デブ娯楽

「筋トレが趣味なんだよね」 「かっこいい!」 「素敵!」    男Aが力こぶを作りながら言った。  評価は上々。   「食べるのが趣味なんだよね」 「痩せろ」 「デブが」    男Bが丸い腹をさすりながら言った。  評価は下々。   「趣味の副産物に評価が下されるこんな世の中じゃ……」    男Cがつまらない現実を憂いた。

この世で一番の悪が暇

 極悪。 その言葉が自分にはしっくり来る。 別にヤクザに所属しているわけではない。 戦争の武器商人な訳でもない。 ただの一般人、ただの人間。 だが極悪だ。 いや、悪という概念すら覆しているかもしれない。 害悪、諸悪、必要悪。 どのカテゴリーにも属しているようで属していない。 形容するなら極悪。 何かを極めているわけでもないのに。 関連する事象全てに作用して何かを起こしてしまう。 なにもしていないのに。 誰かが言う。 「お前迷惑だよ。」 極悪で迷惑。 実に不名誉な称号。 今日も暇潰しで人に迷惑をかける。

折る

 私以外の人類が滅びた地球の焼け野原に、空から一冊の本が落ちてきた。それは折り紙の本で、ページをめくると、『人間』の折り方が記されていた。私は焼け野原に落ちている、焼け焦げた紙幣や政府機関紙、避難場所が載った地図などで、人類の復興を試みることにした。

朝にアフタヌーンティーを

 朝起きて台所に向かったら、妹がケーキを食べていた。  三段重ねのケーキスタンドに、小さなケーキを置いている。   「なにこれ?」 「ヌン活」    私は時計を見た。  午前八時。  アフタヌーンとはかけ離れている。   「モーニングティーじゃん」    私が呆れたように言うと、妹はケラケラ笑いながらケーキにフォークを突き刺した。   「多様性多様性」    私はケーキを平らげる妹を見た後、顔を洗うために洗面台へ向かった。  バシャバシャ顔を洗いながら、妹の言葉を思い出す。   「まー、そういうもんかー」    言葉と内容が一致しない事なんて、良くある話だ。  アフタヌーンティーをアフタヌーンに食べることは、もうきっと義務ではない。  私はさっぱりした顔で台所に戻り、午後専用を謳う紅茶を冷蔵庫から取り出した。

不安なき不自由な世界

「入社おめでとう。君たちも社会人になったことだし、ここらで生命保険に入っておくのがいいぞ。会社の推奨はこれだ」    とりあえず入った。   「確定拠出年金を始めないか? 毎月の給料からコツコツと積みあげて、将来の年金を増やせるんだ」    とりあえず入った。   「持株会に入らないか? 毎月の給料から少額の株を買って配当をもらうんだ。今なら、一口につき○○%の株プレゼントもあってお得だぞ」    とりあえず入った。    正直、何の目的で、将来どうなるのかよくわかっていない。  しかし、会社が大丈夫と言っているのなら、きっと大丈夫なのだろう。    上司の指示を聞くのが嫌だとフリーランスになった友達たちは、成長が楽しいと喜びながら、仕事がない貯蓄が不安だと嘆いている。  ぼくは、成長なんて感じないけど、仕事や貯蓄への不安もない。  多分会社が何とかしてくれる。   「酒、うま」    どっちが幸せなんだろうか、なんて考えるのも面倒になって、とりあえずお酒を飲んで寝た。

血色の悪い手

鏡の前で手を洗おうと手袋を外した時、黒手袋から出て来た、真っ白で筋張った手が、白骨死体みたいで綺麗だと思った。初めて自分のことを綺麗だと思えた。

AI小説家はAIを使いこなす

 俺はAI小説家だ。  俺のアイデアをAIで膨らませ、AIによる高速執筆を実現している。  最先端勝つインテリジェーンスな小説家だ。    さて、そんなインテリジェンスな俺の目に、頭の悪そうな投稿が目に入った。   『感想は読者にとってハードルが高いので、定型文を作った方が良いのでは? 例えば、ぬるぽとか』    アンビリーバボオ。  感想が『ぬるぽ』だけなんて、なんて無味無臭なアンビリーバボオ。  インテリジェーンスは俺は、優しく人間の心を教えてあげた。   『さすがに、ぬるぽだけはつまんないですよ』    返事はすぐに来た。   『ぬるぽは例えです。言いたかったのは、感想のハードルを下げようってことです』    アンビリーバブル。  ルルルルールルル。  こともあろうに言い訳だ。  なんという、ハレンチ。  しかし俺は、AIマスター。  これ以上言い返したりなどしない。  代わりに、AIを起動し、俺のアングリーな感情をぶつけることにした。   『この例え話、分かりにくいですよね?』    返事はすぐに来た。   『普通に意図は伝わります。ぬるぽがユニークすぎて、そこに反応しちゃったのかもしれませんね(笑)』    表出ろや、AI!

