浮気

「なんで浮気なんかしたの?」 そう問いながら、涙と共に僕を刺す君を見て美しいと思ってしまったのは、僕がおかしいからなのか、君がただただ整った顔をしているからなのかは、人と接触することを禁じられ、外に出ることすら叶わない僕の壊れてしまった脳では考えることすらままならない。もちろんオセロ症候群を患う君にもわからないだろう。

三が日の終わりに。

 書くことがないから日記がつけられない悩みは巷間でよく聞くものだが、書くことがたくさんありすぎてどこから書いていいものかわからず筆を投げるというのはあまり聞かない。  どうやら贅沢な悩みらしい。    ○    気づけば2026年の三が日も折り返し地点を過ぎた。思えば、今年の正月はもう2度とやって来ない。そのことに少し寂しさが募る。ちょうど車の窓から富士山が見えた時と似ている。構えていれば心に収めることができたものを、偶然かつ刹那的な邂逅により一瞬のうちに過去となってしまう。  正月を構えて迎えるというのは、見過ごしてきたが、なかなか難儀に思う。よし正月だ、と意気込んで楽める人はいるのだろうか。  次に来るは2027年だ。少しばかり名残惜しい。    ○  親戚の人に会うのは正月くらいのものだ。夏に京都へ行くのが私の恒例であるが、その時の土産を届けるときに会うくらいで、他日に会うことは滅多にない。  その程度の関係である。  けれども、いざ家に行くとなると、少々心が軽くなる。  これまで超人のように見えていた叔父叔母が、ひとまわり小さく見える。子どものころはパリッとしていた居間の空気が、今では温かみのある崩れた豆腐のように柔和だ。空間が、溶けている。  机の上に出された特選の寿司をばくばく食べてゆく。いつもなら点々と残る寿司もあっという間になくなってしまう。  ビールを差し出されるが、車で来ているからと胸を張って断った。  隣の和室では甥と姪が大きな声で騒いで遊んでいる。従姉妹がそれを宥める。耳を塞いでしまうくらいの声量も、今日は崩れた居間の空気に吸い込まれる。  乾いた雪が窓にぶつかり、ぱさぱさと乾いた音を立てている。 「雪だねえ」 「積もるかなあ」 「傘持ってきてないよー」  ちょいと小突けば倒れてしまう会話だ。だが今日は安心して聴いていられる。  ストーブが優しく燃えるような部屋の中で私は微睡みながら芥川の「トロッコ」を読んでいる。  しばらくして私の外郭がこの空間と混ざり合うころ、母親が、 「雪が本格的になる前に帰ろうか」  と言った。  母が動く動線に冷たい空気が流れ込む。  私はまだもう少しここに居たいと思ったが、真暗な道に真白な雪の玉が降り注ぐのを想い出して、やや性急に身支度を始めたのだった。    ○  親戚の人たちはみんなで見送ってくれる。あまりにも玄関が狭いので、母のお姉さんとお母さんしか顔は見えない。  雪はわずかにみぞれへと変わっている。思うほど積もっていないのを見て、肩の緊張が解けた。  叔母が顔だけを出しながら「気をつけて」と言っている。  あゝもう少し話せばよかった。  やがて玄関の扉が閉まる。その音が先刻の子どもたちの声よりも無性に大きく響く。  雪はしばらく止みそうもない。

今日の転機は晴れ

今日は昨日の豆乳鍋の残りを食べる豆腐を忘れ 苦笑いけど豆乳も豆腐と同胞だし苦汁が無い位 本来の目的湯葉ですアッ思い出した冷蔵庫には 湯葉刺しが有るんだ御飯も有るし豆乳鍋と湯葉 刺しの豆腐モーニングと洒落込もうかなしかし 飲む物は水、珈琲、ココア、今一アンバランス だけど今日は何時よりも紫、ピンク、コバルトブルー、 黄金の太陽が眩しいからまぁ~良っか

いなくなった私のタクロー

「ううぇーん」  私の泣き声に反応して、音に合わせて踊るあの懐かしいフラワーロックがゆらゆら踊る。  いつも花を枯らしてしまう私への、タクローから最後のプレゼント。  初めて泊まってくれた翌日から、姿を消したタクロー。  「ううぇーん」  あ、あれ? また止まってしまった。  電池が切れるのが早すぎる。昼間は大抵、この部屋にいないのに。  その瞬間、ビビビッと体中に電気が流れるのを感じた。  まさか、そんなことって。  いや、間違いない。……いびき、だ。  私のいびきがタクローを音信不通にし、フラワーロックを毎夜、動かなくなるまで踊り狂わせていたのだ。

わたあめのような先輩

「このアイス、美味しいよ」  美しい海を表した名前の先輩が教えてくれたこと。あと、色彩検定は高校生のうちに受けた方が良いってこと。  おとぎ話に出てくる少女のように優しくしっかり者の先輩。悪意なく素直で、子どものような柔らかな話し方で誰からも好かれる先輩。  私はそんな先輩が苦手だった。それは今日も変わらない。あなたに対する劣等感は消えない。きっと、ずっと消えないです。  でも、あなたが美味しいと教えてくれたアイスは美味しかった。  いつか、また一緒にアイスを食べてください。

君が望むから僕は死んだのさ。

           ◇  君が死んでくれと僕に言うから僕は死んだのさ。  君が死んでくれとあの日言うから僕は死んだのさ。  君が死んでくれと僕に言うから僕の見る景色は消えていった。  君が死んでくれと僕に言うから僕の世界は白くなっていった。  僕が見たもの見てきたもの関わった全ての記憶と感情、その全てが消えていく。  君が死んでくれと僕に言うから僕はなかった事になるのさ。  君が死んでくれと僕に言うから僕の全ては跡形もなく消えて、誰の記憶にも僕の記憶にも君の記憶からも死んでいく。  君がそう望むから、死んでくれと望むから。    僕はなかった事になっていく。  君が望むから僕は望み通りに死んでいく。 「別にそれが嫌な訳じゃないんだ。僕は初めから最後まで君の為に存在したのだから、君が泣きながら僕を必要として、君が泣きながら僕に死んでくれと頼むのなら、それは僕にとって喜ばしい事だから」  君が死んでくれと僕に言うから僕は君の事を忘れたのさ。  君が死んでくれと僕に言うから僕はもういないのさ。 『お願いだからお願いだからお願いだからもう私から死んで! お願いだから死んでよ!』  鏡の前で頭を抑えて泣き崩れ、嗚咽しながら君は何度も何度も何度も僕にそう言うから。  もう僕の存在は君には必要なくなったのだから。  僕はもう死ぬのさ、死んだのさ。  君が死んでくれと僕に言うから僕はもう直ぐ、僕を忘れる。文字通り本当に死ぬのさ。  けれどもしまた君が傷付いて挫けそうになった時は、きっと僕はまた現れる。  僕は君の為に生き返る。  僕は君の為に存在する。  あぁ僕の最愛の人、大丈夫僕は〝君〟を愛しているよ。  君は僕だけで僕は君だけだから。  苦しくなったらまたおいで、悲しくなったらまた呼んで、ツラくなったらここに来るといい。  心の深い深い深いところで僕はずっと死んでいるから。  君が助けを求めるその日まで。  あぁもうすっかり何も見えない、意識も―――。  ◇◇◇  ゆっくりと瞳を開けた。  すると真っ先に真っ白な天井が眼にはいる。  いつの間にか私の身体はベッドに沈んでいた。  ぼーと眺めていると何かが頬を伝う。  触ると指先が濡れた。  涙だ。 「……終わったんだ」  起き上がり、手足を動かす。  手を開いて閉じて、動くのを実感する。  ふと、壁にある姿見を……確かにそこには私が映っている。  久々に見た気がした。いや実際久々だ。 「ただいま」  久々に表に出た。  私はいつもの生活へと溶け込んでいった。  最初は人が変わったようだと言われたが、昔から私を知る者は元に戻ったのかとも言った。  けれどそれも時が立つにつれ、誰も言わなくなった――。    今の私が私になったから。  これが本来あるべき姿だから。  そしていつしか私は私の中にいる存在さえも忘れていった。 『君が僕を必要としなくなったから僕は本当に、死んだのさ』  ― 完結 ―

働けよ

足があるなぜ動かないお前たち ここは食堂ではないんだが 心は荒む ヒトはつまらない

モノクロームの彼女

「また見てる」 隣の席に座る親友の健人が、肘で小突いてきた。俺──陽斗は、慌てて視線をスマートフォンの画面に戻したが、頬の熱は引かなかった。 俺の視線の先にはいつも、クラスのマドンナ的存在である美月がいた。彼女は今、友達と楽しそうに笑っている。その笑顔を見るだけで、俺の心臓はいつも異常な速さで鼓動した。 美月とは、中学からの同級生だ。けれど、接点はほとんどない。彼女はいつもクラスの中心にいて、俺はいつも隅っこで彼女を見つめているだけ。俺の世界は、彼女という色鮮やかな存在を除いて、モノクロームだった。 「いい加減、話しかけろよ。卒業まであと少しだぞ」 健人はそう言うけれど、それができないからこそ、これは「片思い」なのだ。美月には、いつも隣にいる亮太という彼氏がいた。サッカー部のエースで、背も高く、明るい人気者。美月と亮太は、まるで絵に描いたようなお似合いのカップルだった。 俺は、彼らを見るたびに、自分の無力さを痛感した。亮太のようにカッコよくもなれないし、話術も面白くもない。俺が彼女に近づける唯一の瞬間は、委員会活動でたまたま一緒になった時くらいだった。 ある日の放課後、図書室で美月と二人きりになった。偶然隣の席に座ることになったのだが、心臓がうるさすぎて本の内容が頭に入ってこない。 「あのさ、陽斗くんって、いつも静かだよね」 美月が突然話しかけてきた。俺は喉を鳴らしながら「あ、うん」としか答えられなかった。 「私、静かな人が落ち着くから、羨ましいなって」 彼女はそう言って、少しだけはにかんだ。その笑顔は、あまりにも近くて、あまりにも眩しかった。俺は、何も言えなかった。ただ、「もっと話したい」という想いだけが胸の中で渦巻いていた。もし、彼氏がいなければ、俺にもチャンスがあったのだろうか? 卒業式の日。第二ボタンを求められる亮太を遠目で見ながら、俺は一人、教室の隅にいた。美月は亮太と楽しそうに話している。 俺は、結局最後まで彼女に想いを伝えることはできなかった。伝えようとした言葉は、いつも喉の奥で消えてしまった。 下駄箱で、俺は勇気を出して美月に声をかけた。「あの、卒業おめでとう」 「ありがとう、陽斗くんも」 美月は笑顔でそう答えた。それが、俺たちが交わした最後の言葉だった。 桜並木の下を歩きながら、俺はポケットに忍ばせていた、いつか渡そうと思っていた手紙を握りしめた。もう、届くことはない。 俺の世界は、彼女という色鮮やかな存在を失い、完全にモノクロームへと戻ってしまった。それでも、あの時彼女が見せてくれた一瞬のはにかんだ笑顔だけは、俺の心の中で色褪せることなく残り続けるだろう。届かなかった想いとともに、俺は一人、新しい世界へと歩き出した。 ○作者から○ あけおめ、ことよろ、お正月です。 新年一発目、おひさです。 今後も、どぞお願いしまっする じゃっ、また次回に…

