ホットココアとお団子と私

暖かくなるのはいいけれど、 ホットココアを美味しく味わうんだったら、 春にはもう少し隠れててもらわないとなあ。気配ごと。 待ち遠しいことに変わりはないけど。 クローゼットの奥の春物コート。 淡く頼りなさげなその軽さに、季節が変わりゆく。 肩に強いる厚くて重いそれを遠ざけ、 通すパステルの袖はすこぶる軽快に。 腕のまわりがやけによくなって、スポーツ選手のマネごとを。 なあんてね。 じっと座ってお団子でも食べてるくらいが、いまの私には性に合ってる。

雨音だけが響く

「こんなところで、なにしてるの」 「雨宿り」 「家すぐ近くじゃなかった?」 「家の鍵、忘れたから」  嘘だった。  単純に家に帰りたくなかったから。  毎日のように口論しているあの二人は、いつになったら離婚するのだろう。  そう遠くない未来には離れて暮らすようになると予想している。  そして、私の親権を持つのはどちらになるのかなと、先のことを考えてみたり。  憂鬱だった。  学校帰りのこの時間が一番。  はやく、時間が過ぎ去って明日になればいいのに。  そうなれば、また学校に避難できる。  などと、ぼんやりと脳内で愚痴っていると、さっき声をかけてきたクラスメイトが、おもむろに隣に座った。 「え、なに?」  そこまで親密でもないのにと困惑する。 「おれ、雨の音を聞くのが好きなんだよね」 「……そうなんだ」  会話が途切れる。  無難な雑談しようにも話題が思いつかない。相手の趣味趣向も知らないし。  けれど、雨音だけが響くこの空間は気まずくなかった。  むしろ、居心地の良い沈黙だった。  家にいる時より、比べ物にならないほど。  ――――――  お題:「雨宿り」「鍵」「嘘」

俺たちにラッキースケベが起こる方法を真剣に考えてみようじゃないか

 旧校舎の一室。  お化けでも出そうな雰囲気から、普段は誰も近寄らないこの部屋に、三人の男子生徒が集まっていた。    佐藤、鈴木、そして高橋である。   「テーマはさっき話した通り。どうすれば、俺たちにラッキースケベが起こるか、ということだ」    真剣な目つきで、佐藤が言う。  同意をするように、鈴木と高橋が頷く。  三人はしばし頭をひねり、その理由を考える。  しばらくすると、鈴木が挙手し、口を開く。   「漫画やアニメだと、登校中に可愛い女の子とぶつかって、その勢いでラッキースケベが起こる、というのがセオリーだ。登校の回数を増やしてみる、というのはどうだ?例えば、学校が休みの日も、学校に登校するとか」   「鈴木!お前は天才か!?」   「いやまて佐藤。鈴木の提案には、致命的な欠点がある!」    拍手をする佐藤に、高橋が待ったをかける。   「休みの日はな、可愛い女の子が登校していないということだ。だから、ぶつかることができない!」   「「た、確かに!!」」    議論は白熱する。  次々と現れる、漫画やアニメのセオリー。  そして、現実に当てはめた瞬間、実現不可能だという残酷な現実にぶつかる。  有益な案が出ないまま、一時間が経過した。   「馬鹿な……ここまで考えても……駄目なのか……」    突風でスカートが捲りあがる。  女の子が転んでスカートの中が見える。  階段を見上げたらスカートの中が見える。  制服が水にぬれてスケスケになる。    あらゆる状況が、所詮は漫画やアニメのことだと切り捨てられていく。   「なあ、おかしくないか?」    高橋が、神妙な表情でつぶやく。  佐藤と鈴木は、そのただならない様子に、ごくりと唾を飲み込む。   「あまりにも、完璧に防がれすぎている。何か……俺たちにラッキースケベをさせない、大いなる力が働いているのではないか?」    あまりにも突拍子もない想像。  だが、佐藤も鈴木も、それを笑い飛ばすことはできなかった。  大いなる力など信じないが、大いなる力が働いているとしか考えられないほどの、ラッキースケベの防止力が現実として働いているのだから。   「いったい……」   「どんな力が……」   「女子の純粋な努力だよ!!あんたらみたいなやつがいるからな!!」    叫び声と共に、部屋の扉が乱暴に開かれた。  逆光によって三人から顔は見えないが、そのセーラー服から、女子生徒であることはわかった。  その女子生徒は、間髪入れずに三人のところへ走り、その顔面に蹴りを喰らわせる。   「げふっ」   「がふっ」   「見え……ない……」    漫画やアニメならば、蹴られた瞬間にスカートの中が見えただろう。  だが、ここは現実。  大いなる力によって……否、スカートを抑えながら蹴りを繰り出すという女子生徒の純粋な努力によって、ラッキースケベは回避された。   「んっとに、この変態どもは!!」    罵声一つ残し、女子生徒は去っていった。

湿った朝日 (掌編詩小説)

湿った朝日がこちらを照らす 眩しいとまでは言わないが もう少し眠っていたい これは、今日と言うものが始まったと言うことだ 今日私には、とある用事がある 単純な事だがめんどくさいのだ だからこうして 万年筆を滑らせ現実逃避を続けている 湿った朝日がカレンダーを滲ませ、新たな日数を刻む 今日は晴れ。用事がある日にはやはり、晴れに限る 何日後に雨が降るのだろうか 何もない日が雨ならば、私にとって喜ばしい事である 雨は美しい。雨は私を内向的な世界へ連れて行ってくれる 限りなく朝に近い夜 私の独白はひとまずここで、終わりを告げる (完)

フリーバグ

「フリーハグいかがですか?」    コンビニに行った帰り道、一人の女性が立っていた。    フリーハグの存在は知っている。  なんか、ハグしてくれるらしい。   「いいですか?」 「もちろんです」    名前も知らない人との、数秒間だけのハグ。  少しの緊張と、少しの温かみを感じた。   「ありがとうございます」    ぼくはそのまま彼女と別れ、会社に戻った。  どことなく、心がぽかぽかと温かかった。             「先輩お帰りなさい! バグ、三件増えました!」 「フリイイイイイバグウウウウウウウ!!!!」    温かい心のまま、体のエンジンを全力でぶん回す。  俺たちの徹夜はこれからだ。

西の街から

乗り換えの駅の奥行きに 自分はどっちに行けばいいのかと 人の首の動きもそれだけ多くなる それは、わたしも同じこと 初めての土地 戸惑うばかり 人の多さは、車内も変わらなくて その人の多さと慣れない車内のにおいに 足元がおぼつかなくなる アパートの隣にはイチョウの高い木があって でも、その木が黄色く光っている様を まだきちんと想像するなんて難しい いまの緑の葉っぱだし 入学式までは、まだ幾日か 夕陽は、高台の大学からよく見え 地元とすこしもかわらないその表情は、この先もきっと あの人はどうしてるかな 考える余裕は、まだないけれど とりあえず、わたしは元気です

夜更かし中 (掌編詩小説)

寝る姿勢がわからなくて、夜更かし中 いつまでも寝返りを打つ 寝る時間がわからなくて、夜更かし中 気づけば朝の4時半 枕の位置がわからなくて、夜更かし中 左右に動かして頭の落ち着く先を探す 明日が怖くて、夜更かし中 ずっと夜でいいのに (完)

