないのか? この辺まで来て、やっと小宮さんの日記帳だと分かった。これを見て思ったのは、夫婦生活とは大変なんだなと言うことと、小宮さんは少しロマンスを求めているっことかな。 店長と出来ているって噂は違うみたい。店長も奥さんと一緒に働いているのに、大丈夫なのかな?まぁ知らないけど。とにかく、また、何か思い出したら投稿します。 ホワイトレンジャー2号 スノー 「これなんですけど」 「これがツイッターに?」 「Xです。とにかく、これ僕になりすまして勝手に投稿してるんですよ!博士!」 「これは怪人の仕業かなぁ…?」 「この投稿凄い嫌なんですけど」 「取り敢えず消しておこう」 博士がキーボードを弾くと投稿が消えた 「また、偽物の君が現れたら教えて。犯人を見つけるから」 「ありがとうございます」 「でも…結局、内容は本当なのかな?」 「知らないっす。店長と出来ている噂はありますけど」 「そっ」 博士は自室に帰る スノーは小宮さんに連絡してみる (今から会えますか?) (会えるよ) ………

ぼむ・たいむ

 息を切らして振り返る。ああ良かった、まだ追い付かれてない。ショッピングモールの二回、角の壁に寄りかかってから、今日の不運を嘆く。  まさか、ボム・タイムにあたるとは思ってもみなかった。せっかく奮発して買った服も、灰と煤に汚れてしまい、お気に入りの鞄に至っては、飛んできた小石で擦れてしまった。  あーー。あーーーー。足音がするぅ。休憩時間もありやしない。すぐにここも離れなくては。まあでも、結構いいペースじゃないだろうか。アナウンスがなったとき私は五階にいたのだから、出口まで半分を切っている。  とりあえず、靴紐を結び直して吹き抜けから一つ下の階を見る。幸いなことに、今はボマーがいなさそうだから、駆け足で行ってしまおう。  と思って一歩踏み出した瞬間。ああもうホントくそ。三階からボマーが降りてきた。しかもさ、目も合っちゃうんだな、これが。  何かもう逆に笑いが止まらなくなりながら、走り出す。はははははっと声を出しているから余計に息が切れる。酸素がなくなるまであとサンビョーとか考える。と、コケた。まだ階段までたどり着いていなくて良かった。目だった傷もないまま立ち上がり、ボマーに向き直る。まあ反撃できるわけでもないから、特に意味はない。  ボマーが無造作に壁に手を当てた。するとそこが爆発し、破片が私目掛けて飛んできて、頬を擦る。乙女の顔に何してくれてんだ。  ハリウッド映画さながらに、再び走り出す。階段は一段二段と飛ばして進み、もうむしろ落下していくような感じだった。すぐに床に足がつき、出口までの廊下を一目散に駆け抜ける。  思考が加速する。これもしかして、他の客全員ゲームオーバー?ボマー私だけを追いかけてるし。脱出特典とラストワンボーナスかあ。楽しいお出かけを犠牲にしたにしては割に合ってねー。  出口にしかれているマットを踏む。外から歓声が聞こえる。  ボマーはもう目と鼻の先くらいに迫っていて、伸びた手が、私の服を掠めてしまいそうだ。そうなったら私も、他の客と一緒にあの世行き。  ああでもたぶん。きっと私の勝ちだ。

キスマーク

足のすねにキスマーク かゆくてしかたのないキスマーク 変な話だけれど これだから庭に出るのは となりの家から香る焼き魚のにおい 心がゆれてしまうの 今日の夜は鍋の予定 お魚は買ってないの またこんど

知ってるよ、そんなこと

おおきなあくびをしたら開けた口のなかにちいさな虫でも入りこんだのか「あめ」がしきりにふがふがして、静かだった人のいない公園に、若干のざわめきがねじ込まれる。 「あめ」と暮らしはじめてから、会社終わりにお酒を飲みに行く機会がめっきり減った。行くのが楽しみで、大人になったなあと思う瞬間でもあった、ある程度の年齢までは。大人になってよかったことは山ほどあるけれど、大人になっていつのまにか愛想笑いが上手くなっていて、わけもなく悲しくもなったりした。 ふがふがのおさまった「あめ」は、木の陰から気になる子を見てるみたい。人のほうか、それとも… 鍋を火にかけたままにしてしまうことがたまにあった「あめ」と暮らす前。 鍋を火にかけたままにしても教えてもらえた「あめ」と暮らすようになってから。 木の陰から見ていた気になる子が行ってしまい「あめ」は、たちまち興味をなくす。はやく家に帰りたいとのアピールは、ほんとうのところ、帰ってからもらえる散歩お疲れさまのおやつへの強い思いかな。たぶん。きっと。 「今度のお休みどこ行きたい?」 それどころではない「あめ」に、わたしの言葉は届いていない。 「ここらへんで、ちょっとした事件あったよね」 のってこないのはミスチョイス。こういう話題ではダメみたい。 「好きだよ」 「あめ」は立ちどまって、こちらを見上げる。かすかな疑問を含んだその表情。 ―知ってるよ、そんなこと とでも言ってるみたい。 「あめ」は、また歩き出す。おやつに向かって。 ―ぼくもだよ そう言ってほしいのに。そんな表情を見たいのに。恥ずかしがって「あめ」はそんなこと言わないし、見せてもくれない。そうとは知っているけれど。それでも、背中に向かってつぶやく。 ―好きだよ

