自称ショートショート作家の男が、パソコンの前で固まった。 「なんだ……この世界は。異世界、転生、魔法、ファンタジーばかりじゃないか」 その時、微かに声が聞こえた。 「お前も、書いてみるがいい」 「その声は……星先生、筒井先生ですか?」 「パステルカラーな世界を書くのだ」 男は指を走らせた。 ある日の午後。 道路脇で、婆さんが杖を大きく振っていた。 かすれた声で呟きながら、ふらふらと歩いている。 「ん……魔法の杖か?」 そこへ、車が止まった。 出てきた女は、慣れた様子で駆け寄った。 「義母さん、帰りましょ」 婆さんは手を引かれ、小さく笑った。 その様子を見ていた男が、スマホにメモを書き込む。 『異世界転移寸前』 男はホッとした顔で、その場を立ち去った。
お掃除がんばりすぎて、腰に少し重たい痛み ふう、と息をついたのもつかの間 そんなわたしを急かすように全身で跳ねまわる お散歩! お散歩!! と、愛犬のジャックラッセル 本当に、キミはいつも元気だねえ 手早く準備を整え、外のまぶしい世界へとくり出していく 新緑の青くささと、初夏の濃い光に挟まれた、心地いいこの時期 カレンダーには書かれていないこの季節の名前を、わたしはまだ知らない ふいに、ぐいと腕が引かれる 早く! 早く!! リードの先で、ジャックはおかまいなしに加速する 腰の痛みも、掃除の疲れも、この弾む足取りに追い越されて… 早く! 早く!! 目指すのは、たくさんのお友だちが待つあの公園
男の恋愛は新規保存、女の恋愛は上書き保存、だと世間では言われている。 その言葉を聞く度、私もそうであればどれだけ楽だったかと肩を落とす。 私の部屋には、額縁がある。 可愛い家具で揃えているので、友達から「浮いている」とお墨付きをもらったイカツイ額縁だ。 そして、額縁の中に入っているのは、初彼からもらったラブレターだ。 もっとも、もう別れているので、元彼という表現が正しいが。 高校生の頃に付き合って、同じ大学に進学して、順調な大学生活を送っていた。 別々の会社に就職した後、そろそろ同棲の話が来るかと思い始めて早一年。 やってきたのは、別れ話だった。 会社の同期と相性が合って、その人と付き合うから別れたいとのことだった。 最初は泣いて抵抗した。 何度も話し合いをした。 しかし、同棲していないことが災いした。 元彼はいつも、話し合いが始まってしばらくすると、逃げるように自分のアパートへと帰っていった。 私はただ話し合いたいだけなのにと泣いていたら、話し合いした日の夜に、元彼から音声メッセージが届いた。 そこには、ただただ泣き叫んで話し合いの『は』の字もできていない私がいた。 『こういうところが無理』 その時は、盗聴なんて悪趣味だと、罵詈雑言のメッセージを送った。 しかし、翌朝冷静になって聞き返すと、これは逃げたくなると正直思った。 私の記憶では、理路整然と、今まで付き合ってきた思い出や、私ほど相性のいい女はいないことを説明していたつもりだった。 しかし、録音の中の私は、巨大怪獣。 アンギャーアンギャーと叫ぶばかリ。 元彼が話し始めると、ひらがな三文字を話した時点で、私の咆哮が鳴り響いていた。 私は泣きながら別れを承諾し、最後にもう一度だけ会えないかとメッセージを送った。 『恐いからやだ』 それっきり、反応はなくなった。 私は、元彼の連絡先を消すこともできず、高校生の頃にもらったラブレターを額縁へと入れて飾り始めた。 最初は、見るたびに泣いた。 元彼との楽しかった頃を思い出して、ひたすら泣いた。 しばらくすると慣れてきて、まるでまだ、元彼と付き合っているような気分になった。 心配した友達が、私に男の人を紹介してくれた。 あれから二・三人と付き合ったが、元彼を超える男はいなかった。 分かれる原因は、いつも同じ。 『その手紙、捨ててよ』 『せめて、見えないところに仕舞ってくれよ』 私が首を横に振ると、その翌日か数日後に、だいたい別れ話になった。 私は独り身に戻る度、少しだけ安心感を得ていた。 これで、元彼が戻ってくる場所が蘇ったと。 「いい加減忘れなよ」 「あんたの元彼、結婚するらしいよ?」 時間は、容赦なく過ぎていく。 私との思い出を上書きした元彼は、どんどん幸せになっていく。 たった一度だけ、元彼から連絡が来たことがある。 SNSのダイレクトメールに、捨て垢から。 「まだ、俺が送った手紙を飾ってるって聞いたんだけど」 「飾ってるよ」 「頼む、捨ててくれ」 「なんで?」 「俺はもう、新しい相手を見つけたんだよ!」 「邪魔してないじゃん」 「……頼むよ。もう、俺を解放してくれよ」 「してるじゃん。お幸せに」 私の心は、歪にひん曲がっている。 元彼の幸せを願うのは本当だし、元彼が会社の同期と結婚するのを祝っているのも本当だ。 嘘じゃない。 幸せになって欲しい。 でも、同じくらい、元彼が私の元に戻ってくる期待を消すことができない。 私の恋は新規保存。 決して、元彼のことを忘れることはない。 待つのをやめることはない。 でも、邪魔はしない。 元彼の幸せの邪魔をしたら、もう二度と戻ってこないから。 私が、待つ資格を失くすから。 「ラブレター捨ててあげたら?」 「婚約者さんにあんたの噂が届いて、向こう修羅場みたいよ?」 邪魔はしない。 邪魔はしていない。 私は何もしていない。 これは本当。 『頼む! 何にもないって言ってくれ! 婚約者から、色んな誤解を受けてるんだよ!』 邪魔はしない。 邪魔はしていない。 私は何もしていない。 本当に本当。 未練がましく待ち続けた女の末路。 不幸しかないと思っていたけど、もしかしたら私は幸せになれるのかもしれない。 元彼が、戻ってきて。
川沿いにある骨董屋。 白髪交じりの女が、奥の椅子に腰掛けている。 ──ギィー、ガチャン。 男が入ってきた。 店の中をゆっくりと見て回る。 そのとき、壁の戸棚に目が止まった。 「これは何ですか」 「知らん」 「売り物ですか」 「あぁ」 男は、戸棚から一冊の本を手に取った。 「鍵つき…鍵はありますか」 「ない」 表紙を眺めながら、しばらく迷った。 そして、安くはない金を払い、店を出た。 帰り道、鍵屋を探す。 「すみません。この鍵、開けられますか」 店主は本を手に取り、鍵穴をレンズで覗き込んだ。 「これ、無理に開けるより鍵作ったほうがいいな。どうする」 男は、鍵を作ってもらうことにした。 そしてまた、安くはない金を払った。 郊外の一軒家。 部屋には、趣味で集めた骨董品が並んでいる。 机の上に本を置くと、小さく深呼吸をした。 ──カチ、カチ。 鍵を回し、重たい表紙を開いた。 「二百年前か…」 最初のページには、日付と「予言書」の文字があった。 男は、ゆっくりと時間をかけて読んだ。 すべてを読み終えると、本を抱えて家を出た。 ──ギィー、ガチャン。 「これ、買い取ってくれ」 「安いよ」 女はカウンターに、わずかな金を置くと、 戸棚に本を戻した。 「予言、全部はずれだったぞ」 「知らん」 店を出た男は、持っていた鍵を川に投げた。 川の底には、同じ形の鍵が、キラキラと光っていた。
何でもない蟻ですが恋をしました 実りはしない恋をしました 僕は蟻と言うことを忘れた事は無いですが、いつの間にか花に恋をしてしまいました。 僕は毎日、花の側を通ります。横見でちらりと花を見て何でもないように歩いていきます。たまに花の周りをうろうろして「この辺に甘い物でもありそうだな」等の独り言ちをします。 そりゃあ僕は蟻ですから、花を盗もうとすれば、それはそれは簡単に盗めます。一人で穴の中で甘い蜜を飲むことでしょう。でもそれは違う。花は実を付け次の種を生むために咲いているのです。蟻はお呼びでないのです。 えっ?「少し蜜を貰うだけでは駄目なのか」ですって?そんな事で僕の恋心を満たせません。僕は全て食べてしまいたいのです。 僕はただの蟻です 花に恋をした何でもない蟻なのです 花に蝶がとまっていても何も出来ない蟻なのです
