昨日とはちがう寒さに 起き上がる力に躊躇いが強い 窓の外の白さに頭は目をつぶり それでいて心がざわつく カーテンをそっと 指先でなでるように すこしだけすべらせる 庭の枯れた草木の上 覆い隠すように広がる白しろシロ よろこんでいいのやら 心配したほうがいいのやら もう子どもではないのだなあ わたしがちいさかったころ 親がそうだったように 雪が降ったことを 素直によろこべない 素直によろこべないのは 感情の数がそれだけ増えたからか それとも ひとまず あたたかいミルクティをいれる あとのことは そのときの自分が決めること 狼狽えることがないのを けれど素直によろこべない
その夜は青かった。 閉店後の喫茶店。電気の消えた店内を白い月の光が窓から照らしている。エプロンをテーブル席の木の椅子にかけ、カウンターに座り腕の中に顔を伏せた。 ラジオからは異国の歌が流れている。囁くような声でどこか懐かしい歌声は、冷たくかたまっていた身体をゆっくりと溶かしていく。浅い呼吸は少しずつ深くなり、夜の空気を頭の中に満たしていく。瞼を押し付けた乾いた目には、じんと熱が回り出す。 歌の言葉の意味は分からない。それでもそのメロディと歌声はどこまでも優しく、同じ空間で寄り添ってくれている。 寂しくはない。その声は、私を一人にはしなかった。 青い夜。寂しくはない。
落とし穴は、地面に落ちる。 落とし壁は、壁に落ちる。 「あれ?」 ドアを開けようと手を伸ばした少年は、そのまますり抜け、ドアの先に落ちてしまいました。 ドアを開けば自分の部屋があるはずなのに、すり抜けた先は牢屋のような暗くて冷たい場所でした。 「ここはどこ? 誰かいないの?」 少年は壁に向かって呼びかけましたが、返事が返ってくることはありません。 部屋の中に少年の声が反響するだけです。 少年は壁にもたれて、体育座りをしました。 誰かが外で扉を開けてくれれば、出られるんじゃないかと期待して。 しかし、いつまで待っても誰も来ません。 四方は壁に囲まれたままで、出口が作られる気配がありません。 「このままここで死んじゃうんだろうか」 少年は、寒さと暗さで弱気になりました。 自分は何か悪いことをしたんだろうかと、昔のことを思い出しました。 「弟は、こんな気持ちだったんだろうか」 少年はむかしむかし、弟を落とし穴に落としたことを思い出しました。 穴の中で泣き叫ぶ弟を、少年は指をさして笑いました。 その後、母親から拳骨をくらったので、少年は一層弟が嫌いになりました。 「弟をいじめた罰が当たったんだ」 少年は涙を零しながら、頭を床にこすりつけました。 「ごめんなさい! 意地悪してごめんなさい! 明日から、いいお兄ちゃんになります!」 少年は、何度も何度も謝りました。 百回を超えたあたりで、突然壁に穴が開いて、光が差し込んでいました。 光が部屋中を照らすと、殺風景だった部屋がいつのまにか、少年の部屋になりました。 入り口のドアの前には、宿題を抱えた弟が立っています。 「兄ちゃ。宿題教えて?」 少年は目を何度もこすり、頬っぺたをつねった後、弟に抱き着きました。 「ごめん! 俺、いいお兄ちゃんになるから!」 弟には、少年の行動が理解できませんでした。 自分は、何故抱きしめられているのだろうかと。 しかし、悪い気はしませんでした。 「兄ちゃ、宿題教えて」 「教える! なんでも教える!」 数日後、少年は考えます。 あれはいったい、どこだったのかと。 今でもドアを開ける時、またあそこに落ちてしまうんじゃないかと考えてはいましたが、少年が落ちることは二度とありませんでした。 少年が弟を大切にする限り、落とし穴に落としたりしない限り、少年が落ちることはありませんでした。
私の叔父さんは変わった人だった。 毎年、冬になると親戚がお祖母ちゃんの家に集まる。私のお父さんは兄弟姉妹がとても多い人で、皆が集まる年越しとお正月はとても賑やかになる。大人たちはお酒を飲むからうるさくなるし、子どもも皆年が近いから一緒に遊んで騒がしい。私は外を走り回ることよりも、本を読んでいるのがずっと好きだったから、静かな叔父さんの部屋によく避難していた。 叔父さんは体中に薄茶色の線が入っていて、詳しくは教えてくれなかったけどみんな戦争の時にできた傷跡で、右目も偽物になってるんだって。その傷のせいで、お酒が飲めなくなったっていう話もしてた。 叔父さんの部屋はいつもカーテンが開いていて、時たま本から顔を上げるとぼうっと窓の外を眺めていた。 「叔父さん、何をみてるの」 私がそう言うと叔父さんは「銀世界を見ているんだ」と答えた。その言葉に私は叔父さんの隣に行って、一緒に外を見る。銀世界っていうほどだから、雪がたくさん降っているのかと思ったら、大したことはなくてちらちら氷の粒が落ちているくらいだった。 なあんだ、ってすこしがっかりしながら叔父さんの方を見ると、左目を閉じて窓の方に向いているだけだった。 「叔父さん、右目見えてないのに雪なんて見えないでしょ」 「ははは、バレたか。でも、叔父さんにはこれでちゃんと見えてるんだよ」 「ええ? へんなの」 私がそう言うと、叔父さんは大きく口を開けて楽しそうに笑ってた。 あとでお父さんに聞いてみたら、叔父さんはどこかの国との戦争で、たくさんの仲間たちを、あとで連れて帰ってくるために雪に埋めたんだって言ってた。叔父さんがどんな気持ちであの日の初雪を見てたのか、どうして見えないほうの目で見ようとするのかよくわからなかったけど、その話のあと叔父さんの横顔を見るたびに泣きそうになった。 それから雪を見るたびに、私は叔父さんの静かな横顔を思い出すようになった。
中学校に行けなくなってはや1か月。 ふと目がさめると私は金魚になっていた。 金魚とは人間がフナに人為的変更を加え、 この世に生まれさせられた、生き物。 その特異性ゆえ、 ただただ人間様の観賞用として育った、 そんな存在だ。 自力で泳ぐことさえままならない 一匹の金魚は、 水の中、 奥深くまで、 堕ちていき、 ひたすらに引き籠って、 やがて来る、 その″おとずれ″を待つ。 でもやはり本質的に何ら変わることはない。 だってその「すくわれる」その“いつか“をじっと待つことしか、 わたしにはできないのだから。
愛する人が死んだ。足場の悪い雨の夜、崖から落ちて後頭部を打って死んだのだ。あっけなく逝ってしまった。 彼女の両親の厚意もあって、婚約者である私のもとへ彼女の死体が運ばれてきた。ほかにスペースがないので、私は自宅の標本室のベッドに彼女を横たわらせた。後頭部を打ちつけて死んだせいか、後頭部の髪は凝固した血液で固まってしまっていたが、それ以外は随分と綺麗なものだった。多少の擦り傷はあれど、大きな外傷もなく”死んでいる”と言われなければ眠っているように見えるほど、安らかな顔をしていた。 私は風呂に溜めていた湯を盥にうつして部屋に運び、固まった髪を盥につけゆっくりと解きほぐした。湯が薄らと赤に染まるころ、漸く彼女の美しい髪を取り戻した。顔や体についた泥を拭い、小さな傷に溶かした蝋を乗せ目立たないように隠していく。彼女の遺品の化粧品で顔を装うと、生前の麗しい姿がそこに現れた。 そこでようやく、私の目からはらりと熱い雫が落ちた。来週には式を挙げると約束していたのに、どうして。彼女の衣服を、この前まで着るのが楽しみだと言っていたウエディングドレスに着替えさせる。胸が詰まり、まともに呼吸することもままならないが、彼女の身支度をする手を止めるわけにはいかなかった。嗚咽を漏らし涙の膜で歪んだ視界のまま、息絶えた彼女を二メートルほどの円柱の形をした水槽に入れた。水槽の上からホースを入れ、ホルマリン液を投入していく。 これで、君は美しいままだ。水槽に額をあてると、硝子の無遠慮な冷たさに鳥肌が立つ。 「なあ、これでもう別れるなんて言わないよな。君を愛してるんだ。僕と永遠に一緒にいてくれ」 水槽の中の彼女は、何も言わずに目を瞑ったまま。
