輪廻

 おじさんは生まれ変わりたかった。今の自分にうんざりしていた。おじさんは貯金箱を割った。ブタの形の貯金箱だ。ブタの形の貯金箱は割れて、わずかなお金が出てきた。おじさんはそれを握りしめて家を出た。そして近所の研究所に入った。怪しい研究所だ。数時間後、一匹のブタが、研究所から出てきた。それはあのおじさんだった。おじさんはブタに生まれ変わったのだ。「ブタの貯金箱を割ってブタになるなんて」おじさんだったブタはにやりと笑った。そして、今度はトンカツ屋に入っていった。

僕を捕まえろ

僕は弱い。 体は脆弱で、 心は実用的じゃない形をしている。 世界は広がっているようで狭まっている。 僕に向かって。 壁か手すりがないと進めないけど、 壁だらけじゃ進む道が分からない。 おかげでどんどん視力が悪くなっていく。 目の前のことを見ていても、 通り過ぎていく先の人を追ってしまう。 日々変わっていく感覚に戸惑うよ。 だから、あなたに掴まる。 あなたは優しい。 僕はあなたの優しさがなければ生きていけない。 あなたがいなければ僕は、 毎秒迫る気圧にぺしゃんこにされてしまう。 あなたという杖があるから、 まだ立っていられる。 置いて行かないで。 僕を連れて行って。 どうか。 僕に捕まれ。 繋いだ手を離すな。 僕をそのまま捕まえていろ。

停滞更新(フリーズ)

フェーズ1  こわい、おそろしい、とにかく人がこわい。自分の周囲を黙って、話しながら、たまにこっちを見たり見なかったりして、歩いているのがこわい。  勝手に心が緊張する。びくびくと身体がふるえる。ふるえを抑えようとすればするほど、逆にふるえが止まらなくなる。振動が目に見えるくらいになったら、あの人はなんて思うのだろう。 フェーズ2  たまらなくなって、トイレにかけこむ。  べつに何かしら吐き出されるわけじゃないけど、個室という空間に自然と安堵が押し寄せる。あれだけおびえていた心と身体がまるっきり嘘みたいで。私の本能をだますために、私の心身が共謀していたのではないかと思ってしまう。  トイレから出るのがこわい。でも、一歩前に踏み出さないと、何も変わらないじゃないか。  今日だって、以前から気になっていた喫茶店に行ってみようと、勇気を出してここまでやって来たではないか。あれだけ苦手な電車に乗って、揺れに身を任せながら何度も深呼吸をして、脳内でシミュレーションを繰り返したではないか。誘う相手もおらず、いつも自宅という名のシェルターから外を眺め回していた自分を、ちょっとでも叱咤激励したいと常日頃から思っていたんじゃないか。なのに、どうして私はいつもこう!  ……さて、今からでも遅くない。引き返そうか。そうだ、それが健全。  でも、ここまで来たのに後ずさる? と圧をかける自分がいるのも、また事実で。  よく考えてみたら、前進も後退も、歩いていることに変わりはない。では、どうして後退すると、「オマエだけ」と責められる? フェーズ3  はぁ。(ため息) フェーズ2・3  もどかしい、いじらしい私。  どれだけ人前で誇れる自分になろうと暗示をかけても、考え直しても、信念を改めても、結局のところ自分の本音まではダマせない。誤魔化そうにもごまかしようがない。  だって、それが私の本当だから。私の夢みる本当は、私が社会に向かって仕立てあげた、立派すぎる私でしかないのだから。  深呼吸を繰り返し、次にやるべきことを脳内でシミュレーションする。ありえない私を生きるよりも、ありったけの私をさらしてしまった方がラクなんだって。本当は、ずっと前から気づいてるんだ。 フェーズ2  思いきって個室を出た。 フェーズ4・8  そのまま駅のコンビニへダッシュ、アイスコーヒー片手に逃走。 フェーズ6  ギリギリ電車にかけこんで、私の本音に訴える。  またもや理想と期待は打ち砕かれたけど。次に持ち越す楽しみはできたでしょ。それでいいや、今はまだ。  壁にもたれ、窓を眺めれば、ふと、アイスコーヒーの黒い匂いがして。気づいてしまった。  あの喫茶店のコーヒーを飲めずに終わってしまったこと。心の底からホッとしている自分がいるって。

「冬毛の鳩」

 駅前のバスロータリー。道路との境目はベンチになっていて、座っている人々の足元に鳩がいる。「ねぇ、あの鳩可愛い。」「本当だ、冬毛だね。」「へぇ、鳩って冬毛になるの。」  別の日、目線を下げて歩いていたら、足元に鳩。自動販売機の前に、ずんぐりと座っている。鳩が「なんか用か」と言うようにこちらを見上げた。私は目をそらし、再び歩き始めた。  スーパーを出て歩いていると、またあの自動販売機に突き当たった。鳩もういなかった。缶コーヒーをコートのポケットに入れ、マンションの自分の部屋へ向かう。思うに、人生も同じだ。冬毛になり、夏毛になり。太ったり痩せたり。お気に入りのコーヒーを、飲んだり、飲まなかったり。希望を持ったり、絶望したり。そうして、朝が来て、夜になり、また朝が来る。 そんな、生活と呼べるよう繕う日々は、季節を伴って続いてゆく。

怖い話し

俺はホームレスだった。テントを持っていたので今晩テントを張る場所を探して歩いていた。初めての町、右も左もわからない。人気のない山の方へ、勘を頼りに進んだ。辺りはもう暗かった。けっこう田舎の方で、少し広い道路を外れればすぐに街灯なんて無くなる。ある住宅街の中を、川に沿ってずんずん進むと、気づいたら高速道路の側道をあるいていた。真っ暗な高架下をくぐり、暗い所を歩き慣れてる俺でさえ、チラチラ後ろを気にしながら歩く程、気持ちの悪い雰囲気が漂っていた。冬だったので虫も鳴かず、静寂の中、高速道路を走る車の音だけが鳴り響いては止み、鳴り響いては止みを繰り返す。「なんか変なとこ来ちゃったな、、、」なんて呟きながらもとりあえず進んだ。すると先の遠くの方でなにか白い光が見えて一瞬立ち止まった。光は動かない。きっと高速道路の街灯かなんかが何かに反射してるんだろうと判断してまた歩を進めた。その通りだった。俺は墓場に出たんだ。白い光は墓石に街灯が反射したものだった。「この墓場、なんだか気持ち悪いな、、」なんて思って通り過ぎようとした時だ。ある墓の前で俺は背中にゾワゾワっと冷や汗をかいた。その墓は誰かがよくお参りに来るのだろう、花も供え物も新しかった。なぜ冷や汗をかいたのかというと、見えはしないのだが、その墓の前に誰かが立っているような気配を感じたからだ。もちろん誰も立ってはいないのだが、俺の頭にはそこに人の形が浮かんでいた。俺に霊感なんてものはないと思う。でもね、いくら想像だとしても、顔まで浮かんでくることってあるだろうか。ハッキリはしないのだが、爺さんの顔だった。俺は持っているライトで墓石を照らした。別に読んではいないが、深く刻まれた誰かの名前がそこにあった。「まあ、俺もいつか死ぬからな、別に怖がることじゃないわ。幽霊がいるとしたら、俺だっていつかは幽霊になるんだから」、なんてことをあえて気丈に声に出して言った。これは俺が怖い時によくやる癖である。その時だった。大した迫力もなくて悪いが、その時の俺にとってはめちゃくちゃ怖いことが起きたんだ。俺は確かに見た。墓に供えてある立派な花な、ぴら、、、って、花びら一枚落ちたんだよ。俺が固まって、頭を整理しようと躍起になっているとまた一枚、ぴら、、、って、落ちたんだ。あ、これおるわ、、って確信した瞬間だった。こういう時、俺は叫んだり、走ったりするのは苦手だ。早歩きもダメ。本当はめちゃくちゃ怖いんだけど、さも平気なフリしてゆっくり歩き去る癖がある。その時もそうした。クルッと墓石に背を向けて、ゆっくり墓場を抜けた。頭の中にはさっきの爺さんの顔形がまだ浮かんでいる。そして、なんとなくだけど、背中についてきている気がした。早く灯りがあるところにでたいな、、なんて思っていると少しずつ足早になっていった。ようやく見つけた街灯の灯りのしたに、避難するかのように入りこんだ。その時にはもう、何かがついてきている感じも無かったのだが、その場所からさっきの墓場がまだ遠目に見えて、少し余裕もできたのでちらっとその墓場に目をやった。遠いし暗いしもちろん確実とは言えないが、俺は見た、さっき俺が立ってた墓石の前に、けっこう小柄な何かが立っているのを。しかもな、それ動いたんだよ。多分最初はこっちに背を向けてて、それからちらっとこっちを振り返るような動作に見えた。それを見た瞬間、俺はまた歩き出した。結局その日はテント泊はせず、街中まで出てネカフェに泊まったんだよね。小説とは言えないかもだが、これ実話です。