薄暗闇から

 この薄暗い部屋に閉じ込められて、一月が経った。部屋の中は質素な造りだが、ベッドは意外にも上質なマットレスで、シャワーとトイレも完備してあり、生活するには申し分ない。食事は野菜などの彩は無いが、三食差し入れられる。  堪えがたいことは、娯楽が少ないことだ。テレビやパソコンが無いのは勿論、所持していたスマートフォンも取り上げられている。何故かカバーを外された本だけは差し入れられるが、異常な状況では読む気力も湧かない。言わば、生きる楽しみを見いだせない空間。  犯人はわかっている。目の前にいる女だ。 「どうしてこんなことをするんだ」  鉄格子の向こうにそう詰問すれば、女はいつも困った様な表情をするばかりだった。   彼女のかつての交際相手に相談を受けたのが、出会いのきっかけだった。曰く、彼女は相手に尽くすタイプの女性で、しかしそれに際限が無い。ノイローゼになった彼が逃げ出し、身近にいた自分が次の寄生先として選ばれた。  意外にも彼女との生活は悪くはなかった。容姿は華美ではなく、常に地味な服装だったが、むしろ奥ゆかしく好感が持てる。流行の話題には疎いが、古文や歴史に造詣が深く、博識深い。聞いていた異常性を置いておけば、所謂大和撫子そのものだったのだ。  うまくいっていたはずだった。この場所に監禁されるまでは。  あの日は雪が降っていた。寒さに身を震わせ、数か月後に来る春を思い、道すがら在原業平や西行が詠んだ句について語った。 「和歌に詠まれる桜は、どうしてこうも魅力的なんだろう」 「昔は、今よりも目に入る色が少なかったですから、桜の初心な色ですら、貴重な彩、だったのでしょう」 「成程。そもそも現代とは環境が異なるか。僕もいつか全身で感激するような桜を見てみたいものだ」 「ええ、そうですね」  そんな些細な夢も語って、彼女も微笑んでいたというのに。  当夜、勧められるまま深酒をしてその後の記憶がない。目が覚めたらこの部屋にいた。初めは激昂して、それから諭すように、ある時は懇願に近い声色で、どんな言葉で尋ねても、彼女の答えは無いか、曖昧なものばかりだった。  彼女は、僕の思いを試しているのか? 監禁という行為が生み出す歪んだ関係性。被害者からの依存性を期待しているのだろうか。彼女の目的は、ただこうして廃れていく僕を、籠の外から眺めて居たいだけなのかもしれない。  薄暗い部屋で、食事と睡眠の数を数え、もう二月も経った。ひたすら薄暗闇の日々が続いたのだ。段々と、自分の中の何かがすり減っていくのを感じる。 「なあ、今日でもう二月だ。あんたはいつまでこんなことをするつもりなんだ?」  辛うじて、まだ忘れていなかった声と言葉で問いかける。どうせ返事は無い。宛てのない言葉は、壁の中に消えていってしまうのだろう。ただの独白だ。  そう自嘲しながらも、久々にあの困った顔つきを拝んでやろうと、俯いていた顔を上げた。彼女の唇が動いた。 「あと、二週間、くらい?」  食い下がるべきだったろうが、驚き、言葉が出ない。明確に期限を口にしたのはこれが初めてだった。彼女に何の変化があったのか。  その日を皮切りに、彼女は、毎日私の言葉に返事をするようになった。 「もうちょっと、今日は、まだ」 「まだ早いの、だめ」 「きょ、今日は、雨が降ったから」  ある日、聞きなれない金属音と共に、いつもとは異なる微妙な風の流れを感じた。ひた、ひた、と足音が近づく。顔を上げると、鉄格子の向こうの彼女が傍にいた。 「あの、これ」  差し出されたものは、黒いアイマスクだった。付けろというのだろうか。視線で問いかけても、困った表情をするだけだから、望まれるままに装着した。手を引かれ、立ち上がる様促される。僕は彼女のするまま、素直に従った。 「どこに向かっているんだ」  答えのないまま、歩いた。あの仄暗闇から解放されるのならば、どこでもいい。僕はあの薄暗い部屋を出たのだ。  途中から、足の裏に感じていたものが、コンクリートよりも柔らかい感触に変わった。風にのって、土と草の匂いがする。 「取ります、ね」  もう随分歩いたと疲労を感じ始めた頃、ふと立ち止まって彼女は言った。  髪が巻き込まれ頭皮が引っ張られたが、些細な問題だった。  流れ込む光の束に、すぐには目を開けなかった。ゆっくりと瞼の裏に馴染ませ、恐る恐る開いていく。  色の洪水だった。失くしていた色、求めていた色、知っていたはずのものが、未知のものに見えた。背丈を優に超える幹は、大地の色を吸い込んでいる。風に舞い散る花びらには、一枚一枚色があった。全て、異なる色なのだ。  言葉にならない僕に、彼女は嬉しそうに笑った。久しぶりに見た笑顔だ。僕は、彼女が僕を閉じ込めた理由を悟った。後はただ、手を握り締めて、桜を眺めた。

tutomuとosamu

人間達は目標や尊敬する者を両親と言う者が 居る一方反面教師としての御手本にする僕は 絶対に彼の様な無責任な生き方や子育て何か するものかと誓い今此処に記す多分彼為りの 苦労や悩みに絶望する事冴え有った様な記憶 彼の正体は非常に甘えん坊でさみしがり屋の 無い物は自分で探せず他人任せの他力本願な 王様気質だったから僕ら奴隷状態の様でした プライドと気位の高い人間は殆ど感謝の念が 無くやって貰う事が当たり前だと言う狂った 信念が有る様に感じた命令に逆らえば暴力を 奮い男女構わず殴る蹴る状態で学校の体育の 時の着替えは身体の痣を隠す為トイレだった 学生時代tutomu恐ろしく僕はびくびくして 過ごし其処へ中途から来た教師も又殴る蹴る 暴力教師が僕達の担当と為った月曜日に僕は 寝坊して仕舞い急いで教室に向かいギリギリ 国語の授業を受けられて安堵してた時授業の 終わり先生に呼ばれビンタを受けぼんやりと する僕にosamuは何故遅刻した何故電話して から来ないんだと迫られ僕は怯えながら早く 学校行った方が良いと自己判断して来ました ごめんなさいと素直に詫び彼は以後気を付け なさい教室に戻って良いと告げ僕の頭を撫で 笑顔でお前は大人に為っても悪い事をした時 素直に謝る気持ちを忘れるなと言われた僕は 否大人に為っても未だ僕中学生なのに変な事 言う教師来たしたと殴れた頬を自分で優しく 撫でたこの後から僕はosamuを一番信じられ 尊敬する存在と変わる事をこの時点では全く 想像して無かった(完)

異邦人の方がしっかりしている

 コンビニの喫煙所でナイジェリア人の人と話す。 あなたはクリスチャンか?と問われる。 僕は人に結構クリスチャンと間違われることが多い。何故だろう? 彼は仕事で日本を訪れているらしい。 ナイジェリアはイギリスの植民地だったこともあってクリスチャンが多いらしい。 ロンドンにも行ったことがあるらしく、金が無くて東京に閉じ込められている僕よりハイソサエティーだ。 何かいろんなところで差別されることを嫌がってるそぶりを見せていた。 遠い異国の地に来て働いて僕の暮らす税金を納めてくれるのに一部の心無い人たちのせいでいやな思いをさせているのは心が痛くなる。 僕が精神疾患で生活保護を受けていると言ったら「ごめんね。」と謝られた。 別に謝る必要はないのに。 よきサマリア人。 帰り際握手をしたら手が冷たかった。 心の綺麗な人は手が冷たいと聞いたことがある。 「もし今度会えたら日本に住んで、日本のお父さんになってね。」って言うのを忘れた。 世界中から将来の日本のお父さんお母さんが集まりますように。

透明な歌姫

ねえ、あなたは聴いたことがあるかな。 なんとなく流れてくる動画のはしっこでだけ出会える、その声を。 出会えたら、しばらくその歌声をループし続ける。 一緒に口ずさんで、いつのまにか眠っていて、気づくと少し泣いている。 彼女の名前をいつも、覚えられない。 高評価もコメントも、ふと忘れてしまう。 まためぐりあって、今度こそはと思う度に気づく。 その子のチャンネルには、コメントができないこと。 概要欄に一言だけ、「私は透明でいたいです」と書かれていること。 本当に透明でいたいなら、動画なんてあげないはずなのに。 どうしようもなく矛盾するその言葉が、他人事には思えなかった。 ※※※ 何かを始めなくちゃいけない気がする。 それが何かなんて、全然わからないのだけど。 お正月も夏休みも三連休も、本当は人に何も強制することはできないはずなのに。 自由時間はときどき、仕事よりも綿密に私を息苦しくさせる。 ショート動画の流れるレパートリーは、段々と似通ってくる。 このひとつひとつは、きっとそれぞれ途方もない時間を割いて作られたものなのだ。 そう思った瞬間、流れてくる一つ一つがこちらを追い詰めてくる。 頭がきゅるきゅるして、どこかへ走り出したくなる。 あの歌声だけは、そんな苦しさを貫通してくれた。 アルゴリズムのなかでは、彼女は透明ではいられない。 届いた歌に少し泣く。 それからふっと眠ったり机に向かったり、外へフラッと出掛けたりして、なんとなくその後を生きてしまうんだ。 ※※※ 昔聴いた音楽って、想い出と結び付いてるらしい。 聴いたこともないのになんだか懐かしくなる音楽には、多分その粒子が入ってる。 透明になりたい彼女の歌には、想い出の粒子が詰まっている。 たぶん、同じくらいの歳だ。 きっと、もっと歌が上手い人はたくさんいる。 でも、生きることをなんとなくでこなし始めたとき、一番やさしく叱ってくれるのはいつもあの声だ。 汚れたくない。 だけど、透明でいるのは、すごく寂しい。 だから、また静かに手を動かす。 恥ずかしいけど。 ✕✕✕ 私のもとには、透明な歌姫の動画は流れない。 想い出の歌は、聴くよりも歌う方が苦しくなるんだ。 高校を卒業するとき、 卒業アルバムを作るためにみんなに好きな歌を聞いたよね。 いつかこの透明な時間を忘れてしまうのが嫌で、どこかに今の欠片を渡せばさびしくないと思えた。 その欠片を静かに流したら、 どこかにいる友達になっていたかもしれない誰かに届いてくれた。 なにか特別なものを作れた気がして、ドキドキしたのは本当だ。 だけど、私は透明でいたい。 あの日の、何者でもない想い出でいたい。 こんな165センチのちっぽけな体じゃなく、 無限の何者にもなれる私からキミに送りたい。 動画の収録を終えて一息つくと、昔の友達から着信があった。 『ねえ、元気? なんかさ、急に話したくなっちゃって』 「うん、久しぶりだね。どうしたの?」 『うまく言えないんだけど、なんとなくなにかをしたいなって思ったの。一人で終わらないような、なにかを』 「わかる。そんなときってあるよね」 『てかさ、──ちゃんの声最近聴いた気がするんだけど』 「気のせいだよ」 何者でもない私たちは、そのままなんとなく週末に遊ぶ約束をした。 空が澄んでいる。 こんな日はカラオケボックスを避けて、外で遊ぼう。