「最後の体育祭、絶対成功させるぞー!」 「おおー!」 「放課後は、毎日特訓だー!」 「おおー!」 体育祭の始まる一月前から、一年一組の生徒たちは気合十分。 毎日毎日、暑っ苦しいほど真剣に、練習と企画に力を入れた。 「応援の振りは、こうがいいんじゃないか?」 「そうだな! 皆、変更だ!」 「うおおおおおお!」 どんな無茶だって、笑顔で実行。 全ては、最高の体育祭にするために。 体育祭の実行委員長は、白い歯をむき出しにした笑顔で喜んだ。 「これならいける! 我が人生、最大の体育祭だ!」 そして当日。 どにょりとした空気の体育祭は始まった。 「一組ー! ふぁいおー!」 「ふぁいおー!」 気合十分な一組。 「いけー」 「がんばー」 今朝から熱でも出てるのかというほどに、低いテンションの二組三組四組五組。 乗り気ではない体育祭を、さっさと終わらせたいという心の声が溢れ出ている。 「なんか、今年の体育祭は元気ないわよね」 とは、年子を持つ保護者のお言葉。 「……もっと、他のクラスの様子も見るべきだったか」 体育祭の実行委員長は、高い熱量の場所しか見ていなかった自分の行動を反省しながら、人生最悪の体育祭を終えた。
||雲が空を染めている あの雲はフワフワした雪のようだ サンタクロースは雲を滑ってくるのかな|| トナカイの吐く息が白く煙になっている 雲の淵にソリを止め、後ろを振り返れば雲に真っ直ぐなソリの跡。それからトナカイ達の掛けた足跡。それ以外は、ただただ真っ白で雪原のようだ トナカイ達は雲の上に落ちている星屑を喰んでいる サンタクロースは手綱を握ったまま息を整える。最後尾にいるチビのトナカイの子供がママの後ろでプープー鳴くので可愛くてしょうがない 夜になったら長生きのシリウスまで行ってみよう 雨が降らなきゃいいけれど
鼻水が止まらないし、クシャミも止まらない。頭がぼーっとするし、これは風邪かもしれない。 僕の隣では息子がイビキをかいている。 昨日、雪の降る中、買い物へ出かけた 傘もささずに歩いて近くのセカンドストリートへ 仮面ライダーのコーナーを見つけ 小さくしゃがみながら、しばらく探したあと 一つを手に取り僕の所に近づく 「これが欲しい」「これ買って」とかは言わない パパが「買わないよ」と言えばすぐ諦めるつもりなのだろう。 お店を出る頃は雪が大きくなっていて、少し小走りで帰った 僕の右手を握りしめる手は、いつの間にか大きくなっている。片手には五十円のオモチャを握りしめている。
ねこの隣でハイハイしていた娘が、つかまり立ち。いまのいままで仲間だと思っていたねこは、裏切り者を見る目を、娘に向ける。 ねこのことなんて知らない娘は、自立し二本の足だけで立とうと。 それをねこが邪魔する。あっち側に行ってくれるな。訴えながら。
最近のパソコンは音声で文章が書けるらしい。 早速試してみたものの、なかなかどうして正確な文章を書いてくれた。 読点も自動的に打ってくれて、これはタイピングが難しい人間にとってもパソコンが使いやすくなると感じた。 しかし肝心の音声入力の開始にはキーボード操作が必要であり、全くキーボード操作ができない人にとってはそもそも始めることにハードルがありそうだと気づいた。 鍵かっこを書く時も、書いた文章を校正する時も、なかなか難しい。 使ってみなくては分からないこともあるものだ。 「ああ、疲れた」 仕事の手を止め、コンビニに向かう。 今まで気にも留めていなかった点字ブロックや車椅子のスペースがいやに目立ち、本当に役に立っているのだろうかと、ぼくの頭をふとよぎった。
□先輩は早上がり お腹が減っておにぎりを食べる 塩の振りが足らなくてしょっぱくない お米の甘みが口に広がる 一人で食べると笑わないな 昨日は何を話したっけな 「ちょうどいい所に」 先輩が僕を指差しながら歩いてくる 「今日は昼で上がるから」 「あ、分かりました」 先輩がわざわざ僕に言うのは お昼休みはいつも一緒に食べるから だからさっきのは 「今日はお昼で上がるから、昼メシはお前一人で食べる事になるけどわるいな」 と言う意味を伝えてくれたのだろう 他の仲間と食べてもいいけど、先輩がいない寂しさもちゃんと味わいたいなとも思う お昼に菓子パンを食べる 甘くて柔らかい菓子パン 食べながら意味も無く原材料名の欄を見る 【ソルビトール】の文字 いつも気になる謎の材料ソルビトール モチモチ食べながらスマホで調べると (天然の糖アルコール)(甘味)(保湿)と書かれているがよく分からないソルビトール 僕はモチモチとソルビトールを食べていく 僕の中にソルビトールは入って行って ソルビトールは僕の一部になる よろしく、ソルビトール 一緒にお昼を過ごそうよ、ソルビトール
毎朝、鏡に向かって声をかける。 「がんばれよ」 「しっかりな」 「できるさ」 効果は、意外にもあらわれた。 その日、鏡の中の自分が、笑いながら言ってくる。 「お前もがんばれよ」 さて、 明日から、鏡の中の自分に、会社に行ってもらうとしよう。
たたんで積み上げたタオルの、その微妙な傾き。私と君との関係を、不本意に、でも勝手に、重ね合わせる。君が傾けば私が戻して。私がズレたら君が支えて。ともに生きることの業。そこにいてくれることの安心。これからも、と言葉にはせず。強く、ただ願って…
車内に差し込む光がありました 太陽から生まれたその光は 車内を温かくして明るくしました それから陰も作りました
昨日、エッセイを書いた。怨みつらみを書いた。 思ってもないこと。でも、そこに思っていることをプラスした。死にたい、と書いた。 それはまだ。夏の暑い日のことだった。いや、実は桜も吹雪かない季節だったけれど、あの日はやけに空が青々としていた。 ピコ。 音が鳴った。私に語りかける、唯一の音。あの軽い、シャボン玉が弾けるような、音。 通知を確認すると、【○○さんがあなたの作品に♥️しました】とある。 それは昨日のエッセイだった。私が「死にたい」と最後に記した。駄文。読んだところで、どうしようもないこと。そんなものに、肯定かも否定かも分からない愛をくれた人がいる。いや、それは愛なのかも、人なのかも分からなかった。 とにかくインターネットの世界は匿名ありきで、今この瞬間に読んでいる文章を書いた者がヒトであるのかどうかも判別はつかない。まぁ、私の場合は、確かに私の手でことばを連ねているのだけど。だからこそ、余計に安っぽく感じる。徒然なるままに手を動かすから、勢いで「死にたい」なんて書くんだ。 せっかくだから。このハートをくれたのは、どんな者だろうか。 確かめるように、その人のプロフィール画面に移動して、気づいた。その人は作家だった。ついで、写真家でもあった。掌編の合間に、晴れ時々という具合で、空の写真が投稿されていたからだ。