働き蟻と精霊蝗

 海辺の丘に住む昆虫たちは、日々心地よい潮風に当たりながら楽しく遊んで暮らしていました。今日もお月様がお眠りになる頃、日の光を浴びて沢山の昆虫たちが顔を出し始めました。一際目立っているのが、精霊船の形に似た事からそう名付けられた精霊蝗(ショウリョウバッタ)という種類の蝗でした。時計の針のように真っ直ぐ伸びた触覚は左右違った方向を指しており、まだ明け方だというのに時計の文字盤でいう2時を指し示していました。 「やあ精霊蝗くんお早う。もう昼過ぎだと思ってびっくりしちゃったよ。」  蟷螂(カマキリ)は笑って挨拶しました。すると精霊蝗は 「ごめんごめーん。今何時〜?」 と尋ねました。触覚はまるで時間が巻き戻るように回りだすので、周囲の昆虫たちは一斉に笑いました。精霊蝗は気がちがっていましたが、ある一群を除いてみなそれを責めませんでしたし、仲良く暮らしていました。  ある一群とはアリです。彼らは時間を管理して働いていました。精霊蝗の前を通ると 「困るんだよね。そういうテキトーな事されると。」 と責め立てます。蟻たちは精霊蝗の大きな背中をよじ登ると、数匹がかりで触角にぶら下がるようにして、強引に時刻に合わせました。精霊蝗は苦しそうな顔をしていましたが、そんなことはお構いなしで蟻はまくし立てます。 「そうそう今は朝の6時。周りの君たちも笑ってないでガツンと言ってやったらいいんだ。まあ言ってあげられないからこんな現状になってるんだよね。という事でこれからは我ら昆虫で一丸となって、彼の触角を正しい時刻に合わせるようにしよう。私たち蟻は忙しいから、基本的には君達に任せる事になる。長針代わりの右触角と短針代わりの左触角は別々の昆虫に担当してもらう事としよう。一時間交代制で回すとして常に1匹の精霊蝗につき2匹の昆虫が付き添う事になる。勿論夜も寝ずに働いてもらう。時間は様々な場所で分かるほうが便利だから、まずこの周辺にいる精霊蝗の数えて、それで配置を決めよう。では始め!一旦これ以上の指示は控えるから、君達には自主的に動くように。では我々は仕事に戻る。任せたよ。」 苦い顔をする昆虫達に木枯らしが吹きつけました。

デスゲームをするために生まれた存在

 生命には全て、生まれてきた意味がある。   「ふははは。怯えるがいい、人間ども」    この悪魔もまた、デスゲームによって人間を恐怖のどん底に落とすために生まれてきた。   「泣こうが喚こうが、敗者には死、あるのみだ!……あれ?」    間違いがあったとすれば、人類はとっくに滅亡をしていることだろう。  人工物が自然に押しつぶされ、動植物の楽園となっている地球で、悪魔はぽかんとした表情を浮かべた。   「え? あれ? デスゲームの参加者は?」        数千年後。   「うぎ。おはよぎ」 「惜しい! もう少し! はい、『おはよう』」 「ぼはよう」 「ああー、最初を噛んでる!」    悪魔は、猿に言葉を教え込み、人間並みに進化をさせようと努力をしていた。  デスゲームの開催には、知能の高い生物が必須。   「ほら、ご褒美だ」 「ウッキー!」    自身の生まれた意味を行使するため、悪魔は今日も育児に勤しむ。

(なに?)

キミの横顔を見つめるのは それが遠くからであっても 気持ちの上がることだけど バレちゃいそうで危うい こっそり こっそり いきなりこっちを向かれて 言葉もなく 表情だけで (なに?) とか不意打ちもいいとこ 狙ってなんてない だって ホントたまんない いくら自分にじゃないとはいってもさ あれがわたしに向けられちゃったら なんて そんなあり得ないこと このわたしが考えるわけない だって あり得ないから きっと あり得ない でも… もう知らない