誰にやられてるとか知らない

 知らない。 誰にやられてるとか知らない。 俺の権利を侵害するならやる。 被害者意識。 加害。 誰のせいでもないだろう。 システム。 弱いものを助けて自分も弱いものになる。 身内揉め。 喧嘩。 正義を振りかざす正義。 ストレス。 能力の欠如。 欠点を認められない弱さ。 愚痴。 悪口。 色気。 探り合い。 駆け引き。 相性。 嗜好品。 性癖。 複雑に相関する。 そして自分のせい。 責める。 病む。 付け入る。 世界は舞台装置。 気に入らない配役は捨てられる。 野晒し。 それもまた一考。

ミニストーリー

米を研ぐ手に痛みが走る冬の朝は、ため息ひとつ。冷蔵庫から野菜を取り出し、手早く支度する。包丁がとんとんとん、音を立てる。いろいろ高くなったなあ、頭のなかだけで一人ごちて。窓の外では小鳥の鳴き声。ささやかな食卓とともに、静かに今日をはじめる。

電脳世界 (掌編詩小説)

サイバーパンクの路地に憧れて 電脳世界のSFモノを思い出して こちらから、ネオンサインを出す 受け取られる日は来るのかな 電子回路をいくら絡めても正確に電子は伝わる 脳内のニューロンは、正確さを少しずつ確かに失うのに こちらから『老い』を迎えているのに 狂ったこの流れは止まらない ポリゴンウェイヴの巣に囚われたみたいだ 創りモノだらけの世界で マトリョーシカを永遠と分解していた (完)

― 巫 ―

人を救うはずの祈りは、一歩間違えれば「呪(のろい)」と成り代わり牙を剥く。その恐ろしさを、忘れてはいけない。「祈り」とは何なのか、決して忘れてはいけない。この世には八百万の神々がおられる。常に人は神に祈り、神と共に在る。その祈りは生活のため、人のため、世界のためと様々だが、神々はそんな「祈り」に共鳴し力に変え、人を助け、恵みを授ける。ただ、「祈り」とは非常に単純で複雑なものだ。本来ならば神を敬い、誰かを思い、人々を幸せに導くためのものだが、意味を違えて嫉妬や憎悪などという負の感情に流されるまま手を合わせていると、自分では「祈り」だと思い込んでいたものがやがて「呪(のろい)」へと成り果てる。そうなれば誰かが傷つき、また平穏が壊れ、最後にはそれが自分に還る。その恐ろしいことと言ったら…… 柔らかい微かな光が差し込み、目が覚めた。ああ、もうお日様がお昇りに。そろそろ支度を始めないといけない頃だ。いつも通り装束に身を包み、赤や青や緑の美しい玉を連ねた首飾りと、華やかな金属彫刻の冠をつけ、少し急ぎ足で部屋を出る。毎日のことだが、少し飾りすぎでは無いだろうか……などと考えつつ私のお仕えする方のもとへ向かう。

低質逃避行

下り坂が好き スピードを上げて、消えることができるという選択肢を身近に感じられる。 だから、好き けれども、そんな気はないみたいで 心地よく降りて行った

伊達眼鏡から見える景色

毎夕にお弁当を買いに来る。私のレジに来て。でも貴方は空いてるレジに行くよね。急いで他のお客様を対応するのに。しょうがない。私に会いに来てる。そんな事はない。伊達眼鏡の奥から見つめてしまう。私は貴方の為なら全てを差し出すのに。会計を済ませて車椅子を押す貴方。助けたい。私の全てで貴方に。言葉に出来ない心で見つめてしまう。数日後。私のレジに。優しく見つめて。毎日お弁当じゃダメですよ。声をかけて見ていたことがバレる。もし良かったら、、、躊躇いながら。私が。止まらなくなって食事を作りたいと発言。優しく頷かれて仕事が手につかない。部屋に向かう。男らしい小汚い部屋に愛おしさを感じる。、私がこの人を、、、

欲望

 放課後、家に帰ったら、お母さんもお父さんもいなかった。でも、物音がする。そっと様子を窺うと、居間に、誰かがいた。それは、死んだ人だった。僕の知らない死んだ人だった。死んだ人は、壁の時計をじっと見ていた。そして、背伸びしてそれを取り外した。それから死んだ人は、時計の電池を抜いた。時計は動かなくなった。死んだ人は僕の前を通り、隣の部屋に行った。そして隣の部屋の時計の電池を抜いた。時計は動かなくなった。死んだ人は家じゅうの時計の電池を抜いて、満足そうにうなずいた。どうやら死んだ人は時の刻みを止めたいらしい。そして、死んだ人は、僕の前を通って、家から出て行った。僕は慌てて死んだ人を追いかけて、身につけていた腕時計を手渡した。

