「フリーハグいかがですか?」 コンビニに行った帰り道、一人の女性が立っていた。 フリーハグの存在は知っている。 なんか、ハグしてくれるらしい。 「いいですか?」 「もちろんです」 名前も知らない人との、数秒間だけのハグ。 少しの緊張と、少しの温かみを感じた。 「ありがとうございます」 ぼくはそのまま彼女と別れ、会社に戻った。 どことなく、心がぽかぽかと温かかった。 「先輩お帰りなさい! バグ、三件増えました!」 「フリイイイイイバグウウウウウウウ!!!!」 温かい心のまま、体のエンジンを全力でぶん回す。 俺たちの徹夜はこれからだ。
《Vo.桜》 ホームにて電車を待つ 風が強い 山岳地帯から花粉が吹き寄せてくる 目がゴロゴロとして痒くてたまらない 女子高生のスカートが翻っている 今日は実家に帰ってお墓参りをした 以前飼っていたネコのマルのお参り マルが初めて家に来たのはまだ私が小学生のとき。あの日も風が強く、空は墨をこぼした水のように雨雲が広がっていた。私が家に帰った時には雷とともに土砂降りの雨で、風は尚も強くなっていった。畳の部屋で寝ていると、ガタガタと窓がなったり、庭で何かが倒れる音がしたり、お祖父ちゃんのお祖父ちゃんが建てたこの家はトランプのタワーのように簡単に崩れちゃうのかもしれないとぼんやり考えてた。 ニャーニャーとか細い声がする 風と雨の音にかき消されながら、合間合間に、ニャーニャーと小さな猫の声 私がバァバに猫の声がするから外に行くと言うと、「にゃんこが 人様のえで 何しったずぅ!?」とか「死んだらくすぐなる」と嫌がってたけど、私が泥んこになって子猫のマルを抱えてきたら、タオルで、よーくふったっけな 少しミルクを飲ませたら自分からコタツに入って丸くなってた。 マルは甘えん坊だったな。バァバのリュウマチが酷くなってからは、いつもマルと一緒にいたっけな。 マルが寝るときは私のベッドと決まっていた。お姉ちゃんがマルと一緒に寝るって部屋に連れて行っても、マルは自分で襖を開けて私の部屋にやってくる。私はそれが嬉しかった。 マル。 今でもマルの匂いがしそうなのに、いつもマルの匂いを嗅いでいたのに、今はもう思い出せない。 風が強くホーム吹き抜ける 電車が来るアナウンスが流れる 電車が到着しドアが開く 沢山の人が出てくる中に 高校生の時、付き合っていた人がいた 十年ぶりに見る彼は少しも変わっていなかった 電車に入りシートに座る 人がいなくなった車内は人がいた雰囲気が残っている 【白い線の彼方】 花を植えましょう お日様はいつもいるよ 水をあげすぎないで 詩を作るように愛を込めて 雨が降ると聞こえてくる 宛もなく歩く花はいずこへ 今もまだあなたを夢に見ます 思い出すたび忘れていくあなたの香り 私は歩く 白線の上を笑いながら どこまでも続く線の上を 私は歩いていく あなたと歩いた白線の上で 咲いているのは花、花、花 白い線が見えないくらい あなたの花が咲いている 私は歩く 白線は空高く延びている 地面は遥か彼方 風に煽られて落ちてしまいそうです あなたと歩いた白線の上で 咲いているのは花、花、花 私のなかに花の道がある 花の香りを嗅いでみたくて ふわりと下へ降りてみたいな 花を植えましょう お日様はいつもいるよ 水をあげすぎないで 詩を作るように愛を込めて 白い線の彼方まで
まるでブログはお化けみたいだ。 無数の記事を用意して、検索結果に置いておく。 何かを知りたいと思た人間は、検索をし、記事を見つけ、まんまとブログの中に飲み込まれていく。 人間を飲み込むお化け。 たくさんのご飯を置いて、腹を減らした小動物が見つけ、食らいつき、捕まることに似ている。 唯一良かったことは、飲み込まれた人間が死にはしないことだ。 ただ、知識が増えるだけ。 ただ、時間が吸われるだけ。 一つの記事から別の記事へ、ハマれば底なし沼のように。 「ああ、もうこんな時間だ」 起床用のアラームが鳴って我に帰る。 早起きして手に入ったはずの時間は、いつの間にか溶けていた。 やっぱり、ブログはお化けなのかもしれない。 私の寿命は、確実に吸い取られた。
今日は誰もいなかった 人も獣も花も まるっといなくなってしまった 雑草とコンクリート、アスファルトの羅列 それでも、変わらない『今日』を勤めた 私しかいないのに 交通ルールなんて、好きに変えられるのに 教習所で運転の練習をしている 私しかいないのに いつまでも大衆のいる世界で生きている (完)
日記を書く習慣が、母にはあった。 押し入れの奥から、段ボール一箱分が出てきた。一九八〇年代から書き続けた日記帳が、年ごとにきちんと並んでいた。几帳面な人だったから、日付も欠かさず、筆跡も乱れていなかった。私は相続の整理をしながら、一冊だけ手に取った。私が生まれた年のものだった。 母の日記は淡々としていた。天気、食事、夫の帰宅時間。感情の起伏はほとんど書かれていなかった。それでも読み進めると、ところどころに私のことが出てきた。 七月十四日。恵が笑った。 八月三日。恵が立った。 短い記録だったが、その短さがかえって愛おしかった。私は次の箱から翌年の日記を取り出した。私が二歳になった年。それも同じ調子で、淡々と日常が記されていた。 十冊ほど読み進めたところで、私が小学五年生の年の日記を開いた。あのころ私は太り始めていた。クラスで一番体が大きくて、それを気にしていた時期だった。 六月のページに、こんな一文があった。 恵のこと、先生から電話があった。クラスの男子に叩かれているらしい。恵は何も言わなかった。 読んで、胸が痛んだ。覚えていた。あの頃、太っているというだけで、何人かの男子にからかわれていた。叩かれたことも、あった。母に言えなかった。心配させたくなかった。 でも母は知っていたのだ。 続きを読んだ。 担任は注意すると言っていた。様子を見る。恵には何も言わないでおく。 私は日記を閉じなかった。その先を読んだ。七月、八月。私へのいじめに関する記述は続いていた。担任との電話のやりとり、父と話し合ったこと、このまま転校させるべきか迷ったこと。私がまったく知らない場所で、母はずっと動いていた。 九月のページに、こう書いてあった。 恵、最近よく食べる。よかった。 私は笑った。そういう人だった。 冬のページをめくった。いじめの記述は少しずつ減っていた。代わりに、私の体重の記録が始まっていた。 十二月。恵、また少し増えた。六十二キロ。 几帳面な母らしかった。月ごとに、私の体重が記録されていた。私自身、自分の体重をそんなに正確に把握していなかったのに、母は知っていた。