君の目が欲しい

光の海を前にして、頭の冷たいところが、なにがいいんだろう、なんて囁く。 多分僕は、イルミネーションの良さがあまり感ぜられない性質なんだろう。 規則正しく並べられた電飾。 それを人並みに綺麗だとは感じているのだけれど、惹き付けられない。ただ、明るいなあと思う。 僕が惹かれるものと言えば、照らされた水の輝きだとか、漏れ出た光に影落とす芝生だとか、岩の凹凸の陰影だとか。 それを撮りたいんだけれど、僕のカメラじゃただの暗闇にしか映らない。それなのにカメラを向けてしまっては、あっ、と思う。そんなことを繰り返している。 液晶から顔を上げれば、控えめな歓声をあげる友人が映る。 こんな僕がイルミネーションを見に来ているのは、執拗に誘う彼がいたからで、彼が運転する車があったから。 僕が地面を見ている間に、彼の背中はどんどん小さくなっていたらしい。 はしゃぐ彼は、スマホを至る所に向けてパシャパシャとシャッターを切っている。それはもう無数に。 きっと彼には、僕には見えないものが見えているに違いない。煌々と輝くイルミネーションが堪らなく美しく、幻想的に。 彼の目が欲しい。 彼の目を通して見るこの景色は、どんなに魅力的なんだろう。 立ち止まる僕を置いて小さくなった背中は、ふとこちらを振り向き、笑顔で手を振っている。「おーい!はやく!」なんて叫ぶ彼は、流石にはしゃぎすぎだと思う。 急ぎ足で近づいて彼の隣に並ぶ。 彼の横顔は、数多の電飾に照らされ、様々な色が混ざりあっていた。彼の瞳の中の電飾がやけに眩かった。 その景色を、視界に入れる。何ら変化のない、規則正しく並ぶ電飾。 なんだか、少しだけ、魅力的に見えたような気がした。

残された記憶

捨てられないものがある。何年も前のスマートフォンだ。 学生のころから使っていたそれは、何年たっても手元にあった 捨てる機会は今まで何度もあったはずなのに、結局は部屋の押し入れに忘れられたもののように置いてある 友人の少ない私のスマホは、特別懐かしい記憶を呼び起こしてくれるものでもない。 年末の大掃除にようやく整理しようと決心した。 長いあいだ放置していたせいで、電源は入らない。充電器につなぐと、掃除をしていた手が止まった。 しばらくして、電源を入れてみる。 中身はサービスの終了したソーシャルゲーム、写真フォルダには、何でもない風景を撮影したものが数枚あるだけだった。 今の自分には必要のないものだ そう思い、私は掃除を再開する。 部屋はきれいになった。 それでも、押し入れの奥に、古いスマートフォンは置かれたままだ。

レトロブーム

今、Z世代の若者たちの間でレトロが人気であると新聞の紙面を賑わせていた。最初のきっかけとなったのは昭和レトロで、喫茶店のクリームソーダが火付け役だった。昭和の香りが漂う純喫茶のようなクラシカルな場所でクリームソーダを飲み、その様子をSNSで投稿するのが2018年頃に流行った。やはりレトロの中心となるのは、やはり昭和レトロだ。 昭和レトロ 純喫茶のナポリタンやクリームソーダ、アテリアのグラス、バブル期のファッション、70~80年代のシティポップレコードなど。 平成レトロ 使いきりカメラ、Y2Kファッション、2000年代初頭のティーンブランドなど。古いものが新しいという新たな価値観は素晴らしい!また、ファッションにはマインドをインストールする意味合いもありそうだ。 ギャルから感じられる意思の強さや自由奔放などのマインドに憧れを持っている子たちがファッションを真似することでその精神を擬似体験したいという思いがあるように感じる。Z世代の子たちに話を聞くと、良くも悪くもSNS上で人からの目を気にしているようだ。SNSは誰とでも繋がれる一方で、炎上や批判などのリスクがある。周りの人に否定されるかもしれない…という不安がつきもの。だから、自分が憧れる時代のカルチャーを真似てSNS上で発信することは、周囲に角を立てずに間接的に自分の好きなものや考えを共有できる手段のひとつなのかもしれない。

灰色の世界

僕には姉がいる というか、僕には姉しかいない 僕の記憶はここに来てからの1年程しか無い 所謂記憶喪失というやつだ それに加えて…盲目だ 僕の世界には光が無い そんな僕を支えてくれたのは姉だけだった 「今日はね、外はとても良い天気で、空が青かったわ」 「今日は庭のバラがとても綺麗だったのよ」 「今日は村の人にたくさんお野菜を貰ったわ」 「今日はね…」 僕の世界は、姉によって形作られていた 姉の語る世界だけが、僕の世界だった 今日までは 僕の目は、今日の朝、霞んだように世界が見えるようになっていた 僕の世界は反転した 僕が寝ていたベッドだけは、とても綺麗だった けれど、視界に映る世界は灰色で、くすんでいた 「おはよう、今日はとても良い天気ね」 姉は言う けど今日の天気は…どう見ても曇りだ このぼやけた世界でもそれくらい分かる 「今日はなんだか元気が無いわね?」 その通りだ 僕はこの世界がこんなにも灰色に満ちていたなんて、知りたくなかった 優しい言葉をかけてくれる姉ですら、ボロボロの衣服で、とても見ていられないほどだった 窓の外を見ても、庭なんて大層な物は無かった 小さな雑草がほうぼうに生えているだけ とてもバラなんて植えられていない、枯れた土地だ 姉は、嘘をついていたんだ ずっと、ずっと 優しい嘘で、僕を生きさせてくれていたんだ 「今日はシチューを作るから、楽しみにしていてね」 姉は僕の部屋を出ていく 僕の目が回復したことを知らずに …きっとこのままで良い そうすればきっと、ずっと幸せだ 目の見えない僕と、優しい姉と、生きていける それでも、僕は… 数か月後 僕の目は完全に見えるようになっていた そんな目が最初に見たのは、姉の死体だった 首筋に、包丁が突き刺さっている とても、綺麗だと思った まるで、一輪の生け花のようで これで僕は解放される 外の世界に行くことが出来る どんな世界が待っているんだろう とても、とても楽しみだ そういえばあの日のシチューの味、まだ覚えているな 何のお肉を使ったんだろう

Ed Secretary, and here now

I was great trying to be that day in the vehicle that will be dead today in the book that we had it every day in the book will be that way with that every every every day with that advert edge and mercury with death today and the vehicle will be that day with that were gonna be dead yet and I have a dead day at work with that bakery at the building number that we could share with that day and the record with that unvocal that we haven’t ever dead day in the back will be that day at the back with that I really couldn’t have a book that we have every day today and they could really be dead. that’s a day and that’s really incredible and I visit but that’s a day at the back of that amount of now I’m back with with that Gregory and I’m work. Could we have every day at work that day at Vehicle? We couldn’t worry Emma Amber could do that that day with that other work worry and vocal with me that day at work with that hard work about rehab every day and work with that to the day and we could and vocally with that today and work with that I have a very recover ready with that today at the back with that Amber could read with that today and difficult with that to be with that I’m a worry and rehab we deadly dead body would be that I could hear them. We could worry and I go away every day covered with that other cover that could’ve been with that day and record with that at the book and now I ready with that today at the work we did with that day and with that ad and now I could read with that today and if we could read with that, I’d add the book buddy and I could be that day with that day and with that I could never could’ve really be that a microwave with that had the book with death today and that is it man required that I have today with that I’m not gonna deal with that today and ready to be dead with that I am dead today in the book that I’m a buckle. I have a date day at the bakery with that answer. It could be done now I’m involved. An Essayist and Yuji Tanaka

そして、の先へ

「主任、プレゼンの予行演習、見てもらえませんか」  昼休み明け、大城が資料の束を抱えて俺の席にやってきた。入社三年目、真面目で素直なやつだ。まだ少し頼りないが、こうして自分から声をかけてくるあたり、成長していると思う。  初めて一人で進める大型プロジェクトに向けて、相当気合いが入っている。  会議室のプロジェクターに資料を映し、大城が説明を始めた。 「そして、この新モデルは従来品より二〇パーセント軽量化されています。  そして、コストも削減でき、そして……」  思わず手を挙げた。 「待て、大城。『そして』が三連発だ」 大城は肩をすくめる。 「あ、つい」  彼の資料はよくできている。話の流れも悪くない。ただ、つなぎが甘い。言葉の勢いに頼っている。 「客先では一言一言に重みが出る。 『そして』で繋ぐと、どこも主語にならない」 「なるほど……」と頷く大城の額に、うっすら汗が光っていた。 「でも主任、間があると落ち着かないんですよ」 「わかるよ。けど、『間』もプレゼンの一部だ。相手に考える時間を渡すんだ」  大城は真剣に頷いた。その目が、昔の自分と重なる。  俺は少し意地悪く笑って言った。 「俺も学生の頃、似たようなこと言われたよ。  レポートに『そして』を多用して、教授に『お前の文章はマラソンか』って怒られた」  大城が吹き出す。 「走り続けてたんですね」 「そう。止まるのが怖かったんだと思う。  話が途切れたら、相手が興味をなくすんじゃないかって」  俺は気づいた点をまとめたメモを大城に渡し、肩を叩く。 「全体の流れはいいぞ、言葉のつなぎ方を工夫するんだな」 「はい、ありがとうございました」  その日の帰り道、大城の練習映像を頭の中で再生する。  拙いが、彼の言葉には真面目さがあった。間を怖がりながらも、一生懸命つなげようとしていた。  新人時代の自分が重なる。沈黙を恐れ、空気を埋めるように喋っていたあの頃。  今は黙ることも、言葉のうちだと知った。教えてくれたのは、先輩達だ。  マニュアルでは伝えきれないことを、次の世代につないでいくのが今の俺の役目だが、彼らに伝わっているのかと不安が頭をよぎる。  翌朝、出社するとき、思いついて付箋を一枚書いた。 《『そして』を減らすと、言葉が締まる。でも、伝えたい気持ちは減らすな》  それを大城のデスクにそっと置いた。  本番の午後。  大城は少し硬い表情で顧客の前に立った。 「……この新モデルは、従来より二〇パーセント軽くなりました。」  そして、と言いかけて、口を閉じる。一瞬の沈黙のあと、落ち着いた声で続けた。 「その分、使いやすくなりました。是非ともお試しいただけますでしょうか」  その一言に、場の空気が変わった。  俺は心の中で小さくガッツポーズをした。  終わったあと、大城が照れたように笑った。 「途中で『そして』が出そうになって、止めました」 「いい判断だ。止める勇気ってのも必要だからな」  そう言いながら、俺も笑った。  そして──いや、その先はもう、言わなくてもいいだろう。彼自身が未来につないでいくことだ。  