花見に上野でも行きたいが上野が来いと思う

 桜の季節。 上野にでもブラっと桜でも見に行こうかと思ったがむしろ向こうが来るべきだと、勝手なことを考える。 頭の中お花畑。 与えられてばかりの人間はこういう思考になるのだな、と自己分析。 桜舞い散る季節。 上野は男娼の街らしい。 バラの季節にもなる。 近所のバラ園行こうかな、などと考える。 薔薇の園。 お花屋さんの百合は高い。 犬のユリちゃんは元気だろうか? テッチャンとメイちゃんも元気だろうか? 犬の花見は続く。

家の裏のパチンコ屋に行きそこにいたお兄さんと話す

 パチンコはやらないが(何か知り合いにやって儲けてそうと言われた)その喫煙所にいたお兄さんと話す。 今日は女の子に嫌われたかもしれないと話すと笑いながらどうしたのと?言われる。 何か都心の郊外で農業の仕事やるのは最先端らしいんですけどね、人手が足りなくて、と言う。 お兄さんは奥さんを連れて何処かに行く。 今日もご飯を食べられるのがありがたい。 近所の隣家では子供がはしゃいでいる声がする。 これで朝鶏でも鳴けば風情が出るなぁ、と思う。 何か今日は花粉症にでもなったのか鼻がズビズビ止まらない。 体調はいつも悪いのだが皆悪いのだと言い聞かせる。 弱っているのは身体ではなく心なのかもしれない。 コロナワクチンを打ったせいで脳がアナログとデジタルの中間の中国人みたいな思考になっちゃってる気がするんですよね、とお兄さんに言った。 まあ中国人になっちゃってもいいんだけど、と知り合いに言うと目指せ中国化、と言われる。 料理と武術と哲学の得意な中国人になりたい。 心は優しいままで。 漢民族は元々農耕民族なので農業をやるにはいいかもしれない。 まずは土作りから。 台湾の知り合いに手作りのお弁当を見せたらいい嫁来るよ、と笑顔で言われた。 中国の知り合い増やしたい。 団地で秋葉原の電器店に寄ってきてマイナンバー作りたいんだけど、と言ってきたあの中国の人はあの辺に住んでるんだ、と言っていた。 新宿の華僑のお店の中華屋さんで知り合いと飯を食い、美味しかったです、と言ったら笑顔で返してくれた。 環境なのか遺伝なのかは知らないけどちょっと前頭葉の機能が弱いです、と言われた。 今漢民族というかいわゆる中国人と言われる人達は遺伝子プールが片寄っちゃって前頭葉の機能が弱まっちゃってるらしい。 キレやすいのはそのためかもしれない。 ゴミ拾って列にならんで万引きしないで風呂入って歯磨いて歯医者行って電車では静かにしていて悪い事したら謝ってでも家では他人の悪口を言って歌歌ってゴミ出しして挨拶して落ちてる財布届けて交通ルール守ってちょっと帰り際自転車でながら煙草してたらチン!って言われて反省してでも煙草やめられなくてお酒飲まないで教会通ってモスク行ってヒンドゥー教の寺院も行かなきゃと思っていて社会性って習慣だよな、と思って歌を誉められて僕はちゃんと生活出来てるだろうか?と自問自答する。 今日も夜はふける。

判決なんてない

ああ、助けて。助けて。 誰も助けてなんかくれないのは、知ってるけど。 地獄は、いつでもそこにある。 目を向けるか、向けないか、それだけ。 隣にある。 ここにある。 私の中の裁判官たち。 正しいこともなく、間違っていることもない。 それでも彼らは、ずっと私を裁き続ける。 私を悩ませる、私の司法。

夢見るカイコ

 私は「カイコ」という生き物らしい。いつもくわの葉を与えてくれるあなたが、誰かとそう話しているのを聞いたことがある。  カイコは、美しい純白の羽を持つという。確かに私の身体は白いけれど、羽なんて無いし、なんだかうねうねしている。  私にもいつか、羽が生えるかな。  大きくなれよ、とあなたの声。  私、きっと大きくなるね。  返事ができないのがもどかしい。  生まれてから一度だけ、くわの葉をくれるあなたの指に触れたことがある。  あなたはすぐに引っ込めたその手を、その温度を、どうしても忘れられない。  その指は、触れるとちりちりと皮膚が燃えるように熱かった。多分、ずっと触っていると、焼けて死んでしまうんだろう、と思う。    でもその時、他に感じたことのない温かさを覚えてしまった。  仲間といくら身を寄せ合っても、桑の葉をお腹いっぱい囓ろうとも。どんなに満たされた気分でも、あの焦がれるような熱には遠く及ばない。  いつか、またその手に触れられたなら。その温度に包まれたなら。  私は、その熱で燃えて、溶けて、死んでしまってもかまわない。  いつか私に羽が生えたなら、迷わずあなたの所へ飛んでいこう。  なんだか最近、身体が重い。たくさん食べて、何度も脱皮して、ふくふく大きくなったからかな。  疲れてきたら、背中を反らせてのびをする。こうすると少し、重い身体が気にならないから。  少し時間が経ったかな。身体がむずむずしてきて、たまらず糸をはく。真っ白で、か細くて、弱々しい糸。  そういえば、いつかあなたが言ってたっけ。カイコは繭にこもって、それから羽が生えるんだ、って。  たくさんはいた糸を、くるくる身体に巻いてみる。なるほど、確かに心地良いかも。  巻いて巻いて、だんだん外も見えなくなってきた。少し眠くなってきて、できたての繭のベッドでまるくなる。  疲れと、安らぎと、少しの誇らしさを胸に抱いて、うとうと目を閉じる。  目が覚めたら、羽が生えてるといいな。    それから私は、長い眠りについた。  やっと生えた、大きくて美しい、真っ白な羽。ひらひら空を舞って、迷わずあなたの元へ。  大きくなった私を見て、差し出されたあなたの両の手のひら。嬉しそうに、手に乗った私を包んでくれる。  ああ、この熱だ、この温度だ。ずっと、こうして触れたかった。やっと叶ったんだ。  でも、初めて触れた時の指先なんて忘れてしまうほど、焼けるように熱い。本当に身体が溶けていくみたいだ。あつい、あつい、あつい。  でも、待ち望んだ願いが叶ったことが、それだけが、たまらなくうれしい。  ぐらぐら茹だるような熱に浮かされ、考えがまとまらなくなっていく。意識が遠のいていく。  きっと、あなたの手の中で迎える最期。  なんだか、夢を見ているみたいだ。 ◆  今日は、繭になって数日経った蚕たちを煮て、絹糸を採る。  湯気の立つ白い山の中から、一匹分の繭を手に取る。真っ白で、繊細な、生命の結晶。     美しいそれを手のひらに乗せると、一生懸命に葉を囓り、あっという間に大きくなった愛らしい幼虫たちを思い出す。  この子たちは、どんな思いで生きたんだろう。最期の瞬間は辛かっただろうか、苦しかっただろうか。堂々巡りの問いを、頭の中で反芻する。その答えは、目の前の蚕たちしか知り得ない。  せめて安らかに、美しい織物として、その生涯よりうんと長い間、大切にされることを祈る。  手のひらの繭を、優しく包み込んで。