測っていたのではなく、おそらく私が無頓着に口にしていた数字を、書き留めていたのだと思った。 中学、高校と、体重の記録は続いていた。増えた年も、少し減った年も、すべて書いてあった。 私は二十年分の日記を一気に繰った。就職、結婚、離婚。私の人生の出来事が、母の視点から淡々と記されていた。感想はほとんどなかった。ただ事実だけが並んでいた。 最後の日記帳を開いた。母が倒れる前の年のものだった。 最後のページに、こう書いてあった。 十一月。恵が電話してきた。元気そうだった。体重のことは聞かなかった。もう関係ないと思って。 私はそこで手が止まった。 もう関係ない。 その言葉が、妙に引っかかった。体重がもう関係ない、という意味だと思った。娘が中年になって、体重など気にしなくていい年になった、そういうことだと思った。 でも次のページを見て、私は息が止まった。 日付は同じ十一月。走り書きで、一行だけ。 先生に言われた。年内かもしれない、と。恵には言わない。 私が母の死の知らせを受けたのは、翌年の二月だった。 突然だった、と思っていた。 ずっと、突然だったと思っていた。
か細く、けれど確かに鋭い雨が、辺りを突き刺していく。 ──かりかり、かり。 それは宛ら、シャープペンシルの芯同士がぶつかる音のよう。透明なケースの中で自慢の長躯を打ち合う彼等は、ぱきりぱきり、いつだって呆気なく折れては潰えるばかり。脆弱な黒い亡骸に涙する間も無く、新たに生まれる憐れな犠牲。それが彼等の生き急いだ末路であるなら、寧ろ称賛すべきなのだろうか。 ──かり、かり。 何処か耳に障る厭な雨音が、気付けば静謐へと裏返っていた。その穏やかさは酷く歪で、正しさを纏う矛盾すら怯えている気がした。
穴に落ちた。 すっごい深い穴に落ちた。 どれくらい深いかと言うと、両手を伸ばしてジャンプしても、脱出できないくらい深い穴だ。 「だ、誰かー!」 穴の外に向かって思いっきり叫んだ。 何人かは穴を覗いてくれて、私と目が合った。 しかし、言うことは皆同じ。 「まあ、多様性の時代だしね」 「穴の中で生きる人がいてもいいよね」 「人は人、私は私」 誰も手を差し伸べてくれない。 私は一生穴の中にいるしかないんだと気づいたとき、私は現状を個性と呼ぶ覚悟を決めた。
「地球の裏には何があると思う?」 「何があるって? 大陸とか海とかじゃないの?」 有紗は楽しそうに聞いてきた。行ったこともない星の裏側なんて知りようもないのにそんなこと聞いてきて、何が楽しいのかわからない。 それにしても地球の裏側か……、本当によくわからないな。表に行ってた友達曰く、青色が多い星らしい。海っていうなんか水がたくさんあるって言ってた。 「知ってたの? もしかして美香に聞いた?なんだつまんないの」 「知らないよ、見たことないんだもん。聞いただけだよ」 「一緒だよ。ぶー」 不貞腐れているけれど、どこか楽しそうな有紗は、私が用意した紅茶に口をつける。私も緑茶を飲む。ところで、どうしてそんな質問をしたのだろう。表に行けるのは優秀な子だけなんだから私たちはいけそうもないのに。 見れないものに羨望を抱いたんだろうか。私たちは裏側の住人。日の当たらない世界でのんびり生きている。緑茶を飲んで、お餅を食べる。重力が少ないと言われている世界を、軽い体でぴょんぴょんと飛び回って忙しそうにしてる子もいるけれど、私たちは、そんなことはしない。 表の世界は明るくて、惑星が見えるけれど、そんな星が見えるなんて、ちょっぴり羨ましいけれど、つかれたお餅を食べながら、緑茶を飲んで過ごすのが私は好きなのだ。 「ねえ有紗、地球から私たちはどう見えてるんだろうね。私たちのこと絶対に知らないんだよ。彼ら彼女らは、表の子しか知らないで、私たちのこと知ったつもりでいるんだろうね」 少し意地悪げに言ってしまう。有紗は食べていたお餅を飲み込んで、困った顔で私を見据える。 「もう、あなたっていつもそう。外の人が私たちをどう思っていようが、どうだっていいでしょう? って地球の裏側がどうなっているのか聞いた私が言えることじゃないか……」 「ふふっ、冗談だよ。ごめんね有紗少し意地悪言いたくなっちゃって」 私たちがそんな話で盛り上がっていると美香が帰ってきた。 「お、おかえり美香。どうだった表は」 「うーん、まあまあかな。ところで、何の話してたん」 「え? いやあ、地球の裏側がどうなってるのかなって話をしてたんだよ」 「あー、普通に海だよ海。大陸もあるけど大体海だね。そんなもんよ」 「聞いてた通りだね、見てて楽しいものでもないでしょう?」 やっぱり意地悪な言い方になってしまう。私の悪い癖だ。 「いや、そうでもないよ、昔はなんもなかったけどさ今、光るんだよ大陸。小さな光がピカピカってなるんだよ」 「へえ、それはちょっと見てみたいね。ね、あなたもそう思うでしょ?」 「うーん、ちょっとだけね」 それでも私たちはきっと裏側で満足するんだろうなって思う。こうやって、緑茶を飲んで、お餅を食べて、暮らしていくんだろうなって。 私たちは地球の世界の想像から生まれた存在だ。月の影が何に見える? そんな疑問から生まれた存在だ。だからこうしてお餅を食べる。 月の影はうさぎがお餅をついてるように見える。そんな想像から生まれたのだから当然だろう。 今日も三人で地球の周りを一周するまで、緑茶を飲みながらお餅を食べながら月の裏で過ごす。
異界監視センターよりお知らせです。 近所や親戚に、青い目をした子供はいませんか? 絶対に瞳を覗き込まないでください。 【検閲済】を視認してしまう可能性があります。 以上の状況が当てはまる場合には、速やかに当センターにお知らせください。 「お前の目は、本当に綺麗だな〜」 リョウは赤ん坊を抱いて、デレデレと笑っている。出産を終えたばかりのアカリを置いて、ずっとあの調子で可愛がっているのだ。まぁ、世話してくれるからいいけどね……とアカリはソファの上であくびをした。 生まれてきた娘は、日本人とは思えない青色の目をしていた。眩しいほどの青、勿忘草色。光が当たる向きなどによって、水色やら紺色にも見える。まるでスパンコールだ。 けれど、夫婦にとっては娘の目が何色だろうと構わなかった。検査でも100%2人の子供だったし、何より見目が美しい。娘の目を覗き込んでいると、小さいころ万華鏡で遊んでいた時のような、うっとりとした気持ちになるのだった。 にしても、今日のリョウは娘に夢中になりすぎだ。お互いの目を見つめあって、もう軽く1時間は経っている。アカリは娘が泣き出さないからいいか、とほっといていたが、いささか不安になってきた。