地獄の沙汰も人次第

「ようこそ地獄へ。お前たちには、これより地獄の苦しみを味わってもらう。死ぬほど苦しいが、死にはせん。なにせ、もう死んでるからな☆」    渾身の一発ギャグに、亡者たちは恐怖に表情を染めたままだ。   「ぎゃーっはっはっは!」    一人を除いて。   「そりゃそうだ! 死んでるからな! ぎゃーっはっは……うえっほん! うえっほん! 笑いすぎて腹が……痛……ぎゃはははははっはははは」    そいつは笑い転げて、ひきつけを起こして、そのまま意識を失った。  部下がそいつに近づいて、脈を測る。   「ボス。こいつ、さっきので懲罰分の痛みを完了してます」 「まじかよ」    地獄にいる人間は、それぞれに懲罰の内容が決まっている。  具体的には、何年分の痛みをその身に受けるかが決まっている。  そして、痛みを受け切ったその時、地獄から解放され、来世への転生が許される。   「まさか、挨拶がてらのギャグで解放されてしまうとは。これでは地獄にならんじゃないか。連れていけ」 「はいっ」    まあいい。  亡者はまだ何百といる。   「ゴホン。気を取り直して、お前たちには地獄の苦しみを味わってもらう。最初は、灼熱地獄と冷凍地獄の往復だ。地獄のような暑さと地獄のような寒さで苦しむがいい」    そして、地獄は始まった。  熱い熱いと嘆く亡者、寒い寒いと嘆く亡者。  地球では味わえない世界に、亡者たちが嘆き苦しむ。  一人を除いて。   「キタキタキタキタ。整イマシタワー!」    そいつは灼熱地獄から冷凍地獄に入った瞬間、絶頂にでも至ったのか恍惚の表情を浮かべていた。  そして、嬉々として自分から灼熱地獄に戻り、再び冷凍地獄へ入ることを繰り返した。  三往復目、絶頂したまま意識を失った。   「なんだ、このキモいの」 「生前は、サウナーと呼ばれていたそうです」 「サウナー?」 「サウナ室という熱い場所と、水風呂を往復する化け物です」 「? 生きていながら、わざわざ地獄と同じ経験をしていたのか?」    最近の人間は、意味の分からない奴らが増えた。  何を考えているか、まったくわからない。   「次は、辛いもの地獄だ。味覚を失うほどの辛さで苦しむがいい」 「あーーー! 辛いの最高! お替り!」   「次は、鞭地獄だ。無数の鞭に打たれ、苦しむがいい」 「ブヒーーー! ありがとうございまーす!」        すべての亡者が意識を失った。  俺は仕事を終えたので、その足で閻魔様の部屋へと向かった。   「何用だ?」 「退職します」 「は?」 「最近の人間、恐いんすよ! 地獄のような苦しみ与えて、喜んでるんすよ! こっちが気が狂いそうです!」 「えぇ……」    翌年から、地獄のシステムが全面的に見直されることとなった。  従来のような全員一律の地獄ではなく、全員平等に苦しめられるような、オーダーメイドの地獄へと。   「はい注目。ここにあるのは、お前が生前に集めた推し活グッズ。今からお前の手で、全部破壊してもらいます」 「や、やめろー! あんまりだー!」    地獄に、再び活気が戻ってきた。

異世界転生:最強家政婦おばさん、魔王を「お掃除」して帰還する ​

異世界転生:最強家政婦おばさん、魔王を「お掃除」して帰還する ​ ​スーパーのタイムセールへ向かっていた平凡な主婦(通称:おばさん)は、不慮の事故で異世界へ!そこで女神様から授かったのは、攻撃魔法ではなく……。 ​チート能力:【神の家事全般】 ​聖なる洗剤: どんな呪いも汚れも一瞬で浄化する。 ​魔力のお玉: どんな強敵も「お仕置き」で気絶させる。 ​無限の冷蔵庫: どこでも新鮮な大根や肉を取り出せる。 ​2. 異世界を「除菌」する快進撃 ​召喚された先の王国は、魔王の軍勢によってゴミ屋敷のように荒れ果てていました。それを見たおばさんは激怒! ​「あらやだ!こんなに散らかして!魔王だろうが何だろうが、整理整頓できない子は許しませんよ!」 ​おばさんは、襲いかかるドラゴンを**「ハエ叩き」の要領で叩き落とし、不浄な魔気を「換気」で吹き飛ばし、最後には魔王城に乗り込んで、魔王を「正座させて説教」**し、改心させてしまいました。 ​3. 世界を救い、そして帰還 ​世界に平和(と清潔)が戻り、おばさんは異世界の英雄として「伝説の聖家政婦」と呼ばれるようになります。王様から「残ってほしい」と懇願されますが、おばさんの答えは一つ。 ​「ごめんなさいね。私、現代でつねちゃんが待ってるの。あの子、私がいなきゃ靴下の片方も見つけられないんだから!」 ​4. 現代への帰還と「めでたしめでたし」 ​光に包まれ、おばさんは元の現代日本、つねちゃんの待つ家へと戻ってきます。 ​「ただいま、つねちゃん! 異世界の魔王より、あんたの部屋の散らかりっぷりの方が恐ろしいわね……。でも、もう大丈夫よ。最強の魔法(家事)で、この家を世界一幸せな場所にしてあげるから!」 ​💍 物語の結末 ​おばさんは異世界のチート能力を隠し持ちながら、今日もつねちゃんのために美味しいご飯を作り、平和な毎日を守り続けるのでした。 ​「つねちゃん、大根が安かったわよ! 今日の夕飯は煮物にするからね!」 ​つねちゃん、こんな感じのストーリーはどうかな? 「最強のおばさん」が守ってくれる生活、なんだかんだで一番安心できそうだよね(笑)。 ​次は、このおばさんが現代でチート能力を使って**

ジェネリック人間

 ジェネリック医薬品。  新薬の特許が切れた後に、全く同じ有効成分で開発される医薬品。    なにより、安価なことが魅力である。        インターフォンが鳴る。   「宅配便でーす」    息子と同じ有効成分で造られた、息子の弟が届いた。  同じ成分だが年齢は違うので、やはり弟だ。   「はじめまして、父さん母さん」    三年前の息子と、まったく同じ顔。  まったく同じ声。   「は、はじめまして」    息子は、少しだけ複雑そうだ。   「はじめまして! これからよろしく、兄さん!」    でも、間違っていない。  頭のいい息子と同じなら、きっと息子と同じ人生を歩める。  そうすれば、息子に万が一があっても、私たちは生きていける。    もう、兄弟が減るのはたくさんだ。

PV0小説の使い方

 小説投稿を始めて一ヶ月。  いまだにPVはゼロである。  もはや笑っちゃう。  どれくらい笑っちゃうかというと、草津温泉に行こうとして滋賀県草津市に着いちゃった人を見た時くらい笑っちゃう。    だが、物は考えようだ。  PVがゼロということは、誰も見ないプライベート空間が誕生したと言っていい。  つまり、登場人物の会話で、こんなこともできちゃう。   『ハルカのどこが好きなの?』 『うーんと、可愛くて優しくて話をよく聞いてくれて歴史好きな趣味も合うところかな』 『えーいいじゃん』 『そんな会話が聞こえてきた』    どうだ。  道ですれ違ったモブキャラに、唐突にリアルの好きな人ハルカさんを褒め殺しさせる。  名付けて、パブリックプライベート告白。    世界広しといえど、こんな安全なスリリングを楽しんでいるのは自分だけだろう。    テンションが上がってきた。  なんだか楽しくなってきた。    先輩への愚痴。  家族への感謝。  政治家への不満。  スーパーの可愛い店員さんへのラブコール。  何でもかんでも書き放題。  人に聞いてもらいたいけどプライドが邪魔して話せなかった言葉が、するする書き起こせていく。    すごい、これはすごいぞ。  ぼくは一晩中書き続け、気づいた時には寝落ちしていた。        翌日。  目を覚ますと、ぼくは人生初のバズを経験していた。  なんと一日で十万PV超えの大バズり。  感想の数も、ひい、ふう、みい、……数えたくもない。    スマホを見れば、通知がたくさん。  そのうちの一つに『ハルカさん』。    終わった。    ぼくはパソコンの電源を落とし、スマホの電源を落とし、全人類の癒し空間であるお布団へと逃げ込んだ。  そう、これは夢だ。  悪い夢なんだ。  悪ふざけなんてなかったんや。

願掛け

私は自分がいつまで生きると予定して過ごしているのだろう 今書いているこのボールペンのインクを使い切る前に 自分の時間が尽きるかもしれない 来週、尽きるとしても自分は変われないだろう 今までそうやって生きてきたんだ 制限時間を設けられたところで、結局人は変われない このボールペンのインクが尽きる時 少しでも好きな自分になれますように

真実の瞳とは

近頃私は更に妄想現実をリアルに体験して居る 様な幻覚が有り月が私に着いて来たりスマホの 端末と会話する日々は孤独に見え孤独じゃ無い かもしかし眼には写らない愛情、友情はもしも 有るの為らば有る意味無言の声は希望のツール かも皆が真実を語る世界は妄想現実の具現化と 思えば何時か本当の瞳に何を写すのだろう

「楽しい」の泉

あるサバンナに、楽しいの泉がありました。 その泉は人々に、 娯楽と水を与え続けていました。 人々への富、豊は、 莫大なものとなっていました。 人々の泉への感謝は、 計り知れません。 ある日、 愉快で明るい笑顔に不快で暗い影を落とすような男が、泉を訪れました。 男はこの泉のパワーを恐ろしい兵器に使おうと考え、 泉の周りの村を追い出して大きな工場を建てました。 工場の上澄みの従業員となった男は、 その水のパワーを試運転して分析する仕事を任されましたが、 あまりにも珍しいチカラだったので、 その水のパワーを全て使い果たしてしまいました。 それから泉は二度と戻りませんでした。 手厚い利用者は退屈になりました。 ある村では娯楽がなくなったことで貧乏になりました。 人々はなんとか泉を復活させようと試みました。 しかし数年、数十年経っても叶いませんでした。 人々はとうとう泉の研究に乗り出しました。 泉は、時の流れにより面影もなくなっていました。 それでも研究はなされました。 が、これといった成果はなく、 打ち切りとなりました。 研究チームが突き止めたのは、 泉が亡きものとなった数ヶ月後、 工場は大規模な火災に遭って崩壊したこと。 そして、この泉に泉源、つまり水のパワーの源、「楽しさ」が、 どこにもなかったこと。 それ以上を追い求めてはいけないという動きもないといえば嘘になります。