探し物の光

光が恋しいなあ。 窓枠の絵画に、ふと物足りなさを感じた。代わり映えのしない景色。コンクリート塊で埋め尽くされた画面のところどころに心ばかりの看板の色が華を添える。僕はこの絵が好きだ。無機質さと人の温度が隣合わせの冷たくて温かいこの絵に、今日も雲の表情が生命を吹き込んでいる。なんとも虚しく、やさしく、美しい。 …ただ、今日は「光」が欲しくなった。白くて、視界を包み、目が離せなくなるような光。僕は衝動的に立ち上がってヘッドホンを片手に外へ出た。 頬にあたったひんやりと澄んだように感じた空気は一瞬にして雑踏で濁ってしまった。世界はまだ、僕が思っていたよりずっと騒がしく、眩しすぎた。喧騒が僕の肺を押し潰そうとする。街の音が、声が、気配が、僕の精神に入り込み、五感が奪れそうな感覚。手に持ったままだったヘッドホンで聴覚を閉ざし、ぐっと一歩踏み出した。僕は光が欲しかったのに、気がつけば足元だけを見つめ必死に足を動かしているだけだ。そもそもあてもなく、こんなんじゃ何の意味もない。そう思いながらも忙しなく歩いていると視界の端に少し細い道が伸びているのに気づいた。僕は逃げ込むようにその道へ入った。 耳を塞ぐ軽やかな音楽の向こうを這い回っていた雑音たちが次第に消えていく。ようやく僕はほんの少し顔をあげ、 先程までとは違ったリズムを刻むように歩いていく。陽の光を感じる。 あたたかい。これが僕が求めていた「光」なのか。鼻歌まじり、どこか踊るように人のいない道を進んでいく。 _ぱた、と僕は足を止めた。そっとヘッドホンを外すと、開放された聴覚に空気の音がすうっと一気に押し寄せてくる。鳥居だ。それは民家の間…「生活」の中から、音もなく現れた祈りの場であった。ぼんやりした、それでいて澄み切った意識を抱えたまま石の鳥居をくぐる。社殿の前にて手を合わせると心の中がとけ始め、ほんのり温度をもった"なにか"がゆっくりと満ちてゆくのを感じた。僕の今日の探し物はもう見つかったのだから、そろそろ帰ろうと思った。去り際に振り返ると、風に混じって「気をつけてお帰り。」と微かに聞こえた…ような、なんて。帰っても家の窓枠の絵画は変わっていないだろう。 でも僕は今日、「光」を見つけたから、それでいい。

大人制服

 ランドセルからスクールバッグに変わった時、なんだか進化した気がした。  スクールバッグからリュックサックに変わった時、やっぱり進化した気がした。  リュックサックから通勤バッグに変わった時、最終進化系に辿り着いた気がした。    以降、何年経っても成長しなかった。   「やっぱ、サラリーマンも通勤歴で制服変えるべきっすよ」 「お前は突然何を言っているんだ」    俺のスーツも、俺の前で飯を食ってる上司のスーツも、正直変わらない。  俺のは既製品で、上司のはオーダーメイドらしいので、値段は変わる。  でも、上も下も真っ黒で、同じ場所にポケットがついていて、昔みたいに進化って感じはしなくなった。   「中学生とか高校生の頃になかったっすか? 一年生は青色で、二年生は緑色とか」 「うちの餓鬼は、一年生で赤色だったな」 「それ、俺の中では三年生のイメージっす」    大人になった今振り返れば、子供の頃は成長を感じる仕組みがたくさんあった。  その一つが、制服とかばんだ。  三年ごとに進化を遂げる制服に鞄は、自分も一緒に進化させてくれるような気さえした。  確実に大人へ近づいているって、思わせてくれた。   「んで、なんだっけ?」 「制服! 制服っす! やっぱこう、大人もわかりやすい変化が欲しいっす!」 「んー」    上司は箸で茶碗を二度叩いた。  真面目に考えている時の癖が出ていて、ちょっとだけ嬉しかった。   「変化、出てるだろ」 「え? どこにっすか?」 「給与明細」 「……生々しい!」 「金は大事だぞ? お前はまだ独り身だからわからんかもしれんが、嫁ができて餓鬼ができたら、いくら増えても足りねえって思うから」    上司は残ってた味噌汁を飲みほして、上着を持って立ち上がった。   「ちょっと早めに確認したい書類あるから、先戻るわ。会計は払っておいてやるよ」    上司がいなくなった店内は、どこを見渡しても黒黒黒。  同じ会社のやつも、違う会社のやつも、皆黒。  ネクタイに遊び心を出しているやつもちらほらいるが、まあ、軽微な違いだ。   「いっそ、自分だけスーツを赤にでもしてみるっすか?」    もしも自分が起業をすることがあれば、会社に制服でも導入しようか。  そんなことを考えながら、残った飯を平らげて、店を出た。

クルーズ・ラブ

 早朝のクルーズ船のテラスで、あやとは1人で水平線を眺めていた。スラリとした姿だが、無愛想な顔がどうもパッとしない。栗色の髪が潮風になびいている。  クルーズ船での恋愛をテーマにしたドラマ『クルーズ・ラブ』の撮影の3日目だった。役者やあやとたちスタッフは、この船に泊まり込みで撮影をしている。売れてるプロデューサーの作品なだけあって、制作費が桁違いだ。これをもう少しでもADの給料に分けてもらえないものか、とあやとはよく考える。 「あ、ここにいたんだ」  声をかけられ振り向くと、みやびがテラスに出てきたところだった。ショートカットの彼女は、ヒロインの友達役の女優だ。今回は脇役とはいえ、大人びた美しさと自然な演技力で、いくつものドラマに出演してきている。本来、ADのあやとが関わるような人物ではないのだが…… 「おはようございます。こんなに早く起きて大丈夫なのですか?」 「あやとくんこそ。私は大丈夫、スタッフさんよりは早く寝れたから」  ふふっと笑い、あやとの横で柵に肘をつく。聞こえるのは船のエンジン音と波の音ばかり。まるで映画のワンシーンだな、とあやとはまた海に目を戻した。  その時、頬にふわっと温かいものが触れた。見ると、みやびの美しく整った顔がすぐそこにある。彼女は照れくさそうに笑い、首をすくめた。あやとは少し動揺し、ぶしつけに聞いた。 「あの、今――キス、しました?」 「ふふ、また油断してたでしょ。おはようの代わりだよ」 「普通に言葉で言ってくださいって、いつも言ってるじゃないですか! 見られてたらどうするんですか」 「大丈夫よ。今はみんな寝てるし、噂はディレクターの浮気疑惑で持ちきりなんだから」 「それとセットになって噂になったら大変だって言ってるんです!」  あやとが言っても、みやびは「ごめんごめん」と笑うばかりだ。あやとは額を押さえ、大げさにため息をついた。彼女の目を見ると本気で怒れなくなるのが、最近の悩みなのだった。

ミニストーリー

明かりを消した暗い部屋。ただ一点だけが赤く光る。眺めているうち、睨まれた気になって不覚にもイラっとする。脱いでセーターを投げつけようとするが、パチッと蒼く火花があがって指先に警告が走る。窓の外は雨なのに、叩く音がない。別の時間が流れている。