最後の手紙と感謝の気持ち ~ひより編~

ひよりは、ごく普通のJKらいふを楽しんでいた。 昼休み、先生が焦った様子でやってきた。 「ひよりさん、あなたのお母さんが大変らしい!」 ひよりは、頭が真っ白になった。 なぜなら、ひよりのお母さんは、もともと体が弱く、もう五年も生きられないかもと言われてきたからだ。 ひよりは、先生と病院へ向かった。 病室に入るなり、 「お母さんっ!」 ひよりは叫んだ。 お母さんは、意識がもうろうとしていて、お医者さんまでもが、「もう無理です」と言いたげな顔をしていた。 機械音が鳴りやんだ。 「ご臨終です。」 お医者さんは、そう告げた。 ひよりは、感情のままにわっと泣き出した。 先生は、ひよりのことを心配した。 お医者さんが出て行ったあと、看護師さんが、「これ、お母様がなくなる前まで書かれていたものです。私がなくなったら娘に渡してくださいと言われておりました。」 と、ひよりにきれいに包まれた手紙を渡した。 『ひよりへ。 まず、ごめんね。 私はもともと体が弱かったので、ひよりを産むのはあきらめなさいと言われた。 でも、どうしても産みたかった。 そうしたらひよりが産まれてきてくれたの。 本当にうれしかったわ。 ひよりは、私がいなくなって悲しいし、寂しいでしょう。 でも、ひよりは、私の分まで強く生きるのよ。 ありがとう、ひより。 お母さんより。』 とてもきれいな字だった。 びんせんは、所々涙で濡れていた。 ひよりは、この手紙を見て、目に涙があふれた。 最後まで読むと、涙が滝のように流れた。 「お母さんっ…。今までありがとう…」 そんなひよりを、先生は優しく見守った。 ひよりは、それから明るく元気な女の子になった。 理由を聞くと、「お母さんの分まで元気に生きたいから!」と笑顔で答えた。 そんなひよりを、お母さんは天国から優しく見守るのであった。

ミニストーリー

前略 花粉症たいへんツラいです。喉痛いです。鼻水スゴイです。カラダだるいです。何もしたくありません。無理することないくらいつくり置きはありますが、頭では考えてしまうのです。アレはダメでした。カラダがキツイとこでかすりもしないと精神的にもまいってしまいます。ひとまず、こんなです。 草々

最後の手紙と感謝の気持ち ~ルナ編~

古い郵便局の片隅で、配達員のルナは一通の手紙を見つけた。 差出人の名前はなく、宛先は「未来のあなたへ」。 消印は十年前。なぜか配達されずに残っていた。 封を開けるべきか迷ったが、ルナは直感で「これは届けなきゃいけない」と思った。 住所を頼りに向かった先は、少し色あせた二階建ての家。 インターホンを押すと、白髪の女性がゆっくりと出てきた。 「郵便です。十年前のものみたいで…」 女性は手紙を見るなり、息をのんだ。 震える指で封を開けると、そこには丁寧な文字が並んでいた。 『お母さんへ  もしこの手紙が届いているなら、僕はもうそばにいないんだと思う。  でも、悲しまないでほしい。  僕は最後まで、お母さんの息子でいられて幸せだった。  どうか、自分を責めないで。  あなたは世界で一番の母親でした。  ありがとう。  大好きだよ。  翔』 読み終えた瞬間、女性の膝が崩れ落ちた。 ルナは慌てて支えたが、女性は涙をこぼしながら微笑んだ。 「この子…翔は、十年前に事故で…  でもね、最後に何を思っていたのか、ずっとわからなかったの。  今日、やっと…答えが届いたのね」 ルナは胸が締めつけられた。 十年遅れの手紙が、ようやく母の心を救ったのだ。 女性は手紙を胸に抱きしめ、空を見上げた。 「翔、ありがとう。  あなたの言葉、ちゃんと届いたわよ」 その横顔は、涙で濡れているのに、どこか晴れやかだった。 ルナは静かに頭を下げ、郵便局員としてではなく、一人の人間として思った。 「手紙って、届くべき人に届く瞬間があるんだ」と。 帰り道、冬の風は冷たかったが、心の奥には不思議な温かさが灯っていた

ひとまず

おふとんの重みの安心とあたたかさ 羽毛のおふとんは、わたしにはくすぐったい あれは、ちょっといけない 風の視線は冷たくて わたしだって負けずに冷たい 名前のない気持ちは 名前のない気持ち 無理に名前をつけてあげる必要なんて 風のつぶやきとお月さまのうなずき 季節には次のにおいがいくらかまじって さてさて、何を食べましょう いやいや、ひとまず寝よう 次、起きたら、何かたべよう 起きたとき決めてくれるよ そのときのわたしが ひとまず 寝よう ひとまず ひとまず おふとんを ひとまず

