モテ期

私はいまだかつてモテたことがない。モテるってなんだろう?などと考えてもみたが自分がみじめになるだけだからやめた。 それから六十年の月日がたった。長年の研究の末にようやく惚れ薬を完成することに成功した。 「この薬を使うのは私ではない。悲しいかな私の血を引き継いだばかりにまったくモテない孫のおまえが使うのだ」 「じいちゃんの気持ちは嬉しいけど、僕は自分の人生は自分で決めるよ」 穴があったら入りたいとはまさにこのことだと思った。 「そうだな。ワシとしたことが出過ぎたマネをしてすまなかった。許しておくれよ」 「僕のほうこそありがとう。確かにモテないのはさみしいけど、友達も家族もいるから平気だよ」 「おまえは本当にいい子に育ったな。じいちゃんは嬉しいよ」 しばらくして私は天からお迎えが来てあの世に旅立った。 「じいちゃん…あの世ではモテてね」 そう言って孫は私の墓に長年かけて作った惚れ薬を墓石に振りかけた。 すると頬を赤らめた妖怪や亡霊たちが私のそばにまとわりついてきた。 「待て、おまえたちには用はない。頼むあっちに行ってくれ!」 こうして私のモテ期は死後に訪れることになった。

鳥の聲。

 僕は自然が大好きだ。好きが高じて森の中にツリーハウスを自作し、そこで暮らしている。頬を優しく撫でる風も、野原に咲いている花も、夜空に煌めく星たちも。僕の毎日の癒しだ。そんな僕の一日は、鳥たちの可愛らしい歌声で目覚めるところから始まる。 「……うーん。」  寝ぼけ眼を擦りながら、鳥たちに声を掛ける。 「おはよう、今日も良い朝だね。」  僕のその言葉に返事をするかのような囀りを残し、青い空へと羽ばたいていく彼等。  今日は良い天気だ。見上げると、木々の葉の隙間から太陽の光が零れている。青く茂った草原の上では、リスやウサギが日向ぼっこをしていて気持ち良さそうだ。僕は大きく伸びをし、乾いた喉を潤すためにツリーハウスのそばにある川まで歩いた。 「あぁ、美味しっ。」  冷たい水が喉を通り、身体に染み渡っていく。川を流れる水と、風が揺らす葉の音が心地良い。目を瞑り深く息を吸うと、澄んだ空気が胸いっぱいに広がった。何にも染まっていない自然の香りは心を落ち着かせてくれる。 「そういえば……」  この前植えたトマトがそろそろ実っている頃だと、ふと思い出した。先週採れたかぼちゃもなかなか良い出来だったから、今回も上手く育ってくれていると信じている。今日の朝食は新鮮なトマトを丸かじりするとでもしようかな。そんなことを思いながら収穫に向かおうとしたその時、僕の目の前に一羽の鳥が現れた。  なんて綺麗なのだろう、初めて見る鳥だ。色鮮やかな羽が陽光に照らされて煌めいている。その鳥は僕をじっと見つめ、ひと声鳴くと山の奥へと姿を消していった。その鳥の美しい声が辺りにこだまする。  僕は何故だかわからないけれど、後をついて行ってみたくなった。あの鳥が行く先に何が待っているのか、無性に気になった。ホーという深い声が、また聞こえてくる。それはまるで、僕を呼んでいるかのようだ。そして、僕は導かれるように向こうに見える山を目指して走り出した。  ピピピピ。  無機質な音で目が覚めた。枕元に置いてある時計の針は午前六時を指している。 「はぁ……なんだ、夢かよ。」  狭い部屋の机の上には、昨夜買ってきた菓子パンと水が乱雑に置かれている。  ふと窓の外に目をやると、一羽のカラスが街灯に留まって気だるげな声で鳴いているのだった。

挨拶がパクられた

「おはようございます」   「あ、ぼくの朝の挨拶パクったね」    朝一から、変な因縁を付けられた。  どういうことなの。   「どういうことなの」    思わず、声に出た。   「だ、か、ら! 『おはようございます』ってのは、ぼくが今朝使った挨拶なの! だから、パクらないでって言ったの!」    おかしいな。  私の耳が悪くなったのか、それとも頭が悪くなったのか。  二回目聞いても意味が分からない。   「であれば、なんとか『なの』って表現は、今日私が最初に使ったので、『ぼくが今朝使った挨拶なの』って言葉は私のパクリってことですよね?」   「え? 何言ってんの? パクリになるわけないじゃん。馬鹿じゃないの?」    頭痛が痛い。  時々いるんだ。  強いマイルールを持つやつが。  自分の中では筋が通っているんだろうが、周囲には理解できないやつが。    案の定、周囲のやつらは動きを止めて、私たちを見ている。  誰か助けて。   「さあ、挨拶を撤回するのか、それとも使わせてくださいって頭を下げるのか!」    ごみっかすみたいな二択を突きつけられて、私は溜息を零す。   「ハイハイ撤回シマース」   「わかればいいんだ!」    満足げな表情にイライラしつつ、私はその横を通り過ぎる。   「あ、おい! ぼくへの挨拶がないぞ!? 挨拶は常識だぞ!」    面倒くっさ。  何こいつ、面倒くっさ。    私は脚を止め、振り返り、笑顔で親指を立てて下に向ける。   「黙れカス」    後ろでギャンギャン喚いていたが、私は無視して歩いた。    世の中には、変な奴もいるものだ。

「すごく良かった」 そう言うと私を抱きしめてきた。2人の汗が混じって嫌な音を立てる。 「だいすき」 同じように抱きしめかえす。ああ、なんて幸せなんだろう。こんなに自分を求めてくれる。ずっとこのままでいたい。が、そうもいかず、渋々身支度を始める。更けきった夜を2人で歩く。帰り道は手を握ってはくれないけど。ネオンの煌めく坂を下る。 「このスタンプは持っているためプレゼントできません」 またか。嫌な予感は的中し連絡先をブロックされていた。あんなに好きだと言ったのに、あんなに私を求めたのに。 私は傷を癒すようにアプリを再インストールした。 21時ハチ公前待ち合わせ。 「初めまして、それじゃあ行こうか」 そう言うと私の手を掴み坂の上へと歩き出す。 「離して、離してよ。」 心の中で叫ぶ。どうせいつかは離すクセに。守るつもりなんかないクセに。それでもあなたは手を離さない。力強く僕の手を握り坂を登る。 僕は知っている。あなたが嘘ばかり吐いているのを僕は知っている。でも気づかないふりをする。傷がこれ以上広がらないように嘘に嘘を重ねる。バカみたいだ。それでもうまくやってきたんだ。 誰も彼も嘘つきで僕も変わらず嘘つきだ。 だからわかる。必ずあなたは僕を手放すと。これまでの人と何も変わらないのだと。 「だいすき」 だけど僕は口から嘘を吐き出してしまう。 今、この手は僕を支えているから。 今日も2人で坂の上へと溶けていく。

世界の舷窓から(ホノルル)

 人生の初めての海外旅行が船だという人は、なかなかいないのではないだろうか。僕が最初に外国の地を踏んだのは、学生時代の遠洋実習、一ヶ月の帆走航海でたどり着いたホノルルだ。  常夏の楽園ハワイ、強烈な日差しが人でにぎわうビーチに降り注いでいた。ダイヤモンドヘッドやアラモアナショッピングセンターなど、観光本に載っていた景色がそのまま目の前にあった。  上陸はたったのニ日しか許されなかったが、僕が一つだけ、どうしても行きたかったのは、日立のこの木なんの木でもなく、ノースショアのウィンドサーフィンの聖地でもなく、パールハーバーの戦艦ミズーリだった。  戦艦ミズーリは、太平洋戦争の降伏調印式が行われた場所だ。太平洋戦争の幕が開いたホノルルの地で、太平洋戦争を終わらせた戦艦が停泊しているのは、不思議な気がした。  日本は本当に、この国と戦争をしていたんだ。巨大な船の甲板に立ち、そんな想いが胸をかすめる。僕は戦争を知らない。平和の国で生まれ育ち、こんな大国と戦争していたなんて、想像もできない。しかし、幾たびもの戦争を経験した戦艦の上に、僕は立っていた。  世界中の人間がバカンスを求めてやってくるホノルル、しかし、この地は、悲惨な戦争の火蓋が切られた地であることを、忘れてはいけない。

共用冷蔵庫

 寮の中には、冷蔵庫が一つ。  冷蔵庫に物を入れるときは、ちゃんと名前を書いておかなければ、他の寮生に食べられても仕方ない。  それがルール。   「おい誰だ! 俺のプリン食べたのは!」    とはいえ、名前を書いていても食べられてしまうこともある。  もちろんルールの外の行為。  だが、見つからなければ罰することはできない。   「ちくしょお。これで三回目だぞ。寮長は、いつになったら監視カメラをつけてくれるんだ」    寮の中で生きるとは、ジャングルで生きるに等しい。  上手く立ち回ったもののみが恩恵を受けられる。   「ねえ、プリンは?」   「誰かに食われてた」   「そんなー。楽しみにしてたのに」   「まあ、食べられてたもんはしょうがない。あいつが戻ってくる前に、ヤろうぜ」   「そうね」    恋人の体には、名前がない。  ちゃんと名前を書いておかなければ、他の寮生に食べられても仕方ない。    寮の中で生きるとは、ジャングルで生きるに等しい。  上手く立ち回ったもののみが恩恵を受けられる。    寮という箱の中。  独自のルールが今日も機能している。

私メリーさん、今あなたの後ろにい

 いつも通り、電話を鳴らす。  固定電話だった昔と違い、今は携帯電話の時代。  自宅へ着くのを待つことなく仕事ができるのが便利だ。    発信音が鳴り響き、数秒の後に相手へとつながる。   「もしもし?」    震える声で応答が返ってくる。  今頃、携帯電話に表示されている『非通知』の文字に怯えているに違いない。   「もしもし? 私メリーさん」    私は一瞬で、電話相手の背後に移動した。   「今あなたの後ろにい……きゃあああああああああ!?」    そして落ちた。  唐突に足元が崩れ、唐突に穴へと落ちた。   「ドッキリ、大成功ー! メリーさんは、無事に落とし穴に落ちました! このチャンネルでは、こうした妖怪たちにドッキリを仕掛ける企画を配信していくので、面白いと思った方はチャンネル登録と高評価お願いしまーす!」    穴の底から、相手の喜びの声を聞く。  ぶつかったお尻が痛い。  何て屈辱だろうか。    最近、こんなことばかりだ。  男湯に召喚されたり、海に召喚されたり。  それだけなら昔もいたが、現代はそんな私の痴態が全国にさらされるのだ。    スーパーで買い物している時、何度指差されたことか。   「……ぐすん」    涙が零れ落ちて来た。  もう、メリーさんを止めよう。  きっと、私は現代にあっていないのだ。    穴にたらされたロープを掴み、私は相手を引っ張り落とした。   「うおっ!?」   「今日からは、神隠しを起こす妖怪になろう」    次の瞬間、私たちは仲良く瞬間移動した。    移動先は、私を落とした相手が知らない場所だ。