初めての子なのでよくわからないが、赤ん坊というのはこんなにも大人しいものだっただろうか。 「ねぇ、リョウさん。そろそろ寝かせた方がいいんじゃないの。リョウさん?」 きいてみても、リョウは聞いているそぶりも見せなかった。娘を両手でしっかりと抱いて、離そうとしない。当の娘はぽかんと目を見開いて、瞬きもせず、父と母の顔を見比べるだけだ。アカリは急に、二人になんとも言えない気持ち悪さを感じた。 途端に、娘が耳をつんざくような泣き声を上げた。この小さな体から出しているとは思えないほど、凄まじい絶叫だった。アカリはびっくりして、リョウの腕の上から娘を抱いて支えた。 そこから起きたことは一瞬だった。リョウの体はあっという間に、熟れきったバナナのように真っ茶色になった。そして肌がボロボロと崩れ、娘を抱いていた腕、瞳を覗き込んでいた眼球までもが、ぐずぐずになって床に落ちた。 気づけばアカリの前にあるのは、腐った肉の塊だけになっていた。まだ生きているかのように、モゾモゾと動き続けている。娘はアカリの腕の中でケロッと泣き止み、無邪気に笑顔を浮かべた。父だったそれを、美しい目でじっと見下ろしながら。 異界監視センターより 2.30.異形化事件について 堀越リョウさん 自宅で突然全身が腐敗、身柄は当センターにより保護 犠牲となった方々に、祈りを捧げましょう。 追記 対象者の娘を預かっていた職員3名が異形化(詳細は3.9.異形化事件として別紙に記載)。 進展があり次第、追って報告いたします。
男は納豆パックの蓋を開け、かき混ぜた。勢いよく回される箸によって、豆の一粒一粒が繋がり、一体となっていく中、ただ一粒の納豆だけが混ざらずにパックの隅へと追いやられた。このままじゃ落ちてしまう、なぜ、同じ納豆じゃないか──地面に取り残された一粒の納豆に、男が気づくことはなかった。
少し肌寒い風が、カーテンを揺らして部屋の中を通り抜ける。部屋のソファに腰掛けた女性は、冷め切ったコーヒーをどうするか、思案を巡らせていた。1歳になったばかりの子どもは、離乳食をたらふく食べて、寝息もたてずにぐっすり寝ている。 ここ数週間、子どもの夜泣きが始まり、夜はろくに寝れていなかった。ため息交じりにの欠伸をかみ殺しながら、音をたてないようベランダへ出た。 抱っこで凝り固まった肩回りをストレッチすると、筋肉がミキミキと音を立てた。血液が体内にいき渡るのを感じると、頭が働きそうになるが、あえてベランダに肘をついてぼーっとする。 鳥の鳴き声と子どもはしゃぐ声、風が草木を撫でる音にまじって、どこかへ向かう車の走行音が聞こえてくる。夜も昼もない生活をしていても、世の中は移ろっている。 部屋に戻って窓を閉めると、外界の音が遮断された。孤独感が襲ってきそうだが、なんとはなしにテレビを消して、スマホの電源も切ってみた。 再びソファに腰を沈めて、深呼吸をしながら、目を閉じてみた。 「...ィィィィィン」。 音がないときに聞こえる静寂の音。昔はこの音が、暇な時間の象徴であるような気がして、好きではなかった。 しかし、自分の時間が遠のいてから聞いてみると、とても心が落ち着く。夫の愚痴も、子どもの泣き声も、テレビやスマホからあふれ出る情報も、今ここには存在しない。 どのくらい目を閉じていただろうか。子どもはムニャムニャとしていて、もう少し寝てくれそうだ。コーヒーを淹れなおしに台所へ向かう。なんだか久しぶりに立ち止まることができた気がした。
朝、目が覚めた。ホテルのベッドだった。白い夢を見ていた。隣で男が寝ていた。知らない男だ。私はベッドから抜け出した。大きな鏡が目に入った。寝癖を手で撫でながら鏡の前に立った。そこに映っていたのは私ではなかった。一丁の巨大な絹ごし豆腐だった。白く四角く艶やかな絹ごし豆腐だった。私が首をかしげると鏡の中の豆腐がかすかに揺れた。その時ふいに背後に気配を感じた。振り返るとさっき隣で寝ていた男が立っていた。やはり知らない男だ。男は優しいほほ笑みとともに私を抱きしめた。私は男の胸に顔をうずめた。すると男がキスを求めてきた。私はそれを断って鏡を見た。男は私を背後から抱きしめていた。鏡の中の絹ごし豆腐にかつお節がかかっていた。
親友であり幼馴染の華織が死んだ自殺だった。 原因は部活内での虐め。 九月一日二時丁度に飛び降りる華織を監視カメラが捉えていたそう。 華織の部屋に遺書が置いてあったらしい、その内の一つが私宛の手紙だった。 「命へ 何にも言えなくてごめん。 命のことだから何か出来ることがあったはずって、自分を責めるかもしれない。 でもそんなこと絶対にない。 命は何にも悪くない、命と話す時間は楽しかった。 命、今までありがとう、私の親友で幼馴染で、側にいてくれて、命といたこの十数年楽しくて、幸せだった。私の心の拠り所で本当にありがとう。 約束『おばあちゃんになっても一緒にいる』守れなくてごめん、命、大好きだよ、ありがとう。」 これを読んで華織が死んで初めて泣いた。 心のどこかで華織が死んだことを受け入れなかったのかもしれない。 それからバレーボール選手という夢を捨て、教師になった。 周りからは反対された。キャプテンになる予定もあるのに勿体無いと。 それでも教師になりたかった。 今年初めて担任を持つ、緊張しながらもドアを開け、教卓に立ち自己紹介をした。 「初めてまして1年4組の担任になった朝野命です。 趣味はバレー、女バレの顧問もしているので是非入部お願いします。嫌いなことは虐めです高校2年生の時、親友が自殺しました。」 「私は親友みたいに死んでしまう子を、私みたいに置いてかれてしまう子を、減らしたくて教師になりました。」 「どんなに些細なことでも良いです。 少しでも苦しい、辛い、そう思ったら周りの人達を頼ってください。 友達でも教師でも親でも誰かに相談して溜め込まないでください。 私はこのクラスが助け合えるクラスになって欲しいです。 長くなってしまいましたが私の自己紹介を終わります」 もうすぐ夏休みが終わり、二学期が始まる。 「命先生」 後ろから私が担任を務めているクラスの一瀬沙希が話かけてきた。 夏休みの間、バスケ部に一度も顔を出していなかったそう。 「一瀬さんどうしたの?」 「ちょっと相談したいことがあって」 話を聞けば部活で3年生を中心に嫌がらせを受けているらしい。 そういう子を減らしたいと思っていても、出来ることは本当に少ない、私にできる最善は、一瀬さんを死なせないこと。 今、私は何をするべき? 九月一日は一年で最も『子供の自殺』が多い日。