don't you worry@平日の遊園地

@平日の遊園地 目の前で子供にジャンバーを着せる母親がいる。着せられている子供は満足げだ。母から愛情を受けている事を感じているのだろうか。隣の弟は自分の番をけなげに待っている。 スーツケースを引きずるオジサンがスマホを見ながら通り過ぎる。傷だらけのスーツケースは使い込んであり、オジサンの扱い方も雑だ。オジサンの歩く速度が速いせいで、スーツケースは時折跳ねながら引っ張られている。何をあんなに急いでいるのか? 椅子に座っているオジサンはスマホから目を離さない。目の前で大声で話しているのに気にならないのか。 曇り空の下、遊園地のイベントスペースでウォーリーとユウの二人は漫才をしている。 平日の遊園地でも人はそれなりに入ってはいるが、彼等の目の先はジェットコースターやメリーゴーランドなどの乗り物に向けられ、漫才をしている二人の前をを足早に通っていく。足を止めてこちらを見ているのは鳩くらいだ 「いい加減にしろ!」 「どうもありがとうございました」 何とか持ち時間を使い果たし、ステージを降りて楽屋に舞い戻る。現実から逃げたいのか少し駆け足気味になってしまう。 楽屋と言っても白いテントが用意されているだけで、電気ヒーターなど暖房はない。 「お疲れ様。良かったよ」 モノマネ芸人のエイトビード武さんがウォーリーとユウを指をさして褒めてくれた。 「ありがとうございます。でも、誰も聞いてなかったでずけどね」 「俺初めてですよ、鳩に向かって漫才するの」 とウォーリーが言うとエイトビード武さんが大きく笑った。そして「俺はよくあるよ」と言ってステージへ向かった。 最近分かったことだが、楽屋で褒めてくれるような先輩芸人さんは本心で言ってくれているようだ。この世界もいろんな人がいる。ただ生き残っている人は決まって人格者ばかりな気がする。勿論、大スターなどに会ったこともないが、大スターと若い頃よく飲みに行ったと懐かしむ芸人さんたちはたくさん会ってきた。 彼等は大スターほど面白くないし金も無いが、とても優しい。 ウォーリーがスーツを脱ぎジャージに着替えている。 「俺、ちょっと散歩してくるわ」 「うん」 「次は何時だっけ?」 「次は二時。その次が四時」 「オーケー」 ウォーリーが楽屋を出ていった テントの外は楽しそうな声で溢れている。先輩のエイトビードさんはどんな顔して芸をするのか袖から見てみることにした。 @二人きりの打ち上げ 「お疲れ」 「お疲れさま」 「いやぁ、受けたなぁ」 「どこがだよ」 ステージが終わった帰り、家の側にある居酒屋に二人は寄っていく ウォーリーは酒があまり強くないので、温かいお茶と焼き鳥の盛り合わせを食べていく。 ユウはハイボールを飲み、ツマミは食べない。 「俺さ、あの遊園地初めて入ったよ」 「そうなんだ」 「知ってる?あそこステージがもう一個あるの」 「えっ…あぁ思い出した。子供の頃仮面ライダーショウを見に行ったよ」 「今日もやってたよ。仮面ライダー」 ネギマのネギが串をスライドしてウォーリーの口に入っていく。 「へぇー」 「あのさ、汚いスーツケースを引いてたオッサン、覚えてる?汚い格好をしてさ俺らの前を急いで通ったじゃん」 「うんうん。スマホ見ながら歩いてた人。僕たちの漫才を一瞬も見なかった人だ」 「そうそう。それそれ」 ハイボールの味が少し苦い 「その人が?」 「その人が仮面ライダーだった」 「マジで?」 「マジ。向こうの楽屋入って行ったから」 「ダメだろ」 「なんかいい人だったよ。昔はテレビとか映画にも出てたらしいよ。それこそ仮面ライダーで出たこともあるんだって」 「すごい人じゃん」 「そうなんだよ。あの映画の仮面ライダーで、昔の仮面ライダーがウジャウジャ出るときあるじゃん。あれ」 「へぇ。スーツアクターなのかな」 「さぁ分かんないけど」 ユウはウォーリーが何を考えているか分かっていた。ユウも同じ事を考えていた。ユウは舞台袖で大いに笑ったのでよく分かっていた。 エイトビード武さんは、あの環境でお客さんをドカドカ笑わせていた。 目の前のお客さんに話しかけるように笑わせていた。まるでお笑いで会話をしているような感じだった。 エイトビードさんがステージを降りるときは客席が埋まっていた。 二人はいつか俺たちも。と考えていた。

【検閲済】による異形化について

異界監視センターよりお知らせです。  近所や親戚に、青い目をした子供はいませんか?  絶対に瞳を覗き込まないでください。 【検閲済】を視認してしまう可能性があります。  以上の状況が当てはまる場合には、速やかに当センターにお知らせください。 「お前の目は、本当に綺麗だな〜」  リョウは赤ん坊を抱いて、デレデレと笑っている。出産を終えたばかりのアカリを置いて、ずっとあの調子で可愛がっているのだ。まぁ、世話してくれるからいいけどね……とアカリはソファの上であくびをした。  生まれてきた娘は、日本人とは思えない青色の目をしていた。眩しいほどの青、勿忘草色。光が当たる向きなどによって、水色やら紺色にも見える。まるでスパンコールだ。  けれど、夫婦にとっては娘の目が何色だろうと構わなかった。検査でも100%2人の子供だったし、何より見目が美しい。娘の目を覗き込んでいると、小さいころ万華鏡で遊んでいた時のような、うっとりとした気持ちになるのだった。  にしても、今日のリョウは娘に夢中になりすぎだ。お互いの目を見つめあって、もう軽く1時間は経っている。アカリは娘が泣き出さないからいいか、とほっといていたが、いささか不安になってきた。初めての子なのでよくわからないが、赤ん坊というのはこんなにも大人しいものだっただろうか。 「ねぇ、リョウさん。そろそろ寝かせた方がいいんじゃないの。リョウさん?」  きいてみても、リョウは聞いているそぶりも見せなかった。娘を両手でしっかりと抱いて、離そうとしない。当の娘はぽかんと目を見開いて、瞬きもせず、父と母の顔を見比べるだけだ。アカリは急に、二人になんとも言えない気持ち悪さを感じた。  途端に、娘が耳をつんざくような泣き声を上げた。この小さな体から出しているとは思えないほど、凄まじい絶叫だった。アカリはびっくりして、リョウの腕の上から娘を抱いて支えた。  そこから起きたことは一瞬だった。リョウの体はあっという間に、熟れきったバナナのように真っ茶色になった。そして肌がボロボロと崩れ、娘を抱いていた腕、瞳を覗き込んでいた眼球までもが、ぐずぐずになって床に落ちた。  気づけばアカリの前にあるのは、腐った肉の塊だけになっていた。まだ生きているかのように、モゾモゾと動き続けている。娘はアカリの腕の中でケロッと泣き止み、無邪気に笑顔を浮かべた。父だったそれを、美しい目でじっと見下ろしながら。  異界監視センターより 2.30.異形化事件について  堀越リョウさん 自宅で突然全身が腐敗、身柄は当センターにより保護  犠牲となった方々に、祈りを捧げましょう。  追記  対象者の娘を預かっていた職員3名が異形化(詳細は3.9.異形化事件として別紙に記載)。  進展があり次第、追って報告いたします。