夏蝉の声

「ミーンミンミン」 蒸されるような暑さに耐えきれずリビングに向かった。 「いつまで寝てるの」 コーヒーをすすり君は笑う。僕は彼女の目線の先の寝癖を押さえ、天気予報に目をやる。 ついにこの季節がやってきたか。梅雨明けを嘆く僕を横に君は嬉しそうだ。 「夏が来るね」 蝉の音がますます部屋を暑くする。 「ミーンミンミン」 せっかちな蝉は鳴いた。ああ、またこの季節か。君との日々が琥珀色に染まり僕には眩しくてしょうがない。 「腰が曲がって皺が増えるまでずっとそばにいてね」 君のくさいセリフを思い出す。僕は返事を返したっけな。ちゃんと約束しておけば良かった。 「カキーン」 9回裏、逆転ホームランだ。テレビの奥が歓声で溢れた。隣で悔しがりながらチョコミントのアイスを口に入れる。君はいつもその味だった。僕の抹茶アイスにも手を伸ばして悪戯に笑うんだ。 「あなたが太りすぎないようにしてるのよ」 君だっていつもダイエットを口にしてるじゃないか。そんなたわいのない会話すら恋しくなってしまう。 「すっ、ふーー、、、」 生温い夜の風を浴びながらベランダで吸うのが僕の風物詩だ。いつか僕のことは忘れちゃうのかな。星を眺めながらぼんやりと呟いた。タバコの嫌いな君が隣に腰掛けてくる。 「そんなことないよ」 目元を潤ませ笑いながら言う。君がいる時くらい吸うの我慢すれば良かったな。 「ミーンミンミン」 蝉の音が部屋に鳴り響く。僕の鼓膜からはあの頃の音が消えなくて。散りばめられた思い出が僕を取り囲む。 「忘れられない恋だった、元気でね」 さよならだけは言わなかった君の声。 いつになっても蝉は鳴き止まない。

夢か現実か

 ふと気づくと、暗闇の中、歩いていた。 あたりを見渡すと、自分が帰り道だということに気がついた。少し歩くと公園が見えてきた。  ここを通り過ぎなければならない。直感的にそう思った。通り過ぎようとすると、ふと、ブランコに目が止まった。すると、そのブランコの上には仮面をつけ、スーツを着た犬の人形らしきものがあった。不思議に思い近付いてみると、ふと、視線を感じた。視線を感じたその先に目をやると、少し離れたところに暗闇の中街灯に照らされた犬と同じ仮面にスーツ、犬耳のようなものをつけた、人?がいた。私は身の危険を感じ、すぐさま帰った。  と思ったらまた同じ光景。焦りを感じていき、逃げるように帰った、と思ったら…また同じ光景。そして、同じように帰ろうとしたら……。  ー何度繰り返しただろう。そう思った矢先に、気がつくとなぜか弟がいた。一緒に帰ろうと思いまたあの公園を通る。するといつもとは違い、ブランコが揺れている。犬の人形を乗せたまま。  スーツの人は、と思うと、普段は何も動かなかったのになぜかこちらを見てくる。 今回はやばい、と身の危険を感じ弟を連れ走って逃げる。 すると、あのスーツの人がものすごいスピードで追いかけてきた。  数分後、よし、何とか撒いた。と思ったら数メートル先に今度はあの人形が待ち構えていた。  恐怖で足がすくんでいると道の壁が、バシャッ、バシャッ、っと血に染まっていった。何とか足が動き逃げようと振り返ると、あのスーツの人が…。  あっ、と思った時にはもう遅かった。自分は…。   「っっ!」 目が覚めた。夢か、と思い、学校に向かう。そして帰り道…。  「…何で…?」 あの人形たちがあの場所で…。    

「人生」という舞台に幕を下ろす

毎日、毎日、毎日辛いことしかないこの舞台で私は今日も明日も明後日も絶望を感じて生きている 人間に突き放されるのも嫌われるのも殴られるのもいじめられるのも比べられるのももう全部、全部慣れてしまった。 ただ、周りよりも辛い思いをすることが多いだけだ今まではそう思っていた。だけど、もう疲れた 机の上に私を楽にしてくれる「天使の輪」を、手にはたくさんの煌めきを放つ「星の粒」を そうして今日も明日も明後日も私がほんの一瞬だけ輝くことができたこの「人生の舞台」に幕を下ろすために生きてゆく

ラフラブレター

 これはいったい、どういうことだろう。  渡された便せんを開封し、ラブレターを読んだまではいい。  目の前で、ラブレターを渡してきた相手が、顔を真っ赤にして私の返事を待っているのもいい。    問題は、内容だ。       『来てくれてありがとう (まずは感謝を述べる。申し訳なさそうにはしない。)』   『もしかしたら、もう気づいているかもしれないけど (これは却下。自信がなさそうに感じる)』   『ぼくは貴女のことが好きです (恥ずかしがらずに全力で。相手の目を見て)』   『ぼくは話すのが下手なので (これも却下。自信がなさそうに感じる)』   『ぼくの気持ちを手紙に書いてきました (ここ、もっと感動的な言い回しに変えたい)』   『読んでください (ここでラブレターを差し出す)』   『(後は待つ。もし駄目でも、ありがとうで別れる。泣いたりはしない!!)』        どうみても、ラブレター本文でなく、ラブレターを渡す時のシチュエーション予定だ。    気持ちは伝わった。  少しでも私によく思ってもらおうと最善を尽くそうとした思いは伝わった。    伝わったが、うん。    私は、何と返すのが正解だろうか。  私も彼のことを良い人だと思っているので、前向きに答えはしたい。  したいのだが、うーん。    何も言わず、「よろしくお願いします」が正解だろうか。  いや、もしも彼が手元にラブレターがあると気づいたとき、じゃあ私に渡したのは何だったのかと考えるだろう。  そして、誤ってシチュエーション予定を渡してしまったことに気づくだろう。  バッドエンド。    では、「これ、ラブレターじゃないじゃん(笑) おっちょこちょいだなー」が正解だろうか。  いや、逆の立場なら、顔から火を出しながら逃げる。  すぐに、「でも気持ちは伝わったよ」って言えばいいだろうか。  いや、逆の立場なら、私がそれを口にする前に脱兎のごとく逃げる。    うーん。  どうすればいいんだ、私。    ちらりと相手の方を見たら、期待と緊張の混じった瞳を向けられたので、私は咄嗟に目を逸らした。    あー、どうしよー。        ◇          ◇        感触としては、悪くないと思う。  手紙を読み終えただろう彼女がぼくの方を見て、さっと目を逸らした。  きっと彼女も、ぼくのことを意識しているからこその動きなはずだ。    心臓の鼓動が五月蠅い。  緊張で頭が真っ白になる。  やばい。  彼女の返事に、どう返そうとしていたのか忘れてしまった。    幸い彼女は、こちらを見ていない。    ルール違反かもしれないが、ポケットの中に入れている告白シチュエーションの紙をそっと見直そう。    彼女に見つからない様に。    慎重に。    慎重に。       「あれ?」

Add to recover battery be dead I’m not gonna be able to put that phone

I truly covered revenue been dead I’ve had really big guy out of the way to be dead OK because every cabinet battle with dad to make a bad bad bad with that I just have a kind of a buddy did you ever really care bye-bye bye-bye bye dad I’m at cabana by the River with a bit of data McKevette bad bad bad bad to add your battery big big dead educator capability that rock-a-bye availability “you better be dead and chemically bed every day to Emma could’ve covered but if I did that to imagine how do you have a good ride with us back to Luigetta Maccaro bad blood with HVAC at the radio that Edgebrook invisible decorative 11 able to get back it’ll be dead I don’t have a criminal record the backseat we would be dead I’m at the bar whatever dad on the way to recovery we give a dead forever battery dead package everybody at the camper cover the decorated with that bracket ready with the Jamaican brother David that I was kind of camera with the travel Algebra actually be that popular they were dead trap by probably be dead on my camera battery dead I just have a kind of battery dead the battery battery dead bug killer bee bug bite that I have a topper OK by Bhad Bhabie did Deborah Deborah Deborah Macrobid every day at the cabin can I be able to get back in Belvidere dead America provided by the dead IDK because I better with that vapor barrier with a Temecula busy with that idea battery be dead recovered we did the back to bed by the bed that iPad Air with me that I think about going to Beverly Beach beverage with dad to America better by dead River today I treated the trap at her by the way did the backyard with Barbara battery will be dead I could cut up every day with dad‘s property visit with dad to immaculate with that work with you that I don’t have a commitment at the rock-a-bye by the bread with that almond kookaburra with that let me get back put a bit of a dead blackbear with that I just have a crybaby deadmau5 good goodbye to bring it back