学校が終わり、家に帰った。台所に行った。腹が減っていたのだ。冷蔵庫を開けようとした。その時に気が付いた。冷蔵庫が美しかった。冷蔵庫は化粧をしていた。珍しく化粧をしていた。ということは、今夜は刺身だ。そのうちにお母さんが刺身を買ってきて、この冷蔵庫に入れるだろう。何せこの冷蔵庫は刺身のことが大好きなのだ。大好きな刺身を自分の中に入れられる日は、こうして化粧をするのだ。僕は微笑みながら冷蔵庫を開けた。麦茶が入っていた。飲んだらぬるかった。
どうも皆さんこんばんは メデューサ・メデュ子のお悩み相談室 どうぞ今夜も楽しんでお聴きください この番組は短編作品限定の小説投稿サイト『Prologue -プロローグ-』の提供でお送り致します この番組のナビゲーターを務めるのは私メドューサ・メドュ子です。皆さん、どうぞよろしくね 皆さんは雨は好きですか? あまり雨が好きって人にあった事はないけれど、私は雨、好きです。 なんか雨の日ってずっと薄暗いじゃない。昼間なのに夜明けのようで、なんか時間が止まっているようで、ワクワクします。 さあ今日もスペシャルなゲストの方に来ていただいております。星野源さんです。「どうも!星野源です!よろしくお願いしまーす!w」 ハハハ、凄い元気!w でも星野源さんは、ラジオで、ゲストって珍しいですよね 「そうですね。今日は楽しみです。皆さん、よろしくお願いします」 星野源さんは雨は好きですか? 「好きじゃ…ないですねwあっでも、雨の日に家の中でコーヒーとか飲みながら、雨を眺めるのは好き。それは好き」 確か星野源さんの曲で「雨音」がありますけど、窓の外を見る描写がありますね。本当に素敵な曲ですね。 「ありがとう御座います。そうですね。まさに雨の日の歌ですね」 是非皆さんも聴いてみて下さい はい、ではお悩み相談に参ります ペンネーム、蜜柑ジャムさんよりお便りをいただきました。ありがとうございます 初めてお便りを書きます。 私は四十歳の男性です。妻子がおり、会社では管理職をしています。 私は二年前から不倫をしていて、不倫相手は同じ会社の同期の人です。 私が彼女に仕事のことを相談したのが、そもそもの始まりでした。 彼女は私よりも先に管理職に就いていたのですが、私は管理職に就いたばかりで、膨大な仕事量に圧倒され、どのように仕事を進めて良いものか困っていたのです。 彼女と話しているうちに、自然とそういう関係になりました。 彼女は、結婚願望は無く、ただこの関係を続けたい様です。私は妻と子供に罪悪感を持ちながら関係を続ける事に慣れてしまいました。 どうしょうもない私は、どうしたら良いのか分かりません。どうぞお救いください。 ここで一旦CMです。
夜明けの大病院から、一人の男が出てきた。俺は歩道の清掃をしながらその背中を見ていた。男は長い、黒いコートを着ていた。ふらふらと歩いている。様子が変だ。しきりに目の辺りを手でこすっている。泣いているようだった。俺はゴミを集めながら男の後を尾けていった。男はぶつぶつと何か言っていた。酔っているようでもなかった。そして、ぴたりと立ち止まると、深いため息をつき、コートのポケットから何かを取り出した。そして、それをゴミ置き場にそっと置いて、また目をこすりながら去っていった。俺は男が置いた物をそっと見た。それは電卓だった。しかし普通の電卓と少しボタンが違っていた。数字や計算記号の他に、『善人』や『悪人』、そして『命』等のボタンが混じっていた。それですぐにわかった。これは死神が使う電卓だ。そしてあの男は死神らしい。大病院から出てきたことからもそれが確信できた。この電卓を捨てたということは、きっとあの死神は、死神の仕事を辞めることになったのだろう。それが病院側の判断なのか自身の判断なのかは知らないが、泣いていた様子から推測するに、辞めたくなかったのだろう。「もしかしたら、あの大病院では人が死ななくなるのかもしれないな」一瞬そう考えて、俺はぞっとした。
人間の細胞は、絶えず変わり続けているらしい。 そして、七年でほとんどすべての細胞が入れ替わる。 ほとんどすべての細胞が入れ替わるなら別人じゃないかと思うけど、私の意識は連続しているので、そう単純な話でもないらしい。 実際、周りの人も私が誰かわからなくなったりはしない。 「SNSの名前とアイコン変更っと」 なら、きっとSNSでも同じこと。 ドットをほとんど全部入れ替えたけど、皆私を見つけてくれるはずだ。 垂れ流した投稿は変わらない。 私という中の人は変わらない。 『誰かと思ったw』 さっそく、私が私として認識された。
私の世界も日々移り変わって、目が回って、うまくバランスが取れない。 足元には、読みかけの本が積み上がっている。 手を伸ばせば崩れてしまいそうな、頼りない塔。 けれど、他の世界にまで関わりたいと思うのは、傲慢なのだろうか。 そう考えながらも、彼女は今日もまた本を読む。 崩れかけた塔の一冊を、そっと引き抜いて。
近頃、神社に来る人々の態度が変わった。 私の領地に入るのに、一礼もしない。 挙句、私の道である鳥居の真ん中をずかずかと歩く。 手も清めず、荷物を持ったまま金を投げられ、写真だけはパシャパシャと撮る始末。 実に、居心地が悪い。 「昔は良かったなあ」 つい、懐古をしてしまう。 静まり返った敷地の中に、悩みを抱えた人々が礼を尽くしてやって来る。 私は何度も、進むべき道を示したはずなのに。 「引っ越すか」 隣町の神から聞いた。 日本には未だ、神聖な場所と崇められている場所があることを。 そして、そこにくる人々は、多少の礼を尽くすということを。 「元々、神社など人間が建てた依り代。私が生きるためには、不要だ」 私は長年の居を捨てて、空へと飛んだ。 新たな居場所を求めて。 それから数年。 風の噂で、私の古巣は未だに神社と呼ばれていることを知った。 もはや私がおらぬ、願いも叶わぬ荒れ地だと言うのに。 私は、ほとんど人の来ることがない奥地で、安眠を享受している。
全部にむしゃくしゃしたので、取り敢えず隕石を落としてみた。 スッキリするかと思って。 結果はどうなんだろう。 クレーターになった場所をまじまじと見てみると、 「常識」や「当たり前」は、 その醜さをさらに剥き出しにしながら、平然とのさばっていた。 余計に腹立たしくなった。 けれど、見ているだけで気分が悪くなってきたので、瞼を閉じた。 春を告げる小鳥のさえずりが聞こえる。 いつの間にか日が昇っていたらしい。