アイデア避雷針

 頭の中にアイデアが浮かんでくるとき、雷が落ちてきたような衝撃がある。   「閃いた!」    だから、避雷針を作った。  もちろん、ただの避雷針ではない。  雷が落ちてきたような衝撃だけを、周囲の人間から奪う避雷針だ。   「おおお! 来た来た来た!」    数日に一回しか落ちてこなかった衝撃か、一日何度も落ちてくるようになった。  一日何度もアイデアが浮かんでくる。   「ひょーっほっほっほ! 発明が止まらぬわ!」    発明品がどんどん積み上がっていき、なんども国から表彰された。  私の名前は一気に世界中へ広がって、金もどんどん入ってきた。  もちろん、入ってきた金は全て、開発費用へ。       「オワタ」    しかし晩年、めっきり雷が落ちてきたような衝撃を受けなくなった。  理由は単純、少子化による人口減だ。  雷が落ちてきたような衝撃は、若者ほど多く落ちて来る。  そして、そのエネルギーは時にアイデアと呼ばれ、時に一目惚れと呼ばれる。    私が避雷針によってエネルギーを吸い上げた結果、若者たちは恋愛力を失って、次の若者を生み出さなくなっていった。    金はある。  まだ発明できていないアイデアもある。  しかし、もう誰も発明品を求めない。   「……時間を巻き戻す機械でも作るかのう。落ちてこい! アイデア!」    過去の失敗を取り戻すため、今日も私は頭を捻る。

百点止まり

「すごいわね。また百点よ」    返ってきたテスト用紙に、もう感動することはなくなった。  なにせ、テストは百点までしかない。  どれだけ速く解こうが、どれだけ丁寧な字で解こうが、百点なのだ。   「百点なので、今回のお小遣いは一万円でーす」    だから、もうお小遣いが上がることはない。  取れて当たり前の百点。  絶対にとれない百一点。    もはや今、勉強を頑張ろうなんてモチベーションはなくなった。       「うちの子、昔は神童って呼ばれてたんですよ」    子供の頃のことを、両親は今でも懐かしそうに話す。  百点満点だった神童は、点数上限のない世界に放り出された瞬間、ただの凡人へと成り下がった。    テレビに映る、輝かしい経歴の持ち主たちを見るたび思う。  彼らはどうやって、百一点をとってきたのか。  彼らはどうやって、百一点をとる方法を見つけたのか。    もはや、考えても意味のないことなのだが。    一度きりの人生で、百一点をとるタイミングを、とっくに見逃してしまったのだから。

No Title

私を、ぼくを縛らないで 足が、あしがうごかない、たすけてたすけてたすけてたすけて ___はあ。 今日という1日が自分にとって価値があるものなのか考えることすら放棄するようになったのはいつからだろう。今日が終わってまた明日…明日?こんなことなら明日なんていらない。いらないいらないいらないいらない ___ああ。 昨日と今日と明日の境目が分からなくなったのはいつからだろう。眠りにつくまでも酷く疲れて、目を覚ますのはもっとつらくて、絵を描くための最初の線すら引けず本を開いても記号ばかり。なにもすることがないな。……_え_い…………えて…しまいたい……… ___はあ。 それならば音楽を。思考停止中の頭を、置く場所のない心をただ受け止めて深く沈めてくれるんだ。あたたかい、あたたかい…。今週末には少し歩いて遠くまで…… ___眠ろうか。 もう、足は動くかい。それはよかった。

九月一日は

親友であり幼馴染の華織が死んだ自殺だった。  原因は部活内での虐め。 九月一日二時丁度に飛び降りる華織を監視カメラが捉えていたそう。  華織の部屋に遺書が置いてあったらしい、その内の一つが私宛の手紙だった。 「命へ  何にも言えなくてごめん。  命のことだから何か出来ることがあったはずって、自分を責めるかもしれない。  でもそんなこと絶対にない。  命は何にも悪くない、命と話す時間は楽しかった。  命、今までありがとう、私の親友で幼馴染で、側にいてくれて、命といたこの十数年楽しくて、幸せだった。私の心の拠り所で本当にありがとう。  約束『おばあちゃんになっても一緒にいる』守れなくてごめん、命、大好きだよ、ありがとう。」  これを読んで華織が死んで初めて泣いた。  心のどこかで華織が死んだことを受け入れなかったのかもしれない。  それからバレーボール選手という夢を捨て、教師になった。  周りからは反対された。キャプテンになる予定もあるのに勿体無いと。  それでも教師になりたかった。  今年初めて担任を持つ、緊張しながらもドアを開け、教卓に立ち自己紹介をした。 「初めてまして1年4組の担任になった朝野命です。  趣味はバレー、女バレの顧問もしているので是非入部お願いします。嫌いなことは虐めです高校2年生の時、親友が自殺しました。」  「私は親友みたいに死んでしまう子を、私みたいに置いてかれてしまう子を、減らしたくて教師になりました。」  「どんなに些細なことでも良いです。  少しでも苦しい、辛い、そう思ったら周りの人達を頼ってください。  友達でも教師でも親でも誰かに相談して溜め込まないでください。  私はこのクラスが助け合えるクラスになって欲しいです。  長くなってしまいましたが私の自己紹介を終わります」  もうすぐ夏休みが終わり、二学期が始まる。 「命先生」  後ろから私が担任を務めているクラスの一瀬沙希が話かけてきた。 夏休みの間、バスケ部に一度も顔を出していなかったそう。 「一瀬さんどうしたの?」 「ちょっと相談したいことがあって」  話を聞けば部活で3年生を中心に嫌がらせを受けているらしい。  そういう子を減らしたいと思っていても、出来ることは本当に少ない、私にできる最善は、一瀬さんを死なせないこと。  今、私は何をするべき? 九月一日は一年で最も『子供の自殺』が多い日。  