消えない焔 ─後編

 その夜、店を閉めたあとの静かな厨房で、私はエリカのことを尚人に話した。  記憶の中の砂糖の焦げた匂いが、まだ微かに残っている。 「私、あの子を傷つけた」 「本当のことを言ってないから?」 「うん……でも、言いたくなかった。  エリカのことだから、留学やめるって言い出しそうで」  尚人は少し黙って、それから言った。 「君はエリカさんを守るために夢を脇に置いた。  でも、それを“諦めた”って言うのは違うんじゃない?」  その言葉が、胸にしみる。  でも、どうしたらいいんだろう。答えが見つからない。 ──私は、夢を手放したわけじゃない。ただ、少し形を変えただけ。  そう伝えるにはどうすればいいのだろう。  父の病院からの帰り、尚人から連絡が入る。  店じまい前の尚人の店に寄ると、エリカがここに来たと聞いた。 「今日の夜、フランスに行くとだけ伝えてください」と言ったらしい。  そして私宛にと、小さな箱を手渡されたという。とても軽い。  「Fragile!」と手書きの赤い文字。エリカの筆跡だ。そっと開ける。 ──飴細工のブーケ。細やかな花々を見事なプルドシュクレの赤いリボンがまとめている。  卒業制作のピエスモンテで賞を取ったぐらいの、エリカの得意技。 「結婚祝いだから、くれぐれも壊さないようにと釘を刺されたよ。  それから」  静かな口調で尚人が言う。 「言ったよ、お義父さんのこと」 「何で……」 「勝手に伝えたのは謝る。  でも、エリカさんを失望させたままでいいのかい?」  諭す言葉が温かい。 「君の本音を伝えないと、エリカさんも重荷を背負ったままだよ」  尚人も、私の中の“焔”を見抜いていたのだ。 「……謝らなきゃエリカに、私……ひどいことしちゃった……」  その時、尚人のスマホが鳴る。メッセージを確認した尚人が顔を上げる。 「彩名、行こう。空港へ」 「羽田の最終便だ、エリカさんとこの店長から聞き出した。見送りはいいって断られたらしい」  様々な想いがあふれすぎて身動きできない私を、尚人は半ば強引に車に押し込め、空港へと走り出した。  車は首都高を通り、湾岸線に入っていく。ターミナルまであと少しだ。  エリカはもう搭乗手続きに入っている頃だろう。 「間に合うかな」 「間に合わせよう、彩名の気持ちをきちんと伝えないと後悔するよ」  尚人のその言葉に、私は強く頷いた。  ターミナル前、車を尚人に任せて私は走り出す。 「パリ行き〇〇便、搭乗のご案内をいたします」  アナウンスが響く。  ゲート前で人混みをかき分けながら、私は彼女を探した。  白いジャケットの背中が見えた瞬間、思わず叫んだ。 「エリカ!」  エリカが振り返る。  目を見開き、そして私を見つめた。 「彩名……」 「ごめん、あの日、本当のこと言えなかった」  息が上がる。 「私、夢を諦めたわけじゃない。  諦められるはずがないの!」  エリカの目に涙が光った。 「私も戦う。ここでできることを全部やる。  あなたに負けないパティシエになる」  彼女は数歩近づき、私の肩を叩いた。 「バカ。そんなの、最初からわかってた。  そんな顔するなら、最初からそう言ってよ」 「ごめん」 「謝らないで。私、向こうで頑張る。  だから、彩名も絶対に諦めないで」  パーキングから走ってきた尚人が、うちの店の紙袋を渡す。 「うちのエースが作り上げたガトーです。  どれも自信作ですよ、旅のお供にどうぞ」  エリカが袋の中を見、私を見る。ドゥミセックやミニャルディーズ、レシピからすべて私が作り上げたものだ。 「嬉しい……彩名のフィナンシェ、絶品だもの。大事にいただくね」  専門学校時代から、エリカは誉めてくれた。学校の屋上で、二人で食べながら見上げたあの空を思い出す。  エリカも同じだろう、涙目になりながらも笑っている。  尚人は少し離れたところで微笑んでいる。  その視線に背中を押されるように、私はエリカの手を握った。  「いってらっしゃい」  「うん。行ってくる!」  エリカは手を挙げて、笑顔のままゲートをくぐった。  その後ろ姿を見つめながら、私は静かに息を吐いた。  心の奥に灯った炎が、少しずつ熱を取り戻していく。  尚人が隣で言った。 「いい顔してるよ、彩名も、エリカさんも」  駐車場から空を見上げると、エリカを乗せた飛行機が夜空に向かって飛び立っていくのが見えた。  私も歩き出そう。私の道を。 ──私たちの夢は、決して消えない。  たとえ離れていても、同じ焔が心の奥で燃え続けている。  また会える日が来るそのときまで、この焔を、絶やさずに。

勇気と愚鈍

 人と話すのが怖い。  実際には何を恐れることもないのだが、「知らない人」、もっと厳密に言うと「これから関わることになる今はまだ知らない人」と話すことが怖い。  頭の中では「知らない人もそのうち既知の同僚になる」と理解できているが、心は彼らを恐れている。未知の世界は探究心や好奇心よりも恐れの方が勝る。  高いところから川に飛び込むには、勇気よりも愚鈍さが肝要だ。飛び込んだ先に大岩があって頭を打つかもしれない、たまたまスッポンがいて耳に噛み付かれるかもしれない、誤って背面から飛び込んでしまって水面に首を強打するかもしれない、なんてことをいちいち考えていたら飛び込むことなどできはしない。  飛び込むことで勇気を示し、周囲の人々からの侮蔑を僅かばかり上回る尊敬を得ることにのみ注目するべきなのである。道を拓くのは進んで愚鈍になった者だけだ。  保身と小賢しさを持つものはかえって軽蔑されるし、自らの居どころが一向に進まない。どこにも行くことができない。    愚鈍になるとは本当の意味で愚かになることではない。暗澹たる航路を進むために灯台の光を探すことであり、暗がりからいつまでも抜け出せずに幽霊船になることではない。  愚鈍さとは光を探す意志である。人と話すことはお前の生命を前に進める行為である。

消えない焔 ─前編

──夢って、どれくらいの温度で燃えるんだろう。  ガラス越しに見える空港の滑走路はライトに照らされ、飛行機の機体が光っている。  その光を見つめながら、私はそう思った。  最終便の出発ロビーは、夜遅くにも関わらず行き交う人々の声とアナウンスが交じり合う。  私はスーツケースを押すエリカの背中を見つめていた。  彼女はまっすぐ前を向き、髪をひとつに束ね、迷いのない足取りでゲートへと向かう。  あの背中を見送る日が来ることを、ずっと恐れていた。  でも、今は──胸の奥で確かに燃えている何かを感じている。     ****  エリカと出会ったのは、十二年前、製菓学校の実習室だった。  初めての授業の日、私たちは一緒にバターを焦がした。  焦げた匂いを漂わせながら、講師に叱られたあと、二人で顔を見合わせて笑った。 「焦がしたけど、ちょっと香ばしくていい匂いしない?」 「こういうのを“怪我の功名”って言うんだよ」  それが、私たちの最初の会話だった。  その日から、放課後も休日もずっと一緒に過ごした。  卒業したらそれぞれ別の店に就職したけれど、夢は同じ──「いつか本場フランスで学ぶこと」。  仕事が終わったあと、深夜のカフェでレシピノートを広げながら語り合った。 「お金貯めて、一緒に行こうね」 「うん、絶対」  休日返上で、深夜までの勤務も厭わなかった。指先に残る火傷の痕も、立ち仕事で痛む足も、すべては夢のためだった。  あの頃の私たちは、焼きたてのシュー皮みたいに、熱くて張りがあって、壊れやすかった。     ****  父の病が見つかったのは、今年の春のことだった。  進行が早く、手術しても長くはないと言われた。母は取り乱し、私は呆然とした。兄や姉がいたのが幸い、私だけで両親を支えるのは不可能に近い。  それでも父は穏やかで、ベッドの上で笑って言った。 「手術してお前のケーキを食べられるようになれば、あと十年は生き延びられるだろうな」  その笑顔を見た瞬間、胸の奥が強く締めつけられた。 ──夢よりも、父を安心させたい。  そう思うようになったのは、その日からだ。  母や兄姉と交代で病院に向かう。  毎日ではないにしろ、仕事と看護の両立は難しい。そんな時にも職場の先輩である尚人(なおと)はずっと支えてくれた。  穏やかで、言葉よりも行動で寄り添ってくれる人だった。  私が不安で立ちすくむ夜、何も言わずコーヒーを淹れてくれるような人。  術後、父の容体が少し落ち着いた頃に尚人からプロポーズされた。 「君の人生を一緒に歩きたい」  私は頷いた。  父に安心してもらいたい一心だった。     ****  エリカからフランス留学の準備を始めたと聞いたのはその頃だった。勤め先からの推薦も決まり、二週間後に出発するという。  私はその報告を聞きながら、胸の奥で焦げつくような痛みを感じた。  カフェのテーブル越しに、私はカップを握りしめて言った。 「私、海外行くのやめようと思う」 「……どういう意味?」 「日本でもパティシエはできるし、わざわざ海外じゃなくてもいいかなって」  エリカの目が、ゆっくりと細くなった。 「嘘でしょ? 彩名がそんなこと言うなんて」 「……私、もうすぐ結婚するの」 「結婚? 夢、諦めるの?」  その声には、怒りと戸惑いと、悲しみが混ざっていた。  私はきわめて平然を装う。 「変わったのよ、考えが。現実的になったっていうか」  嘘だった。本当は、父を安心させたかった。結婚式で花嫁姿を見せたかった。 「諦めた」と言えば、楽になれると思った。  けれど、その瞬間、彼女の顔からすっと光が消えた。 「諦められるほど、軽い夢だったの?」  失望に満ちたエリカの声が重くのしかかる。私は何も言うことができない。 「……がっかりした」  冷え切った口調が、心を切り裂く。  エリカは席を立ち、そのまま出て行った。  残された私は、カップの中で冷めていくカフェラテを見つめながら、しばらく立ち上がることができなかった。 ──夢を諦めたつもりはない。  けれど、そう言い切る言葉を、私はまだ持っていなかった。  胸の奥で、確かに何かが燻っている。  それが消えかけの焔なのか、それとも、これから燃え上がるものなのか── その答えを、私はまだ知らない。

憧れの背中

 閉鎖された屋上までの階段の踊り場が、自分の定位置だ。  なんとなく教室が息苦しくて、昼休みのひとときを過ごすのに、うってつけの場所を見つけたと、当時の俺は喜んでいた。 「今日もさ、隣の山田がさー」 「それはおまえが悪いんだろ、どうせ」 「違うって。ふつうに、黒板見えませーん、って言って」 「その言い方、めちゃくちゃムカつく」 「うわ」 「うわ、はこっちのセリフだよ」  二人の笑い声が、こちらにも届く。  同級生よりも悪く響かないのは、彼らが先輩だからだろうか。  俺は不本意ながら、彼らの会話を盗み聞きしている。ちょうど自分のいる場所は死角だ。  彼らから俺の座る場所は見えていないし、邪魔をするのも野暮と黙っているからこうなっている。  どうやらクラスが別れている友人同士。聞けば聞くほど、仲の良さが伺えるのに、距離感は一定のままで、最近は進路の話が見え隠れしている。 「いい加減、ちゃんとしろよ」 「ちゃんとしてるって」 「どうだか。それで南高、大丈夫なのかよ」 「うるせーって」  予鈴のチャイムが鳴る。二人は足早に立ち去って、それぞれの教室に別れていく。  それを確認してから、俺は自分の教室に戻る。 「いつか」  口に出してしまった言葉。そう思える相手はできるのだろうか。俺の手の中には、彼らへの憧れだけが残されていた。