キンギョを飼っていた。ある日、ふと水槽を見ると、キンギョから長いフンが伸びていた。違和感を覚えた。そのフンは、文字列のように見えた。どう考えても、それは文字として読めた。キンギョはある程度の長さの文字列に見えるフンを出すと、それを底に沈め、次の文字列に見えるフンを出した。それを繰り返していた。俺はそれをすべてメモに取った。やがてキンギョからフンが止まった。キンギョはじっと俺を見た。俺はメモを見た。そこには一篇の詩があった。それはネコについて語った詩だった。「ネコに狩られて死にたい」というようなことが書かれていた。俺はキンギョを見た。キンギョは俺から目を逸らした。俺はネコを求めて街に出た。ネコを見つけたら捕まえて家に連れ帰るのだ。「ネコのフンはどんな形状だろう」俺は頭の片隅でそんなことを漠然を考えながら、街をさまよい歩いていた。
駅までの通りが昨日よりちょっと難儀に埃っぽく感じる 季節が移っていくことの予感がそこにもある 天気予報が今日にかぎって大当たり それで? だから? なんだというんだい これから別れ話をしようっていうのにさ あの日した、ささいな取り決めを僕はまだ覚えていて でも君は 僕のまわりだけやけに空気が薄いのは これからする君に対する懺悔の先取りか 単なる気のせいなら、でも それで? だから? 僕たちの未来は、もう 小さな桜のつぼみが風にそよっとゆれ その花めく姿に、僕は、とり残されてしまうんだ
夜道を歩いていた。真っ暗な夜道だ。コートのポケットからタバコを取り出し、火をつけようとした時、背後からひたひたという足音が聞こえてくることに気が付いた。俺は歩き出した。足音は消えなかった。どうやら後を尾けられているらしい。俺はコートの内ポケットに手を入れ、拳銃を握りしめた。そして、足音がぐっと近づいてきた瞬間、拳銃を構えて後ろを振り向いた。そこには、真っ暗闇の中に、さらに真っ黒で、ぷるぷるの、人間の形をした物がいた。俺はすぐに、そいつが、コーヒーゼリー人間だとわかった。俺はコーヒーを飲まない。だからこいつらに命を狙われるのだ。コーヒーゼリー人間が俺に飛び掛かってきた。俺は落ち着いて拳銃の引き金を引いた。弾丸が正確に胸を貫通した。一瞬の間があって、コーヒーゼリー人間はその場に崩れ落ちた。胸に空いた穴から、大量の白い液体が流れ出ていた。それはコーヒーフレッシュだった。俺はコーヒーゼリー人間の死体を一瞥し、歩き出した。少し歩いたら自販機がある。そこでコーラを買おう。
CMあけ はい、 と言う事なんですが、どうですか。星野さん 「いやー。すごいwこんなドラマみたいな話があるんですね」 本当ですね。この蜜柑ジャムさんは奥様とお子さんがいて、会社では管理職。順風満帆のように見えますが…こんなことになってしまっていると。 「でも、わかる気がするなぁ。なんか満たされている時ほど、人に優しくできるというか、満たされてるからこそ、分け与える事が出来るだと思うんですよね」 うんうん、そう思います。 「あと、『罪悪感に慣れてしまった』って言葉は、ちょっと…不謹慎かもしれないですが…痺れましたね。痛みに耐えすぎて麻痺してる感じですよね。この秘密の関係の時間を感じる」 そうですよね。始めは、ただただ仕事を頑張りたくて、話しやすい同期に、純粋に聞いていただけ。仕事以外の時間でも仕事の為にどうにか出来ないかと、必死だったはずですね。 話をしていく度に二人の距離が縮まり、二人はお互いを必要な存在から、特別な存在へ変わって行く。それは自然な流れだったたと思います。 彼女の方は結婚にこだわっていないし、たまに会って恋をしたり、愛を感じたりして、寂しさを紛らわしたいだけかも。 一方、蜜柑ジャムさんは奥様以外の女性を愛せる喜びと、奥様の体との違いを楽しめる背徳な遊びが出来る。 奥様との関係も今はレス状態なのかもしれないわね。 私はそのままでも良いと思います。 私も経験者だし。こんな姿なのはその罰のせいだしね。 ただ…ただね。あなた達に振り回されている子供の気持ちがやっぱり見過ごせないかな。あなたの子供は、あなたしか頼れないのよ。もう一度、あなたの子供の事をよく考えてみてください。 突然の雨で、同じ所で雨宿りしていた時間は、晴れ間の訪れと共に終わりを迎えるものです。 では行きます 【そのふしだらな心!石にしてやろうか!】 「ハハハハハ!姉さん。さすがです。石化アイ!めっちゃ迫力ある!」 フフフ、ありがとうございます。 ではここで一曲お送りいたします。 はなのなまえで「桜の嘘」 ♪ 白い雲が風に乗って流れていく 君への思いはあの雲に乗っている どうしょうもないことを 追いかけて追いかけて 自分だけが分かっているつもりだったから 桜の花びらひらりひらり まだ来ないバスを待ってる 桜の花びらひらりひらり 君の嘘は僕が気付くのを待ってる 匂いで君の機嫌が分かってくる 二人の思い出はこの街のどこにでもある もう知っていることを 追いかけて追いかけて ページの終わりを何度も 読み返して読み返して どうしょうもないことを 追いかけて追いかけて 自分だけが分かっているつもりだったから 桜の花びらひらりひらり まだ来ないバスを待ってる 桜の花びらひらりひらり 君の嘘は僕が気付くのを待ってる 君の嘘は僕が気付くのを知っているのでしょうか ♪ はい、ではそろそろお時間です。 星野源さん、ありがとうございました。 「はい、どうもありがとうございました!本当に楽しかったです!皆じゃーねー!またねー!w」 ハハハ。本当にありがとうございました。 どうぞ皆様に素敵な夜が訪れますように。 ではまたお会いしましょう。シャー
「好きな人がいるのですね?」 「はい」 お客さんは、大きく首を縦に振る。 「告白したいのですね?」 「はい」 「でも、振られるのが恐いのですね?」 「はい」 私は椅子の背もたれにもたれかかり、意味深な表情を浮かべつつ、お客さんの全身を上から下まで眺めた。 机を指てトントンと叩き、次の発言までの時間稼ぎをする。 お客さんがごくりと息を飲んだので、準備は整ったと口を開く。 「いいでしょう。失恋保険の加入を、許可します」 「ありがとうございます!」 お客さんは立ち上がって、私の両手を強く握った。 「さっそく行ってきます!」 そして、部屋を飛び出していった。 失恋保険は、加入者が失恋した時、私が焼肉をご馳走してあげる保険だ。 失恋という悲しいことの後に、楽しいことが何もないなんて悲しすぎるから作った。 「多分、成功すると思うけどね」 私は自分お財布の中を見る。 安い食べ放題二人分。 今日はきっと、財布の中身が増えるはず。 廊下をどたどたと力強く走る音が戻って来る。 これは成功したのだろう。 さてさて、加入料をもらわないと。 告白の後押しになったんだから、君は次の人のために、お金を出してもらおうか。