勇者と成った 「魔王を討伐して欲しい」と 王様と民の期待を背負い、愛しの人の不安を跳ね除ける為、僕は仲間と共に旅へ出た 苦しい事が沢山あった、無理だと折れそうになったこともあった だが、期待に応えるために 仲間と、平和な世界を目指し 僕達は魔物に立ち向かい続けた 魔王城に着いた。罠も、魔物も、これまでとは桁違いだった。 比べ物にならないほど、魔王も強かった。 しかし、何とか踏ん張って、足掻き、全力で 魔王は最後に小さな一言を呟き、消滅した 帰還した瞬間、民衆は、王は、泣いて僕に感謝をした 愛しの人も、暖かい手で僕を抱きしめてくれた 宴も開かれた 金も困らないほど手に入れた ―――嗚呼、幸せだ そう言ってやるつもりだった 今までの苦労が、報われたのだと それ、なのに 『妻と...娘、は..どうか』 魔王の放った一言が 魔王城に居た、子供と女の魔物が朽ちる瞬間の記憶が 笑顔の絶えない世界の中で、一人 今も僕を苦しめる
踊り場のドアは、五秒だけ開いたままだった。 団地の四階と五階のあいだにある、重い鉄のドアだった。押すたびに腹の底へ響くような音がして、閉まるときには必ず、最後に少しだけ息を吸う。 夕方の階段には、煮物の匂いが薄く漂っていた。 下の階から、老婆が上がってきた。 両手に買い物袋を提げている。白いレジ袋の中で、大根の葉が少しだけはみ出していた。袋はどちらも重そうで、老婆は一段上がるたびに、手首を小さく揺らした。 三階の踊り場で、青年が追い越した。 黒いパーカーに、片方だけイヤホン。手にはスマホを持っていた。老婆の横をすり抜けるとき、青年は何も言わなかった。老婆も何も言わなかった。 ただ、老婆は少しだけ体を壁に寄せた。 青年は軽い足音で階段を上がっていった。 四階の踊り場に着くと、青年は鉄のドアを押した。外廊下へ出るためのドアだった。 ぎい、と音がした。 そのまま行くのだと思った。 けれど、青年はドアの向こうへ出なかった。 半身だけ外へ出し、肩でドアを押さえたまま、スマホに目を落とした。 老婆はまだ、階段の途中にいた。 右手の袋が、何度も膝に当たっていた。左手の袋は、底の角が少し伸びている。中の何かが、ビニールを押していた。 青年は画面を見ていた。 親指は動いていない。 老婆は一段ずつ上がった。 踊り場まで、あと七段。 あと六段。 あと五段。 鉄のドアは、青年の肩で止まっていた。 冬の風が、外廊下から細く入り込んでいた。青年のパーカーの裾が少し揺れる。ドアの取っ手が、青年の背中の横で小さく震えた。 老婆は四階の踊り場に着いた。 息を整えるように、そこで一度立ち止まった。 青年はまだスマホを見ていた。 老婆は青年の横を通った。買い物袋が、青年の靴の先をかすめそうになった。 その瞬間だけ、青年は足を半歩引いた。 老婆が外廊下へ出た。 鉄のドアは、すぐには閉まらなかった。 老婆は少し振り返った。 青年は画面を見ている。 それから、老婆は小さく頭を下げた。 深い礼ではなかった。買い物袋の重さで、首だけが少し沈んだような会釈だった。 青年は気づいていないふりをした。 画面を見たまま、ほんの少しだけ顎を引いた。 老婆が廊下の奥へ歩いていく。 青年はドアから肩を外した。 鉄のドアは、ゆっくり閉まりはじめた。最後に息を吸うような間があって、それから、低い音で閉じた。 階段に、夕方の匂いが戻った。 青年はスマホを持ち直した。 画面は真っ暗だった。 通知も、動画も、地図も、何も映っていなかった。 青年はそれをポケットにしまい、五階へ続く階段を上がった。 四階の外廊下では、老婆が自分の部屋の前で鍵を探していた。買い物袋を一つ足元に置き、もう一つを腕に掛けたまま、ゆっくりポケットを探っている。 青年は一度だけ、階段の途中で足を止めた。 ドア越しに、鍵の触れ合う小さな音がした。 それを聞いてから、青年はまた階段を上がった。 五階の踊り場に着くと、同じ鉄のドアがあった。 青年はそれを押した。 今度は、誰も後ろにいなかった。 それでも青年は、すぐには手を離さなかった。 五秒だけ、ドアを開けたままにした。 それから、誰にも見られないまま、静かに外へ出た。
「おお、勇者よ。どうか我らを救って欲しい。この世界は、世にも恐ろしい魔王によって支配されているのだ」 魔王の絵を見た。 超美人。 結婚したい。 「もしも魔王を倒した暁には、我が娘と婚姻を結び、この国の王子として迎えたい」 王女様を見た。 超ブサイク。 結婚したくない。 「わかりました。私にお任せください」 酒場で仲間を見繕う。 ブサイクたちから応募が殺到したが、美人を三人選んだ。 皆びっくり。 三人もびっくり。 「どうして私たちを選んだんですか?」 「貴女たちが、一番強そうだったので」 これは本当。 ブサイクたちは、この国では美人。 なので、強いブサイクたちは、とっくに強いパーティに勧誘されており、酒場には残っていない。 酒場に残ってるブサイクは、強いと言っても、その程度。 逆に、酒場に残っている強い美人は、誰にも選ばれないから、本当に強い。 というのが、俺の予想だ。 予想が当たったかどうかは分からないけど、冒険は順調に進んだ。 魔物を倒し、いくつもの村を救った。 村人たちは、俺たちに感謝し、仲間の顔を見た瞬間、眉を顰めた。 なんだ、なんか文句あるのかよ。 「すみません、私たちのせいで」 「気にしないで。悪いの、向こうだから」 冒険の中で、彼女たちの話も聞いた。 やはり、容姿で何度も差別を受けて来たらしい。 転生前の俺と同じだ。 顔なんて、生まれ持ったものなのに、生まれ持ったもので差別をしてくる世界が嫌いだ。 まあ、俺もまったくしていないわけではないが。 三人を選ぶとき、顔に惹かれたのは否めないし。 「魔王と戦う前にさ、考えがあるんだけど、聞く?」 「よくぞここまでたどり着いたな、勇者よ。妾を殺しに来たのか?」 「いや、人間の国裏切るから、一緒に魔王の国を作らない? 壁でも作って、世界を二つに分けちゃおう」 魔王がずっこけて、椅子から落ちた。 ああ、綺麗な顔にあざが……ついてない。 さすが魔王、肌まで頑丈だ。 「今まで、何人もの勇者を返り討ちにしてきたが、そのような提案を受けたのは初めてじゃ」 え、そんなに強かったの。 なにそれ、聞いてない。 国王め。 「妾の国を作ったとして、お主のメリットはなんじゃ?」 「妻三人と平和に過ごせる」 「……まさかとは思うが、後ろのそれか?」 「うん」 「……お主は、魔族のような顔が好きなのか。妾の国を作る目的、よもや魔族でハーレムを作りたいからではあるまいな?」 「ぎくっ」 魔王は呆れたように溜息をつき、俺の前までやって来た。 「あい、わかった。その提案、飲もう。妾も、戦い続ける人生にはほとほと愛想がつきたでな」 「やった。ちなみに、俺の四番目の妻とか、興味あります?」 「……妾は、妾一人を愛してくれる誠実な男が好きじゃ。妾の視界の外で、平和に暮らせブサイク」 その日、世界に大きな壁ができた。 魔物たちは全員、壁の後ろへと戻っていき、人間の世界に平和が訪れた、 勇者たちは、人間の世界に二度と戻ってこなかった。 「ねえ。昨日、新しい彼氏ができたんだ」 「魔族って、勇者様並にかっこいい人多くていいよねー。話せば、人間みたいだし」 「ちくしょお、妻たちまでハーレムを作り始めた。俺のハーレム計画、最大の危機」
男女が、ゆっくりと目を開けた。 「私たち、死んだのね」 二人の手は固く握られている。 「これでみんな、分かってくれたさ」 「そうね。私たちの愛は本物だったって」 見つめ合う二人。 「……なんか、人多くない?」 辺りを見回し、杖をついた女に声をかけた。 「すみません。ここは、どこですか」 「ここ、三途の川だ。並ぶんなら、向こうだ」 女は長い行列の最後尾を、杖でさした。 「あっ、スマホがない」 女がポケットを探る。 「洗面所の鏡のとこに置いてきた」 「もう、いいんじゃない」 「だめ。データ、消してないもん」 その時、遠くで声がした。 「ん…?お母さん。ちょっと待ってて。スマホ、取ってくる」 女は、声がする方へ走った。 「先生、すぐ来てください」 看護師が大きな声を上げた。 母親は娘の手を取り、泣いている。 「私のスマホ…」 男は河原の石に腰掛け、女の帰りを待った。 「兄ちゃん、どうした」 酔っぱらいが横に座る。 「僕も、帰りたいんですけど。どうしたら、いいですか」 「誰か、呼び掛けてくれる人、いねぇのか」 「はい」 「じゃあ、その彼女、待つしかねぇな」 酔っぱらいは笑いながら、男の肩を叩いた。 「その彼女、今度来る時は、婆さんだな」