6次の隔たり

朝早く、窓際に置かれた文机に、年寄りの男が座った。 便箋を前に、万年筆を握っている。 横には、分厚い英和辞典が置かれていた。 「あんた、何してんの?」 妻が声を掛けた。 「手紙だ」 「はぁ……誰に出すんだ?」 「あいつだ」 ニュース番組に映る、大きな男を指した。 「俺らの生活がキツいの、あいつのせいだろ」 指で机を叩いた。 「まぁな。でも、読んでくれないだろ」 「大丈夫だ。考えがある」 ニヤけ顔の男。 「友だちの友だちをたどると、7人目であいつに届く」 「バカなこと言うな」 「俺も知らんよ。でも、そうなってるらしい」 手紙を書き終えると、封筒に便箋を入れた。 「で……最初は誰に渡すんだ?」 「あぁ、公民館の将棋仲間だ。大学出らしいからな」 男は、封筒を手に家を出た。 ──数日後。 「おい。いるか?」 近所の魚屋のオヤジが訪ねてきた。 「おぉ、どうした」 「ちょっと、頼みがあってな」 その手には、見覚えのある封筒が握られていた。

■■、なくなれば――stAineD_glaSsと君へ

 僕は、一体何が――― ―――なにがしたいのかわからないんだね。  怖いんだ。■■に慣れることが。 ―――■■、なくなればいいのにね。  ■■、君にも? 君は寂しく嗤っていた。 僕は、「寂しく笑う」とはこういう顔なのだと、生まれて初めて君の横顔で思った。 ■■は天泣を呼ぶ。差せる傘は、君以外ない。君を傘にすることもできないけど。  僕は、一体何がしたいのだろう。 意味も無い問いを生み出す。言葉にして吐き出す。答えのないまま、辛くなる。今の気持ちを君以外の誰にもわからないようにして、短編小説をポエムと履き違える。どうしてそんな事を言うの。 どうして どうして どうして もういいよ 18:02に奪われていたのでしょう。 君は、どうかもう一度stAineD_glaSsを感じてほしい。 === ―――「さよなら」、なくなればいいのにね。 と、私は言った。 全部、知ってたよ。 === そう言ってほしい。妄想だ。

草の生えるまでは

少年A さんがポストしました 少年A:ちょっと愚痴言いたい →アンチ犬派:いいよー 中年A  →少年A:中年Aやめてくれ 現役中学生だし   →アンチ犬派:原液(元)中学生の間違いでしょ →たまごどうふ:私も愚痴言いたいです 上司はクソーーーー!  少年A:それなー →少年A:ゴホンゴホン えー それでは言います  →アンチ犬派:風邪気味?  →たまごどうふ:どうぞー →フラれましたー  →アンチ犬派:知ってたww  →たまごどうふ:どんまいです! →え?何かみんな軽くない?  →アンチ犬派:自分がフラれたわけじゃないので   →少年A:ひどい    →アンチ犬派:ひどくない     →少年A:病めるときも健やかなるときもでしょ?     →少年A:悲しみを分かち合うんでしょ?      →アンチ犬派:五セント頂きます       →少年A:ル ー シ ー →少年A:というか職人まだ来てなくない?  →アンチ犬派:たぶんAと違って忙しいんでしょ →たまごどうふ:フラれたのって例の子ですか?  →少年A:例の子です… →アンチ犬派:今見るとキモい  【少年A:好きな人できた!背は低めで目が大きくてハヤシライスが好きだって!落とした消しゴム拾ってくれた!】  →少年A:過去のピュアな俺を晒すなー →髪職人:えwフラれたのかお前ーww  →少年A:職人遅い! 慰めてくれー   →髪職人:地球上に女の子は何人いると思いますか?    →少年A:35億! なんか元気出た…     →髪職人:まあその子は一人ですけどね      →少年A:あげてから落とすタイプ? →甘党:はじめましてー 私も話していいですかっ  →アンチ犬派:え!ご新規じゃん!よかったなA  →少年A:はじめましてー まったり話しましょ   →アンチ犬派:猫被ってやがる… →甘党:えー実はですねっ →甘党:今日フッたの私ですっ!  →アンチ犬派:なにっ!  →髪職人:なんだとっ!  →甘党:ですですっ! →たまごどうふ:本当ですか?  →甘党:本物ですっ →甘党:私も愚痴があって来ましたっ!  →甘党:クラスみんなの前で告白とかないだろっ  →甘党:気まずいじゃろこらっ!!  →甘党:断りにくくさせるのずるいっ!  →甘党:さっきので好感度二十七下がりましたっ!   →アンチ犬派:前なんだったの?    →甘党:九十くらいはいってましたっ     →アンチ犬派:やっちまったなA →甘党:なのでっ  →甘党:次またポイントが九十くらいまで貯まったらもっといい告白してくださいっ  →待ってますっ! →たまごどうふ:あの  →たまごどうふ:ちょっとひどいんじゃないですか?  →たまごどうふ:いつもあんまAさん愚痴とか言わないんですよ  →たまごどうふ:もうちょっと優しい言い方して欲しいです  →たまごどうふ:甘党さん?  →たまごどうふ:甘党さん?  →たまごどうふ:甘党さん? →髪職人:Aも喋らなくなっちゃってますね →髪職人:A大丈夫ですか?  →髪職人:生きてます? →少年A:生きてるよ… →少年A:叫びます →少年A:なんであんなの好きになっちゃったんだああああああああ →アンチ犬派:穴に埋めるくらいの気持ちで吐き出しちゃいなー →少年A:でもーーーまだ好きーーーー嫌いになれないーーーーー  →アンチ犬派:なんでだよーーー →たまごどうふ:Aさんの叫びは  →たまごどうふ:草が生えちゃうまでは秘密ですよー →髪職人:あの子は忘れろーーーww →アンチ犬派:あ →髪職人:あ →たまごどうふ:は? →髪職人:すまんごめんおれのにまだはんえいされてなかったまじごめ →アンチ犬派:秘密しゅーりょー!