月と鼈は恋を知らない

月が君なら俺は鼈だな。 <憧れ> 月を見る度、君を思い出す。 端正な顔立ちに、宝石のような青い瞳には、いつも天の川みたいな光が差し込んでいた。声を聞く度、心が次第に落ち着く。 同時に、君は僕と同じで夜の世界にしか現れない。 上を見つめれば、電柱の先に月が重なる。 (あの人が来そうだな……) そっと見つめると、甲高く音色が飛び込んだ。 ーーチリン 風鈴の音色だろうか。 淡い音と共に、月に重なる電信柱に人影が見えた。 「やぁ〜少年。いや、吸血鬼とでも言っておくか」 風に揺れる黒髪の隙間から、凛々しくも鋭い青い瞳をじっと向けた。足に括り付けたベルトに、尻尾を固定する姿は獣のような狂気が混じる。 だが、そんな彼女を恐れず、逆に睨みつけた。 「その言い方やめろ」 「いいじゃないか。こっちの方が厨二病混じりでかっこいいだろ?」 スっと地面に降り立つと、フードを外した。 ふわっとした耳は獣人を象徴するもの。にやつかせる唇の隙間から、鋭い犬歯が顔を覗かせる。 「……人間界も厨二病は引かれるぞ」 「な、わっちがやばい人間見たいじゃないか!」 「獣人ってレッテルな時点で十分だろ」 皮肉交じりな言葉に、彼女は呆然と見つめた。 「あんた。自分が吸血鬼って忘れたんじゃねぇだろうか?」 図星を突かれ、思わず頭を掻き毟った。 「あーもう、断らなかった自分が憎い!」 「お前さんが『吸血鬼になりたい』って言ったんだろ?」 耳を立て、呆れ気味な表情に胸が痛んだ。 (仕方ないだろ……俺だって、能力が欲しかったんだからさ) 夜空を見上げ、あの青空が恋しく感じる。 能力があるだけで全て救われるんだ。全てが……そう思っていたのに、気づけばその夢はガラスのように崩れてしまった。

願掛け

「もう少しだ」  青年は掠れた文字とボールペンの僅かに残るインクを見ながら、嬉しそうに言った。幼さの残るその顔を見ながら、男は煙草に火をつけた。  二人の間のテーブルには何冊ものノートが広げたまま散らかっている。無造作に置かれたノートの中には歪んだ文字が並んでいる。 「替えのインクはある?」  男は煙を吐きながら穏やかな口調で訊く。青年は「あるよ」と言いながら、まだインクを見ていた。 「嬉しそうだね」男はわずかに口角を上げて、独り言のように呟く。男のからかうような視線に、青年は拗ねたような口調でいう。 「兄さんは信じてないんだろうね」  男は返事の代わりに、ため息をつくように煙を吐いた。  青年は新しいボールペンや芯を使う時、必ず願掛けをする。そして、インクを使い切るとその願いは叶うと信じている。そんな青年の子どもじみた儀式を、男はいつも目を細めて見ていた。 「そのペンにはどんな願いをこめたの?」  男は青年の持つペンをじっと見つめた。 「こういうのは、人に言ったら叶わないんだよ」  青年は男の目から願い事を隠すように、ペンを左手で覆う。 「あ、前使っていたペンには兄さんが禁煙しますようにって願ったよ」  男は煙草を灰皿に擦り付けながら「叶ってないけど」とイタズラっぽく笑った。 「だって使い切ってないからね」  青年はわざと困ったような表情で笑った。 「兄さんに貸したまま帰ってきてないからね」  

生きているまち

とおくに感じる喧騒をよそにゆるりと振り返り、ふらふらと歩いていく。コンクリートの塊、高くそびえ立つ壁の隙間にすっと顔をのぞかせる緑と信仰の息吹。私はこの「まち」がすきになった。つくられた華やかさに姿を隠しながらひっそりと、確実に生きているこのまちが好き。どちらが本当でどちらが嘘か…なんて、一人の人間にもいくつもの顔があるように、このまちも全てが「本当」なのだ。だから煌びやかな無機質さもこのまちの「本当」の姿。けれども私は、このまちのひっそりとしたやわらかい顔が好き。ふと歩み寄った途端にふわっと心を開いてくれたように見せてくれたこのまちのあたたかさが好き。 「さよなら。」私にとってそれだけで終わりだったはずのこのまちに、 「おはよう。」今ならそう言える。

Well, shall we?

あれが強そうなのは、これが弱いから。 あれが弱そうなのは、これが強いから。 強いのは、弱い自分を見つめているから。 弱いのは、弱い自分を見てないから。 強くなるなら、スタートはどこ?

足りないもの

 スーパーで売られているレモンが、頭の中でレモンスカッシュに変わっていた。無意識のうちに値引きされたお惣菜を一通りみて、なにも買わずに帰路につく。  レモンを買っても、レモン搾り器を持っていない。シロップも炭酸水もない。透き通ったグラスもなければ、氷も作っていない。足りないものしかないのだ。道具や食材を集めても美味しく作れる保証はない。  そもそも、それらを悩まずに買えるほどお金の余裕がない。もしお金があったとしても家に帰ってからわざわざ作る体力も時間もない。  レモンスカッシュが飲みたかっただけなのに、家に着く頃には自分に足りないものばかりを数えて心の余裕も足りなくなっていた。

ほら、俺いらないし

 周りの空気が悪くなってる。 何とかしろって空気になってる。 頑張ると空回りする。 割を食う。 必要なところに必要なもの、物資、思いやりが行かない。 女、子供が疲弊する。 場が暗くなる。 誰かのせいにする。 攻撃欲、支配欲、競争心。 メタ認知ができていない。 物語と事実の差が認識できていない。 場に必要なものは遊び心と思いやり、ユーモアだと気づかない。 疲弊する。 夢に逃げる。 誰かとつながる夢。 でも一人でいたい。 自分のことがわからない。 文字を書いていないからかもしれない。 数学をしていないからかもしれない。 化学をしていないからかもしれない。 物理をしていないからかもしれない。 外国語を話していないからかもしれない。 哲学をしていないからかもしれない。 宗教を学んでいないからかもしれない。 遊んでいないからかもしれない。 好きな子に好きと言っていないからかもしれない。 満たされない自分を許せていないからかもしれない。 こんなことを一人ごちても金にならないので一言 「ほらお前いらないし。」 うん、ほら俺いらないし。

N市の死因記録

1月1日 男性 餅を喉に詰まらせ窒息死 1月1日 男性 ヒートショックにより死 1月2日 女性 階段でつまづき 転落死 1月3日 男性 喧嘩で椅子で殴られ、脳挫傷を起こし、死。 1月4日 女性2名 男性2名 N廃病院に侵入。院内を探索後、遭遇。壁に頭を打ち付け、お互いの眼球を奪い合う形でえぐりだし。絶命。 1月5日 男性 痴情のもつれから知人の男性と口論になり。道路に突き飛ばされる。轢死。 1月7日 女性 ハイキング中に毒性を持つキノコを誤食。8時間後に病院にて死 1月9日 男性8名 女性3名 N駅西口にて、遭遇。互いの目を奪い合い。指を噛み千切る。失血死。 男性一名が生き残ったが、六時間後、病院から脱走し、N廃病院の手前で野犬が骨を咥えているのを発見。 1月10日 男性 登下校時に車に轢かれ、轢死。 1月11日 男性13名 女性22名 N高等学校の廊下にて、男子生徒7名が遭遇。数分後に教室にて突然男子生徒が窓を割り、破片で他生徒4名を攻撃。 同じ事を遭遇した生徒6名が数分後に他の教室で行ったため。甚大な被害が起きた。 1月15日 男性 夜道を歩いていたところ、遭遇。奇声を上げて走り去る。職員の捜索むなしく、発見されず。 (追記 2月4日。N廃病院のエアコンの中から折り畳まれて発見。) 1月18日 男性 N廃病院に潜入。 当記録を発見。それを書き写し、2日後にネットに小説という形で投稿。 その2時間後に火事がおき。焼死。 1月21日 女性 道路を通行中 突如野犬に襲われ、死亡 野犬は駆除済み (追記 女性はネット上で18日の男性の小説を閲覧していたことが発覚) 1月23日 男性 ネットで小説という形で投稿された当記録帳を閲覧。 2時間後に溺死。 1月24日 女性 ネットに小説という形で投稿された当記録を閲覧。2時間後に失血死。 1月28日 男性3名 N廃病院にて当記録を閲覧。遭遇。 壮絶死。 1月29日 男性 ネットに小説という形で投稿された当記録を閲覧。焼死。 1月30日 男性 ネットに小説という形で投稿された当記録を閲覧。餓死。 1月31日 女性 ネットに小説という形で投稿された当記録を閲覧。溺死。