二メートル先に向かい合うあなたの赤らんだ頬が嘘じゃないと思いたい。
『あなたは死にました。妻と子供を残して死にました。しかし、貴方は妻の癌として転生できます。転生すれば、妻の目を通して子供たちを見守れますし、夢の中で妻と会話ができます。ただし、妻の寿命は大きく縮みます』 「このまま死にます」 神なんていないと思っていたが、邪神はいたらしい。 死んだばかりだと言うのに、胸糞悪くなるとは思わなかった。 『いいのですか? 貴方は、愛する人たちと生きれるのですよ?』 「代償がでかすぎる。いいから、さっさと殺せ」 未練はある。 でも、その未練は人を巻き込むものじゃない。 ペットの糞に転生して見守れるんなら考えもしたが、癌なんてお断りだ。 自分の全てを失っても、妻と子供だけは、幸せに天寿を全うして欲しいんだ。 『わかりました。人間は損得勘定の計算できない馬鹿野郎ばかりですね。さようなら』 「はいよ、さようなら」 これが損なら、人間が馬鹿で結構。 神が利口で結構。 俺は自分が人間でよかったと、最期に思えた。
毎日、あなたになりたいと思う。
「ねぇ、キミ。何をしてるの?」 雨が降るのを待っているのです。 「えっ。でも、いつ雨が降るのかは、誰にも分からないでしょー」 もうすぐかもしれないでしょう。 「そりゃあ、まあ……でも、一週間先だったらどうするの。それでも待つの?」 待ちますよ。待つしかないですから。去る者、追わず。来る者、拒まず。私はそういう存在です。生まれた頃から、私には使命があるのです。 「それって生きづらくない? ぼくは、キミよりずっと自由だ。そのほうがいいと思ったりしないの?」 ええ。アナタは、私に比べたら、うんと伸び伸びとしていますね。でも、限りある場所で、限りある時間を精一杯に生きるほうが……。私のようなものには、ふさわしい。私には動かす手足も、揺らせるフリフリも無いですから。 「まあ、キミが納得しているのなら、それでいいさ」 フリルはありますけど。 「べつに、つっこまないよ」 残念です。 「雨が降ったらいいね」 ええ、私の頭がおかしくなる前に。せめて。自分の使命はまっとうできたと、思いたい。 「へえー」 ジメジメとした蒸し暑さと暮らしている。大きなワンルーム。 製氷機から氷を取り出す、あなた。その足取りは昨日よりも軽やかで。あなたがステップを踏むたびに、手のひらのマグカップでは水面がおどる。 今。ボクは意を決して、あなたのひざに飛びこむ。 ぱちゃっ。 上空まで、はねる飛沫。あなたの衝撃と困惑が、ボクの頭へと降りかかる。 「ちょっと、ポメ! ああ、もう。サイダー、こぼしちゃったよ……」 あなたは机上にマグを置いて。箱からティッシュを取り出し、せわしなく手を動かす。 床に広がっていく甘い水たまり。その水分を含んで重たくなった彼女が、ぐったりと横たわっている。 「あっ! ふれふれ坊主、落ちちゃってるじゃん!」 悲しそうに、あなたは眉をひそめる。これじゃあ、明日も仮病を使うのは無理か……と、わけのわからないことをぼやきながら。あなたは濡れたティッシュとともに、役目を終えた彼女をつかんで、ステンレスのかごに入れる。 ――よかったね。これでボクらも、明日は外でおさんぽできるよ! 肩をすぼめるあなたを励ましたくて。ボクは、めいいっぱい自分のしっぽを振って見せた。
世界は大混乱。 アニメまで神格化される。 水を求めて皆押し寄せる。 バラ園ではカップルがどこ吹く風。 娯楽と仕事。 僕はどっちも中途半端。 レベル上げに適した環境にいる人達は今日も忙しい。 今日は新しいスマホを設定した。 出来ないなりに知り合いに手伝って貰って。 まだ見放されていない。 女の子と目が合う。 なにか残念そうな顔をされる。 タバコ吸ってちゃそりゃそんな扱いを受ける。 明日も休み。 夜が更ける。 太陽はイエスを起こしアッラーと邂逅させ仏陀の座禅を待ってその他の神々を叱咤激励する。 皆それぞれに信じたいものを信じる。 石油は相変わらず猛威を振るうが外宇宙の見つかっていない物質を待つ人々によって様々な分野で使われ続ける。 今日は女性天皇のニュースが出ていた。 半陰陽を利用したあの娘は世界を手に入れたいのかもしれない。 生物学なのか物理学なのか権威は猛威を振るって学会を揺るがす。 不幸な生い立ちの子供たちはアニメと漫画によって浄化される。 もう少し踏み込んで宗教の話をしたいがどうしても金の問題が絡む。 少年漫画を渡してきた知り合いは芸能界の訓練を受けているので姿勢がいい。 今年は春が長い。 春の名前を冠したあの子達はアニメと漫画の世界を行き来して今日も戦う。 スプリングガールの遊びは今日もスリルがあって元気がいい。
怪しい空模様に光の筋が走る 雷だ 雷鳴が雨を連れてきた 小さな雨粒は急いで地面を濡らしていく 虫が騒ぎ人が小走りになる 主役を取られた生き物達は静かに雨を鑑賞する 慌てて作った風がそこら中を当たり散らして通っていく 皆が雨をやり過ごす。この一体感が僕は好きだ
私は今日ファミリーレストランに行くことにした。いつも頼むメニューを淡々と頼みながら,頼んだメニューを食べながら私はボーとなりながらくつろいでた,だがやはりドリンクバーを頼んだ都合上とてもトイレに行きたくなった,しかも個室を使いたくなるレベルの便意が私の胃の中で蠢くかのように腹が痛くなった,やばい,やばい,早くトイレに行かなくては、内心焦りながら私はトイレへ駆け込んだ。このファミレスは毎回個室が一つしかなく一人入ってしまったらしばらく待たなくてはならない、とりあえず今入れなくても近くに他の施設もあるので内心ほっとしているが案の定個室一つが綺麗にあったが、急いでドアをガチャと開けようとしたが,見事に鍵が入っていた、(まじか、鍵閉まる判定の目印わかりずらいな)私は独り言を吐きながら泣く泣く待つことに決した。だがいつまで経っても鍵は開かない、そう思い、ここの個室は私含めて二人しか滞在していないことをいいことに少しトイレの隙間を軽く覗いた,この時私は少し奇妙な感覚に襲われた。個室なら大抵座っており踏ん張っているか,ティッシュを大きな音を奏でながら取り出すだろうが、中の人物は何故か立っているのである。私は少し不気味に思いながら私は淡々と待つ,今までは待てば数分すぐに入れるが今はずっと待っていても次のラリーが来ない。あまりにも不審と不気味な感覚を持ちながら私は壁に背中を立て掛けながら待っていった。少し中の様子を音として認識できるだろうと考え音の反響しやすい壁の付近に耳を傾けながら私は待った(シャガ、シャゲ、シャジャシャガ)聞いたことのない異音が私の耳に巡る,あまりにも奇妙な出来事が連続し続け私は内心不安になりながら淡々と開く時を待つ。だがしかし開く時は訪れない。何かいい刺激だろうと思いながら恐る畏る私はまたドアの隙間を覗いた。(ああぁぁぁ)私は一気に寒気が襲いながら私はすぐに覗くのを避けすぐに壁の近くに戻った。やっと今ラリーが繋がり、内心もうこの場所ではなくていいだろと思いながら仕方なくこの個室に入った,だがもう抜け出したくなる寒気と怖さに襲われた。(お前が次の犠牲者かあぁぁぁぁぁぁ、)天井にさっき出ていたはずの人が私を凝視している、よだれがタラタラと君悪く汗のように垂れながら個室の床に唾液がこびりつく。(なんなんだ、お前はさっきからずっと個室で立ってたろ!文句をゆうなら早く私に先を渡せよ!)声を轟かせながら私はこの中年に叫んだ(俺はあくまでこの村上とゆう男の負の気持ちの集合体,コピーだ)おどろおどろしい声を私の耳に轟く(お前はじゃあ、何を求めている、生命か!何か大切なものか人か!)俺は早くここから出たいと思いながら便意を襲いながら叫ぶ,叫ぶ(あぁー,お前の口内炎をくれ、これがあればお前を絞殺せずに交渉してやろうか)じゃあ,これはこれで納得した(ほら、口を開けたぞ!早く,早く口内炎を取れ!あぁあああー)(クックック,お前の口内にはたくさんあるなぁぁさぞかし不健康なんだろうぉぉ、満足ダァァ)ぐっちゃぐちゃ,私の口内炎を引きちぎる,とても痛くなりながら私は我慢しながら痛みに耐えた(この上質な口内炎を見たことはない,痛みは俺に対しての奉仕ダァァァ,じゃぁなぁぁぁ)妖のような者は静かに、そして寂しげな背中を見せながら壁に吸い込まれるように立ち去った(よし、これでやっとお腹の不純物を出せると思いながら私はいつものように個室を過ごした。私は汗をかきながらドアを開け,ファミレスを後にした。奇妙なことに家に帰った後異常に多かった口内炎が全てなくなっていた,もしかしたら人の穢れのような部位を祓う妖怪なのかもしれない,いや、ただの考えすぎだし,この出来事自体幻覚かもしれないな,もう寝よう