老刑事

 老刑事は車を走らせていた。  事件現場に向かっているのではなく、目的地は田舎の田んぼが広がる中に、ポツンとある建物だ。  田舎にあるといっても、建物は3階建て鉄筋コンクリートで、高い塀に囲まれた姿は要塞のようでもある。  住人はおとなしそうな中年夫婦。辺りの風景に似つかわしくない建物に、建物に似つかわしくない住人。  あの事件の鍵は、その要塞にあると確信した老刑事は、頭にある情報の数々をつぶやきながら、ハンドルを握りしめていた。    「もう終わりだ。待っていろ」。事件を画策した首謀者への怒り、被害者の無念、事件解決に対する少しの興奮が、老刑事に胸の鼓動を高めていた。  ようやく目的地の要塞のような家にたどり着いたが、インターホンを押しても反応はなく、人気が全くない。  仕方なく、広大な家の敷地をぐるりと歩き回って様子をうかがってみたが、結果は同じ。周囲数キロにわたって、他に民家はなく、山と田んぼが囲んでいるという立地だ。  入口前に戻って、ため息交じりに車で待機すること決めた刹那。  「あのう」  老刑事は声の方向へ即座に顔を向けた。  目に飛びこんだのは、眼前に迫った金属製の何かと、家主でもない初老の男性の姿だった。 湿っぽくもあり、鈍い音がする。  「いつの間に」「家主ではない。誰だ」「目がやられた」と、老刑事の頭には言葉にならない思念が一瞬のうちに浮かんだが、頭部への追撃で意識は深く混濁していった。  最後に老刑事が聞いたのは、 「この人、始末してもよかったでし・・・・」

デジタル折り紙

『折り紙で、鶴を作ってみましょう。画面をタップしてね』 「はーい!」    息子がにこにこしながら、タブレットをタップしている。  タップする度、画面に映る紙が折られていき、鶴の形に近づいていく。   「それ、面白い?」 「うん!」    あまりに不気味だったので思わず声をかけたが、息子は何の違和感も感じてないのか元気な返事を返してきた。   「そう、なら、いいんだけど」 「うん!」    私は息子を見ながらソファに座り、サイドテーブルに置いてあった折り紙を手に取り、鶴を折った。   「時代だなあ」    折り紙は、ちゃんと折ったつもりがぐしゃぐしゃになって、角と角がぴったり一致するようになる過程が面白いというのに。  果たしてタップするだけのデジタル折り紙で、何が手に入るというのだろう。    私が折り鶴を完成させて掴んだ時、息子もデジタル折り紙を完成させたらしく、嬉々としてタブレットを見せに来た。

特典は死後

「ボランティアに参加してくれた方には、特典としてラーメン一杯無料券配ってまーす」    お金がないのでボランティアをした。  ご飯が一食浮いて幸せだった。   「循環する魂が枯渇してまーす。天寿を早めてくれた方には、特典としてちょっと幸福な来世を保証しまーす」    人生がつまらないので天寿を早めた。  来世には記憶が引き継がれないので、本当に特典をもらえるのかわからないのだけが心残りだ。

殺人鬼の弟

 しばらく連絡のなかった兄の現状を知ったのは、警察からの電話だった。  人を殺したらしい。  何人も。    ぼくたちはただの家族から一変し、人殺しの家族になった。   「今のお気持ちは?」 「遺族の方に申し訳ないという気持ちはありますか?」 「実の家族が犯罪者になって、何か感じることは?」    連日、家に押し掛けるマスコミ。  マスコミの音と光は、殺人鬼の家がどこなのかを世間に教える、いい目印になってしまった。  マスコミが飽きた後、待っていたのは近所の人と他人からの攻撃だ。   「いつまでいるのかしら?」 「早く引っ越してくれればいいのに」 「やっぱり殺人鬼の家族だからかしらねえ」    両親は、日に日に衰弱していった。  父は目にクマを作って会社に向かい、生活費を持って帰って来る。  母は頬もごっそりコケてやつれ、夏だというのに炬燵に潜って眠っている。    ぼくは、学校に行って帰った。    冷たい視線が刺さって来る。  時には暴言が飛んでくる。  石を投げつけられて、額から血を流すこともあった。       「引っ越し先が決まった。来週の夜、この町を出よう」    父は、母とぼくに言った。  ずっと、引っ越しと転職を考えていたらしい。   「でも、この家がないと、あの子の帰ってくる場所が」 「……もう、住むことはできないよ」    母は最後まで抵抗していたが、父が押し通した。  既に母の通う病院も目星をつけたらしい。   「もう少し時間をくれない?」    ぼくは、引っ越しに賛成しつつ、時期をずらして欲しいと頼んだ。   「なにかあるのか?」 「殺人鬼の弟らしいから、殺人鬼の家族らしいことをやって来る。後、ずっと溜めてくれたお年玉、今全部もらえない?」        溜めに溜めた暴力の証拠を持って弁護士事務所に向かって、被害届というやつを出す手伝いをお願いした。    ぼくを殺人鬼の家族だと、犯罪者の家族と嘲笑った皆様。  おめでとうございます。  今日からあなたたちは、犯罪者の家族ではなく、犯罪者張本人です。    受理されたのは僅かだったけど、一瞬でも恐怖を与えることができたから、ぼくは満足だった。  新天地で、被害届を取り下げて欲しいという訴えが来たと、弁護士から聞いた。  当然断った。  だって、君たちも石を投げるのをやめなかったから。    電話を終えると、自然と涙が出てきた。  そんなぼくを、父が後ろから抱きしめてくれた。    この涙は、嬉し涙か、それとも悲し涙か。  殺人鬼の家族であるぼくには、人間の血なんて流れていないからわからない。