雨宿り

 放課後、昇降口前。わたしはぼうっとベンチに座り込んでいた。外はひどい土砂降りで、折り畳み傘しか持っていないわたしが下校するには、少々心許ない。幸いこの春の嵐はすぐ止むそうなので、わたしは1人、誰も通らない校舎の端っこで雨宿りをしているのだった。  すると、隣のベンチに何か書類が置きっぱなしなのに気がついた。近づいて、そっと手に取ってみる。どうやら広報誌の資料のようだった。あんまり見たらダメだよなあ、と思いながらも、指はパラパラと写真をめくっていく。  そうすると去年の思い出が次々と蘇ってきて、雨の匂いも相まって、わたしは胸がいっぱいになった。今年はとうとう高等部二年生……中高一貫のこの学校で最も要となる学年だ。進路も決めなきゃだし、頑張らなくっちゃ……  そこでふと、紙をめくる手が止まった。最後のページのタイトル……「震災を知らない子どもたち」。そういえば、とわたしは思い出した。 (今年入ってきた中学部一年生は、震災後に生まれた世代だっけ)  私は“何かを経験していない世代”という区分に最近まで実感が湧いていなかったが、令和生まれが小学一年生になるという話を聞いたとき、ストンと腑に落ちた感覚を覚えた。彼らは病の流行っていない世界を知らないのだ……初めて味わう虚しいような感覚に、わたしは震えたものだった。  タイトルが書かれた紙の裏には、少し色褪せた大きな写真がクリップで留められていた。2011年当時の子供達の写真だ。この広場、どこかで見たことが…… 「あっ、うちの幼稚園の庭だ」  わたしは思わず独り言を呟いた。よくよく見れば、年少さんのところに知っている顔がちらほら…。わたしと幼馴染の男の子が、大好きだった先生と一緒に写っているのを見つけて、思わず口元がほころんだ。あの頃、人見知り同士だった私たちは互い以外に友達がおらず、ずっと2人で遊んでいたっけ。“大震災ごっこ”なんて言う不謹慎な遊びをクラスで流行らせて、怒られたこともあったなあ…… 「何してんの?」 「わ、びっくりした……」  急に声をかけられ驚いて顔を上げると、現在わたしの彼氏に昇格した幼馴染の彼が、傘を持って立っていた。 「せっかく部活中止になったから迎えにきてやったのに、嵐止んだし! 無駄足だった」 「まあまあ、大事なのはその心ですよ」  わたしはおどけてそう言うと、広報誌資料を元の場所に戻して、立ち上がった。まだ風は強かったが、黒い雲の間からは眩い夕陽が差し込み、あたりは少し明るくなったようだった。

サンキュー

前に働いていた会社の メガネのアレ わたしに執拗にいじめをしてきた メガネのアレ わたしに いじめをしてくれて サンキュー なかなかやめさせてくれなかった会社 いじめのことを話すと あっさり やめさせてくれた 会社をやめた直後は けっこう落ち込んだ 食欲も 急に 落ちちゃって よくない やせ方になった けど 自分のせいじゃないんだ いじめられてたんだから 正当な理由が 手元にあるから だんだんと 楽になれていった そういったこと この前 ねこに 初めて話した ねこは そんなヤツ ツメで引っかきまわしてやるっ なんて 言っていた まあまあ やめておきなよ そんなことしたら キミの手が 腐ってしまうよ せいぜい メガネのアレが お気に入りにしてるシューズに オシッコ引っかけるくらいにしておきなさい 軽く 笑顔なんか見せちゃって 話せるようになっていた わたし 成長 なのか 本来の自分に戻った だけなのか そのあたり よく分からないのだけど ともかく あの会社をやめられて そうとう 気持ちが 楽になった メガネのアレ わたしに いじめをしてくれて ほんと サンキュー

私、有原一穂は運が無い女である。

 私、有原一穂は運が無い女である。  冒頭から既に納得いかない嫌な書き出しではあるが、真実なので仕方ない。誰に需要があるか分からないが、ここでは、私に起きた『運が無い話』を思い出しながら綴っていこうと思う。が、その前に、軽く私の自己紹介をしておこう。  名前は有原一穂。偽名ではなく本名である。歳は十七で性別は女。基本的には進学校に通いながらたまに絵を描き、休みの日は部屋で寝て過ごしているか、運動がてらに散歩へ行くこともある。  とりあえず、今はこの程度の自己紹介でいいだろう。なにしろ、今回の話は、この自己紹介の終わりにある『散歩』に関わる話であるからだ。  結論から書くと、私は散歩中にガムを踏んだのだ。  ただガムを踏むだけ、でも運が無い様な気がするが、私の場合はそれだけでは無い。このガム、靴の裏から全く取れる気配がないのだ。家に帰ってからすぐに風呂場へ持っていき、靴の裏をタワシで擦った。しかし、タワシにガムがつくことも無く、ポロリと剥がれ落ちることも無く、しっかり靴と合体してしまっていた。  三日前に買ったばかりのお気に入りの靴だったこともあって、私はそれは酷く落ち込んだ。買い直すにも今すぐお金を用意することは出来ないし、私は風呂場でタワシ片手に目からこぼれ落ちそうになる涙をぐっと堪えることしか出来なかった。  買ってもらった親にも申し訳なくて、その時の私はガムのついた靴をすぐに処分することが出来なかった。苛立ちもあって乱暴にビニール袋に入れてからこっそりと部屋へ持っていき、勉強机の横に置いて、その日はショックのせいか、ガムとの格闘に疲れたせいか、ベッドに突っ伏した瞬間に睡魔が訪れて眠ってしまった。朝起きて夢の中にも靴が出てきたことを覚えていた時は、何とも言えない喪失感に胸が襲われた。これがなんと、今日の朝の話だ。  書きながらあったことを思い出していくと、この時点で既に運が無さすぎる自分に嫌気がさしてくる。そして、こういった書き方をするということは、この後も運が無い事が続くということである。  朝起きると夢を見たこともあって、私は昨日の靴をもう一度取りだして確認することにした。机の横に置いたビニール袋の中を覗いたら、靴は湿った状態でしっかりとそこにあった。前日に乾かさず放置したからだ。  私はビニール袋から靴を取り出そうとした。これは普通の行動だ。私と同じ境遇の人だったら、お気に入りの靴をもう一度見たいという思いは誰にだってあるだろう。が、ここでひとつ問題が起きた。ビニール袋と靴の裏のガムがくっついて取れなくなっていたのだ。  意味がわからなかった。  タワシで何度擦っても取れる気配すらしなかったガムが、一晩でビニール袋と繋がってしまっていた。  寝起きの霧がかかっていた頭が一気に覚めた。声にならない声が口から漏れそうになった。寝癖の酷い前髪が目の前に現れる。鬱陶しくて右手で前髪をかきあげた。  運が悪いというか、これに関しては私が悪いのだ。  ため息すら出なかった。この時は息が止まっていたと思う。  結局、取り出すのは諦めて私は二度寝をした。靴の夢は見なかった。その変わりに、昨日の散歩の夢を見た。  ガムを踏んだのは公園だった。可愛らしいトイプードルが公園の水飲み場で水を飲んでいたので、私はそこに近づいて、せっかくなら撫でさせてもらおうと思ったのだ。水飲み場の足場はグレーチングで蓋がしてあって、底へ水が流れていた。  ガムはそこにあったのだ。きっと誰かが噛んだ後、水と一緒に流そうと口から捨てたガムが、グレーチングに引っかかっていたのだろうと思う。私はトイプードルに夢中になっていたせいで、足元が見えていなかった。靴の裏に違和感を感じた時にはすでに遅く、私が驚いて足を上げると、トイプードルを怖がらせてしまったのか、飼い主の後ろに隠れてしまった。  この時、私はまだ夢の中だったが、確実に違和感を感じた。このガムは水飲み場のグレーチングに引っかかっていた。それなら、いくら奇跡的に流れ落ちなかったとしても、水が大量にかかっているはずだった。そうなると、粘着力は確実に落ちているはずだ。一度靴の裏についたとしても、タワシで擦って落ちないはずがないのだ。  そう感じた瞬間、私は目が覚めた。お腹が鳴り、時計を見ると昼の三時を過ぎていた。  このガムはおかしい。粘着力が明らかに普通ではない。  ここまで書いていて気がついたが、私、有原一穂の今回の話、珍しく運があったのかもしれない。このガムをビニール袋の中に封印でき、私以外の被害者は出なかったのだから。  この話を投稿した後、私はもう一度、靴を見てみようと思う。少し乱暴に扱ったビニール袋が破れていなければ、この物語は万々歳だ。

未使用鉛筆

 カチカチカチ。  初めて手にしたシャーペンをノックする音は、とても心地よかった。  なんだか、大人になったような気がした。    鉛筆は、使えば使うほど短くなる。  鉛筆の柄がお気に入りだと、使えば使うほど柄がなくなっていって、悲しくなる。    でも、シャーペンなら大丈夫。  シャー芯を交換すれば終わり。  お気に入りの柄は、いつまでも私の手元に残ってくれる。    いつのまにか、使いかけの鉛筆と未使用の鉛筆は、引き出しの奥底に眠ってしまった。  小学生の頃の常識は、目の前から消えた。    未来を目指す今の私には、過去なんて見る必要がなかった。       「おっと、懐かしいな」    一人暮らしを始めるため、荷物をまとめる。  学習机の中に入っている教科書や筆記用具を取り出して、不要なものをごみ箱に捨てていたところ、未使用の鉛筆が山ほど出てきた。    まだまだ使えるが、使う場面も思いつかない。  マークテストの予定もないし、鉛筆をサイコロ代わりに使う予定もない。   「……一本だけ、持っていくか」    しかし、実家を離れると決まった今、どうしようもなく感傷に浸ってしまう。  かつて、書くだけに使っていたものに、急に思い出が浮かんでくる。    一本を、カバンの中に放り込む。  残りを輪ゴムでまとめ、横へどけた。    近くのフリーマーケットに出そう。  小さな小さな、次代への引継ぎだ。