蜻蛉

電車の中に蜻蛉がいた。 ここは田舎だ。しょうがない。 始発あるいは終着駅のここでは、 4時10分に発車する電車より 5時10分に発車する電車の方が 早くホームで客を待っている。 どうせならコンビニにでも寄ればよかった。 現在時刻は4時15分。 どうせなら走ってでも4時の電車に乗ればよかった。 蜻蛉が飛び立つ。 しかし、平衡感覚が掴めないのかすぐに落ちる。 ようやく唯一空いているドアに向かったと思えば 手前の窓で休憩。 かと思えば何度も体を窓にぶつける。 そこは出口ではない。 少し進むだけで君は外に出られるのだ。 じりりりりり きゃあ 他の乗客がやってきた。 女子高生は怯え隣の車両に移動した。 じりりりりり すぐに出て行くと思い近くに座り続けていたが、 移動することにした。 イヤホンをした。 蜻蛉の声は聞こえない。 現在時刻は5時9分。 ドアが閉まり、逃げ場がなくなった。 いきなり動き出した蜻蛉は蛍光灯にぶつかった。 憐れだ。 人間が作ったへんてこな物体に惑わされて。 そうだ生物は可哀想なのだ。 己1人では何も出来ない。 今朝改札が開かなかったことを思い出す。 残高不足だった。 不特定多数の人間から不快の感情を向けられた気がした。 この蜻蛉もそうなのだろうか。 だから頭が回らずひたすら窓に体をぶつけていたのか。 答えは出ない。 蜻蛉はどこかへ消えた。 私もあのとき消えてしまいたかった。 眠気が襲い目を閉じる。 あの蜻蛉が自由になれたことを祈って。

時縛(じばく)

「ねぇ、知ってる?」  突然、ボクを招いた部屋のあるじは、こんなことを口走った。 「水滴の中には、小さな部屋があるんだよ」  あるじは、床を指さしながら呟く。「今ここ」  だったら、なんだと言うのだ。なぜ、ボクを連れてくる必要がある? 「わたし、ずっとここに住み続けてきたんだよ」  ボクの気も知らないで、あるじは口を開き続ける。 「17の時、もうホントに現実がイヤになっちゃってさ。どうにかこうにか、逃げられないかなーって思ってたんだよね~。で、次の日、目が覚めたらここだよ、ここ。すごいでしょ?」  何がすごいことなのか、ボクには分からない。分かることといえば、先程から目の前のあるじが言っていることは、おかしさにあふれている。 「最初は、ちょっとビックリしたけど、冷蔵庫には好きな食べものがいーっぱいあるし、わたしの他には誰もいない。見たいテレビだって見放題だから、ホントに最高だな~って。すぐ馴染んじゃった。でもね、わたしは、そのこと、後悔してるんだ。まさか、この部屋が水の中にあるなんてさあ……」  分からなかった。あるじが何を言いたいのか、結局のところ判然としない。 「ふっ、と思い立っちゃったんだよね~。窓なんて見なければよかった。いつもカーテンが閉まっていたのは、わたしにあの光景を見せないためだったんだ。誰かが」  それは誰なんだ? 「知らない。誰かは、誰か、だよ。でも、きっとそうなんじゃいかって思ったんだよね。そう、わたしはずーーーーっと! 閉ざされた時間の流れしか知らなかった」  ただ、あるじは声をあげ続けている。 「この生活にも、いつかは終わりが来る」  どうして、そう……  その先は声にならなかった。なんだかもう、すべてがどうでもよくなってしまっていた。ただ、ボクがここにいることだけが謎だった。 「ねぇ、見てよ」  あるじが指をさした先、窓に降るのは大粒の雨。 「み~んな、知らないんだよね。あの雨のひとつぶひとつぶに、誰かの暮らす部屋があって、誰かの人生が乗っかってるんだってこと。みーんな……知らないんだあ」  あるじは笑う。 「わたしも知らなかった」  懐かしい記憶が、だんだんとよみがえってくる。脳裏に。深く。彼女の笑顔。  涙が頬を伝っていく。目の前がぺしょぺしょになっていく。それでも、あるじの姿だけは、はっきりとボクには見えていた。  ずーーーーっと夢に見てきた。    あるじの指先が、ボクの頬に向いていた。 「わたし、ずっとここに住んでいたんだね」  わかっていた、わかっていた。 「わたし、あのとき、本当に現実から逃げ出したんだ」  今でも覚えている。みなまでも、言わなくとも分かっていること。あのときも、確かにこんな雨だった。線香の煙ごしに見た彼女の笑顔が、ヘッドライト越しに見た彼女の顔と重なった。その顔は、ぺしゃぺしゃで見えなくなっていて。  あぁ、今の自分だ。彼女はとっくに気づいたというのに。今も、ボクだけは変わっていないのだ。あのときから、ずうっと。 「でも、キミまで逃げ出してこなくてもよかったのに」  彼女が笑う。ここにボクを呼んだのは彼女じゃない。ボクがここに彼女を呼び寄せたのだ。 「もういい?」  それが合図だった。  滝のようにあふれ返っていた涙はいつしか底をつき、床の水たまりはとっくに乾いていた。彼女の姿はなかった。