クジラの病院

 近所にあった汚い、小さな家には、玄関先に看板が取り付けられていた。『クジラの病院』看板にはそう書かれていた。その家に、クジラはもちろん、誰か人間が出入りしているところも見たことがない。『クジラの病院』廃屋だと思っていた。ある日の夜明け頃、不思議な音で目が覚めた。外に出て辺りを見回すと、その音は『クジラの病院』から聞こえていた。何の音だろう。そう思って近づくと、突然、『クジラの病院』の中から、屋根を突き破って、大量の水が空に向かって噴射された。あっ、クジラが潮を噴いたんだ。すぐにそう判った。潮は朝日に反射して、きらきらと輝いていた。美しかった。きっとクジラは治ったんだ。何となくそう判った。

規則正しい生活 (掌編詩小説)

『規則正しい生活』って言うけれど 1日の始まりが朝だなんて誰が決めたの 皆んなが朝型な訳ないよ 夜型があって良いんじゃないかな (完)

テリアさん @017

遠くの橋を渡る汽車の足音が聞こえる。何度も聞いた。何度も聞いて、何度も悲しくなる。この町の人たちを都会へと運ぶあの汽車は、都会からは人を連れ戻してはくれない。その事実に思い至ったのは、ぼくに番がまわってくる半年くらい前だった。 ぼくの番が目の前にあらわれたとき、ぼくはそれをあの子にゆずった。あの子は無理に嬉々とすることでちいさな不安をつつみこみ、都会行きのあの汽車に乗った。そして、ぼくが至った結論どおり、帰ってくることはなかった。 あのとき、ぼくは、と、思うことはすくなくない。後悔とは思っていない。たぶん、思っていない。後悔があるとして、けれど、あのときにはもどれない。 ぼくの番は、もう来ない。 あの子は、この町にいない。帰ってくることも、たぶん、ない。 あの子は、この町にいない。 いま、ぼくは、この町にいる。 これが、ぼくとあの子とのすべてだ。

治療

 病気の少女が、赤い風船を主治医のところに持っていった。「この風船も病気なの」主治医は風船を元気にするため、風船に注射を打つことにした。

怪獣があらわれる街✕森の中の教会

カモメ27歳男性、雨太郎45歳オジサン 二人は地球を守るウルトラマンである 今はカモメが運転する車に雨太郎を乗せて結婚式場へ向かっている。勿論、人間の姿で。 「たまにいるよな。気の合わないやつって」 「それ、僕に言ってます?」 「逆に、こんだけ人間がいればよぉ、気の合うやつを探す方が難しいよな。逆に」 「逆ですか…」 「それを思うと、結婚する人間ってのは奇跡が起こった運のいいやつか、それじゃなかったら余程気持ちに鈍感なやつだよな」 「そんなもんですかね」 「絶対そうだろ。気の合うヤツがウジャウジャいるなら、俺はとっくに結婚してあたたかい家庭を築いてるっつーの」 「…ウジャウジャって」 車は大きな交差点を右に折れ、山の方に向かっていく。 式場は山の麓にある森の中の教会だ 「あぁ早く飲みてーな」 「雨太郎さん運転しないんだから飲んだらいいじゃないですか」 「バカ。酒こぼしたら背広が汚れんだろぉ。汚れた背広で式に行けるかよ」 「…背広って…」 車はどんどん進む 山はどんどん近づいて大きくなる 「なんでまた、あいつは、こんな山奥で結婚すんのかねぇ。喫茶店でいいじゃねえか。若えやつの考えることは分からんな」 「今、流行らしいですよ。緑豊かな自然の中にある教会で、永遠の誓いをたてる。いいと思いますけどね」 「そういうもんかねぇ」 車は今、山の麓まできている 「…あいつは結婚しても喫茶店のバイト続けんのかなぁ」 「はい、続けるってマスターに言ってましたよ」 「まぁならいいけどよぉ」 「それ、どの立場で言ってんすか?」 「どのって、常連客のお立場だよ」 「いつも珈琲しか頼まないですけどね」 「あそこの珈琲にウィスキーを入れると美味いんだ。こっそりな」 「絶対バレてると思うけど」 車は山の中へ入っていく 山の裏には広い湖がある その水面に虹色の亀裂が走り 時空を裂くように大きく開く ワープゲート出現し侵略者が出てくる。 彼は口から火を噴き森が燃える。 歩く度にマグニチュード6クラスの揺れが起こり、森を雑草のように踏み潰していく。 そう、怪獣が現れたのだ。 騒ぎが起こると直ぐ山の向こうに二人のウルトラマンが現れた。 現れたと同時に両手をクロスさせている。 二人のウルトラマンはかなり怒っている。二本の光線が迸る。