小さな絵師

部屋でスマホを見ていたら、いつの間にか外が暗くなっていた。現代社会では、経験したことがある人も多いだろう。1本1分で終わる動画でも60本見れば1時間の無駄遣いだ。1つのコンテンツを消費するのにかかる時間が少なければ、結果的に意味のない時間が過ぎても満足する。だから、30分のアニメを1.5倍速にして鑑賞したりする。ふと壁にかかった時計に目をやると、短針が11と12の間にある。 そうやってベッドの上の休日が終わる。そう、これは俺自身の話だ。 俺──青山は地元の高校を卒業して2年、アルバイトをしながら趣味で絵を描いている普通のフリーターだ。とはいっても、さっき話した通りバイトが休みの日は一日中ゴロゴロして、気が向いたら地元の友人と遊びに出かけている。 バイトの日も、ギリギリまで寝てるし終わった後もやりきった感を出して後は何もしない。じゃあ、趣味の絵描きって何かって? 月1くらいで筆を握って、キャンバスの上に子どもの落書きみたいな絵を描いてSNSにあげてるだけ。ずっとスマホばっか見てて頭がおかしくなりそうなときに、気晴らしに筆を走らせてるだけ。絵を描くのは嫌いじゃないから、それを趣味って呼んでるだけ。『#アナログ画』くらいつけてみて、ハートの横に1でも数字がつけば少し嬉しい、それだけ。 けど最近、少しだけ絵を描くモチベーションが上がってきている。フォロワーが1人増えたのだ。たかが1人、だけど俺にとっては大きな1。俺の絵に、 「誰にもマネできない筆の動きと色使い、見ていてとても楽しい気持ちになる絵です」 なんて言って必ず『いいね』をつけてくれる。 だから、今日もバイト前に筆を進めてから家を出た。ネタに困って一番最初に目に入った、部屋にある、なんてことないアナログの壁掛け時計の絵だ。 バイト先は近所の銭湯。主に清掃業務を担当していて、大浴場から休憩スペースまで、館内をせわしなく動き回る。仕事が一巡したら最初から…… 一番汗を流したいのは俺だ、と思いながらも接客は避けたいからフロントは嫌だし、暇する心配はないから性に合ってはいる。 3時間動き続け、1時間の休憩に入る。SNSを見て、自分の投稿を少しさかのぼっていたら、後ろから声がした。 「あ、あの、それ、ブルマさんの絵ですよね……」 驚いて振り返ると、ペットボトルを握りながら「あ、のぞき見したわけじゃなくて……」と慌てた様子でいるメガネの女性が立っていた。赤石だ。 彼女は同い年で大学生。バイト仲間だが、俺と違ってフロントメインだから仕事が被ることはほとんどなかった。彼女は休憩室に来ると誰とも話さず机に伏しているから、挨拶以外の言葉を交わすこともなかった。 「たまたま、たまたま視界に入っちゃったんです!青山さんのスマホ。そしたら、私が最近好きな絵師さんの絵が見えて、それでその、思わず声を……」 彼女は早口で必死に言い訳を口にしている。ほんの少し気圧される俺。しかし、大事なことは聞き逃さなかった。 「今、好きな絵師って言いましたか?もしかして、ブルマのことですか?」 「あっ、は、はい。ブルマさんです……。もしかして、青山さんもブルマさんを……」 聞き間違いではないかった。今目の前にいるのは、ほかでもない俺のファンだ。今まで誰かにSNSをやっているなんて言ったことなかったが、急な展開に俺の勢いは止まらなくなっていた。彼女にスマホの画面を見せ言い放つ。 「俺です!そのブルマ、俺なんです!」 2人の間の時間が一瞬止まる。少し離れたところで、俺の声だけ聞こえたパートのおばちゃんの時間がもう少し長く止まる。 この瞬間、交わるはずのなかった2つの色が混ざり、新しい色で物語を描き始めた。

sound52 しゃんしゃん

21時39分。ふうわりと風に揺れるのは、咲う星達と戯れる夜の帳。何処までも穏やかさを湛え、宵を見守る観客然とした月。ゆうるりと横たわる薄い雲は、煌めく夜空の読み聞かせに、うつらうつらと耳を傾けている。 ──しゃんしゃん、しゃん。 留紺色の幕をゆっくりと横切る、最終列車。乗客の細やかな雨達は、宛ら花弁を撫ぜるように、優しい手付きで世界を寝かし付けていく。

柿ピー食いすぎて夜ウンウン言う

 また暴飲暴食。 しょうもない。 眠い💤 眠い💤 旨い。 珈琲。 砂糖。 単語。 脳が回らない。 何かを頭の中で表現してそれを書き連ねる。 病む前に就寝。 いや、病んでるので就寝。 終身。 しないように。

my sweet darlin'

 中学生の女の子二人組が公園を歩いていた。二人は自販機の前を通り過ぎた。そして、自販機から少し離れた場所で、二人は言った。「あの自販機、かっこいいよね」「私もそう思う」すると二人の背後から、ガコン、と音がした。自分の噂をされた自販機が、くしゃみをして、その拍子に、ジュースを出してしまったのだ。二人はにやりと笑い、走って自販機の前に戻り、くしゃみで出たジュースを手に取ると、笑って走り去った。俺はベンチに座ってその一部始終を見ていた。俺は立ち上がり、その自販機の前に立ち、紙幣を入れた。その時、俺は自販機に向かって、にやりと笑ってみせた。そして缶コーヒー一本を買ったが、自販機はお釣りを出さなかった。自販機は決まり悪そうだった。俺は缶コーヒーを飲みながら、さっきの二人とは反対方向に歩き出した。

sound51 くるくる

──くるくる、くるり。 紙の上で踊る雨。文字通り、「雨」という漢字そのものが舞っている。覆い被さる雲の下で、自由気ままに燥ぐ四つの点。釣られるように雲の傘も、ゆらりゆらりと揺れ始める。 気付けば紙面は湿り気を帯び、じんわりと雨の足跡が滲み出した。

Working Class Hero

 夜、父がベランダから月を見ていた。「明日は仕事だな」そうつぶやいた。そして父は自分の汚い車から、汚い清掃用具を取り出して、玄関に置いた。翌日の朝、父は酒を飲んで、テレビを観て、それから、夕方、仕事に出かけていった。月をきれいにしに行ったのだ。私たちが夕飯を食べていたら、空からデッキブラシの音が聞こえてきた。母がテレビの音量を大きくした。明け方頃、父は家に帰ってきた。そして、酒を飲んで寝てしまった。私は明け方の空に浮かぶ月を見た。汚れが残っている。その汚れはウサギの形をしていた。なぜ父が汚れをわざとウサギの形に残すのか、そもそも父はどうやって月まで行っているのか。家族の誰も知らない。そしてそれを知ろうとも思わない。家族の誰も、そしてこの国に住む誰も、父にも月にも興味がないのだ。母によると、父の仕事の時給は、ここ千年、変わっていないらしい。

すばらしい日々

 冬が終わろうとしていた。おそらく最後の雪が降った朝、貧しい住宅街のブロック塀に、一体の雪だるまが置かれていた。どこかの子どもが作ったらしいと何となくわかった。雪だるまは解けかけていた。日が暖かかった。夕方頃、子もどたちが学校から帰る時間帯、今朝の雪だるまを見ると、傍に何かが置かれていた。色とりどりの何か。それは千羽鶴だった。どこかの子どもが折った物らしいと何となくわかった。千羽鶴の横で、雪だるまは今朝より解けていた。回復は望めそうになかった。冬が終わろうとしていた。

毒を摂取。毒も喰らえば栄養も喰らえばなんとか。そやな健康にいいものだけを摂るこれも健全とは言い難いな。そんな感じで今を過ごす。いいなこれのり塩のポテトチップ、のりがビールに合う。ちょっと一息、ポテトチップをたいあげる。自分は酒に強いほうではない。でも、酒飲まずにはいられない….。 音楽を聞く、グランジが僕の今の流行りだ。シャウトが聴こえる悲痛な叫び。レイン・ステイリーがダークな世界観を彩る。酔っぱらいに見られないように振る舞うアル中ではないと思いたい。酒豪になるには痩せ我慢も必要だ。アル中とは思われたくないが酒豪には思いたい。捻れている。言葉の違い。