このいかれた世界の真ん中で

私はこのイカれた世界が大嫌いだ、少し発達が遅れたぐらいでイジメられバカにされる、人間なんか大嫌いだ。 ルナはいつも心の中でこう思っていた。 ある日の夏休みのことルナは姉と一緒にとある街に引っ越してきた、そうイジメに耐えきれなくなりこの街に引っ越してきたのだ。 「お姉ちゃん、私この町でやっていけるかな」私は不安になり姉に問いかけた。 「もしダメなら登校拒否すればいい、でも命だけは大切にしなきゃダメよ」姉は少し硬い表情でそう答えた。 私は喉が渇き冷蔵庫にあったミルクをコップに注ぎ一気に飲み干した。 「ルナってほんとミルク好きだよね」と姉は少し笑みを浮かべ言った。 「うん、ミルク大好き、だって美味しいもん」 「そうだ、明日から通う高校に挨拶にでも行ってきなさい」 私はしぶしぶ家を出た。 少し歩くと明日から通う高校が見えてきた。 「あなたが明日から転校してくる月影ルナちゃんね、私は上原かおり、かおり先生って呼んでね」 「私人間が怖いんです、人間みんなが化け物のように見える」 「世の中ね、いじめっ子ばかりじゃないは、優しい人だって必ずいるから、頑張って登校してきなさい、最初は午前中だけでもいいから、待ってるね」と優しい笑顔でかおり先生はそう言ってくれた。 しばらくして私はしぶしぶ家路を急ぐのだった。 私は家の重い扉を開いた。 「お帰り、ルナ」と姉がエプロン姿で笑みを浮かべ出迎えてくれた。 「ただいま、お姉ちゃん」 学校どうだったっと姉は私に優しく問いただす。 「まだわからない、明日残酷さがわかると思う」 「まだわからないじゃない」と姉は少し不満そうに答えた。 「私、わかるんだ、この世界はもうイカれている、障害者は馬鹿にされいじめられる、そうゆう世界」 ルナと言って姉は私を優しく撫でてくれた。 「あなたを絶対幸せにしてくれる人が現れる、だから今は頑張りな」と優しい声は心の中まで響いてその手はとても暖かった。 「明日、編集者の人が漫画取りに来るよ」と姉は少し嬉しそうに言った。 姉は売れっ子の漫画家、私も将来は漫画家をめざしている。 「それでねルナの漫画を明日編集者の人たちに見せたいと思うんだけいい?」と姉は私に聞いてきた。 私はもちろん了解した、ここで大逆転を狙えるかもしれないと思ったのだ。 「明日私帰ってくるまで居てくれるかな、編集者の人」 「たぶん居てくれると思うよ、来るの昼の12時だし。」 「ちなみにペンネームは決めてるの?」と姉は楽しそうに聞いてきた。 「ペンネームは本名でいこうと思ってる」 姉は賛成してくれた、ほんとに嬉しかった、私は今日もこの世界に絶望を感じながら生きていく。

希望と夢、そして未来へ羽ばたいてー知的障害、精神疾患、関節の病気を持っていても自分らしくそして、誰かの役に立ち誰かの助けになれたならー

この病気がわかったのは幼稚園の時。他の子より少し言葉が遅いこと、他の子より表情が硬いことがあったらしい。自分は、いつも1人だった。 誰もいない場所に行ってみたり、先生とケンカしたりしたこともある。そして、小学校に入っても輪の中に入れずいつも1人でなにかしていて、 中学になっても人が嫌いで誰かと馴れ合うことを嫌い、一人でいたい。と言っていた。先生とはケンカしたし、揉めたりもした。でも、仲良くなったけど。高校に入ってすぐいじめが始まった。 親にはいえなくて1人で毎日、毎日泣いていた。 でも卒業式の前にお母さんにぼそっとつぶやいた私ね、いじめられたんだ。でもさ、私は そいつらを許す気ないし謝ってもらおうとか思ってないけどさ、いじめはダメだよね。とよく言っている。私の病気は、治らない。100治らないから普通の人と違ってなにか違うものを見ている時がある。たまに、まーちゃんってさなんか病気あるの?と聞かれる度に思う。うん、この病気は 治らないのって言えるかな、自分なりに考えている。この病気がなかったらと。。。何度も、 何度も考えていた。幼少期、祖母に言われた 病気持ちの嫁と孫はいらねぇからこの家から出ていってくれ!!と。私は、傷ついてしまった。 そして、祖母は冷たく当たってきた。病気があるとわかった時人が180℃変わり、私にズケズケ物事を言うようになり、暴力や言葉の暴力が ひどくなった。私は、その時父親の暴力も 絶えず身体にも心にも大きな大きな傷と アザがあった。私は、今でもあの言葉が怖くて、抜けない。私はいつも夏と冬が来る度にまた 父親に殴られて、寒空の下に放り出される… そんな恐怖がある。私は、幼少期父親に 殴られて、蹴られてその挙句薄着の私を 外に放り投げて、こんな言葉を吐いた こんなやつ、飢え死にしちゃえばいいんだよ!!!ぎゃはは!!!と。私は寒くて、寒くて、妹の部屋の隅のほうでカタカタ震えていた。本当に死んでしまおう。と思い、隠していた 風邪薬を大量に飲んだ。きっと、辛かったんだ 今の私にはそれができない。そして、23歳になった今私の隣にいるのは相棒の空とプリン、 くーとみっちー、いもちゃん、いもたん というアカハライモリの兄弟、彼氏さん。 長い付き合いの女友達。私は、いつも どこかで傷ついていた。でも、たまに お母さんに言わずリスカしたり、泣いてしまう。 苦しかったんだ。あの日のことを思い出さないように必死で、自分の心に蓋をして可愛くて自慢の妹の前で泣いたらダメだと自分に鍵をかけていた。でも、、、弱いんだ。私は結局弱虫だ。 そして、私は夢が見つかった。ポジティブインストラクター、不登校児支援相談員をすることにした。もちろん、親もそうだし、その子の悩みも聞いてあげたい。私にできることは、それくらいしかない。かつて私も学校が大嫌いだった。 ヤンキー番長だったし、先生とケンカしては学校に登校。挙句の果てにはもう退学したいならしてもいいよ。と言われこっちも負けずに言ってしまった。あぁ !!いつだってやめてんやんよ!! こんなところよ!!!と。私は、親戚にも言われいたから余計にカチンと来ていた。でも、不思議なことに今は知らない人とお話してたり、困った人がいたらサッと手を差し伸べたりしている。 例えば、ご高齢のおじいちゃん、おばあちゃんだと杖とか、持ってる方がいて会計とかの時に 落としてしまったり。私はその時誰よりも早くかけつけて、おばあちゃん、どうぞ。落としましたよ。と優しい笑顔で渡す。私は、助け合いが ひとつの運命を変えると信じてる。自分の彼氏さんもパワハラでうつ病になったらしいんだけど、 私は違うんだ、私の場合多忙な職場でメンバーさんとの気が合わず、自分の生きる力もみんなとやって行ける自信がなくなって、去年やめた。 親にはいえなくて、初めてお母さんに泣きながらこぼした。もう、耐えられない、苦しいよ。。。 と。なにかが切れたように涙が止まらなくなった。お母さんは、うん、まー、ちょっと待ってなあんたの相談員さんに電話するから。 そして、、翌日相談員さんに話し 気づけば2年の歳月が流れ退職になっていた。 私は、今大きな夢がある。自分のようになってほしくない。私は確かに普通の人と違うでも 、自分らしく生きていきたい。確かに見た感じは 普通の人に見えると思う。でも、中には自分より重い病気がある人もいるって私は思うんだ。でも、その人たちの力にもなりたい。私は、 誰かのために生きたい。そして、誰かの役に立ちたい。昔から身体が弱かった。今も変わらないよ?全然。でもね、これは誰かに伝えたかった。 自分らしく生きていいんだよ。 こんな私に言われても仕方ないよね ごめんなさい 不愉快になったら見なくて大丈夫です。 たまにnote15でポエム書いてます。

馬鹿にしていい場所

「あの保守王国で与党が惨敗!」   「あの保守王国でさえ!」   「あの保守王国でもダメなら、もはや終わり!」    選挙結果というのは、政党をたたく格好の材料だ。  国民の代表を名乗る者共が、国民の代表の言葉として、与党をたたく。    ただ一つの地域を、馬鹿にしながら。    偏ったラベリングをなくし、多様な価値観を受け入れていこうとは、口ばかり。  本質は、自分たちにとって価値を生む価値観を増やしていこうと同義である。  衰退が確定している片田舎など、見下そうが差別しようが、気にしないどころか気づかないのだ。  アリを踏んでも気づかないのと同じように。   「そこは本質じゃないんだ!」    指摘は、本質以外どうでもいいという詭弁で流された。  本質がダイヤモンドであれば、本質以外はちり芥。  踏んでかまわないちり芥。        差別はなくならない。  見下しはなくならない。  なぜなら、それらは考慮対象ではなく、議論をする者共の世界に存在しない何かなのだから。       「あ」    その日、地球が粉々になった。  原因は、高速で移動する超高速宇宙船の衝突。  宇宙船はバラバラになった地球の間をすり抜けて、目的地へと加速する。   「おい馬鹿! なんか星一つ壊しちまったぞ!」   「しょうがないだろ! だって、地図にはあんなところに星があるなんて書いてなかったんだから!」   「はー……。まあ、どうせ無人か土人の星だから、大丈夫だとは思うけど」   「そんなことより、早く帰らないとアニメ始まっちゃうんだよ!」    世界は今日も、時を刻む。

五月

こどもの日もあるんですけど こどもの日もあるんですけど ねぇ こどもの日もあるんですけど なんなの? この宿題の量。 ねぇ こどもの日もあるんですけど? あ、そうやっていらいらして 「うるさい」っていうのって あ! 五月だからなんですね! わぁーーーー 五月だからなんですね!

侵略

日課になっている朝のマラソンから戻るとキッチンで妻が何かにかじりついて食べていた。よくみたら六歳になるひとり息子のパジャマがプラプラと揺れている。 「何…してるの?」 「何って、朝食よ。あなたも食べる?」 振り向いた妻は口元を血だらけにして聞いてきた。そこにはもう息子の頭はなかった。 「あなたが遅いから頭は食べちゃったわよ」 「しょうがないなぁ」 俺は息子の腕を引きちぎるとそれに噛みついた。妻ももう片方の腕を引きちぎって食べだした。 「今日は帰りは遅いの?」 「いや、そんなに遅くはならないと思うよ」 「今日は隣りの奥さんを招待しておくわ」 「ああ、隣りの奥さんは食べごたえがありそうだからな、楽しみだ」 「あまり遅くならないでよ」 「わかったよ」 息子をふたりで分け合って食べると、私は会社に出かけた。 文明の遅れた星の侵略は楽でいい。

五月

五月。 5月。 ごがつ。 五月雨 五月病 五月蝿い あんまり いいイメージの言葉がない 端午の節句とか ゴールデンウィークとか 楽しいこともあるはずなのに 今日も朝から曇り空 雨もしとしと降っている 明日は 五月晴れにならないかなぁ