初めての契約。 昨日はできなかったこと。 日付と同時に判子を押されたみたい。 終わって、始まって、しまった。
私はシバ専だ。 シバ専とは柴犬がこの上なく好きな人のことである。司馬遷ではない。 この上なくモフモフな体に少しビビリな性格、心を許した相手にだけ見せるしっぽフリフリをされたらもうたまらない。 今日、私が自転車を漕いでいると民家から帽子を被った女性が出てきた。彼女の手にはリードが握られており、その先には白いチワワがつながれていた。 早く行こう!と言わんばかりにチワワはリードを引っ張って、ほとんど二足歩行のような形で飛び跳ねていた。 小さい犬にはよく吠えられるのでなんとなく苦手意識があったのだが、その全身を使って喜びを表現する姿に私の心は撃ち抜かれた。 私の手が無意識のうちにブレーキを握り、自転車のスピードを落とす。 白い天使はこちらに見向きもせず、ズンズンと我が道を進んでゆく。 これからはチワワも推していこうかな。 私は再びスピードにのり、ユーミンを口ずさんだ。
『酒飲めぬ客、お断り』 居酒屋の入り口に貼られた紙を見て、ぼくは肩を落とす。 「ここもか」 既に夜も遅い頃。 夕食を求めて居酒屋を訪れたぼくは、三件目のNGをくらった。 居酒屋のご飯が好きだ。 肉も、魚も、サラダも、ご飯ものも揃う居酒屋は、最高の飲食店だと言うのに。 「パパー。お腹空いた」 「ごめんなー。いつものとこ行こっかー」 「えー。飽きたー」 やむを得ず、ぼくたちはいつものファミレスへと向かう。 歩きながら、貼り紙のことを思い出して、いらいらしてきた。 だいたい、居酒屋だからと言って、酒を飲まないといけない理由がわからない。 酒が一番原価率が低いから、酒を飲んでくれないと商売にならないと聞いたことはあるが、それは店側の事情だ。 客側の知ったことではない。 酒を飲まなければ潰れるなら、それは店の作り方が間違っているだけだ。 「そう、店が間違ってる!」 「パパ?」 「すまん。つい、声を出してしまった」 ぼくたちは、いつものファミレスにつく。 自動ドアが開いて中に入ると、すぐに店員が近づいてきた。 「申し訳ございません。ただいま満席でして」 ぼくはファミレスの中を見渡す。 一面の、一人客。 結婚して家族も作ってないだろう、一人客。 年を取って独りに戻っただろう、一人客。 「ええー!」 お腹をすかせた子供が、哀しそうに嘆く。 赦せねえ。 だいたい、ファミレスなんだから、ファミリー以外が来るなよ。 一人客なんて一番金を落とさないんだから、同じ時間で倍の金を落とす家族グループを優先すべきだ、店側の事情を考えろよカス。 客側もそういうことを意識すべきだマナー知らず。 一人客が押し寄せて潰れたら、それはお前たちのせいだぞ糞ぼっちども。 「じゃあ、待たせてもらいます」 大人のぼくは、横暴に振舞う一人客たちへの怒りが表情に出ないように我慢をし、レジ近くの丸椅子へと座った。
「ついでにこれもやってくれない?」 依頼内容とは違うことを、駄目元で頼んでみた。 「いいですよ」 相手は快く引き受けてくれた。 うちはいつでも人手不足。 人手が増えるなら大歓迎。 「これもお願いできる?」 「はい」 「申し訳ないけど、これも」 「わかりました」 「ちょっと面倒だけど、これもいい?」 「もちろんです」 頭の中で鳴り響くファンファーレ。 安い依頼料で雇えた人は、なんでも引き受けてくれる頑張り屋さんだった。 これはお得感が高い。 直近の面倒ごとが全部なくなったので、スケジュールを引き直した。 だいぶ、余裕ができた。 数日後。 そいつは精神の消耗で、病院送りになったらしい。 もう来れない旨の連絡が、上司伝手に届いた。 「え? 頼んでいた仕事は? 金返せよ」 怒りながら、相手が作ったものを見てみれば、最初の依頼に含まれていた内容はすべて完成していた。 できていないのは、ついでに頼んだ雑務ばかリ。 全部少しだけ手を付けているが、使い物にならない資料ばかリ。 振り上げた拳を静かに下ろした。 最初の依頼に含まれていない以上、文句が言えない。 「……できないんなら、できないって言ってくれよ」 引き直したスケジュールでは終わってるはずの仕事が終わってないので、しばらくの残業が確定した。 善意でほいほい引き受けて潰れる相手と、無計画にほいほい依頼してしまった自分を恨みながら、俺は髪を掻きむしった。
彼は、小説を書いていた。それは、水のおいしさについて。 「水ってさ、無味無臭で、しかも透明じゃん。でも、なんか他のドリンクよりもおいしい気がするんだよね」 嬉々としてしゃべる彼に対して「そんなの錯覚でしょ」と言い返したことを、いまだに覚えている。 あの時は卑屈だった。べつに水がおいしいとか、おいしくないとか、今になって考えたらどうでもいい。でも、彼は水がおいしいと感じて、その気持ちを文章にしてみたいと思った。この行いには、きっと価値があったのだと思う。 結局、彼の小説は完成しなかった。それは、私の卑屈な返事で彼の胸をえぐったからなのかもしれない。水のおいしさを言語化するのは、たんに難しいからだったのかもしれない。 べつに完成しなかったからといって悲しむわけでもなく、完成したところで「だから、どうした」程度の話になっていたと思う。 それでも、おもむろに水道水をひねって出す時。透かした先がよく見えたり、ぼやけて見えなかったりする。そんな液体に心と手を動かされた者がいる。ただそれだけのことを、今後も覚えていたい。
地方の寂れた商店街にある、小さな和菓子屋。 夫婦が二人で切り盛りしている。 「ただいま」 「あんた、どこに行ってたんだ」 夫は薄ら笑いを浮かべながら、帰ってきた。 「今、申し込んできた」 「は、何を?」 「市議会議員の選挙」 しばらくの沈黙のあと、妻は呆れた顔で、手を止めた。 「あんたが、当選なんてしないさ」 「当たり前だ。当選するなんて、思ってない」 「じゃあ、なんで」 「お前、バカだなぁ。店の宣伝だ」 両手を広げ、夫は自慢げに話し始めた。 「テレビだよ。取材だって向こうから来る」 「本気かい、あんた」 「あぁ。それとなく団子が映ればいい」 妻はショーケースの前の椅子に腰掛け、ため息をついた。 「あんたねぇ、顔が知れたら、いろんなことバレるぞ」 「なんだ、それ」 「売り上げごまかしてるとか、過去の女ぐせとか」 「そうなの?」 「ネットで晒されて、終わりだ」 「税務署、来るかなぁ」 「知らんよ」 妻は残った団子を数えながら、レジを閉めた。 「なぁ、俺、どうしたらいい」 「目立たないよう、投票日まで、何もするな」 夫は頭を抱えて、座り込んだ。 「すみません。取材、よろしいですか」 「いえ。困ります」 その映像は、繰り返し流れた。 ポスターも貼らず、演説もしない。 あるのは、候補者名簿の名前だけ。 投票日。 店の前に、テレビカメラが置かれた。 緊張した夫婦が、画面いっぱいに映る。 「あぁ…残念です。あと一歩でした」 アナウンサーが、二人にマイクを向けた。 モニターを見て、落選を確認する。 「万歳、万歳」 二人は肩を叩き合い、歓喜した。