『脳細胞の一つを培養させてレトロゲームを操作させる研究が行われた』 というネット記事を読んだ そこでは、ゲームを操作するにあたって培養したものに【意識】が発現したと書かれといた しかし、一つの疑問が浮かんできた それは【意識】というより、【生存本能】によって動いているのでは無いかというものだ しても・しなくても、良い🟰意識 しなくてはいけない 🟰生存本能 今起きているのは「遊んでいる脳」ではなく 環境に適応する神経回路が、結果としてゲームを攻略している状態なんじゃ無いか思ったのである (完)
雨は続く 一度暖かくなった気温も今週に入り真冬に戻ってしまった。 人々はコートを着ている人もいれば、トレーナーですましている人もいる。 そして雨の日が続く。 先月は乾燥と晴れ続きで、火事やダムの貯水量のニュースが多かったが、この雨で解消されるだろう。 傘を持つ手に雫が伝う。 カモメはウルトラマンである。 カモメは今、息子を待っている。 そろそろ下校時刻になるので通学路のスーパーで息子が通るのを待っている。 今日は、妻の母親が白内障の手術を終え、退院する日なのでカモメは家族でお迎えに行くことになった。 下校途中の息子をつかまえ、先に病院に行っている妻と妻の母親を迎えに行く予定なのだ。 古いアスファルトの歩道は灰色の空を映す水たまりが散らばっている。 歩道は下校している子供達で賑わっている。皆、楽しそうに歩いている。信号のない交差点をどんどん進んでいくので危なくてしょうがない。 息子の姿を探す。いた!子供たちの行列の中で友達と三人並んで歩いている。息子は口がきけないから、騒いではなかったが、 楽しそうに、 三人そろって何か話しながら、 その中にうちの息子が赤い傘をさして、歩いている。 息子が僕に気が付くと、少し笑って、軽く手を振る。僕も傘を上げて答える。 冬の冷たい雨が服を濡らしていく 風に乗った雨が横から吹いてくる。 子供たちの明るい声がカモメの心に響く。息子の小さな手がカモメの手を握る。カモメはこの幸せを守っている。
何も無い様な有る日々の中ふっとこんな感じは 某ドラマや漫画に小説で有った様な話と何時も リアル感無く自分事じゃ無い感覚実際の出来事 数え物語と比べて大差無い時恥ずかしく為って 仕舞う否キャラじゃ無いと全力否定する自分を もう1人の俯瞰が呟くそのキャラは本当に私か 一般人にキャラも役冴え有る訳無いし自分一体 何者だろう学生時代からこんな奴かな気付けば 別人クラスと為り昔のクラスメイトからそんな キャラだっけとか本当にお前と疑われる程他人 其れ言われても当たり前だろう何十年ぶりだと 思ってるのか私は呆れ想い出話も何処か他人事 向こうは懐かしい感じだったが私は何故か全部 記憶無い事ばかり思わずやっぱ別人じゃ無いと 否定すると名字覚えてると言われ只の度忘れか おばさんだからと言い彼は否俺おじさんだけど 全部覚えてると言いその後変わちゃたなと呟き 私はアレこの台詞の様な言葉は何処かで聞いた 様な何のドラマか歌の歌詞か考えて思わず私の 方が恥ずかしく為りその言葉を遮るみたい別な 話題を出しSNSから自分が今コラム投稿してる 事を告げ彼は暫し私のコラムを読みこんな性格 だっけと言い私は性格良過ぎて逆曲がりしたと 言い彼は真剣に其れ性格悪く為った意味と言い 私は否元々人畜無害タイプと懐かしいフレーズ 出した彼は何故か嬉しそうにそうだったと言い 私は否多分彼も此方を良くは覚えて無いかもと 思い人の記憶は良い様に改竄される物だと考え その時当然思い出した学生の頃彼が嫌いだった 事その頃彼は陰口言うタイプで男の癖して女の 腐った的な男だったけど歳月は人を大人に変え 普通の優し気なおじさんに見えた私は無表情な 笑みを浮かべこう言う奴が一番ヤバいだろうと 感じてそのまま彼の2次会の誘い笑顔で断った 瞬間昔の表情が覗いた私は業と元気にじゃ又ね 今度は鍋でも行こうと明るく告げたら嬉しそう 手を振る姿が見え私は何処か漫画のキャラ達の 様に肩竦めて胸に手を充てホッと一呼吸をする 一番の敵は天使の表情で遣って来ると口ずさみ ながらヤバいこれも誰かドラマで言ってた台詞 一生治らない自分の物語症候群かも知れない
世界には色がある。 学校の机の色は、だいたい茶色、時々白。 信号機の色は、だいたい白色、時々黒とか茶色とか。 信号機の中で点灯するのは、青・黄・赤と呼ばれる緑・黄・赤。 世界に存在する色は、果たしていつ誰が決めたのだろうか。 フルマラソンの距離が、王女の「ゴールはボックス席の前に設置して欲しい」という要望によって、四十二キロメートルに百九十五メートル足されたように、誰かの気まぐれで決まったのだろうか。 色はどこから来たのだろうか。 少年が、パレットの中に絵の具を落とす。 緑と、黄と、赤。 赤と黄を同じ量だけ、同じ場所に落として、絵筆でぐるぐる混ぜる。 赤と黄がどこかへ行って、橙が顔を出した。 「明るい赤だ!」 少年が変化に喜ぶと、教師がパレットを覗き込んで、くすっと笑った。 「これは橙色だね」 「? 橙色じゃないよ。赤色だよ」 「赤はこれ。橙はこれ」 教師は、色の名前を教科書で決める。 少年は、色の名前を記憶と経験で決める。 「赤なのに」 少年は絵筆を水につけて余計な色をそぎ落とした後、明るい赤を絵筆につけて、炎を描き始めた。 少年にとって、赤は炎には赤すぎた。黄は炎には黄すぎた。 炎の中に、赤と黄が見えた気がしたので、混ぜてみた。 「炎の赤!」 世界にまた一つ、新しい色が生まれた。
テレビをつけた。天気予報が流れていた。「明日は詩集が降ります」窓から空を見ると確かに詩集雲が出ていた。もしかしたら今夜辺りから降り始めるかもしれない。その夜、外から、バサバサ、という音が聞こえてきた。カーテンを開ける。空から何十冊もの詩集が降ってきていた。サンダルで外に出て、何冊か拾い上げ、家の中に戻る。パラパラとその詩集をめくる。ろくでもない詩ばかりだ。すべてゴミ箱に捨てた。バサバサ。外から聞こえてくる音が激しくなってくる。本格的に降り始めたようだ。ため息をつく。良い詩が載った詩集が降っていたのはもう何十年も前の話になってしまった。地球環境問題はいよいよ深刻になってきたようだ。
絵描きがキャンバスを立て掛けた時、イーゼルの裏で糸を張っていた蜘蛛が、絵の具を溶かしたパレットに落ちた。それから何日かが過ぎ、絵描きがキャンバスに向かった時、足元に蜘蛛の死骸を見つけた。その蜘蛛からは、青色に染まった糸がゆらゆらと、頼りなくイーゼルに張り巡らされていた。