転生してお水

 変質者に追われている。 転生してお水になったら搾り取る。 気持ち悪い。 人としてのコミュニケーションがまずできていない。 あれでは出会いはおろか人としての生活もろくにできないだろう。 そう生れ落ちてしまったのは不幸だと思うが同情はしない。 お金を払ってくれれば、礼儀正しくしてくれれば対応する。 性質的にできないだろうが。 できない奴はできない。 最近分かったこと。 消費のサイクルに回って動くだけの生き物。 悲しい生き物。

才能ありなし

「皆、才能なんてない。結果は、努力をしたかどうかだよ」    ある人間が言った。   「そんな貴方に、セカンドライフ! 貴方から才能を一つ取り上げて、パラレルワールドへご招待します! さあ、今世と同じ努力を頑張ってください!」    女神が笑った。    人間は転生した。  国が戦争に突入したパラレルワールドへと。   「お国のために死んで来い! 天皇陛下、万歳!」    人間から取り上げられた才能は、生まれた環境。  平穏な時代だから、好きな方向へ努力できる。  激動の時代には、努力の方向さえ他者が決める。   「ほーら、頑張れ頑張れ! 全っ然努力できてないぞー、君?」    女神が笑った。    人間ができる努力は兵器の扱い方ただ一つ。   「私に才能はあった。返して下さい、女神様」    人間は泣いて縋った。  己の才能を求めて。

有限

どうやら気づいていない。 何も気づかれていない。 それなりに、彼方も知ってるつもりではいた。 相応に、此方は知らせてるつもりはあった。 あちらが眠りについた時、こちらは起きている。 あちらが起きていると、こちらは別の場所で起きている。 目の前には、いつの間にか、爆弾。 爆ぜるかどうかは、あなた達次第。 くたびれて、くたびれて。 自分らしくは、いつも後回し。

いつだって暗い夜だから

人が多いと、聞こえない。 人がいないと、聞こえてくる。 広い場所だと、感じない。 狭い場所だと、感じられる。 明るい時には、見当たらない。 暗い時には、よく見える。 それ、なんだ?

お前も好きにならないか?好きにならないなら殺す

「俺は俺のことが好きだ。」 「,,,,っ!!」 「だからメンタルは鉄のように硬い。お前が付けた傷ももう見る影もなく回復している。」 「,,,フンッ。」 「だがお前はどうだ?ボロボロのモチベ、動かない体、心の傷はそう簡単に治るものではない。」 「何が言いたい。」 「お前も好きにならないか?,,,自分を好きになろう。そうすればお前は強くなれる。」 「,,,,ならない。」 「何?」 「申し訳ないが、俺は端からキミのことが嫌いだ。自己崇拝に溺れる愚か者なんかにはなりたくない。俺は断じてナルシストにはならない!」 「,,,そうか。,,,,,なら、殺す。」 「,,,,っ!!」 「言えっ!!!ナルシストになると誓え!!お前は選ばれし強き者なのだっ!!!!」 「俺は俺の人生を全うするっ!!!!ここにいるものはみんな、自分勝手なことはさせないっ!!!」 「クソォォ!!」 「キミもだ!!!」 「ぬぉ!?抱きつくなっ!!離せっ!!!」 「うぉぉぉぉぉぉ!!!!」 「ぬぉぉぉぉぉ!!!!(マ、マズいっ!!)」 このままではこいつが気づいてしまう!! 他者を救ってこその命だということにっ!! もうすぐこいつの思考に日の出が来る!!! 人と人は助け合うべきだという太陽(こたえ)が昇ってしまう,,,!!! に、逃げなければっ,,,こいつの正義感が 爆発する前に逃げなければ,,,,っ!!! 「離せぇぇぇぇ!!!」 「うおぉぉぉぉぉ!!!」 スポンッ 抜けたっ!! 逃げなければっ!!! 「逃げるなっ!!!ナルシストォォォ!!!!」 !? なんだ、なんなんだあの少年(ガキ)は!? 「自分自身から逃げるなぁぁぁ!!!!」 逃げるだと!? 違うっ!!俺はお前らから逃げてるんじゃない! 人と人との醜い関係から逃げているんだ!!! 「こっちはなぁ!!お前みたいなやつがいるのも承知でやってんだぞっ!!!!」 「!?」 「お前みたいな頭のおかしいやつも普通の人達みたいに優しく、気遣ってやってるんだぞ!!!!!」 「,,,,っ!!!」 「だから、負けたのはお前だっ!!!こっちの勝ちだぁぁぁぁ!!!!!」 「ぐはぁぁ!!!」 くっ、言葉の刃が痛いっ!! クソぉ! とにかく今は逃げるんだっ!! 俺の体が危ないっ!! 外にでなければこんなことにはならなかったのにっ!!! 早くお家に帰ってネットの世界へ戻らなければ!!! 「,,,もうあまり動けそうもないな,,,,,少年、自分軸のニート生活から人助けのためにここまで来て、俺たちの団体に賭けてくれてありがとう。俺はキミを認めるよ。」 「(少年、号泣)」 「,,,,お母さん,,,,俺は俺の人生を全うできたでしょうか,,,,」 「(少年、大号泣)」 「で、エンディングっていうのはどうでしょうか。」 「君、これ書いてる自分かっこいいと思ってんだろ。」 「はい。」 「これは、どのキャラクターに注目してほしいの??」 「うーん、ナルシストかなぁ。」 「却下。やっぱ映画は作画がすごい人達に託すわ。君にはまだ早かったな。引き続きアニメの方を頑張ってね。」