しかし、それでいい

古本の、誰かがつけた角の折り跡 それはそれで、誰かの生きてきた証のような味があるけれど… 読みはじめる前、指先で丁寧に、平らに伸ばす 「前の持ち主が、すまないことをしたみたいだねえ」 古びた紙の匂いが立ちあがるだけで、あたり前に返事はない しかし、それでいい 返事をされても困ってしまう 「すまない」と言ったのだって、回路が… 勝手に… ワタシは、プログラムされた機能をただただ遂行するだけの、AIロボットにすぎないのだから

一億円の貯金と脂肪

「貯金が一億円あってもモテないですよ」 「え!?」    衝撃的なことを言われた。  一億だぞ、一億。  凡人では、決して辿り着くことのできない境地。   「でも一億ですよ?」    耳を疑ったぼくは、もう一度訊き返す。   「はい。モテません」    しかし、返事は変わらない。   「どうしてですか? 一億円あれば、生活に安心できません? だって、一億あるんですよ?」    何度否定されても、まったく認めることができなかった。  ぼくは体を前のめりにして、問いただす。   「だってその一億、女性は使えないじゃないですか」    婚活アドバイザーは、呆れたように言った。   「……使う?」 「はい。法律上、婚前前の資産は、個人の財産となります。結婚する女性には、今の貴方の一億円を使う権利はありません。つまり、ないと同じ」 「……そんなことは。家族が困ったときは、ちゃんと取り崩して使うつもりです」 「でも、それを決めるのは貴方ですよね? 洗濯が大変だからドラム式洗濯機が欲しいと思っても、食器洗いが大変だから食洗器が欲しいと思っても、買うかどうかを決められるのは貴方。一億円を使うか決められるのは貴方。自由に使えない一億円なんて、女性からすればないも同じなんですよ」    捲し立てるような反論に、ガンと頭をぶん殴られた気分になった。  使えない一億円。  他人から見ればそう見えるのかと、新しい価値観を突っ込まれた気分になった。   「でも……一億円……」    か細い声で鳴くと、婚活アドバイザーは止めとばかりに、大きな溜息をついた。  そして、ぼくの膨らんだ腹を見た。   「脂肪って大事ですよね? 飢餓状態のときはエネルギーに変換できて、生きられる時間を伸ばしてくれるんですから」 「突然なんですか? そうですね」 「でも、現代日本では飢餓になることがほとんどありません。となれば、その脂肪は使わないエネルギーの塊でしかないわけです」 「そう、なりますね」 「つまり、安心の脂肪でなく、ただのテブの脂肪です」 「そんな直接的に!?」    ぼくはお腹を叩いた。  ポンと、心地の良い音がした。   「使えない一億円なんて、使いどころのない脂肪と同じ。不健康の象徴でしかないんですよ」    脂肪と同じ。  脂肪と同じ。  脂肪と同じ。    三十歳を超えたから仕方ないと見てみぬふりをしていたコンプレックスが、ぼくの自慢である一億円が同じだと言われたことで、頭の中が真っ白になった。   「カウンセリングは以上です」    その後の記憶は、ない。    家に帰って、ふらふらと風呂に入る。  温かいお湯につかりながら、防水スマホで本日の貯金残高を見る。  ほんの少しだけ利率がついて、一億円はさらに微増していた。    脂肪がまたついていた。   「いやでも、一億ぅ……」    ずっと目指していた自慢すべき数字が、なんだか体重計に表示される数字と同じに見えてくる。  ぼくは鼻までお湯につかって、鼻息でブクブクと湯を沸かせた。

江ノ島

江ノ島、勝手に無人島だと思ってましたわ 住んでる人、いるんですのね あら、そうなんですの 島なんですのね つながってるのかと思ってましたわ 水族館に行ってみたいんですの あら、そうですのねえ 水族館は、島のほうではないんですのねえ それは残念ですわ 近いうちに、島のほうにも 行ってみたいものですわねえ では、ごきげんよう