人間に発見されるという受難 追い詰めたとおもったら消えそうになる………異界の空気が濃い。 陰影がくっきりしてさっきと違って影に沈んでるから異界が迎えに来ている、その瞬間を見てしまったよう 招かれざる客の前に現れる ――通行証は。ない? ならば去れ。 すこしのぶれが怪異が顕現するときのゆらぎに見える 異界の風がふく 怪異を見つけた そこには何もいなかったはずなのに、目を逸らした隙に、世界がそれをもとあるかたちとして定義した 未確認生物UMA labelNo.‐存在しない存在 発見された側のはずなのに、ここは我々の世界のはずなのにまるであちらに侵食されるのを感じる ああ!わたしを天にかえして。 まぼろしの天の迎えを幻視して渇望する一射 あしがあるのに歩くことも思いつかず、からだが追いつかないまま手だけを延ばしている。あれが人間でないことの証明。 にんげんのからだにとじこめられてしまった。 わたしを はっけん したおまえをゆるさない。 幻獣のたてがみは まだみじかくて 背中を守れない
たまに、(自分はちゃんと生きられているのか)と不安になる。勿論、ちゃんとなんか生きられてはいないのだが、そうではなく、そういう事ではなく、人として、大人として、親として、夫として、最低限の行動が出来ているのかと不安になる。 法に触れることはしていない。いや、たまに信号無視や、横断歩道を渡らない、女性が泣いていても声をかけない、なんて事はたまにある。が、無闇矢鱈に自分の不機嫌を外に出さないとか、挨拶をするとか、愛想笑いをするとか。日々、少しでも、善良に生きる事を実行しているのかと自分に問いかけてしまう。そんな日がある。 街を歩いていると、肩で風を切って歩く若者を見たりするが、彼が一生あのままでいられないことを私は知っている。彼が結婚し子供を持つ頃にはもう少し普通になっている。また、自分を変えられないのなら、家族から弾き出されるだけである。もう少し言えば、町内からも弾き出される。妻や子供を持てば自分という存在は家族というチームの中の一人になる。周りはそんな目で彼を見て、自分達の過去と比較し、正常か異常かを判断するのだ。 誰でも若いうちは世間に対して自分のズレは気が付かない。社会に放り出され莫大な情報に圧倒されるからだ。転生と言っても良いほどに。だがラジオのチューナーが徐々に合わさり声が明瞭になるように、歳を重ねれば重ねるほど世界が見えてくる。自分の足元から延びている光の道が見えてくる。 近所の道路脇にさりげなく梅が咲いている。ほのかに良い香りが記憶に残る。通りをスクーターが孵化しながら通っていく。ハンドルを細かく捻り、ガゾリンを非効率に爆発させ、大きな音を自分の威厳と同化して楽しんでいる。何十年も前から変わらぬ作業だ。そして梅もおそらく何千年も前から変わらぬ作業で花を咲かせるのであろう。 私も梅のようにさりげなく咲き、ほのかに良い記憶を残していきたい。
黒崎「なあ、委員長って休みの日何してんの?」 霧島「そうね、、勉強か本を読むくらいかしら」 黒崎「うえ〜つまんなそ〜、、」 霧島「悪かったわねつまんなそうで」 黒崎「なんか趣味とかねえの?」 霧島「ないわよ」 黒崎「う〜ん、、、友達とかとは遊んだりしないの?」 霧島「遊ぶ友達がいないわね」 黒崎「そ、そうか、、、、、んじゃあ今度の休み俺と遊びに行こうよ」 霧島「はい?」 黒崎「そんな休日に勉強なんかしてもつまんないだろ?たまには息抜きも必要だ」 霧島「あんたはいっつも息抜きしてそうだけどね」 黒崎「いや余計なお世話だわ、、、んで行くの?行かないの?」 霧島「まああんたがそんなに行きたいならしょうがないから行ってあげるわ」 黒崎「はいはい、楽しみすぎて寝坊しないようにな〜」 霧島「た、楽しみなんかじゃ、、!いや楽しみだけど!えっと、、その、、うるさいわよ!!」 黒崎「お前ってとりあえずうるさいって言っとけばなんとかなると思ってるだろ、、」 霧島「うるさいわよ」 黒崎「はい」
霧島「ちょっと黒崎くん!タバコ臭いんだけど!もしかして学校で吸ったりしてるわけ!?」 黒崎「はぁ?吸ってねえよ、ダチが家来て吸ってたから匂い移ってんだよ。俺は吸ってねえ」 霧島「ほんとかしら...そんなピアス空いてて金髪の見た目の人に言われても説得力が皆無なのだけれど」 黒崎「だから吸ってねえっての」 霧島「まあ、それならいいのだけれど。万が一吸ってたら停学になるわよ、注意なさい」 黒崎「俺が停学になったら委員長寂しくなっちゃうもんな〜」 霧島「べ、別に寂しくはないわよ!!ただ悪いことだから注意喚起してるだけよ!!」 黒崎「そんな寂しがり屋の委員長のためにも吸いませんよ〜っと」 霧島「う、うるさい!!!」
開店前の和菓子屋の前で、今帰は緋毛氈の敷かれた縁台に腰かけ大きくあくびをした。店の自動ドアを手で開け、外に出てきたエプロン姿の娘の手にはみたらし団子が三本のった白い皿があった。 「これ、おじいちゃんがお手伝いのお駄賃だって」と言いながら羽海は今帰の隣に白い皿を置いた。 「じいさんはまだ俺のことを子どもだと思ってるみたいだね。もう社会人だって伝えておいてよ」 今帰は大袈裟に呆れたように言ったが、左手はすでに団子の串を掴んでいた。とろりと艶やかなタレからは小さく湯気が昇っている。 今帰は喫茶店を経営する幼馴染に頼まれて、店で出す苺大福を受け取りに来ていた。 「就職してないんでしょ。お手伝いついでにマスターの店で雇ってもらったら?」 腰に手を当てて見下ろす羽海に「最近の高校生の言葉は刺さるね」といかにもなんともなさそうに返事し、団子を頬張った。 「そういえば、今日学校は?」 「今日は日曜日。曜日感覚もなくなっちゃったの」と大人びた口調で言いながら、今帰の横に腰かけた。今帰はすでに二本目の串を掴もうとしていた。 「そういえば、スケサラって知ってる?」 羽海は興奮を隠す様子もなく声を高くして言った。今帰は団子を噛みしめながら首を傾げた。 「廃ホテルからトンネルに入るまでの川沿いの国道をスケボーで走るサラリーマン、略してスケサラ」 自分が名付けたように自慢げに話す羽海の言葉に、眉を上げて大げさに頷く。 「クラスの男子が見たんだって」と目を細めた羽海は、今帰の反応も待たずに話を進めた。 「その男子が免許を取ってすぐに友達三人で夜中に廃ホテルまで肝試しに行ったらしいの。流石に廃ホテルの中にまでは入らなかったらしいんだけど、その帰りに車道の左端をスケサラが走ってたらしくて。車のライトがそれを照らすまで、誰も気付かなかったらしいよ。驚いて抜かそうとしても、速くてなかなか抜かせなくて。その時のスケサラ、一回も地面を蹴っていなかったんだって。それどころか、姿勢が崩れる様子もなく、まっすぐ進むスケボーに案山子のように立っていたらしいの」 羽海の声は少しずつ大きく早くなっていた。 