私が偶然タップした空は、吐き気をもよおすほど曇りなき青で。思わず動いた指が、無意識に画面を上にスクロールして。最新の投稿まで向かわせた。 昨日、世に放たれたその人の小説を今に見るのは、はじめてだった。けれど、文字の連なりに挟まれた「死にたい」の四文字を見た時から、ふと真新しいテキストは、まったく見覚えのあるものに変わってしまっていた。なんだか、どうしようもなく。無性に腹立たしいような、せちがらい気持ちになって、うずくまる。 結局、コピーなんじゃあないか。私の文章は。愛もへったくれもない。それでも、がむしゃらに吐き出した言葉は。あの「死にたい」は。それらは動物たちの胃袋に入って、独特な粘りけを含んでゆく。あの知らせだって、どうにも絶え間ない消化活動の一環に過ぎないんじゃないか。 そんなことで、私の「死にたい」がネタにされてたまるか。 なんて、思うけれど。私の経験が、あの駄文が。たとえば、ときに誰かの、ことばとことばの間に挟まる青空みたいに。ほんの少しのスパイスになっているとしたら。まぁ、それに越したこともないと。そう思ったりする。
ちらりちらりと雪が降っている。 私はテンションがあがった勢いで、外に出た。 髪に雪が引っ付くと、オシャレな宝石みたいでお姫様になった気がした。 機嫌よく歩いていると、向かいから女の子が歩いてきた。 女の子は傘をさしている。 (なんで、雪の日に傘をさしてるんだろう。雨でもないのに) すれ違う瞬間、不思議そうにする女の子と目が合った。 ちらりちらりと雪が降っている。 私はテンションがさがり、さっさと家に帰ろうと歩みを速めた。 傘に雪が乗っかると、少しだけ傘が重くなってげんなりした。 機嫌悪く歩いていると、向かいから女の子が歩いてきた。 女の子は傘をさしていない。 (なんで、雪の日に傘をささないんだろう。髪べちゃべちゃになるのに) すれ違う瞬間、不思議そうにする女の子と目が合った。
未だ選挙CAR演説の声が聞こえるんだけど何故 選挙って既に終わった筈じゃ無いのと思いそう 衆参云々とか言う物が有った様な別に一般人の おばさんには関係無いしもうどうでも良いから 早く金持ちに為り此処から旅立ちたい最悪命は 要らないかも何て誰も見ないコラムの醍醐味と 言う特許じゃ無いと命が欲しい者には羨ましく 思って始末うかも知れないからけれど時にその 生きる事が生き地獄に為る事冴え有る人生何が 楽しいのだろう予定調和な国民総殺す様な選挙 大声張り上げて如何にも私達の党は皆様を絶対 裏切りません等宣ても組織票の重さに抗え無い 選挙にどんな意味が有るのだろう応えは誰1人 知れない否知る事冴えも許され無いのだろうか
自販機があった。ジュースが売られていた。何か買おうと思った。財布を取り出した。しかし、金がなかった。どうにかならないか。自販機をよく見ると、小さな穴があった。そしてその横にペンチが吊るされていた。『この自販機の商品は歯でも買えます。』そう書かれていた。俺はさっそくペンチで歯を引っこ抜き、穴に入れ、コーンスープのボタンを押した。がこん、と音がして、コーンスープが出てきた。俺はさっそくそれを飲み始めた。歯が一本なくなったので、噛めないコーンがあった。
スーパーに行った。健康飲料の棚があった。最近不健康な生活を送っている。俺はその棚を見た。野菜ジュースや栄養ドリンクが並ぶ中に、善人ドリンクがあった。飲むと善人になれるドリンクだ。最近流行っているらしい。俺はそれを手に取った。『いちご味』と書かれている。いいね。俺はいちごは好きだ。成分表を見る。様々な化学物質の他に、『悪人』と書かれていた。善人になるためには悪人を飲まなきゃいけないのか。まぁ、それも人生の妙なのかもしれない。俺はその善人ドリンクを一本持って、レジに向かった。俺は今、病気の母親を殺そうかどうか迷っている。このドリンクを飲んで考えよう。善人になれればそれでいいし、もし効かなくても、母親を殺して悪人になればこのドリンクの成分になるだけだ。もう一度言うが俺はいちごが好きだ。自分がいちご味になるなんて、すごくわくわくする。
クルトンの船に乗って、僕は漂流していた。 クリーム色の空を、パセリの小鳥が鷹揚に翼を羽ばたかせている。 アサリの立派な船が口から蒸気を吹き出しながら、僕の船を靡かせる。 僕はふらつかないように、さくさくとした船べりにしがみついた。 空を、大きなスプーンの飛行船が飛んでいて、日が陰る。 海風が一段と強くなって、クラムチャウダーの海の波に掬われるようにして、僕の船はグングンと進んだ。 クルトンの船は、じわじわとスープを吸っている。 じゃがいも、玉ねぎ、ベーコン、にんじんなど、色とりどりの小島を縫うように抜けると、大きなしめじの島が目前に迫っていた。 大きな島に見惚れていると、ふと違和感を覚えた。 僕の船は、スープをかぶって冠水していた。 大きな海は、暖かかった。 僕の体は、ふやけてふわとろになったクルトンの船に沈み込み、そのままゆっくりと海の中に沈んでいく。 その海の暖かさに、僕の体も、クルトンと同じように溶けていく。 境目が薄れ、僕の体は、海と一つになった。 どこからか、トーストの焼けた匂いがした。
自分の爪が汚い 白い筋が何行も走っていて汚れているように見える 手の平のシワも無数にあり谷間の底も白くなっている この手で綺麗な人と手を繋げない そんな機会はないけれど あっても手を差し出せない ついでにスマホも傷だらけだ 三角形の面積の求め方は (底辺✕高さ)÷2 一度三角形を四角形にして それから半分にすると三角形の面積が出る 僕の爪の汚さと、手の平のシワを掛け算して、半分にしたら僕のあの子への気持ちが分かるのかな 手紙を書いてみる。汚い手で鉛筆を握りしめて
老婆が梅酒を作っていた。瓶に注がれた焼酎の底に沈んでいる梅の実を見て、孫の男の子が尋ねた。「これは何をしているの」老婆は答えた。「梅の味がするお酒を作っているのさ」やがてその梅酒が出来上がり、老婆がそれを飲んでいたある夜、孫の姿が見えない。老婆が家を探すと、孫は、暗い部屋の真ん中で、コップで水を飲んでいた。「何してるんだい」老婆はそう声をかけて部屋の電気をつけた。すると、孫が握りしめているコップに注がれた水の底に、何かが沈んでいるのがわかった。老婆が目をこらすと、それは女の子を象った人形の、首だった。人形の首を漬けた水を、孫は飲んでいた。「何してるんだい」老婆が恐る恐るそう尋ねると、孫はとろんとした目で、老婆をじっと見つめた。そして、口の端を歪め、嫌な音のげっぷを放った。
「御守りなくした」 「ええー? 勿体ない! 御守りって、結構高いんだからね! 神様が怒って、あんた今年は不幸になるわよ」 母から叱られた年。 子供のぼくは、明日死ぬんじゃないかと怯えながら過ごした。 毎日毎日、神様に心の中で謝っていた。 「御守りなくした」 「きっと、大きな悪いことの身代わりになってくれたんだよ。今度、神様にありがとうってお礼に行こうね」 彼女から怒られると思った日。 大人のぼくは、母と全く逆のことを言う人間に驚いた。 「そうか。そう言う考え方もあるのか」 「え? なーに?」 子供の頃に御守りを失くしたこと、そこに意味があるのなら、きっと彼女の優しさをぼくに教えてくれるためだろう。 「ううん、なんでもない。神様にお礼、行こうか」 神様、後日伺います。 ぼくを守ってくれたことへのお礼と、彼女とずっと幸せに過ごしたいと願いに。 お腹が空いたと冷蔵庫を漁る彼女を見ながら、ぼくは予定を確認した。