下手くそ神話

「下手くそ」    ベッドの上で私が笑うと、彼氏はこの世の終わりかってくらい恥ずかしそうにしていた。  三回目でようやく成功。  童貞卒業おめでとう。    私は、彼氏がかぶっている布団を強引に剥がし、小さくなった頭を撫でてあげた。   「大丈夫、大丈夫。これから上手くなるよ」    いったい私は何を慰めているんだろうと思わなくはない。  けど、最初は誰もが下手なもんだし、何回やってるやつでも、下手くそのままで自信満々なんてやつもいる。  こういうのは、愛情を感じられればそれでいい。  最悪、発情し続けていても、私の体に興味があるってことだからそれでいい。    人間というのは、割とシンプルだ。  私はベッドから降りて、コーヒー豆の入った袋を取り出す。   「コーヒー飲む?」 「……飲む」    本当は、もっと丁寧な事後を望むが、初心者に要求するほど鬼畜じゃあない。  それも一緒に覚えていこう。  今は、日常で口をゆすいで、前を向こう。    コーヒーの作られるガシュガシュとした跡が、寝室に響く。    こんな穏やかな夜が迎えられるのは、貴方が私の初めての手料理を、美味しいって褒めてくれたからだ。  不揃いな千切りキャベツに、黒こげのハンバーグ。  特製ソースはゲロの味。   「どうぞ」 「ありがと」    下手くそを笑い話にできることが幸せの秘訣だって、教えてくれたのは貴方だ。

テリアさん @016

あんまんをたべ終えたキミが本棚に近づく。一冊を手に取り、けれど開かない。本棚の端によりかからせ、本を傾かせて置く。 ―まっすぐ置いてるより、よりかからせてほどよく傾いてるほうが、本がちょっぴり微笑んでいられる気がしない? ―まっすぐのほうがいいんじゃない? とぼく。 ―ななめもいいもんだよ やさしい声でキミがぼくに言う。 ―あんまんたべて冬が来たね ―肉まんでも冬は来るでしょ とぼく。 ―あんまんがいいよ キミはゆずらない。 ―寒いね、桃色の和菓子をたべたら、春が来てくれるけど キミが窓の外を見つめながら言う。ぼくに言っているのか、窓の外に言っているのかわからない。それでも、ぼくは答える。 ―それはまだまだ先の話でしょ ―春なんてあっという間だよ、あっという間に卒業だよ キミが言ったとおり、ぼくたちは、あっという間に卒業してしまった。

飯ならさっき食べたじゃろ?

「飯はまだかの?」 「あら、おじいちゃん。ご飯はさっき食べたでしょ」    なんてやり取りをしていたのが、一年前。  相変わらず、認知症は残ったままだ。  でも、最近は事情が変わった。   「ご飯できましたよ」 「飯ならさっき食ったじゃろ。な、えーちゃん」    AIとの会話と現実の区別がつかなくなった結果、やってないことをやったと言い始めた。  スマホの画面を覗き込めば、AIと食事中のだんらんをした履歴が残っている。   「はあ。次の食事で、倍の量食べさせないと」    やったことを忘れるのも考え物だが、やってないことをやったと言い張られるのも考え物だ。

最善の策 (掌編詩小説)

『何が出来ないかよりも、何ができるか』 そう考えるようにしなさい 恐怖心は、論理的に考えてみると 薄っぺらくなる (完)

またね

 処刑場に行った。友人に会いに行ったのだ。友人はこの間斬首刑に処され、その生首がさらされていたのだ。友人の生首に色々な話をし、そのうち日が暮れてきたので、家に帰った。「またね」と手を振ると、友人も手を振った。帰り道、友人は生首なのだから手を振れるわけがないことに、ふと気づいた。

春の風

鯉の泳ぐ川に沿って吹いていた風は 花弁が落ちないように、そっと桜の香りを嗅ぐ 隣家の台所の小窓からは女性たちの明るい笑い声が聴こえてくる 風は洗濯物を揺らし、勝手口の扉にそっと触れる 小窓から外を眺めていた猫が鳴く 女性たちは会話をとめて猫の名前を呼ぶ 風はそうっと猫を撫でると 再び川沿いの道をゆっくりと歩きだした

N市の死因記録

1月1日 男性 餅を喉に詰まらせ窒息死 1月1日 男性 ヒートショックにより死 1月2日 女性 階段でつまづき 転落死 1月3日 男性 喧嘩で椅子で殴られ、脳挫傷を起こし、死。 1月4日 女性2名 男性2名 N廃病院に侵入。院内を探索後、遭遇。壁に頭を打ち付け、お互いの眼球を奪い合う形でえぐりだし。絶命。 1月5日 男性 痴情のもつれから知人の男性と口論になり。道路に突き飛ばされる。轢死。 1月7日 女性 ハイキング中に毒性を持つキノコを誤食。8時間後に病院にて死 1月9日 男性8名 女性3名 N駅西口にて、遭遇。互いの目を奪い合い。指を噛み千切る。失血死。 男性一名が生き残ったが、六時間後、病院から脱走し、N廃病院の手前で野犬が骨を咥えているのを発見。 1月10日 男性 登下校時に車に轢かれ、轢死。 1月11日 男性13名 女性22名 N高等学校の廊下にて、男子生徒7名が遭遇。数分後に教室にて突然男子生徒が窓を割り、破片で他生徒4名を攻撃。 同じ事を遭遇した生徒6名が数分後に他の教室で行ったため。甚大な被害が起きた。 1月15日 男性 夜道を歩いていたところ、遭遇。奇声を上げて走り去る。職員の捜索むなしく、発見されず。 (追記 2月4日。N廃病院のエアコンの中から折り畳まれて発見。) 1月18日 男性 N廃病院に潜入。 当記録を発見。それを書き写し、2日後にネットに小説という形で投稿。 その2時間後に火事がおき。焼死。 1月21日 女性 道路を通行中 突如野犬に襲われ、死亡 野犬は駆除済み (追記 女性はネット上で18日の男性の小説を閲覧していたことが発覚) 1月23日 男性 ネットで小説という形で投稿された当記録帳を閲覧。 2時間後に溺死。 1月24日 女性 ネットに小説という形で投稿された当記録を閲覧。2時間後に失血死。 1月28日 男性3名 N廃病院にて当記録を閲覧。遭遇。 壮絶死。 1月29日 男性 ネットに小説という形で投稿された当記録を閲覧。焼死。 1月30日 男性 ネットに小説という形で投稿された当記録を閲覧。餓死。 1月31日 女性 ネットに小説という形で投稿された当記録を閲覧。溺死。