身のため。

一時の感情で言い返したくなる。そんな気持ち。痛いほど分かります。 つい昨日、親友にぶちまけました。結果を知りたいですか。 理解されないです。というか、それがふつうなんだろうなって思います。 ですからね、何が言いたいかと申しますとね、 「あなたのために、不満はお墓まで持っていくのが得策です。」 ということです。 もちろん、四六時中一緒にいる家族や世帯としてのパートナー、同棲中の恋人に対しては伝えた方が良いこともあります。しかし、ある程度距離は近いけどやっぱり他人である親友への不満は何とか消化しましょう。親友までは行かないけど、まぁつるんでる相手には言わずもがなです。 なぜこんなことを申し上げたのか。それは、あなたが相手との理解への差異に苦しんで欲しくないからです。どんなに心の距離が近い友人でも他人は他人です。さらに、人間は基本的にプライドが高い生き物なので、不満をぶちまけたところで治すどころか受け入れてすらもらえないこともあります。 そんな苦しみ、味わいたくないですよね。 喧嘩は大事です。大事ですが、不満をぶちまけての喧嘩はやめましょう。 あなたの身のためです。 大事なのは、伝え方です。 私も、ほんとに苦手です。頑張ります。

第二の曙光

 空き地に面した書斎の雨戸を閉め切って、うす暗い部屋のなかで原稿用紙と向かい合っている。これで、二週間が経つ。そして、妻の葬儀から一カ月が過ぎようとしている。最初は、親戚が見舞いに来ないこともなかった。しかし、あのことを決めてしまってからは、原稿に追われているということを言い訳にして、この家に寄せつけないようにした。  食欲もなければ、睡眠欲もない。もっといえば、ありとあらゆる生活への執着がない。妻の死が、この決意のきっかけになったわけではない。妻の死を悼む人々のふるまいの浅ましさに、嫌気がさしたわけでもない。なんというか、突然、自分の人生に一区切りがついたような、そんな清々しい気持ちが、季節に合わぬ、春の長閑な風のように去来したのだ。  だからこの原稿もまた、どこか晴れ晴れとした気持ちで書くことができている。間違っても、人生の総決算、最高傑作、象徴的作品……などという批評を受けぬように、あくまで他愛ない小品として出版社に送るつもりだ。注文されたのは、三十枚の短篇小説だけれど、いつもと変わらぬような一品に仕上げている。  いま、晴れているのか、曇っているのか、雨が降っているのか、なんて分からない。朝、昼、夜、どれなのかも時計を見ないと知れない。ときには、どちらの零時なのかすぐには区別がつかないときもある。  ここ五年で、両親と妻の死を経験してきた。三人とも、小説家になるという夢を追いかけることを、そして、文筆を仕事にしているということを、応援してくれていた。大学を卒業してから一年間、働かずに執筆に打ち込むなどという、道楽めいたことを赦してくれた両親、決して裕福とは言えない生活を一緒に歩んでくれていた妻には、感謝しかない。  そして明日には、この三人のもとへと、向かうのだ。  まるで、春の息吹の中にいるかのような気持ちで、この遺作を書いているいまも、ひとり残された寂しさに打ちのめされているのは事実だ。この寂しさを忘れるために、ありもしない春を感じようとしているのかもしれない。  どさっ。瓦屋根から雪の塊が落ちる音が、かすかに聞こえてきた。そう、いまは冬なのだ。  寂しさに打ち震えてしまいそうになったら、目を瞑り、郷里の春の美しき風景を――滔々と清冽な水が流れる川を、そこに身を乗り出した、葉を陽に透かせた柳を、爽やかな風が運んでくる香しい花の匂いを思う。  子どものころは、なんて幸福だったことだろう。氷の張った湖の真ん中で、夜を待つような心細さとは縁遠いところにいた。あのころの自分は、机の上よりは神社の境内や畔道を好んだし、ペンよりも虫取り網を持つ時間の方が多かった。テストの点数ではなく、腕っ節で同級生と競っていたし、好きな女の子ができても、ラブレターを書こうなんて気持ちにはならなかった。  書斎に閉じこもり、ペンを走らせて、自分の思索を紛らせた小説が、どれくらい読まれるか、売れるかを、競うようになるとは思ってもいなかった。夏は暑さ、冬は寒さのせいにして、外へ出ることをしぶり、花見や紅葉狩りに誘われても、面倒で断り続けた。  第二の人生では、一体、どちらを好むようになるだろうか。  少しの間だけ、目を瞑ることにしたはずが、どっぷり眠ってしまっていた。頭の方から、どんっ、どんっと、握りこぶしで殴られているような音がした。来客だろうか。だとしたら居留守を決め込もう。そうしていれば、そのうち帰るだろう。  しかし、どんっという音が止む気配はない。雨戸を突き破りそうなほどに、大きな音を立てるときもある。この断続的な「どんっ」に対して、さすがにいら立ちを覚えはじめた。  窓も雨戸も乱暴に開けてやった。瞬く間に差し込んできた陽光に目を灼かれ、まぶたの上がひりひりと痛みだした。しかしこの光のなかでも、耳だけはしっかりと働いていた。 「なあんだ、生きてらあ」 「逃げろ、逃げろ」  少しずつ日差しに慣れてきて、眼を細めてみると、断たれた氷柱の垂れた下に、子ども達のイタズラの徴が見えた。 (ははあ、雪玉を投げていたんだな)  陽の光りを浴びながら、目の前に広がる雪景色を見ていると、どうしてか、涙が零れ落ちてきた。あの子どもたちのセリフは、いま書いている短篇のどの言葉より、ひとのこころを揺るがすような力強さを持っていた。

なんだかミルクティーを飲みたくなるのは

心地よい陽気が、わたしのやる気を削いでいく そうやって、安易に、軽率に、陽気のせいにする 自分のせいでないんなら、なんだっていい 横になったら、すぐ寝てしまうような そんな季節と体質になってしまい 夢の中でサイトに投稿しているような、そんな有様 気がついたら、ほんとうに投稿されていて おそらく、小人さんが投稿してくれたのだろう けれど、小人さんは、漢字が苦手のようで、間違いが多い 結局、こちらで投稿し直すことになってしまう 悩んでいるわけではない 悩んでいるわけではないのだけれど 過去にあったことを思い出しては あのときの自分の選択は、あれでよかったのか ああいうふうに言ったのは、あれで正しかったのか なんて考えては ひとり、くよくよしてしまう そんなことは、いつものことで、日常のこと 友だちみたいなもの 向こうも、友だちと思っているのかは 知らないけれど まったく、余裕があるのか、ないのか、分からない 余裕があるのか、ないのか、そんなことより 入ったドーナツ屋さんに、お気に入りのドーナツが あるのか、ないのかのほうが わたしの人生にとっては まぎれもなく、重要なことだ

I just got a head back that way to be dead to recover right with the brown

Add a group of my battery PGP decorated it with dad for a little bit every day through what you did to make her available dates and back of your visit and you have a good day baby get to me about every day to make it will be the dad of a ditch broke up and ready to work every day with that I just have a cabin with Ava did ride by the way did we did we did the back of Roubidoux to Roubidoux did Maccabi Luigi with it and you have a good ability to Ruby Deborah Deborah will be dead will be dead by B J Riverway digit any good with it really did but we did back in Ridgefield every dish back everybody that you have a good bit of the day to visit about everybody to reserve a room with HVAC ability of a day trip with it and grab a good original date whatever vegetables you through the HVAC brother David ditch had to go back in a bit of a day today with a potential visit to Burgerville bridge education goodbye WWW cabin by the river the ditch Anacapa good about it but it broke up with that guy on Edgar where did we did we did the back of the weather we did we did we did Maccabi to be dead Ruby did with it I think I’m gonna be WWW dead refrigerator broke up a virtual visit with attributed to provide a bit of a ditch how do you have a good of a WG Boudet recover better if we did we did we did you ever do with it but I will have a ditch and you have a good WWW aboriginal didgeridoo to back up and we did we did we did you make everybody and you have a good birthday with a date together with the weather we did we did Beverly – how do you get back in about Deborah Deborah Deborah Deborah Deborah did Maccabi Riverdale ditch had to give a good mood ever get back with the devil devil devil www. double ditch vagabond Village had to get a crib or did we get whatever we do a digital video we did with HVAC able to be there for ditch I just have a good bit but it was dead but I could be with a bit of an edge will be there to make a brother David every bitch how do you have a good or bad

沈まない海

 死にたがりが死んだ。原因は破綻した生活で腎臓をやられたからだ。その上病院にもろくにいかなかったので、なんだかんだでさっさと死んでしまった。  まあ最期を看取れたから別に構わない。そのために同居していたのだから。  思えば、本当にいつ死んでもおかしくない奴だった。  借りていた賃貸アパートはとても古い上に安く、家具も布団だけという最低限通り越して夜逃げがいつでも可能な環境に身をおいているような奴だった。  食事もゴミが出にくい食べられるものであればなんでもいいとスーパーのレタスだとかきゅうりだとかそんなものばかり買う。俺が転がり込まなかったらあいつは大学生の時点で栄養失調で倒れていただろう。健康で文化的な最低限度の生活もへったくれもない。  俺が上がり込んでからはだいぶマシにはなったのだが、本当にいつ死んでもおかしくない奴だった。  まあ、結局死んだのだが。  死に際は綺麗なものではなかった。人の死なんぞ綺麗に死ねるなんてこと、絶対ありはしないのはわかっているが、それでもそいつの死に際は本当に綺麗ではなかった。  腎臓をやられると痩せて来るらしい。必要な栄養が腎臓から尿となって全部流れていってしまうのだ。栄養がなくなった体はどこで生命を維持する活力を手に入れるのかというと、自身の血肉を使うようになる。結果として痩せる。だが、それと同時になぜか体に水が溜まりやすくなる。  おかげであいつは痩せてひょろひょろなのにむくんでいて全体的にどこかぶよぶよしていた。そして、脛がピカピカに輝いていた。  水を吸った水死体はこのような感じではないかと俺はそいつを見て思ったものだ。  そういえば、水死体であることを思い出した。  死海の話しだ。俺達は、死海の話しをしたことがある。  死海とはイスラエルとヨルダンの国境沿いにある塩湖の事だ。なんでも塩分濃度が三割もあるせいでほとんどの生命は活動できないところらしい。  それと同時に、沈まない海でもあるそうだ。塩分濃度が高いせいで独特の浮力が働いて海に潜ろうとしても反発されて潜れないとのことだ。  そんな話しをしていたのだ。沈まないから潜っても死ぬに死ねないだろうと、そんな話だったと思う。  今思えば宙ぶらりんになって苦しんでいる状態で、もがいていたのだな。死ぬに死ねない現状に嫌気をさしていたのだと思う。あいつは優しいやつだった。  文豪にかぶれて死にたがっている俺よりもよほど死にたがりに見えたのは間違いではなかったのだ。  それで結局死んだんだ。別にそれでいいだろう。  そして、残された俺は今、あることを調べている。  死海への生き方と散骨に関するネットの記事だ。俺は死んでいったそいつ――砂川恭介を死海の海に散骨する方法がないか調べている。 沈まない海に人より軽い骨を撒いたら、ずっと浮かんでいるだろう?  世界一綺麗な死海で死にそこねた、友人で、同居人で、共犯者だった俺の、ちょっとしたお慰みだ。