真夜中の珈琲

「いいかね」 そう言って、鼻の長いおじいさんは、子どもたちを見回しました そして、居合わせた幼い顔のそれぞれに緊張の色を見てとると その長い鼻から小さく息を吐き、再び、話しはじめました 「そうそう、あれは、夜のことさ」 鼻の長いおじいさんは、深く濃い色をした液体の入ったカップに目を落としました 部屋の隅にある小さなランプの灯りが、豆を挽いたあとの香ばしい匂いとともに おじいさんの表情を奇妙にゆらしています 子どもたちは、おじいさんの手元とその影とを交互に見つめ、息を呑んで静まり返っていました 「いいかい、これはね、ある少女のお話だよ。わかったね。そうそう、少女のお話だ。その少女はね、夜中にしか開かない不思議な珈琲屋をさがしていたんだ。見つけたときにはね、もう外はとっぷりと暮れていて、星だけが少女を見守っていたそうだ。街灯も消え、誰もいない街の片隅に、その店だけがひっそりと赤い光を灯していたんだ」 おじいさんは、ふいにカップを持ち上げ、ゆっくりとした動作で口へと運びました その喉の動きを、子どもたちはじっと見つめていました 「少女がその店に入ると、店の主人は何も聞かずに一杯の珈琲を出してくれた。それは、星くずを溶かしたような、深く静かな、真夜中の珈琲と呼ばれているものだったのさ。一口含むと、昼間のさわがしさや、小さな悩みなんてものはすっかり消えて、心が夜空のようにおだやかになったそうだ」 おじいさんは、テーブルの傍らに置いておいた珈琲豆をいくつかつまむと その香りを楽しむように鼻先でゆらゆら漂わせました 子どもたちが見惚れていると、ふっと動きを止め、おじいさんは灯りを吹き消しました 部屋は、静寂と闇につつまれました 「さあさあ、夜は、まだまだこれからだ。その少女のように、静かな夜を楽しむといい」 暗いなかで、長い鼻の影だけが、物語の終わりを告げるように、静かにたたずんでいます―

拡大自殺❓️

少し前の某記事はその事件を記載してた私は 見出しに惹かれ読むと何て事無いストカーの 殺人事件と思えば男性が女性を刺した後己も 刺す思わず交互に刺す絵が浮かび器用な事で 余程痛みに強いのか度Mなか想像して仕舞い 不謹慎だが笑みが零れた何遣ってんのだろう 余程暇なのか自分を刺す度胸が有るんだから 普通に何処で1人ひっそり死ねば良いんです 以前から人間は刑務所入りたいと言い他人を 殺す癖が分かりません思わず関係無いジャン 何故無関係な他人を巻き込むのだろうか私は 以前勇気が無く死ぬ事冴えも叶いませんけど 災害天変地異の時は動じず大自然にこの身を 委ね消滅したいかも知れない

雪柳

春の陽気に包まれた川沿いの歩道には、剪定された植木が立ち並び、枝には白や黄色、紫の小さな花が咲いていた。老夫婦がゆったりと歩を進め、白色の花の前で立ち止まった。「雪柳ね」お婆さんが花に触れて言った。「でも雪柳は枝垂れに咲く花よね。こんな角刈りにされた植木じゃあ咲き辛いでしょうね」

誰かと遊んでいても鬱々としてくる

 皆で遊んでいても何処か心が虚ろだ。 真面目すぎるのかもしれない。 鬱になりかけなのかもしれない。 鬱はウイルス性だ、と言われて久しい。 元気無い人に頑張れって言うのは酷いな。 文章を打つ手が震えてくる。 ウァァ 僕は何者でもない。 そう自分を設定しているからだろうか。 弱っていくばかり。 タバコやめたい。 双極性障害。 何らかの化学物質。 違う星には高度な文明があって鬱などは一瞬で治せるんだろう。 今日も夢で自分を治す。 そう夢見る。

猫と人間

あの大きな猫、洋子はもう長くはないのだそう、子どもの頃はその意味が分からなかったが、あの猫が煩く、巨大な物に潰れ、意思疎通が出来なくなるように、洋子もいつか居なくなるのだろうと、思い始めた。  洋子が居なくなるということは本人もよくこう言っていた。  「私はサビより早く死ぬからねぇ」  死ぬというものが何なのかは分からないが、きっと居なくなることなのだろうと、思っていた。  私は『なんびょう』というものになったらしい。  あの忌々しく、可笑しな匂いを纏った猫が言うにはあと数ヶ月も持たないのだそう、それを聞いた洋子はとても悲しそうにしていた。  そこから段々、餌を狩る気も失せ、食べ物もいらなくなった。  もうここ数日はずっと寝ている。そして洋子はいつも私の隣に居る。普段は私から離れるがもうそんな気力もない。  嗚呼、唐突に眠くなってきた。これが死ぬというもの何だろうか。洋子居なくなってしまう私を許して。

学校3

休み時間。友達である大和に声をかける。大和は気安い性格で会話に乗ってくれていつの間にか友達になっていた。学校の外では話さないかなそんな仲。 「☆☆☆宿題やった?」 「…!やってない」 完全に頭から忘れていた。いつも忘れないはずなのに今日は忘れていた。だがやった体で乗り切れば大丈夫かな。対して重要ではないそんなもの。 脳を稼働させないで駄弁る。それこそ訳の知らない英語圏が歌う曲のようなスーパーのBGMのような。周囲の喋り声がうるさく演奏に見立てられそう。 「☆☆☆やってんな!」 シンガーが歌っている。とりあえず自分も返そう。 「ハハハ」 ビブラートを効かせて 意味のない会話、ただしキャッチボール。彼もそれはわかっている。心地が良いかなそんなかんじ。喧騒に即興の曲を感性に任せて。 「授業が始まるなじゃあな」 シンガーが歌っている。けたたましい演奏が終わる。おしゃべりはおわり。 チャイムが鳴り授業が始まった。授業が終わったら昼休み。 休み時間にならないかなそんなことを思う

学校2

教室にはいる。挨拶はしない主義だ。自分の席に向かい座る。隣の席から話し声笑い声がする。今日も寒い。 チャイムがなり、授業が開始する。1時間目。僕の高校はテスト期間中で「無駄な外出はしないように」とのお達しだ。そんなお達しを真に受けるやつはこの学校にはいない。僕もそう。 ページをめくる音がする。シーンとした空気は少し嫌いで休み時間の方のうるさいほうが好みである。 誰かが指され誰かが教科書を読む。 双方向型の授業もはっきり言って嫌いである。教師が喋って授業が完結する授業がいい。さっきから嫌いが多い。でもだからといって学校が嫌いではない。休みの時に一日が怠惰で潰れるよりは学校に行ったほうが価値があると思う。 また誰かが指され誰かが教科書を読む。 指されるのを緊張しながら待ち構えながら、物思いにふける。僕は指されるのが嫌いである。理由は緊張するからである。自分の番になると沸々と恥ずかしくなり、言葉を忘れる。遅れないように真剣に授業に参加する。3月の季節。これから暖かくなるだろう。 僕が指される僕は教科書を読む。