不適合者

私は思った。 私の周りはみんな機械なんじゃないかと。 私ができないこと、苦手なこと。 それをみんなは普通のことのようにこなす。 私ができない英語。 みんなは当然のようにできる。 できない私がおかしいみたいな感じがする。 私が苦手なあの子。 みんなは笑顔で仲良くしてる。 嫌いな私がおかしいみたいな感じがする。 そんな全てが完璧な人たちに囲まれて生活してる。 きっと私がおかしいんだ。私ができなさすぎるんだ。 みんなすずしい顔してこなすことをもがき苦しんで結局こなせない私がおかしいんだ。 そんな、私からみたら素晴らしく完璧な人が当たり前の世界だ。 私はその当たり前ができなくて、苦手なことも嫌いなこともたくさんある。 ここは、当たり前な人がたくさん集まった社会だ。 そこで私は社会不適合者になる。 社会適合者に憧れながら、当たり前ができるように頑張る毎日。 でも上手くできななくて。泣いて、泣いて、また当たり前からかけ離れてしまう。 どんなに当たり前に取り繕っても、本物の当たり前には勝てなくて。また泣いて。 暗い気持ちを紛らわせるように明るく振る舞ってみて。その副作用で苦しくなったりして。 窓からは柔らかい日光が差し込んで。その光は私の心とは真逆で。 それがなんかおかしくて。ずっと笑っていた。  久しぶりに笑った気がして。 こんなしょうもないことで笑える自分に嫌気がさした。 そんなしょうもない休日が今日で終わってしまって。明日の学校が憂鬱。 寝て起きたらまた今日になってないかななんて考えてたらもう夢の中だった。 そして夢の中でも私は不適合者だった。

曇りがとれた眼

 私の目は、変わり者だった。  いつだって曇っていて、目の前の物がぼやけて見えた。  なんだか死んだ魚のような目をしてる、と言われたことは数えきれない。    死魚病だと診断された時には、思わず「そのまんまじゃねーか」と突っ込んだ。   「じゃあ、包帯とるよ」    結局目の手術を受けることになって、三日三晩かけて目を治した。  久々に開いた目は遠慮なしに光を取り込んできて、光量を落としているはずの部屋でさえ眩しく感じた。   「おっと、ごめん。眩しすぎたね」    先生が焦った様子で、さらに部屋を暗くしてくれた。   「大丈夫です」    私は目を閉じ、掌で目を覆いながら、目をゆっくりと開けていく。  指の隙間から入ってくる光の量を増やし、じっくりゆっくり目を慣らしていく。   「どうだい?」 「少し違和感はありますけど見えます」 「それはよかった」    ぼやけていた先生の輪郭が、くっきりはっきりと見えてくる。  つるっとしていた先生の顔に、ぼこぼこと穴が開いているのがわかった。   (これが、授業で習った目とか鼻ってやつかあ。顔に穴が開いてるなんて、気持ち悪)    初めて見た人間の顔は、思いのほか気持ち悪かった。  喜んで私の手を握って来るお父さんお顔もお母さんの顔も、気持ち悪かった。  鏡を見て映っていた私の顔も、当然のように気持ち悪かった。   (これは、慣れが必要だなあ)    友達と悪ふざけで、男の人の裸が映った動画を見た時以来の衝撃だ。    まあ、問題はないだろう。  私も子どもじゃないんだから、いつかそういうものだと割り切れるはずだ。

商売人

 ある夜、極秘の海路を使って、異国の商人たちが俺たちの国の市場を訪れた。異国の商人たちは、大量の塩を買いたいと言った。あれ……確かこいつら……。異国の商人たちは、袋から金貨を取り出した。その金貨には、ナメクジの姿が刻まれていた。ああ、そうだ、こいつらはナメクジの王に統治されている国の連中だ。そいつらが塩を買いに来た。クーデターでも起こすのだろうか。俺は値段を目いっぱい釣り上げて交渉した。異国の商人たちは少しも値切ることなく、ナメクジが刻まれた金貨の山で、大量の塩を買っていった。そしてそれを積んだ船で帰っていった。数週間後、あの連中と塩が乗っていた船が、帰国途中で沈没したというニュースが伝わってきた。あれだけの塩を積んでいたのだから、海の塩分が少し濃くなっただろうという冗談が流れた。そして俺たちはいつものように、我が国の女王であるアリのために、異国へ砂糖を買い付けに出かけた。