ある街の小さな車整備工場の庭に 柿の木が一本ありました 柿の木は昨日降った雪をかぶりながら、いつもと違う街の景色を楽しんでいました 枝の梢にスズメがとまり、たくさん鳴いています 「雪だ雪だぞ」「冷たいぞ楽しいぞ」とないているのかな 柿の木はそう、思って聞いていました
僕は長い間何かを待っているけども 何を待っていたか忘れてしまった でも大事な何かを待っている気はする 目が覚めたら薄明るい空に星が見えていた 僕が寝ていた地面が温かい 今日もきっと朝が来る 今日も僕は待っている それが何かは分からないけど 遠くの方から「今向かってるからね」と言われてる気がするけどね
なんて不公平な世の中なんだろう。 全てがうまくいかない私と全てがうまくいっているあの子。 同じ人間のはずなのにどうしてこんなに違うんだろう。 あの子はみんなに愛されている。 休み時間になれば、自動的に人が寄ってくる。 まるで磁石に砂鉄がくっついてるようだ。 頑張らないと友達ができない私とは大違い。 あの子は顔もかわいい。仕草も声も全部かわいい。 それが愛される一つの要因になっているんだろうな。いいな。 どこを見てもかわいくない私とは大違い。 あの子は強い。 どんな輪にも入っていける。 「なんの話ー?」で入っていける。 嫌われるのが怖くて何にもできない私とは大違い。 あの子はいつも笑顔なのに、私はいつも真顔。 あの子になりたい。あの子になりたい。 今から薬を飲んだらあの子に生まれ変わったりしないかな。なーんて、バカみたいなこと考える。 あの子のように優しく笑顔を作って眠ってみた。 ***** なんて不公平な世の中なんだろう。 全てがうまくいかない私と全てがうまくいっているあの子。 同じ人間のはずなのにどうしてこんなに違うんだろう。 あの子は自分から友達を作ってる。 自分で仲良くなる人を選べるのは楽しそう。 その場の流れで周りに寄ってきた人と適当に友達になる私とは大違い。 あの子は普通。そこに憧れる。 バカにしてるとかじゃない。本当に憧れてる。 顔だけで寄ってこられて、すぐに捨てられることがない。 すぐに捨てられる私とは大違い。 あの子は優しい。 優しすぎて、損することもあるんだろうけど、いいなって思う。 一人になるのがとにかく嫌で他の人の気持ちも考えずに輪にむりやり入っていく私とは大違い。 あの子はいつも心からの顔なのに私はいつも作っている顔。 あの子になりたい。あの子になりたい。 今から息を止めたらあの子に生まれ変わったりしないかな。なーんて、バカみたいなこと考える。 あの子のように心からの表情を作って眠ってみた。
―ねえ、寒いのに、なんで屋上? ―屋上じゃないとできないこともあるだろ ―飛び降りんの? リオの願望か、それとも僕に飛び降りてもらいたいのか ―この前ネットで買いものしたらさ、ポイントついてきてさ、期限つきのね、でさ、思ったよね、その期限が切れるころ、わたしたち受験生だって、笑っちゃうよね ―そのころには、すこしはマシなあったかさになってるか ―あったかくなったらさ、また屋上、来ようね、ね ―え、ああ、そうだな ―約束だよ 僕たちは、安易に、性懲りもなく、小さくも重たい、約束をした そうやって、約束を積み重ねて、僕たちは大人に
私には、誰にも話せない秘密がある。 三十二歳の誕生日を迎えた夜、昔のことを思い出した。十八歳で家を飛び出し、誰も知らない街で一人になった。あの頃の私は、今の私からは想像もつかないほど追い詰められていた。 体を売った。二年間。生きるため、食べるため、眠る場所を確保するため。──生まれ変わるため。 父の暴力から逃げた夜、私は持てるだけの荷物を詰め、夜行バスに乗った。母は何も言わなかった。いや、言えなかったのだろう。あの人も、父に怯えていたから。 見知らぬ地方都市で降り、ネットカフェで夜を明かした。所持金は三万円。 住む場所もない。頼れる人もいない。ハローワークに行っても、住所不定では仕事が見つからなかった。 最初は住み込みのスナックで働いた。でも、月十万円では生きていけなかった。そんなとき、スナックの子が教えてくれた。「もっと稼げる仕事がある」と。 店が終わった後、店外デートと称して客と一夜を共にする。売上の一部を店に渡す。 罪悪感はあった。でも、父のもとに戻るよりはましだと思った。 少ししてスナックを辞め、とある秘密クラブに登録した。 男性側に身分証の提出を求める会員制で、「一時の恋人」を提供するサイト。ある程度の安全は保障されていた。 二年間、必死に貯金した。昼は清掃業、夜は── 誰にも本名を明かさず、誰とも深く関わらず。ただ、上京するための資金を貯めることだけを考えた。 二十一歳の春、私は東京行きの新幹線に乗った。貯めた五百万円を握りしめて。顔を変え、新しい名前で、新しい人生を始めるために。 今の私は、小さな編集プロダクションで働いている。優しい彼氏もいる。週末は友人とカフェに行き、SNSにはおしゃれなランチの写真を載せる。 でも、時々、胸が苦しくなる。 彼が「実家に挨拶に行こう」と言うとき。友人が「お父さんとは仲いい?」と聞いてくるとき。 私の中の真っ黒な秘密──逃げてきた過去と、あの二年間が、胸を締めつける。 この前、彼が言った。 「君の家族に会いたい」 会えるわけがない。父は今もあの家にいる。母もいる。彼らの中で私は死んだことになっているかもしれない。 夜中に目が覚め、あの頃の記憶が蘇る。 知らない男たちの顔。ホテルの天井。数えた紙幣の感触。 カウンセリングに行こうかと思ったこともある。でも、どこから話せばいいのか分からなかった。 家族のこと? それとも、あの二年間のこと? 最近、ふと思う。私は間違っていたのだろうか、と。 生き延びるために選んだ道。誰も責められない。でも、自分では自分を許せない。 でも、あの選択があったから今の私がいる。東京で、自分の足で立っている私がいる。 いつか、誰かに話せる日が来るだろうか。彼に、すべてを打ち明けられる日が。 分からない。でも、少なくとも自分だけは、あの頃の私を見捨てないでいたい。 必死に生きようとしていた、十八歳の私を。 これまでのことを、匿名のSNSに書く。名前も顔も知らない誰かに向けて。 これは告白であり、懺悔であり、私自身を許すための儀式だ。 どうしてあの夜、帰らなかったのか 後悔は何度もした、それでも 逃げ場のない現実に押しつぶされ 戻れない一線を越えた 体より先に、心が冷えて 汚れたと決めたのは他人の目で 泣く資格さえないと思い込み 生き延びることだけを選んだ この事実は 到底誰にも知られてはいけないこと 書き終えた今、胸の奥が少しだけ軽くなった気がする。 消えはしない。なかったことにもならない。でも、抱えたままでも、生きていける。 誰かに許されなくてもいい。 せめて私は、私を見捨てない。 窓の外で雨が降り始めた。部屋の明かりを消し、ベッドに横になる。 明日も、私は普通の顔をして生きていく。この秘密を抱えたまま。 でも、それでいい。今は、それでいいと思える。 どこにも書けないこと。匿名でしか吐き出せないこと。でも、確かに存在すること。 それを抱えて生きていくのが、私の人生なのだから。