「そういう案山子なんじゃない?あそこの道、川の反対側は畑だし。電源を切り忘れた電動案山子が夜中に家から脱走したとか」 今帰は微かな疑いを含みながら訊いた。その言葉を待っていましたとでもいうように羽海はにっと口角を上げながら「それがね、続きがあるの」と声を低くして言った。今帰は興味深そうに羽海に視線を向けながら三本目の串を手にとった。 「三人で行ったって言ってたでしょ。そのうちの一人、後部座席に座っていた子は肝試しに行く前まで塾に行ってて、帰りは疲れて寝ていたらしいんだよね。スケサラを追い抜いた後、その子は目を覚まして言ったんだって。「変な夢を見た」って。夢の中でその子は夜の道をスケボーで走っていたんだって。後ろから車のライトを浴びて、追ってくる車から必死に逃げていた、そういう夢」 今帰は串を持ったまま、相槌も打たずに羽海の話に聞き入っていた。 「夢の中の恐怖とか疲れがいやにリアルで目覚めたすぐは後ろを気にしたり、まだ落ち着かない様子だったらしいよ」 羽海が無邪気に語り終えた後、今帰は何かを考え込んでいるようにぼんやりとした動きでみたらし団子を口に入れた。 喫茶店の扉が乾いた鈴の音を鳴らして開いた。薄暗い店内では黒いエプロン姿の男がテーブルを拭いている手を止め、顔を上げた。 「ありがとう。カウンターに置いといて」 今帰は三段に積まれた長方形の箱を、そうっとカウンターの上にのせ、そのまま席に腰かけ興奮気味に話し出した。 「聞いてよ伊東君。スケボーおじさんがとうとう出たらしいよ。しかも人の夢にリンクするらしい」 伊東はカウンターの中に入り、今帰の幼さの残る無邪気な笑顔を見ながら苦笑した。 「それ、お前が作った嘘だろ」 「人の夢にリンクするなんて、俺は言ってないよ」 そう言ってすぐに今帰は頬杖をついて少し考え込んだ表情になった。伊東は箱の蓋をあけて苺大福を一つとり、桃色の小皿に載せて今帰の前に置いた。 「自分の作った嘘が怖くなったか?」 伊東は悪戯っぽく笑った。 「いや、もしこの噂のせいで事故を起こす人が出てきたらどうしようって」 独り言でも口ごもるように言う今帰に、伊東は何気なさそうに言った。 「大丈夫だよ。そんなおじさんなんて実際いないんだから。お前が一番よくわかっているでしょ」
すっかり枯れてしまってからはそのままにしておいた朝顔の鉢植え 庭に出ても視線を向けないでいたら、いつの間にかタンポポが顔をのぞかせていた 傷つけないように掘り返し、庭のすみっこに植えなおしてやる 隣の家では奥方のくしゃみが止まらないらしい 難儀だな 億劫に思い、この冬は鉢を家のなかに入れてやるのをサボってしまった どれもこれも冬越しができてなくて、茶や黒い色を見せている すまないことをした 謝っても、その草花たちは、もういない 隣の家から、またひとつ、くしゃみが 頭のなかで、やろうやろうと思っていた庭のことをあらかたやり終え、背中にはじっとりと汗が そういう時期になっていくのか 家に入って汗が引いてしまえば、まだまだ寒く感じられる どっちかにしてもらえないかな 言ってみたところで、聞いてくれるものは、どこにもいない 隣の家から、もうひとつ、くしゃみ まったく、難儀なものだな ゆっくりと、丁寧に、珈琲をいれていく さて、今日は、どの本を読もうか 珈琲を口に運ぶ 隣の家からは、何も聞こえてこない すこし、さみしい
段ボールの積まれた部屋に、さびしさが響く。 旅立ちの朝は、思っていたより、ずっとあっけない。 「忘れ物ない?」 埃っぽい部屋におかあさんの声。 「うん」 窓の外には、淡い桃色のつぼみ。 今年は、この街の桜は見られないけれど、新しい街で咲く花が、きっと私を待っている。 「心配しないでも、荷物はちゃんと送っておくから」 「うん」 短く応じながら靴ひもを結ぶ。 結びがわずかにそっぽ向いちゃっても、直さずそのまま歩き出す。 本物の蝶が止まってくれてもいいけどね、なんて思いながら。 ドアを開け、一歩を踏み出す。 見慣れた景色が、見慣れているはずなのに… 何かが動き出す気配。 世界が、やけに眩しい。
いつもそう、どうして。 『俺、束縛とか嫌いなんだけど』 『もう少しくらい可愛くなれないの?』 でも貴方と会えて。 『俺、三つ編み好きなんだよね、ちょっとやってあげる』貴方のためなら私、不器用だけど頑張れた。 『ほつれてるよ直してあげる』初めて恋が出来た、可愛い女の子らしい恋。 『焼肉好きなの?良いね俺も好き、今度一緒に行こ』 私、貴方のこと何でも知ってる。貴方は私が「好き」と言っても信じてくれない。 なら行動に移せば良い、好きな曲、好きな食べ物、誰と出かけたか、何にお金を使ったか、全部知ってる。知っていく度に貴方を好きになる。そして貴方はこの事を知ってる。それでも、あなたは私と一緒にいてくれる、大好き、もう離さない。
近所にビルが建っている。各地に教室を展開している、有名な学習塾の本部が入っているビルだ。そのビルのてっぺんには、巨大なオブジェが設置されている。そのオブジェは、巨大なガラス瓶の中に、巨大な脳みそが入っているという物だった。俺は頭が悪いので、その意味がよくわからなかったが、人間の頭を良くするための施設である学習塾の本部が入っているビルだから、そこには何か意味があるのだろうということはわかった。それにしてもリアルな脳みそのオブジェだった。そんなある夜、散歩途中に、たまたまそのビルの近くを通りかかったら、数台のパトカーが停まっていた。小さな人だかりが出来ている。「何かあったんですか?」近くにいたおじさんに尋ねると、「ビルの屋上に誰かが侵入したそうですよ」と答えた。「例のガラス瓶のオブジェが壊されたそうです」翌朝、そのビルの方から聞こえてくる、ものすごい数のカラスの鳴き声に気づいた。カーテンを開けて、ビルを見ると、昨日壊されたという部分から、ガラス瓶のオブジェの中にカラスが次々と入っていって、脳みそをつついては旨そうな顔をして高らかに鳴いていた。そこで初めて、あの脳みそは本物の脳みそらしいということがわかった。脳みそはどんどん欠けていった。見るも無残な様子だった。それから程なくして、その学習塾は突然倒産し、各地の教室は閉められ、ビルは廃墟になった。巨大な脳みそがカラスに食われたことと関係があるのかどうかは知らないが、おそらく関係があるのだろう。あと、これは関係ないかもしれないが、この間、カラスの研究で有名な大学教授が、この町のカラスについて調査を始めたと地元ローカルテレビのニュースで見た。俺は頭が悪いから、諸々ひっくるめてよくわからない。