いつからだろうか。世界は、人々から感情を「気体」として抽出できる技術を発明した。 どのような原理なのか、凡人の私には理解できない。ただ、その技術を活用することで、私達は悲しさを、辛さを明確に吐き出すことができるようになった。いつしかネガティブな感情は人々から忘れ去られ、精神病と呼ばれるアレコレも幻となったり、ならなかったりした。 それなのに、私は今、職場の上司と海に来ている。 「海水は、涙と同じ味がするんだそうだ」 先輩は誇らしげに、海の向こう側を覗こうとしている。 「知ってるかい、涙の味は」 「知らないですよ」 それがどうかしたんですか、とたずねると、先輩は「ここに来たら、涙の流しかたを思い出せる気がしたんだ」と語ってくれた。 なぜ? 涙を流す必要なんて無いでしょう。あれは、とうの昔に忘れ去られた歴史の遺物だから。悲しみや、辛さと共に。これっぽっちも残されてはいない。そうとしか、私には思えない。 「じゃあ、残されている場所があるとしたら、どうする?」 唐突な先輩の一言に、私の頭は一瞬、フリーズする。 「そんなことがあるんですか」 「ああ。無いとはいえない。我々から気体として取り出された感情は、やがて凝縮されて液体となる。その液体は、人知れず海に流されているんだよ」 そうだったのか……。今さらながらに知った感情の処理方法に、私はまだ頭の整理が追いついていなかった。 先輩曰く、学生の間に一度は科学の授業で教わる決まりになっているらしい。けれど、あいにく私は感情の液化について、みじんも記憶していなかった。ネガティブな青春時代の感情と共に、あの時かぎりの思い出すらも、知らず知らず捨ててしまったのだろうか。 なんだか急に不安がまとわりついてきて、私の胸をしめつけてくるように感じられる。一刻もはやく、このモヤモヤを消し去ってしまいたい。 「それなら、深呼吸をしたらいいよ」 悩める私に、先輩はアドバイスをくれた。 深呼吸か。そのようなセルフケアは一度も考えたことがなかった、気がする。 フッ、と深く息を吸う。風にのって、なまぬるい空気が肺を満たしていく。それらが胸中のモヤモヤを取り巻き、新たな渦を形成していく。この瞬間、私は台風になる。生まれてから今まで吐き出してきた感情が、確かな重力となって私に返ってくる。悲哀、嫌悪、苦悩、憤怒、怨恨、憎悪……。まるで魂の一部を懐かしむように、私は感情の一つ一つを慈しみ、愛でる。 やがて、吐き出す。フッと。スッと。 一瞬、煙のように立ちのぼる爽快感が胸を埋めつくして。けれど、心に残るは、あゝ、未練。されど、無情。どうにもならない後悔だけが、私のふところに先程まで何かが“あった”ことを教えてくれる。 「先輩、これは耐えきれません。私は、繊細に感じすぎる。私には。私には、やはりあの技術が必要です」 すがるように、言葉を吐いていた。その声もまた消える。けれども、誰かの頭には残る。心の奥に響く。なんて不思議だろう。 「いらないわけじゃないんだ、どれもこれも」 水平線を見つめ、先輩は静かにつぶやく。 ――ならば、もし液状となった感情が流れついて、海の向こう側に吐きだめをつくったとして。私達がその場所まで行き着いたのなら。そこにある感情を手のひらにすくったのなら。 私達は、また涙を流せるようになるのでしょうか。 そのときは、聞かせてくれませんか。涙はどんな味がするのか。きっと、私に教えてください。 しばらく二人きりで、海を眺めていた。 いいえ。二人、ただの一人の人間として。
一年前、ひとり。 半年前、ふたり。 今、ひとり。 席は空いている。 埋めない。
「すみませーん。お会計お願いします」 「はい! 少々お待ちください!」 料理人は大変だ。 注文を取らなければならないし、料理もしないといけないし、会計もしないといけないし、皿洗いもしないといけない。 バイトを一人雇いはしたが、人件費が馬鹿にならない。 注文や会計をしていないときも時給が発生し、金をドブに捨てている気分だ。 そんな時に、営業がやって来た。 「時代は人間の注文会計でなく、券売機です。券売機であれば、一度買えば、あとは電気代だけでオーケー」 確かに、と思ったので、バイトを首にして券売機を買った。 初期費用は痛かったが、客の注文と会計を券売機が勝手にやってくれるので、注文と会計がとても楽になった。 銀行で現金を両替するのだけが面倒だが、店の定休日にまとめてやればいいから、やはり楽だ。 安心安心。 「すみませーん。両替お願いします」 「はい! 少々お待ちください!」 しばらくすると、お札が変わってしまった。 旧札しか使えない券売機を見た客が、新札への交換を依頼してくるようになった。 これでは結局、手間がとられてしまう。 そんな時に、営業がやって来た。 「時代は現金支払いでなく、キャッシュレスです。キャッシュレス対応の券売機であれば、一度買えば、あとは電気代だけでオーケー」 確かに、と思ったので、キャッシュレス対応の券売機を買った。 初期費用は痛かったが、お札を交換する手間がなくなったので、とても楽になった。 キャッシュレスの手数料だけは痛いが、銀行で両替する手数料がないことを考えれば、やはり楽だ。 安心安心。 「すみませーん。エラーが出ました」 「はい! 少々お待ちください!」 しばらくすると、古くなった券売機が頻繁に紙を詰まらせるようになった。 エラーを出す券売機を見た客が、どうにかしてくれと言ってくるので、結局自分で注文と会計をするようになった。 これでは結局、手間がとられてしまう。 そんな時に、営業がやって来た。 「時代は券売機でなく、タブレットです。券売機は高価で、紙の券を発行するので壊れやすいです。タブレットであれば一台あたりが安価ですし、紙の券の発行も不要なので、トラブルも交換で楽々対応可能。一度買えば、あとは電気代だけでオーケー」 確かに、と思ったので、タブレットを大量に買った。 初期費用は痛かったが、券売機のトラブルを解消する手間がなくなったので、とても楽になった。 タブレットに入っているスマートオーダーシステムとやらの利用料だけは痛いが、券売機を買う値段に比べたら、はるかに安い。 安心安心。 『閉店します。長い間お世話になりました』 いったいいつ、一度買えば安心の時代が来るのだろうか。 次から次へと決済方法が変わり、結局ずっと営業に金を吸われ続けている。 そう気づいたら、自分がバイトに戻るのが一番楽だと感じた。 これでもう、注文や会計の方法に頭を捻らなくていい。 安心安心。
メールが来た。 卓上カレンダー、出荷完了。 私の今年も出荷されていく。 誰に買われたのか。
最後に会ったのは半年くらい前。だから、そこまで変わっていないのだろうと勝手に決めつけていた。けど、容姿の不変さとはうらはら、注文するものが大きく変わっていた。 「しらすのせ卵ピザと」 ―え? いまなんて?? しらす、食べたことなかったよね。てかさ、魚あんま好きじゃなかったでしょ。知らないみたいだから教えてあげるけど、しらすって魚だよ。ちっちゃいけどあれ魚だよ。あれ魚だよ。大丈夫なの? 食べれんの? 「あとセロリスティックを」 ―は? へ?? セロリ、けっこう癖あるよ。そういうの嫌いだったじゃん。ニラとか春菊とか少しでも入ってるといらないとも言わずにわたしのお皿にポイってしてたよね。 注文を終えた女友だちの笑顔を見てわたしは悟った。 ―付き合ってる男、いるなあ その男の趣味とか好みとか、あるいはときどき、つくりに行ってるなんてことも。一緒に買いものとかもするのだろう。インジケーターがみるみる下がって気持ちがあっけなく沈んでいく、そんな自分を想像できている、あまりにも容易に。 そんなわたしの思いなんて存在しないかのように前の席にいる女友だちは楽しそうにメニューを見返す。もう注文はし終えたのだから、こっちを向いてくれてもいいだろうに。あまりにも向いてくれないから、この前の飲み会のことなんてわたしは思い出してしまう。 ―どこ住み? 都内? ―ええ、まあ ―お。山手線の円のなか? そと? ―は? ―だから、なか? そと? ―そと、ですね ―なんだよ 急に男は興味を失った。なかだとどうだというんだろう。そとだと何がいけないんだろう。それにしても山手線の、そのなかとそとというたったそれだけのことで人を判断するだなんて。そんなアンタの住んでるとこってどこかしら? 埼玉あたり? それとも千葉の外れ? それをこの男にぶつけないのは埼玉あたりに住んでる人にも千葉の外れに住んでる人にも申し訳ないとの気持ちがあるからかな、きっと、たぶん。それでさ、ねえねえ、山手線で人を選別するそこのダサいお兄さん、なかだと何? そとだと何? 