誰の税金で飯を食っとんねん

「誰の税金で飯を食っとんねん!」    役所の連中があまりにもお役所仕事だったので、俺はつい怒鳴りつけた。   「少々お待ちください。確認します」    しかし、返って来たのは謝罪でもなく、想定外。  口をぽかんと開けていると、受付のモニターが表示された。   「本日の私の朝食は、コンビニのパン。こちらの購入費は、株式会社○○の新卒入社五年目以上十年目未満の社員の方がお支払いした消費税から賄われております。昼食は、食堂のA定食。こちらの購入費は、△△株式会社の法人税から賄われております。個人名についてはプライバシーの観点により、ご容赦願います」 「お、おう」    俺は頭をショートさせながら、役所を出た。  あらゆるお金の流れが紐づいたデジタルコネクション時代。   「そういうことじゃねえんだよ」    税金で飯を食ってるやつらへのクレームも言いづらくなって、本当に嫌な時代だ。

雪中四友 (掌編詩小説)

-サザンカの章- このひたむきな愛が 私を理想の恋へと連れていってくれる 貴方に伝わるまで私は諦めない そして、この困難に打ち勝ってみせる -ロウバイの章- 私は常に貴方をみている 私は常に貴方を想っている だからこそ、貴方に伝わらなくて良い 貴方の重荷になりたい訳じゃない ただ、隣に居たい -スイセンの章- 私はもう貴方しか見えないし、見ない 貴方も私しか見れないようにさせる でも、貴方の気持ちを尊重したい 何度でも私の元に戻ってきて -ウメの章- 貴方が『疲れた』のなら言って 私が『疲れた』のなら貴方に言うから いつまでも、隣で微笑み合いたい いつまでも、『貴方の為』で居たい (完)

黒いみづうみ

雑木林をぬけた先にはみづうみがある。水面は鏡のように陽光を反射し、風が吹いても波が立つことはない。それでもさざなみが聞こえる。そのみづうみのほとりに両膝をつけ、腕を支えにし水面を覗いてみる。何も映らない。音は、まだある。他に誰かいるのだろうか。女の声がする。みづうみに誘われているようで、少し身を乗りだす。入ってしまうともう戻れないような気がする。しかし、恐ろしくはない。つま先から順にみづうみの中へ入る。あたたかくはない。息を大きく吸い込み、目を開けたまま下へ進む。何も見えないしかし恐怖はない。みづうみの奥深くへ、時間をかけてゆっくりと沈んでゆく。みづうみに底はないのだろうか。息がつづかなくなる、もう息ができない。それでも苦しくはない。指を動かし、足を曲げる。意識は、ある。目元に陽炎がみえる。辺りを見渡す。水面はもう見えない。沈んでゆく中で、そこにぬくもりを感じた。何も見えないみづうみだが、不思議と心が安らぐ。何も聞こえず、誰も邪魔はしない。わたしはみづうみなのだろうか。みづうみがわたしなのだろうか。水面に雨粒が当たった。雨がしんしんと降っているようだ。雨は次第に大粒になり、雷が轟く。わたしはしずかに沈んでいる。音も聞こえなくなってゆく。水面も次第に見えなくなってゆく。辺りは静寂につつまれ、心臓の鼓動だけが聞こえる。自分の音を聞いたのはいつぶりだろうか。わたしも自然の一部である。しかし自分の他の音によって、大切な音が掻き消されていたのだろう。みづうみの鼓動は波となって、ほとりに打ちつける。わたしもこの黒いみづうみも生きている。  ここからもがいて水面に顔を出すこともできるだろう。だが、堕ちるならばどこまでも堕ちてゆくのがいい。逆らうこともしない。闘うこともしない。自然それ自体をありのままのすがたで受容れる。そこには憎しみも、怒りも苦しみもない。あるのは哀しみだけである。どのくらい沈んでいるのだろうか。意識が遠のく。なにもないという「無」が、かつてあったなにかの余白となる。哀しみも美しさへと変わるのだろうか。黒いみづうみの内に、わたしの外に、幾らかの余白が生まれてゆく。冷たく黒いみづうみに、真白な無とぬくもりとが現れた。意識がすうっと戻っていくようであった。 「君の黒いみづうみで、ぼくは泳ぎたいんだ。そうすれば、ぼくはあなたの一部になれるでしょう?」 「ねェ、一体なにを言っているの? わたしはわたしよ。ほら、もう帰ろうよ。日が暮れるわ。」 わたしはみづうみを後にした。このみづうみを再び見ることはあるのだろうか。黒いみづうみには、確かにわたしが映っていた。わたしも確かに黒いみづうみを見ていた。もみぢ葉がひらひらと舞っていた。

天国チケット

妻が死んでから、部屋の音が変わった。  冷蔵庫の低い唸り、時計の秒針、夜になると遠くで鳴る救急車のサイレン。以前からあったはずの音が、彼女のいない部屋では大きく聞こえた。  遺品の整理は、なかなか進まなかった。彼女が少し席を外しているだけのようで、どうしても捨てる気になれない。  そんなある夜、寝室の引き出しの奥から、小さな封筒が見つかった。  表には、彼女の字でこう書いてあった。 「あなたへ。どうしても会いたくなったときに。」  中には、薄い金色の紙片が一枚入っていた。映画の半券みたいな質感で、表面には銀の箔で文字が浮いている。 天国チケット 使用可能時間:日没から日の出まで 効力:一晩、生きたまま天国への滞在を許可する 代償:使用者は死後、地獄へ送られる  冗談にしては、あまりにも彼女らしくなかった。  もう一枚、小さく折られた便箋が入っていた。 「これを見て私を思い出して。ただ使いたいなんて思うのはダメだよ。」  その手紙を、彼は何度も読み返した。  彼女なら、こういう悪趣味な冗談を言う人ではない。けれど、だからこそ、これは冗談ではないのかもしれなかった。  彼はチケットを封筒に戻し、引き出しの一番奥へしまった。  使うつもりはなかった。  だが、人は理屈だけで夜を越えられない。  使うのは裏切りだと思った。  使わないのも、裏切りのように思えた。  もし本当に天国があるなら。  もし彼女がそこで待っているなら。  もし、たった一晩だけでも、もう一度会えるのなら。  その夜、彼は封筒を取り出した。  時計の針が午後六時を回ったとき、チケットは指先で熱を帯びた。気づけば、部屋の輪郭がぼやけ、世界がゆっくり裏返るような感覚に包まれていた。  次に目を開けたとき、彼は見知らぬ丘の上に立っていた。  空は、夕焼けのまま止まっていた。  雲は桃色に染まり、風はぬるく、どこか花の匂いがした。遠くには街のようなものが見えた。白い屋根、金色の塔、静かな川。絵本の中みたいに美しい景色だった。  けれど、妙だった。  道の向こうから、白い服を着た老人が歩いてきた。 「すみません」と彼は駆け寄った。「人を探しているんです」  妻の名前を告げると、老人は穏やかに微笑んだ。 「ここは良い場所ですよ」 「…いや、そうじゃなくて。彼女を見ませんでしたか」 「皆、幸福です」  答えになっていなかった。  それから彼は、何人もの人に尋ねた。花畑にいた少女にも、川辺で本を読んでいた青年にも、広場でチェスをしていた男にも。  だが返ってくるのは、どれも似たような言葉ばかりだった。 「ここは安らぎの場所です」 「悲しむ必要はありません」 「探し物はいずれ見つかります」  なのに、誰も彼女のことは知らなかった。  彼は街を駆け回った。白い石畳の路地を、噴水のある広場を、教会に似た建物の中を、果ての見えない庭園を。夕焼けは一向に沈まず、空の色は変わらない。  妻の名を呼び続けるうちに、声がかすれた。  彼女がここにいると信じていた。  少なくとも、自分を一度は待っていてくれると思っていた。  それなのに、どこにもいない。  街の時計台が、どこかで一度だけ鐘を鳴らした。  夜明けが近いのだと、彼は直感した。  帰れば、また彼女のいない朝が来る。  彼女のいない人生に戻るくらいなら、いっそ。  気づけば彼は、元いた部屋の床に倒れ込んでいた。手の中のチケットは、灰のように崩れて消えた。  窓の外は、白み始めていた。  彼はしばらく天井を見つめ、それから、静かに目を閉じた。  次に目を開けたとき、天井はなかった。  代わりに、赤黒い空がどこまでも広がっていた。地面は乾いてひび割れ、遠くで火がくすぶっている。熱いはずなのに、妙に寒かった。  ここがどこなのか、考えるまでもなかった。 「やっと来てくれた」  声がして、彼は振り返った。  妻がいた。  生前とまったく同じ顔で、同じ笑い方で、けれどあの頃よりずっと晴れやかに、そこに立っていた。  彼は言葉を失った。 「…どうして」  ようやく絞り出した声に、彼女は少し首を傾げた。 「どうしてって?」 「どうして、君が…ここに」  彼女は、ああ、と納得したように笑った。 「私、天国にはいないよ」 「あなた、私を探したんでしょ?」  彼は何も言えなかった。 「ごめんね。でも、あなたなら絶対使ってくれると思ったから喜んで地獄に落ちたの」  そして、恋人に甘えるみたいな声音で囁いた。 「会いたかったんでしょう?」  彼はそのとき初めて、自分が天国ではなく、最初からずっと彼女の掌の上にいたのだと知った。  赤黒い空の下で、妻は幸せそうに彼の手を握りしめている。  もう二度と離れないように。  もう二度と、離れられないように。