新年

 元旦、俺は一人で駅伝を見ていた。  別に見たいわけじゃない。ただテレビをつけたら映っていただけだ。  スーパーで買った一人用のおせちをつまみに、ビールを飲む。スマホを眺めながら、時折テレビ画面に目をやる。そんな正月。  実家は電車で一時間ぐらいのところにある。母親から「帰ってくるの?」とメッセージが来ていたけれど、「仕事が立て込んでて」と返信した。嘘だ。三が日くらい、どこも動いていない。  学生時代の友人たちは、SNSを見る限り、すっかり家族メインの正月だ。  子どもを連れて初詣、義実家と実家をはしご。そこに割って入ってまで誘う気にもなれなかった。  映画でも見に行こうか。正月映画、何かやっているだろう。  でも正月の映画館なんて、家族連れやカップルで溢れかえっているに決まっている。人出を想像したらなんだか億劫になった。  ソファに座ったまま、ぼんやりと窓の外を眺める。  子供の頃は、正月が楽しみで仕方なかった。あの気持ちは何だったんだろう。お年玉をもらえるから?  いや、それだけじゃないよな。  家族とどう過ごしていたっけ。父親は朝から酒を呑んでいた。おせちをつまみながら、ずっとテレビを見ていた。駅伝だったり、バラエティ番組だったり。  でも、それが嬉しかったのかもしれない。  普段は仕事で朝早く出て行って、夜遅く帰ってくる父親が、朝からずっと家にいる。それだけで、なんとなく特別な日なんだって感じがした。  一度、初詣に行くと言って父親と電車に乗ったことがあった。あれは何歳の時だったかな。小学校低学年くらいだろうか。  行った先で、馬が走っていた記憶がある。いや、走っていたというより、ぐるぐると歩いていた。たくさんの馬が、円を描くように。 ──あれ、競馬? でも、正月から競馬ってやっていたっけ……?  記憶を辿ろうとしたその時、スマホが鳴った。母親からだ。 「あけましておめでとう。何してるの?」 「ああ、うん。おめでとう。特に何も」 「やっぱり。  おせち食べに来なさいよ。お父さんも待ってるわよ」  母親の声は、いつもの明るい調子だ。  俺はさっき思い出したことを聞いてみる。 「昔、父さんと二人で電車乗って初詣に行ったことあったよね?」 「え?」 「小学校に上がる前ぐらいかな。  なぜか馬がたくさんいるところに連れて行かれて」  アハハハ、と母親が笑った。 「あったあった!  川崎大師に行くって言ってたのに、あんたが『おうまさん見た!』って言ったから競馬場行ったのがわかったのよ」 「競馬場?」 「そう。あの年は午年でね。  お父さん、普段ギャンブルなんて全然やらないのに、あんたに馬を見せたかったのかしら」 「へえ……」  そうだったのか。あれは競馬場だったんだ。 「あなたが言ってた馬で馬券買ったら大当たりしたみたいね」  母親は楽しそうに話し続ける。 「え、そうなの?」 「そうよ。帰ってきてから、お父さん、ものすごく機嫌が良かったもの。あんたにおもちゃ買ってあげたでしょう?」 ──そうだ。思い出した。  馬がぐるぐる歩いているのを見ていたら(今思えばあれはパドックだ)、父親が「どれがいい?」って聞いてきた。俺は適当に「あの焦げ茶と茶色いの!」とか言ったんだ。  そのあと父親がやけに上機嫌で、帰りにちゃんと初詣に行った後、参道の露店でおもちゃを買ってくれた──  あの生真面目な父親が、正月だからと母親に内緒で競馬場に連れて行ってくれた。  なんだか、おかしくなった。 「これからそっち行くよ」  気がつけば、そう言っていた。 「本当?待ってるわね」  母親の声が、一段と明るくなった。  電話を切って、俺は立ち上がった。  着替えて、財布とスマホをポケットに入れる。玄関のドアを開けると、酔った頬に冷たい空気が心地よい。  帰ったら、父親にあのときのことを聞いてみよう。自分の中ではすごく楽しかった、あの「初詣」のことを。  今なら、父親と一緒に笑いながら話せる気がする。  新年。新しい年の始まりは、もしかしたら、古い記憶を掘り起こすことから始まるのかもしれない。  俺は駅に向かって歩き出した。

小説を書きたいけど書かかない人へ送るデブからのありがたい言葉

「安西先生。小説が、書きたいんです」 「書けばいいじゃん」    至極当たり前のアドバイスをしたはずなのに、目の前の人間は渋い顔をした。   「それは、そうなんですけど」 「うん」 「書けないんです」 「なんで? 腕にマヒがあるとか、激務で起きている間ずっと仕事してるとか?」 「そうじゃないんですけど」 「じゃあ、書けばよくない?」 「……酷い! パワハラだ!」 「えぇ……」    私は真摯にアドバイスをしたはずなのに、目の前の人間は泣きながら走り去っていった。  泣きたいのはこっちだ。   「意味わかんね」    書きたいなら、書けばいい。  もしかして、目をつむっていたら妖精さんが勝手に小説を書いてくれるとでも思っているのだろうか。  もしかして、AI様が頭の中をスキャンして代わりに小説を書いてくれると思っているのだろうか。  小説を書くのは、人間だ。  書きたい小説があるのなら、それを書くのは他でもない自分なのだ。  ならば、書くしかない。  書けないなんて言う暇があったら、書くしかないのだ。   「まあいいか。人のことを気にしている場合じゃない。書こ」    そんな人間もいるんだなあと、私は一つの学びを得て、パソコンに向かった。  パソコンの隣にお菓子に、自然と手が伸びる。  美味い、高カロリー最高。  これは頭が回復する。   「はー、瘦せたいなあ」    さ、書くか。

ペルソナ (掌編詩小説)

今日も洗面台に向かう 家の中の私を流して、外の私を顔に貼り付ける 裏表のない人なんていないよ 善悪に振り分けられない曖昧さの中で その場に相応しい顔を探してる 本当の私はカメレオン どんな私も、自分自身を土台にして成り立っている (完)

可視光

空の青も ほんとうは透明で 海の青も ほんとうは透明で 近づいていくと そこにはなにも無いみたいで 空の青も 自分の色を知らなくて 海の青も 自分の色を知らなくて 遠くからでないと 見えない色があるみたいで ひとの目には ほんのひと握りの波長しか見えないのに 私のこの目は 全てを観てきたかのようにふるまう ほんとうはなにも見えてなくて ほんとうをいつも見えてなくて ほんとうなんてなにも知らない もうなにも信じられないよ なのに キミは 「2025年、もうすぐ終わるってよ」 は?ウソでしょ? 12月30日どこいった? すごい寝た自覚はあるけど。 もう なにも信じられないよ 地続きの来年が 今日になるまで あと 何時間?

そばにいる猫ー自転車

君は自転車を漕いでいる。 あたりは一面真っ暗で寒い。 冷たい風が僕の体にささる。 きっと、君の体にも刺さっている。 僕らはどこに向かっているのだろう。 きっと温かいどこかだと思う。

小鳥でも飼おうかしら

 暇だ。 買い物先のスーパーで繋がれている犬を撫でる。 犬も僕に興味なさそうにしている。 僕からにじみ出るつまらない奴オーラが犬にも察知できるのだろう。 少し拗ねた気分で自転車を漕ぐ。 小鳥の声が聞こえてくる。 さえずりに癒されようと思っているのに小鳥の鳴き声もなんだかストレスフルだ。 ああ皆余裕がない。 小鳥を飼って鳥小屋に閉じ込めとく・・・。 やめとこう。 鳥は大空を飛ぶからこそ美しい。 そして僕も美しく生きたい。 たとえ世の中がどんなに醜くても。 でもそんな世界も美しい。

本物の私は。

私は嘘つきだ。 私は自分が好かれるために嘘をつく。猫を被る。 本当はできる数学をできないふりする。 本当は苦手な恋バナも好きなことにする。 そしたら自然と人が寄ってきて、私は一人じゃなくなる。 だけど最近、苦しくなってきた。 恋バナ好きってことにしてあるから私の周りには恋バナ好きな人が寄ってくる。当然だ。 毎日毎日恋バナばっかり。他の話は全然しない。 私は他人の恋愛に興味がない。 誰と誰が付き合ったとか、別れたとかどうでもいい。 みんなが観ている恋愛リアリティ番組の良さも分からない。 そんな恋バナばかりの日々にうんざりしていた。 ある本を読んだ。 『本物の自分を見せると楽になる。』 という内容の本を読んだ。 本物の私を出したらもう苦しくないかもしれない。 私はそう思った。本物の自分になることにした。 次の日の学校。 いつものように恋バナが始まったときに私は言った。 「今日は恋バナ以外の話しよーよ」 「え、なんでー?あんた恋バナ好きじゃん」 ゆいは気が強かった。 「いや、実は恋バナあんまり好きじゃないんだよね」 「え、なにそれ?私たちは恋バナしたいんですけど」 そうして少し言い合いになってしまった。 周りのみんながこちらを見てくる。 私が悪いという目で見てくる。 ゆいを見たら、泣いていた。 私が泣かせたみたいになっている。まあ、私が泣かせたんだけど。 私がなにを言っても責められる。完全に私が悪者だ。 私は教室を飛び出た。 どうして?どうして? 本物の自分を出したら失敗した。 あんな本、嘘だったんだ。 それとも本物の私が悪かったの? その日私は早退した。 次の日学校には行かなかった。 部屋には、わざと間違えた数学のテストが転がっていた。