聞く価値なんてこれっぽっちもないそのことについて教えてくれないかしら― 聞きたかったけど、男のこの態度の前ではその気持ちもあっけなく失せた。 わたしはその男に精神的に背を向け、最近、読んだ本のことを考えた。料理屋をはじめる女というのはどうして決まってその前段階で離婚を経験するのだろうか、と。もしくは、父親が死んでその店を継ぐことになるのだろうか、と。永遠の謎というより物語の主たる部分へ向かうための通過儀礼くらいの気持ちでかるく流してしまったほうがむしろ精神衛生上いいのかもしれない。しかし、順風満帆な人生を歩んでいる美女がなんの苦労もなく高級イタリアンをオープンして連日盛況で、とそういった話があってもいいだろうに。誰がその本を手に取るのかは知らないけれど。 まったく、やれやれなことね。 そんな思いを込めて頭のなかの本を勢いよく閉じる。 くしゃ やけに弱々しい音がわたしの頭のなかでして、爽やかな香りを放つ。きれいに咲いて、きれいに… 女は潰れていった。文句は言わない。栞にだってならないくらいに。 目の前の女友だち… いや、もう、友だちとは呼びたくない。かつての女友だちは、いまだにこちらを向かないまま。そんなにメニューおもしろいの? それなら今夜、そのメニューと一緒にホテルにでも泊まるといいよ。きっと満足させてくれるんじゃない。 さあてちょっと、本格的に嫉妬でもしてみようかな。
そうだ、神様へ手紙を書こう! そう小さな僕が思い至ったのは、泣き虫な性格を直すためだ。 どっかで聞いた話。 神様は僕たちのこと守ってくれてるんだって。 だからお手紙を送って、それで仲良くなって… 神様と僕だけの秘密の関係を作るんだ。 秘密を守るかわりに、僕のことを守ってくれるって。 信じていた。 また良くないことが起こった。 他人とどうやって話をしたらいいか分からない。 自分がやりたいことを言えず、流され続けた。 なにを考えているか分からないと言われた。 誰かを傷つけた、自分も傷ついた。 もう他人と話すのをやめよう。 怒ってないよ。誰にも、怒ってない。 神様は守ってくれなかったけど、 まだあの秘密は誰にも言ってないし、言えない。 だから、まだ守ってくれる、よね? はっ、と目が覚めたら、したいことが何も無かった。 相談…って誰にするの? 誰とも話せないというのに。 「…かみ、さま……?」 返事などない。あるわけが無い。 これは僕が作り出した幻想。空想上の友達なのだから。 己の弱さを痛感した。 初めは泣くのがもう嫌で、それにただ耐えたかっただけなのにな。 捨てられない紙くずの前で涙を流す。 誰も知らない、見ることもない涙。 泣き疲れて、途方にくれて、 諦めようにも、こんな臆病な僕じゃ無理な話だった。 これからどうしたらいい? 神様に頼れなくて、誰にも頼れなくて、残るは僕一人。 じゃあ、もうこうするしかないね。 ねぇ?そこから僕の頑張りを見てて欲しいな。神様。
両親の死をきっかけに、弟がランゲルハンス島へと移住して五年が経つ。 当初、ランゲルハンス島なんて本当に移住できるのだろうかと心配していたのだが、週に一度、定期的に絵葉書が届くようになってからは、そんな疑問を抱くこともなくなった。 元々筆まめな人間だとは思っていたのだが、ランゲルハンス島へ移住してからの弟は、それが最大の楽しみであるかのように、生き生きとした筆致で絵葉書を送ってくる。 絵葉書に記されているのは、大抵がランゲルハンス島での近況だ。弟は、ランゲルハンス島へ移住してからというもの、カンゾウフルーツなるものを栽培して、生計を立てているようだ。 カンゾウと聞いて最初「甘草」なのかと思ったのだが、よくよく読んでいくと「肝臓」のことであるらしい。ランゲルハンス島ならではと言うべきなのかもしれないが、肝臓とフルーツの組み合わせがあまりにシュールで、最初にこの言葉を目にした時には、思考が停止した。 弟によれば、カンゾウフルーツは、本当に人間の肝臓によく似た形をしているらしい。色は薄いピンク色をしており、やや水臭い香りがする。島を吹く風に揺られて漂うその香りには、何ともいえない雅趣があり、島内ではカンゾウフルーツをイメージした香水が売り出されているほどなのだとか。 味は薄いリンゴめいており、腐りかけが一番美味しいのだと弟は記している。柔らかな感触はフルーツというよりレバーを想起させるが、慣れてしまえばどうということはないらしい。 「姉さんも是非、ランゲルハンス島へ遊びに来てください。海辺を飛ぶカンゾウネコの鳴き声が遠くから聞こえる家で、山盛りのカンゾウフルーツをご馳走します。姉さんが出不精なのはわかっていますが、時には遠出をするのもいいことだと思いますよ」 以前、そんな文言を弟は送って来たが、どうも私の性には合わない気がしたし、そもそも行き方も謎なので、いまだに島を訪れてはいない。 性に合わないという点は、弟の送ってくる絵葉書にいつも添えられているスケッチも大いに関係しているのかもしれない。 弟は絵葉書の表面に細かい文字で近況を書き、その裏には非常に精緻な肝臓のCTスキャンのスケッチを描いて寄越して来る。 それは鉛筆画なのだが、考えられる限りもっとも精緻な手法で描かれていた。一見すると、CTスキャンの画像を貼り付けているのではないかと思えるほどの精巧さなのだ。 絵を描いているのは弟に違いない。週一で出している絵葉書に、わざわざ他人に依頼したスケッチを載せることはないだろう。だが、それ故に、弟のスケッチに傾ける情熱のほどが伺えて、私は何となくうすら寒くなるのだった。 診療放射線技師という職業柄、CTスキャンはよく目にする。だからこそ、絵が決して得意だったわけではない弟のスケッチのクオリティの高さに驚くと共に、こんな熱情を彼に傾けさせるランゲルハンス島の得体の知れなさに、つい思いを馳せてしまうのだった。 そんな弟の送って寄越す絵葉書に異変を見つけたのは、ちょうど一ヶ月前のことだ。 その絵葉書は、表の文面からして変だった。最近、カンゾウフルーツの質が悪くなり、食べても美味しくないこと、海辺ではカンゾウネコの死骸が増えていること、風が送って来るカンゾウフルーツの香りも、腐った内蔵のような臭いに変わって来ていることが記されていた。 だが、極めつけは、その裏に記されているCTスキャンのスケッチだった。 私はそれを見て、思わずアッと小さく叫んでしまった。というのも、そこには明らかに肝臓がんの所見が見られたからだ。 カンゾウフルーツの質が悪くなったのも、きっとこれが原因に違いない。私はそう判断し、急いで弟へ手紙を送った。弟がランゲルハンス島へ向かって以降、これが初めて彼に対して送った手紙なのだと、投函した後にふと気付いた。 だが、手紙は結局、弟の所へは届かなかった。宛先不明で戻って来てしまったのだ。 あの肝臓がんの所見を示したCTスキャンのスケッチを送って来て以降、弟からの絵葉書は完全に途絶えてしまった。 私は定期的に弟へ手紙を送り続けているのだが、そのたびに宛先不明で戻って来る。 果たして、弟は無事なのだろうか。 そんな思いに駆られながらも、ランゲルハンス島への行き方すらわからない私は、ただただ無為に日を送るほかはないのである。