庶民語第一類の会話

「ねえ、ママ、お寿○食べたい」少年は言った。 「ごめんね。ママ、あんまりお金がないの」母は諭すように答える。 「あーあ、僕たちが貴族だったらなあ」 「ほら、近所のス○パーでお菓○を買ってあげるから」 「やったー。僕、グ○食べたい!」 「グ○くらいなら、ママも買ってあげられるわ。お寿○は無理でも、夜ご飯はハンバーグにしてあげる」 「僕は二個食べる!」 「ふふっ。一つにしておきなさい」 「はーい」 母子はス○パーに着いた。 「ねえ、ママ、僕、先にグ○取ってくるよ」 「いってらっしゃい」 お菓○売り場には、少年の友達がいて、少年に話しかけた。 「お、お前は何買って貰うんだ?」 「僕はグ○!」 「俺もグミだ」 「え!グ○って言えるの?」 「うちの家が庶民語第三類までを話してもいいサブスクに入ったんだ。さすがに買うのはお金が足らなかったけど、毎月これくらいならって」 「いいなあ」 「それもこれもタイムマシンなんてできたせいだよな。一番最初に言葉を話したやつが、特許がどうとか言いながら現代に来やがって」

パーク・イベリス

 草木も息をひそめたような、静まり返った午前3時。町はずれのとある遊園地『パーク・イベリス』に、男が一人やってきました。 「ずいぶん古い遊園地だな……。これは、いつも以上に気合入れて点検しないとな」  どうやら、遊具か何かの点検に来たようです。 「とりあえずは、事務所に行くか」  そう言うと、男は歩き出しました。  園内は当然ながら静まり返っていて、人であふれかえるだろう昼間の様子を思い浮かべると、そのギャップにどことなく背筋が寒くなるような気もしてきます。首元を貫かれたメリーゴーランドの馬たちが、虚ろな目でこちらをジッと見つめているようで——。そんなことを考えたり考えなかったりしながら、男は事務所にたどり着くとそのドアをノックしました。 「すみません、設備の点検に参りました」  しかし、中から返事はありません。眠っているのでしょうか。 「あのー? すみませーん」  男がもう一度ノックすると、ややあってからゆっくりとドアが開きました。中から顔を出した人物が、眠たげな声で言います。 「……はい。なんですかこんな時間に……」 「こども……!?」  声の主を見て、男は驚いたように言いました。  ドアを開けて出てきたのは、どこからどう見ても普通の少女でした。白いトレーナーに赤いスカートをはいて、眠そうにあくびをしています。 「えっと……。君、こんなところで何をしているの?」  男は戸惑いながら少女に尋ねましたが、 「何って、寝てただけだけど」  返事はひどくそっけないものでした。 「あなたこそ、こんな時間に何してるの? 肝試し?」 「いや、僕は設備の点検に……」 「点検?」  怪訝そうな顔で男の言葉を繰り返すと、少女は検分するかのようにじっくりと男を見始めました。 「……お父さんとか、お母さんはいるかな?」  さながら怪しい商売人のような質問には、少女は答えませんでした。 「点検って、なんの点検?」 「なんのって、遊具だけど……。えっと、ここの管理人さんとお話をしたいんだけど、呼んでもらえるかな?」 「いないよ」  少女は短く答えました。 「いない?」 「いないよ、管理人なんて。強いて言うなら私」  妙な発言の数々にどう返したものかと男が思案しているうちに、少女は構わず続けます。 「大体、点検する遊具なんてここにはないし。全部ボロボロでしょ? というか、そもそもここはもう廃園してるって、知らないの?」 「……え」  少女の言葉に、男は改めてあたりを見回しました。夜闇に包まれた園内。月明かりに照らされてボウッと浮かび上がる遊具は、よく見れば少女の言う通り、あちこちが錆びついていて、物によっては穴が開くほど朽ちています。 「そんな……、さっきまで普通の……」 「寝ぼけてたんじゃないの? ここは廃園だし、こんな時間にこんなとこに来るのは肝試しに来るアホか、うっかり流れ着いたアホだけ」 「流れ……?」  男の疑問には答えず、少女は事務所に戻っていきます。 「なんでもいいけど、事務所はあげないからね。ここは私の家にしたんだから」 「え。ちょっと待って、どういうことか教えて——」  男が慌てて手を伸ばしますが、事務所のドアは無慈悲に閉じてしまいました。事務所の前に一人取り残され、唖然と立ち尽くす男に答えるものはありません。  その時。 「おい見たか今の!? 勝手にドアしまったんだけど! マジやべー!」 「見た見た! 今のはさすがに撮れたっしょ!」  男の背後から、そんな声が聞こえました。