「……うわ」 「うわってなに」 玄関扉のその先で、響さんがどこの猫かもわからないまるっこい猫を抱えて立っていた。 よくよく見れば足元にも二匹いる。 「響さんが猫を誑かしてる……」 「誑かしてない。ついてきたんだもん」 「なんでわざわざウチに」 「すきかなって」 「好きですけど……」 野良は色々とよろしくない。 むしろここまで丸いと、地域猫だとか外飼されてる猫なのかもしれない。 いや、それ以前に。 「……触ってみていいですか?」 「うん」 一応断りを入れてから、抱えられた猫に手を近づける。なんだ、匂いを嗅がせるんだっけ。 しゃーーーッ!! 「おかしい。さっきまであんな穏やかだったのに」 知ってた。 というのも、俺は動物にはめっぽう嫌われるタチで、近づけばご覧の通りこうなる。猫だけじゃない。犬にもすれ違うだけで、親の仇と言わんばかりに吠えられる。 見れば、響さんの足元の二匹さえも警戒モードに入っていた。あと一歩でも近づこうものなら、攻撃されるか、猫に言うのもなんだが、脱兎のごとく逃げるだろう。 「……俺、動物に嫌われがちなんすよねぇ」 伸ばした手を引っ込めながら、そういえば、鋭い目付きは変わらずとも、牙はしまってくれた。 「邪悪なんだな、薫くん」 「は?」 ウチの敷地から出てすぐの所で、抱えていた猫を下ろした。ひとしきり撫で回してから、三匹に手を振って、また玄関先に戻ってくる。 「やあ、邪悪くん」 「腹立つ言い方するなあ。服が毛にまみれてますよ。コロコロ持ってきてあげましょうね」 「ありがとう邪悪くん」 「次そう呼んだら殺します」 「へへへ」 こっちは睨んでいるのに、当の本人は身体を傾けて心底嬉しそうに、いたずらっ子みたいな笑い方をする。 相も変わらず、変な人。
教室に集められた人々は、皆不労所得が欲しい人、 ハチマキを巻いて、気合は十分。 教壇に立つ先生はメガホンを使って、教室にいる人々に声をかけた。 「月三万円が、欲しいかー?」 「おー!」 「寝ながら、欲しいかー?」 「おー!」 「ならば、その方法を教えよう!」 「おおー!」 先生はメガホンを置き、黒板に大きく『3%』と書いた。 「この数字は、高配当な株を持っていれば、自動的に入って来るお金の割合だー!」 「おー!」 「今から私の言うとおりに株を買えば、確実に月三万円が手に入る!」 「おおー!」 会場の熱気は最高潮。 不労所得の夢を見て、全員の心が一つになる。 「まず、予算として千二百万円を用意するー!」 「無理でーす!」 教室に残ったのは、僅か数人。 高い年収を有して千二百万円を自力で溜めた人と、遺産や宝くじやお小遣いで何故か千二百万円を持っていた人。 先生の言うことを最後まで聞いた数人は、無事に月三万円の不労所得を手に入れた。
夕暮れの近い並木道。その男は私の三歩前を歩いている。 男は砂の地面を擦るように歩きながら、何度も後ろを気にして振り返り、前を向くと後ろを向いていた時に誰かにぶつかっていなかったかと心配し、また後ろを振り返っていた。後ろには誰もいないのに。そんなに心配なら立ち止まって確認すれば良いものの、男の足はのろのろと進み続けていた。 男は誰よりも自分を信用していなかった。誰かにぶつかった感触がなくても、頭の中では誰かとぶつかっていた。感触がないのは自分が鈍感だからだと思い込んでいた。ビニール袋が落ちた音や、隣の部屋の足音ですら敏感に反応し、感情をかき乱されている男のどこが鈍感なのだろう。 男は上着のポケットにいれたホテルの鍵を何度も布の上から触って確認した。鍵を落としたかもしれないという不安が常に頭から離れていないようだ。 男は常に誰かに自分の話を聞かれているという妄想に囚われていた。家では隣人を気にして、外出先でも常に自分を知っている人間が、自分の話を聞いていると思い込んでいた。最近は、携帯から自分の声が自分を取り巻く環境全てに筒抜けになっていると信じ込んでいた。 今日はホテルに携帯を置いてきた。並木道には男しか歩いていない。男は歪めた口を固く閉ざし、視線は常に数歩先の地面を見つめ、ポケットの鍵に意識を向けている。木々の奥に光る反射した水面にも気付かない。 すり減った靴底はため息に似た音を地面から出す。鼻は浅く短い呼吸を繰り返す。視線は数歩先の地面。伸びた影は一人分。 私は再び男の中へと戻った。 視線を上げ、私は目を細めた。
「ニュース速報です。今日未明突如として東京に巨大なドーナツが、、!!」 見慣れないテレビの内容が流れてきて俺はすっっごく嬉しくてたまらなかった。特別にお前には教えてやるぜ!なぜならな、そのドーナツを作ったのは俺なんだ!!俺はこの世界で初めてドーナツを食べた時恋に落ちたんだよ!その時の幸福は忘れられないゼ!だから俺は作ることにしたんだ。行動力の塊でスバラシイだろ!!あぁ、、なんて惚れ惚れする形だ、、、。、、、そうだ!東京だけなんて違う!えぇっとなんだっけ、ああ!そうだ!47都道府県全部につくろう!きっと俺の仲間たちも絶対喜んでくれるゼ!!よし、そうと決まれば準備だ!! 「ニュース速報です。今日未明突如として東京に巨大なドーナツ型の穴が現れました。この影響で死傷者数子供含め1000人以上。現在では被害の全貌を掴めないとのことです。今もなお警察と政府の調査が続いています。」
その行動脈あり?! 脈なし行動特集! MBTIからわかる?!相性診断!! こんな記事や動画ばかり流れてくる。 見なくてもわかってる、脈なんてないって。 わかっててもすがりたくて、少しでも可能性を見出したくて。 突きつけられる現実。 逃げたくなって、酒を飲む。 少しは現実がぼやけて見えるから。 今日は会えないんだってさ。 今日はって何さ。 聞きたいことがあって、話したいことがあって、 ただただ会いたくて。 こんなふうに考えるのも私だけ。 貴方はこんなこと考えてない。 それなのに、時間を見つけて会ってくれるのは同情ですか? いい加減気づいてよ。 貴方は私のことを好きじゃないんだよ。 貴方が私のこと好きにならないってわかってる。 けど、見ないふりしてる。 ずるいかな。 こんな関係でも、貴方が離れないのなら、私はこの関係で居続けたい。 このぐらいのずるさは許してほしいな。
「ありがとう。ええっと、磯部くん?」 「福田です」 また、名前を間違えた。 でも仕方ない。 人の区別なんてつかないんだから。 「不和、ちょっといいか」 「なんでしょう、風見鶏先生」 「……阿久津な。不和、お前は成績もいいし学級委員としてしっかりやってくれているとも思う。でも、もう少し周りに興味を持ってもいいと、先生思うな」 私はたびたび、人の区別がつかないことを、治した方が良いと指摘される。 でも、私からすれば区別なんてつかないほうが普通なのだ。 「先生、日本人は黒髪だらけなのに、日本の漫画に出てくるキャラクターの髪色が、何故カラフルなんだと思いますか?」 「なんだ、その質問。そっちのほうが可愛いからじゃないか?」 「それもあるかもしれませんが、私は人間が、本質的に顔の区別がつかないからだと思っています」 「区別が?」 「皆が黒髪なら、キャラの見分けなんてできない。だから髪色を変えて、無理やり見分けさせている」 「そうか? そうなのか?」 先生が考え込んだので、私は会釈をしてその場を立ち去った。 先生が私の想像を信じようが信じまいが、どちらでもいいからだ。 人間は何も変わらない。 皆目が二つあって、手足が二本ずつある。 いっそ違う柄の羽根でも生えててくれればと、何度思っただろうか。 いや、私が気に食わないのはそこじゃない。 皆、私と一緒のはずなのだ。 たまたま仲の良い人間の顔を覚えているだけで、その他大勢の顔を覚えていないのを無視しているにすぎない。 だから、仲の良い人間がいない私を、顔を覚えていない無関心野郎だと非難してくるのだ。 皆同じことを考えるから、私はますます他人の区別がつかなくなっていく。