化け物の木

 死にたい、もう、死にたい。  僕は、生きる価値のない、ゴミだ。  生きれば生きるだけ罪を重ね、浅ましく、悍ましく、汚らわしくなっていく。  あぁ、何もかも上手くいかない。  もう、いっそ死んでしまおう。  僕はそう思って『化け物の木』へ向かった。  ーーー村の外れに、その木はあった。  誰も名前を知らない。ただ子どもたちは、ひそひそと「化け物の木」と呼んでいた。  幹はねじれ、皮膚のようにひび割れ、夜になると風もないのに軋む音を立てる。まるで、息をしているみたいに。  「近づくなよ」  大人たちは口を揃えてそう言った。理由は教えてくれない。ただ、その目だけが妙に真剣で、冗談ではないと分かる。  そうだ、いっそのこと、僕みたいな人間を食べてくれれば良い。  そうすれば、世界はもう少し住みやすくなる。  より良いものになる、はずだ。  そう思って、僕は一人、木のもとへと向かった。  昼間のそれは、ただの古びた大木に見えた。触れてみると、ざらりと乾いている。拍子抜けして、僕は笑った。 まるで期待した僕がバカみたいだった。  その乾いた笑いは、少しも僕の心を動かさなかった。 「なんだ……ただの木か……」  そのときだった。  ——ドクン。  幹の奥から、確かに鼓動がした。  僕は思わず手を引っ込めた。けれど耳を澄ますと、もう音はしない。気のせいか、と自分に言い聞かせて、もう一度触れる。  ——ドクン、ドクン。  今度ははっきりと、脈打っていた。  怖いはずなのに、なぜか手を離せなかった。むしろ、引き寄せられるように、幹に頬を寄せる。  すると、声が聞こえた。 『……ひさしぶりだ』  低く、かすれた声。  僕は飛び退いた。 『おまえが、触れた』  木の表面が、ゆっくりと裂ける。まるで口のように。  その奥は暗く、底が見えなかった。 『中に、来い』  その木は言った。  その言葉は、僕を引き寄せる魔力の様なものがあった。  僕は聞いてみた。 「……行ったら、どうなる?」  存外に、殺してくれる?という考えがあった。  沈黙のあと、木は答えた。 『おまえの“いらないもの”を、食べてやる』  いらないもの。  その言葉が、妙に胸に刺さった。 「それって、僕のことーーーー?」  なんて言葉が、反射的に出た。  肯定して欲しい言葉だった、けれどその木は、その言葉を肯定はしてくれなかった。 「いいや違う。オマエの、記憶だ。  オレが、食べるのは」  消えてほしい記憶。言えなかった言葉。どうしようもない後悔。  もし、その記憶が無くなれば、僕はもう、泣かなくて済むのだろうか。  毎日辛くて枕を濡らす日々も、なくなるのだろうか。  —ー—もし、それがなくなるなら。  気づけば僕は、一歩踏み出していた。  暗闇に包まれた瞬間、体が軽くなった気がした。頭の奥がじんと痺れ、何かが引き剥がされていく。  悲しかったこと、恥ずかしかったこと、全部。  全部。  全部。  全部、全部、全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部。  ——そして、何もなくなった。    気づくと、僕は木の外に立っていた。  夕暮れだった。  風が吹いて、葉がざわめく。  ……僕は、どうしてここにいるんだろう。  家に帰る途中、誰かが声をかけてきた。 「おい、無事か?」  知らない男だ。心配そうな顔をしている。 「……誰?」  男は、ひどく驚いた顔をした。 「お前……覚えてないのか? 俺が三年前、ここでオマエの弟のことをーーーー」  言葉が止まる。  僕は首をかしげる。 「弟?」  そんなもの、最初からいなかった。  男は震えながら、化け物の木を振り返った。  その幹は、わずかに脈打っている。  ——ドクン。  ——ドクン。  まるで、何かを満足そうに飲み込んだかのように。  そして、その表面に、新しい“しわ”が刻まれていた。  人の顔のような、歪んだ跡が。  それは確かに、笑っていた。  僕はもう、何も思い出せなかった。

Gimme Some More

 冬の街を、背の高いきれいな女性が歩いていた。目立つ人だった。その人はおしゃれなマフラーを巻いていた。どこのブランドだろうと思った。欲しいな。私は声をかけた。「すみません」女性は立ち止まった。「何でしょう」「失礼ですが、そのマフラー、どこのブランドの物ですか」女性はマフラーをほどいて、タグを見せてくれた。そこに印刷されていたブランドは、首吊り縄の製造で有名なブランドだった。「ああ……」私が声を漏らすと、女性はにこりと微笑んで、去っていった。その夜、私はスマホでそのブランドのサイトにアクセスした。やはりメインの商品は首吊り縄だった。そしてカタログの中にあのマフラーを見つけた。高価だった。首吊り縄の方が安かった。あの女性の微笑みを思い出した。私は首吊り縄を注文した。初めて買うブランド品だった。到着が楽しみだ。