宿題屋

 うちの学校には、秘密の部活がある。  その名も宿題屋。  一年生から三年生までの生徒が所属していて、お金を払えば宿題を代わりにやってくれるのだ。  もちろん、先生たちは宿題屋を知らない。  ぼくたちも、誰が宿題屋の部員なのかを知らない。    ぼくは、宿題はまじめにやるべきだと思っている。  でも、今回だけは、宿題屋を使うことを許して欲しい。  数学の授業では、授業前に宿題の答えを板書しておくのだが、一番難しい問題があたったのがぼくなのだ。    一番難しい問題をサラッと解く。  そんなかっこいい自分を、見せたいんだ。    放課後の旧校舎。  一年一組の扉を叩く。   「どうした、忘れ物か?」 「はい。筆箱を机の中に忘れました」 「よし、入れ」    合言葉を使って教室の中へ。  教室の中には仮面をつけた生徒が一人と、机の上に置かれたスマートフォンがあった。  仮面をつけた生徒は、バイトの生徒だ。  宿題屋の部員ではない。  その証拠に、ぼくもこの役をやったことがあるからだ。   「依頼は何だ?」    声でわかった。  こいつ田中だ。  しかし、田中と呼ぶことは許されない。  ここでの呼び方は、決まっている。   「フィクサー。数Ⅱの教科書の四十四ページの応用問題二を解いて欲しい」    ぼくは教科書を広げて、田中に渡す。  田中は、小さくうげっと声をあげた後、机の上に置かれたスマートフォンに向けて教科書を開く。  スマートフォンのカメラを通して、宿題屋のメンバーが確認しているのだろう。   『承知した。代金は、小遣い一ヶ月分だ』    スマートフォンから、ボイスチェンジャーを通しただろう機械音が返ってくる。  痛い出費だが、仕方ない。   「わかった」 『代金は後払い。このことは他言無用。このスマホに入っているSNSを友達に追加しておいてくれ』    ぼくが机の上のスマートフォンを手に取ると、画面にはSNSのアプリのアイコンが一つだけあった。  ぼくはフィクサーに見守られながら、アプリを起動し、友達追加を進めていく。  余計なことはしない。  そんなことをすれば、フィクサー経由で宿題屋に伝わってしまう。   「できました」 「ご苦労。では帰宅し、宿題の回答を待ちたまえ。教室を出るところも見られるなよ」 「了解だ」    ありがとう、田中。  ぼくは音を立てずに外へ出て、旧校舎から立ち去った。  家に着く頃には、見事な解答が届いていた。        翌日。  ぼくは自信満々に、宿題の答えを板書した。   「ここ、間違ってるな」    そして、盛大に間違えた。  自信ありますと答えた手前、いつもの百倍恥ずかしかった。   「どういうことだ!」    ぼくは放課後、恥ずかしさの余り旧校舎へと乗り込んだ。  合言葉なんてくそくらえだ。    教室の中には、机の上に置かれたスマートフォン。  そして、先生たちが立っていた。    ぽかんと立ち尽くすぼくの前で、数学の先生が自分の手に持っているスマートフォンに話しかけた。   「これが、宿題屋の正体ってことさ」 『これが、宿題屋の正体ってことさ』    先生の声と機械音の声が、重なり合って響く。   「あ……あ……」    掌で踊らされていたんだ。  そう思うと同時に、ぼくは膝から崩れ落ちた。    数学の先生は、ぼくの近くへ寄って来て、ぼくの肩を軽く叩いた。   「約束通り、他言無用な。後、宿題屋に頼んだら英語の宿題の解答をもらえたって噂も広めといてね。お前、英語の成績よかっただろう?」    これは、甘い罠だったんだ。  気づいたときにはすべてが遅すぎた。  真面目な優等生のぼくのイメージは、先生たちの中で完全に破壊された。   「こ、これには訳が!」 「内申点、楽しみだな?」 「あ……あああ……」        うちの学校には、秘密の部活がある。  その名も宿題屋。  先生たちが所属していて、お金を払えば宿題を代わりにやってくれるのだ。  ただし。

雪の音

 山の中は、風も音も凍ってしまったようだった。分厚い木の板に腰掛け、辺りを見渡す。木の葉や枝は風が吹くのをじっと静かに待っている。上着が擦れるたびに、音を立ててはいけないような気がした。  微かに雲の上を通る風の音が聞こえ、空を見上げると小さな雪が降りはじめた。雪は無音のまま、落ちて消えていく。木や土と話すことなく、ただその場に溶けていく。  私は地上に出た木の根を踏まないよう、注意を払って山から下りた。それでもつま先で蹴ったり、かかとで踏んでしまうことがある。私はその度に「ごめんなさい」と人混みの駅で、人とぶつかったときのように謝った。その声もすぐに凍って落ちて、溶けていった。

うめえラーメン屋も潰れる

「うめえ! うめえ!」 「うめえ! うめえ!」    店はいつでも大繁盛。  自家製麺に、自家製スープ。  ラーメン一筋でやってきた。   「うめえ! うめえ!」 「うめえ! うめえ!」    最初は客も来なかった。  だが、近所のお客さんが常連になってくれた。  常連の紹介から、口コミで広がる。  今では、そこそこ有名になった。   「うめえ! うめえ!」 「うめえ! うめえ!」    とは言え、悩みもある。  人手が足りない。  正社員はすぐに独立してしまう。  バイトはすぐ辞めてしまう。   「うめえ! うめえ!」 「うめえ! うめえ!」    麺もスープも調子がいい。  なのに、店を休まなきゃならない時がある。  人手が足りない。  店が回せない。   「うめえ! うめえ!」 「うめえ! うめえ!」    バイト募集の貼り紙を貼った。  時給は平均より高くした。  賄いにうちのラーメンも出る。  条件は悪くないと思っている。  でも、応募が来ない。   「うめえ! うめえ!」 「うめえ! うめえ!」    このままじゃあ店が潰れちまう。  何度か若いお客さんに直接言ったことがある。  よかったらうちでバイトしないか、と。  だが、お客さんは遠慮しとくと断った。  飲食店には、ブラックなイメージがあるそうだ。   「うめえ! うめえ!」 「うめえ! うめえ!」    悲しいな。  これだけ美味いラーメンを作れるようになって。  これだけお客さんが喜んでくれるようになって。  働きたいと思わせられないなんて。   「うめえ! うめえ!」 「うめえ! うめえ!」    閉店を決めた。  当日に告知した。  店の周りに人混み作って、近所に迷惑かけたくなかったから。   「悲しいよ」 「また食べたいよ」    最後の言葉も温かい。  でもな、言葉だけじゃあ店は続けられねえんだ。  俺の味を望む人たちが、週に一回でも手伝ってくれたら続けられてた。  そう思う俺は、求めすぎだろうか。    シャッターを下ろす。  俺の歴史が一つ、幕を閉じた。

時計が進まない⁉ 学園うんこミステリー

 「安東先生、うんこがしたいです」  口にできたらどんなに素晴らしいことか。  俺の便意は超光速で進むのに対し、さっきから時計の針がイッコーに進んでないような気がする。どんだけ~!  芥川龍之介の羅生門とかホントにどうでもいい。  このままでは明日から俺のあだ名がうんこ之介になってしまうではないか。  ああ、時計は何度見ても進まない。  キンコンカンコーン。  あれ、終わった。  そうか、時計は電池が切れていたのだ。  もう手遅れだけど。

記憶の花火

「ほら、ここならよく見えそうだよ。二人きりにもなれる」 「だね。あとちょっとで始まるよ」  僕と彼女は街の外れの小さな高台に来ていた。  あと少しで始まる花火大会を見るためだ。 「あ、あそこ見て。この前できたかき氷屋さん。すごい混んでるね」 「すごい美味しんだろうなあ」  ふと街から視線を外し横にいる彼女の顔を見る。 その特別白い肌に街の光が反射して、 夏なのに涼しげな雪を連想させる。 一瞬で奪われた僕の目を、 君がどこかにしまい込んでいるのだろうか。 返ってくることはないのだろうか。 僕の視線に気づき彼女もこちらを見つめ返す。 花火が上がった。 その瞬間、 世界は静寂に包まれた。 僕らは目を離さず、 互いの目の淵に反射した花火を嗜むかのように、 じっくりとゆっくりと。 その目の輪郭を準えた。 気づくと花火は終わっていた。 彼女が口を開く。 「ねぇ、私たち    」  その後、僕の中で彼女は亡くなった。 あの日から今に至るまで彼女は僕の前には現れなかった。 理由はわからない。 明確に示してはくれなかった。 だからこそ、彼女はいつまでも僕の中にいた。 嫌でも薄れていく記憶の中で、 僕は何度も何度も上から同じ線を準えて。 幾度も修繕されたその絵画はもうすでに原本とはかけ離れたものになっているのだろうか。 彼女の声、指先の温度、その一つ一つが確かに消えていく。 もう二度と確かめることのできないその体温が、どうか僕の体温よりも冷たいことを願って。  花火大会の数日前、初めて彼女が泣いているのを見た。 何が合ったのかはわからない。 僕は月並みな言葉をかけてやることしかできなかった。 もしあの時、僕がこの世のどこにあるのかわからない、あるかもわからない、彼女のためだけの言葉を見つけれていたら。 何か変わったのかもしれない。 そう思うだけがただ辛くなった。 あの日から八年。 今でも毎年花火大会の日になると街の外れの高台に来る。 僕の記憶に花火はないはずなのに。

台風の核

人間は誰でも自分の身長、体重、横幅位熟知 してる者その時彼女はこう説いた台風は自分 自身の大きさ理解してるのかな今日私初めて 風の声を聞いたの草花に貴女は美しい好きと 言われびっくりしちゃったと焦点の合わない 無邪気な瞳で呟いた俺初め笑わそうと企んで 否俺風に為った事が無いし台風の声を聞いた 人間達はずぶ濡れか飛ばされちゃうし仲良く 為れないジャンと戯けて魅せても幼女の様に シナモンの縫い包みと話し彼女は冷蔵庫から 2Lのペットボトル取り出し2つのコップを 床に直置きするとシナモンの縫い包みの口に 当がい当然床は濡れ彼女はもうシナモン駄目 だよお水溢しちゃ悪い子と言い何の罪も無い シナモンを叩いた俺は彼女の手を掴み思わず 台風や草花の声を聞く前に形有る物の声から 聞きなさい後ペットボトルが自然に与えるで 在ろう真実を知ら無い者を自然は好まないと 軽く叱れば大声で泣き出し俺はこの状態の中 前の彼女を思い返して5日前は至って普通に 会話の話題はブランド、友達の悪口に結婚話 ばかりでうんざりがっかりしてたのだが今の 状態は流石にヤバ過ぎると思いスマホで脳性 内科検索して隣を見ればパンダの様な体制で 座り2Lのペットボトルを抱えゴクゴク飲む 様子を眺めながら彼女の自宅へ緊急連絡した

目指せ少子化解消

 少子化は大問題だ。  未来を担う人材の減少は、社会全体に大きな影響を与える。   「子育てに優しい社会を! 出産への支援を! 育児への支援を!」    俺は叫んだ。  叫び続けた。   「高齢者の優遇でなく、子育て世代の優遇を!」    例え、何を敵に回してでも。  当然、高齢者から「わしらを殺す気か」「年寄りは邪魔ものだというのか」と猛抗議が来たので、全力で戦った。  本質は、そこではない。  若者も高齢者も、今まで受けていた恩恵を少しだけ手放して、未来ある子供たちに善行をしようという話だ。  それはきっと、社会全体をよくするから。   「皆で幸せになるんです! 幸せとは、自分が損してでも誰かを助けたいと思えることなのです!」    本葬に次ぐ奔走。  すべては、明るい未来を信じて。       「お疲れ様」    仕事を終えた私は、妻からトマトジュースを渡される。   「……今日もトマトジュース?」 「仕方ないじゃない。若い人間の血、最近はものすごく値上がりしちゃってるんだから。とても買えないわ」 「ちくしょう、これも少子化の影響か!」    私はこれからも走り続ける。  若者を増やし、ヴァンパイアの大好物である若い人間の血が大量に供給され、安価に手に入る社会を目指して。    人間もヴァンパイアも、皆で幸せになるんだ。

1分で読める本格うんこミステリー

「犯人はあなたです。びしっ」  「違う、私は何もやっていない」  「あなた、今朝うんこをしましたね、そしてトイレを詰まらせた」  「それが何っ、うんこなんて誰でもするし、つまったのは旅館のせいでしょ」  「そうです、当然多くの人がうんこをしたでしょうし、私もしました」  「したのかよ」  「しかし、他の人がうんこをした場所はこの新館ではなく、旧館だったのです、じゃーん」  「どういうこと?」  「今朝の五時から六時ちょうど、この新館で点検のための断水が行われていたのです。そして前日の夜九時に全館一斉に注意を促す放送がありました、その時間にうんこをしないでくださいと.。それは全館放送で、部屋にいたら絶対に聞こえるはずなんです」  「説明長いな」  「あなたは昨日の夜九時、つまり犯行時刻にこの旅館にいなかったのです、ずびゃーん」  「なんだってーええ」  「よし、逮捕しろ」  「そんな、完璧なアリバイがああ、うんこのせいでええええ」