本日の夕飯のおかずは鮭の切り身とホッケの開き。 肉の日だってのになぁと思いつつも魚は好きだからモグモグ食べる。 しばらく食べていると妹がびっくりしたような顔をしていた。 なんだその顔。 「…ホッケの開きに醤油をかけたら、いくらの味がしたよ」 んなわけ無いだろ。百歩譲ってするとしたら鮭だろ生みの親なんだから。 そう言ったら「いいから食べてみてよ!集中して食べてね!」と言われた。 はいはい分かりましたよ。 言われた通りに醤油をかけて少し集中して食べた。 した。微かに存在した。嘘でしょ信じられない。 まだ疑っていた母に食べさせると小さく笑いながら「する」と。 そんな…赤の他人ならぬ赤の他魚からどうしてイクラの味が…? まさか…いくらの本当の親は…ホッケ!? 「んなわけないだろ」 そう言った妹はとっくに魚を食べ終わっていた。
1月1日 男性 餅を喉に詰まらせ窒息死 1月1日 男性 ヒートショックにより死 1月2日 女性 階段でつまづき 転落死 1月3日 男性 喧嘩で椅子で殴られ、脳挫傷を起こし、死。 1月4日 女性2名 男性2名 N廃病院に侵入。院内を探索後、遭遇。壁に頭を打ち付け、お互いの眼球を奪い合う形でえぐりだし。絶命。 1月5日 男性 痴情のもつれから知人の男性と口論になり。道路に突き飛ばされる。轢死。 1月7日 女性 ハイキング中に毒性を持つキノコを誤食。8時間後に病院にて死 1月9日 男性8名 女性3名 N駅西口にて、遭遇。互いの目を奪い合い。指を噛み千切る。失血死。 男性一名が生き残ったが、六時間後、病院から脱走し、N廃病院の手前で野犬が骨を咥えているのを発見。 1月10日 男性 登下校時に車に轢かれ、轢死。 1月11日 男性13名 女性22名 N高等学校の廊下にて、男子生徒7名が遭遇。数分後に教室にて突然男子生徒が窓を割り、破片で他生徒4名を攻撃。 同じ事を遭遇した生徒6名が数分後に他の教室で行ったため。甚大な被害が起きた。 1月15日 男性 夜道を歩いていたところ、遭遇。奇声を上げて走り去る。職員の捜索むなしく、発見されず。 (追記 2月4日。N廃病院のエアコンの中から折り畳まれて発見。) 1月18日 男性 N廃病院に潜入。 当記録を発見。それを書き写し、2日後にネットに小説という形で投稿。 その2時間後に火事がおき。焼死。 1月21日 女性 道路を通行中 突如野犬に襲われ、死亡 野犬は駆除済み (追記 女性はネット上で18日の男性の小説を閲覧していたことが発覚) 1月23日 男性 ネットで小説という形で投稿された当記録帳を閲覧。 2時間後に溺死。 1月24日 女性 ネットに小説という形で投稿された当記録を閲覧。2時間後に失血死。 1月28日 男性3名 N廃病院にて当記録を閲覧。遭遇。 壮絶死。 1月29日 男性 ネットに小説という形で投稿された当記録を閲覧。焼死。 1月30日 男性 ネットに小説という形で投稿された当記録を閲覧。餓死。 1月31日 女性 ネットに小説という形で投稿された当記録を閲覧。溺死。
いいDEATH。 悪いDEATHか? 暴虐の限りを尽くしてきたのに逃げ切りを図る。 実に浅ましい(俺も) 地獄で喰いあうか? お互い食い物にもならないのは目に見えてる。 いい悪いは別にして醜い(俺も) 俺だけじゃないんだ。 俺だけじゃないんだ。 ケツ穴に核ミサイルの標準を合わせろ。
※「どこにも書けないこと【sideA】」の別視点のお話です。 ────── 僕には、誰にも話せない秘密がある。 彼女──今、僕の隣で眠っている、この美しい女性。本当の彼女を知っているのは、この世界で僕だけだ。 出会いは十年以上前。取材で地方都市に三ヶ月滞在していた時のことだった。 単なる火遊びのつもりで、いつもの秘密クラブでメールをする。ホテルの部屋に来たのは、二十歳の彼女だった。 名前は偽名だと分かっていた。でも、その瞳に宿る影が、僕を捉えて離さなかった。 他の女たちとは違った。 表面的には笑顔を作り、プロとして振る舞っていたけれど、その奥に深い闇がある。逃げてきた者特有の、研ぎ澄まされた警戒心。そして、諦めと希望が入り混じった、危うい光。 ──僕は、その影に魅了された。 二ヶ月の間に、彼女を五回指名した。会話はほとんどしなかった。彼女もそれを望んでいるように見えた。ただ淡々と、仕事をこなす。 でも最後の夜、ふと漏らした一言が忘れられない。 「私、新しく生まれ変わるんです」 その言葉が、僕の中で何かを目覚めさせた。 彼女がクラブを辞めた後、僕は密かに彼女を追った。 職業上、難しくはなかった。新しい住所、働き始めた会社。整形手術を受けたことも知っている。鼻筋が少し高くなり、目元が変わった。でも、あの瞳に差す影は消えていなかった。 五年後、僕は「偶然」を装って彼女に近づいた。カフェで、友人の紹介という体で。 彼女は僕を覚えていなかった。当然だ。あの頃の僕とは、髪型も雰囲気も違う。そして彼女は、何十人、何百人もの男を相手にしてきたのだから。 **** 交際が始まって六年が経つ。 彼女は完璧に「普通の女性」を演じている。清楚で、優しくて、少し内気で。過去など存在しないかのように。 でも僕は知っている。僕の前で桜色に染まるその白い肌に、何人もの男の痕跡が刻まれていることを。その笑顔の裏に、決して消えない罪悪感があることを。 この優越感は、何にも代え難い。 同僚たちが彼女を「いい子だね」と褒める。彼女の友人たちが僕に「大切にしてあげてね」と言う。僕は微笑んで頷く。心の中で、秘密を抱きしめながら。 ──本当の彼女を知っているのは、僕だけ。 時々、彼女が告白しそうになる瞬間がある。言葉を選んでいる様子が手に取るように分かる。 「実は」と言いかけて、やめる。その度に、僕の中で何かが疼く。 教えてほしい。君の口から、あの過去を。 でも、僕は急かさない。花を手折ることはしない。ゆっくりと、彼女が自分から開くのを待つ。 それまでは、この甘美な秘密を独占する。 いつか彼女が告白したら、僕はどう反応するだろう。 驚いた顔をして「そんな過去があったんだ」と言うべきか。それとも「知っていた」と打ち明けるべきか。 どちらにしても、彼女の顔が歪むのを想像するだけで、胸が高鳴る。 それが残酷だと分かっている。でも、この毒から逃れられない。 彼女の寝顔を見る。穏やかで、無防備で。 きっと悪夢を見ているのだろう、時々小さく呻く。その度に、僕は彼女の髪を撫でる。 「大丈夫だよ」と囁く。 ──君の秘密は、僕が守るから。誰にも言わないから。だから、安心して。その日が来るまで。 窓の外で雨が降り始めた。彼女が小さく身じろぎする。僕は彼女を抱き寄せた。 この腕の中にいる女性を、本当に愛しているのだろうか。それとも、彼女の中の闇を愛しているだけなのか。 分からない。でも、どちらでもいい。 彼女は僕のものだ。過去も、現在も、未来も。彼女がどんな顔をして生きていても、その全てを知っているのは僕だけ。 この優越感こそが、僕の生きる理由。 この残酷で甘美な秘密こそが、僕を満たしてくれる。 **** 僕は今、彼女がモデルの小説を書いている。 彼女を抱いた時の描写、彼女の反応もすべて微に入り細を穿つ、ドキュメンタリーに近いフィクション。彼女が読めば自分のことだとすぐ気づくだろう。 だが、発表する気はない。いつか、僕が死んだ後に彼女が読めば、僕がすべてを知っていたとわかるはずだ。 これは彼女が自ら打ち明けなかった時の、あくまでも保険だ。 読んだ時の、彼女の反応が見られないのは些か残念だが。 どこにも書けないこと。でも、確かに存在すること。それを独占している快感に、今日も僕は溺れていく。