生きるに向かない

 死海に行きたい――と、死にたがりはいった。 「なんでも死海は塩分濃度が三割もあって生物はほとんど生きていけないそうじゃないか。人の世を生きるに向いてない俺にうってつけだと思わないか?」  着物に丸眼鏡、明治時代の書生のような見た目をした同居人、夏乃暁音(なつのあきと)が芝居がかった言い方でそんな事を話しはじめた。  暁音が生きるに向いてないのは、人見知りとその芝居がかった言い方――つまりは人とのコミュニケーションが少々ずれているところから起きているだけで、健康上に何も問題はない。  しかもちょっとずれているコミュニケーション能力だって、修正が可能な程度だ。大学生だから大二病でもかかったんだろうとか、モラトリアムだから多少痛い言動はとってもおかしくないで片付けられる。  何より、見た目が書生じみているせいで文豪にかぶれたかという笑い話で済まされてしまう。ちなみにこれは俺達より多くの大学生を見ている教授からのコメントだ。教授からしてみれば暁音はただの人間の一人で心配せずとも普通に生きていける存在らしい。  それでも暁音本人は、生きるに向いてないと思うらしい。漠然と生きにくいと感じて生きているらしい。 「いつか金を貯めて死海へ行ってみたいものだ。そして死海へ潜って死ぬ。俺にはもったいないくらいきれいな終わり方だと思わないか?」  天井の灯りを見つめながら暁音は言う。どこか陶酔したような顔でそのへんにある家具やインテリア用品を扱う店で買った安物のシーリングライトを見つめている姿は、なかなか間が抜けていると思う。  どうせなら和風の味のある照明を買えば良かったのに。そうすればまだ映画のワンシーンのようでかっこよかったよ。 「死海は沈まない海とも言われているらしい」  俺がそういうと暁音がこっちを見た。 「塩分濃度が高いから湖水の比重と浮力が大きくなって人の体は沈まないんだと。しかも浮かんだ状態で本が読めるみたいなことも書いてあるなあ。潜っても結局浮いて死ぬに死ねないだろうね」  俺の言葉に暁音は嫌そうに顔をしかめた。 「お前はいつも、人の世で生きるに向いていない宙ぶらりんな男だと口にしていたけど、死海で浮きも沈みもしないまま死ぬのはそれこそお前の人生そのものを体現する死に方になるじゃないか。そう思うともったいない終わり方が途端に相応しい終わり方だと思ってしまう。――まあ、俺はその終わり方もいいとは思うけどね」  そういうと暁音は黙り込んでしまった。顎に手をあててうぐぐという声をあげているところを見るに考えこんでいるんだろう。俺は小さく鼻歌を歌った。  奇跡も底上げさせれば必然になると歌っていたアーティストは一体、誰だっただろう。曲とタイトルは覚えていても歌手の方は思い出せない。まあ、そんなこと、今はどうでもいいんだけど。 「あと、死海は観光名所だろ? 人が多いよ」 俺が何か思い出したかのように言うと暁音は確かにと言った。それからは静かになった。  後日、彼はこの地球上でもっとも綺麗な海からとれた塩とやらを通販で購入した。  それを丸ごと風呂にいれて塩分濃度をはかったあと「これで世界一綺麗な死海で死ねるな」と馬鹿なことを言いながら風呂の中に入っていった。  結果、入水自殺は失敗に終わった。バスタブが小さくて湯船にもぐることができなかったからだ。  安いアパートではだめだな。そうして俺達は大家から何か言われる前に新しいアパートへ引っ越すことにした。

【あかいろいろ】

【あかいろいろ】  冬の寒い、大学の帰り道。守衛茜(しゅえい あかね)は、友人達と喫茶店で身体を温めていた。 「算命学って、占いが、凄い当たってて、思わず有料会員に入っちゃった!」 そう話すのは、茜の大学の友人の緋澄苺(ひずみ いちご)。 「そういうのを、バーナム効果って言うんだってさ」 そう反論するのは、同じく、茜の大学の友人の反田龍華(たんだ りゅうか)。 「良い事も悪い事も思うように信じれば良いと思うよ。同じ結果でも、それぞれ、思う事は違う訳だし」 そう語るのは、茜自身。更に、話したい茜は、話を続けた。 「例えば、同じ赤だって、ここには、赤色、茜色、苺色がある訳だからね」 茜は、茜色のニットセーター。苺は、苺色のタートルネック。龍華は、赤色のパーカーを着ていた。 「一括りでも、個々は、違うって事よね」 同調する龍華。 「そう。赤(あか)の中の朱(あか)、朱色(しゅいろ)なんて、日本の伝統色なんだよ?」 「どーしたの?いきなり??」 唐突な茜の言葉に、驚く苺。 「わたしの家のハンコ屋、廃業するかもしれない……」 ここで、ようやく、茜は、本題を告げる事に成功した。 「あー、ハンコ不要な世の中になりつつあるもんね」 「朱肉、朱色のピンチじゃん!」 「そうなのよ。でも、こればっかりは、時代の流れかなぁって」 もうダメだと、うなだれる茜。 「占いで解決すれば?算命学!!」 「それは、運任せでしょ。対策とか検索してみたの?」 「したよ。ようは、固定概念を捨てて、新たな商品を生み出せってさ。でも、そんなの、堅物の親が許すわけないじゃん。わたしも、そこまでして、変なハンコ作って、ハンコ屋を継続させるのって、結構、疑問だし。本来のハンコは、大好きだし、残すべき文化だとは思うけどね」 既に、最善を尽くした感の茜。 「まぁ、さっきの色の話じゃないけど、確かに、ハンコにも、使い方、見た目、色々考えられそうだけどねぇ」 龍華が心配そうに助言する。 「例えば、電子の印鑑で、カッコイイデザインとかどうかな?」 「わたしも、それ考えたけど、普通に検索で出てくるのよー」 「そうかぁ」 苺も万策尽きた感が溢れていた。 「色々、提案してみなよ。親に。準備も大事だけど、実行しないと始まらないからさ」 ここで、龍華の会心の提案が炸裂する。 「それも、そうね。当たって砕けろ。話してみるわ」 「頑張って」 「応援してるわ」 こうして、茜のハンコ屋救済の道が、新たに開き始めた。 完 全1000文字

ひとつだけ。

言わずもがなかもしれませんが、あなたに1つお伝えしたいことがあります。それは、 「当たり前は大切になさってください。」ということです。 特に人間関係において、当たり前は大切にしましょう。 家族、友人(深く言えば親友)、恋人、などなど。 信頼関係というものは、ふとしたもので簡単に崩れてしまいます。 当たり前を大切に。 当事者意識が大事です。

都会の真ん中、三十分。

 ある初夏の夕方。ふと思い立って、ビルの屋上の公園に出てみた。茜色に染まった空が私を出迎える。普段見慣れている景色なのに、何かが私を呼んでいるような気がした。私は歩き出した。屋上と繋がっている歩道橋を目指して。  いつもこの公園は自然であふれている。色とりどりの季節の植物が景色を飾り、太陽が植物を照らす。少し前までは、桜の花びらがそこらじゅうに舞っていたのに、春の訪れを満喫する暇もなく、桜はさっさと散っていってしまった。そんなことを考えながら、ある違和感に気がついた。この違和感は何か。  そうか、とため息が漏れた。夜の公園を歩くのは初めてなのだ。小さい灯りがところどころに灯っているが、周りは暗くて見えにくい。だが、夜の公園も神秘的だ。小さい階段の脇で、灯りに照らされたラベンダーが、風に揺られて踊っている。ラベンダーの花言葉を思い出して、くすっと笑った。今の公園にぴったりだ。  しばらく歩いていたが、ふと我に返った。都会のど真ん中にある夜の公園。一人。おまけに制服を着ていて、高校生であることがバレバレ。こんなところで襲われたら、何をされるか分からない。このまま進むか、戻るか。少し考えた末、進むことにした。  風が強くなってきた。不安はどんどん大きくなる。この先には、公園と歩道橋を繋ぐトンネルがあるのだ。そのトンネルに灯りはなかったはずだ。  トンネルの前まで来た。中は真っ暗。誰かいたらどうしよう。一本道だから、中で襲われたら逃げるのはほぼ不可能に近い。でも、確かに何かが私を呼んでいる。  意を決して、トンネルの中に足を踏み入れた。風の音がこだまして、轟音に身を包まれる。真っ暗で何も見えない。だが、思っていたほど怖くない。腹の底から湧き上がる好奇心に身を任せてどんどん進んでいった。  …見えた。外の光だ。安堵が胸の中に広がるのと同時に、この地域の治安の良さに少し落胆している自分もいた。  外に出た瞬間、目の前に華やかな景色が広がった。ビルの各部屋から漏れる黄色い光。信号の赤。看板が放つ青。そして、私を照らす街灯の白。あまりの美しさに、声が出なかった。ああ、これだ。これが、私を呼んでいたんだ。  時間が許せば、ずっと、ずっとこの景色を見ていたかった。田舎ののどかな風景もいいけれど、やっぱり私は都会の景色が好き。綺麗で、美しくて、でもどこか懐かしい。そして、普段は私も、この景色を作っている一員なのだ。  そろそろご飯の時間だ。戻らなきゃ。歩道橋の階段を降りている時、屋上で見たあの花を思い出した。待ってて。明日も行くから。