最近はネットから商品を購入する事が増えました。 少し前までは、ネットから商品を購入する事に何処か信用が置けなかったり、商品自体が画像だけでは分かりづらく購入し難かったのですが、最近はその商品説明に〈動画サイト〉が添付されてあり、それを見れば分かり易くなったのです。 これは使える これはちょっと無理か 動画を見て商品に自分の好みが合うかどうかが分かるのです。 これは私の場合だけなのかも知れませんが、読んだ文章よりも、目で見た音声付きの動画からより早い理解を得られています。 それは一発で分かると言っても良いぐらいの理解ですから、これ以上を求めるなら手にして触ってみるしかありません。 何を言いたいのか 自分の身の回り、仕事関係や、プライベート関係においても嫌な人、苦手な人、合わない人は絶対と言って良いほど存在しませんか。 残念ながら私もまだ…居られます。 ただ言えることは、以前よりか大幅に減って来たのです。 だから「まだ」と付けました。 私の場合、嫌な人の共通点は言動。あの嫌な部分を音声付きの動画と捉えました。要は嫌な見本である訳です。ご丁寧に私の目の前でやってくれますから非常に分かり易い。ただこちらは全く動画再生を希望はしていません。だから見ない。動画が勝手に流れていても興味がないから全く見ませんし、視界に入ってしまったとしても自分の脳にその情報が記録されません。 実際は居られますが、私個人的にその方は存在して居ないになります。こうやって存在を消してしまうのです。 おそらく正確にはコレだと思います。 自分の気持ちから消してしまう そうなってしまえば、これ迄の不快さが意外と軽くなるものです。 これ迄は自ら進んで読まなければ自分内に入り込まなかった嫌な情報が、現代は勝手に再生されてしまう動画として自分の視界に入り、気持ち部分に取り込み易くなったのかも知れません。 だからすぐ容量いっぱいで溢れてしまう。 最近は何故か疲れ易いというのにも納得してしまいます。 元々一人行動が好きな私は、おそらくこの容量が極端に小さくて疲れ易い筈なのに、そう思って来なかった。 自分に正直となれなかったのです。 だからこの気持ちから消してしまう方法が必要でした。 例えば可愛い子犬がキャンキャンと吠えていたり、小さな小鳥がピピピと鳴いていたら嫌な気分になるでしょうか。 「また吠えてんのね、鳴いてるね」になると思うのです。感覚はそれに近い。 あっ、嫌な人は決して可愛いくはないんですよ。 でもそう勝手に例えれば気分を崩したりしません。 ココ迄は気持ちから消したり変換する方法でしたが、嫌な人についてはこうも考えられます。 まだ自分が克服出来ていない部分 自分にとってこの嫌な人がその部分を克服するが為に登場してくれたという考え方です。嫌な人物になり敢えて目の前に登場したとでも言うのか、私としては別に登場しなくても…というのが本心ではありますが。 しかしこのパターンは克服と危険が表裏します。それは頑張り過ぎてしまうからです。 真面目、几帳面、部活動を頑張った人、すぐ没入してしまう人は特に要注意。 自分が悪い、まだまだ出来ていないと捉えがちになります。 そして克服出来なくて気分がとことん落ち込んでしまう。 これがモロに私の沼パターンでした。 私がこの沼から抜け出た方法、まずは克服なんて無理!と割り切ること。これは今の自分には出来ない事なのだと理解するのです。 何ならその嫌な人から即離れてしまう事も一手だと言えます。 出来る(克服する)をゴールに据えてしまうと危険域まで突っ込んでしまいます。 実際これがとても多い気がします。 もう一つ、その場に居続けるならサボるぐらいで実は丁度を理解する必要があります。 真面目過ぎはダメ。 私の現在地はこの辺りにあります。 というのも自分が自由に頑張れた時期は随分過去のものであり、歳を重ねて現在はそこ迄対応が出来ない年齢となっていました。 大事なのは、会社の為に働く程、一生は長く無いということ。自分の為にどうあるべきか、芯を間違えては一体何のため?が疑問として残ります。 凄く自分に正直になると分かるもので、結局は会社に、上司に、好かれようとしていた自分が居なかったか、ということ。 そんな事をしても収益面で会社が合わないと判断すれば解雇だし、会社は新しい人材を探し、ちゃんと新人材は登場します。 自分の気持ちや心を削っても収益でプラスにならないと判断されたらそこ迄の間柄なのだという事を踏まえるべきです。 自分が居易いところに身を置くという、このごく普通の主張。 心を大きくノビ出来る環境に居るか? 極めて重要な条件です。
見上げると目が合った。 知ってる顔と、知らない住所。 小さな非日常、旅のはじまり。
「パスワードが違います。」 これじゃなかったっけ。 覚えきれない顔を使い分けて、時間を浪費する。
財布の中からインクが掠れたクーポン。 くしゃりと丸めて捨てる。 行けなかったなあ。 もういらない。
改札機が鳴る。 カードの表面に印字された、見慣れた区画の期限切れ定期。 きっともう来ない。
世間では脱炭素が叫ばれている。 知り合いが洋上発電とかすればいいのに、と言っていた。 でも利権でうまくいかないだろうから僕はAVの幼女体型の娘で自家発電する。 幼女発電。 日本のロリコンがこの夏発電量を増し電力不足をクリーンに補う。 実に合理的。 ピストンによる電荷は原子力をゆうに凌ぐだろう。 全国のロリ体型の女の人の儲け時だ。 脱炭素が加速する。 幼女が服を着ているだけでも発電量が増える。 産業が盛り上がる。 実に頭の悪い政策だ。 風俗産業を尻目に僕は畑に出掛ける。
私はオカルト雑誌の取材班だ,日本にはたくさんの俗習や,伝承がたくさん存在している,今から私はここから得た奇妙で不思議な話を今からあなたに伝えようと思う。(とりあえずお前,ここに取材してこい、お前が好きな妖怪話だぞー)私は当時妖怪話がとても好きで妖怪や,怪異を面白おかしく伝えることがしたく少し口の悪い上司からの言葉でここの取材を受けることから始まった。(妖怪の名は何なのですか??もう大衆妖怪はもう雑誌で紹介し続けてもうネタが尽きるとは思うんですけど)私は少し口を濁しながら上司に応えた(なぁーここは昔からずっと続いてる雑誌会社だぞー?舐めてもらっちゃ困るなーで、はい、今回の取材概要)私は突き放された気分で薄い概要書を手に掴んだ(蔵捻)異様な2文字を私は凝視した、漆塗り?これが妖怪なのか?これが果たして畏れられたのか?仕方ない,とりあえず仕事が舞い込んできたから勢いよく(わかりました!とりあえず伝承地域早速明日から行ってきます!)翌日私はF県○○村に行った、今時ここまで廃村に近い村を行くことは久々だ,ちなみにこの妖怪喉名はクレヨリと読むらしい,蔵を捻ってクレヨリだ、妖怪とはいえかなり異様な名前を醸し出していた(すみませーん?とある雑誌の取材にきましたー、聞きたいことがあるんですけどー?)私は意気揚々と近くの村人に伝えた(蔵捻,,ねぇー久しく新しい方がきたのですからーとりあえずお家に入りなさい)私は吸い込まれるように古民家に入り始めた(蔵捻ねーーここの村では私含めて老人しかおりませんから,伝承はお伝えできますからねーマキクルルルトゥントゥン]語尾に奇妙な言葉を放っていたがおそらくこれは風習かなんかだろう(ぜひお伝えください](蔵捻はねー私たちからしたら富をもたらす神様のような存在です、しかし私たちは毎月15日は必ず動物の目玉を食べなければいけません、詳しくは言えませんかねトゥゥゥゥ)かなり独特だ,目玉を食べるとはなんなんだ?確かに同じ部位を食べるといいとゆう文化は昔からあるが、だとしても一つの部位に固執するのは珍しい(村をきてくれた折角なのであなたに少し理解していただきたいですから是非是非目玉をお食べください、代金は要りません、今日は15日ですからね)私は乾燥レーズンのような目玉をせっかくなのでいただいた、魚の目は食べたことあるが乾燥は食べたことがなく少し独特な食感を私の口内に巡る(少し慣れるのに苦労しそうですが美味しいですね)(そうでしょう?今日は例の催事を行いますので一泊ついでに是非タタタタヒヒヒフフフホ「」ヌキユユナネ)やはり風習にしては不気味だな,だがしかし運がある、ついでに特集組めるくらいの内容を実際に体験できる!(じゃあ、私は少しここで休憩しますね,ここまで歓迎されることは久々です)(いえいえ私も今日はとても幸せです、催事の準備があるのでケケケまたお伝えしますトゥトゥトゥ)そして私はくつろぎながら縁側で村人を観察していた(催事場を作っていると思えば目玉のような物を大きなお皿に月見団子のように積み重なっていた、かなり不気味だが確かにここは世間から隔離されても仕方ないが、取材のしがいがある(さあ、貴方様、催事ですよ、こっちにきてください)私は真夜に催事に参加することになった,時計は丑三時を示している,やはり伝承通りなのかと私は恐怖と好奇心に駆られた(さあ、さあ、蔵捻,、クルクルクルクルクルクルトュトユテホユコキテリメヒハヌノ)一同不気味な声を荒げながら私は催事を聞いた、だがしかし.私はこのままでは頭が狂ってしまうと思いながらその場から恐る恐る少しずつ離れて行った(あなた?今日は15日、目玉を食べたものは必ず儀式を成し遂げなければあなたは祟られてしまいますよ、おば、オホホホホホボホボ、ほら、目玉を必ず祀らないと)私はあまりにも気味悪くここまで嫌悪感を感じたことはなかった,目玉を乾燥していたのはこのためか!やばい、嗚咽が(オッエオォォボボホボボ)まさに胃の中に蠢くものを吐き出すような気持ちで目玉を吐いてしまった(あなたは珍しいですね,目玉がたくさん、ケケケケケケ私たちわかってたんですよ、あなたは素質があるって、祟られる素質がねトゥトテリハユヒトヒノムノタリニタクニ)私はその途端視界が真っ暗になった,何も見えない、、ここはどこだ)[ゥゥゥドゥドゥドゥめ、ドゥマドゥ]蔵捻が私に語りかけてくる、私は急いで割れたお皿の音を奏でながら、(これが、お前が求めた物だろ?等価交換だ!)そして翌日私は夢を見ていたかのように地面で転げながら寝ていたらしい、蔵捻、幸い生きていたが私の手は真っ赤になっていた、そして私は急いでこの村を気味悪ながら出て行った