なにから手をつけたらいいかわからない 教科だけでも複数あるのに 細かく考えたら無数にある 暗記に疲れたら 数式解いたらいい はあ? 古文に飽きたら 英文を読めばいい なにいってるの? 甘いもの食べたら 塩っぱいもの食べたらいい みたいに言われても とりあえず 部屋の片付けしようかな
「何もバレンタイン前にチョコ万引きして捕まることもないだろう?何がしたいんだあんた?」 「・・・チョコもらえない人間の気持ちというか、バレンタイン前にモテない人間のささやかなテロ行為くらい見逃してくれてもいいじゃないか・・・。」 「発想の転換をしろよ、もらえないなら昨今は逆チョコとかあるだろう?欲するならまず与えよとはどこの宗教の言葉だったか・・・はて?」 「残念ながら俺はそんな殊勝な言葉信じちゃいないんだよ。嫌われ続け、奪われ続ける人生だったもんでね。」 「じゃあチョコが欲しいならそこのスーパーで賞味期限切れになってるチョコの在庫の山持って行っていいよ、ほら留置場でたらふく食え。」 「ああ~人生で一度もバレンタインでチョコもらったことない~明日は俺はマスコミの餌食~。」 「こんなちゃちな盗みでニュースになるかよ。ほら廃棄チョコ持ってっていいから警察が来るまで食って待ってろ。」 「チョコって薬物や賄賂の隠語として使われることもあるんだよな~ああ~俺に金があればな~賄賂渡して無罪放免~。」 「念のため聞いとくが薬物なんてやってないよな?まあもっと意味の分からない奴なんてごまんといるが。」 「どうも!警察です!ああこの人ですか!まあ~なんでチョコなんか盗んだの~?まあ常習犯じゃなければ軽い懲役で済むから。さあ行くよ。」 「俺はチョコテロリスト~アンチクライスト~♪」
周囲が暗くなった。トンネルに入ったのだ。 単語帳をめくる手を止めた。 寝ようか、どうしようか。 最寄り駅までは、まだ大分ある。 カバンの中にある模試の結果は、英作文に難ありという感じ。 もう少しだけ。 yield――生む。 reject――拒絶する。 obtain――得る。 ……。 静か。 首を回す。一つ飛ばしにぽつぽつ座っている乗客は、みんな携帯を見ていた。玩具みたいな単語帳などをめくっている自分は、場違いな気がしてくる。 自意識過剰なのはわかってるけど、アプリよりこっちの方が頭に入るのだからしょうがない。 目が疲れた。 景色でも眺めたかったけれど、まだトンネルから抜けてない。 対面の車窓に視線を向ける。窓はちょうど真正面で途切れていて、角度的に自分の姿は見えない。でも、同じシートに座っている人は、みんな見える。相変わらず、携帯をいじっている人が大半だ。 あれ。 窓の中、シズカさんが歩いてる。 静かな時にだけ会う、シズカさん。本当の名前は知らない。鏡面にしか現れない彼女はいつもセーラー服で、長めのスカートを着ていて、ふちのない丸眼鏡をかけている。どことなく、古風。 朝、髪をといている時や、ウインドウショッピングしている時とかに見かけたことはあるけれど、電車で会うのは初めてだ。 シズカさんは、空いている席を探しているのか、左右に視線を送りながら、私の方に歩いてくる。 最初は少し怖かったけど、なんかもう、慣れてしまった。今はシズカさんに会っても、部屋にときどき出るハエトリグモを見た時に「おっ」と思うくらいのインパクトしかない。クモに例えられるのは、甚だ不服かもしれないが。 シズカさんは私の隣に座り、通学鞄から文庫本を取り出して読み始めた。 何を読んでいるんだろう。 隣を見ても、シズカさんはいない。代わりに、一つ飛ばしの隣に座っている天パのおにいさんの無精ひげが見えた。 車窓に視線を戻す。 遠過ぎて、何の本を読んでいるのかはわからない。 けれど、アナログ派が増えた。 シズカさんは初対面の時から制服のまま。いつのまにか私は、彼女よりも年上になってしまった。 さて。何とかして大学に合格しないと。 単語帳をしまい、古典文法の本を広げる。 古文や漢文は趣味の範疇では? といつも勉強してて思うけど、必須科目なのだから仕方がない。 二人して膝の上に本を広げ、しばらく集中した。 周囲が明るくなった。トンネルを抜けたのだ。 車窓に目を向けると、シズカさんも顔を上げていた。 彼女も目が疲れたのだろうか。 二人して、ぼうっと田園風景を眺める。かすかに、野焼きの匂いがした。代わり映えのない朴訥とした景色は、眠気を誘う。 うつらうつらしていると、電車はやっと減速しはじめ、やがて、降りたことのない無人駅に止まった。 シズカさんは軽く伸びをして、電車から降りていった。ここら辺に住んでるのだろうか。 それにしても、長いトンネルだったな。
「あっちゃん……それって……まさか!?」 とある小学校、体育前の教室中に、一人の男子の声が響く。 何事かと集まったその他の男子たちも同様に、驚きの声をあげる。 その視線の先では、あっちゃんと呼ばれた男子が、両手に腰を当てて、ドヤ顔をしている。 あっちゃんは、トランクスを履いていたのだ。 「ト、トランクスだと!?」 「マジかよ! 白ブリーフ卒業したのか!?」 「あ……あっちゃんが……大人に……」 白ブリーフを履く他の男子たちは、あっちゃんのトランクスを見つめながら。口々に感想を言う。 股間に集まる視線。 股間に集まる尊敬の眼差し。 あっちゃんはその日、教室のヒーローなった。 そして次の体育の時間。 「い、いずみくんもトランクスだ!?」 「うっちゃんもかよ!」 「え、えーすけ、お前まで……」 「おっくん……お前までそっち側に……」 トランクスが増えた。 「お前たちを、トランクス四天王に任命する!」 「「「「はっ!」」」」 トランクス四天王が誕生した。 その日以来、体育の時間が来るたびに、トランクスを履く男子は増えていった。 あっちゃんから一人始まったトランクス派は、次々勢力を増していき、あっという間に白ブリーフ派の数を逆転した。 「おい、お前まだ白ブリーフなのかよ」 そして、巨大な勢力は、時に差別を生み出す。 それは人類の歴史を紐解いても、当然の流れ、 少数派となった白ブリーフ派の男子たちは、時に嘲笑の対象となり、人目を忍んでこそこそと着替えるようになった。 だが、差別の手は緩まない。 カーテンに隠れて着替える男子から、差別の手が容赦なくカーテンを引きはがしにかかる。 「白ブリーフがいたぞおお!!」 「っせぇな! 白ブリーフの何が駄目なんだよ! 