どうせ誰も見ないんだよ

ランウェイ気分で、 TikTok撮るスマホに映り込み、 ポーズを決め込む、 素早いターンでずらかる。 翌日自宅で、 YouTube漁って見つけた、 ショート動画の中に、 ポーズを取る私が撮られてた。 恥ずかしい恥ずかしい 恥ずかしい恥ずかしい いいねの数がすごい 恥ずかしい恥ずかしい 恥ずかしい恥ずかしい コメ欄に集まる「あの人誰?」 恥ずかしい恥ずかしい 恥ずかしい恥ずかしい 動画の主役はわ・た・しってこと!? アイドル気分で、 ダンス撮るスマホを見つけては、 遠めにこっそり、 派手めにアピール。 翌日スマホに、 見たことない電話番号来て、 すぐ切る気で出たら、 「動画見ました。スカウトしたいです。」 恥ずかしい、でも、嬉しい 嬉しい、でも、恥ずかしい マジでその後も何通か電話 恥ずかしいでも、嬉しい 嬉しいでも、恥ずかしい その後のこと、なんつーか期待。 恥ずかしくて嬉しい 嬉しくて恥ずかしい 乗っちゃおっかなぁ どうせ誰も見てないんだよ!! 世間の声は、セカンドに置いて。 誰も見てやくれないんだよ!! こんなアイドル、いたって大丈夫。 こんなやつでもいたって正常です。 問題に至ってもはいピース。

痛み分け

ボクが何を乞おうと どれだけの代償を払おうと きっとキミは許さないだろう。 だから キミがどれだけ泣こうと ボクのために傷つこうと ボクも気づかないフリをする。 かざす 手を取り合えば 争いは無くなるというけど その手と 手を繋ぐ 思いは 誰の指にも届かない。 どれだけボクが叫ぼうと キミに何を叫ぼうと きっとその手は止まらないだろう。 だから キミが無惨になろうと ボクに何を訴えようと ボクはその口を塞いで首を絞める。 睨み 拳をぶつけ合う お互い様という言葉が汚い 止めることも できず湧く殺意に ボクがそっと痛み分け。 キミの 血がボクも欲しい その苦痛を背負いたいのに 一人でに歩く 道閉ざせるなら 涙一つ零さない

金曜日の朝

道を譲らないオジサン 歩みを止められないサングラスオジサン 通勤中の米軍兵が道を譲る 踊る大捜査線の青島巡査部長なオジサン ヘッドホンをして俯いて歩いている黒一色の細い男性 笑いながら運転している人 肩から手にかけて電気が走るように痺れる 寒い朝の自転車乗っている人達の顔が必死 白い車ばかり

商売人

 商店街の隅にさびれたラーメン屋がある。客はあまり入っていない。老夫婦が切り盛りしている。跡継ぎはいないはずだ。先は長くないだろう。ところがある日、そのラーメン屋に行列ができていた。何があったのだろう。近づいて店の様子を見る。入口に貼り紙があった。『精神安定剤トッピング無料』そう書かれていた。店の中を覗くと、白い錠剤がいくつも浮いたラーメンを、客全員が食べていた。老夫婦め、考えたな。この町は病んでいるからな。俺は行列の最後尾に並んだ。

人と遊ぶ予定を入れる理由

「あんた、そろそろその服捨てたら?」    母さんが小言を言ってきた。  今の日本の服は頑丈だから、何年来ても破れない。  まだまだ切れると思うのだが、母さんから言わせれば袖がだるんだるんのでれんでれんらしい。    ぼくは身だしなみを整える面倒なことが嫌いだ。  服なんて切れればいいし、髪なんて前が見えればいい。  できれば一生ジャージで過ごしていたい。    とはいえ、ままならないのが人生だ。   「はあ、仕方ない」    ぼくの服探しは、モチベーションを作るところから始める。   『久々に遊ばね?』 『いいよー』    よし、友達と遊ぶ約束を取り付けた。  ぼくは身だしなみを整えることは嫌いだが、友達に服のセンスがいいとは思ってもらいたい。  だから、友達と会わなきゃならないことが、服選びの最大のモチベーション位なるのだ。    服を買う時用の服に着替えて、アパレルショップへ。  店員が近づいてきたので、てきとうに着回しできる服を見繕ってもらう。  試着してみたらいい感じだったので、提案された物をまとめて買った。  これで完璧。       「おーっす」 「はよー。相変わらずお洒落だな」    これが、ぼくが人と遊ぶ予定を入れる理由だ。  お粗末様でした。

深夜に溺れて (掌編詩小説)

エアコンの電源が切れた タイマーが時間いっぱいになったのだ あっという間のように感じる 過ぎてしまった短針 覚めてしまった睡魔 ズレたカーテン越しからの冷気 自分の中にある何かが吹っ切れた ビーカーに入れた石油が駄々漏れる 現実よりもゆっくりに感じた 動き過ぎた昼間 メトロノームに合わせて 過剰な力を取り戻したかった 整ったカーテン越しの日光 (完)

心と思考 そして、、、

「そば屋さん行くよ。」 この一言はおばあちゃん家に行く合図だ。私の家の近くにそば屋さんはない。おばあちゃん家はここから50分ぐらい、そこからそば屋さんまで30分くらい。急いで準備して外にでる。時間は午後6時空がとても綺麗で月が私の目に映った。空気は乾燥していて、冷たさが顔にのしかかる。薄ら青が一面に広がり反対を向けば少し暖かい色。 あれ?こんなに世界は綺麗でしたか? なんでこんなに綺麗に見えるんですか?時間帯の話ですか?何故こんなに。綺麗に、、、 気分が高ぶってるだけなのか、昨日の夜中は確かにとても落ちていました。だからですか?私の汚さ醜さの対比ですか?はっきりさせるためですか?それでも、、、 最近、言葉を綴り始めた。文章を作り始めた。ただ、今の現実に向き合えないから。そのための逃避行だと思って綴っていた。その割にはとても楽しいのだ。私の今までの経験を元に綴って、作っていた。それは自分なりに上手だと思っていた。ただ、やはり年上が読んだら、文を作るのが上手い人が読んだら、薄い。そう思われると不安にも駆られた。そして、私の中の年齢が気になった。だから、ノートを開いて今までを沢山書き出した。私は、心を冷凍して保存していた。何となくそう思った。ただ、思考だけはずっとしていたから年相応。いや、それ以上に成長している。そう、ノートを見て気が付いた。 おばあちゃん家に行く途中、みんなが想像するような田舎の景色があった。 「山に囲われ、田んぼが敷いてあり。光が1つ2つと光ってる。」 どう言葉を綴るか、ずっとその事を考えている。思いついた。自分からこんな綺麗な言葉が出てくる。それを失うのが恐いから、文字盤を光らせ文字を打つ。私のネタ帳は、ノートがひとつと、文字盤の中にもひとつ。 ずっと月が追いかけて来てくれる。その近くに星がひとつ。月は鏡なのか。そう考えた。月が光っていた。否、月は太陽光を反射させている。つまり月は鏡。 目に付いたもの全てが新鮮に感じた。 おばあちゃん家についた。お父さんがおばあちゃんを呼びに車から降りた。いつも車を止めるところの目の前はガソリンスタンドだ。しかし、郵便局でもある。そして、家でもある。珍しい。そう感じた。今まで何も思わなかった。でも、珍しいと珍しいもののはずと思った。私のおばあちゃん家の立地も珍しいと思う。二階建てだ。丘に 沿うような感じで1階は道路より下にある。2階は道路と同じ高さにある。丘の下には動物がいたり、川が流れたりしている。川の風はとても冷たい。 周りは山に囲まれ。玄関は駐車場から、少し坂を下る。バルコニーのような、何んと言うべきか分からないが、[そこ]からの景色はきれいだといつも感じていた。 そば屋さんについた。そば屋さんは水車が回っている。手水舎がありそこは、地下水が飲めるらしい。サザンカが咲いていて。昔ながらと言うべきか。中には囲炉裏もある。そんな建物のそば屋さんだ。待ってる間に漬物が食べられる。私はその漬物に死ぬほどごまをかけて七味を少しかけるのが好きだ。多分定員さんが引くぐらいにはごまをかけている。 そこの卵焼きはとてもふわふわでだし巻きが苦手な私でも、そこの卵焼きだけはとても大好きだ。そして私の家族はそば屋に来てみんなうどんを食べる。峠なべのうどんを3つ。肉うどんを2つ。かけうどんを1つ。卵焼きを4枚。天ご飯が1つ。6人なのに、両親におばあちゃんは峠なべ。私と1番下の弟は肉うどん。長男はかけうどん。みんな好みが似ているのか。全くバラバラになっていない。一番下と私は性格が似ている。好みが似ている。 全ての料理が届いた。いつも食べている安心する味。薄いわけでも、濃いこいわけない。ただ少し甘く感じる。 美味しいな。そう思う。弟ふたりは、次男が沢山食べるから、長男が負けじと食べていた。とてもその光景が微笑ましく、面白かった。 食べ終わり、おばあちゃん家でゆっくりテレビを見て、談笑の時間だ。 帰る時間になり、おじいちゃんの仏壇に手を合わせる。会ったことも一目見たこともない。写真上でしか知らない。お父さんの思い出上でしか知らない。お父さんが14歳の時に蜂に襲われ、崖から落ちて即死したらしい。 帰り、私は車の中で考えた。何故ここまで全てが新鮮に見える理由を。そうか、簡単だ12歳の時か。14歳の時か。その時にこれ以上ダメにならないように、冷凍保存した心が文字を綴ることを通して、文章を作ることを通して氷が溶け始めているのだ。過去の私が自分を守るためにせっかく凍らせたのに。溶けだしている。「あぁ」そうか。 どうか、どうか私の中の氷よまだ凍りのままでいて。 溶けてしまった時にあなたを守れる自信とすべが今はまだないから。そう願いながら、私は文字盤の上で指をすべらせる。今日もまた丁寧に。