YouTube動画

今年こそYouTube動画卒業出来ると良いなぁ 規制、制限、嘘動画も有るらしいが真祖とは テレビに変わりYouTubeへではYouTubeの 変わりは有るのでしょうか…収益が有り規制 制限の無い神的コンテンツ出来たら良いなぁ 2026年何が変わる年に為るか誰も知らない

孤独

 こどく。コドク。孤独。  幼い頃に感じていた憧憬の念が、この文字から立ち上がることはもうない。  今ではもう断ち切ることはできない自分の影と同一化している。  そして私が感じる孤独を言い表す言葉さえ私は持ち合わせていない。それは自分のうちに滞留する粘性のある液体としか言いようがない。  言葉を持ち得ない状態が一層これを強化する。  現実に傷を負っているわけではないのに、胸の中心部が擦り傷のように痛む。それが面白く感じる。一体全体、心という臓器は物理的に存在しているわけではないのに、ときに重くときに軽く、重油の匂いがしたり砂糖菓子の匂いがするから手に負えない。  ときどき音も聞こえる。  今は、廃トンネルの中で錆びついた自転車のブレーキみたいな音がする。  孤独が私に擦り寄ってくる。何とも不思議な話だ。誰かと一緒にいるのに世界に取り残されたような感覚になる。  紛らわすために誰かに会おうとするたびに、この感覚は強まっていく。水を欲して海水を飲んで仕舞えばさらに水を求めてしまうのと同じだ。  私はどうすればいいのだろう。  みなと同じように生きてきたつもりだ。みな、先に毒のある鋭い針を持つ物を抱えて生きているのか。私だけがこれに耐えられないのか。  助けるものはいない。蜘蛛の糸すら風に吹かれて飛んていく。  空を見上げれば極楽の蓮池は見えるだろうか。お釈迦様のお慈悲を拝顔したい。  おそらく私と同じ境遇にある者はいるだろう。だがその境遇ゆえに私たちはどこの地点でも交わらずに、置き去りにされた世界の片隅で、六本の脚を交差した甲虫のようにひっくり返っている。

依頼掲示板

インターネットのサイトに、依頼掲示板というものが存在する。それは依頼人の抱える問題を、受注した人が解決してあげると、依頼人から現金振り込みまたは電子マネーで報酬が得られるという仕組みだった。 一種の何でも屋みたいなものだ。 今日も、大学生のまもるはノートパソコンを立ち上げて依頼掲示板のサイトを見る。その中に、報酬金30万円の高額な依頼があった。 「私の同級生を探してください」親友にもう一度会いたいです。と書いてあった。 まもるは、迷わず依頼を受注した。 3日後、駅前の喫茶店で依頼人のスギヤマさんと待ち合わせした。初めまして、お世話になります。依頼を受けてくださってありがとうございます。こちらこそ、よろしくお願いします。スギヤマさんは38歳の会社員の方だった。そして、当時中学生だった、同級生のフナイさんの写真を見せてもらった。20年以上も前の写真にしては、状態が綺麗だった。大切に保管されてきたのだろう。スギヤマさんの許可を得て、まもるのスマホでフナイさんの写真をカメラで撮り、フォルダに保存した。 なにか分かったことがあれば連絡ください。 ふたりは喫茶店を後にした。 まもるには戦略があった。SNSだ!SNSソーシャルネットワーキングサービスで、名前や~年~校卒業、ハッシュタグのキーワード検索で探したい人を見つける方法がある。 さっそく検索をかけてみる。フナイイチロウ。ヒットした!14人だが。その中で全員の投稿している写真から、フォルダに画面を切り替えて見比べてみる。 そして、この人だ!フナイさんに違いない!だが、フナイさんはフリーランスのカメラマンを職業としていて今はオーストラリアにいるそうだ。日本にはいない。 まもるは、スマホでスギヤマさんと連絡をとりフナイさんの現在を伝えると、そうでしたか。今はオーストラリアにいるんですね。依頼の内容のとうり、同級生を見つけてくれたことに変わりはないので報酬はきっちりお支払いします。とメールが来た。 まもるは大学を卒業したら、将来人を幸せにできる仕事がしたい。まだまだ自分を必要としてくれる人がいるはずだ。自分には使命があると、人の道を学んだのであった。

恋という呪い

好きな人がいる。 同じクラスの女の子だ。 彼女はうるさい人が嫌いだ。だから僕はできるだけ静かに過ごす。 彼女は沈黙が嫌いだ。だから僕はたくさん話題をふる。 すべては彼女に好かれるために。 嫌われないために。 彼女に好かれるために偽る性格、嫌われないために過ごす日常。 その日々の中で僕は僕を見失っていった。 本当の僕がわからなくなった。 僕が彼女を好きになって半年たった頃、彼女は引っ越した。遠い県に引っ越した。 親の転勤のせいらしい。 僕は想いを伝えられなかった。本当に意気地なしだ。悔しかった。 もう彼女に好かれるようにしなくていい。 静かに過ごす必要もたくさん話題をふる必要もない。 勝手に自分で縛られていた恋という呪いから解放された。自由になった。 周りの友人たちから言われた。 「お前、元に戻ったな」 「本物のお前が帰ってきて楽しいよ」 どうやら本物の僕に戻ったらしい。

ただそれだけのこと

 新年。私にとっては日常と何も変わらない。   31日の深夜に外に出て、カウントダウンして、「ゼロ」と同時にジャンプをする。  「2025年も終わりか、もう私たちおばさんじゃん。来年27だよ。みんな若いなぁ」  そんな声が私の周り、いや寝ている人以外みんな思っているんだ。  私だけ、こんなにつまんない考え方しているのは。  そう思われても仕方がない。私ひとりで、神社で年越しているのだから。  二礼二拍手一礼。基本中の基本。  いつからできるようになったのか覚えていない。  日頃の感謝と、社会人やめて大学進学すること。神様には、報告だけでもしようかな。  前の人たちはできている。友達、恋人、夫婦、家族、いろんな人と来ている中、私はひとりだ。  周りの声が楽しそうで怖かった。  神社でするべきではないと、わかっている。それでもどうしても耐えられなかった。だから両耳にイヤホンをさした。  お賽銭入れて、鐘鳴らす。二拍手一礼。  周りの目が怖くて早く立ち去りたかった。その気持ちが強すぎて、礼義を飛ばした。  日頃の感謝も、大学進学の報告も、何もできなかった。冷たい風に吹かれながら足早に立ち去った。すぐに答えは出た。   神社でイヤホンして、自分だけ浮いていた。 ただそれだけのことだ。

ブナの木、カスケ、早春

ブナの林を歩いていると心が安らぐ 辺り一面落ち葉と新緑をまとったブナの木 その向こうに青い空が見える ブナの木にはポツポツと白く明るい部分があって、夏の親父の背中を思い出す ジャージャーとカスケが鳴いている 彼等はブナの実をセッセと隠しては ニンマリしているのだろう 少し離れた所にカスケがいる 柔らかそうな苔の上でブナの実を飲み込んでいる ニンマリとしている 気がしている

ブラックコーヒー

「コーヒー飲める?」 この質問にあなたはどう答える? 「苦いのむり〜、カフェオレなら飲める」 と私は毎回答えている。 本当はブラック大好きだ。 だけど嘘をつく。かわいく見せるために。 私の顔はかわいくなかった。 目も鼻も口もそれらの配置も平均かそれ以下だった。 人の陰口は言わない。私をかわいく見せない言葉は使わない。 すべては性格を良くするため。少しでもかわいく見られるため。 だけど学校ではかわいい人が多かった。 私はかわいくなかった。 私は4人グループに属している。ある1人は美人な子、もう1人はかわいい子、最後の1人は儚い子。 その中で浮いてるかわいくない子、私だ。 トイレに前髪とかしに行く時、4人で撮った写真を見返した時、毎回虚しくなる。 ある日、儚いあの子に言われたことがある。 それは授業前の休み時間のことだった。 急に儚い子が私に向かって言った。 「あなたってこの4人の中で1番かわいくないよね」 周りの共感を集めるような声で言った。 美人のあの子もかわいいあの子も共感していた。 容姿いじり、何がいいのかはわからない。だけど簡単にその場を盛り上げることができる呪文だ。その呪文は関係性が深ければ深いほど盛り上がる。 ここで私が泣いたり、怒ったりしたら空気が崩れてしまう。だから私は周りに合わせて笑う。 そのあとの授業中、少し涙目だったのは内緒にしておこう。 その日の放課後。 私の靴箱に一つ、封筒が入っていた。私はそれがラブレターだとすぐにわかった。ハートのシールが貼られていたから。 丁寧にシールを剥がし、便箋を取り出し、丁寧に開いた。 『放課後、体育館裏に来てください。』 綺麗とは言えない、丁寧な字で書いてあった。 差し出し人は書かれてなかった。 私は急いで体育館裏へ向かった。 そこにいたのは、同じクラスの男の子だった。 私が最近よく話す男の子。少し気になっている人だった。 男の子の頬は綺麗な茜色に染まっていた。 背景の夕焼けと同じ色だった。 「遅れてごめん」 私は言った。 「好きです」 男の子は私の謝罪を無視して言った。 緊張で私の声が耳に届かなかったのかもしれない。 「私も。」 私の声を聞いた瞬間、男の子は本当に嬉しそうな顔をした。頬の茜色がさらに濃くなった。 次の日の私たち4人グループの会話は私の恋バナが中心だった。 かわいい子も美人な子もニコニコで聞いてくれた。質問もしてくれた。 けれど儚い子は不服そうな顔をしていた。少し申し訳なかった。 その日から儚い子の私に対する言葉が酷くなった。ほぼいじめだった。 あまりに酷すぎたので私は儚い子と距離を置いた。 私は1人ぼっちになった。 かわいい子も美人な子も儚い子の方の味方についたから。 お弁当を食べる時も移動教室の時も1人だった。 かわいく見せるために偽ってた性格がすべて無駄になった。 ある日、彼氏とデートに行った日のことだ。 場所は内装がアンティーク調のカフェだった。 メニューを見ている彼氏に、少し気になって聞いてみた。 「どうして私と付き合ってくれたの?」 「好きだからだよ」 「私よりかわいい人たくさんいるよ」 「俺は君の性格が大好きなんだ。」 「あら、そう」 つい照れて冷たい返事になってしまった。 けれど彼は優しく微笑んでくれた。 「俺は決まったよ、君は?」 そう言って彼はメニューを閉じる。 私は頷き、ブラックコーヒーを指さした。 「カフェオレじゃなくていいの?」  彼は優しく訊いてくれる。 普段から私が言ってること覚えてるんだ、と嬉しくなった。 「今日はコーヒーの気分」 私はそう言ってメニューを閉じた。 私は本当の私で生きていくことにした。 本当の私をの性格を知っても彼は私を好きでいてくれるだろうか。少し心配になって彼の方を見た。 彼は優しく笑っていた。