はじめましての曲

 私はいつも、はじめて会う人には、私のお気に入りの曲を聞かせるんだよ。え?自分って何て答えたっけ?ふふっ秘密。  この曲嫌いって言う人は、まず論外だよね。友達にもしたくない。ひどくないよー。だって、人の好きなものを平気で否定する人って、絶対いい人じゃないし。もちろん君はそんなこと言わなかったよ。  あとね、あんま好きじゃない、とか、ちょっとビミョー、とか言われると、お前の方がビミョーだよって言ってやりたくなるね。相手に気を遣い過ぎて自分の意見を言えないタイプ。一緒に居るとイライラするんだよね、はっきり言えよって。  この曲好き!ってあからさまに共感してくる人も、得点が高くはないかな。そういう人って人に好かれるように都合が良いことしか言わないから、友達みたいに気を許せないんだよね。  何笑ってるの?じゃあ何ならセーフなのって?まあ、確実に悪くない人なのは、あなたはこの曲が好きなんだねっていう人。それ以上でもそれ以下でもない感想だから、一緒にいて落ち着く。  一番ベスト、超仲良くしたい!って人はね、この曲もいいね、僕の好きな曲はね、って教えてくれる人。相手との会話をそれだけで終わらせないし、自分のことも教えようとしてくれる。誠実ってこういう人だよね。  あ、思い出した?君の返答はこれだったよー。  えーそんなこと言わないでよー。ちょっと傲慢だね、なんてさ。あ、そうそう、君のおすすめの曲聞いたよ、私まで好きになっちゃった。ふふっ、ちょっと思ったんだけど、今の答えは君にとっては何点なんだろうね。

ハッピーエンドが必ずしも綺麗だとは限らない

 我ながら、幸せな人生だったと思う。   「おじいちゃんとおばあちゃんって、本当に仲がいいよね」    子供たちからも孫たちからも、そう言われた。  近所でも評判のオシドリ夫婦。   「ねえねえ、おじいちゃんとおばあちゃんって、どうやって知り合ったの?」    しかし、一番される質問には、一度たりとも答えられなかった。    秘密があるのだ。    学生時代。  お互いに恋人がいた。  この人と結婚するんだろうなと、漠然と思っていた。    しかし、その日は偶然、二人とも恋人と大喧嘩をした。    怒りと悔しさを抱えながら、家に帰る途中。  同じく恋人と大喧嘩をしたばあさんと再会した。  そのまま二人で居酒屋に入って愚痴大会。  互いの恋人を罵り合って、一瞬の意気投合のままホテルに入って、たった一回の行為で子供ができてしまった。    どうすべきかを悩んだが、罪のない子供を殺すなんて忍びないと考えて、恋人と別れてばあさんと結婚した。  後から聞けば、ばあさんも不本意ではあったらしい。    好きな恋人ではなく、嫌いではない私との結婚。  人生のレールが、大きく切り替わったと言っていた。    幸いだったのは、ばあさんとの生活が、思いのほか上手くいったことだ。  好き合ってなかったから、過度な期待もなくて不満もなかった。  仕事に育児に家事に、新生活が突然忙しくなって、不満を感じる時間がなかったとも言える。    病室で二人きり。  ベッドの上から、ばあさんを見上げる。   「変な、人生だったなあ」 「そうですねえ」 「でも、楽しかったわ」 「私もですよ。時々、あの時の人と結婚してたらどうなってたかなって、思う時はありますけど」 「それは、私もだ」    自伝でも書けば、読者たちは『なんて酷い物語だ』とか、『元々いた恋人が可哀想だ』とか、悪い感想を書くだろう。  私もそう思う。  私の人生は、決して綺麗な物ではない。    でも、自分の中でハッピーエンドにはなるだろうと、妙な確信だけはあるのだ。

空をみている

道の端っこの木の枝が ヘビにみえてしまったり それくらいには 目が悪い 雲のカタチはもうすっかり 夏のそれではなくなって 空をみているわたし そんな自分を 不思議に思う あのころは ずっと 下ばかりみていたのに

あの止めるやつ

あの止めるやつ さんが入室しました コンセント(刺す方):新顔キター シャー芯:あの止めるやつさんこんにちは あの止めるやつ:はじめまして コンセント(刺す方):あの止めるやつってどの止めるやつ?w あの止めるやつ:いきなりっすか? コンセント(刺す方):ごめん、、聞かないでおくわ あの止めるやつ:別にいいっすけど シャー芯:敬語じゃなくて良いですよー あの止めるやつ:了解っす コンセント(刺す方):シャー芯に言われてもな シャー芯:私は好きで敬語なので ですます調ってかわいいですよね あの止めるやつ:じゃあ殺し屋風に喋ります コンセント(刺す方):殺し屋風?wwどういうこと?www あの止めるやつ:あのパン止めるやつってあるだろう?実は俺様はあれなんだ コンセント(刺す方):あーあれね 分かるよ名前 あれだよねあれ シャー芯:絶対覚えてないじゃないですか 私は本当に知ってますよ あの止めるやつ:みなまでいうな あの止めるやつ:名前を呼ばれたことは一度もないが、“あの止めるやつ”って殺し屋のあだ名ぽくてかっこいいと思わないか? コンセント(刺す方):長文w 想いが溢れてるww あの止めるやつ:今日ここに来たのは愚痴を言うためだぜ コンセント(刺す方):カッコ良さげにダサいこと言ってるwwww あの止めるやつ:実は今日、新入りが家に来たんだ 俺のことを慕ってくれる良い後輩だった あの止めるやつ:それを家主のやつ、捨てやがったんだ しかも手持ち無沙汰に任せて、丁寧に千切りやがった コンセント(刺す方):吹いたwww ヒドイwwwwww シャー芯:ひどいですね 私も昔折られた古傷が痛みます あの止めるやつ:確かに何個もは要らないかもしれない でも何かに取って置いてくれても良いんじゃないか? コンセント(刺す方):でも正直、俺でも捨てる あの止めるやつ:え? シャー芯:シャーペンの消しゴムくらい使わないですね あの止めるやつ:お前ら…裏切ったのか…… コンセント(刺す方):いつから味方だと思っていた(悪役風) シャー芯:あれで止めても、きちんと閉まってる感じしないんですよね コンセント(刺す方):何か良い使い方教えてくれ あの止めるやつ:えー あのですね コンセント(刺す方):おい殺し屋どうした あの止めるやつ:あ、思い付きました コンセント(刺す方):言ってみろ シャー芯:教えてください あの止めるやつ:たくさんの色違いを額に要れて飾る コンセント(刺す方) さんが退室しました シャー芯 さんが退室しました