彼女の今と過去

彼女は台所に立ちながら、しみじみと感じていた。心の奥から、じわじわと込み上げてくる穏やかな喜び。大切な人に食べてもらうために作ること。共に食べること。 そんな、当たり前で、普通のようなことが、どれだけ幸せか。 当たり前は、決して当たり前じゃない。 そんな、静かな幸せに包まれる瞬間、つい彼女は、過去の記憶に思いを馳せる。 子どもが生まれてからは、何かしら闇雲に生きてきた。 どうしようもなく湧いてくるイライラや憂鬱をごまかし、抑え込み、とにかく毎日、ご飯を食べさせ、その日その日を送るだけで精一杯。 それでも溢れ出るイライラや憂鬱が、子どもに向かい、爆発することは避けられなかった。 毎日、自分を責めた。 そして彼女は気づいてしまった。 私は、親と同じことをしている。 彼女が子どもの頃から渇望していた『安心感』。 絶対に与えてやれる親になると決めていたはず。 それなのに。 集団に入っていく上で、最低限必要な安心感さえ与えることができない。 学校にだけは行かせないと。 焦れば焦るほど、悪循環になった。子どもの顔色が悪くなり、覇気がなくなっていく。 そして、全てが行き詰まった。 もう、何も湧いてこなかった。 湧いてくるのは、絶望感と涙だけ。 もう無理。生きていたくない。 そして、彼女の心の中で、命懸けの自問自答が始まった。 『死にたい気持ちに任せて本当に死んでしまう?』 いや、それだけは絶対にダメ。 『じゃあ、今のまま、この無気力で不安定な自分のまま、子どもを育てる?』 いや、それはもっと嫌。 じゃあ、残りは一つ。 『どんなに時間がかかっても、今、ここからスタートして、自分を立て直す?子どもと一緒に育っていく?』 それしかない。決めた。 その日から、彼女の心の奥底で、何かが確実に動き始めた。 しかし、覚悟は決まっても相変わらず湧いてくる、抑え難い自己嫌悪。イライラ。憂鬱。 ノートに書いて見つめ直した。 無気力な心と、鉛のように重たい体をひこずるように、何とか生活を回しながら、一方で、心の奥で自分と向き合い続ける日々が始まった。 そうしているうちに、若い時期に感じていた感覚や、願いが、心の奥底から聞こえてくるようになった。 例えば高校時代、学校へ行けなくなった時。 これでやっと本当の自分をさらけ出せたと、一瞬ホッとしたこと。 でも、それが理解されることなく、一年後に復学することを条件に、一年の休学を許可された時の絶望感。 あの時自分は何を望んでいたのか。 学校に行かない困った娘と見られながらも、確かに感じていたこと。 『自分の内側から湧いてくるものを大事に生きてみたい。』 なぜそれを親に伝えられなかったのか? 到底、理解されないことが目に見えていたから。 大事な本音を出して、否定され、これ以上心が壊れることを避けた。心を守るために、心を閉じた。 だけど心の奥底で、強く求めていた。 自分のありのままの気持ちをそのまま理解してくれる存在。 できることなら、それが親であって欲しい。 わからなくても、わかろうとしてくれる人。 どんなことも、話をそのまま聴いてくれる人。 答えを出さずに、一緒に考えてくれる人。 見守りながら待ってくれる人。 心の奥からの声が、大事なことを教えてくれる気がした。あの時、自分が求めていたような親になりたい。 そういう人になりたい。 不器用でもいいから、できなくてもいいから、目指したい。今がどうであれ、ここからスタートして、そこに向かって成長したい。 あの『究極の選択』から約30年。 年の暮れ、彼女は台所に立ち、お正月家族で集まる時のメニューを考えている。 すっかり大人になった娘、息子、それぞれのパートナー、2人の孫の顔を思い浮かべ、喜んで食べてくれそうなものを考える。 そして彼女は自分の心の声を聴く。 私はどうしたい?何をみんなと食べたい?どうしたら私も皆んなも楽しめる? 輪の中に、ちゃんと『私』を入れる。 そんな当たり前のような感覚にさえ、彼女は喜びを感じる。自分の感覚、自分の楽しみを大事に扱う。なぜなら、私が家族を大切に思うように、家族も私を大切に思ってるから。 当たり前のようにそう感じられる時もあれば、そう感じようと意識する時もある。 時々疼く過去の古傷も、全て私の一部。 疼き方は年々変化してきた。グサグサ ズキズキ ジクジク シクシク ザワザワ 長い年月の中で、その感覚の変化を感じながら、古傷は着実に回復していることを実感してきた。 今の幸せは、過去の傷から繋がっている。 あの頃と今の変化が、まるで魔法のように、奇跡のように感じる瞬間がある。でも、奇跡じゃない。歩いて来た道のりがある。そして今も、回復の途上。 まるで当たり前のような幸せを最期まで更新し続ける。彼女は、静かに、確かに、そう感じている。