掌編小説集Ⅱ

三月二十日『朝』   もしも、この世界から朝が消えたら。  未来に対して漠然とした不安を抱かなくて済むのだろうか。  明るい世界の中で孤独を感じて息苦しくなることもなくなるのだろうか。  生きるという行為から逃げるような理由ばかりが浮かんでは消えるのは私が弱いからだろう。  きっと普通の人は美しい夜明を前に今日という日に希望を抱くはずだから。  夜明け前が一番暗い――本来は外国の諺らしいが、本当の夜明けはもっと明るくて蒼い。まるでパンドラの箱から出てきた希望が世界を覆い尽くそうとしているかのようだ。  昼間に見るような青空とは違う、訪れる朝を歓び、去りゆく夜を名残惜しむような空に私は泣きたくなるような寂しさを感じた。  きっと夜だけがわたしを置いて遠くの空へ行ってしまったからだ。  夜だけは朝から離れることができるから。  私もいつか、朝を置いてどこか遠くへ逃げることができるだろうか。  それとも、朝に歓びを感じる日が訪れるのだろうか。  今の私には分からない。今はただ、朝が寂しくて仕方がないから。  ただ願わくば、多くの人にとってこの朝が寂しいものになりませんように。 三月二十一日『夏』  むかしむかし、とある国の夏の話だ。  その国は夏になると死者があの世から戻ってくるので、帰る家を間違えないように玄関先にランタンを吊るす風習があったという。  ランタンの形は家庭によって様々で同じものは一つとしてなかった。花の形をした物もあれば、動物の形を象った物もあり、そのランタンを見ればどの家の物なのかが分かるようになっていた。  今じゃ夏の夜中はずっとランタンに火を灯すようだが、当時は死者があの世から戻ってくる日の夜から翌日の明け方までしかランタンに火を点けていなかったそうだ。  ある年の夏から風習が変わったのさ。何故かって?  流行病だよ。罹患すれば最後、絶対に助からないと言われるほどの恐ろしい死病が国を襲ったのさ。だからどの家もランタンを灯すどころの話じゃなかった。  そこで、当時の国王が兵たちに命じて各家のランタンに火を灯しに行かせたんだ。  するとどういうことかねえ。流行病がピタリと治まったというじゃないか。  国民たちは戻ってきた死者たちが助けてくれたんじゃないかと考え、その恩義を忘れないように夏の間は死者が戻ってこない日でもランタンを灯すようになったらしい。  嘘か本当か、まあ所詮はただの言い伝えさ。   三月二十二日『春』  その国の春はまるでこの世の楽園のように美しかった。  色とりどりの花が咲き乱れ、美しい蝶たちがその周りで遊ぶように飛び回り、温かな陽射しの下では人々が活気に満ちた表情で歩いていた。  多くの国を旅してきたが、あれほど美しい春は見たことがない。きっと、これから先もないだろう。  特に「サクラ」という花は見事だった。  小さなピンク色の花が群れになって咲いているんだ。花の中でも長寿の種類らしく、私が見たサクラは植えられてから五百年は経っていると言っていた。  私が「立派な花ですね。育てるのはさぞかし大変だったでしょう」と言うと、その花の世話を任されているという男性は首を横に振ったんだ。 「いいえ、育てているのは私ではありません。彼女ですよ」 「彼女? 他に世話をされている方がいるのですか?」 「はい、あちらに」  そう言って彼は何処を指さしたと思う?    私が見ていたサクラの木の下さ。 三月二十三日『星』  星の子に出逢った。  どうやら地上があまりにも眩しかったので星空と間違えてしまったらしい。 「だってこんなに眩しいんだもの」  そう言って星の子はビルの窓から溢れる蛍光灯やネオンで輝く街を眺めながら溜息を零した。 「ねえ、もう私たちの光は必要ないの?」  星の子は悲しそうに聞いてくる。  遥か昔の人は星を頼りに生きていた。星もまた、人と共に輝いてきた。  だから人が星からの光を手放した時、彼らはとても寂しかっただろう。もう誰にも必要とされないのに、輝き続けなければいけなかったのだから。 「そうだね。でも、私にはあなたの光が必要だよ。だって寂しいから」 「……そっか。じゃあ、寂しくなったら空を見て、私の星を探してね。私の光を分けてあげる」 「うん、きっと見つけるよ」  私が笑ってそう返すと、星の子も嬉しそうに笑って夜空に帰っていった。  ただ眩しいだけの人工の光に背を向け、私は独り、遥か遠くの空を見上げながら暗い夜道を歩き出した。

掌編小説集Ⅰ

三月十四日『昼』  遥か遠く離れた場所から訪れてきた雨粒たちが街の至る所で音を奏でている。  乱雲という指揮者によってリズム良く落ちてくる彼らの楽しげな音楽を聴きながらお気に入りの本を読んでいると、お腹が空腹を訴えて鳴き出した。  読書に夢中になっていたから、すっかり時間が過ぎるのを忘れてしまっていた。そろそろお昼になっていてもおかしくはない。  雨の日は時間の感覚が分からなくなる。地上から見上げる空は雲に覆われていて、朝と昼の境目が曖昧だ。  それでも私の優秀な体内時計はきちんと昼の訪れを教えてくれる。  私はそんなお腹にご褒美をあげるべく、傘を持ってコンビニへ向かった。  さて、今日のお昼ごはんは何を食べようか。 三月十五日 『月』  星だけの夜でも、月はそこにある。  ただ姿が見えないだけで、消えてしまったわけじゃない。  だから僕は今日も夜空を見上げて月を眺めるフリをする。  僕が見つめる先に、地球の影に隠された月があると信じて。  それはまるで報われない恋とひたむきな信仰心を混ぜ合わせたかのような行為で、他人から見たら無意味に思われるんだろうなと自嘲する。  でもいいんだ。僕にとっては無意味じゃないから。  月だって星の一つなのに、自分だけ地球の影に隠されて誰にも見つけてもらえないのは寂しいはずだ。  少なくとも、僕なら寂しくなって蹲ってしまうだろう。  だけど月は何度姿を隠されても輝いてくれる。  夜空に昇り、僕を見つめてくれる。誰にも見つけてもらえない僕を月だけは見つけてくれる。  だから、たった一日だけ隠されて、夜空から消えてしまったとしても、僕も月を見つけようと思った。月が寂しくならないように。  これはそう、僕なりのお礼なんだ。 三月十六日 『花』  あなたの花になりたかった。  初めて会った時から、私はあなたの花になりたかったの。  朝、目覚めて一番最初に会える存在にしてくれてありがとう。  辛い時に慰められる存在にしてくれてありがとう。  楽しかったことを話せる存在にしてくれてありがとう。  あなたの人生という庭に私を咲かせてくれて、本当にありがとう。  あなたは優しい人だった。私の体をいつも気遣ってくれたわ。  大変だったでしょうに、それでも毎日お世話をしてくれた。  水を与えてくれた。光を与えてくれた。何よりも愛情を込めて育ててくれた。  私は花を咲かせることでしかあなたを喜ばせてあげられなかったけれど、本当に嬉しかったのよ。  わたしが人間だったら、ありったけの言葉でお礼を伝えて、抱きしめてあげられたのに。悲しそうな顔をしているあなたに「大丈夫よ」と笑ってあげられたのに。  こうして枯れていく今、それをしてあげられないことだけが、私の唯一の心残りです。 三月十七日 『夢』  クジラになる夢を見た。  海底を彩る鮮やかな珊瑚の花園、美しい尾鰭を揺らして踊るように泳ぐ熱帯魚たち。水面から微かに差し込む光。マリンブルーの水中。  ここはまるで海に沈んだ楽園、魚たちだけが棲むことを許された安息の地だ。  そこで私はクジラになっていた。  大きなクジラだった。楽しそうに寄り集まっている熱帯魚たちや珊瑚の上を泳ぐと、そこら一帯を不気味な黒い影で覆いつくすほどの。  熱帯魚たちは私の姿を見て散らばっていくが、すぐにまた集まって踊りだす。  ゆらゆら、ゆらゆら。  まるで可憐な踊り子のように。時には貴婦人のワルツのように。  彼女たちが踊るたびに極彩色の鱗が水中に差し込む僅かな光を浴びて瞬くように煌めく。  ここは間違いなく美しい海の楽園だ。誰もがこの場所で永遠に過ごしていたいと思うほどの。  だけど、どうしてだろう。こんなに美しいのにとても狭い檻のように感じてしまうのは。

「 」を知った人形

そういうことを知らずに死ぬのだと、思っていた。 たとえば、愛とか。 たとえば、夢とか。 たとえば、希望とか。 たとえば、温もりとか。 たとえば、優しさとか。 そういう、誰もが賞賛するであろうことを。 光のもとで生まれていく尽くを。 知らずに生まれ、知らずに死ぬのだと、そう、思っていた。 だから、ある日突然そういうことを知った日。 知りたくないことを知ったような気持ちになった。 それはまるで、明日自分が死ぬのだとか。 大切な誰かが消えてしまうのだとか。 そういうことに似ていて。それよりも、もっと知りたくないことで。 ああ、知らなければよかったと思った。 知らずにいれば幸せだったのに。 どうして知ってしまったんだろう。 何もないまま死ねばよかった。 愛も、夢も、希望も、温もりも、優しさも。 誰もが称賛するであろうこと全て。 知らないまま生まれてきたのだから知らないまま死ねばよかったのだ。 知りたいと思わなければ。知りたいと願わなければ。 自分の体が、心が、誰かに焼かれ続けていたのだと知らずにすんだのに。 あのまま知らずにいれば、幸せに死ねたかもしれないのに。 ああ、でも。 私は知ってしまった。知ってしまったのだ。 貴女から名前を貰い、生まれて初めて触れた温かい手で私を逃がしてくれた時に。 教えられてしまったのだ。 愛や。 夢や。 希望や。 温もりや。 優しさや。 貴女が与えてくれた、光のもとで生まれていく尽くを。 知らないまま死ぬのだと思っていたことを。 貴女が私に教えてしまったのだ。 何も与えられず、何も持たずに生まれたのだから、死ぬときもそうだろうと思っていた私に。 生まれてきた意味がないのなら、死ぬことに理由はなく。 生きてきた目的がないのなら、死ぬことに後悔はなく。 ただ生まれてきたから死ぬだけ。ただそれだけのことで、ただそれだけのものだと。 そう、思っていたのに。 今、私は。 誰もが称賛するであろう全てを知った私は。 私にとって、この世でもっとも尊いもののために死ぬのだ。