俺は気に入ってんだよ、白ブリーフ!」 「白ブリーフが怒ったぞー!」 白ブリーフ派は、ただ耐えた。 白ブリーフ派の男子も、もちろんトランクス派へと変わりたいのだ。 だが、そこには大きな壁がある。 国家の法律のごとき、大きな壁が。 家庭内ルールである。 家庭の絶対支配者である両親に懇願した結果。 「まだ履けるでしょ? もったいない」 「トランクスはまだ早い」 「よそはよそ、うちはうち」 絶対的支配者の一言によって、叩きつぶされたのだ。 こうなれば、たかが小学生に打つ手はない。 ただ支配と差別の下、慎ましく生きるしかないのだ。 「やーい」 「やめろよ!」 だが、トランクス派を作り上げたのがあっちゃんなら、その差別を止めたのもまた、あっちゃんだった。 「白ブリーフだからって悪く言うのは、俺が許さん! 色んな事情があるんだよ!」 教室はシンと静まり返った。 「……だよな」 「……うん」 「……ごめん」 そして、ちらほらと、謝罪が飛んだ。 あっちゃんは満足した顔で頷き、白ブリーフ派の方へと近寄る。 警戒する白ブリーフ派に、あっちゃんは優しく言った。 「トランクス……履きたいか?」 「え!?」 思いがけない言葉に、白ブリーフ派の男子たちは目を丸くする。 互いに顔を見合わせ。 「履き……たい……」 そう、絞り出した。 「そうか!」 あっちゃんは目を輝かせて立ち上がり、教室の男子たちに向かって叫ぶ。 「この中に、新品のトランクスが家にあるやつはいるか? あるなら一枚、こっそりと持ってきて、こいつらに渡してやって欲しい! こいつらだって、好きで白ブリーフを履いてるんじゃないんだ! 俺は、全員がトランクスを履ける自由があるべきだと思うんだ! 頼む! この通りだ!」 あっちゃんは頭を下げた。 その熱意に。 その夢に。 「おおおおおお!」 「俺持ってる! 次の体育の時に持ってくるぜ!」 「俺もだ!」 男子たちの心は一つになった。 そして、来るべき次の体育、の前の着替え時間。 「似合うじゃねえか」 すべての男子が、トランクスを履いた。 トランクスのみを身に着ける男子たちは、この日、男子から男になった。 「これで俺たちも、大人だああああ!」 「「「「おおおおお!!」」」」 教室中を走り回って、その功績を皆でたたえ合った。 教室を飛び出して、廊下で暴れ回った。 まるで、国を挙げて行う盛大なパレードのようだった。 「ぎゃああああああ」 「せんせー! 男子たちがー!!」 「変態ー!!」 パレードは続いた。 教師に止められるまでずっと。
「お嬢ちゃんパンツ売ってくれ。」 通っている病院のおじさんに言われる。 しかし僕は男だ。 多分何か症状が出ているのだろう。 「あら~おじさん、そんなに私のパンツ欲しいの~、じゃあ内緒で一万円で売ってあげるわ。」 おじさんはトイレで脱いだ僕のトランクスを持っていく。 売上一万円。 僕は日曜日に教会に行く。 「主よ、私は淫らな行いをしてしまい、罪のないものを騙しました、犯した罪を償うために金銭を支払います。」 教会に一万円寄付する。 帰り際教会の年頃の女の子のスカートが突然吹いてきた強風でめくれ偶然中の下着があらわになる。 ・・・してみるとあのおじさんは北風小僧だったのかもしれない。
「入社おめでとう。君たちも社会人になったことだし、ここらで生命保険に入っておくのがいいぞ。会社の推奨はこれだ」 とりあえず入った。 「確定拠出年金を始めないか? 毎月の給料からコツコツと積みあげて、将来の年金を増やせるんだ」 とりあえず入った。 「持株会に入らないか? 毎月の給料から少額の株を買って配当をもらうんだ。今なら、一口につき○○%の株プレゼントもあってお得だぞ」 とりあえず入った。 正直、何の目的で、将来どうなるのかよくわかっていない。 しかし、会社が大丈夫と言っているのなら、きっと大丈夫なのだろう。 上司の指示を聞くのが嫌だとフリーランスになった友達たちは、成長が楽しいと喜びながら、仕事がない貯蓄が不安だと嘆いている。 ぼくは、成長なんて感じないけど、仕事や貯蓄への不安もない。 多分会社が何とかしてくれる。 「酒、うま」 どっちが幸せなんだろうか、なんて考えるのも面倒になって、とりあえずお酒を飲んで寝た。
太陽は夜が近づくにつれて夕日に変わっていきます オレンジ色の光になっていて空と大地を美しく照らします 今日もよく登ったなと山に腰掛けて、一息をついているのでしょうね
雪は土の上で青空を見ていました 雲一つない空は広く果てしないです 広い空に光の塊の太陽がポツリと浮いています 温かく明るい太陽はいつだって昼間にいます 雪はいつの間にか眠ってしまいました
世の中未だ高市早苗政権維持ですか人間って 愚か私は別に自民党を批判してる訳じゃ無い けど超高級車のベンツを乗り廻す様な総理に 出来る事は多分税率上昇株大増税の世の中が 示す物は大恐慌や戦争ってシナリオだよ絶対 御先真っ暗なこの世に起死回生は訪れるかな 其れで金持ち政治家は裏で違法薬物ブレンド したシーシャを片手にホスト三昧とか遣って 総理大臣のストレス緩和してるかも知れない 人間は神に造られた筈が何故こんな堕落して 仕舞ったのだろう多分神無き進化が方向性を 狂わせて競い押し退け財政が無くなれば戦争 する様に為ったのかも知れない私は長生きが したくないから別に良いけど長寿を願う者に 取れば迷惑以外の何物でも無い筈希望と夢を 天から叩きつけられ粉々に為り果て絶望だけ 創造して仕舞う世の中にカンフル剤か王手を 射す者が存在するのならば神様お願い希望と 世界潤せる金を降らせて下さい地獄の沙汰も 金次第的などんでん返しが有ればその応えは 人間達の傍若無人振りに呆れて風に聞きなと 言われ無い様な行いを自信持ちするだけかも 知れないそう全ては天の神様の言う通り的な
多くの人が、自分の心に従えと言う。 我慢はするなと言う。 結局そうしたところで、何も変わらないのに。 私の気持ちなぞ、この現世でどれ程のものだというのだろう。 のべつ幕無しに、移り変わっている世の中で、自分ひとりでは何も変わらないと気がついた瞬間、絶望よりも少し楽になったような気がした。 あの人に対してはどうだろう。 世の中と同じように、私はあの人の心を1ミリたりとも動かすことができない。 私は、あの人に対して無力で、なんの影響力もないだろう。 世の中に対しては、気楽でいられるのに、あの人に対しては体が切り裂かれるように痛々しい辛さがある。 もしかして、ひょっとして、万が一。勇気ある一歩というやつを踏み出したら、何か変わると期待しているのだろうか。 あの人を少しも揺り動かせないのは、「今」の自分自身のせいだろうか。 何かを変えれば、何かが変わるだろうか。 自分が変わって、自分をさらけ出して、自分を知ってもらう。 べた凪の状態が変わらなくても、心は着地しそうだ。あの人の存在が、世の中の一部に溶け込んだその瞬間に、少しは楽になるだろう。 おや、結局私も自分の気持ちとやらを大切にしているのか。 でも欲しいのは、心の平穏ではない。あの人の声、視線、温もり、におい、感情。全てだ。 さあ。少しでもいい。ゆこう。
かかる瞼に カランカラ 眠る猫背に 薄目のカーテン 陽射しよ 陽射せ タタラと 吹く風の 窓辺に受けた 眼差しに 私を散らせ 私よ散らせ 貴方を散らせ 咲けると咲いて 貴方よ咲いて 春に揺れて