独特の雰囲気を身に纏いながら静か近づいてくる。 「やっほー!」と柔らかい声とふわっと甘く漂う香り。 この香りを街や電車で感じると 近くにいるのではないかと思わず探してしまうくらい、彼のものと言っても過言ではない。 仕事をしている時の彼は、自信に満ち溢れた「表現者」の顔をしていて、どこか近寄り難い。 並々ならぬこだわりと、プロとしての厳格さを突きつけてくる。 仕事以外で会う彼はどうだろう。 この香りのようにふわっとどこかにいってしまいそうな危うさとアンニュイさが混じって、私をひどく落ち着かなくさせる。 どれだけ私がこの形のないものに酔わされているのか。 彼はまだ知らない。 知らなくていい。

ミニストーリー

スープの湯気にふれながらの雑談。最高よ! 具だくさんであるなら、食卓はさながら南仏の小さな家? ジブリ映画? くたくたの玉ねぎをすくいながら「これがないと生きていけないかも」なんて大袈裟に言ってみちゃったり。でも私はムーミンの世界がいいの。

大好きだった大人たちへ、黒い澱をありがとう。

「早く大人になりたい」子どもの頃はずっと思っていた。かっこいいから自由だから。小さい頃の理由なんて2つだけでも十分だった。「いいなー」 子どもの頃は大人に愛嬌振りまいて。お姉さんが好きだった。生まれ育った時から私の周りは女子が過半数だった。自然と女性の大人の好感度は上がっていた。大人への理想と尊敬と崇拝は高くなった。 世界は歪んだ。 いつの間にか子どもを卒業していた。もし人を大人と子どもの2つしかないとしたら私は子どもではある。が、純粋無垢の子供ではない。私はきっと[なにか]なのだ。あと1年で周りから大人と呼ばれ始める。法律で定められているから。私は、中学生の頃からハマっているものがあった。いや、小学6年生の頃からかもしれない。人に絶望と不条理を押し付けられてから。大人と話すのが好きだった。年上と話すのが好きだった。私の知らない、知ることの出来ないなにかを知っていそうだから。だから色んな人と話した。みんな欲に溺れている人が多かった。小学6年の私に性を求めてくる者。中学2年生の私に優しく接してくれる者。逆に悪口を言ってくる者。様々だった。そんな中で2人なかなかに濃い、社会の澱のようなそれに触れた気がする話をしよう。1人はうがいをするような音が聞こえてきた。「ガラガラ」と驚いた。人の前でうがいをするのか。しかしその濁音のついた音が消えた瞬間「アヒャヒャヒャ」高く男性の笑い声に聞こえない。狂ってる。とても高く甲高い笑い声が聞こえてきた。恐ろしい。「何をしてるんですか?」聞いた。怖いが気になったから。でも大人は教えてくれなかった。私は、なにかやばい人なのは一目瞭然なのだが、きっとあの人は。この世に存在する禁忌を使っていたのだろう。とても、恐ろしかった。もう1人は普通の人だった。何も違和感なんてなかった。でも、なぜその話になったかは忘れてしまったが、腕に傷があった。錆びた横線なのか、滲んでいるのかは知らないが線が引いてあった。2人は、「大人になったらみんなこうなる。」そう教えてくれた。私は、それほどまでに社会は地獄なのか。そう思った。働くのはもちろん大変に見える。小さい頃は大変に見えなかったが、当時は、お金の価値を知っているふりをしていた。だから、社会を恐れるようになった。最近は見目がさらに大きく成長した。なのに中は、精神は成長を感じられない。だから、大人について私にはひとつの持論ができた。 この世に大人はいない。みんな[オトナ]の仮面を被った子どもだ。 そう考え出した。[自由]には責任がつく。ついてまわる。大人は社会の歯車だ。きっとそのうちどこかが壊れる。この世は需要と供給で成り立っている。 大人の階段はいつの間にか登るものではなく、下るものになっていた。 きっと私は、[大好き]だった。だから、覗きすぎた。目を瞑った方がいい事まで見てしまった。 今がいい、今のままがいい。 ピーターパン症候群そんな名前の病気なのかもしれない。 1回だけ、学校のカウンセリングに呼ばれた。興味があったから行ってみた。正直に最近の悩みを口にだした。「部活に行けなくなった」「大人になりたくない」この2つが悩みだった。部活はいっその事辞めてしまえばいい。行きたくないなら行かなくていい。でも大人は?ならなくてはいけない。徐々に大人までの時間は迫ってくる。この悩みを聞いてくれていたのは、若くはない40代からさらに上かぐらいの女性だった。女性は言った。「程度は違えどみんな思うことがある。大丈夫」と、大丈夫だったらここまでまっすぐに歪んでない。やはり、カウンセラーも[オトナ]ではなかった。 とある1つ下の少年が話しかけてきた。「早く社会に出たいですか?」私の答えはただ1つ「社会になんてでたくない。」そこから少年による熱弁と説教が始まった。この少年は、自分は知り合いの仕事を手伝ったことがある。そして楽しかった。何も知らないのにでたくないなんて言うんじゃない。そう、[押し付け]られた。私とて当時バイトをしていた。だから、お金を稼ぐ大変さ、社会の端くれながらも社会は嫌だと思った。そしてたくさんのオトナと話してきた。その考えの上での結論なんだ。伝えた。すると少年は馬鹿にして私を突き放した。当時は少々怒りを覚えた。今思えば、それぞれの意見だ押し付けないで欲しかったなとは、思う。 [オトナ]とはなんだろうな。私の中で大好きだったからこそ反転してしまったのだろう。大人になんてなりくない。あと1年しか猶予のない中で私はずっと叫ぶだろう。 ならここで、縋ってしまおうか。 「魔法をかけてバーバ・ヤーガ」 「味方になってBaba Yaga」 私が♤に溺れる前に。 そんな私は何を貴女に差し出せるだろうか。

引きこもり

 家から出れなくなったのは、中学生の頃だった。  中学になるまでは普通に学校へ通っていた。友達も普通にいたし、家族関係も良好。なのにどうして、今は家にいるのだろうと常々思う。家にいるのがすごい好きとか、そういうのではない。ただ、家から出れなくなった、ただそれだけ。  家から出れなくなったキッカケって何だろう。友達と喧嘩した、家族との関係が悪くなったとか、そういうのは一切ない。原因不明。原因不明と高を括れたらどれだけいいだろうとも思う。種類に分別とか、自分は病気とか周りは言うけれど、今となってはそんなことどうでもいいとさえ思う。何を言われても、何をされても私は家から出られないのだから。本当に体調が悪いのだろうか。体に不調を尋ねたところで、返事はない。当たり前だ。これは私の体なのであり、体と会話できるはずがないのだから。  体と会話できたらいいなとは思ったことがある。今日の気分で一日が過ごせたらどれだけ楽に過ごせるだろうとも。現状、そうなっている気がしないでもないが。 ー誰か助けて ー私を救って こんな救世主がいてくれたらいいなと常々思う。思ってばかりだ。この思い上がり屋め。でも、それでもいっか。今を生きている、ただそれだけで。生きているって凄いんだよって母さんに教わった気がする。でも、今の母さんにはがっかりされたかな。こんな家からまったく出ない引きこもりで。それでも、私は生きていく。  だってー生きていたいから。