七つの愛

――愛している。 全てを奪わなければ気が済まないほどの強欲を孕ませながら。 ――愛している。 この世で最も君を愛しているのは自分だという傲慢を隠さずに。 ――愛している。 身体の奥深くまで暴き、己の欲を吐き出さんとする色欲とともに。 ――愛している。 肉を貪り、血を啜り、骨を噛み砕くほどに喰らい尽したいという暴食を潜ませて。 ――愛している。 君を傷付けるもの全てを残さず滅ぼしてやるという憤怒に駆られながら。 ――愛している。 君を愛する以外の全てを放棄したいという怠惰を願いながら。 ――愛している。 自分以外の人間を必要とすることを許さないという嫉妬を疼かせて。 ――愛している。 この世に存在する全ての欲を塗りつぶすほどに。 ――君を、あいしている。

窒息寸前の世界

 あと、一歩。  誰もいない放課後の屋上で、ただ空を眺めた。転落防止用の鉄柵の外側で。  目を瞑れば、至って平凡な日常だった。沈む太陽。頬を掠める風。街の喧騒。蝉時雨。心臓の鼓動。世界はいつも通り回っていた。  そっと目を開けると、夕日が目に沁みた。やけに喉が渇いて、首を絞められたように息が苦しくなった。  夕焼けが寂しいのは、どうしてだろう。夢から覚めると決まってすこし悲しいのは。人に優しくされると心が痛むのは。呼吸がつらいのは。  死にたいなんて思ってしまうのは、どうしてだろう。 「私は……」  心の中で何度も繰り返した言葉が、声となって悲しく響く。脆く小さなその声は、誰にも届くことはなかった。 ーーーー私は、どうすればよかったのかな……

十八歳セット

 今日は僕の十八歳の誕生日だ。  と言っても、僕には歳をとったという実感はない。いつもと何も変わらない日だ。僕は学校にも行かず、毎日を家でだらだらと過ごしている。誕生日でも特に何かをする予定はなく、ぼんやりとテレビを見たり、本を読んだりして過ごしていた。  そこへ、家のインターホンが鳴った。誰だろうか。訪問販売とか、訳のわからない勧誘だろうか。僕がインターホンの画面を見ると、宅配便の業者の服を着た男性が立っていた。  宅配便が来るとは聞いていないけれど、僕が忘れただけだろうか。それとも、両親のどちらかが注文した物が届いたのだろうか。まあ、どちらにせよ、受け取らないと。 「はい」 「宅配便でーす」  インターホン越しに、男性の元気な声が聞こえてくる。よく見れば、台車の上に大きな段ボールが載せられていた。あれが荷物なのだろうか。そんな大きな物を頼んだのか?  僕は玄関に向かい、ドアを開けた。業者の男性が台車を運んでくるところだった。 「お届け物です。ハンコお願いしまーす」  男性は僕に伝票を差し出した。差出人は国の機関の名前が書いてあって、受取人は僕の名前が書いてある。品名は、十八歳セットと記載されていた。  何だ、十八歳セットって。聞いたこともない。 「あの、荷物ってその段ボールですか」 「そうですよ。十八歳になった方に、国から贈られる物です」 「そんなものありましたっけ?」 「ええ。十八歳の誕生日の方がいらっしゃるんでしょう? その方にお渡しください」  段ボールは両手で抱えるくらいの大きさだ。男性は僕に伝票を渡して、その間に段ボールを持ち上げて僕の家に入れる準備をしている。 「あの、中身は何なんですか?」 「十八歳になったら与えられる権利が入ってます。ほら、十八歳って成人になる歳でしょう」  男性は重そうに段ボールを持っていた。早くしろと言わんばかりに伝票を見つめている。  十八歳に与えられる権利。参政権とか、そういう面倒臭い部類の権利だろうか。受け取って得をする権利など、あるのだろうか。  僕は子どものままでいたかった。十八歳になったからって、おしなべて成人として扱うというのはおかしい。成人してもよいかどうか試験を行って、合格した人だけを成人として扱うべきではないだろうか。 「いりません」 「はい?」  僕が受け取りを拒否すると、業者の男性は首を傾げた。 「いりません。持って帰ってください」 「いりませんって、本当にいらないんですか?」 「はい。僕は十八歳になっても子どものままでいたいので」  業者の男性は腑に落ちないような顔をしていたが、渋々段ボールを台車の上に戻した。 「じゃあ、持ち帰りますよ。もう一度聞きますが、本当にいらないんですね?」 「いりません」 「わかりました。じゃあ、受取拒否ということで報告しますね。それでは」  業者の男性が台車を押して帰っていく。  試しに拒否してみたけれど、まさか本当に受け取らなくてよいとは思わなかった。これで、僕はまだ子どものままだ。成人なんてしてやるものか。  トラックのエンジン音が外から聞こえてくる。ちゃんと持ち帰ってくれただろうな。家の前に置かれていたら厄介だぞ。  僕は念のため玄関から出て、家の外に出た。まだトラックは家の前に止まっていた。  その時、僕は強烈な胸の痛みを感じた。立っていられないくらいの痛みだった。僕はその場に崩れ落ちて、胸を強く押さえる。  なんだ。いったい、何が起こったんだ。 「あーあ。受け取らないからですよ」  いつのまにか業者の男性が僕の側にしゃがんで、僕の様子を見ていた。 「なん……だって?」 「十八歳セットを受け取らなかったでしょ。成人を断ったからこうなるんですよ」 「ぼ、僕は……どう、なる?」 「死にますよ。もう手遅れです」  業者の男性はあっさりと僕に死を宣告した。僕が手を伸ばしても、彼は取らなかった。 「たす、けて……」 「いやあ、受け取らなかった自分を恨んでくださいね。それじゃ」  業者の男性が遠ざかっていく。こんなことになるなんて、知らなかった。知らなかったんだ。助けてくれ。助けてくれよ。  僕が伸ばした手は誰にも掴まれることはなく、僕は意識を失った。

元日の午と夜

 起き抜けの身体が暖房を求めてしまうのは気持ちを同じくするが、午になったころに、もう「一度」上げたところを見ると、A教授の寒がりは噂通りらしい。  温々とした部屋で、アラビア模様のフリースを羽織って、夏に新調した天井近くまである本棚から抜き取った、横文字の論文集をめくっている。しかし、廊下の向こうから響いてくる笑声に、気を取られているのも確からしい。イディオムと気付かずに、文意が掴めないことが何度かあった。  昨晩、「このお年玉を子どもたちに渡すように」と、妻に頼んでおいたのだが、ちゃんとお礼を言いにきてくれるおかげで、読書に没入しかけていたところを、襟首をぐいと掴まれた。  A教授は、白鬚を蓄えた口もとに柔和な笑みを見せはしたが、こころのなかではしかめ面をしていた。子どもたちが帰ったあと、もう本を読む気をなくしたA教授は、カーテンから中庭をちょいと覗いた。すると、雪だるまを作っている翔太と目が合った。  翔太はあどけなく微笑み、それに気付いた一歳年下の剛志は、無邪気に手を振りだした。それにつられて手を振り返したA教授であったが、勝手口からでてきたお隣さんに、いまのを見られてしまった。口もとに手を当てて、クスクスと笑っている。A教授は、窓を開けてカーテンを背にすると、 「とんだところを見られましたね」  照れ隠しにそう言ってしまったが、お隣さんはそんなことに頓着せずに、 「Aさん、今年もよろしくお願いしますね」  かしこまった口調で挨拶をして、すぐに家に引っ込んでしまった。  大学での用向きは、家に持ち込まないことにしているから、少々、退屈なときを過ごすことになった。そこでA教授は、桐箪笥の二段目の奥から鍵を引っ張り出した。そして、机の引き出しの鍵穴に差し込み、いまなら誰にも音が聞こえないに決まっているのに、誰かの耳に入らぬように気をつけながら開けた。  A教授は、椅子と机の間を狭めて、その隙間から、先ほどまで読んでいたものとは違う類いの本をめくりはじめた。ドアをノックする音に気をつけながら、誰にもバレないように、こそこそと。  夕方近くになり、親戚一同は、この家から退いてしまった。A教授と妻と、息子夫妻と孫は、おせちの残りを晩飯にして、食べ終えると寝支度を済ませ、今年の元日を終えた。  ちゃんと桐箪笥の奥に鍵を隠したかどうかを気にしながらも、どっと疲れていたA教授は、それを確認しに書斎に戻ることはせずに、初夢を迎えに眠りに落ちていった。  雪だるまの上のバケツが落ちる音は、誰の眠りを覚ますこともなかった。夕方にさらに降り積もった雪の上に落ちたのだから、なんの不思議もない。それにしても、月がでていないのに、妙に明るく感じる夜である。…………

井の中の蛙 大海を知る

俺はカエルだ。 この井戸の中で生まれ、他のカエルと共に暮らしている。 井戸の中は広く、俺たちカエルの群れでも全く窮屈ではないし、食べるものにも困ることは無く、さらには天敵からも身を隠せる絶好の住処だ。 俺は他のカエルと少し違うところがある。 それは、他のカエルより頭が良いんだ。物事を考える事ができる。 そこで俺は考えた。せっかく俺は天からこの知性を授かって生まれ落ちたにも関わらず、このままこの井戸で一生を終えて良いのだろうか? 他のカエルと同じように、ただ食事と繁殖を実行するだけで良いのだろうか? いや、良い訳無いだろう。俺はコイツらとは違う。 俺はもっと賢く、有意義で、上手く言葉に出来ないが、知性ある動物たる生を、全うしたいのだ。 俺は、安全な井戸の中から出ることにした。 自らの生そのものを改定したいと心に決めたのは良いが、 俺は知性ある動物が、どのように生きているのか知らなかった。 そこで、1番頭の良い生き物から、その生き方を学ぶことにした。その生き物とは人間のことだ。人間の存在については勿論知っているし、他のカエル達も、なんとなくその存在を理解している。 人間は知性があるからこそ、この食物連鎖の頂点に立っている。俺は人間の性質や、歴史を知ることが出来れば、彼らと同じような存在になれると確信していた。 俺は井戸を出た。 まずは川を下り、そのまま海へ出た。 そこから様々な大陸へ渡り、様々な種類の人間について学んだ。 彼らの生活を見た。彼らの歴史を見た。彼らがどのような存在であるか、理解した。 その後、俺は生まれ故郷の井戸の中へ戻った。 そこで俺は自らの知性を封じ、他のカエルと同じように生きていくことにした。 これが俺の結論だ。 初めからこうしていれば良かったのだ。 戦争、飢餓、支配、そして死。 カエルがこれらを知る必要は無い。 初めから食事と繁殖の事だけ考えていれば、それだけで十分に幸せな生活が送れるのだ。 無理に、全てを知る必要もない。