窓をあけると 夕闇の向こうから 人のあらそう声 ちがうんだ あなたたちの叫びを ききたいんじゃないんだ ただ虫の声を ききたかっただけなのに 風だけが やけに心地いい

泉のマニュアル

 うっかり斧を池に落としてしまった。そんなことあるのかって感じだけど、何時間も木を切っていたら、握る力も弱くなって、ついすっぽ抜けたんだ。切らなきゃいけないノルマもあるのに、これでは上司に怒られてしまう。うちの会社も金があったらチェーンソーとかでやれるのに。  ズボンの裾をまくりながら、覚悟を決めて池に近づく。  そのとき、ざばーっという音とともに、池から女の人が出てきた。その人は水面から少し浮きながら、話しかけてきた。浮きながら?というかよく見ると服も濡れていない。 「こんにちは、木こりさん」 「あ、佐藤木材株式会社の鈴木です。あの、どちらさまで?」流れで挨拶する。 「では、ススキさん」 「スズキです」 「スズキさん、私はこの池の女神です」 「なるほど」とりあえずこの変質者を通報しよう。 「本物です」自分で言うな。というか、心を読んでます?「心を読んでます?」 「そう思うんだったら、二回言わなくても良いでしょう。ちゃんと心からも聞こえてますよ」 そういうと自称女神は両手を上に掲げる。するとそこに突然、金色と銀色の斧が現れた。 「すいません、こういうマニュアルなんで聞きます。あなたが落としたのは金の斧ですか?それとも銀の斧ですか?」  あー有名なやつだ。「そう、有名なやつです」「心読むのやめてください」  女神は無視して勝手に続ける。 「なるほど、あなたは正直者ですね」 「まだ何も言ってないんですけど」 「では、普通の斧を返します」 おい。「おい、マニュアルどうした」 「二回言わないでください。それに、誰も持って帰らないから、普通の斧ばっか貯まってくんですよ。深い池じゃないから、寝るのにも窮屈で」 「…あの、ずっと思ってたんですけど、泉じゃないんですか?」 「昔は泉でしたが、段々汚れてきてしまって。これも普通の斧があるからですよ、錆びやすいんですもん。それにたいして金銀はすぐに持ってかれるし、最近は値段も上がって作るのが大変だし」 「世知辛いですね」 「まあ池より海の方が辛いですよ」 どういうこと?「どういうこと?」 「だから二回言わないでください。ちょっと言いたくなっただけです」なんだそれ。 「とりあえず、一旦。一旦は普通の斧返しますね、これ以上要らないんで」  分かりましたと言って受け取る。 「でも思いません?ただ正直なだけで得するなんてずるいでしょう。正直なのは私達も一緒なのにいつも女神側が損をします。それに落としたのはそちらなのですから、帰ってくるだけ万々歳でしょう」  貰えると思ってたのに、貰えないのってかなりきついんですけど。精神的賠償が必要だ! 「うるさいですね」「まだ何も言ってなi「とにかく!もうマニュアル通りは止めたんです。真面目な人は質素な暮らしで満足できるでしょう」  そう言うやいなや、女神は「時代は変わりました、金は高いんです」と言いながら池に潜ろうとしていく。 「…あの、」 「何ですか?」女神は潜るのを止めた。 「マニュアル、守らなくて良いんですか?」 「バレなきゃ犯罪じゃないんです」 「誰に?」 「天国の偉い人です」 「僕って真面目で正直なんですよね」 「……そうかもしれませんね」 「じゃあ、天国行けそうですね」  女神がまた潜り出す。  えーっと、大変言いづらいんですけど。 「心の声ですし、言ってすらないですよ」もう頭しか出ていない。  金の斧、貰えます?チェーンソー買いたいんで。