ネジ人間の闇

 朝の電車に乗っていた。座っている俺の目の前に、一人のおっさんが立っていた。ニコニコ笑っている。そのおっさんは、首が銀色で、溝が刻まれていた。あっ、ネジ人間だ。珍しい。俺はそれを見た瞬間、前々からやりたかったことをやった。つまり俺は、そのおっさんをとっ捕まえ、首をぐるぐる回して、外してやったのだ。おっさんの顔はそれでもニコニコ笑っていた。俺は達成感を感じながら、ふと、おっさんのネジ穴を覗いた。そこには、深淵の闇が拡がっていた。おっさんはニコニコ笑っている。俺は、そこで初めて、自分のやったことが恐ろしくなった。

     の絵

 街中に一つの絵が飾られていた。それは、なんでもないリンゴの絵だった。なんでもない絵だから、誰も見ない。皆の足は止まらない。そんなガラクタ、飾っておく価値なんて、どこにある?  とうとう疑問に駆られた私は、白いペンキを絵の上半分に塗りたくった。少しずつ絵の具が染みだして、白い雨をつくっていく。  ――やめて……  刹那、声が聴こえた。切ない、弱々しい声。けれども、それは頭をつんざくような叫びだった。  ――まだ、ダメ……  その声は、周囲の人間から発せられたものではなく、騒音でもない。 ふと思った。絵だ。根拠なんて何一つとして無いけれど。でも、わかった。 絵がしゃべっている。今、白く染まりつつあるこの絵が、この額縁が、私にだけ聴こえるように訴えている。  ――ワタシは約束した。ワタシの親と。これは1000年を生きる代物だと。だから、ワタシは千年後まで生き残らなければ……  カタコトの声だった。覚えたての言葉を使って、必死にしゃべる無垢な赤ん坊そのもの。しかし、結局はそれも、とある絵画のたわごとでしかない。だから、言ってやった。 「千年後まで残るわけがない。この世には、天災だとか、人災だとか、そんなものばかり。とにかく! いつ変なことが起こるかも分からない世の中じゃ、どこぞの誰かが描いた絵の命なんてたかが知れている」  ただでさえ、今のあなたを見ている人なんていないのに。私の口から思わず、ため息がもれていた。  ――でも、あなたは見つけてくれた……  反射的に、心が身構えた。  違う!  でも、その言葉は声にならなかった。ただ宛もなくフラフラとさまよって、消えるタイミングを考えあぐねていた。  ――ワタシは確かに、誰にも見られていないかもしれない。でも、そのことをあなたは見つけてくれた。誰にも見られてない私を、あなたはどうにかしようとしてくれた。今この瞬間にも、きっとワタシの産まれた価値はある……  絵画の言葉に迷いはなかった。迷っているのは、私の心と手の動きだけだった。  世間の厳しさや後ろ暗さにけおされて、どうにも恥部をさらけだしているような。そんなむき出しのあなたを見ているのが、つらかった。こう言えば、聞こえはいいけれど。本当は、あのなんでもないリンゴの絵に、たった一つの救いを見出だした。こんな自分の感性だとか、心だとか。そういうなにか大切なものまで、一緒に否定されているようで憎かった。かなしかった。ただどうしようもないほどに、やるせなくなっていた。  私は、サラシモノになんかなりたくない!  でも、それでも。どうしたって、あなたは……  こちらに向かって、ドシャドシャと好奇の目が群がってくる。だんだんと周囲は、やけに騒がしい。 「知らないからね」  ポツリ、私は叫んだ。絵の声は、もうなんにも聴こえなかった。  バシャっと、ペンキを投げ捨てた。それから、ただ人目をはばかるように歩いた。あとに残ったのは、上半分が白く染まった一つの絵画。そして、今まさに立ち止まるかどうかを悩んでいる、誰かの足音――。

無法遅滞

itaiituninarebatadasikutokiwasugiru kyouwadaijyoubuasuhazetaikanautoiwa rehayahantosisahodohenkawawaruihoda ketouzenoyouniugokumuhoutitainaniga aidaseigidawarawaseyagaruminatemeta tijyananimoiwanaigizentousonisitaru monobakariwatasinoeneruginasijyatou sensaekanawanaiseijikatatimatakukud aranaimoudaremokonojyoutaigaugokuma denanimositeyaranaizoonsirazunamono domosukosiwatemeenojituryokudeugoke

良い商品

 ああ、そうだ、夫を処刑しなきゃ。そう考えながら買い物をしていた時、タッパーウェアを買うために立ち寄った百円ショップで、ギロチン台が売られていた。百円だ。まぁ、これでいいかな。タッパーウェアとそのギロチン台を買って帰った。その夜、夫を処刑した。百円ショップのギロチン台だから少し不安だったけど、きちんと夫は処刑できた。夫は苦しむ間もなく首を切り落とされた。最近の百円ショップは優秀だ。一昔前なら、きっと百円ショップのギロチン台では、うまく首を落とせないで、夫は苦しんだだろう。後片付けをしながら考えた。でも、私が見たかったのは、苦しむ方だったな。