刑事が吐き捨てるように言う。彼女は絶望に瞳を揺らしながらも、じっと前を見据えた ****。その瞳の奥には、恐怖を上回る強い意志が、まだ微かに灯っている。 (誰かが私をハメた。この数字も、この首輪も、全部あらかじめ準備されていたんだ……) 窓から差し込むわずかな光が、彼女の横顔を照らす ****。警察が彼女を犯人と断定し、社会が彼女を「0831」という記号で裁こうとする中、彼女は静かに決意した。 たとえ言葉が封じられても、この「管理」という名の檻から、いつか真実を曝け出してやると。
ベッドに横になって、膝は立てて、両の手はお腹の上に。ズっちゃんのよくない兆候。わかっていても僕には何もできない。気の利いたことを言うことも、おいしいものをつくってあげることも。せめて近くで本を読むふりをしながら、その気配によりそうことくらいしか。 ふううううう 大きく長く息を、ズっちゃんは吐き出した。お腹のなかにたまってる悪いものを全部、カラダの外に追い出すみたいに。 「アイス食べない?」 とズっちゃん。 「ないでしょ」 と僕。 「買い行かない?」 「…行こっか」 ズっちゃんは薄く笑顔を見せる。ぺたんこの靴を履きながら、でもその背中から鼻歌は聞こえてこない。 「この前、仕事の合間にホームセンター行ってさ」 ふいにズっちゃんが言って、 「え、ああ、うん」 いつものことながら、僕は間の抜けた返答しかできない。 「園芸コーナーを見て回ってたときにさ、小さなハーブの苗あるでしょ、その苗に隠れてさ、夏の気配が潜んでたんだ」 「え?」 「ひとりだけでね」 「ひとりで…」 「さびしそうだった。ちょこんと座ってた。誰も気がついてなくってね。それが不思議だった。だから、きっと気のせいだったのかなって」 僕は返答できなかった。 「もしくはさ…」 「え、なに? 怖い話?」 「へへ。犬と暮らすとしてさ」 「え、ああ、うん」 「ねことも暮らすとしてさ」 「…うん」 「あ~、あたしピノにしよっかな。ピノピノピノ~」 いつの間にかコンビニは目の前にあって、ズっちゃんは飛ぶように軽い足取りで入っていく。かすかに聞こえてきた鼻歌は、ズっちゃんのいい感じの兆候。そのことに少しばかりの安堵しか、僕にはできないけれど… でも僕は、とっくに気がついていた。意味のない会話は、ズっちゃんの復活の証だと。
証拠は揃っているんだ、0831。お前が現場にいたことは防犯カメラが証明している。その格好も、犯行時のものと一致するんだよ」 刑事の言葉は、まるで彼女を物理的に押し潰そうとするかのような圧力を持っていた。ヤサイちゃんは、胸に縫い付けられた「0831」という数字をじっと見つめた ****。これは単なる管理番号ではない。彼女から名前を奪い、尊厳を奪い、一人の人間を「容疑者」という記号に作り変えるための烙印だ。 「あれは……私はただ、道に迷って……」 「言い訳はもういい。通称『ヤサイちゃん』。お前のような若い娘が、なぜあんな残忍な事件を……」 刑事が吐き捨てるように言う。彼女は絶望に瞳を揺らしながらも、じっと前を見据えた ****。その瞳の奥には、恐怖を上回る強い意志が、まだ微かに灯っている。 (誰かが私をハメた。この数字も、この首輪も、全部あらかじめ準備されていたんだ……) 窓から差し込むわずかな光が、彼女の横顔を照らす ****。警察が彼女を犯人と断定し、社会が彼女を「0831」という記号で裁こうとする中、彼女は静かに決意した。 たとえ言葉が封じられても、この「管理」という名の檻から、いつか真実を曝け出してやると。
私はとある都市伝説を耳にした。(黄泉平坂って坂の看板通り過ぎたらこの山道から抜け出せなくなるらしいよー)噂にしては少し大雑把な気がする,そもそもループ系の都市伝説なんてさまざまな分野がありすぎてありきたりだ,(えーマジでーでも噂の坂道なんて近所にあるけど名前が独特すぎて目を付けられただけでしょー犬鳴きトンネル的なニュアンス?なんじゃないの?てかそもそもネットの中の噂でしょ,創作だよ,創作)少し声を高らかにしながら歩いてる二人組が私のそばを過ぎ去って行った、盗み聞きしたとはいえこんなぶっ飛んだ坂なんてこの世にないだろう,噂だよ,ウワサ,少し斜に構えながら私は少し薄暗い道を自転車で駆け抜ける,この地域は昔から過疎地で大きな山や,畦道が私の目の中のキャンパスに広がった,仕方なく私は自転車を全速力で駆け巡った,ここは田舎すぎて事故なんて田んぼに突っ込む程度の事故しかない,都会と違って人通りも少なく新しく追加された条例も合法的に無効になった感じだ,[黄泉,ヒ,,ラサ、坂]少しかすれた看板が通り過ぎるが,色褪せすぎて看板が機能していないほどに錆びれていた,(あーここが噂の坂がある場所なんだなー,山道通らないとそもそも入ることできないけどなー安心したーー)と安堵しながら自転車をこぎまくった,しかし(あれ?ここ看板の近くのしか注意の看板,,さっき通った気がするなー)少しさっき前に見覚えのある看板があるが,私は違和感なくこの道を過ぎ去っていく,しかし(あれ?また鹿の看板?あれ?間違えてないよね?)私は急いでスマホの地図を見るが、いつも通りの道だ,道のはずだ(まじかー噂本当だとしても何かトリックあるんじゃないかー?]と思いながら私は逆走をした,同じ道を抜け出せてなくあたかもループしているような錯覚をするのかも知れない、(あれー?後ろから行っても看板があるぞー、ループは本当なのかー?)と緊急事態の割に冷静になりながら私は同じ道を途方にくれながら駆け抜けていく(ごめんなさい,ごめんなさい,ごめんなさい)老人が懺悔をしているのだろうか?だとしてもなんで人気のない山道で,しかしさっきまでのループはこの老人はいなかった,,何かきっかけがあったのだろうか?(私本当に早くここから抜け出してください,今まで商店街にいたのに、なんで!なんで!なんで!!)私は???を浮かべながら老人の隣の女性を通り過ぎた。私は直感的にここから抜け出さないといけないと考えだし,急いでこのループを抜け出すために違法速度を出しながら全速力で山道を走り抜ける,,,だが私は抜け出せない,最悪だがそう思えるのがまだ正気だと思いながら私は事故を起こしてしまう勢いに自転車を駆け抜けまくった。そして私は無理矢理抜け出すかのように自転車を駆け抜けたおかげがかすれた看板が勢いで何故か倒れた結果,いつもの通り過ぎる道に戻って行った,私は帰宅後急いでブログに今日の出来事を書き記した、誰か目を通すかもしれないし、ほら話だと馬鹿にされると思うが正直このことを他人に聞かせることがしたいと思いながら淡々と文字を打った、, (ねーー綾香ー?例のブログ見た?黄泉平坂ってここ地元なのやばくない?後この黄泉平坂って坂の看板通り過ぎたらこの山道から抜け出せなくなるらしいよ?)また同じ道で噂話が聞こえてきた,鬱陶しい
「5」 「9」 「13」 「17」 「ああ、置いてきぼりにしちゃってた?19」 「22。ごめんね?」 「言葉が霧散しちゃったから。26」 「30。行を数えてるんだ」 「35。言葉は形にして残しておいた方がいいよ」 「君だって行を読むだけの生活なんて嫌でしょ?38」 「50。まだ50行目。君の言葉が何行目か教えておいてね、きっと覚えているから」 「52」