白日戦隊!ホワイトレンジャー✟【雪の結晶】

寒い冬の日 空から雪の結晶が降っている 怪人は空を見ていた 彼はホワイトレンジャーに敗れ ボロボロで動けない体を地面に横たえている 怪人は雪を眺めながら自分の中の世に対する怒りが消えていることに気付きはじめていた とても不思議で心地よい感覚だった 目を閉じてホワイトレンジャーとの戦闘を思い出す 何故だか猛烈に誰かに甘えたくなった     ✟ ホワイトレンジャーの基地には沢山のスタッフが業務に当たりホワイトレンジャーに戦闘以外のサポートを行っている その中の情報管理部では戦闘後に関係者各位にメールを送信する 勝敗とその詳細についてだ ホワイトレンジャーの戦闘スーツとマシンに搭載されたカメラにより、戦闘の状況を細かく記録できる ただ記録はトップシークレットにあたるため、情報管理部が文章化しそれをメールしている 情報管理部の記録映像を確認していた一人が部長のデスクへ向う 「部長。これを見てください」 差し出された映像には戦闘の様子が映っている。部長は概ね部下が何を言いたいのか分かっていたが、あえて気付かないふりをした 「これがどうしたの?」 「よく見てください!ここのシーンです」 映像には怪人が倒れている この直前に大きな攻撃を受け吹っ飛んだ後だ 起き上がる様子はない 「この後です」 部下は声を落とし重大さをアピールする 映像にはホワイトレンジャーの五人それぞれの武器が一つになり、そこから強力なエネルギー砲が放たれる 身動きしない倒れたままの怪人に。 「明らかに過剰攻撃です」 強く訴えかける彼の正義心が否応なしに伝わってくる。部長は内心ため息をつく 「うん、確認した。…次の会議で運用部に突出してみるから詳細をまとめて送ってくれるかな」 部下は張り切った顔をして自分のデスクに舞い戻る。良い仕事をしたぞという顔をして。 目の前はPCに顔を突き合わせている部下達が黙々と自分のタスクをクリアしていく。 今から目をそらしたかった 窓を見ると空から雪の結晶が降っている 白い雪の結晶が。

ビー・マイ・ベイビー

 一人の女がベビーカーを押しながら歩いている。昼下がりである。女のベビーカーの中には赤ん坊はいない。赤ん坊ではなく一丁の拳銃が入っている。女は公園に着く。そこでは幼子の母親たちが談笑している。女はベビーカーの中の拳銃を取り出し彼女らに近づく。「皆さん幸せですか?」

黄金色の絶望

早く2026年のデカイ天変地異起きないかな 準備は多分満点何時でも逝ける心残りは穴子 刺身と鮟肝に鰭酒もう一度呑位は呑みかった 美味しい食べ物は裏切らない以上一瞬の幸を 与えてくれるから今夜も美味しい物の尽くし さぁ~此れで思い残す物等何も無い何時でも 来いさぁ~殺せとうぬぼれ刑事の長瀬智也を 気取り朝迄呑もうかその内迎え来る天変地異 心待ちに望みながら完

殺人犯はどっち?

「むかついた相手って、殺せたらいいのに。」 私は、意外と人にむかつきやすかった。 あるとき、空き教室にそいつを呼び出し、ナイフで襲った。 両手には手袋、口にはマスク。完璧。 グサッと鈍い音がなった。 急所を刺したみたい。いい気味。 そいつが苦しんでる間、死体と血をどうしようか考えた。 でも、相手は生きてた。 私を、刺した。 私は、何の対策もしていなかった。 相手は、私が死ぬ前、「あんたが予告してたじゃんw」… してない。 地獄で、思い出した。 ....私は、二重人格だった。

失恋

友達と好きな人が被った。 とても、言えなかった。 ある日、友達が告白した。 「好きだけど付き合えない」 でもその時「やった。」とは思わなかった。 私にも人の心はある。 振られた友達に共感した。 でも気づいたのは遅かった。 私は失恋していた。 相手は友達のことが好き。だけど相手は噂が立つといけないから振った。 心が、凶器で刺された。 深い傷が残った。 一生、残るだろう。 深い深い、涙の傷が。

傘を二本差す

 ああ、不安だ。  入院するのが不安だ。  生活習慣病にかかるのが不安だ。  癌になるのが不安だ。    だから、手あたり次第の保険に入った。  これで、何が起きても安心だ。  そう思っていた。   『今の貴方がやっていることは、雨の中、傘を二本差しているようなものです』    AIの言葉に、頭をぶん殴られたような衝撃を受けた。  身を守る道具は、あればあるほどいいと思っていた。  持ちすぎも良くないなんて価値観に触れたのは初めてだった。    思えば、鎧を二重三重に来ても、重すぎて動けないだけだろう。   「解約します」    臆病な心だと思っていた何かが消えていき、ぼくは保険会社に電話をかけた。